(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188613
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】移動電源車
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20221214BHJP
B62D 55/06 20060101ALI20221214BHJP
B62D 55/24 20060101ALI20221214BHJP
B60K 15/04 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B60P3/00 U
B62D55/06
B62D55/24
B60P3/00 F
B60K15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096784
(22)【出願日】2021-06-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.刊行物 発行者 日刊工業新聞社 刊行物名 掲載面 日刊工業新聞、第26面 発行日 令和3年3月22日 2.刊行物 発行者 西日本新聞社 刊行物名 掲載面 西日本新聞、第27面 発行日 令和3年3月27日 3.ウェブサイト 掲載日 令和3年3月4日 掲載アドレス https://tsukuba-gi.jp/description/creation/reiwa2-company01/ 4.集会発表 集会名 次世代技術活用ビジネスイノベーション創出事業(内閣府地方創生推進交付金事業)新ビジネス創出の事業化事例発表会 開催日 令和3年3月5日 5.刊行物 発行者 茨城県産業戦略部技術振興局技術革新課、及び茨城県産業技術イノベーションセンターイノベーション戦略部新ビジネス支援グループ 刊行物名 次世代技術活用ビジネスイノベーション創出事業(内閣府地方創生推進交付金事業)事業報告書、第3ページ 発行日 令和3年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】521252151
【氏名又は名称】株式会社東京電機
(71)【出願人】
【識別番号】592014218
【氏名又は名称】株式会社諸岡
(74)【代理人】
【識別番号】100110179
【弁理士】
【氏名又は名称】光田 敦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清生
(72)【発明者】
【氏名】中根 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
(72)【発明者】
【氏名】芹川 京兵
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038CA23
3D038CB04
3D038CC14
(57)【要約】
【課題】被災地等の苛酷な電力需要の環境において、力強く、転倒しにくい安定した移動、作業が可能であり、電源ケーブルが引出し易い使い勝手の良い移動電源車を実現する。
【解決手段】移動電源車の荷台17の上に電源装置3を備え、車両2の前後の車輪に掛け渡されたエンドレスのゴム帯を備えたゴムクローラ6で移動し、荷台17の横幅方向の中央に前後方向に沿って延びる遮音及び断熱用の仕切り板36が起立して設けられ、荷台17上において、仕切り板36の横幅方向の一方の側に、電源装置3の構成機器の一部が配置され、他方の側に、残りの機器が配置され、ケーブルリール装置33は、電源ケーブルを引出し可能に巻装するケーブルリール40と、ケーブルリール40を固定して載置するリール台床41と、リール台床41を案内し荷台17から車両2の側方へ移動して引出し可能とするリール台床案内レール45と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台の上に電源装置を備え、車両はゴムクローラで走行する移動電源車であって、
ゴムクローラは、車両の前後の車輪に掛け渡されたエンドレスのゴム帯を備えたゴムクローラであり、
電源装置は、その構成機器として、発電機、バッテリ、発電用エンジン、ラジエータ、マフラ、ケーブルリール装置、燃料タンク及び発電装置制御盤を備え、
荷台の横幅方向の中央に前後方向に沿って延びる遮音及び断熱用の仕切り板が起立して設けられ、
荷台上において、仕切り板の横幅方向の一方の側に、前記構成機器の一部の機器が配置され、他方の側に、前記構成機器の残りの機器が配置されており、
ケーブルリール装置は、電源ケーブルを引出し可能に巻装するケーブルリールと、ケーブルリールを固定して載置するリール台床と、リール台床を車両の側方外側へ移動可能とするリール台床移動器と、を備えている構成を特徴とする移動電源車。
【請求項2】
前記構成機器の一部の機器は、発電機、バッテリ、発電用エンジン、ラジエータ、マフラであり、前記構成機器の残りの機器は、ケーブルリール装置、燃料タンク及び発電装置制御盤である構成を特徴とする請求項1に記載の移動電源車。
【請求項3】
リール台床移動器は、リール台床を移動可能とするリール台床案内レールと、リール台床を移動させる駆動源となるリール用電動機と、リール台床とリール台床案内レールの間に設けられた伝動機構と、を備え、リール用電動機の駆動力によって伝動機構を介してリール台床をリール台床案内レールに沿って移動可能とする構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動電源車。
【請求項4】
燃料タンクの給油口は、燃料タンクの上面から斜め上方に延びるように設けられており、給油口の長さは、給油口の上端が、車両が転倒角の姿勢に傾いた時、燃料タンク内に満タンで充填された燃料の最上位より上方に位置する長さに形成されている構成であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の移動電源車。
【請求項5】
車両を走行するための車両駆動装置を備え、
車両駆動装置は、車両走行用エンジンで駆動される油圧ポンプと、該油圧ポンプで発生した油圧で作動しゴムクローラの駆動輪を回転する油圧モータと、油圧ポンプと油圧モータの間で作動油を環流させる油圧回路と、を備え、
油圧回路の一部から分岐した油圧ポートを設け、該油圧ポートに外部の油圧動作機器を接続し、該油圧動作機器に油圧を供給可能とする構成であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の移動電源車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムクローラで走行可能な移動電源車に関し、特に、走行面との接地面積が大きく、重心の低い、非常に安定性の良い、ゴムクローラで走行可能な移動電源車に関する。
【0002】
本発明に係る移動電源車は、地震、風水害、原子力災害等により瓦礫、流木等が散乱した被災地、悪路、傾斜地のような苛酷な電力需要の環境においても、転倒しにくく、安定した移動が可能であり、一連の電源供給の作業がし易い。
【背景技術】
【0003】
従来、トラックに発電機を搭載した移動電源車は知られている(特許文献1-5参照)。
また、発電機を搭載したトラックの車輪に替えて、前後に三角ゴムクローラを設けた電源車は知られている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3263255号公報
【特許文献2】特開2007-068271号公報
【特許文献3】特許第6185951号公報
【特許文献4】実開平6-83600号公報
【特許文献5】実用新案登録第2569089号公報
【特許文献6】実用新案登録第3204254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラックに発電機を搭載した移動電源車(特許文献1-5)は、地震、風水害、原子力災害等により瓦礫、流木等が散乱した被災地、悪路、傾斜地のような苛酷な電力需要の環境では、通常の車輪で走行するのが困難で、走行安定性が悪いために、電力需要部にアクセスすることは難しい。
【0006】
仮にアクセスしても車体の一部が損傷したりしてしまう可能性があるという問題が考えられる。例えば、前後の車輪の間に存在する瓦礫に車体の底部が乗り上げて、移動できない、或いは車体の底部に設けられた装置等を破損したりする。
【0007】
前後に三角ゴムクローラを設けた電源車(特許文献6)は、瓦礫、流木等が散乱し、不整地の走行においては、トラックに発電機を搭載した移動電源車に比較して、比較的に走行し易くなる。
【0008】
しかし、トラックと同様に、前後の三角ゴムクローラの間の車体の底部が、瓦礫、流木等に乗り上げて、移動できない、或いは車体の底部に設けられた装置等が破損したりする可能性がある。
【0009】
また、三角ゴムクローラを前後に設けた構成では、前後のみでしか三角ゴムクローラが接地しない、また接地面積が比較的に少ないので、車両の安定性では改善の余地があり、しかも三角ゴムクローラではその形状のため、タイヤハウスに納まらず上下方向に幅をとるために、車高ないし重心が高くなり、安定性が損なわれる可能性もある。
【0010】
従来の移動電源車(特許文献1-5)は、転倒防止等の安定性を重視し、発電装置を構成するエンジン、発電機、ラジエータ、マフラの重量物を、荷台の横幅方向(前後方向に直交する方向)の中央部に、前後方向に並べて載置する構成を採用している。
【0011】
そのような構成とすると、車体(荷台)を全体的に前後方向に長く設計する必要があり、縦方向に較べ、横幅が小さくなり、横方向の安定性が悪くなり、瓦礫等が散乱し、傾斜等のある地域では、また風雨等の環境下では、横方向への転倒に対して必ずしも好ましくない。
【0012】
また、上記のように重量物を中央部に、前後方向に並べて載置する構成を採用すると、
荷台の側部が空き空間となったり、或いは側部に制御装置等の軽量等の小さな機器を設置する等しても、荷台の側部がデッドスペースに近い状態となる。
【0013】
さらに、従来の移動電源車は、電源ケーブルをドラムに巻装し(特許文献1、2)、或いは収納用のバケット内に収容している(特許文献4)が、地震、風水害、原子力災害等により瓦礫、流木等が散乱した被災地、悪路、傾斜地のような苛酷な電力需要の環境において、移動電源車が傾斜した状態等において、ドラム、バケットから電源ケーブルを取り出しにくく、危険を伴う場合もあり、作業性が悪い。
【0014】
また、移動電源車の電源端子にケーブルを接続する構成である(特許文献5)と、被災地等では、作業性が悪い。
【0015】
ところで、燃料タンク給油口の蓋には揮発したガスを抜くための構造が施されているが、被災地等の電力需要の環境は、走行路は悪路や傾斜地などが想定され、このような環境では、通常の給油口長さでこの蓋を使用するとガスを抜く部分より燃料が漏れ出してしまうという問題が生じる。
【0016】
なお、移動電源車の需要地としては、被災地等が想定されるが、被災地では瓦礫や流木等が存在し、アクセスのために、瓦礫や流木等を切断して取り除く等の作業が必要となる場合がある。
【0017】
そのような場合、瓦礫や流木等を切断して取り除くための油圧による作業機に油圧を供給する油圧供給源が併置されていると、都合が良い。従来の移動電源車は、電力の需要に特化しており、瓦礫や流木等を切断して取り除く等の作業は想定されていない。
【0018】
本発明は、上記従来の移動電源車の問題を解決することを目的とするものであり、地震、風水害、原子力災害等により瓦礫、流木等が散乱した被災地、悪路、傾斜地のような苛酷な電力需要の環境において、瓦礫、流木等が散乱し、また不整地の環境においても、力強く、転倒しにくい安定した移動が可能であり、電力需要部へのアクセス性に優れ、しかも電源ケーブルを移動電源車から引出し易い等、使い勝手の良い移動電源車を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記課題を解決するために、車両の荷台の上に電源装置を備え、車両はゴムクローラで走行する移動電源車であって、ゴムクローラは、車両の前後の車輪に掛け渡されたエンドレスのゴム帯を備えたゴムクローラであり、電源装置は、その構成機器として、発電機、バッテリ、発電用エンジン、ラジエータ、マフラ、ケーブルリール装置、燃料タンク及び発電装置制御盤を備え、荷台の横幅方向の中央に前後方向に沿って延びる遮音及び断熱用の仕切り板が起立して設けられ、荷台上において、仕切り板の横幅方向の一方の側に、前記構成機器の一部の機器が配置され、他方の側に、前記構成機器の残りの機器が配置されており、ケーブルリール装置は、電源ケーブルを引出し可能に巻装するケーブルリールと、ケーブルリールを固定して載置するリール台床と、リール台床を車両の側方外側へ移動可能とするリール台床移動器と、を備えている構成を特徴とする移動電源車を提供する。
【0020】
前記構成機器の一部の機器は、発電機、バッテリ、発電用エンジン、ラジエータ、マフラであり、前記構成機器の残りの機器は、ケーブルリール装置、燃料タンク及び発電装置制御盤である構成とすることが好ましい。
【0021】
リール台床移動器は、リール台床を移動可能とするリール台床案内レールと、リール台床を移動させる駆動源となるリール用電動機と、リール台床とリール台床案内レールの間に設けられた伝動機構と、を備え、リール用電動機の駆動力によって伝動機構を介してリール台床をリール台床案内レールに沿って移動可能とする構成とすることが好ましい。
【0022】
燃料タンクの給油口は、燃料タンクの上面から斜め上方に延びるように設けられており、給油口の長さは、給油口の上端が、車両が転倒角の姿勢に傾いた時、燃料タンク内に満タンで充填された燃料の最上位より上方に位置する長さに形成されている構成とすることが好ましい。
【0023】
車両を走行するための車両駆動装置を備え、車両駆動装置は、車両走行用エンジンで駆動される油圧ポンプと、該油圧ポンプで発生した油圧で作動しゴムクローラの駆動輪を回転する油圧モータと、油圧ポンプと油圧モータの間で作動油を環流させる油圧回路と、を備え、油圧回路の一部から分岐した油圧ポートを設け、該油圧ポートに外部の油圧動作機器を接続し、該油圧動作機器に油圧を供給可能とする構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る移動電源車によれば、次のような効果が生じる。
(1)三角ゴムクローラではなく、車両の前後にかけて掛け渡されたゴムクローラで移動可能な構成としたので、走行面との接地面積が大きく、単位面積当たりの接地圧は小さく、車両全体の重心が低く、地震、風水害、原子力災害等により瓦礫、流木等が散乱した被災地、悪路、傾斜地のような苛酷な電力需要の環境においても、走破性に優れ、移動時及び電源供給作業時に、転倒しにくく安定性が良い。
【0025】
(2)荷台の横幅方向の両側に、それぞれエンジン、発電機、ラジエータ、マフラ、ケーブルリール装置、燃料タンク、発電装置制御盤等、電源装置を構成する機器を分散配置したので、荷台のスペース利用上、効率的に配置できるだけでなく、荷台上のスペースを重量的にバランス良く、移動時及び電源供給作業時に転倒しにくく安定性が良い。
【0026】
(3)電源ケーブル(電力供給用のケーブル)を収納するケーブルリールを車両から外側に引き出せるような構成としたので、電源供給の作業がし易い。
(4)燃料タンクの供給口を、従来より長く斜め上方に延びた構成としたので、被災地における悪路や傾斜地等の電力需要の環境でも、給油口の蓋のガスを抜き孔より燃料が漏れ出すようなことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る移動電源車の実施例(パッケージを外した状態)を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は前方移動状態の右側面図である。
【
図2】上記実施例(パッケージを外した状態)を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は前方から見た正面図である。
【
図3】上記実施例(パッケージを外した状態)を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は前方移動状態の左側面図である。
【
図4】上記実施例について、パッケージの扉を開いた状態を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は前方移動状態の左側面図である。
【
図5】上記実施例について、パッケージの扉を開きリール台床を側方に引出した状態を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は前方移動状態の左側面図である。
【
図6】上記実施例のケーブルリール装置を、分かり易く説明する図であり、(a)はリール台床が車両内にある状態を示す平面図であり、(b)は(a)のB-B断面図であり、(c)は(a)のC-C断面図であり、(d)はリール台床が車両から側方に移動した状態を示し、(e)はリール台床案内レールに転動輪を設けた要部を示し、(f)はケーブルリール装置に必要な電動機、スイッチ等の回路の一例を示す図である。
【
図7】車両が傾斜した際に、燃料タンクの給油口の長さと漏れの関係を模式的説明する図であり、(a)、(b)は従来の給油口についてであり、(c)、(d)は本発明に係る移動電源車の給油口についてである。
【
図8】上記実施例であって変形例のケーブルリール装置を備えた構成について、パッケージの扉を開いた状態を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は前方移動状態の左側面図である。
【
図9】変形例のケーブルリール装置を、分かり易く説明する図であり、(a)はリール台床及び水平移動枠が車両から側方に移動した状態を示し、(b)は水平移動枠に対して昇降移動枠が下降した状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る移動電源車を実施するための形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
【実施例0029】
本発明に係る移動電源車の実施例を
図1~
図9を参照して、以下説明する。この実施例の説明では、移動電源車の前後方向(進行方向)に対して直交する方向を横幅方向と言い、進行方向に向かって左右の側を左右側という。
【0030】
全体構成:
本発明に係る移動電源車1は、
図1~
図3に示すように、ゴムクローラ6で移動する車両2と、電源装置3と、を備えている。
【0031】
ゴムクローラ6は、前記特許文献6に示すような三角ゴムクローラではなく、
図1に示すように、前後の駆動車輪7と遊動車輪8に掛け渡されたエンドレスのゴム帯9を備えたゴムクローラである。このゴムクローラ6は、駆動車輪7と遊動車輪8間に設けられた複数の案内輪10を備えている。
【0032】
ゴムクローラ6は駆動車輪7で回動され、駆動車輪7は、本実施例では、車両走行用エンジンで作動する油圧モータによって駆動される構成を採用しているが、このようにゴムクローラを車両走行用エンジンで回動する構成自体は周知であり、本発明でも周知の構成を採用している。
【0033】
本発明に係る移動電源車1の走行手段として、通常のトラックや三角ゴムクローラではなく、上記構成のゴムクローラ6を備えた理由は、地震、風水害、原子力災害等により瓦礫、流木等が散乱した被災地、悪路、傾斜地のような苛酷な電力需要の環境においても、走行面に散在する物体、走行面の凹凸や傾斜等に乗り上げたり、引っ掛かりして、頓挫することなく動き廻れるようにするためである。
【0034】
搭載する機器等の配置構成:
車両2は、
図1~
図3に示すように、その前部左側に運転操作部13が、前部右側に車両駆動装置14が、それぞれ設けられている。運転操作部13は、作業者が車両2の移動及び電源装置3等の操作を行う操作室を有する。
【0035】
車両駆動装置14は、ディーゼルエンジン等の車両走行用エンジンと走行駆動用油圧装置を備えている。走行駆動用油圧装置は、車両走行用エンジンによって作動される油圧ポンプの油圧によって、油圧モータを回転し、その回転力により駆動車輪7を回動させるもので、周知の構成を採用する。
【0036】
車両2は、運転操作部13及び車両駆動装置14の後側に荷台17が設けられている。この荷台17の上に、電源装置3の構成機器を設置するための共通台床18が設けられ、共通台床18の上に、パッケージ19(
図4、
図5、
図8参照)と、パッケージ19で覆われるように電源装置3(
図1~
図3参照)が配置されている。
【0037】
パッケージ19は、全体的に矩形でボックス状であり、その側壁には、開閉可能な扉20が設けられている。パッケージ19は、風雨から電源装置3を保護するとともに、防音手段として機能する。
【0038】
電源装置3は、その構成機器として、
図1~
図3に示すように、発電用エンジンへの給気用ボックス25、バッテリ26、発電用エンジン27、発電機28、ラジエータ29、マフラ30、ケーブルリール装置33、燃料タンク34、発電装置制御盤35等備えている。発電用エンジン27としては、本実施例では、ディーゼルエンジンが使用される。
【0039】
本発明の移動電源車1の特徴は、これら電源装置3の構成機器を、荷台17の横幅方向において中央部ではなく、左右両側に分散して配置し、荷台17の略全面を使用し、しかも重量的にも左右略均等となるように、共通台床18上に配置した構成である。
【0040】
具体的には、
図1~
図3に示すように、荷台17の右側に、発電用エンジン27への給気用ボックス25、バッテリ26、発電用エンジン27、発電機28、ラジエータ29、マフラ30等が配置されており、荷台17の左側に、ケーブルリール装置33、燃料タンク34、発電装置制御盤35等が配置されている。
【0041】
そして、横幅方向の中央に沿って、仕切り板36が起立して設けられている。仕切り板36は、例えば鉄板等の材料から形成されており、発電用エンジン27及び発電機28等から生じる熱及び騒音の断熱(遮熱)及び遮音のために設けられている。
【0042】
ケーブルリール装置:
ケーブルリール装置33は、
図2、
図3等に示すように、電源ケーブルを巻装するケーブルリール40と、ケーブルリール40を固定して載置するリール台床41と、リール台床41を車両2の側方に移動して引出すリール台床移動器38(
図5、6参照)と、を少なくとも備えている。
【0043】
ケーブルリール装置33は通常(電源装置3を利用しない非使用時)は、電源ケーブルをケーブルリール40に巻き取って巻装し、使用時には、リール台床41をそのまま(
図4参照)、或いは必要に応じて、後記するリール台床移動器38によって移動電源車1の側方外側に引出し(
図5、6参照)、ケーブルリール40から電源ケーブルを引き出して使用可能とする構成である。
【0044】
ケーブルリール40は、電源ケーブルを巻取り、引出し可能に巻装するリール(ドラム)であり、その回転軸の一端にクランク状のハンドル(図示せず)を設け、これを手動で回転する手動式の構成でも良い。
【0045】
本実施例では、ケーブルリール40は、
図5、
図6に示すように、スイッチボックス42に設けられたリールスイッチ44を操作して、リール用電動機43で正転及び逆転操作をすることによって、電源ケーブルを取り出し及び巻き込み動作が可能な構成である。
【0046】
リール台床移動器38は、
図5に示すように、リール台床41を移動電源車1の共通台床18上から移動電源車1の側方に移動し出没可能とするものであり、例えば、机から引出しがスライドして引き出す周知の移動手段と同様の構成を利用する。
【0047】
即ち、リール台床移動器38は、
図6(a)~(d)に示すように、リール台床41を側方に移動して案内するリール台床案内レール45を備えている。そして、リール台床41の両側面に形成された溝内に、リール台床案内レール45の両内側面に形成された凸条(
図6(b)参照)又は転動輪53(
図6(e)参照)を嵌合させた構成とし、スライド可能とするものである。
【0048】
このようなリール台床移動器38は、作業者がリール台床41を手で移動電源車1の側方に引き出すような手動式の構成としてもよいが、スイッチボックス42にリール台床移動スイッチ46(
図6(f)参照)を設け、このスイッチで操作されるリール台床用電動機47でリール台床41を移動可能な構成としてもよい。
【0049】
電動式のリール台床移動器38の一例としては、
図6(c)、(d)に示すように、リール台床41の一部(例えば、リール台床41の底部等)にリール台床41の移動方向(車両2の横幅方向)に延びるラック48を設けるとともに、共通台床18上にリール台床用電動機47で回転するピニオン49を設け、両者をかみ合う構成とする。
【0050】
そして、
図6(f)に示すように、リール台床移動スイッチ46を操作して、リール台床用電動機47を回転し、ラック48とピニオン49を介して、リール台床41をリール台床案内レール45に沿って、車両2の側方に移動する構成とした。
【0051】
燃料の給油口:
発電用エンジン27に必要な燃料(軽油)の燃料タンク34には、
図2、
図3に示すように燃料の給油口(本明細書では、単に「給油口」ともいう。)50が設けられている。給油口50は、筒状であり、燃料タンク34の上面から、車両2の左側方の斜め上方に向けて延びるように形成されている。給油口50の上端には、給油蓋51(
図7(c)、(d)参照)が開閉可能に装着されており、給油蓋51には、ガス抜き孔(図示せず)が形成されている。
【0052】
本発明に係る移動電源車1は、地震、風水害、原子力災害等により瓦礫、流木等が散乱した被災地、悪路、傾斜地のような苛酷な電力需要の環境において、走行し、給電作業に使用されることが想定される。このような環境下では、走行中に車両2が傾いたりバウンドしたりすると、給油口50の給油蓋51のガス抜き孔からの漏れ出すこともある。
【0053】
このような漏れ出しを防止するために、給油口50の長さL(
図7(c)、(d)参照)は、従来の給油口52(
図7(a)、(b)参照)の長さL’に比較して長くした。即ち、移動電源車1では、給油口50の長さLは、車両2が傾いても給油蓋51のガス抜き孔から漏れ出ない程度に長い構成とした。
【0054】
ちなみに、本発明者等が試作した移動電源車では、給油口50の長さLは、46cmとし、タンク平面に対して45°斜め上方に伸ばす構成とした。従来は、給油口52の長さL’は、略5cm程度であるが、この点を考慮すると、本発明の給油口50の長さLは、従来の給油口52の略9倍以上とする。
【0055】
しかしながら、このような給油口50の長さLは、一律に決められる値ではない。即ち、給油口50の長さLは、移動電源車1の規模、燃料タンク34の取付位置、需要地の環境(作業場所の状況)等のようないろいろな設計条件を考慮して、給油蓋51のガス抜き孔からの漏れ出しを防止するように決める必要がある。
【0056】
本発明に係る移動電源車1において採用した給油口50の長さLについての基本的な技術的思想を、
図7を参照して説明する。
図7(a)、(b)に、従来の車両の燃料タンク34、燃料タンク34から45°上方に延びた長さL’の給油口52を模式的に示し、
図7(c)、(d)に、移動電源車1の燃料タンク34と、燃料タンク34から45°上方に延びた長さLの給油口50を模式的に示す。
【0057】
従来の車両では、
図7(a)に示すように、車両が傾かずに燃料タンク34が水平状態にあるときは、満タン状態に充填された燃料54の液位(液位面)hは、給油口52の長さL’が短くても給油蓋51の上端より下方にあるので、基本的には燃料54は給油蓋51のガス抜き孔から漏れ出ない。しかし、
図7(b)に示すように、車両が、ある程度の角度θまで傾くと、燃料54の液位hは、給油口52の上端より上方となるので給油蓋51のガス抜き孔から漏れ出てしまう。
【0058】
本発明に係る移動電源車1では、
図7(c)に示すように、車両2が傾かずに燃料タンク34が水平状態にあるときは、従来の車両と同様に基本的には燃料54は給油蓋51のガス抜き孔から漏れでない。
図7(d)に示すように、車両2が、ある程度の角度θまで傾いても、燃料タンク34内の燃料54の液位hは、給油口50の上端より下方となるので漏れ出ない。
【0059】
そこで、本発明に係る移動電源車1では、車両2が傾いても給油蓋51のガス抜き孔から漏れ出ないようにするためには、燃料タンク34の給油口50は、燃料タンク34の上面から水平面で斜め上方に延びるように設けられており、しかも給油口50の長さLは、給油口50の上端が、車両2が転倒角(ある程度の角度θを転倒角とした)の姿勢に傾いた時、燃料タンク34内に満タンで充填された燃料54の液位hより上方に位置する長さに形成されている構成とする。
【0060】
ここで、車両の傾きの角度θを転倒角とした理由は、車両2が転倒角θを超えない範囲内で傾くことは、通常に生じ得る姿勢であり、そのような姿勢では、燃料タンク34内の燃料54の液位hは、給油口50の上端より下方となり、漏れ出ないようにするためである。
【0061】
なお、給油口50の長さは、長くしても、車両2が悪路で異常にバウンドしたりして、燃料54が燃料タンク34内で跳ねたり、揺れたりしてガス抜き孔から跳ね出す場合も皆無ではないが、一応の目安としては、上記基本的な技術的思想に基づいて決められる長さのとおりである。
【0062】
移動電源車1は、地震、風水害、原子力災害等により瓦礫、流木等が散乱した被災地の環境下で使用することが想定される。このような環境下では、走路の確保や環境整理のために、瓦礫、流木等を切断したり破砕し、移動するために油圧動作機器(図示はしないが、例えば、油圧カッター、ウィンチ等)が使用される。
【0063】
移動電源車1は、車両走行用エンジンで駆動される油圧ポンプと、該油圧ポンプで発生した油圧で作動しゴムクローラ6の駆動車輪7を回転する油圧モータと、油圧ポンプと油圧モータの間で作動油を環流させる油圧回路と、を備えているが、油圧ポンプによる油圧を油圧源として、上記油圧動作機器へ油圧を供給する油圧ポートを、図示はしないが、例えば車両2の後部に付設する構成としてもよい。
【0064】
本実施例の移動電源車1にそのような油圧ポートを付設する場合は、例えば、走行駆動用油圧装置の走行用油圧モータを作動させる油圧路の一部に、切り換え弁を設け、この分岐路に導入される油圧を、油圧動作機器を駆動する油圧モータ又は油圧ピストン等の駆動力として利用する構成とする。
【0065】
ケーブルリール装置の変形例:
ケーブルリール40を車両2の側方へ移動して、電源ケーブルを引出しや巻取る作業等をする際に、前記したような苛酷な電力需要の環境では、傾斜地で行う場合や、緊急を要する場合等があり、そのような場合には、ケーブルリール40は、作業者が作業しやすい高さにあることが望ましい。
【0066】
そこで、
図8に示す変形例であるケーブルリール装置55は、ケーブルリール40をリール台床41とともに車両2の側方に取り出し、さらに昇降可能とするものであり、上記実施例のケーブルリール装置33において、リール台床41を車両2の側方に移動するリール台床移動器38の構成のみを変更したものである。
【0067】
この変更したリール台床移動器56は、
図9(a)、(b)に示すように、車両2の共通台床18上において側方に延びるリール台床案内レール57と、リール台床案内レール57によって車両の側方に出入り可能に移動する水平移動枠58と、水平移動枠58に対して上下に昇降する昇降移動枠59と、を備えている。昇降移動枠59の下端にリール台床41が取り付けられている。
【0068】
水平移動枠58の底部に設けたラック48と、共通台床18に設けたピニンオン49を噛み合わせ、ピニンオン49を水平移動枠用電動機(図示せず)で回動することによって、水平移動枠58をリール台床案内レール57に沿って、
図9(a)、(b)に示すように、車両2の側方に移動可能な構成とする。
【0069】
図示はしないが、水平移動枠用電動機は、上記
図5、
図6に示すリール台床移動器38と同様に、スイッチボックス42に設けたリール台床41の水平移動スイッチ(図示せず)によって操作可能とする。
【0070】
昇降移動枠59は、
図9(a)、(b)に示すように、水平移動枠58の垂直枠62の内側に沿って昇降移動可能な構成とする。具体的には、前記水平移動枠58と共通台床18間に設けたラックとピニオンから成る伝動機構(スイッチボックスに設けたスイッチで操作される電動機で伝動を行う)と同じような伝動機構によって、昇降移動枠59を、水平移動枠58の垂直枠62に対して移動可能とする構成としてもよい。
【0071】
或いは、図示はしないが、昇降移動枠59と垂直枠62の間に、油圧シリンダを設け、この油圧シリンダを、例えば、電動機で作動する油圧ポンプによって動作させて、昇降移動枠59を垂直枠62に対して昇降させる構成としてもよい。
【0072】
(作用)
以上の構成から成る本発明に係る移動電源車1の作用を、以下説明する。移動電源車1は、地震、風水害、原子力災害等により瓦礫、流木等が散乱した被災地、悪路、傾斜地のような苛酷な電力需要の環境(以下、単に「苛酷な電力需要の環境」とも言う)において、ゴムクローラ6により走行し電力の需要箇所(例えば、損傷した原子力施設、電力供給が遮断された病院等の施設)に移動する。
【0073】
そして、移動電源車1は、需要箇所において、
図4に示すようにパッケージ19の扉20を開き、必要に応じて
図5に示すようにリール台床41を車両2の側方に移動し、スイッチボックス42に設けられたリールスイッチ44、リール用電動機43を操作して、ケーブルリール40を巻き戻すように回転させ、電源ケーブルを引出し、需要箇所の電力被供給端子に接続し、電力供給を行う。
【0074】
移動電源車1のゴムクローラ6は、前後の駆動車輪7と遊動車輪8に掛け渡されたエンドレスのゴム帯9を備えた構成であるので、通常のトラックのタイヤ及び三角ゴムクローラに比較して、走行面との接触面積が大きく、安定した走行が可能となる。そして、単位面積当たりの接地圧が小さいので、ゴムクローラ6に対する負荷が小さくなり、耐久性が良い。
【0075】
三角ゴムクローラは、車軸に取り付けられた駆動輪と駆動輪の下方に設けられた転輪に掛け渡されたゴム帯が、その頂点が上方に位置した三角形状となり、その結果、車体がどうしても床高となる。
【0076】
これに比較して、本発明に係る移動電源車1のゴムクローラ6は、前後の駆動車輪7と遊動車輪8に掛け渡され、駆動車輪7と遊動車輪8の間の複数の案内輪10で案内されるエンドレスのゴム帯9を備えた構成であるので、車体は三角ゴムクローラに比較して床高とならない。
【0077】
移動電源車1は、前記苛酷な電力需要の環境に出動することが多い。そのような苛酷な電力需要の環境では、走行表面自体が凹凸や傾斜している場合だけでなく、瓦礫、流木、岩石等の突起物が存在する場合が想定される。
【0078】
通常のトラックや三角ゴムクローラの車両は、苛酷な電力需要の環境では、移動する際に、車輪や三角ゴムクローラが、走行面の凹部に嵌り込んだり、或いは、車両2の底部が岩石等の突起物に乗り上げて、移動不可能となり頓挫したり、車両2の底部を破損したりする可能性がある。
【0079】
しかしながら、移動電源車1のような構成のゴムクローラ6で移動する場合は、ゴムクローラ6が、凹部に嵌り込むような可能性は少なく、また、仮に岩石等の突起物上を乗り上げてもゴムクローラ6自体は回動しているので、移動不可能となりにくく、頓挫したり、車両2の底部を破損しにくい。
【0080】
従来、移動電源車は、通常のトラック或いは三角ゴムクローラの車両を利用するという発想しかなかったが、上記のとおり苛酷な電力需要の環境では、従来の移動電源車では、その移動には限界があった。
【0081】
この点、従来、移動電源車に利用するという発想はなかったゴムクローラ6を使用した本発明に係る移動電源車1によれば、上記のとおり、苛酷な電力需要の環境でもきわめて安定かつ強力な移動が可能となる。
【0082】
ところで、前記したとおり、移動電源車1は、電源装置3の構成機器を、荷台17の横幅方向において、中央部に前後方向に配列することなく、左右両側にそれぞれ配置し、荷台17の略全面を使用し、しかも左右両側に関して重量的にも略左右略均等となるように配置する構成を採用した。
【0083】
このような構成とすると、移動電源車1は、電源装置3の構成機器について、従来の移動電源車のように横幅方向中央部に前後に配列する構成に比較し、荷台17の略全面をより有効に活用でき、荷台17の両側部に生じやすいデッドスペースをなくすことが可能となった。
【0084】
そして、移動電源車1は、電源装置3の構成機器を前後方向に配列すべき荷台17の縦方向の長さを短くできるので、荷台17の縦幅に対して横幅が大きくなり、横方向への転倒の危険性は少なくなり、走行の安定性は向上する。
【0085】
より詳細に説明すると、荷台17の縦幅に対して横幅が大きくなると、車両2の横方向の転倒角を大きくすることが可能となり、横方向には転倒しにくくなる。ここで、「転倒角」とは、車両2が転倒する閾値であり、車両2がその前後に延びる中心軸を中心に横方向に傾く(ローリングする)場合、該中心軸から垂直上方に延びる線に対する車両2の傾斜角度であって、それ以上の角度に傾くと車両2が転倒する角度を言う。
【0086】
このように、本発明に係る移動電源車1は、荷台17を、その縦幅に対して横幅が大きくすることが可能となるので、横方向には転倒しにくくなるが、これは、ゴムクローラ6を採用することで、三角ゴムクローラ等に比較して床高とならないという構成と相乗的に機能し、苛酷な電力需要の環境において生じ易い移動電源車1の横方向の傾きに対しても転倒しにくくなり、安定した移動ないし作業が可能となる。
【0087】
苛酷な電力需要の環境における給電作業では、前記したとおりパッケージ19の扉20を開き、ケーブルリール40から電源ケーブルを引き出して作業を行うが、
図4に示すように、ケーブルリール40が車両2内で荷台17上にとどまっていると、作業がしにくく、危険な場合もある。そこで、必要に応じて、
図5に示すように、ケーブルリール40を、荷台17からリール台床41ごと側方に引き出すと、作業がし易くなる。
【0088】
パッケージ19の扉20を開き、スイッチボックス42に設けたリール台床移動スイッチ45(
図6(f)参照)を操作し、リール台床用電動機47を作動させると、リール台床41は、
図5に示すように、リール台床案内レール45に沿って車両2の側方に移動して引き出すことができる。
【0089】
なお、変形例のケーブルリール装置55の場合はスイッチボックス42に設けたリール台床41の水平移動スイッチ(図示せず)を操作すると、水平移動枠58が車両2の側方に移動する。
【0090】
さらにスイッチボックス42に設けた昇降スイッチ(図示せず)を操作すると、昇降移動枠59が水平移動枠58と共通台床18間に設けたラックとピニオンから成る伝動機構(図示せず)によって下方に移動し、作業者が作業しやすい高さにリール台床41を調整することが可能となる
【0091】
発電用エンジン27に必要な燃料54の燃料タンク34において、その給油口50は、
図2、3、7(c)、(d)に示すように、車両2が、転倒角程度に傾いても給油蓋51のガス抜き孔から漏れ出ない程度の長さLとし、斜め上方向(例えば、試作車では、給油口50の長さLは、約46cmで燃料タンク34平面に対して45°方向)に伸ばす構成を採用した。
【0092】
このような構成とすることにより、悪路走行時や傾斜地走行時に生じ易い、給油蓋51のガス抜き孔からの燃料54の漏れ出しを防止可能とした。本発明に係る移動電源車1では、このようなきめ細かい構成を採用することで、苛酷な電力需要の環境下でも、安全な運転、作業が可能となる。
【0093】
また、本発明に係る移動電源車1は、油圧を駆動源とする油圧動作機器に油圧を供給する油圧ポートを備えているので、上記苛酷な電力需要の環境下で、走路の確保又は環境整理のために、瓦礫、流木や流木を破砕、切断することが可能である。
【0094】
以上、本発明に係る移動電源車を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
本発明に係る移動電源車は、上記のような構成であるから地震、風水害、原子力災害等により瓦礫、流木等が散乱した被災地、悪路、傾斜地のような苛酷な電力需要の環境における電力需要施設等への緊急電源としての利用が最適である。