(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188632
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ペット用コート
(51)【国際特許分類】
A01K 13/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
A01K13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096831
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】519430192
【氏名又は名称】株式会社Snowapple
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 仁美
(57)【要約】 (修正有)
【課題】夏期の暑さや日差し、高い湿度から、ペットを守るためのペット用コートを提供する。
【解決手段】本体部保冷剤ポケット12と害虫忌避剤ポケット10を備えるペット用コートであり、本体部被服2は、胸部を係止する第一係止部4及び第二係止部5と、腹部を係止する6a及び6b、7a及び7bが備えられ、ペットの背中部から体側面にかけて覆い被さり着用できる、コート状構造である。また、首部保冷剤ポケット31を備えた、首部被服3は、ペットの頭を通すだけで、首部に瞬時で固定可能な環状ギャザリング状構造である。さらに、本体部被服と首部被服は、接合部11a、11bで脱着可能である。このように、夏期の酷暑時における、ペットにとって様々な問題を着用するだけで解決できる、コート状構造を特徴とするペット用コートである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体部に当接する位置に本体部保冷剤ポケットを備えた本体部被服からなるペット用コートであって、
ペットの胸部を係止する第一係止部と、
前記第一係止部の上から覆い、前記本体部被服の緩みを調節する機能を有する第二係止部と、を備え、
並びに前記本体部被服は、裾部よりも上部内側でペットの腹部を係止する腹部係止部を備え、
かつ、前記本体部被服は、ペットの背中部からペットの体側面にかけて覆い被さり、さらに、前記腹部係止部から前記裾部までが垂れ下がるコート状構造を特徴とするペット用コート。
【請求項2】
前記本体部保冷剤ポケットの近傍に害虫忌避剤ポケットを備えたことを特徴とする、請求項1に記載のペット用コート。
【請求項3】
前記ペット用コートには、ペットの首部に当接する位置に保冷剤ポケットを有した首部被服を備え、
前記首部被服は環状ギャザリング状構造からなり、
また、前記本体部被服及び前記首部被服には、双方を脱着可能にする接合部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のペット用コート。
【請求項4】
ペットに着用させる環状ギャザリング状構造からなる首部被服であって、
ペットの首部に当接する位置に保冷剤ポケットを備え、かつ、請求項1または請求項2に記載された本体部被服と脱着可能にする接合部を備えることを特徴とする首部被服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夏期の暑さや日差し、高い湿度からペットを守るためのペット用コートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、夏の酷暑対策として、動物用の被服の内側に保冷剤収納ポケットを備えた被服をペットに着用させた。また、気化熱利用の動物用の被服を着用させることもある。さらにまた、首部だけを冷却するための保冷剤収納ポケットを備えたネッククーラーがある。
そして、動物用の被服の形状は、胸部及び腹部を含む胴体部を包み込み、また前肢挿通孔に前肢を通して着用させる形状である。
また、保冷剤をペットの体に密着させるためだけの、保冷ベストなるものもある。
【0003】
夏期はペットも害虫に悩まされることも多く、害虫予防としては、害虫忌避効果のある薬剤をペットの皮膚に直接塗布する、または害虫忌避剤を混練した首輪などを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3172210号公報
【特許文献2】特開2013-106544号公報
【特許文献3】意匠登録第1650024号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】犬服 VERY 保冷剤がたっぷり入るポケット付3WAYクールウェア<U R L:https://www.amazon.co.jp/犬服-VERY-保冷剤がたっぷり入るポケット付3WAYクールウェア(硬くならない専用保冷剤付)-ブルーD4号-小型犬-ドッグウェア/dp/B07DG35GSN/ref=sr_1_8?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords=保冷剤+犬&qid=1617594517&sr=8-8>
【非特許文献2】犬用 ネッククーラー バンダナ<U R L:https://www.amazon.co.jp/アクセサリー-保冷剤付き-風呂敷首巻-(サイズ:M-赤色9)-日本犬や柴犬などおススメ!/dp/B076HLXSYB/ref=sr_1_8?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords=犬+ネッククーラー+保冷剤&qid=1621493241&s=pet-supplies&sr=1-8>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
体全体に被毛があるペットは、近年の温暖化による猛烈な暑さと湿度には極めて弱く、そのため、熱中症には十分注意が必要である。特に犬や猫などのペットは、身体のごく一部でしか汗をかけないため、人のように汗をかいて体温調整ができず、体高も低いことから地面からも暑さをより受けやすいという問題がある。さらに、ペットと一緒に車で出かける場合、車の中はエアコンをかけても窓から太陽光が入り、熱中症の危険が非常に高いという問題もあった。上記、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1に記載された動物用の被服は、一定の暑さ対策は可能である。しかし、被服の構造が背中から腹部まで包み込むため、通気性について一定効果のある生地を使用しても、熱の発散が不十分であり、効果的に冷却できないことが問題であった。
【0007】
特許文献2は、気化熱を利用し涼感を得ているが、日本の高温多湿の気候では十分に気化せず、逆にペットの体表面がジメジメして蒸し暑くなる時もあった。そのような場合、例えば表皮の角質層の厚さが人間の1/3程度しかない犬は刺激に弱く、特に長毛種の犬種は、一旦被毛が湿ると、湿度が高くなれば乾きにくく、地肌で菌が繁殖し皮膚炎を引き起こす原因にもなりかねない。よって、ペットに着用させる場合、気化熱利用は好ましくない。
【0008】
さらには気化熱利用の被服の場合、涼感を得るにはある程度の風力が必要となる。しかし、気化熱利用の被服の場合、無風時は湿度をより感じてしまうため、不快感が増すという欠点があった。
【0009】
従来型の被服は、胸部及び腹部を含めた胴体部を包み込む形状のため被服が密着してしまい、通気性の良い生地で構成されていても、通気が良いとは言えなかった。
また、被服による日陰もできないため、直射日光に弱いという欠点も見られた。
【0010】
特許文献3の保冷用ベストは、保冷剤が胴体部に密着しているので良いが、保冷材ポケット以外の胴体部は被服で覆われていない。一見、この保冷材ベストは涼しそうに見える。しかし、被服で覆われた部分が少なすぎるために日陰ができず、紫外線を含む直射日光を遮る事ができなかった。そのため、紫外線を含む直射日光で、被毛が焼けてしまい、保冷剤の密着部しか冷却ができず、あまり効果的ではなかった。また、首部を冷やせず、短頭種の犬種にも向いているとは言えない。
【0011】
初夏、人間にとってはまだエアコンが必要ない気温であっても、ペットは暑さに弱いため、室内であっても暑さ対策をする必要があった。
【0012】
さらに、従来型の被服は、着用しないと冷却できない構造であった。従来型の被服は、ブランケットのような使い方として、ペットに掛けるだけで冷却することが不可能であった。これは車移動の際、ペットが寝てしまった場合、窓から差し込む紫外線を含む日差しと熱中症の危険から守ることが不可能であったということである。
【0013】
頭部から被せ、前肢挿通孔に足を通し着用させる形状の被服では、着用が非常に面倒であり、前記形状の被服は、前肢付け根付近を被服で締め付けるため、ペットが不快感を得る形状であった。特に普段から被服を着用していないペットは、足を被服の挿通孔に通すことを嫌がり、暴れることもあるため、足を挿通孔に通さないことは重要である。
【0014】
また、例えば、非特許文献2のクールネックのような単体で首部を冷却するものはあった。しかし、特許文献1の動物用の被服のような形状の場合、首部を冷却することはできず、さらに特許文献2のペットの夏用被服であっても、気化熱を利用するだけのものであったので、首部を効果的に冷やすことが不可能であった。ペットである犬や猫は、呼吸をすることで熱を体外に逃がすが、特に短頭種の犬種は、鼻が短く口腔の面積が狭いため、体内の熱をうまく逃がすことができずに熱中症になりやすいという特徴があり、首部を冷やせる構造であることは重要である。
【0015】
初夏から秋までは、ペットにとって害虫が多く発生する時期なので、従来は害虫忌避効果のある薬剤を体部に直接塗布、または薬剤を練り込んだ首輪を装着するなどしていた。しかし、この方法だと、ペットの体に負担がかかり生理周期の狂いや皮膚炎などが起きていた。
また、天然由来の成分の精油等を害虫忌避剤として使用した場合も、夏の高温下で使用すると短時間で揮発してしまう。
【0016】
本発明は、ペットが近年の温暖化による高温多湿の日本の酷暑においても、着用することで快適に暮らせるよう、上記の複数の課題を解決するために考えられた、ペット用コートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、胴体部に当接する位置に本体部保冷剤ポケットを備えた本体部被服からなるペット用コートであって、ペットの胸部を係止する第一係止部と、前記第一係止部の上から覆い、前記本体部被服の緩みを調節する機能を有する第二係止部と、を備え、並びに前記本体部被服は、裾部よりも上部内側でペットの腹部を係止する腹部係止部を備え、かつ、前記本体部被服は、ペットの背中部からペットの体側面にかけて覆い被さり、さらに、前記腹部係止部から前記裾部までが垂れ下がるコート状構造を特徴とするペット用コートを提供するものである。
【0018】
また、本発明は、前記ペット用コートの本体部保冷剤ポケットの近傍に害虫忌避剤ポケットを備えたことを特徴とする、上記の記載のペット用コートである。
【0019】
さらに、本発明は、前記ペット用コートの首部に当接する位置に保冷剤ポケットを有した首部被服を備え、前記首部被服は環状ギャザリング状構造からなり、また前記本体部被服及び前記首部被服には、双方を脱着可能にする接合部を備えることを特徴とした請求項1に記載のペット用コートである。
【0020】
さらにまた、本発明は、ペットに着用させる環状ギャザリング状構造からなる首部被服であって、ペットの首部に当接する位置に保冷剤ポケットを備え、かつ、本体部被服と脱着可能にする接合部を備えることを特徴とする首部被服である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のペット用コートによれば、本体部被服の保冷剤ポケットに収納された保冷剤により、ペットの胴体部の冷却が可能である。また、本体部被服は、ペットの背中部から体側面を覆い被せ、腹部は包み込まず、かつ腹部を本体部被服内側に備えられた調節機能付きの腹部係止部のみで固定するため、通気性が良い。さらに、本体部被服は、裾部が体側面部より垂れ下がるコート状構造のため日陰ができ、紫外線を含む直射日光を遮蔽し、ペットを守ることができる。
【0022】
本発明のペット用コートによれば、害虫忌避剤ポケットを備えたことで、マダニ、ノミ、蚊などの害虫からペットを守ることができ、かつ、本体部保冷剤ポケットの近傍に備えたことで、その冷却機能により揮発時間を長く保ち、害虫忌避剤の効果の持続性を保つことが可能である。
一方で、秋の熱中症対策が必要ない時期であっても、本発明のペット用コートの冷却機能は使わず、害虫忌避だけを目的としての着用も可能である。
また、害虫忌避剤を直接ペットの体に塗布しなくて済むので、皮膚の弱いペットを害虫忌避剤の副作用からも守ることができる。
【0023】
本発明のペット用コートによれば、ペットの首部の冷却も可能である。また、本体部被服及び首部被服に備えられた、双方を脱着可能な接合部を外すことで、日々の気温や湿度に合わせ、セパレートしての使用が可能である。さらに、首部被服は伸縮する環状ギャザリング状構造からなるため、ペットの頭を通すだけで首部に簡単に固定でき、かつ、首部被服はペットの体重変動が多少あっても、問題なく固定可能である。
【0024】
さらに、前記本体部被服はコート状構造であるが、前肢挿通孔を有しないため、前肢を通す必要がなく、前肢の付け根付近を被服で締め付けず、ペット自身が不快感を得ることを低減できる。
【0025】
本発明のペット用コートによれば、前記本体部被服のコート状構造を生かし、ブランケットのように広げ、車移動時なども車内で寝てしまったペットにも掛けるだけで、窓から入る紫外線を含む太陽光を遮蔽し、かつ冷却が可能となった。
さらに、初夏の室内で、人間にとってエアコンが必要ない気温でも、本発明のペット用コートを着用させる、または掛けてあげるだけで、暑さに弱いペットでも快適に過ごすことができる。以上のことから、日本の酷暑及び害虫からもペットを守ることが可能になるペット用コートである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるペット用コートを示す本体部被服の構成図及び、首部被服の概要図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかるペット用コートを示す本体部被服の構成図及び、首部被服の概要図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる本体部被服2の実施例を示す、(a)は本体部ベース27の平面図であり、(b)は本体部ベース28の平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態にかかる本体部保冷剤ポケット12の断面図(XーX)である。
【
図5】本発明の実施の形態にかかる首部被服の断面図(Z-Z)である。
【
図6】本発明の実施の形態にかかる首部被服の表側側面図である。
【
図7】本発明の実施の形態にかかる首部被服の内側を表に反転した内側側面図である。
【
図8】本発明の実施の形態にかかる首部被服の斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態にかかるペット用コートの側面着用図である。
【
図10】本発明の実施の形態にかかるペット用コートを犬に着用させた際の、(a)は正面着用図であり、(b)は正面着用図であり、(c)は正面着用図である。
【
図11】本発明の実施の形態にかかるペット用コートの腹部面着用図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかるペット用コートについて、図面を参照して説明する。
【0028】
なお本実施の形態の一例として、ペット用コートを犬に適用した場合について説明する。また、犬に着用させた際に、犬に接触する側を内側、その反対面を表側として説明する。なおまた、本実施の形態では、ペットとして犬について説明したが、犬に限るものではない。
【0029】
図1は、本実施の形態にかかるペット用コートを広げた状態の本体部被服の内側面構成図、及び首部の概要図、
図2は、
図1の表側を示す本体部被服の表側面構成図及び首部の概要図、
図3(a)は、本実施の形態にかかるペット用コートの本体のベースを示す平面
図1、
図3(b)は
図3(a)の次の工程を示す平面
図2、
図4は、本体部保冷剤ポケット12の断面図(XーX)、
図5は、本実施の形態にかかるペット用コートの首部被服を示す断面図(Z-Z断面)、
図6は、本実施の形態にかかるペット用コートの首部被服の表側側面図、
図7は
図5の内側を表に反転した内側を示す側面図、
図8は、本実施の形態にかかるペット用コートの首部被服の上側から保冷剤ポケット入口を示す斜視図、
図9は本実施の形態にかかるペット用コートを犬に着用した状態を側面から示す着用図、
図10は、
図9を正面から示した着用図であり、
図10(a)は、胸部の係止部4を係止した際の着用図、
図10(b)係止された係止部4の上から係止部5で覆い係止した際の着用図、そして
図11は、
図9を腹部面から示した着用図である。
【0030】
図1、
図8及び
図9に示すように、本発明のペット用コート1の構成から説明する。略長方形の本体部被服2は、背中部から体側面にかけて覆い被せるようなコート状構造である。コート状構造については後述する。本体部被服2は、胸部21を第一係止部4と、本体部被服2の胸部の緩みを調節する調節機能付きの第二係止部5、また、腹部24は腹部係止部6a及び6b、7a及び7bが備えられている。
伸縮する環状ギャザリング状構造からなる首部被服3は、環状部34に犬の頭を通すだけで、首に固定できる。環状ギャザリング状構造については後述する。
【0031】
また、ペット用コート1は、断熱材を積層した本体部保冷剤ポケット12及び、断熱材を積層した襟部保冷剤ポケット18を備えた本体部被服2と、断熱材を積層した首部保冷剤ポケット31を備えた首部被服3とで構成される。
さらに、本体部被服2には、害虫忌避剤ポケット10も備えられている。
さらにまた、本体部被服2及び首部被服3は、2つのパーツを脱着可能にする接合部である、本体部被服の接合部11a及び首部被服の接合部11bを有している。
【0032】
次に、
図3(a)、
図3(b)を用いて、本体部被服2について、平面構成から着用した際に、どのように立体構成になるかを説明する。この平面構成については後述するが、本体部被服2は簡易な加工であるのに、非常に機能的であり、意匠的にも優れたコート状構造である。
本体部被服2は、
図3(a)に示す通り、長方形の1枚の生地の四隅を丸く裁断し、首部20になる部分を任意長さで切り込みを入れ、この角部分も丸く裁断する。本体部被服2は、この生地を本体部ベース27として、
図3(b)に示す通り、生地の周囲をバイアステープ29で処理をする。そして、首部20になる位置を、犬の首周りサイズに合わせ、左右それぞれを斜めに折り、襟部17を作り、本体部ベース28とする。なお、本体部ベース27の周囲は必ずしもバイアステープで処理せずとも、生地がほつれないよう処理してあれば良い。また、バイアステープ29は
図3(b)のみに表記している。
加えて、図には示していないが、例えばペットが犬である時、本体部ベース28の背中部22の任意位置に、ハーネスに接続するための挿通孔を設けても良い。
【0033】
図1を用いて、本体部被服2の構成について説明する。背中部22から体側面部23を、犬50の背中部から体側面にかけて覆い被せ、胸部21と腹部24を、それぞれの係止部で係止する。胸部21に備えられた係止部は2箇所あり、第一係止部4で胸元を一旦係止する。さらに、第一係止部4を覆うように、首部をぐるりと回すようにして胸部24の緩みを調節し、第二係止部5で係止する。腹部24に備えられた係止部は2箇所あり、ベルト9と組み合わせた腹部係止部6a及び6b、7a及び7bが互いに係止され、調節具8で胴囲に合わせ固定する。
【0034】
このように、本体部被服2は洋服のように立体裁断ではなく、和服と同様の考え方で、基本部分が直線裁ちの平面構成だが、着用することで立体的に形成される。
また、上記の通り、本体部被服2は和服と同様の考え方で、サイズにあそびがある。そのため、犬の胸囲あるいは胴囲等の大きさに合わせて調節することができ、犬の大きさに対する汎用性を向上させることができる。なお、ペットが小さいなら、腹部係止部は1箇所でもよく、大きいなら3箇所設置してもよく任意である。
【0035】
本発明のコート状構造は、ネックホール及び袖は有さず、背中から体側面に覆い被せるように着用させ、かつ、コートの裾は、体側面下部にまで垂れ下がり、裾の位置は肢の上部あたりまで隠せる長さが好ましいが、ペットの大きさ及び体型により任意とする。
【0036】
続いて、
図1、
図9及び
図11を用いて、本体部被服2の腹部係止部について説明する。本体部被服2は、腹部係止部6a及び6b、7a及び7bと、調節具8及びベルト9のみが腹部に当接する。そのため、コート状構造の本体部被服2では腹部を覆わず、腹部係止部取付位置26から裾部25までの部分が、体側面部23から垂れ下がる形状であり、通気性を保つことができる。
なお、本体被服2の裾部25の垂れ下がる長さについては、特に規定するものではないが、一例として犬50であれば、
図9に示すように、肢の上部あたりまで隠せる長さが好ましく、かつ、腹部が日陰になるくらいが好ましい。さらに、コート状構造であることを考慮し、ペットの大きさに相対する長さが好ましいと言える。
【0037】
加えて、腹部係止部6a及び6b、7a及び7bは、雄部材と雌部材を左右交互に取り付けているが、その利点2つを、
図1及び
図11を用いて説明する。
一つは、コート状構造の本体被服部2を着用させる際、犬50の腹部の下に飼い主が手を伸ばし係止部を係止させる際、係止部が犬50の体で死角になっても誤装着を防ぐことができる。
もう一つは、腹部係止部6a及び6b、7a及び7bを左右交互に取り付けることで、着崩れし難い構成になる。その理由は、腹部係止部6bと7bは調節具8と組み合わせて使用するため、6aと7aとは重量が違う。僅かな重量の違いであっても、例えば、犬種により被毛の質が違い、中でも短毛犬種や毛艶がある犬種の場合などは、被毛と本体部被服2が運動時など滑りやすくなる。しかし、腹部係止部6a及び6b、7a及び7bを左右交互に取り付けることで、運動時等でも左右バランスが乱れることを防いでくれる。
また、本体部被服2のベルト9と、腹部係止部6a及び6b、7a及び7bを平行ではなく、クロスするように設置すると、さらに着崩れし難い構成になる。
【0038】
なおまた、本体部被服2に備える係止部に、面ファスナーを用いることも可能だが、ペットが長毛種の犬種や猫種の場合、接着部に被毛が絡み、接着力が弱まってしまうこともあるため、あまり好ましくない。
そこで、
図1の実施例では、ベルト9と腹部係止部6a、6bと7a、7b及び調節具8を幅広ゴムとアジャスターバックルにて固定している。さらに、例えば幅広ゴムとスナップ等の組み合わせや、穴あきベルト、紐等を使用しても良い。なお、ベルト9を伸縮するゴムベルトなどで構成すると、ペットが本体部被服2を着用し運動する際も、不快感を得ることを低減できる。
【0039】
また、腹部係止部の例として、ベルト9をペットの胴回りより長くして、左右の腹部係止部取付位置26から、それぞれ腹部に当接するように平行に交差させる。加えて、本体部被服2の腹部係止部取付位置26の隣接箇所にベルト9を通すための穴を開ける。そして、ベルト9は、左右の設置位置からそれぞれを右回り、または左回りに、胴体部にぐるっと巻く。その時に、ベルト9は、左右それぞれを、本体部被服2の腹部係止部取付位置26の隣接箇所の穴に通して、胴体部にぐるっと巻き、胴体部の上部で結ぶようにしても良い。
【0040】
本体部被服2は、前肢挿通孔を有しないので、前肢を通す必要がないため、肢付け根を締め付けることなく着用可能である。また、前肢挿通孔に前肢を通さないので、ペットが着用し運動する際も、不快感を得ることを削減できる。このように、本体部被服2はコート状構造のため、背中部から体側面にかけて覆い被せ、例えば、被服の着用になれていない犬であっても、前肢挿通孔に前肢を通す必要がなく、飼い主が着用させやすい構造である。
【0041】
続いて、
図5、
図8を用いて、首部被服3について構成を説明する。環状ギャザリング状構造の首部被服3はペットの首部分を覆う。環状部表側生地36と、環状部内側生地35に挟持された環状部34の中に、首部保冷剤ポケット31を備えている。首部保冷剤ポケット31の位置には、環状部表側生地36の内側部に断熱材15が積層されている。
さらに、環状ギャザリング状構造を形成するため、環状部のゴム設置箇所37が設けられ、環状部34の上下にギャザー部39が備えられている。
【0042】
またギャザー部39は、単なる意匠目的だけでなく、機能的な目的のために備えられている。この機能的な目的とは、犬50がペット用コート1を着用した状態で、首部被服3と本体被服部2を、本体部被服の接合部11a及び首部被服の接合部11bで接合しているとき、犬50が首をブルブルと振っても、本体部被服の接合部11a及び首部被服の接合部11bは、外れることがない。なぜならば、首部被服3のギャザー部39のギャザーを構成するためには幅広い生地を使い、ギャザーを寄せる加工をして、環状部34に縫い付けられている。そのため、環状部34が犬50の首に固定状態で、体をブルブルと振った時でも、ギャザー部39の生地幅には余裕があるため、引っ張られることがないからである。
なお、首部被服3の環状ギャザリング状構造については、伸縮する構造であれば良いが、さらに初めから環状でなくてもよく、スナップ、ボタン、ビットパーツ、紐及び穴あけベルト等の係止部を設けて、環状にする構造であっても良い。
【0043】
さらに首部被服3の環状部34は、ゴムで伸縮するが、首部保冷剤ポケット31の部分には、保冷剤の出し入れを容易にするために、ゴムを通さない方が好ましい。
本実施の形態では、首部被服3の環状部34に首部保冷剤ポケット31を2箇所備えている。この配列例は、環状部34の中に首部保冷剤ポケット31を2箇所と、設置箇所37を2箇所、横並びで交互に配置し、環状部34はバランスよく伸縮し着脱が容易にできる構造となっている。
【0044】
また、首部被服3に備える首部保冷剤ポケットの個数や設置箇所は、ペットの大きさにより任意である。さらに、首部被服3は、和服のような平面構成ではないが、伸縮する環状ギャザリング状構造のため、ペットの首囲の太さに自然とフィットするので、ペットの大きさに対する汎用性を向上させることができる。
【0045】
また、ペットが犬であれば、もともと首輪をしている、あるいは室内犬であっても首飾りなどつけていることが多いので、環状ギャザリング状構造の首部被服3であれば、負担だと感じさせずに着用させることができる。
【0046】
なお、本体部被服2と首部被服3は、双方を脱着可能にする接合部としての、本体部被服の接合部11a及び、首部被服の接合部11bにて接合されるが、例えば、当該接合部は、スナップ、ボタン、ホック、ナスカン等を設置しても良い。
このように本発明のペット用コート1は、脱着可能な本体部被服2、及び首部被服3の2つの部位により構成されている。
さらに、ペット用コートは体部被服2及び、首部被服3の2つの部位で構成されているため、日々の気温、湿度に合わせて、本体部首部被服の接合部の接合部11a及び11bを外し、セパレートしてそれぞれを別々に着用させることも可能である。
【0047】
次に、ペット用コート1を構成する素材について説明をする。本体部被服2と首部被服3は、天然繊維及び化学繊維で、編み物、織物どちらでもよいが、通気性の良い生地であることが好ましい。具体的には、綿、リネン、麻、シルク、綿シルク、メリノウールなどの天然繊維が好ましく、吸湿速乾機能のある化学繊維でも良い。また、綿レース生地、さらに目の荒い綿メッシュ生地だと通気性もよく、生地の耐久性もあり、さらにまた好ましいと言える。加えて、生地の色柄は任意だが、紫外線を含む直射日光を反射する白色が好ましい。
なお、本体部被服2と首部被服3は同一素材でも異質素材でも良い。
また、天然繊維はペットに優しい素材であるため好ましいといえる。その理由は、例えば珍しい犬種のヘアレスドッグは、名前の通り被毛に覆われていない。そのため被服を着用させると、素材が直接肌に触れることになる。このとき化学繊維だと、肌が荒れることや、皮膚炎になりやすいということがあるためである。
【0048】
ここで言う吸湿速乾機能とは、水分をすばやく吸収して、すばやく発散する機能のことである。本体部保冷剤ポケット12の構造は後述するが、保冷剤ポケットに保冷剤を収納した際、結露による蒸れが生じることがある。そのため、保冷剤ポケット表面に吸湿速乾機能の生地を用いることで、結露による蒸れを防ぐことができる。
【0049】
次に、本体部被服2に備える係止部等について
図1、
図10(a)、
図10(b)及び10(c)を用いて、説明する。本体部被服2は、犬50の背中から体側面に覆い被せるようにして、胸部21を左右から犬50の襟部17を首部の周りに回し、犬50の胸部の前で、一旦、第一係止部4で係止する。その後で、第一係止部4を上から覆うように、胸部の緩みを第二係止部5で調節して、第二係止部5を係止する。よって、第一係止部4の役割は、本体部被服2の胸部21が開きすぎて外れないように止めるものであって、第二係止部5は、胸部の緩みを調節するものである。
この実施例は、第一係止部4にはスプリングホックを、第二係止部5には紐を用いて、係止している。なお、第一係止部4は、ホック、スナップ、ボタン、バックル等を使用しても良い。また、第二係止部5は、衣装的な意味合い持つ部分なので、紐、リボンやビットパーツ、チェーン留め具、トグルボタン、穴あきのバックルベルトなど、アクセサリー的な留め具を使用しても良い。
【0050】
次に、
図1の実施例をもとに、ペット用コートの害虫忌避剤ポケット10について説明する。害虫忌避剤ポケット10の中に、害虫忌避剤含浸部材41を収納することで、害虫忌避剤が揮発し、マダニ、ノミ、蚊などの害虫が集まらなくなることから、ペットを守ることができる。
また、害虫忌避剤ポケット10の形状は、害虫忌避剤含浸部材14を収納するため、袋状に仕立て、本体部保冷剤ポケット12の近傍に備える。
【0051】
なお、本体部保冷剤ポケット12の近傍である理由は、夏の高温期でも、害虫忌避剤が短時間で揮発してしまうことを防ぎ、効果を長時間持続させるためである。
【0052】
また、近傍とは、本体部保冷剤ポケット12の周辺のことであり、保冷剤の冷却効果によって、害虫忌避剤の揮発を抑制し、長く効果が及ぶ箇所である。そのため本体部保冷剤ポケット12近くならばどこでも良い。具体的には、本体部保冷剤ポケット12と重ねての設置を含め、本体部保冷剤ポケット12をぐるりと囲んだ場所が好ましく、かつペット用コート1の表面、裏面どちらも含まれる。さらに、保冷剤の冷気は下方へ移動する特徴があるため、その点を考慮すると、本体部保冷剤ポケット12の下部が好ましい場合もある。なお、本体部保冷剤ポケット12から、左右上側に設置するなら、5cm以内が好ましいが、本体部被服2の大きさによっても任意とする。
【0053】
害虫忌避剤ポケット10を構成する素材は、本体部被服2と同様の素材でも良いが、害虫忌避剤が揮発して飛散しやすいように、メッシュ生地等がより好ましいと言える。
【0054】
害虫忌避剤は、天然由来の植物抽出成分である精油が好ましく、その理由は、皮膚の弱いペットに対し一番優しいからである。具体的な精油名としては、レモングラス、シトロネラ、ユーカリ、ペパーミント、ゼラニウム、ラベンダー、ローズマリー、ヒノキ等である。上記の中でも、さらに好ましいのは、レモングラス、シトロネラ、ユーカリ類ならレモンユーカリである。
【0055】
一方、天然由来の害虫忌避剤ではなく、害虫忌避効果のある薬品等を使用する場合、ペットへの副作用がないものが好ましい。
【0056】
使用する害虫忌避剤含浸部材41としては、害虫忌避剤を含浸可能な多孔質材、または脱脂綿などの布状のものが好ましい。
【0057】
害虫忌避剤ポケット10の配置について、実施例では、本体部保冷剤ポケット12の直下であり、左右の前肢付近にそれぞれ一箇所ずつ、左右の後ろ肢付近に一箇所ずつ、合計四箇所を備えている。
また、害虫忌避剤ポケット10は、小型のペットであれば2箇所にする、さらに、大型のペットであれば6箇所にするなど、任意である。さらにまた、マダニはペットが犬である時、耳や目など顔まわり及び、胸部も噛まれやすい箇所であるので、首部被服3に配置しても良い。
【0058】
なお、実施例のペット用コート1は、7から12kg程の犬種サイズで設計したが、この時、害虫忌避剤ポケット10のサイズは1辺が6cmである。この害虫忌避剤ポケット10の大きさは、ペット種ごとのサイズには関係がなく、6cm前後が好ましい。なぜならば、害虫忌避剤ポケット10の中に、害虫忌避剤含浸部材41を収納できれば良いからである。また、害虫忌避剤を揮発させることで害虫を忌避するため、害虫忌避剤を必要量だけ含浸できる大きさがあれば十分である。例えば、溶岩ビーズ、珪藻土、石膏等の多孔質材であれば、サイズは直径1.5から3cmほどのものでよく、またはフェルト、脱脂綿等の布状のものであれば、3cm角程が好ましい。
【0059】
さらにまた、例えば害虫忌避剤として使用するのが精油であれば、害虫忌避剤含浸部材ひとつに数滴含浸させるだけで3、4時間の効果を得ることができる。なぜならば、害虫忌避剤ポケット10を本体部保冷剤ポケットの近傍に備えるため、その冷却効果により、揮発時間を長く持続する事が可能になり、害虫忌避効果も長く持続できる。
【0060】
次に、ペット用コート1の熱中症予防機能として備えた本体部保冷剤ポケット12、襟部保冷剤ポケット18及び、首部保冷剤ポケット31について、実施例に沿って説明する。
本体部被服2には、本体部保冷剤ポケット12と襟部保冷剤ポケット18を備え、首部被服3には、首部保冷剤ポケット31を備えている。ペット用コート1の本体部保冷剤ポケット12、襟部保冷剤ポケット18及び首部保冷剤ポケット31に、冷却済みの保冷剤を収納し、犬50に着用させることで冷却する。
【0061】
ペット用コート1に備えられた本体部保冷剤ポケット12、襟部保冷剤ポケット18及び首部保冷剤ポケット31は、酷暑であっても、保冷剤の冷却時間を長く保たせるために、それぞれ断熱材を積層する。この断熱材は、遮熱、断熱、遮光の効果を有する素材が好ましい。また、断熱材は厚過ぎると加工が困難であり、小型ペットの夏用コートに積層する際は、使い勝手も悪いことから、できるだけ薄いものがよい。具体的な材質としては、アルミシートと不織布等が積層されたものであって、全体の厚みが1mmほどの断熱材が好ましい。
【0062】
続いて、
図1、
図3(b)及び
図4を用いて、本体部保冷剤ポケット12の構造について説明する。本体部保冷剤ポケット12は、本体部ベース28の内面側であり、体側面部23のあたりに、左右対象に設置する。さらに好ましいのは、体側面部23付近の足の付け根付近である。本体部ベース28の当該位置に、まず本体部保冷剤ポケット12より、やや大きめの下地生地14を重ね、その上に断熱材15を積層する。この部分を、本体部保冷剤ポケット12の保冷部分として、さらにその上に、犬50の胴体と当接する、保冷剤ポケット表生地16を重ね、仕立てる。そしてさらに、保冷剤が飛び出さないように、本体部保冷剤ポケット12の入り口に重ね蓋13として、1.5cmほど重なるよう仕立てる。
補足として、本体部保冷剤ポケット12の位置を決める際、犬がペットである時はハーネスの利用も考慮し、ハーネスと本体部保冷剤ポケット12が重ならないようにする。
【0063】
本体部保冷剤ポケット12に、保冷剤を入れた時、結露により湿気が溜まりやすくなるので、保冷剤ポケット表生地16は吸湿速乾性の生地が好ましい。なお、この吸湿速乾性の生地については後述する。また、本体部保冷剤ポケット12に積層する下地生地14は、本体部ベース28と同素材でも良いが、本体部ベース28が、通気性の高い綿レース生地や綿メッシュ生地などの場合は、綿や麻などで、ブロード織などの穴の空いていないものが好ましい。
【0064】
続いて、
図2を用いて、襟部保冷剤ポケット18の構造について説明する。襟部保冷剤ポケット18は、本体部ベース28を折り返した、襟部17の裏側に断熱材を積層し、収納部を仕立てる。保冷剤を収納したときに、飛び出さないよう留め具19を備える。なお、留め具19は、スナップやボタン等が好ましい。なお、襟部保冷剤ポケット18の断熱材15は、図には示していない。
【0065】
続いて、
図5、
図6、
図7及び
図8を用いて、首部保冷剤ポケット31の構造を説明する。環状部34の環状部表側生地36と、環状部内側生地35に挟持された中に、首部保冷剤ポケット31を備えている。首部保冷剤ポケット31の位置には、環状部表側生地36の内側部に断熱材15が積層されている。さらに、保冷剤ポケット31の入り口を保冷剤40が飛び出さないように、重ね蓋13として1.5cmほど重なるよう仕立てる。
【0066】
環状部内側生地35は、首部保冷剤ポケット31の保冷剤ポケット表生地16を兼ねる。そのため、首部保冷剤ポケット31の表面は、結露により湿気が溜まりやすくなるため、吸湿速乾性の生地を使用して仕立てた方が好ましい。
【0067】
なお、ペット用コート1に備える本体部保冷剤ポケット12と首部保冷剤ポケット31に使用する保冷剤ポケット表生地16は、例えばポリエステルを主素材とする化学繊維の吸湿速乾性の生地や、リネンや麻、シルク及びメリノウールなどの天然繊維でも良い。
【0068】
次に、
図1及び
図9を用いて、ペット用コート1の保冷剤ポケット設置箇所と保冷剤の収納数について説明する。実施例では、ペット用コート1を犬50に着用させた時、本体部保冷剤ポケット12は、左右の前肢付け根付近と後肢付け根近及び、襟部保冷剤ポケット18、首部保冷剤ポケット31は喉付近の任意の位置に設置する。これらの部分は、動脈が近くを通り、血液を冷却できることから、ペットの熱中症予防に効果的となる。
例えば、ペットが短頭種の犬である時、鼻が短く口腔の面積が狭く、唾液を気化して熱を逃すのが苦手なため体温調節機能が弱いが、首部被服3を着用することで熱中症予防効果を高めることができる。
【0069】
ペットコート1の保冷剤のポケット数について、実施例を
図2、
図4及び
図8を用いて説明する。本体部被服2の本体部保冷剤ポケット12は左右それぞれ一箇所に見える。しかし、ポケットの数は左右3個ずつ合計6個となっている。そして、襟部保冷剤ポケット18には左右で2個、首部保冷ポケット31は2個、収納可能となっている。
なお、保冷剤の収納数についても、対象のペットの大きさに合わせて、任意の数とする。例えば、本体部被服2についても、小型のペットであれば保冷剤ポケットを左右に1個ずつにする、または大型のペットであれば左右それぞれ4から6個にするなど任意とする。同様に、首部被服3の首部保冷剤ポケット31の数を、小型のペットであれば1個にする、または大型のペットであれば3から4箇所にするなど任意とする。また、襟部保冷剤ポケット18は、実施例のようにサイズに余裕があれば設置するのが好ましい。
さらに、収納する保冷剤数は、必ずしも保冷剤ポケット数の上限まで入れる必要はなく、日々の気温と湿度を考慮し、任意とする。
【0070】
保冷機能のついていないペット用保冷剤収納ベストなどと比べた際、ペットコート1は、ポケット部に断熱材を積層しているため、約3倍の冷却時間を保つことが可能である。
このように保冷時間を持続できる構造であるため、携帯型の保冷剤でも十分にペットを冷却することが可能である。
【0071】
また、保冷剤を収納した際のペット用コート1の重量は、ペットの大きさにより、保冷剤の収納数も任意としているので、ペットの負担にはならないと言える。さらに、人間より優れる犬を含めたペットの運動能力を考慮すれば、全てのポケットに保冷剤を収納したと仮定しても、ペットコート1の総重量程度であれば、ペットにかかる負担より、冷却効果で得られる涼感の方が、大きいと言える。
【0072】
本発明において使用される保冷剤は、可撓性を有する袋体内部に氷温下でも適度な柔軟性を保有するジェル状物を封入した物が妥当である。例えば、ジェル状物は、水及びポリアクリル酸ナトリウム等であり、市販品としては、株式会社トライ・カンパニーの「キャッチクール」がある。
また、保冷剤の大きさと重量は、ペットの大きさとペット用コートを相対的に見て判断するものとする。
【0073】
サイズ展開について説明する。ペット用コート1は、ペットの多少の体重の変動や、ペット種の違いによる多少のサイズ違いにも対応可能である。通常であれば小型のペットに5から6サイズ、中型のペットに5から6サイズ、大型のペットに5から6サイズの品揃えが必要であったが、本発明によると、各サイズ2から3サイズで適用可能となる。そのため、製造過程でサイズ違いの被服を作る上で、少ないサイズ種でも対応可能となり、生産コストや在庫数を減らす事も可能になった。
【0074】
本発明のペット用コート1は、以上の構成となる。本発明のペット用コートを、本実施の形態である、
図9、
図10(c)及び
図11を用い、犬50に着用方法を説明する。本体部被服2を、犬50の背中部から体側面にかけて覆い被せ、胸部21を第一係止部4で係止して、胸部21の緩みを第二係止部5で調節して係止する。また、腹部はベルト9と合わせた腹部係止部6a及び6b、7a及び7bで係止し、犬50の胴体囲に合わせて、本体部被服2の緩みを調節具8で調節し固定する。首部被服3は、伸縮する環状ギャザリング状構造からなるので、犬50の頭から被せ、犬の首を覆うだけで瞬時に固定できる。さらに本体部被服2と首部被服3は、本体部被服の接合部11a及び首部被服の接合部11bを接合する。
【0075】
このようにペット用コート1を着用させ、犬を散歩させるときは、首部20に隙間ができるので、その隙間からリードを取付け可能である。また、ペット用コート1は、ハーネスを使用することも可能である。なぜならば、本体部被服2が薄くしなやかな素材で構成されていることと、本体部保冷剤ポケット12の位置決めをしているからである。そのため、犬にハーネスをつけるときは、先にペット用コート1を着用させ、その上からハーネスを取付けることが可能である。さらに、ペット用コート1は、ハーネスの挿通孔からリードを取り付けるようにしてもよい。
【0076】
さらにまた、本体部被服2は、ブランケットのように広げることができるため、ペットに直接かけてあげるだけでも冷却可能である。このことにより車移動の際、ペットが寝てしまった場合も、窓から差し込む紫外線を含む日差しと暑さと熱中症の危険から、守ることが可能になる。
また、初夏の室内で、人間にとってエアコンが必要ない気温でも、本発明のペット用コートを着用させる、または掛けてあげるだけで、暑さに弱いペットでも快適に過ごすことが可能である。
【0077】
秋、暑さへの対策が必要なくなっても、害虫忌避は必要であるが、その際も本発明のペット用コート1であれば、害虫忌避機能だけを生かし着用させることが可能である。
【0078】
何よりペットの四肢を締め付けないので、ペット自身も通気性と涼感を得て、動きやすく快適に過ごすことが可能となった。
【符号の説明】
【0079】
1 ペット用コート
2 本体部被服
3 首部被服
4 第一係止部
5 第二係止部
6a 腹部係止部
6b 腹部係止部
7a 腹部係止部
7b 腹部係止部
8 調節具
9 ベルト
10 害虫忌避剤ポケット
11a 本体部被服の接合部
11b 首部被服の接合部
12 本体部保冷剤ポケット
13 重ね蓋
14 下地生地
15 断熱材
16 保冷剤ポケット表生地
17 襟部
18 襟部保冷剤ポケット
19 留め具
20 首部
21 胸部
22 背中部
23 体側面部
24 腹部
25 裾部
26 腹部係止部取付位置
27 本体部ベース
28 本体部ベース
29 バイアステープ
31 首部保冷剤ポケット
34 環状部
35 環状部内側生地
36 環状部表側生地
37 環状部のゴム設置箇所
38 ゴム
39 ギャザー
40 保冷剤
41 害虫忌避剤含浸部材
50 犬