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特開2022-188630温調装置、基板処理装置、物品の製造方法、温調方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188630
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】温調装置、基板処理装置、物品の製造方法、温調方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20221214BHJP
   G05D 23/19 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
G05D23/19 G
G05D23/19 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096822
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】大田 崇文
【テーマコード(参考)】
2H197
5H323
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197CA08
2H197CD02
2H197CD12
2H197CD13
2H197DA10
2H197DB17
2H197DB20
2H197DC03
2H197DC04
2H197HA03
2H197HA05
2H197HA10
5H323AA05
5H323BB03
5H323CA02
5H323DA01
5H323DA02
5H323DA03
5H323DA04
5H323JJ02
5H323JJ06
5H323KK05
5H323NN02
(57)【要約】
【課題】 より安定的に物体の温度を調整することができる温調装置を提供する。
【解決手段】 物体の温度を調整する温調装置であって、温調装置を稼働するために供給されるエネルギー又は前記エネルギーを供給するための媒体である、複数の用力の供給を受けて物体の温度を調整する温調部と、複数の用力のそれぞれが正常に供給されているかを判定して、複数の用力のうち少なくとも1つの用力が正常に供給されていないと判定された場合に、物体が配置された空間の気温と正常に供給されていると判定された用力とを用いて温調部を制御する制御部と、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の温度を調整する温調装置であって、
前記温調装置を稼働するために供給されるエネルギー又は前記エネルギーを供給するための媒体である、複数の用力の供給を受けて前記物体の温度を調整する温調部と、
前記複数の用力のそれぞれが正常に供給されているかを判定して、前記複数の用力のうち少なくとも1つの用力が正常に供給されていないと判定された場合に、前記物体が配置された空間の気温と正常に供給されていると判定された用力とを用いて前記温調部を制御する制御部と、を有する
ことを特徴とした温調装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記物体の温度が所定の範囲内に収まるように前記温調部を制御する
ことを特徴とした請求項1に記載の温調装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記空間の気温が所定の範囲より高い場合に前記温調部により前記物体を冷却するように制御し、前記空間の気温が前記所定の範囲より低い場合に前記温調部により前記物体を加熱するように制御する
ことを特徴とした請求項1又は2に記載の温調装置。
【請求項4】
供給される前記複数の用力の状態を検出する検出部を有し、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記用力の状態に基づき、前記複数の用力のそれぞれが正常に供給されているかを判定する
ことを特徴とした請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温調装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記温調部により用いられる温調媒体の目標温度、前記温調部の制御における制御偏差の許容範囲、前記温調部の制御パラメータ、及び前記温調媒体の目標流量のうち少なくとも1つを前記空間の気温に応じて変更することにより前記温調部を制御する
ことを特徴とした請求項1乃至4のいずれか1項に記載の温調装置。
【請求項6】
前記温調部は、前記複数の用力に含まれる第1用力の供給を受けて前記複数の用力に含まれる第2用力の供給を受けないで前記物体の温度を調整する第1温調部と、
前記第1用力及び前記第2用力の供給を受けて前記物体の温度を調整する第2温調部と、を含み、
前記制御部は、前記第1用力の供給が正常でありかつ前記第2用力の供給が正常でない場合に、前記第1温調部により前記物体の温度を調整させ前記第2温調部を停止させるように前記第1温調部及び前記第2温調部を制御する
ことを特徴とした請求項1乃至5のいずれか1項に記載の温調装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記空間の気温が所定の範囲よりも高い場合に前記第1温調部により前記物体を冷却して、前記空間の気温が所定の範囲よりも低い場合に前記第1温調部により前記物体を加熱するように制御する
ことを特徴とした請求項6に記載の温調装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1用力及び前記第2用力の供給が正常である場合に、前記第1温調部及び前記第2温調部により前記物体の温度を調整させるように前記第1温調部及び前記第2温調部を制御する
ことを特徴とした請求項6又は7に記載の温調装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1用力の供給が正常でない場合に、前記第1温調部及び前記第2温調部を停止させるように前記第1温調部及び前記第2温調部を制御する
ことを特徴とした請求項6乃至8のいずれか1項に記載の温調装置。
【請求項10】
基板に処理する基板処理装置であって、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の温調装置と、
前記基板を処理するためのユニットと、を有し、
前記温調装置により前記ユニットの温度を調整する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の基板処理装置を用いて基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、を有する
ことを特徴とした物品の製造方法。
【請求項12】
物体の温度を調整する温調方法であって、
温調装置を稼働するために供給されるエネルギー又は前記エネルギーを供給するための媒体である、複数の用力の供給を受けて前記物体の温度を調整する温調工程を有し、
前記温調工程では、前記複数の用力のそれぞれが正常に供給されているかを判定して、前記複数の用力のうち少なくとも1つの用力が正常に供給されていないと判定された場合に、前記物体が配置された空間の気温と正常に供給されていると判定された用力とを用いて前記温度を調整する
ことを特徴とした温調方法。
【請求項13】
請求項12に記載の温調方法の各工程を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調装置、基板処理装置、物品の製造方法、温調方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの微細化の要求が進み、基板上に微細なパターンを高精度に形成する必要がある。そのような基板を処理する基板処理装置は、熱の影響により各ユニットの部品や部材が変形したりずれたりすることにより、基板に形成されるパターンの精度に影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
そこで、基板処理装置のユニットの温度を管理するために、基板処理装置には、基板処理装置のユニットの温度を調整するための温調装置が備えられている。
【0004】
また、温調装置は、設置されている工場の用力設備から用力が供給されて稼働する。ここで、用力とは、温調装置を稼働するために供給されるエネルギー又はエネルギーを供給するための媒体であり、例えば、電力(電気)、ガスなどの気体、冷却水など液体などである。
【0005】
特許文献1では、露光装置を稼動せずに保管する間も投影光学系の光学素子等の高精度部位の温調を継続して装置性能の劣化を低減することを課題とする。また、投影光学系の光学素子の温調のみを行なう部分温調部と、チャンバ内全体の温調を行なうメイン温調部を有する温調設備が開示されている。この温調設備によれば、露光台が稼動停止の状態であって、例えば、チャンバを設置するクリーンルームの温調が、メンテナンス等のために停止したときは、部分温調部のみを作動させて投影光学系の光学素子の温度管理を継続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-7586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、メイン温調部を駆動する装置電源の停止時等において、投影光学系の光学素子の温度管理を継続できるように部分温調部の温調器と送風機の電源としてバッテリを設ける形態が開示されている。
【0008】
しかし、例えば、災害の発生時などにおいては、長期間にわたり電力の供給が停止することが想定される。この場合、バッテリの容量の制限により温調設備を稼働することが困難になり得る。また、電力の供給が復旧しても電力以外の用力(ガス、冷却水など)の供給が停止することで温調設備を稼働できないこともありうる。
【0009】
そこで本発明は、より安定的に物体の温度を調整することができる温調装置、基板処理装置、物品の製造方法、温調方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一側面としての温調装置は、物体の温度を調整する温調装置であって、前記温調装置を稼働するために供給されるエネルギー又は前記エネルギーを供給するための媒体である、複数の用力の供給を受けて前記物体の温度を調整する温調部と、前記複数の用力のそれぞれが正常に供給されているかを判定して、前記複数の用力のうち少なくとも1つの用力が正常に供給されていないと判定された場合に、前記物体が配置された空間の気温と正常に供給されていると判定された用力とを用いて前記温調部を制御する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より安定的に物体の温度を調整することができる温調装置、基板処理装置、物品の製造方法、温調方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】基板処理装置としての露光装置の構成を示した図である。
図2】情報処理装置を示した図である。
図3】温調部の詳細を示した図である。
図4】露光装置の詳細を示した図である。
図5】第1実施形態に係る温調装置における温調モードの決定処理を示したフローチャートである。
図6】第1実施形態に係る露光装置の温度と外部の気温との関係を示す図である。
図7】温調媒体の目標温度と外部の気温との関係を示す図である。
図8】ユニット温度と外部の気温との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、基板処理装置としての露光装置の構成を示す図である。本実施形態では、基板処理装置の一例として、基板を露光する露光装置1について説明する。露光装置1は、露光装置1(露光部200)内のユニットの温度を調整する温調装置100、及び基板を露光するためのユニットを備えた露光部200を有する。また、図1では、温調装置100に用力を供給する用力設備10の構成の一部も合わせて示されている。ここで、用力とは、温調装置100を稼働するために供給されるエネルギー又はエネルギーを供給するための媒体であり、例えば、電力(電気)、気体、液体である。また、気体には、例えば、プロパンガスなどの可燃性の気体、圧縮空気などの圧力が調整された気体などがある。また、液体には、例えば、石油などの可燃性液体、温水、冷却水などの温度が調整された液体などがある。また、図1では温調装置100は露光部200と同じ筐体内に配置されているが、温調装置100が露光装置1とは別の筺体に配置され、露光装置1と温調装置100とが基板処理システムとして構成されてもよい。
【0015】
用力設備10は、露光装置1の外部の設備であり、例えば、露光装置1が設置される工場の設備である。また、用力設備10は、温調装置100の稼働に必要な用力を供給する第1供給装置20および第2供給装置30を有する。図1の例では、第1供給装置20はケーブル20aを介して温調装置100に電力を供給し、第2供給装置30は配管30aを介して温調装置100に冷却水を供給する。また、第2供給装置30は、回収配管(不図示)を介して温調装置100から冷却水を回収してもよい。ここで、温調装置100に用力を供給するための供給装置の数は2つに限られない。例えば、用力設備10は、温調装置100に他の用力(例えば、可燃性の気体や圧力が調整された気体など)を供給するための第3供給装置(不図示)を有してもよい。
【0016】
温調装置100は、制御部101、第1温調部102、及び第2温調部103を有する。図1の例では、制御部101、第1温調部102、及び第2温調部103には、第1供給装置20によりケーブル20aを介して電力が供給され、第2温調部103には、第2供給装置30により配管30aを介して冷却水が供給される。ここで、温調部の数は2つに限られない。例えば、第1供給装置20によりケーブル20aを介して電力が供給され、第2供給装置30により配管30aを介して冷却水が供給される第3供給装置(不図示)を有してもよい。
【0017】
また、温調装置100は、用力設備10から供給される用力の状態を検出するためのセンサ(検出部)を有する。例えば、温調装置100は、第1供給装置20から供給される電力の電圧を検出する電圧センサ20bを有する。また、例えば、温調装置100は、第2供給装置30から供給される冷却水の圧力を検出する圧力センサ30bを有する。また、温調装置100は、外部の気温を検出する温度センサ40を有する。ここで、外部の気温とは、温調を行う対象である露光装置1(物体)が配置されている空間(例えば、工場のクリーンルーム)の気温であり、他の設備(例えば、工場の温調設備)によって、所定の範囲の温度になるように維持されている。また、以下の説明では、温調装置100は露光部200と同じ筐体内に配置されているものとして説明するが、温調装置100は露光部200と同じ筐体内に配置されていてもよい。
【0018】
制御部101は、第1温調部102、及び第2温調部103を制御する。また、制御部101は、電圧センサ20b、圧力センサ30b、及び温度センサ40により検出された検出値を取得する。制御部101は、電圧センサ20b、圧力センサ30b、及び温度センサ40により検出された検出値に基づき、第1温調部102、及び第2温調部103を制御するための信号を生成する。制御部101は、第1温調部102、及び第2温調部103等と通信可能に接続されたコンピュータ(情報処理装置)によって実現されうるが、ボードコンピュータで構成されてもよいし、ボードコンピュータと兼用するように構成されてもよい。
【0019】
図2は、制御部101の一例として、情報処理装置を示した図である。処理部1011は、OS(Operating System)及び各種アプリケーションプログラムを実行する中央演算処理部(CPU)ある。また、処理部1011は中央演算処理部(CPU)にだけでなく、マイクロプロセッシングユニット(MPU)、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)等のプロセッサ又は回路の組合せから構成されてもよい。
【0020】
ROM1012は、処理部1011が実行するプログラムや演算用のパラメータのうちの固定的なデータを格納するメモリである。RAM1013は、処理部1011の作業領域やデータの一時記憶領域を提供するメモリである。ROM1012及びRAM1013は、バス1018を介して処理部1011に接続される。1015はマウス、キーボードなどを含む入力部、1016はCRTや液晶ディスプレイなどの表示部(出力部)である。また、入力部1015及び表示部1016は、タッチパネル等の一体型の装置であってもよい。また、入力部1015及び表示部1016は、情報処理装置とは別体の装置として構成されてもよい。1014は、ハードディスク、CD、DVD、メモリカード等の記憶部であり、各種プログラムや各種データ等を記憶する。入力部1015、表示部1016、及び記憶部1014はそれぞれ、不図示のインタフェースを介してバス1018に接続されている。また、ネットワークを介して通信を行うための通信部1017も、バス1018に接続されている。通信部1017は、例えばLANに接続してTCP/IP等の通信プロトコルによるデータ通信を行い、他の通信部と相互に通信を行う場合に使用される。通信部1017は、データの送信部および受信部として機能する。
【0021】
次に、第1温調部102、及び第2温調部103について説明する。第1温調部102、及び第2温調部103は、露光部200の内部、及び露光部200に含まれるユニット201乃至203の温度の調整をするための温調媒体を供給する。温調媒体は、気体、及び液体のうち少なくとも一方を含み、例えば、空気、水、不凍液、絶縁性液体等を含み得る。また、温調媒体は、気体と液体が混在している気液混合状態で供給されうる。
【0022】
図3は、温調部の詳細を示した図である。また、図3(a)は第1温調部102を示し、図3(b)は第2温調部103を示している。なお、以降の説明では、第1温調部102、及び第2温調部103を単に温調部と称することがある。また、図3では、露光部200については簡略化して図示されている。
【0023】
図3(a)に示す通り、第1温調部102は、温調制御部301、圧送部302、冷却部303、及び加熱部304を有する。また、第1温調部102は、ケーブル20aを介して供給された電力を用いて動作する。
【0024】
温調制御部301は、第1温調部102の各部を制御して、露光部200へ温調媒体を供給し、露光部200から温調媒体を回収する。また、温調制御部301は、露光部200から回収された温調媒体を圧送部302に加圧させて冷却部303に供給するように制御する。また、温調制御部301は温度センサ303aの検出結果に基づき冷却操作量を算出し、冷却部303に冷却操作量を出力する。
【0025】
冷却部303は、温調制御部301から出力された冷却操作量に応じて、温調媒体から熱を回収する。冷却部303により回収された熱は、例えば、空気などを介して、温調装置100の外部に排出される。冷却部303で冷却された温調媒体は加熱部304に供給される。
【0026】
温調制御部301は温度センサ304aの検出結果に基づき加熱操作量を算出し、加熱部304に加熱操作量を出力する。加熱部304は、温調制御部301から出力された加熱操作量に応じて、温調媒体に熱を印加して、加熱部304により温調された温調媒体は露光部200へ供給される。
【0027】
ここで、圧送部302は温調媒体が空気などの気体の場合は送風機、水などの液体の場合はポンプである。冷却部303は、冷凍機、及びペルチェチラーのうち少なくとも1つを含む。また、加熱部304は、ポンプ、送風機、温水コイル、ヒータ、及びペルチェチラーのうち少なくとも1つを含む。また、図3(a)における圧送部302、冷却部303、及び加熱部304の接続順番は一例であり、図3(a)の例に限られない。
【0028】
また、図3(b)に示す通り、第2温調部103は、温調制御部301、圧送部302、冷却部305、及び加熱部304を有する。また、第1温調部102には、ケーブル20aを介して電力、及び配管30aを介して冷却水が供給される。また、第2温調部103は、ケーブル20aを介して供給された電力及び配管30aを介して供給された冷却水を用いて動作する。ここで、第2温調部103において、第1温調部102と異なる構成は冷却部305である。その他の構成については、第1温調部102と同様であるため説明を省略する。
【0029】
冷却部305は、温調制御部301から出力された冷却操作量に応じて、温調媒体から熱を回収する。冷却部305により回収された熱は、冷却水を介して、温調装置100の外部に排出される。冷却部305で冷却された温調媒体は加熱部304に供給される。
【0030】
ここで、冷却部305は、冷凍機、水冷コイル、及びペルチェチラーのうち少なくとも1つを含む。また、図3(b)における圧送部302、冷却部305、及び加熱部304の接続順番は一例であり、図3(b)の例に限られない。
【0031】
上述の通り、第1温調部102が受ける用力の数は、第2温調部103が受ける用力の数よりも少ない。一般に、第1温調部102のように少ない数の用力(電力のみ)の供給を受けて温度を調整する温調部は、第2温調部103のように多い数の用力(電力と冷却水)の供給を受けて温度を調整する温調部よりも温度を調整する能力が低い。しかし、災害時などにおいて、一部の用力の供給が停止されている状況では、第1温調部102のようにより少ない数の用力で運転ができる温調部が運転を継続できる可能性が高いので有利になりうる。
【0032】
ここで、図1の説明に戻る。第1温調部102から供給された温調媒体(例えば、冷却水)は配管102aを介して、露光部200内のユニット202に供給される。ここで、第1温調部102は、他のユニット(ユニット201、ユニット203など)に温調媒体を供給してもよい。また、第2温調部103から供給された温調媒体(例えば、空気)は露光部200内の空間、ユニット201乃至203に供給される。供給された温調媒体と露光部200内の空間、ユニット201乃至203において熱交換が行われ、露光部200の内部の温度は所定の範囲内に制御される。また、熱交換後の温調媒体は不図示の配管を介して第1温調部102、及び第2温調部103に回収され、再度、温調された温調媒体が露光部200内の空間、ユニット201乃至203に供給される。
【0033】
ここで、露光部200について説明する。図4は、露光部200の詳細を示した図である。露光部200は、パターンが形成された原版に光を照射して、原版からの光で基板S上の複数の区画領域にパターンを投影する装置である。露光部200は、光源ユニット901、照明光学系902、マスクステージ201(ユニット201)、投影光学系202(ユニット202)、基板ステージ203(ユニット203)、基板チャック208を備えうる。
【0034】
光源ユニット901を出た光は照明光学系902を介してマスクステージ201に保持されたマスクMS(原版)を照明する。光源ユニット901の光源としては、例えば高圧水銀ランプやエキシマレーザなどがある。なお、光源がエキシマレーザの場合は、光源ユニット901は露光部200のチャンバ内部にあるとは限らず、外付けになっている構成もありうる。マスクMSには転写されるべきパターンが形成されている。マスクMSを照明した光は投影光学系202を通過して基板Sに達する。基板Sは、例えば、シリコンウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等である。
【0035】
マスクMS上のパターンが、投影光学系202を介して、基板S上に塗布された感光媒体(例えば、レジスト)に転写される。基板Sは基板チャック208に真空吸着などの手段により平らに矯正された状態で保持されている。基板チャック208は、基板Sを保持するための不図示の吸着手段を有する。吸着手段が基板Sを吸着する方式は、真空吸着方式、静電吸着方式、またはその他の吸着方式とすることができる。また、吸着手段は、基板チャック208において基板Sを保持する保持面に配置された、複数の吸着パッド(吸着部)を含み得る。また、基板チャック208は基板ステージ203に保持されている。基板ステージ203は移動可能に構成されている。そして、基板ステージ203を投影光学系202の光軸に対して垂直な面に沿って2次元的にステップ移動しながら、基板Sに複数の区画領域を繰り返し露光する。これはステップアンドリピート方式と呼ばれる露光方式である。なお、マスクステージ201と基板ステージ203を同期しながらスキャンして露光を行う、ステップアンドスキャン方式と呼ばれる露光方式もあり、露光部200にはそのような方式を適用することもできる。
【0036】
また、投影光学系202は、区画領域に対するパターンの相対的な形状を変形するパターン変形手段を備えうる。また、ステップアンドスキャン方式の露光部では、スキャン中のステージ軌道を制御する(例えば、スキャン方向と直交する方向にずらしながらスキャンする)ことにより、区画領域に対するパターンの相対的な形状を変形する軌道変更手段を備えうる。
【0037】
また、露光部200は、制御部209、アライメント計測部206、フォーカス計測部207を備えうる。制御部209は、露光部200の各部の動作および調整などを制御することで基板S上にパターンを形成する露光処理を制御する。制御部209の構成については、温調装置100の制御部101と同様であり、例えば、図3に示した情報処理装置から構成されうる。
【0038】
アライメント計測部206は、基板S上のアライメントマーク(不図示)の位置を計測する。制御部209は、アライメント計測部206からの信号を処理して、マスクMSと基板Sとの位置合せをするためのマスクステージ201、および基板ステージ203の少なくとも一方の駆動量を算出する。そして、制御部209は、マスクステージ201、および基板ステージ203の少なくとも一方を駆動して、マスクMSと基板Sとを位置合せして、露光を行うように制御する。さらに、前述したパターン変形手段や軌道変更手段により、区画領域に対するパターンの相対的な形状を合わせることにより、位置合せを行うように制御してもよい。アライメント計測部206により計測されるアライメントマークの位置に関する情報をアライメント計測値とする。アライメント計測値には、アライメントマークの位置、およびアライメントマーク間の相対位置が含まれうる。また、アライメント計測部206で撮像した画像をアライメント画像とする。
【0039】
フォーカス計測部207は、投影光学系202からの光の照射領域内における複数の計測点で基板Sの高さを計測する。フォーカス計測部207は、投影光学系202からの光の照射領域内における複数の計測点の配置が固定されており、複数の計測点の各々において基板Sの高さを計測するように構成されている。そして、フォーカス計測部207は、基板Sに光を斜入射させて反射された光を受光する斜入射型の光センサを複数含み、それら複数の光センサによって複数の計測点で基板Sの高さを計測する。これにより、制御部209は、複数の計測点での基板Sの高さの計測結果に基づいて、基板Sの高さ、および傾きの少なくとも一方を位置合せするための基板ステージ203の駆動量を算出する。そして、制御部209は、基板ステージ203を駆動して、基板Sの高さ、および傾きの少なくとも一方を位置合せして、露光を行うように制御する。また、フォーカス計測部207は、基板Sに光を斜入射させる光センサを含むように構成されているが、それに限られるものではなく、静電容量センサや圧力センサなどのセンサを含むように構成されてもよい。
【0040】
ここで、温調装置100と露光部200は、工場内のクリーンルームなど、所定の気温に制御された空間内に設置される。また、露光部200の内部の温度は、温調装置100による温度制御と空間内の気温制御によって、所定の精度(例えば、±0.05°)に収まるように温度が制御されている。また、露光部200内のユニットには、温度敏感度が高く厳密な温度管理が必要なユニット(例えば、投影光学系202など)がある。一方、温度敏感度が高く厳密な温度管理が必要なユニットと比較して相対的に温度敏感度がより低く、厳密な温度管理が必要でないユニット(例えば、マスクステージ201、基板ステージ203など)がある。
【0041】
つまり、露光部200の内部の温度管理は、温調装置100に必要な用力が供給され、外部の気温が制御されることを前提としている。そのため災害等が発生した場合など、温調装置100に必要な用力が供給されない場合には、温調装置100によって露光部200の内部の温度を所定の範囲内に収めることが困難となり得る。また、外部の気温が制御されずに外部の気温が所定の範囲を超える場合にも、露光部200の内部の温度を所定の範囲内に収めることが困難となり得る。
【0042】
ここで、外部の気温が所定の範囲を超える場合、露光装置1が配置された空間と露光部200の内部と間で熱量が移動する。例えば、露光装置1(露光部200)の筐体を介した熱伝導により、露光装置1が配置された空間と露光部200の内部との間で熱量が移動する。また、例えば、露光装置1(露光部200)の筐体を介して、赤外線等の電磁波が放出されることにより熱が伝わる輻射により、露光装置1が配置された空間と露光部200の内部との間で熱量が移動する。
【0043】
また、例えば、不図示の空調部により露光装置1が配置された空間から露光部200の内部に空気が供給される。また、不図示の空調部により露光部200の内部から露光装置1が配置された空間に空気が排出される。このように露光装置1が配置された空間と露光部200の内部との間で空気が循環することにより、露光装置1が配置された空間と露光部200の内部との間で熱量が移動する。
【0044】
このように、露光装置1が配置された空間と露光部200の内部との間で熱量が移動するので、外部の気温が所定の範囲を超える場合、露光部200の内部の温度を所定の範囲内に収めることが困難となり得る。
【0045】
また、露光部200の複数のユニットのうち、温度敏感度が高く厳密な温度管理が必要なユニット(例えば、投影光学系202)の温度が許容範囲内に収めることができない場合には、不可逆的な性能劣化の原因となり得る。ここで、不可逆的な性能劣化とは、例えば、投影光学系202の温度が許容範囲を超えて変化することにより、投影光学系202に含まれる光学素子に変形が生じて、温度が許容範囲内に収まっても光学素子の変形が元に戻らないことによる性能劣化がある。
【0046】
そこで、本実施形態に係る温調装置100は、外部の気温と温調装置100に正常に供給される用力と応じて、ユニットの温度が許容範囲内に収まるように温調部の制御を行う。
【0047】
図5は、本実施形態に係る温調装置100における温調モードの決定処理を示したフローチャートである。ステップ401において、制御部101は、第1温調部102及び第2温調部103に供給される用力である第1用力の状態が正常かを判定する。ここで、第1用力は、例えば、第1供給装置20により供給される電力であり、制御部101は、電圧センサ20bにより検出された電圧値に基づき、第1用力の状態が正常かを判定する。ここで、制御部101は、電圧センサ20bにより検出された電圧値が所定の範囲内に収まっているか否かに基づき、第1用力の状態が正常かを判定する。例えば、温調装置100の仕様において、定格電圧200V±10%で使用可能と定められているとする。このとき、電圧センサ20bにより検出された電圧値が180~220Vの範囲内に収まっている場合は正常と判定され、180~220Vの範囲外となっている場合は異常と判定される。
【0048】
ステップ401において、第1用力の状態が正常と判定された場合、制御部101は、処理をステップ402aに進める。
【0049】
ステップ402において、制御部101は、外部の気温について判定する。ステップ402aにおいて、制御部101は、温度センサ40により検出された温度に基づき、外部の気温が正常かを判定する。ここで、制御部101は、温度センサ40により検出された温度が所定の範囲内に収まっているか否かに基づき、外部の気温が正常かを判定する。ここで、例えば、温調装置100の外部の空間の気温が21~25℃の範囲で制御されている場合、温度センサ40により検出された温度が21~25℃の範囲内に収まっている場合は正常と判定され、21~25℃の範囲外となっている場合は異常と判定される。
【0050】
ステップ402aにおいて、外部の気温が正常と判定された場合、制御部101は、処理をステップ403aに進める。また、ステップ402aにおいて、外部の気温が異常と判定された場合、制御部101は、処理をステップ402bに進める。
【0051】
ステップ402bにおいて、制御部101は、温度センサ40により検出された温度に基づき、外部の気温が高温か低温かを判定する。ここで、制御部101は、温度センサ40により検出された温度が所定の範囲よりも高いか低いかに基づき、外部の気温が高温かを判定する。例えば、温調装置100の外部の空間の気温が21~25℃の範囲で制御されている場合、温度センサ40により検出された温度が25℃よりも高い場合は高温と判定され、温度センサ40により検出された温度が21℃よりも低い場合は低温と判定される。つまり、温度センサ40により検出された温度と所定の範囲の上限の温度又は下限の温度とを比較することにより、外部の気温が高温か低温かが判定される。
【0052】
ステップ402bにおいて、外部の気温が高温と判定された場合、制御部101は、処理をステップ403bに進める。また、ステップ402bにおいて、外部の気温が低温と判定された場合、制御部101は、処理をステップ403cに進める。
【0053】
ステップ403において、制御部101は、第1温調部102には供給されないが第2温調部103に供給される用力である第2用力の状態が正常かを判定する。ここで、第2用力は、例えば、第2供給装置30により供給される冷却水であり、制御部101は、圧力センサ30bにより検出された圧力値に基づき、第2用力の状態が正常かを判定する。ここで、制御部101は、圧力センサ30bにより検出された圧力値が所定の範囲内に収まっているか否かに基づき、第2用力の状態が正常かを判定する。ここで、例えば、温調装置100の仕様において、第2供給装置30により供給される冷却水の圧力が200~600kPaで使用可能と定められているとする。このとき、圧力センサ30bにより検出された圧力値が200~600kPaの範囲内に収まっている場合は正常と判定され、200~600kPaの範囲外となっている場合は異常と判定される。
【0054】
ステップ403aにおいて、制御部101は、圧力センサ30bにより検出された圧力値に基づき、第2用力の状態が正常かを判定する。ステップ403aにおいて、第2用力の状態が正常と判定された場合、制御部101は、温調装置100の温調モードを第1温調モードに決定する。ここで、第1温調モードは、第1温調部102、及び第2温調部103の設定を第1設定とする温調モードである。また、第1設定は、第1温調部102、又は第2温調部103を、露光部200が露光処理を行っている間に所定の性能を維持するために各部の温度を所定の範囲内に調整するように運転する設定である。つまり、第1温調モードに決定されるのは、第1用力の状態、外部の気温、第2用力の状態が全て正常である場合であり、制御部101は、露光部200が所定の性能を維持するために、第1温調部102、及び第2温調部103による温度調整を行う。
【0055】
また、ステップ403aにおいて、第2用力の状態が異常と判定された場合、制御部101は、温調装置100の温調モードを第2温調モードに決定する。ここで、第2温調モードは、第1温調部102の設定を第1設定とし、第2温調部103の設定を第2設定とする温調モードである。また、第2設定は、第1温調部102、又は第2温調部103の運転を停止する設定である。つまり、第2温調モードに決定されるのは、第1用力の状態、外部の気温が正常で、第2用力の状態が異常である場合であり、制御部101は、第1温調部102による温度調整を行う。また、制御部101は、第2用力を使用する第2温調部103の運転を停止する。
【0056】
ステップ403bにおいて、制御部101は、圧力センサ30bにより検出された圧力値に基づき、第2用力の状態が正常かを判定する。ステップ403bにおいて、第2用力の状態が正常と判定された場合、制御部101は、温調装置100の温調モードを第3温調モードに決定する。ここで、第3温調モードは、第1温調部102、及び第2温調部103の設定を第3設定とする温調モードである。また、第3設定は、第1温調部102、又は第2温調部103を、露光部200の各部を冷却する(温度を下げる)ように運転する設定である。つまり、第3温調モードに決定されるのは、第1用力及び第2用力の状態が正常であり、外部の気温が高温である場合である。この場合、制御部101は、外部の気温が高温になっている影響を低減するために、露光部200を冷却するように第1温調部102、及び第2温調部103による温度調整を行う。
【0057】
また、ステップ403bにおいて、第2用力の状態が異常と判定された場合、制御部101は、温調装置100の温調モードを第4温調モードに決定する。ここで、第4温調モードは、第1温調部102の設定を第3設定とし、第2温調部103の設定を第2設定とする温調モードである。つまり、第4温調モードに決定されるのは、第1用力の状態が正常であり、第2用力の状態が異常であり、外部の気温が高温である場合である。この場合、制御部101は、外部の気温が高温になっている影響を低減するために、露光部200を冷却するように第1温調部102による温度制御を行う。また、制御部101は、第2用力を使用する第2温調部103の運転を停止する。
【0058】
ステップ403cにおいて、制御部101は、圧力センサ30bにより検出された圧力値に基づき、第2用力の状態が正常かを判定する。ステップ403cにおいて、第2用力の状態が正常と判定された場合、制御部101は、温調装置100の温調モードを第5温調モードに決定する。ここで、第5温調モードは、第1温調部102の設定を第4設定とし、第2温調部103の設定を第4設定とする温調モードである。また、第4設定は、第1温調部102、又は第2温調部103を、露光部200の各部を加熱する(温度を上げる)ように運転する設定である。つまり、第5温調モードに決定されるのは、第1用力及び第2用力の状態が正常であり、外部の気温が低温である場合である。この場合、制御部101は、外部の気温が低温になっている影響を低減するために、露光部200を加熱するように第1温調部102、及び第2温調部103による温度調整を行う。
【0059】
また、ステップ403cにおいて、第2用力の状態が異常と判定された場合、制御部101は、温調装置100の温調モードを第6温調モードに決定する。ここで、第6温調モードは、第1温調部102の設定を第4設定とし、第2温調部103の設定を第2設定とする温調モードである。つまり、第4温調モードに決定されるのは、第1用力の状態が正常であり、第2用力の状態が異常であり、外部の気温が低温である場合である。この場合、制御部101は、外部の気温が低温になっている影響を低減するために、露光部200を加熱するように第1温調部102による温度制御を行う。また、制御部101は、第2用力を使用する第2温調部103の運転を停止する。
【0060】
また、ステップ401において、第1用力の状態が異常と判定された場合、制御部101は、温調装置100の温調モードを第7温調モードに決定する。ここで、第7温調モードは、第1温調部102、及び第2温調部103の設定を第2設定とする温調モードである。つまり、第7温調モードに決定されるのは、第1用力の状態が異常である場合であり、制御部101は、第1用力を使用する第1温調部102及び第2温調部103の運転を停止する。
【0061】
次に、温調部のパラメータの設定について説明する。第1設定、第3設定、及び第4設定が決定された場合、制御部101は、第1温調部102、又は第2温調部103を制御するための指令値を第1温調部102に出力する。ここで、指令値として、例えば、温調媒体の目標温度(所定の温度)、制御偏差の許容範囲(所定の温度範囲)、冷却部303及び加熱部304の制御パラメータ、及び温調媒体の目標流量の少なくとも1つが出力される。また、冷却部303及び加熱部304の制御パラメータには、例えば、冷却部303及び加熱部304の能力を制限するための能力制限値や冷却部303及び加熱部304をPID制御するために用いるPIDパラメータなどが含まれうる。
【0062】
また、第2設定が決定された場合、制御部101は、第1温調部102、又は第2温調部103を制御するための指令値として停止指令を第1温調部102に出力する。
【0063】
ここで、温調媒体の目標温度の設定について具体的に説明する。第1設定に設定される場合には、温調媒体の目標温度は、露光部200が露光処理を行っている間に所定の性能を維持するために各部の温度を所定の範囲内に調整するための温度(例えば、23.0℃)が設定される。また、第3設定に設定される場合には、温調媒体の目標温度は、露光部200の各部を冷却するための温度(例えば、21.5℃)が設定される。また、第4設定に設定される場合には、温調媒体の目標温度は、露光部200の各部を加熱するための温度(例えば、24.5℃)が設定される。
【0064】
次に、制御偏差の許容範囲の設定について具体的に説明する。第1設定に設定される場合には、温調媒体の目標温度は、露光部200が露光処理を行っている間に所定の性能を維持するために各部の温度を所定の範囲内に調整するための温度範囲(例えば、-0.05~0.05℃)が設定される。また、第3設定に設定される場合には、制御偏差の許容範囲は、高温側に範囲を広げた温度範囲(例えば、-0.5~4.0℃)が設定される。また、第4設定に設定される場合には、制御偏差の許容範囲は、低温側に範囲を広げた温度範囲(例えば、-4.0~0.5℃)が設定される。
【0065】
次に、冷却部303及び加熱部304の制御パラメータについて具体的に説明する。冷却部303及び加熱部304において、第1温調部102を制御するための指令値に対する能力の関係に非線形性を有している場合がある。そこで、そのような非線形性を考慮して冷却部303及び加熱部304の制御パラメータを設定する。
【0066】
第1設定に設定される場合には、冷却部303及び加熱部304の能力制限値は、温調媒体の温度制御を高精度に行うために、冷却部303及び加熱部304を制御するための指令値に対する冷却部303及び加熱部304の能力の関係(以下では、指令値に対する能力の関係とする。)が線形性を有する範囲の値が設定される。また、冷却部303及び加熱部304のPIDパラメータは、指令値に対する能力の関係が線形性を有する範囲で冷却部303及び加熱部304を安定的に制御するための値が設定される。
【0067】
また、第3設定及び第4設定に設定される場合には、冷却部303及び加熱部304の能力制限値は、露光部200の各部を冷却する又は加熱するために、能力の制限を広げるための値が設定される。また、能力の制限が広げられた場合、温調媒体の温度制御を高精度に行う必要がないので、指令値に対する能力の関係が非線形性を有する範囲を含みうる。よって、冷却部303及び加熱部304のPIDパラメータは、指令値に対する能力の関係が非線形性を有する範囲で冷却部303及び加熱部304を安定的に制御するための値が設定される。
【0068】
次に、本実施形態に係る温調装置によって温調された露光部200の温度について説明する。図6は、露光部200の温度と外部の気温との関係を示す図である。図6に示されるグラフにおいて、横軸が外部の気温Tc、縦軸が露光部200の温度Tuを示している。なお、温度Tuは、露光部200のあるユニット(以下では、ユニット202とする。)の温度を示している。
【0069】
外部の気温Tcは、通常の状態では、外部の設備によって温度T1から温度T2までの範囲で維持されるように制御されるものとする。つまり、温度T1、T2は、通常の状態で外部の設備によって維持される外部の気温Tcの下限値と上限値である。ここで、例えば、温度T1は21℃、温度T2は25℃とすることができる。
【0070】
露光部200の温度Tuは、露光部200が露光処理を行う間に、通常の状態では温度t2から温度t3までの範囲で維持されるように制御されるものとする。また、温度t1から温度t4までの範囲は、ユニット202に不可逆的な性能劣化が生じない範囲である。ここで、一般的に、温度t1と温度t4は、t1≦T1、t4≧T2の関係を満たすように設定される。
【0071】
図6に示されるグラフにおいて、破線は、外部の気温Tcに応じて温調モードを変えずに運転する比較例の温調装置によってユニット202が温調されている場合のユニット202の温度と外部の気温との関係を示している。比較例においては、外部の気温TcがT1≦Tc≦T2の範囲で、温調装置の通常稼働に必要な用力が供給されている場合には、ユニット202の温度をt2≦Tu≦t3の範囲内に制御することができる。しかし、外部の気温TcがTc<T1またはT2<Tcの場合は、ユニット202と外部の気温と間での熱移動量が設計値を超えることにより、ユニット202が設計上の許容範囲を超えて温度変化し、温調媒体の温度変化量が設計値を超える。設計値以上の温度媒体の温度変化により温調部内の冷却部または加熱部の許容範囲を超え、温調媒体の温度を制御できなくなることにより制御エラーが発生して温調部が運転を停止してしまう場合がある。
【0072】
一方、図6に示されるグラフにおいて、実線は本実施形態の温調装置によって、第3温調モードでユニット202が温調されている場合のユニット202の温度と外部の気温との関係を示している。本実施形態においては、外部の気温TcがT1≦Tc≦T2の範囲で、温調装置の通常稼働に必要な用力が供給されている場合には、比較例と同様に、ユニット202の温度をt2≦Tu≦t3の範囲内に制御することができる。しかし、外部の気温TcがTc<T1またはT2<Tcの場合における温度変化が比較例とは異なる。
【0073】
ここで、外部の気温Tcが、Tc>T2の場合を例として説明する。Tc>T2の場合は、ユニット202に対する外部からの熱移動量が増加してユニット202の温度が上昇する。第1温調部102、及び第2温調部103は、制御部101の指令値に基づき温度を下げた温調媒体(例えば、21.5℃)をユニット202に供給する。ユニット202から温調媒体への熱移動量は2物体間の温度差ΔTに比例関係にある。例えば、ユニット202の温度Tuを25℃とした場合、温調媒体の温度Tiを23℃と21.5℃とした場合で比較すると、熱移動量Qは式(1)からも分かるように温調媒体が21.5℃の方が1.75倍大きくなるため、ユニット202の冷却効率を高めることができる。
Q=λ×(Tu-Ti)×A・・・(1)
【0074】
ここで、λは伝熱定数、Aは伝熱面積、Tiは温調媒体の温度である。
【0075】
ユニット202の冷却効率を高めることにより温調媒体への熱移動量が増加し、第1温調部102、及び第2温調部103に戻ってくる温調媒体の温度も上昇する。しかし、制御部101の指令値に基づき第1温調部102、及び第2温調部103の能力制限値を冷却側の能力が向上するように設定しているため、安定的に温調媒体を安定的に温度制御することが可能となる。
【0076】
このようにして、ユニット202を効率的に温調することにより、温度変化に伴う熱膨張による不可逆な性能変化が生じることを低減することができる。
【0077】
以上、本実施形態に係る温調装置によれば、物体が配置された空間の気温と正常に供給されていると判定された用力とを用いて温調部を制御するので、より安定的に物体の温度を調整することができる。
【0078】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る温調装置について説明する。なお、ここで言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。本実施形態に係る温調装置は、外部の気温に応じて温調媒体の目標温度を変更する。
【0079】
第2実施形態における温調部のパラメータを設定について説明する。制御部101は、温調媒体の目標温度を外部の気温Tcに応じて変化させる。ここで、図7を参照して、温調媒体の目標温度の算出方法について説明する。図7は、温調媒体の目標温度と外部の気温との関係を示す図である。図7に示されるグラフにおいて、横軸が外部の気温Tc、縦軸が温調媒体の目標温度Tspを示している。温度T1、T2は、図6と同様に、通常の状態で外部の設備によって維持される外部の気温Tcの下限値と上限値である。また、温度t1から温度t4までの範囲は、図6と同様に、ユニット202に不可逆的な性能劣化が生じない範囲である。また、温度Tsp1、Tsp2、Tsp3は、それぞれ第1実施形態における第3設定、第1設定、第4設定の温調媒体の目標温度である。また、温度Tsp1、Tsp2、Tsp3は、例えば、それぞれ、21.5℃、23.0℃、24.5℃といった、所定の温度に設定される。また、温度Tsp4、Tsp0は、それぞれ、温調媒体の目標温度Tspを外部の気温Tcに応じて変化させるときの上限値と下限値である。
【0080】
温調媒体の目標温度Tspは、外部の気温Tcの範囲に応じて、以下に示す式(2)~(4)により算出される。
【0081】
外部の気温Tcは、Tc<T1の範囲においては、式(2)により算出される。
Tsp=α1×Tc+β1・・・(2)
【0082】
外部の気温Tcは、T1≦Tc≦T2の範囲においては、式(3)により算出される。
Tsp=Tsp_const・・・(3)
【0083】
外部の気温Tcは、T1<Tcの範囲においては、式(4)により算出される。
Tsp=α2×Tc+β2・・・(4)
【0084】
ここで、Tsp_constは所定の温度(定数)である。Tsp_constは、例えば、Tsp_const=Tsp2とすることができる。
【0085】
また、α1、α2、β1、及びβ2は係数である。係数α1、α2、β1、及びβ2は、実験により求めることができるし、シミュレーションにより求めることもできる。また、露光部200の個体差、及び実験やシミュレーションにおける誤差等により最適な係数でないと判断される場合には、ユニット202の温度Tuに基づき、係数α1、α2、β1、及びβ2を補正してもよい。
【0086】
また、式(2)により算出された温調媒体の目標温度Tspが、Tsp>Tsp4となった場合はTsp=Tsp4とする。また、式(4)により算出された温調媒体の目標温度Tspが、Tsp<Tsp0となった場合はTsp=Tsp0とする。
【0087】
また、温調媒体の目標温度Tspを算出するための式として、外部の気温Tcに関する1次式が用いられる例を説明したが、外部の気温Tcに関する2次以上の高次多項式が用いられてもよい。また、温調媒体の目標温度Tspを取得するために、外部の気温Tcに対応する温調媒体の目標温度Tspが定められたテーブルが用いられてもよい。
【0088】
また、温調媒体の目標温度Tspを外部の気温Tcに応じて変化させる例を説明したが、同様の方法で、制御偏差の許容範囲や制御パラメータを外部の気温Tcに応じて変化させてもよい。
【0089】
図8は、露光部200の温度と外部の気温との関係を示す図である。図8に示されるグラフにおいて、横軸と縦軸、温度T1、T2、t1~t4は図6と同様であるため説明は省略する。また、図8に示されるグラフにおいて、実線は本実施形態におけるユニット202の温度Tuと外部の気温Tcとの関係を示している。また、図8に示されるグラフにおいて、破線は第1実施形態におけるユニット202の温度Tuと外部の気温Tcとの関係を示している。図7のように温調媒体の目標温度Tspを変化させることにより、本実施形態の方が外部の気温Tcのより広い範囲において、ユニット202の温度Tuをt1≦Tu≦t4の範囲内に制御することができる。
【0090】
<物品の製造方法>
本実施例における物品の製造方法は、例えば、デバイス(半導体素子、磁気記憶媒体、液晶表示素子など)などの物品を製造するのに好適である。かかる製造方法は、露光装置を用いて、感光剤が塗布された基板を露光する(パターンを基板に形成する)工程と、露光された基板を現像する(基板を処理する)工程を含む。また、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングなど)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性および生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0091】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0093】
また、基板処理装置として、露光装置について説明したが、これに限定されるものではない。基板処理装置として、モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であってもよい。また、基板処理装置として、モールドを用いて基板上の組成物を成形する成形装置であってもよい。また、基板処理装置として、荷電粒子線を基板に照射して当該基板にパターンを形成する描画装置であってもよい。また、基板処理装置として、感光媒体を基板の表面上に塗布する塗布装置、パターンが転写された基板を現像する現像装置であってもよい。また、基板処理装置として、成膜装置(CVD装置等)、加工装置(レーザー加工装置等)、検査装置(オーバーレイ検査装置等)であってもよい。
【0094】
また、第1実施形態1及び第2実施形態は、単独で実施するだけでなく、第1実施形態1及び第2実施形態の組合せで実施することができる。
図1
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図8