(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188606
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】後味の雑味が改善されたアルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/06 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
C12G3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096774
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】307027577
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】増崎 瑠里子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真希
(72)【発明者】
【氏名】小川 かおり
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115MA03
(57)【要約】
【課題】後味の雑味が低減されたアルコール飲料の提供。
【解決手段】ナトリウムと、バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分とを含んでなるアルコール飲料であって、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上である、アルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムと、バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分とを含んでなるアルコール飲料であって、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上である、アルコール飲料。
【請求項2】
以下の条件:
(i)B/Aが0.5~10である;
(ii)C/Aが2~50である;および
(iii)C/Bが0.8~20である
の少なくとも1つを充足する、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
ナトリウムの濃度が、ナトリウムとして0.001~2.0w/v%である、請求項1または2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記アルコール飲料のアルコール濃度が3~15v/v%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
ナトリウムとしてのナトリウムの質量と、A+0.4B+0.1Cとの質量比(ナトリウム:[A+0.4B+0.1C])が、1,000,000:0.1~200である、請求項1~4のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
ナトリウムが、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一種のナトリウム塩に由来するものである、請求項1~5のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項7】
アルコール飲料を製造する方法であって、
バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分の濃度を調整し、かつ、ナトリウムを含有させる工程を含んでなり、
バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上となるように調整される、方法。
【請求項8】
アルコール飲料における後味の雑味を低減する方法であって、
バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分の濃度を調整し、かつ、ナトリウムを含有させる工程を含んでなり、
バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上となるように調整される、方法。
【請求項9】
アルコール飲料における味の厚みを増強する方法であって、
バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分の濃度を調整し、かつ、ナトリウムを含有させる工程を含んでなり、
バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上となるように調整される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後味の雑味が改善されたアルコール飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料においては、原材料由来のさまざまな成分とアルコールとの相互作用によりさまざまな香味が生じる。例えば、いわゆるRTD(レディー・トゥー・ドリンク)では様々なフレーバーが開発されており、そのほとんどが果実(柑橘など)をベースとしたものであるが、近年では、果汁ベースではないドライタイプのアルコール飲料が開発されている。そして、アルコール飲料の香味を消費者の好みに適合させるべく、さまざまな改良技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ナトリウム濃度が10~80mg/100mlである飲料が開示されている。特許文献1には、この飲料が4-エチルフェノールを10~100ppbの割合で含有し、さらに、2-メトキシ-4-ビニルフェノールを含有してもよいことが開示され、これにより、飲料中のナトリウムに由来する塩味の低減効果が得られると記載されている。
【0004】
特許文献2は、飲料中の色素の沈殿を抑制するための組成物および方法に関する文献であり、この文献には、同文献に記載の飲料製品が、(a)第1のアゾ成分および第2のアゾ成分、(b)電解質(塩化ナトリウム等)、および(c)溶媒+ベンズアルデヒドの溶液を含むことが開示されている。特許文献2には、この技術的特徴により、ベンズアルデヒドの濃度を制限することによって、アゾ色素の沈殿が抑制されると記載されている。
【0005】
特許文献3は、呈味の改良された飲食品およびその製造法に関する文献であり、この文献には、食塩濃度が0.2重量%~20重量%であり、0.1ppb以上3.0ppm未満である炭素数4から7を有する直鎖および分岐鎖アルデヒド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルジスルフィド、濃度が0.1ppb以上200ppb未満であるジメチルトリスルフィドの少なくとも1種以上を含有せしめることを特徴とする飲食品が開示されている。
【0006】
これらの文献には、上記のような塩および香気成分を含む飲食品の開示はあるが、後味の雑味や厚みに関しての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-184910号公報
【特許文献2】特開2019-201646号公報
【特許文献3】特開2011-172508号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、アルコール飲料、特に特定の果実の風味を有さないドライタイプ(プレーンタイプ)のアルコール飲料において、アルコール感が顕在化したときに、同時に嫌なアルコール感(苦味、辛味、えぐみ等)も感じられ、その中でも特に後味の雑味が感じられること、さらに、味の厚みも不足しているという問題を見出した。
【0009】
今般、本発明者らは、アルコール飲料に、ナトリウム、ならびにバニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分を、特定の濃度範囲で含有させることにより、後味の雑味が低減されることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0010】
従って、本発明は、後味の雑味が低減されたアルコール飲料およびその製造方法を提供する。
【0011】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)ナトリウムと、バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分とを含んでなるアルコール飲料であって、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上である、アルコール飲料。
(2)以下の条件:(i)B/Aが0.5~10である;(ii)C/Aが2~50である;および(iii)C/Bが0.8~20であるの少なくとも1つを充足する、前記(1)に記載のアルコール飲料。
(3)ナトリウムの濃度が、ナトリウムとして0.001~2.0w/v%である、前記(1)または(2)に記載のアルコール飲料。
(4)前記アルコール飲料のアルコール濃度が3~15v/v%である、前記(1)~(3)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(5)ナトリウムとしてのナトリウムの質量と、A+0.4B+0.1Cとの質量比(ナトリウム:[A+0.4B+0.1C])が、1,000,000:0.1~200である、前記(1)~(4)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(6)ナトリウムが、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一種のナトリウム塩に由来するものである、前記(1)~(5)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(7)アルコール飲料を製造する方法であって、バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分の濃度を調整し、かつ、ナトリウムを含有させる工程を含んでなり、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上となるように調整される、方法。
(8)アルコール飲料における後味の雑味を低減する方法であって、バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分の濃度を調整し、かつ、ナトリウムを含有させる工程を含んでなり、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上となるように調整される、方法。
(9)アルコール飲料における味の厚みを増強する方法であって、バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分の濃度を調整し、かつ、ナトリウムを含有させる工程を含んでなり、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上となるように調整される、方法。
【0012】
本発明によれば、アルコール飲料において、後味の雑味を低減することができる。また、本発明によれば、アルコール飲料において、味の厚みを増強することも可能である。特に、本発明によれば、甘味を抑えてすっきりとした味わいのアルコール飲料(例えばドライタイプのアルコール飲料)においても、後味の雑味を低減することが可能であり、さらには、そのようなアルコール飲料において味の厚みを増強することも可能である。
【発明の具体的説明】
【0013】
本発明において「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。
【0014】
本発明において「後味の雑味」とは、アルコールに起因するバーニング感、持続的な苦み、辛味、またはえぐみをいう。また、本発明において「味の厚み」とは、コクや味の膨らみを意味し、好ましくは余韻感をも含む。
【0015】
本発明において、「ppm」という単位は「mg/L」と同義であり、「ppb」という単位は「μg/L」と同義である。
【0016】
本発明のアルコール飲料は、ナトリウムを含有する。このような飲料は、飲料中のナトリウムの濃度を調整することにより製造することができる。ナトリウムの濃度調整は、ナトリウムを添加することにより行ってもよいし、あるいは、ナトリウムを含有する原料を配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0017】
本発明のアルコール飲料中のナトリウムは、ナトリウム、ナトリウム塩、ナトリウムイオン等のいずれの形態であってもよい。本発明のアルコール飲料中のナトリウムの濃度は特に制限されるものではないが、ナトリウムとして(ナトリウムの形態の重量に換算して)、好ましくは0.001~2.0w/v%とされ、より好ましくは0.005~1.0w/v%とされ、さらに好ましくは0.01~0.5w/v%とされ、さらに好ましくは0.02~0.3w/v%とされる。飲料中のナトリウムの濃度は、当技術分野において公知の方法、例えば、ICP発光分光分析装置(Inductivity coupled plasma optical emission spectrometer; ICP-OES)を用いたナトリウム分析により測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0018】
本発明のアルコール飲料の製造に用いられるナトリウムとしては、ナトリウム、ナトリウム塩、ナトリウムイオン等の様々な形態の物質、およびこれらを含有する原材料など、いかなる形態の材料を用いてもよい。前記ナトリウム塩としては、特に制限されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム(例えば、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム)、および酢酸ナトリウム等を挙げることができ、好ましくはコハク酸ナトリウムおよび/または塩化ナトリウムを用いることができる。
【0019】
本発明のアルコール飲料は、バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分を含有する。このような飲料は、飲料中の前記成分の濃度を調整することにより製造することができる。前記成分の濃度調整は、前記成分を添加することにより行ってもよいし、あるいは、前記成分を含有する原料を配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0020】
本発明のアルコール飲料中の前記成分の濃度は、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上とされ、好ましくは0.8以上とされ、さらに好ましくは1以上とされる。また、これら成分の濃度の上限値は特に限定されるものではないが、柑橘風味飲料の嗜好性の観点から、例えば、バニリンについては50ppb、好ましくは20ppb、4-ビニルグアイアコールについては125ppb、好ましくは50ppb、フェニルアセトアルデヒドについては500ppb、好ましくは200ppbとすることができる。
【0021】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも2種の成分を含有し、より好ましくは3種の成分を含有する。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料において、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、B/Aが0.5~10とされるか、C/Aが2~50とされるか、C/Bが0.8~20とされるか、またはそれらの組み合わせであり、さらに好ましくは、B/Aが1~5とされるか、C/Aが5~20とされるか、C/Bが2~8とされるか、またはそれらの組み合わせである。
【0023】
本発明のアルコール飲料中の前記成分の濃度は、GC/MS分析により測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。GC/MSの条件の例を下記表1に示す。
【0024】
【0025】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料において、ナトリウムとしてのナトリウムの質量と、A+0.4B+0.1Cとの質量比(ナトリウム:[A+0.4B+0.1C])は、1,000,000:0.1~200とされ、より好ましくは1,000,000:0.2~50とされ、さらに好ましくは1,000,000:0.5~40とされる。
【0026】
本発明のアルコール飲料のアルコール濃度は特に制限されるものではないが、好ましくは1~20v/v%、より好ましくは3~15v/v%、さらに好ましくは6~12v/v%とされる。アルコール濃度の調整は、食品としての安全性が確認されたエタノール含有材料の添加によって行うことができる。エタノール含有材料としては、原料用アルコールや蒸留酒(スピリッツ)を用いることができ、好ましい蒸留酒の例としては、ウオッカ、焼酎、テキーラ、ラム、ジン、ウイスキー等が挙げられる。
【0027】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、柑橘抽出物を含有するものとされる。このような柑橘抽出物としては、例えば、特開2019-115264号公報に記載の香味改善組成物が挙げられる。さらに、本発明のアルコール飲料は、穀物発酵エキスを含有していてもよい。
【0028】
本発明のアルコール飲料は、いかなる種類のアルコール飲料であってもよく、例えば、柑橘風味アルコール飲料、ソフトフルーツ(柑橘以外の果実)風味アルコール飲料、ドライタイプ(プレーンタイプ)のアルコール飲料等であってよい。ここで、ドライタイプ(プレーンタイプ)のアルコール飲料は、一般的に、甘味を抑えてすっきりとした味わいのアルコール飲料と理解することができ、例えば、果実の風味を有さないアルコール飲料であってよく、好ましくは果汁、柑橘香料およびソフトフルーツ香料のいずれをも含有しないアルコール飲料であってもよい。このようなドライタイプ(プレーンタイプ)のアルコール飲料の市販品は、食事との相性が良くなるように香味設計されているものが多い。
【0029】
本発明のアルコール飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、またはそれらの塩類等)、色素、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)等を適宜添加することができる。
【0030】
本発明のアルコール飲料は、二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸飲料とすることができる。炭酸ガス圧は、好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.05~0.4MPa(20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
【0031】
本発明のアルコール飲料は、pHを、例えば、2.0~5.0、好ましくは2.5~4.5、より好ましくは3.0~4.2に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。
【0032】
本発明のアルコール飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。本発明のアルコール飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0033】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、上記成分の濃度調整以外は、通常のアルコール飲料の製造方法に従って製造することができる。例えば、まず、タンク中において、アルコールを含有した水溶液に、酸味料、香料、および必要に応じて、糖または甘味料を加えて香味を調整する。次いで、香味を整えた水溶液に炭酸ガスを加えて、炭酸ガス含有飲料を製造することができる。本発明のアルコール飲料は、このような製造過程のいずれかの段階で、上記成分または上記成分を含む材料を適宜加えることによって製造することができる。
【0034】
本発明の他の態様によれば、アルコール飲料における後味の雑味を低減する方法であって、バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分の濃度を調整し、かつ、ナトリウムを含有させる工程を含んでなり、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上となるように調整される方法が提供される。
【0035】
本発明のさらに別の態様によれば、アルコール飲料における味の厚みを増強する方法であって、バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の成分の濃度を調整し、かつ、ナトリウムを含有させる工程を含んでなり、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときに、A+0.4B+0.1Cが0.5以上となるように調整される方法が提供される。
【実施例0036】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
試飲サンプル
以下の実施例において、いずれの試飲サンプルも、以下の成分およびpHを有するベース飲料サンプルに基づいて作製した:
・アルコール濃度:9v/v%;
・酸味料(クエン酸(無水)、コハク酸二ナトリウムなど):0.12w/v%;
・pH:3.1~3.2;
・炭酸ガス圧:0.20~0.26。
【0038】
上記のベース飲料サンプル(陰性対照)に対して、様々な量のバニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドを、それぞれ単独で、または特定の組み合わせで添加した。また、様々なナトリウム濃度を有する試飲サンプルも用意した。ナトリウム濃度の調整は、塩化ナトリウム(NaCl)の添加によって行った。
【0039】
官能評価
官能評価は、十分に訓練された6名のパネラーによって行った。評価項目は、後味の雑味(アルコールに起因するバーニング感、持続的な苦み、辛味、またはえぐみ)の抑制効果、および味の厚み(コク、味の膨らみ、および余韻感)の増強効果の2項目とした。官能評価は、1(陰性対照と同等)、2(陰性対照と連続比較することで、僅かに効果が感じられる)、3(陰性対照と連続比較することで効果が感じられるが、比較しないとわからない)、4(陰性対照と比較しなくても効果が感じられる)、5(陰性対照と比較しなくても効果が明確に感じられる)、の5段階のスコアで、0.5刻みで行った。ここで、上述の陰性対照の試飲サンプル(ナトリウム濃度:0.0034w/v%)のスコアを1.0とし、0.043w/v%のナトリウムおよび16ppbのフェニルアセトアルデヒドを含有する試飲サンプルのスコアを2.0とした。評価結果は、6名のスコアの平均値および標準偏差として示した。
【0040】
実施例1:ナトリウムによる効果の確認
所定量のバニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドをそれぞれ単独で添加した試飲サンプルにおいて、ナトリウム濃度を変えた複数のサンプルを用意し、官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0041】
【0042】
表2から、ナトリウムは、バニリン、4-ビニルグアイアコールまたはフェニルアセトアルデヒドとの組み合わせにより、用量依存的に後味の雑味の抑制効果を示すことが分かった。また、味の厚みの増強効果についても、用量依存的に同様に効果を示すことが分かった。
【0043】
実施例2:バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドのそれぞれ単独による効果の確認
バニリン、4-ビニルグアイアコールおよびフェニルアセトアルデヒドをそれぞれ単独で添加した試飲サンプルを用意し、官能評価を行った。全ての試飲サンプル中のナトリウム濃度は0.043w/v%とした。結果を表3に示す。
【0044】
【0045】
表3から、上記の各成分は、用量依存的に後味の雑味の抑制効果を示すことが分かった。また、味の厚みの増強効果についても同様に、上記の各成分は用量依存的に効果を示すことが分かった。
【0046】
実施例3:複数の成分を組み合わせて添加したときの効果の確認
本実施例では、上記の3種の成分のうち、複数の成分を組み合わせて添加したときの効果を調べた。用意した試飲サンプルでは、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときのA+0.4B+0.1Cを1.2とした。全ての試飲サンプル中のナトリウム濃度は0.043w/v%とした。結果を表4に示す。
【0047】
【0048】
表4から、バニリンの濃度をA(ppb)、4-ビニルグアイアコールの濃度をB(ppb)、フェニルアセトアルデヒドの濃度をC(ppb)としたときのA+0.4B+0.1Cが同じである場合、ある成分を単独で添加するよりも、複数の成分を組み合わせて添加した方が高い効果が得られることが分かった。また、2成分の組み合わせよりも3成分を組み合わせた方が高い効果が得られることが分かった。