(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188592
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】着座状態検出装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20221214BHJP
【FI】
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096753
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植松 徹
(72)【発明者】
【氏名】天野 準
(72)【発明者】
【氏名】中込 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 朝美
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 仁郁
(72)【発明者】
【氏名】不破 遼平
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CE06
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】車室内の乗員の有無を検出する際に、乗員が座席に直接着座した直座り状態か、幼児用補助装置に着座した状態かを識別することが可能な着座状態検出装置を提供する。
【解決手段】車着座状態検出装置は、例えば、車両に搭載された電波センサによる送受波の結果として出力される所定期間の検出信号群を取得する取得部と、検出信号群の中から所定の反射強度範囲の特定強度信号を抽出する信号抽出部と、特定強度信号の分布態様に基づき、車両の乗員が座席に直座りする第一の搭乗状態か、幼児用補助装置に着座した第二の搭乗状態かを判定する判定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電波センサによる送受波の結果として出力される所定期間の検出信号群を取得する取得部と、
前記検出信号群の中から所定の反射強度範囲の特定強度信号を抽出する信号抽出部と、
前記特定強度信号の分布態様に基づき、前記車両の乗員が座席に直座りする第一の搭乗状態か、幼児用補助装置に着座した第二の搭乗状態かを判定する判定部と、
を備える、着座状態検出装置。
【請求項2】
前記信号抽出部は、前記検出信号群に含まれる、所定の第一の強度以上の第一の反射強度範囲に含まれる第一の検出信号の数と、前記第一の強度を含む第二の反射強度範囲に含まれる第二の検出信号の数と、を抽出し、
前記判定部は、前記第一の検出信号の数と前記第二の検出信号の数の差分の大きさに基づき、前記第一の搭乗状態か前記第二の搭乗状態かを判定する、請求項1に記載の着座状態検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記特定強度信号の数の分布位置に基づき、前記第一の搭乗状態か前記第二の搭乗状態かを判定する、請求項1に記載の着座状態検出装置。
【請求項4】
前記信号抽出部は、前記乗員が着座した際の胸部相当位置に対して前記電波センサの検出波が送信された場合の前記検出信号群を取得する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の着座状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、着座状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設置された種々にセンサを用いて、車両の車室内の乗員の有無や、人数の検出、大人と子供の識別等を行い、車両制御に反映させる技術が提案されている。例えば、電波センサを用いて、乗員の有無を検出して、乗員が存在するにも拘わらず、車両の走行時にシートベルトを着用していない場合には、警報を出力する、いわゆる「ベルトリマインダ」を実現する技術が提案されている。座席に乗員が直座りしている場合は、シートベルトの装着の有無は容易に検出するが可能で、ベルトリマインダを適切に出力することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の座席に幼児用補助装置、いわゆる、チャイルドシードやジュニアシート等を装着し、乗員(幼児)を着座させる場合がある。そして、幼児用補助装置を座席に固定する方式として、各座席に設けられたシートベルトを用いて幼児用補助装置を拘束するベルト固定タイプと、シートベルトを利用せず、座席の一部(例えば、シートに固定された金具等)に直接幼児用補助装置を固定する直接固定タイプ(ISOFIX(アイソフィックス)タイプ)がある。そして、直接固定タイプの幼児用補助装置を装着している場合、ベルトリマインダが誤って出力される場合がある。例えば、ベルト固定タイプの幼児用補助装置の場合、ベルトリマインダの出力の条件であるシートベルトは、常に装着状態となるため、ベルトリマインダは出力されない(幼児は、幼児用補助装置に設けられているベルトで固定されていることが前提)。一方、直接固定タイプの幼児用補助装置の場合、幼児用補助装置が載置される座席のシートベルトは利用されないため、車両走行時幼児用補助装置に乗員(幼児)を検出した場合、ベルトリマインダが出力されてしまい、乗員に煩わしさを与えてしまう場合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、車室内の乗員の有無を検出する際に、乗員が座席に直接着座した直座り状態か、幼児用補助装置に着座した状態かを識別することが可能な、着座状態検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかる車着座状態検出装置は、例えば、車両に搭載された電波センサによる送受波の結果として出力される所定期間の検出信号群を取得する取得部と、前記検出信号群の中から所定の反射強度範囲の特定強度信号を抽出する信号抽出部と、前記特定強度信号の分布態様に基づき、前記車両の乗員が座席に直座りする第一の搭乗状態か、幼児用補助装置に着座した第二の搭乗状態かを判定する判定部と、を備える。この構成によれば、例えば、特定強度信号に着目することにより、乗員(幼児)が幼児用補助装置に着座した際の検出信号を効率的に取得しやすくなり、第一の搭乗状態と第二の搭乗状態との識別を容易に行うことができる。
【0007】
また、本発明の実施形態にかかる着座状態検出装置の前記信号抽出部は、例えば、前記検出信号群に含まれる、所定の第一の強度以上の第一の反射強度範囲に含まれる第一の検出信号の数と、前記第一の強度を含む第二の反射強度範囲に含まれる第二の検出信号の数と、を抽出し、前記判定部は、前記第一の検出信号の数と前記第二の検出信号の数の差分の大きさに基づき、前記第一の搭乗状態か前記第二の搭乗状態かを判定するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、幼児用補助装置に着座した乗員(幼児)の動き(例えば、呼吸動作)等によって幼児用補助装置が動いた際の所定の強度(例えば、一定閾値より弱い強度)の検出信号を効率よく抽出可能となり、判定部による判定精度を向上することができる。
【0008】
また、本発明の実施形態にかかる着座状態検出装置の前記判定部は、例えば、前記特定強度信号の数の分布位置に基づき、前記第一の搭乗状態か前記第二の搭乗状態かを判定するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、より明確に判定部による判定を実行可能となり、判定精度を向上することができる。
【0009】
また、本発明の実施形態にかかる着座状態検出装置の前記信号抽出部は、例えば、前記乗員が着座した際の胸部相当位置に対して前記電波センサの検出波が送信された場合の前記検出信号群を取得するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、乗員が寝ている場合等でも安定して検出できる呼吸動作に基づき乗員が存在するか否かを容易かつ正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる着座状態検出装置を搭載する車両の構成を示す例示的かつ模式的な説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる着座状態検出装置の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる着座状態検出装置において、乗員が幼児用補助装置に着座した際に検出される、所定の検出強度範囲における電波センサからの検出信号のプロットの距離とプロット数の関係を示す例示的なグラフである。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる着座状態検出装置において、乗員が座席に直座りした際に検出される、所定の検出強度範囲における電波センサからの検出信号のプロットの距離とプロット数の関係を示す例示的なグラフである。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる着座状態検出装置において、乗員が座席に直座りした場合と、幼児用補助装置に着座した場合とで検出される、検出強度範囲を絞り込んだ場合の検出信号のプロット数の例示的なヒストグラムである。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる着座状態検出装置による幼児用補助装置が着座状態か否か判定する判定処理と、その判定処理の結果を利用したベルトリマインダ処理を説明する例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0012】
本実施形態の着座状態検出装置は、例えば、電波センサから送信される所定の周波数の電波を、車室内に存在する座席や座席に固定された幼児用補助装置(例えば、チャイルドシート、ジュニアシート等)や、そこに着座する乗員(大人、子供、幼児等)に送信し、その反射波である検出信号を取得する。着座状態検出装置は、検出信号に基づいて、車両の乗員が座席に直座りする第一の搭乗状態か、幼児用補助装置に着座した第二の搭乗状態かを判定する。着座状態検出装置による判定結果は、種々の車両制御に利用される。例えば、車両の走行中に乗員がシートベルトを装着していない場合、ベルトリマインダを出力し、乗員に対する注意を喚起するために利用される。以下、着座状態検出装置の詳細について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の着座状態検出装置が搭載される車両10の構成を例示的かつ模式的に示す説明図である。
【0014】
車両10は、例えば、内燃機関(エンジン、図示されず)を駆動源とする自動車(内燃機関自動車)であってもよいし、電動機(モータ、図示されず)を駆動源とする自動車(電気自動車、燃料電池自動車等)であってもよいし、それらの双方を駆動源とする自動車(ハイブリッド自動車)であってもよい。また、車両10は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置(システム、部品等)を搭載することができる。
【0015】
図1に示されるように、車両10は、車室10a内に、乗員が着座可能な座席12を備える。車両10の場合、座席12は3列シート構成で、前列シート12a、中列シート12b、後列シート12cを備える。
図1の場合、後列シート12cには、幼児を車両10に搭乗させる際に利用する幼児用補助装置14(チャイルドシート、ジュニアシート等)が装着されている。
【0016】
図1において、幼児用補助装置14は、座席12(後列シート12c)のシートフレーム等に設けられた専用のアダプタ12c1(金具等)に、幼児用補助装置14の対応位置に設けられたソケット14aを挿入することより、後列シート12cに幼児用補助装置14を固定する直接固定タイプ(ISOFIX(アイソフィックス)タイプ)である。アダプタ12c1は、例えば、座席12の座面と背面との接続部等に設けられる。直接固定タイプの幼児用補助装置14の場合、座席12に設けられたシートベルトを用いて幼児用補助装置を拘束するベルト固定タイプに比べて、固定作業が容易であるとともに、固定状態のばらつきがなく、使い勝手がよいという利点がある。なお、各座席12には、アダプタ12c1と同様なアダプタを設けることが可能であり、いずれの座席12に対しても直接固定タイプの幼児用補助装置14の着脱ができるようにされてもよい。
【0017】
また、各座席12には、着座した乗員を固定するためのシートベルト16が設けられている。シートベルト16の金具部分が、各座席12に設けられたシートベルト用アダプタ18に挿入され、座席12にシートベルト16が固定され、乗員を固定する。前列シート12aに着座した乗員T1(運転者:大人)は、シートベルト16aをシートベルト用アダプタ18に挿入することで固定され、中列シート12bに着座した乗員T2(例えば、子供)はシートベルト16bをシートベルト用アダプタ18に挿入することで固定される。なお、後列シート12cに固定された幼児用補助装置14には、図示を省略した専用シートベルト(例えば、4点式)が設けられ、搭乗させる乗員T3(幼児)を固定可能である。なお、図示を省略しているが、後列シート12cにも中列シート12bに装着されたシートベルト16bと同様なシートベルトおよびシートベルト用アダプタが設けられている。したがって、後列シート12cに幼児用補助装置14を装着しない場合には、そのシートベルトを用いて、乗員(大人や子供)を安全に固定することができる。
【0018】
前述したように、直接固定タイプの幼児用補助装置14の場合、シートベルト16に設けられたシートベルトを利用しないため、仮に後列シート12cに幼児用補助装置14が装着され、幼児用補助装置14に着座した乗員T3が専用シートベルトを装着していても、後列シート12cのシートベルトが利用されず、走行時にはベルトリマインダが出力されてしまうことになる。すなわち、直接固定タイプの幼児用補助装置14が装着された車両10において、正確なベルトリマインダ等の車両制御を実行するためには、車両10が搭載する着座状態検出装置は、車両10の乗員が座席12に直座りする第一の搭乗状態か、幼児用補助装置14に着座した第二の搭乗状態かを判定する必要がある。
【0019】
そこで、直接固定タイプの幼児用補助装置14が装着された車両10の場合、第一の搭乗状態か、幼児用補助装置14に着座した第二の搭乗状態かを判定する際に利用する検出信号を出力する電波センサ20を備える。電波センサ20は周知のセンサが利用可能である。電波センサ20の設置位置は、検出対象である座席12や幼児用補助装置14、またそこに着座する乗員に対して電波(マイクロ波やミリ波等)が送信可能で、送信した送信波の反射波(検出信号)を受信できる位置であれば、車室10a内にいずれの位置でもよい。なお、
図1の場合、中列シート12bと後列シート12cの少なくとも一方に幼児用補助装置14が装着可能である。したがって、電波センサ20は、幼児用補助装置14が後列シート12cに装着されても中列シート12bに装着されても、またいずれにも装着されない場合でも電波の送受信が可能な位置に配置される。例えば、電波センサ20は、車室10aの天上面の車幅方向の略中央部で、車両前後方向のうち中列シート12bと後列シート12cの間の位置(例えば、中列シート12bのヘッドレストの少し後方の位置)に配置されている。
図1の例の場合、天上面に配置された電波センサ20の検出エリアEは、中列シート12bおよび後列シート12cをカバーしている例が示されている。
【0020】
電波センサ20から取得される検出信号(群)は、逐次着座状態検出装置22に提供され、着座状態の判定が実行される。なお、判定結果または判定結果に基づき制御結果は、報知装置24(例えば、音声出力装置24a(スピーカ)、表示装置等)から出力され、乗員に通知される。
【0021】
図2は、着座状態検出装置22の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
【0022】
着座状態検出装置22は、取得部22a、信号抽出部22b、判定部22c、報知部22d等を含む。
【0023】
取得部22aは、電波センサ20による送受波の結果として出力される所定期間の検出信号群を逐次取得する。取得部22aは、着座状態検出装置22の検出結果に基づき、ベルトリマインダ機能を実現する際には、例えば、車両10から提供される車速情報等に基づき、車両10が走行中であることが確認できる場合、電波センサ20に対して、動作要求を行い、所定周波数の電波の送信を実行させる。電波センサ20は、座席12や幼児用補助装置14、乗員等で反射した反射波を受信して、逐次取得部22aに提供する。取得部22aは取得した検出信号群を信号抽出部22bに逐次提供する。
【0024】
信号抽出部22bは、取得部22aから提供される検出信号群の中から所定の反射強度範囲の特定強度信号を抽出する。電波センサ20は、物体とセンサの距離が変化しているもの(動き量)を検出することができる。そして、物体の動き量が大きいものほど検出信号(電波の反射波)の強度は大きくなる。すなわち、電波センサ20は、三次元空間での各位置における受信信号の計測が可能であり、受信信号の時間差分の絶対値が所定閾値以上である場合を「動き」が有ると判定し、所定閾値未満の場合を「動き」が無いと判定する。三次元空間での各位置は離散化された値であり、所定空間内において、「動き」が有る点(受信信号の時間差分の絶対値が所定閾値以上)の合計数を、「動き量」と定義することができる。また、電波センサ20は、送波から受波までの時間に基づいて、電波を反射した物体までの距離を検出することができる。したがって、取得部22aから提供される検出信号群によって、物体または動体物を検知した位置を、三次元座標上で反射強度(動きの大きさ)と位置の情報を持ったプロットとして表示することができる。
【0025】
したがって、信号抽出部22bは、例えば、取得した検出信号群の中から所定の反射強度範囲の特定強度信号を抽出することで、検出信号の分類を行い、検出信号群の特徴の解析、すなわち、電波を反射させた物体(本実施形態の場合、座席12や幼児用補助装置14および、そこに着座し得る乗員)の有無等の検出を行うことができる。
【0026】
ところで、幼児用補助装置14に着座させられ、専用シートベルトで固定されている乗員T3(幼児)の体動(手足の動きや呼吸動作)は、幼児用補助装置14に伝搬し、幼児用補助装置14自体も小さく動く。その場合、幼児用補助装置14の小さな動きも電波センサ20に検知される。上述したように、座席12から提供される検出信号群から所定の反射強度範囲の特定強度信号を抽出することにより、幼児用補助装置14の小さな動きを含めた特定の強度(所定の閾値より弱い強度)のプロットを三次元座標上に表示させることができる。
【0027】
一方、例えば、乗員T2(例えば、子供)が中列シート12bに直座りしている場合は、検出信号群の中には、幼児用補助装置14に伝搬した体動に由来するプロットは存在しない。したがって、幼児用補助装置14由来の検出信号(特定強度信号)をもつプロットの数を参照することにより幼児用補助装置14に乗員T3(幼児)が着座しているか、座席12に乗員T2(例えば、子供)等が直座りしているかを判別可能となる。
【0028】
図3と
図4を参照して、幼児用補助装置14に幼児が着座している場合と、乗員が座席12に直座りしている場合と、の検出信号群に差異が生じることを示す。
【0029】
図3に例示的に示されるグラフ26は、着座状態検出装置22において、乗員(幼児)が幼児用補助装置14に着座した際に検出される、所定の検出強度範囲における電波センサからの検出信号のプロットの距離とプロット数の関係を示す。
【0030】
図3において、縦軸は、天上面に配置された電波センサ20からのZ方向(鉛直方向)の距離で、横軸はプロット数である。また、白抜きのバーM1は、検出信号群に含まれる、所定の第一の強度以上の第一の反射強度範囲に含まれる第一の検出信号の数を示す。また、ハッチングを施したバーM2は、第一の強度を含む第二の反射強度範囲に含まれる第二の検出信号の数を示す。一般に、幼児用補助装置14に着座するような幼児の場合、不規則に手足を動かしたり頭を動かしたりする。その結果、強い動きを示す第一の検出信号の数が増加する。また、前述したように、幼児用補助装置14に乗員T3(幼児)が着座している場合、乗員T3の動きが、幼児用補助装置14に伝搬して、幼児用補助装置14が動き(振動)所定の閾値より弱い強度信号(特定の強度の信号)が増加する。特に、幼児用補助装置14は、幼児を包み込むように密着した状態で着座させているため、幼児用補助装置14の振動は広範囲に及ぶ。その結果、強い動きを示す第一の検出信号の数の増加に伴い、所定の閾値より強度が弱い検出信号も増加する。つまり、第一の強度を含む第二の反射強度範囲に含まれる第二の検出信号の数が増加し、特徴的に分布態様を示す。
【0031】
図4に例示的に示されるグラフ28は、着座状態検出装置22において、乗員(例えば子供)が座席12に直座りした際に検出される、所定の検出強度範囲における電波センサからの検出信号のプロットの距離とプロット数の関係を示す。
【0032】
図4において、縦軸は、天上面に配置された電波センサ20からのZ方向(鉛直方向)の距離で、横軸はプロット数である。また、白抜きのバーN1は、検出信号群に含まれる、所定の第一の強度以上の第一の反射強度範囲に含まれる第一の検出信号の数を示す。また、ハッチングを施したバーN2は、第一の強度を含む第二の反射強度範囲に含まれる第二の検出信号の数を示す。一般に、成長した子供の場合、幼児よりは、手足の不規則な動きは減少する。その結果、強い動きを示す第一の検出信号の数を示す白抜きのバーN1が、幼児の場合を示す
図3のバーM1よりは減少する。また、乗員T2が直座りしている座席12は、幼児用補助装置14に比べ硬く動き(振動)が伝搬し難い。その結果、強い動きを示す第一の検出信号の数の減少及び座席12への伝搬の減少に伴い、所定の閾値より弱い強度の検出信号が減少する。つまり、第一の強度を含む第二の反射強度範囲に含まれる第二の検出信号の数も減少し、特徴的に分布態様を示す。なお、
図3、
図4において、所定の閾値より弱い強度の検出信号には、車両10の振動に起因する検出信号が含まれるが、幼児が着座した幼児用補助装置14が装着されている場合は、所定の閾値より弱い強度の検出信号は、乗員が座席12に直座りしている場合に比べ遙かに多くなる。
【0033】
判定部22cは、信号抽出部22bが抽出した特定強度信号に基づき、乗員の搭乗状態が第一の搭乗状態か第二の搭乗状態かを判定する。
【0034】
例えば、
図3に示す幼児用補助装置14に着座した乗員T3(幼児)に対して電波センサ20を介して取得した特定強度信号を示すバーM1(第一の検出信号の数)とバーM2(第二の検出信号の数)を比較すると、バーM1とバーM2との間に明確な差異が存在する。ここで、バーM1(第一の検出信号の数)とバーM2(第二の検出信号の数)の差分は、主として前述した幼児用補助装置14の動きに由来する所定の閾値より弱い強度の検出信号の数に相当する。つまり、この幼児用補助装置14の動きに由来する検出信号(差分)の数が予め定めた判定閾値以上になった場合、電波センサ20は、幼児用補助装置14に乗員T3(幼児)が着座している状態で、受信信号群を取得したと見なすことができる。つまり、判定部22cは、第一の検出信号の数(バーM1)と第二の検出信号の数(バーM2)の差分の大きさに基づき、第二の搭乗状態、つまり、幼児用補助装置14に乗員T3(幼児)が着座している状態であることを判定することができる。
【0035】
一方、
図4に示す座席12に直座りした乗員T2(例えば、子供)に対して電波センサ20を介して取得した特定強度信号には、幼児用補助装置14に由来する所定の閾値より弱い強度の検出信号が含まれない。つまり、
図4に示されるバーN1(第一の検出信号の数)とバーN2(第二の検出信号の数)の差分は、
図3に示す幼児用補助装置14に乗員T3(幼児)が着座した場合のバーM1とバーM2の差分より少なくなる。したがって、第一の検出信号の数と第二の検出信号の数との差分が、前述した判定閾値未満の場合、電波センサ20は、座席12に乗員T2(例えば、子供)が直座りしている状態で受信信号群を取得したと見なすことができる。つまり、判定部22cは、第一の検出信号の数(バーM1)と第二の検出信号の数(バーM2)の差分の大きさに基づき、第一の搭乗状態、つまり、座席12に乗員T2(例えば、子供)が直座りしている状態であることを判定することができる。
【0036】
なお、
図3に示されるように幼児用補助装置14に乗員T3(幼児)が着座している場合、幼児用補助装置14を含む座席12の上端部から下端部において、概ね動きを示す検出信号群が検出されバーM1とバーM2との差分が検出できる。同様に、
図4において、座席12に乗員T2(例えば子供)が直座りしている場合も、座席12の上端部から下端部において、概ね動きを示す検出信号群が検出されN1とN2との差分が検出できる。車両10に乗員T2(例えば子供)や乗員T3(幼児)を搭乗させる場合、起きている場合と寝ている場合があり、検出信号群にばらつきが生じ易い。そこで、ここで、信号抽出部22bは、乗員T2(例えば子供)や乗員T3(幼児)が着座した際の胸部相当位置に対して、電波センサ20の検出波が送信された場合の検出信号群を取得する(着目する)。胸部相当位置とは、電波センサ20が設置された車両10の天上面を基準にZ方向の距離で、例えば、-0.5mの位置である。この場合、中列シート12bのシートベルト16bに乗員T2が固定されている場合、または幼児用補助装置14の線用シートベルトで乗員T3が固定されている場合、大きな動きは規制され、呼吸に伴う動きを安定的に検出することができる。例えば、
図3の領域P1や
図4の領域P2で、判定部22cによる判定を安定的に行うことができる。
【0037】
図5に例示的に示されるヒストグラム30は、着座状態検出装置22において、乗員T2が座席12に直座りした場合と、幼児用補助装置14に乗員T3が着座した場合とに検出される、検出強度範囲を所定の範囲に絞り込んだ場合の検出信号のプロット数である。
【0038】
図5は、信号抽出部22bにより、
図3や
図4の場合に比べて、長い期間に検出された検出信号群において所定の閾値より弱い強度の検出信号を抽出して、ヒストグラム化したものである。この場合、プロット数が比較的少ない領域に分布する第1分布領域30aとプロット数が比較的多い領域に分布する第2分布領域30bとに、明確に分かれる。上述したように、座席12に乗員T2が直座りした場合、幼児用補助装置14由来の所定の閾値より弱い強度の検出信号が含まれないため、所定の閾値より弱い強度の検出信号のプロット数が減少する。すなわち、プロット数の分布位置が第1分布領域30aを示す場合、判定部22cは、座席12に乗員T2が直座りしている第一の搭乗状態であると判定することができる。一方、幼児用補助装置14に乗員T3が着座した場合、幼児用補助装置14由来の所定の閾値より弱い強度の検出信号が多く含まれ、所定の閾値より弱い強度の検出信号のプロット数が増加する。すなわち、プロット数の分布位置が第2分布領域30bを示す場合、判定部22cは、幼児用補助装置14に乗員T3が着座している第二の搭乗状態であると判定することができる。
【0039】
このように、検出強度範囲を絞り込んだ場合の検出信号のプロット数の分布位置に基づいて判定を行う場合、
図3、
図4の場合に比べ、第一の搭乗状態を示す特徴と第二の搭乗状態を示す特徴が明確になる。その結果、判定部22cは、より精度の高い搭乗状態の判定を行うことができる。
【0040】
報知部22dは、判定部22cの判定結果と、車両10の他の制御システムから取得される情報に基づき、乗員に対する報知を実行する。例えば、報知の一例としてベルトリマインダを実行する。例えば、報知部22dは、中列シート12bに乗員T2が直座りしている(第一の搭乗状態である)ことが確認されたにも拘わらず、車両10の走行中にシートベルト16bがシートベルト用アダプタ18に挿入されていなことを示す情報を取得した場合、シートベルト16bが未装着であると判定する。この場合、判定部22cは、報知装置24を介して乗員T2にシートベルト16bの装着を促すメッセージとして、例えば「シートベルトを装着して下さい。」等の音声メッセージを、音声出力装置24aを介して出力させたり、運転席の表示装置や中列シート12bに着座した姿勢で視認可能な表示装置にシートベルトの着用を促すメッセージを表示させたり表示灯を点灯させたりする。もちろん、中列シート12bにおいて、第一の搭乗状態が確認されない場合(乗員T2が確認されない場合)には、車両10の走行中にシートベルト16bがシートベルト用アダプタ18に挿入されていな場合でも、ベルトリマインダは実行されない。なお、ベルトリマインダが実行された場合、シートベルト16の装着が確認されるまで車両10の走行を制限するようにしてもよい。
【0041】
一方、報知部22dは、後列シート12cにおいて幼児用補助装置14に乗員T3が着座りしている(第二の搭乗状態である)ことが確認された場合、直接固定タイプの幼児用補助装置14は、後列シート12cのシートベルトを用いることなく後列シート12cに固定されている。このとき、乗員T3は幼児用補助装置14の専用シートベルトによって固定されていることが前提になる。したがって、車両10の走行中に後列シート12cのシートベルトがシートベルト用アダプタに挿入されていなことを示す情報を取得した場合でも、シートベルトの未装着判定は行わない。その結果、幼児用補助装置14に乗員T3(幼児)が専用シートベルトによって固定されている場合に、ベルトリマインダが実行されてしまう誤動作を回避することができる。
【0042】
図6は、実施形態にかかる着座状態検出装置22による幼児用補助装置14が着座状態か否か判定する判定処理と、その判定処理の結果を利用したベルトリマインダ処理を説明する例示的なフローチャートである。なお、
図6のフローチャートは、
図5に示すプロット数の分布態様(分布位置)に基づき、搭乗状態を判定する処理を示す例である。
【0043】
着座状態検出装置22は、車両10のイグニッションスイッチがONの場合、常時、車両10が走行中か否かの確認を行う(S100)。車両10が走行中ではない場合(S100のNo)、このフローを一旦終了する。
【0044】
S100の処理において、車両10が走行中であると確認された場合(S100のYes)、取得部22aは電波センサ20から検出信号群の取得を行う(S102)。続いて、信号抽出部22bは、検出信号群の中から胸部相当位置のRIO(注目領域)を切出し(S104)、所定の閾値より弱い検出強度範囲に絞り込んだ場合の検出信号のプロット数のカウントを実行する(S106)。そして、判定部22cは、
図5で説明したように、プロット数の分布位置が第1分布領域30aを示すか、第2分布領域30bを示すかの判定処理を実行する(S108)。
【0045】
判定部22cの判定の結果、第二の搭乗状態(幼児用補助装置14に乗員T3(幼児)が着座した状態)を検出しない場合(S110のNo)、すなわち、第一の搭乗状態(座席12に乗員T2(例えば子供)の直座り)を検出した場合である。この場合、報知部22dは、対象となる座席12のシートベルト16の装着状態を確認し(S112)、シートベルト16が装着されている場合(S112のYes)、ベルトリマインダを実行することなく、このフローを一旦終了する。
【0046】
S112の処理において、シートベルト16の装着が確認できない場合(S112のNo)、ベルトリマインダを実行し、シートベルト16の未装着警告を乗員に提供し、このフローを一旦終了する。
【0047】
S110の処理において、第二の搭乗状態であることが検出された場合(S110のYes)、すなわち、後列シート12cに直接固定タイプの幼児用補助装置14が装着され、幼児用補助装置14には、乗員T3(幼児)が専用シートベルトによって固定されていると判定する。その結果、シートベルト16の装着確認を行うことなく、このフローを一旦終了する。
【0048】
このように本実施形形態の着座状態検出装置22によれば、車室内の乗員の有無を検出する際に、乗員が座席に直接着座した直座り状態か、幼児用補助装置に着座した状態かを、精度よく容易に検出することができる。そして、その結果を用いて、車両10の制御(例えば、ベルトリマインダ等)をより正確に実行することができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、車両10の天井部に電波センサ20を一つ設ける例を示した。別の実施形態では、複数の電波センサ20を設けてもよい。例えば、座席12の列ごとに一つ設けてもよいし、座席12ごとに設けてもよい。中列シート12bや後列シート12cが例えば、車幅方向に3座席の場合、車幅方向に電波センサ20を3つ設けてもよい。複数の電波センサ20を設けることによって、判定部22cによる、より正確な判定を行うことができる。また、電波センサ20の設置位置は、天井部以外でもよく、例えば、検出対象の座席12の前方の座席12のヘッドレストの位置でもよいし、車幅方向中央以外に幅方向の位置(隅)でもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、幼児用補助装置14を後列シート12cに装着した例を示したが、中列シート12b等他の座席に装着可能で、本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0051】
また、本実施形態では、座席12に直座りする乗員を子供として、座高が幼児用補助装置14に着座した乗員(幼児)と同じ程度になっている例を示したが、座席12の座高の高い乗員(例えば大人)が直座りしている場合でも、本実施形態を適用可能であり、同様に効果を得ることができる。
【0052】
また、上述した実施形態では、判定部22cの判定結果に基づき、ベルトリマインダを実行する例を示したが、判定結果を他の機能に利用してもよい。例えば、幼児を搭乗させている場合には、より優しい運転が望ましいため、車両10の加減速制御等に判定結果を反映させてもよい。また、報知部22dがベルトリマインダを実行する例を示したが、ベルトリマインダを実行する構成は、着座状態検出装置22とは別に設けられ、着座状態検出装置22の判定結果に基づいて機能するようにしてもよい。
【0053】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10…車両、12…座席、12a…前列シート、12b…中列シート、12c…後列シート、14…幼児用補助装置、16,16a,16b…シートベルト、18…シートベルト用アダプタ、20…電波センサ、22…着座状態検出装置、22a…取得部、22b…信号抽出部、22c…判定部、22d…報知部、24…報知装置、24a…音声出力装置。