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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188636
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】板状物積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20221214BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221214BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20221214BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20221214BHJP
   B32B 37/02 20060101ALI20221214BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20221214BHJP
   B23Q 3/18 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C03C27/12 H
H05K1/03 610B
H05K1/03 610H
H05K1/03 650
B32B17/10
B32B27/28 101
B32B37/02
C03C27/12 F
C03C27/12 Z
B65H37/04 A
B23Q3/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096843
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北川 翔
(72)【発明者】
【氏名】塚本 創
【テーマコード(参考)】
3C016
3F108
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
3C016HA15
3F108GA09
3F108GB01
3F108HA02
3F108HA13
4F100AG00A
4F100AK00C
4F100AK68B
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4G061AA13
4G061CB03
4G061CB16
4G061CD02
4G061CD18
4G061DA23
4G061DA62
4G061DA67
(57)【要約】
【課題】複数の層を積み重ねてなる板状物積層体の製造方法であって、これら複数の層の端面の位置が互いに異なる場合であっても、積層作業を行う途中で、既に積み重ねられた複数の層を反転させる必要も無く、容易に高品質な板状物積層体を得ることができる、板状物積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】端面111a・112aの位置が互いに相違するようにして、複数の層を順に積層する積層工程S01を備え、積層工程S01は、第1の層(ガラスシート112)の積層後、且つ第1の層に積層される第2の層(中間膜113)以降の層の積層前に、第2の層(中間膜113)以降の層の積層位置を規制する樹脂板用規制治具(規制治具)35を配置可能な位置決め装置30を用いて、第2の層(中間膜113)以降の層の位置決めを行う樹脂板位置決め工程(位置決め工程)S14を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を積み重ねてなる板状物積層体の製造方法であって、
端面の位置が互いに相違するようにして、複数の層を順に積層する積層工程を備え、
前記積層工程は、
第1の層の積層後、且つ当該第1の層に積層される第2の層以降の層の積層前に、
前記第2の層以降の層の積層位置を規制する規制治具を配置可能な位置決め装置を用いて、当該第2の層以降の層の位置決めを行う位置決め工程を有する、
ことを特徴とする板状物積層体の製造方法。
【請求項2】
前記規制治具は、
前記第2の層以降の層と接触して位置決めを行う当接部を有し、
水平方向に延びる軸心を中心にして回転移動することにより、
前記当接部を、
上方に位置する待機位置と、下方に位置して前記第2の層以降の層の積層位置を規制する規制位置との間で変位可能に設けられる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の板状物積層体の製造方法。
【請求項3】
前記位置決め装置は、
前記第1の層の積層位置を規制する第1層用規制治具を配置可能であり、
前記積層工程は、
前記位置決め工程の実行前に行われ、
前記第1の層の積層前に前記第1層用規制治具を配置して、前記第1の層の位置決めを行う第1層位置決め工程をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の板状物積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1層用規制治具は、
前記第1の層と接触して位置決めを行う第1層用当接部を有し、
水平方向に延びる軸心を中心にして回転移動することにより、
前記第1層用当接部を、
上方に位置する待機位置と、下方に位置して前記第1の層の積層位置を規制する規制位置との間で変位可能に設けられる、
ことを特徴とする、請求項3に記載の板状物積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第1層位置決め工程において、
前記第1の層に対して予め前記第2の層を積層させた状態で、前記規制治具を配置する、
ことを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の板状物積層体の製造方法。
【請求項6】
前記積層工程において、
前記位置決め工程の終了後、
前記規制治具及び前記第1層用規制治具を、積層された複数の層からともに水平方向に移動させて退避させる、
ことを特徴とする、請求項3~請求項5の何れか一項に記載の板状物積層体の製造方法。
【請求項7】
前記位置決め装置は、
前記複数の層の周縁に沿って設けられ、
前記規制治具及び前記第1層用規制治具の位置を、
前記複数の層に対して近接離間方向に単独で調整可能な位置調整機構を有する、
ことを特徴とする、請求項3~請求項6の何れか一項に記載の板状物積層体の製造方法。
【請求項8】
前記第2の層は、エチレン酢酸ビニルからなる、
ことを特徴とする請求項1~請求項7の何れか一項に記載の板状物積層体の製造方法。
【請求項9】
前記板状物積層体を構成する複数の層は、支持台上にて順に積層され、
当該支持台の支持面は、
前記位置決め装置に向かって下方に傾斜するように設けられる、
ことを特徴とする、請求項1~請求項8の何れか一項に記載の板状物積層体の製造方法。
【請求項10】
前記板状物積層体は、
前記第1の層、及び前記第2の層とともに、少なくとも当該第2の層に積層される第3の層を有し、
前記第1の層はガラスシートであり、
前記第2の層は中間膜であり、
第3の層は樹脂板である、
ことを特徴とする、請求項1~請求項9の何れか一項に記載の板状物積層体の製造方法。
【請求項11】
前記複数の層は平面視矩形状に形成され、
前記位置決め装置は、
少なくとも前記複数の層の角部を挟んだ2辺に沿って、複数設けられる、
ことを特徴とする、請求項1~請求項10の何れか一項に記載の板状物積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の層を積み重ねてなる板状物積層体の一例として、例えば、各種機器のカバー部材や、建材等の幅広い分野に用いられ、耐久性と軽量性に優れたガラス樹脂積層体が知られている。
上記ガラス樹脂積層体は、樹脂板の両面(または片面)において、接着層として機能する中間膜を介在させて、厚みの薄いガラスシートを積層一体化した構成からなり、主に、経時的に順に実施される積層工程、貼り合せ工程、穴・端面加工工程、洗浄工程、及び検査・梱包工程等を経て製造される。
【0003】
ここで、積層工程は、ガラス樹脂積層体の各層を構成する部材群(以下、適宜「ガラス樹脂部材群」と記載する)とともに、次工程の貼り合せ工程にて必要となる当て板及び離型シートを、所定の順に従い積層する工程である。
また、貼り合せ工程は、積層工程によって積層されたガラス樹脂部材群を、オートクレープ工法によって互いに貼り合せる工程である。なお、貼り合せ工程の終了後、上記の当て板及び離型シートは、ガラス樹脂部材群から除去される。
また、穴・端面加工工程は、最終製品であるガラス樹脂積層体の仕様に応じて、貼り合せ工程によって貼り合されたガラス樹脂部材群に、穴加工及び/または端面加工を行う工程である。
また、洗浄工程は、穴・端面加工によって加工されたガラス樹脂部材群を、洗浄液等によって洗浄する工程である。これにより、最終製品としてのガラス樹脂積層体が完成する。
さらに、検査・梱包工程は、洗浄工程の終了をもって完成したガラス樹脂積層体の品質検査(例えば、外形サイズの確認や、疵・欠け・埃等の有無の確認など)を実行した後、当該ガラス樹脂積層体を所定の梱包形態にて梱包する工程である。
そして、検査・梱包工程によって梱包されたガラス樹脂積層体は、その後、所定の保管場所にて保管され、或いは、所定の出荷先へと出荷される。
【0004】
上述した積層工程において、ガラス樹脂部材群を構成するガラスシート、中間膜、及び樹脂板、並びに当て板及び離型シートの積層作業は、主に作業者の手によって行われる。
具体的には、これらのガラス樹脂部材群、並びに当て板及び離型シートは、当て板、離型シート、ガラスシート、中間膜、樹脂板、中間膜、ガラスシート、離型シート、及び当て板の順に積み重ねて積層されるが、その中でもガラスシート、中間膜、及び樹脂板は、最終製品であるガラス樹脂積層体を構成する部材であることから、より正確な位置合わせを行いつつ、積層される必要がある。
【0005】
ここで、例えばガラス樹脂積層体を使用する際の特性や安全性を考慮して、樹脂板の外形サイズは、ガラスシートの外形サイズに比べて僅かに大きく設定されており、当該樹脂板は、周縁部の端面を、ガラスシートの周囲から僅かに食み出させた状態で積層される。
一方、ガラスシートと樹脂板との間に介在する中間膜は不透明であり、その外形サイズは、これらのガラスシートや樹脂板の外形サイズと比べて十分大きく設定されている。
従って、中間膜に積み重ねようとする樹脂板の上方から、当該中間膜の下層に位置するガラスシートの位置を正確に把握し難く、積層工程において積層作業を行う際、ガラスシートに対して正確な位置合わせを行いつつ、中間膜に樹脂板を積み重ねることは困難であった。
【0006】
そこで、このような、外形サイズが各々異なり、互いに端面の位置を相違させた状態で積層させる必要がある複数の部材を、より正確な位置合わせを行いつつ積み重ねるための技術の一例として、例えば特許文献1においては、複数の構成部材を順に積層して積層体を形成し、形成された積層体を反転させた後、当該積層体に対して、再び新たな構成部材を積層する技術が開示されている。
即ち、先ず始めに、樹脂板、中間膜、ガラスシート、離型シート、及び当て板の順に積み重ねてなる積層体を形成し、次に、当該積層体を反転させた後、最上段に位置することとなった樹脂板に対して、再び中間膜、ガラスシート、離型シート、及び当て板の順に積み重ねることとすれば、これらガラス樹脂部材群を構成するガラスシート、中間膜、及び樹脂板、並びに当て板及び離型シートを、正確な位置合わせを行いつつ容易に積み重ねることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-217697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一旦、正確な位置合わせを行いつつ積み重ねられた上記積層体を反転させるためには、積み重ねられた複数の部材の位置が反転時にズレないように保持するための装置が別途必要となり、設備コストの増大を引き起こす要因となり得る。
また、積層工程において、ガラス樹脂部材群を構成するガラスシート、中間膜、及び樹脂板、並びに当て板及び離型シートの積層作業は、反転作業が追加されることでより複雑になり、最終製品としてのガラス樹脂積層体の品質低下を引き起こす要因ともなり得る。
【0009】
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、複数の層を積み重ねてなる板状物積層体の製造方法であって、これら複数の層の端面の位置が互いに異なる場合であっても、積層作業を行う途中で、既に積み重ねられた複数の層を反転させる必要も無く、容易に高品質な板状物積層体を得ることができる、板状物積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、本発明に係る板状物積層体の製造方法は、複数の層を積み重ねてなる板状物積層体の製造方法であって、端面の位置が互いに相違するようにして、複数の層を順に積層する積層工程を備え、前記積層工程は、第1の層の積層後、且つ当該第1の層に積層される第2の層以降の層の積層前に、前記第2の層以降の層の積層位置を規制する規制治具を配置可能な位置決め装置を用いて、当該第2の層以降の層の位置決めを行う位置決め工程を有することを特徴とする。
このような構成を有することにより、例えば、第1の層としてガラスシートを積層し、当該ガラスシートに対して、中間膜、及び樹脂板を第2の層以降の層、即ち第2の層、及び第3の層として順に積層する場合において、前述したように、積み重ねようとする樹脂板の上方から、中間膜を介してガラスシートの位置を正確に把握し難い場合であっても、既に積み重ねられた複数の層を反転させる必要も無く、位置決め装置の規制治具によって、ガラスシートに対して正確な位置合わせを行いつつ、中間膜に樹脂板を積み重ねることができる。
【0012】
また、本発明に係る板状物積層体の製造方法において、前記規制治具は、前記第2の層以降の層と接触して位置決めを行う当接部を有し、水平方向に延びる軸心を中心にして回転移動することにより、前記当接部を、上方に位置する待機位置と、下方に位置して前記第2の層以降の層の積層位置を規制する規制位置との間で変位可能に設けられることが好ましい。
このような構成を有することにより、下方から上方に向かって順に積み重ねられる複数の層に対して、既に積み重ねられた層に干渉等することなく、待機位置から規制位置に当接部を変位させることができる。
【0013】
また、本発明に係る板状物積層体の製造方法において、前記位置決め装置は、前記第1の層の積層位置を規制する第1層用規制治具を配置可能であり、前記積層工程は、前記位置決め工程の実行前に行われ、前記第1の層の積層前に前記第1層用規制治具を配置して、前記第1の層の位置決めを行う第1層位置決め工程をさらに有することが好ましい。
このような構成を有することにより、位置決め装置の第1層用規制治具によって、第2の層以降の層、即ち中間膜、及び樹脂板に対して、第1の層であるガラスシートを、所定の積層位置に正確に積層することができる。
【0014】
また、本発明に係る板状物積層体の製造方法において、前記第1層用規制治具は、前記第1の層と接触して位置決めを行う第1層用当接部を有し、水平方向に延びる軸心を中心にして回転移動することにより、前記第1層用当接部を、上方に位置する待機位置と、下方に位置して前記第1の層の積層位置を規制する規制位置との間で変位可能に設けられることが好ましい。
このような構成を有することにより、下方から上方に向かって順に積み重ねられる複数の層に対して、既に積み重ねられた層に干渉等することなく、待機位置から規制位置に第1層用当接部を変位させることができる。
【0015】
また、本発明に係る板状物積層体の製造方法においては、前記第1層位置決め工程において、前記第1の層に対して予め前記第2の層を積層させた状態で、前記規制治具を配置することが好ましい。
このような構成を有することにより、例えば、離型シートの上面に第1の層としてガラスシートを積み重ね、その後、当該ガラスシートの上面に第2の層として中間膜を積み重ねる場合、離型シートに対するガラスシートの位置ズレを防止することができ、より高品質な積層形態を維持することができる。
【0016】
また、本発明に係る板状物積層体の製造方法は、前記積層工程において、前記位置決め工程の終了後、前記規制治具及び前記第1層用規制治具を、積層された複数の層からともに水平方向に移動させて退避させることが好ましい。
このような構成を有することにより、正確な位置合わせを行いつつ、下方から上方に向かって順に積み重ねられた複数の層に対して、干渉等することなく規制治具及び第1層用規制治具を退避させることができ、高品質な積層形態を維持することができる。
【0017】
また、本発明に係る板状物積層体の製造方法において、前記位置決め装置は、前記複数の層の周縁に沿って設けられ、前記規制治具及び前記第1層用規制治具の位置を、前記複数の層に対して近接離間方向に単独で調整可能な位置調整機構を有することが好ましい。
このような構成を有することにより、外形サイズの異なる多種類の板状物積層体であっても、各種類の板状物積層体に対して確実に対応可能であり、より正確な位置合わせを行いつつ、各板状物積層体を構成する複数の層を積層することができる。
【0018】
また、本発明に係る板状物積層体の製造方法において、前記第2の層は、エチレン酢酸ビニルからなることが好ましい。
このように、本発明に係る板状物積層体の製造方法では、不透明なエチレン酢酸ビニルを、第1の層に積層される第2の層として用いても、第1の層に対する第2の層以降の層の位置ズレを防止することができる。
【0019】
また、本発明に係る板状物積層体の製造方法において、前記板状物積層体を構成する複数の層は、支持台上にて順に積層され、当該支持台の支持面は、前記位置決め装置に向かって下方に傾斜するように設けられることが好ましい。
このような構成を有することにより、例えば、離型シートの上面に第1の層としてガラスシートを積み重ね、その後、当該ガラスシートの上面に第2の層として中間膜を積み重ねる場合、位置決め装置によって、離型シートに対するガラスシートの位置ズレを防止することができ、より高品質な積層形態を維持することができる。
【0020】
また、本発明に係る板状物積層体の製造方法において、前記板状物積層体は、前記第1の層、及び前記第2の層とともに、少なくとも当該第2の層に積層される第3の層を有し、前記第1の層はガラスシートであり、前記第2の層は中間膜であり、第3の層は樹脂板であることが好ましい。
このような、少なくとも順に積層されるガラスシート、中間膜、及び樹脂板を有する板状物積層体に対して、本発明に係る板状物積層体の製造方法によれば、より正確な位置合わせを行いつつ、これら複数の部材を積層することができる。
【0021】
また、本発明に係る板状物積層体の製造方法において、前記複数の層は平面視矩形状に形成され、前記位置決め装置は、少なくとも前記複数の層の角部を挟んだ2辺に沿って、複数設けられることが好ましい。
このような構成を有することにより、位置決め装置によって、容易且つ正確に、板状物積層体を構成する複数の層の積層位置を規制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係る板状物積層体の製造方法によれば、板状物積層体を構成する複数の層の端面の位置が、互いに異なる場合であっても、積層作業を行う途中で、既に積み重ねられた複数の層を反転させる必要も無く、容易に高品質な板状物積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る板状物積層体の製造方法の一実施形態であって、積層工程の手順を経時的に示した工程図である。
図2】積層工程によって積層される、積層構造体の全体的な構成を示した概略側面図である。
図3】積層工程を実施する積層装置の全体的な構成を示した平面図である。
図4】位置決め装置の全体的な構成を示した図であって、(a)はその平面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は図4(a)中の矢視Aの方向に見た断面側面図である。
図5】積層工程の各段階における積層装置の状態を示した図であって、(a)は当て板及び離型シートを積層する際のストッパ近傍の状態を示した拡大模式図であり、(b)はガラスシート用規制治具を用いてガラスシートを積層する際の位置決め装置近傍の状態を示した拡大模式図であり、(c)は積層されたガラスシートに対して、さらに中間膜を積層する際の位置決め装置近傍の状態を示した拡大模式図である。
図6】積層工程の各段階における積層装置の状態を示した図であって、(a)は樹脂板用規制治具を規制位置に変位させる際の位置決め装置近傍の状態を示した拡大模式図であり、(b)は樹脂板用規制治具を用いて樹脂板を積層する際の位置決め装置近傍の状態を示した拡大模式図であり、(c)は位置決め装置を退避位置に退避させる際の位置決め装置の状態を示した拡大模式図である。
図7】別実施形態における積層装置の構成を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について、図1乃至図7を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図3図5、及び図6中に示した矢印の方向によって、積層装置1の上下方向、前後方向、及び左右方向を規定して記述する。
また、図7中に示した矢印の方向によって、別実施形態における積層装置201の上下方向、及び前後方向を規定して記述する。
さらに、図4中に示した矢印の方向によって、位置決め装置30の上下方向、前後方向、及び左右方向を規定して記述する。
【0025】
[板状物積層体の製造方法]
先ず、本実施形態によって具現化される、板状物積層体の製造方法について、図1図3を用いて説明する。
【0026】
本実施形態における板状物積層体の製造方法は、複数の層を積み重ねてなる板状物積層体を製造する方法であって、積層工程S01において、これら複数の層の端面の位置が互いに相違する場合であっても、正確な位置合わせを行いつつ、当該複数の層を所定の順に積み重ねて積層することを可能とする方法である。
【0027】
ここで、本実施形態において製造される板状物積層体の一例として、例えば、各種機器のカバー部材や、建材等の幅広い分野に用いられ、耐久性と軽量性に優れたガラス樹脂積層体110が挙げられる。
【0028】
ガラス樹脂積層体110は、例えば図2に示すように、樹脂板111と、樹脂板111の両面及び/または片面(本実施形態においては両面)に配置されるガラスシート112・112と、これらの樹脂板111及びガラスシート112の間に各々介在される中間膜113・113とにより構成される。
【0029】
樹脂板111は、例えば、ポリカーボネート、アクリル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、またはPVC(ポリ塩化ビニル)等の部材からなり、矩形平板状に形成される。
また、樹脂板111の厚み寸法は、0.2mm~50mmであることが好ましく、0.5mm~20mmであることがより好ましく、1mm~15mmであることがさらに好ましい。
なお、樹脂板111は、透明または不透明の何れであってもよい。
【0030】
ガラスシート112は、矩形シート状に形成され、その材質については、ケイ酸塩ガラス、またはシリカガラスであることが好ましく、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、またはアルミノケイ酸塩ガラスであることがより好ましく、無アルカリガラスであることがさらに好ましい。無アルカリガラスを用いると、透明性が向上するとともに、アルカリ溶出による劣化を防ぐことができる。
また、ガラスシート112の厚み寸法は、強度と軽量性の観点から、0.01mm~1mmであることが好ましく、0.03mm~0.8mmであることがより好ましく、0.05mm~0.5mmであることがさらに好ましい。
【0031】
なお、ガラスシート112は、例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、またはリドローダウンドロー法等のダウンドロー法や、フロート法によって成形されたものが利用できる。
また、樹脂板111の両面に配置される一対のガラスシート112・112は、同一の種類のガラス組成を使用してもよいし、異なった種類のガラス組成を使用してもよい。
さらに、これら一対のガラスシート112・112の厚み寸法は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0032】
中間膜113は、樹脂板111とガラスシート112とを接着する接着剤として機能する部材であって、矩形シート状に形成される。
中間膜113の材質については、特に限定されず、熱可塑性接着シート、熱架橋性接着シート等を使用することができ、例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル)、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、COP、アクリル系熱可塑性接着シート等を採用することができる。
【0033】
本実施形態においては、一般的に表面が粗く摩擦係数が大きいEVA(エチレン酢酸ビニル)系の熱可塑性接着シートによって、中間膜113が構成されており、これにより、中間膜113を介在して積層された樹脂板111及びガラスシート112において、これらの両部材111・113が、互いに位置ズレするのを防止することができる。
また、EVAにより構成される中間膜113は不透明であり、加熱することにより透明に変化する。
【0034】
中間膜113の厚み寸法は、0.025mm~2mmであることが好ましく、0.05mm~1.6mmであることがより好ましく、0.1mm~0.8mmであることがさらに好ましい。
【0035】
ガラス樹脂積層体110を構成するこれらの各部材群111・112・113(以下、適宜「ガラス樹脂部材群110A」と記載する)は、積層工程S01において、当該積層工程S01の次工程である貼り合せ工程にてオートクレープ工法を行う際に必要となる当て板121及び離型シート122とともに、作業者の手によって順に積み重ねられて積層され、これにより積層構造体101が構築される。
具体的には、積層工程S01において、これらのガラス樹脂部材群110A、並びに当て板121及び離型シート122は、当て板121、離型シート122、ガラスシート112、中間膜113、樹脂板111、中間膜113、ガラスシート112、離型シート122、及び当て板121の順に積層され、積層構造体101が構築される。
【0036】
このように、本実施形態におけるガラス樹脂積層体110は、下から順に積み重ねられる第1の層、及び第2の層とともに、少なくとも当該第2の層に積層される第3の層を有し、上記第1の層はガラスシート112によって形成され、上記第2の層は中間膜113によって形成され、また第3の層は樹脂板111によって形成された構成からなる。
【0037】
そして、このような、少なくとも順に積層されるガラスシート112、中間膜113、及び樹脂板111を有するガラス樹脂積層体110に対して、本実施形態における板状物積層体の製造方法によれば、後述する積層装置1によって積層工程S01を行うことにより、より正確な位置合わせを行いつつ、これら複数の部材111・112・113を積層することができる。
【0038】
なお、当て板121は、ガラスシート112と同一の種類、或いは異なった種類の何れのガラス組成のガラス板や、金属製やセラミック製の板を使用してもよいが、例えば本実施形態においては、ソーダライムガラスからなる矩形平板状のガラス板である。
また、当て板121の厚み寸法は、強度の観点から、ガラスシート112の厚み寸法と比べて、十分大きく設定されるとともに、その外形サイズは、樹脂板111の外形サイズに比べて略同程度に設定されている。
【0039】
一方、離型シート122は、摩擦係数が小さい樹脂製シートからなり、例えば本実施形態においては、PETからなる矩形シート状に形成される。
また、離型シート122の外形サイズは、当て板121の外形サイズに比べて十分大きくなるように予め設定されており、当該離型シート122は、その周縁部の端面を、当て板121の周囲から十分食み出させた状態で、当て板121とガラスシート112との間に介在される。
【0040】
上記ガラス樹脂部材群110Aにおける各部材は、その外形サイズが、それぞれ異なるように予め設定されている。
具体的には、例えば、上記オートクレーブ工法を行う際に樹脂板111が僅かに収縮することや、その他の理由を考慮して、当該樹脂板111の外形サイズは、ガラスシート112の外形サイズに比べて、僅かに大きくなるように予め設定されている。
また、中間膜113の外形サイズは、当該樹脂板111とガラスシート112との接触面全体に亘って介在するように、これら樹脂板111及びガラスシート112の外形サイズに比べて十分大きくなるように、予め設定されている。
【0041】
そして、積層工程S01において、樹脂板111は、周縁部の端面111aを、ガラスシート112の周縁部の端面121aに対して、寸法X(本実施形態においては、寸法X=約1mm)だけ僅かに食み出させた状態で積層される。
【0042】
ここで上述したように、ガラスシート112と樹脂板111との間に介在する中間膜113は、不透明であり、且つその外形サイズが、これらのガラスシート112や樹脂板111の外形サイズと比べて十分大きく設定されていることから、中間膜113に積み重ねようとする樹脂板111の上方から、当該中間膜113の下層に位置するガラスシート112の位置を、正確に把握することは難しい。
従って、積層工程S01において、当て板121から順に、離型シート122、ガラスシート112、及び中間膜113までは比較的容易に積み重ねることができるものの、その後、ガラスシート112に対して正確な位置合わせを行いつつ、中間膜113に樹脂板を積み重ねることは困難である。
【0043】
そこで、本実施形態においては、後述する積層装置1に備えられる位置決め装置30を用いて、少なくとも、ガラスシート112の積層後、且つ樹脂板111の積層前に、当該樹脂板111の位置決めを行うことで(後述する樹脂板位置決め工程S14)、樹脂板111を所定の位置に正確に積層することを可能とし、構築される積層構造体101の品質向上を図ることとしている。
【0044】
具体的には、図1に示すように、積層工程S01は、当て板・離型シート積層工程S11、ガラスシート位置決め工程S12、中間膜積層工程S13、及び樹脂板位置決め工程S14等を有し、これらの各工程を経て、積層構造体101が構築される。
【0045】
当て板・離型シート積層工程S11は、積層装置1の支持台10上に、当て板121、及び離型シート122を順に積み重ねて積層する工程である。
具体的には、積層装置1において、支持台10には、当て板121の位置を規制するストッパ20が設けられており、当該ストッパ20によって位置決めを行いつつ、当て板121を支持台10上に載置し、その後、当て板121の上面に離型シート122を積層する。
【0046】
ガラスシート位置決め工程S12は、第1層位置決め工程の一例であって、当て板・離型シート積層工程S11によって積層された離型シート122の上面に、正確な位置合わせを行いつつ、ガラスシート112を積み重ねて積層する工程である。
具体的には、後述するように、位置決め装置30には、ガラスシート112の積層位置を規制するガラスシート用規制治具34が設けられており、当て板・離型シート積層工程S11の終了後にガラスシート用規制治具34を所定位置(後述する規制位置P12。図5(b)を参照)に配置し、その後、当該ガラスシート用規制治具34によって位置決めを行いつつ、離型シート122の上面にガラスシート112を積層する。
【0047】
このように、本実施形態においては、後述する樹脂板位置決め工程S14の実行前であって、ガラス樹脂積層体110の第1の層としてガラスシート112を積層する前に、第1層用規制治具の一例であるガラスシート用規制治具34を用いて、当該ガラスシート112の位置決めを行うガラスシート位置決め工程S12を有する。
このような構成を有することにより、位置決め装置30のガラスシート用規制治具34によって、第2の層以降の層、即ち中間膜113、及び樹脂板111に対して、第1の層であるガラスシート112を、所定の積層位置に正確に積層することができる。
【0048】
中間膜積層工程S13は、ガラスシート位置決め工程S12によって積層されたガラスシート112の上面に、中間膜113を積み重ねて積層する工程である。
具体的には、ガラスシート112の上面全体を覆うようにして、当該ガラスシート112の周囲から食み出させた状態で、ガラス樹脂積層体110の第2の層として中間膜113を積層する。
【0049】
樹脂板位置決め工程S14は、位置決め工程の一例であって、中間膜積層工程S13によって積層された中間膜113の上面に、正確な位置合わせを行いつつ、樹脂板111を積み重ねて積層する工程である。
具体的には、後述するように、位置決め装置30には、樹脂板111の積層位置を規制する樹脂板用規制治具35がさらに設けられており、中間膜積層工程S13の終了後に樹脂板用規制治具35を所定位置(後述する規制位置P22。図6(a)を参照)に配置し、その後、当該樹脂板用規制治具35によって位置決めを行いつつ、中間膜113の上面に樹脂板111を積層する。
【0050】
このように、本実施形態においては、少なくとも、ガラス樹脂積層体110の第1の層としてガラスシート112を積層した後、当該ガラスシート112に積層される第2の層としての中間膜113以降の層(本実施形態においては、樹脂板111)を積層する前に、規制治具の一例である樹脂板用規制治具35を用いて、当該樹脂板111の位置決めを行う樹脂板位置決め工程S14を有する。
このような構成を有することにより、第1の層としてガラスシート112を積層し、当該ガラスシート112に対して、中間膜113、及び樹脂板111を第2の層以降の層、即ち第2の層、及び第3の層として順に積層する場合において、上述したように、積み重ねようとする樹脂板111の上方から、中間膜113を介してガラスシート112の位置を正確に把握し難い場合であっても、既に積み重ねられた複数の層を反転させる必要も無く、位置決め装置30の樹脂板用規制治具35によって、ガラスシート112に対して正確な位置合わせを行いつつ、中間膜113に樹脂板111を積み重ねることができる。
【0051】
樹脂板位置決め工程S14の終了後、積層された樹脂板111に対して、引き続き、中間膜113、ガラスシート112、離型シート122、及び当て板121の順に、これらの部材を積層する。
これにより、積層構造体101が構築され、積層工程S01は完了する。
【0052】
なお、樹脂板位置決め工程S14の終了後における、これら部材112・113・121・122の積層作業において、樹脂板111の外形サイズは、ガラスシート112の外形サイズと比べて僅かに大きく設定されていることから、たとえ不透明であっても柔軟性の高い中間膜113に覆われた樹脂板111の位置は、ガラスシート112の上方からでも比較的容易に把握することができるため、樹脂板111に対して正確な位置合わせを行いつつ、中間膜113にガラスシート112を容易に積み重ねることができる。
【0053】
[積層装置1の全体構成]
次に、前述した積層工程S01を行うための積層装置1の全体構成について、図3を用いて説明する。
【0054】
積層装置1は、主に、支持台10、ストッパ20、及び位置決め装置30等を備える。
【0055】
支持台10は、積層装置1の基部を構成するものであり、当該支持台10上において、前述した積層構造体101が構築される。
【0056】
支持台10は、例えば、平面視にて矩形枠体形状に形成されたフレーム11、及びフレーム11の上面に設けられる複数の搬送手段12・12・・・等を有する。
フレーム11は、その外形サイズ(前後方向の寸法、及び左右方向の寸法)が、積層構造体101の外形サイズに比べて十分大きく設定されている。
また、各搬送手段12は、例えば本実施形態においては、任意の方向に転動可能な複数のローラボールベアリング12a・12a・・・を有し、一方に延びるフリーベアコンベアにより構成されている。
【0057】
そして、複数の搬送手段12・12・・・は、ローラボールベアリング12aを上方に向けた状態で各々平行に配置され、フレーム11の上面に架設される。
【0058】
なお、搬送手段12の構成については、本実施形態に限定されることはなく、支持台10に載置された積層構造体101を略水平上の任意の方向に移動可能な構成であれば、何れのような構成であってもよい。
【0059】
ストッパ20は、積層構造体101の構成部材である当て板121を、支持台10上の所定の載置位置P1に規制するものである。
ストッパ20・20・20は、1基の積層装置1において複数(本実施形態においては3個)設けられ、載置位置P1に載置された平面視矩形状の当て板121に対して、少なくとも、当該当て板121の角部を挟んだ2辺(本実施形態においては、左端面及び後端面の2辺)に沿って配置される。
また、各ストッパ20は、当て板121の端面と接触可能な当接面20aを有し、当該当接面20aをフレーム11の内側に向けた状態で、当該フレーム11の上面に設置される。
【0060】
そして、支持台10に載置された当て板121を搬送手段12によって移動させ、上記2辺を複数のストッパ20・20・20の当接面20a・20a・20aに各々押し当てることにより、当該当て板121の位置は、載置位置P1にて規制される。
【0061】
位置決め装置30は、積層構造体101の構成部材であって、ガラス樹脂積層体110の第1の層を形成するガラスシート112、及び第3の層を形成する樹脂板111の積層位置を、各々規制するものである。
位置決め装置30・30・30は、1基の積層装置1において複数(本実施形態においては3個)設けられ、載置位置P1に載置された当て板121に積層される、平面視矩形状の樹脂板111及びガラスシート112の周縁に沿って配置される。
また、これら複数の位置決め装置30・30・30は、後述する固定プレート31・31・31を介して、フレーム11の上面に各々設置される。
【0062】
なお、位置決め装置30の詳細な構成については、後述する。
【0063】
[位置決め装置30の構成]
次に、位置決め装置30の構成について、図3及び図4を用いて詳細に説明する。
なお、図3において、積層装置1に設けられる複数の位置決め装置30・30・30は、互いに同等の構成からなり、単にフレーム11に対する配置位置が相違するだけであるため、以下の説明においては、主に、載置位置P1にて積層される樹脂板111(または、ガラスシート112)の後端面に沿って配置される位置決め装置30(図3中における位置決め装置30X)について記述し、他の位置に配置される位置決め装置30の記載については、適宜省略する。
【0064】
図4(a)において、位置決め装置30は、主に固定プレート31、移動規制手段32、移動プレート33、ガラスシート用規制治具34、樹脂板用規制治具35、及び位置調整機構36等を備える。
【0065】
固定プレート31は、位置決め装置30の基部を構成するものである。
固定プレート31は、例えば本実施形態においては、十分な剛性を有した矩形平板状の部材によって形成され、上下方向に平面を向けた状態で配置される。
【0066】
移動規制手段32は、移動プレート33の移動方向を規制するものである。
移動規制手段32は、例えば本実施形態においては、リニアガイドウエイによって構成され、一方向(本実施形態においては、前後方向)に延びる規制レール32Aと、規制レール32Aに沿って移動可能な移動ブロック32Bとを有する。
【0067】
そして、移動規制手段32は、固定プレート31の上面において、移動ブロック32Bを上方に向けた状態で配置され、規制レール32Aが固定プレート31に設置される。
【0068】
なお、移動規制手段32の構成については、本実施形態に限定されるものではなく、移動プレート33の移動方向を規制可能な構成であれば、何れのような構成であってもよい。
【0069】
移動プレート33は、ガラスシート用規制治具34及び樹脂板用規制治具35を支持するものである。
移動プレート33は、例えば本実施形態においては、十分な剛性を有した矩形平板状の部材によって形成される。
【0070】
そして、移動プレート33は、固定プレート31の上方において、当該固定プレート31と平行に配置されるとともに、移動ブロック32Bの上面に設けられる。
これにより、移動プレート33は、移動規制手段32によって移動方向を規制されつつ、固定プレート31に対して相対的に、水平方向の一方向(前後方向)に往復移動可能に構成される。
【0071】
ガラスシート用規制治具34は、前述したように、第1層用規制治具の一例であって、積層工程S01において、ガラス樹脂積層体110の第1の層として積層されるガラスシート112の積層位置を、規制するものである。
ガラスシート用規制治具34は、支持部材34A、回動軸34B、回動部材34C、及び当接部材34D等を有する。
【0072】
支持部材34Aは、回動部材34Cを回転移動可能に支持するものである。
支持部材34Aは、例えば図4(c)に示すように、上下方向に延びる支持部材側本体部34A1と、支持部材側本体部34A1の下端部に設けられ、平滑な取付け面34A2aを有する根元部34A2とを有する。
【0073】
支持部材側本体部34A1の上端部には、水平方向、且つ移動プレート33の移動方向との直交方向(本実施形態においては、左右方向)に貫通する、貫通孔34A1aが設けられる。
また、貫通孔34A1aには、回動軸34Bが同軸上に嵌め込まれる。
【0074】
そして、図4(a)に示すように、支持部材34Aは、移動プレート33の上面において、上記貫通孔34A1aの軸方向の一方側(本実施形態においては、左側)に配置され、後述する位置調整機構36を介在しつつ、取付け面34A2aを介して当該移動プレート33に設置される。
【0075】
回動部材34Cは、回動軸34Bの軸心を中心にして、当接部材34Dを回転移動可能に支持するものである。
回動部材34Cは、例えば、回動軸34Bの軸方向(左右方向)との直交方向(本実施形態においては、前後方向)に延びる回動部材側本体部34C1と、回動部材側本体部34C1の延びる方向の一端部(本実施形態においては、後端部)に設けられる一対のハウジング部34C2・34C2とを有する。
【0076】
上記一対のハウジング部34C2・34C2は、回動軸34Bの軸方向(左右方向)に対向して設けられ、その離間寸法は、支持部材側本体部34A1の上端部の幅寸法(左右方向の寸法)に比べて僅かに大きく設定されている。
また、一対のハウジング部34C2・34C2には、上記軸方向(左右方向)に同軸上に貫通する貫通孔34C2a・34C2aが、各々設けられている。
【0077】
一方、図4(c)に示すように、回動部材側本体部34C1の延びる方向の他端部(本実施形態においては、前端部)には、下方に突出する突出部34C3が設けられ、当該突出部34C3の下端部には、平滑な取付け面34C3aが形成される。
また、回動部材側本体部34C1の前方側には、取付け面34C3aを介して当接部材34Dが取付けられる。
【0078】
そして、回動部材34Cは、一対のハウジング部34C2・34C2の間に、支持部材側本体部34A1の上端部を介在させるとともに、上記一対の貫通孔34C2a・34C2aが、支持部材側本体部34A1の貫通孔34A1aと同軸上に位置するように配置される。
また、上記一対の貫通孔34C2a・34C2aには、例えばブッシング等からなる軸受部材(図示せず)が設けられ、同軸上に配置されたこれらの貫通孔34A1a・34C2a・34C2aに対して、回動軸34Bが嵌め込まれる。
これにより、回動部材34Cは、取付け面34C3aに取付けられた当接部材34Dとともに、支持部材34Aに対して、水平方向に延びる回動軸34Bの軸心を中心にして、上下方向に回転移動可能に設けられる。
【0079】
当接部材34Dは、ガラス樹脂積層体110の第1の層として積層されるガラスシート112の積層位置を規制する際、当該ガラスシート112の端面と接触するものである。
当接部材34Dは、例えば図4(a)に示すように、第1層用当接部の一例であって円弧形状の当接端面34D1を有する、略矩形平板状の熱可塑性樹脂部材によって形成される。なお、当接部材34Dの形状については、本実施形態に限定されるものではなく、上記の当接端面34D1を有する限りにおいて、何れのような形状であってもよい。
また、当接部材34Dの厚み寸法は、上記ガラスシート112の厚み寸法に比べて、やや大きく設定されている。
【0080】
そして、図4(c)に示すように、当接部材34Dは、上下方向に平面を向けつつ、回転部材側本体部34C1の前端部に対して、当接端面34D1をさらに前方に突出させた状態で、取付け面34C3aに取付けられる。
【0081】
このように、ガラスシート用規制治具34は、水平方向(左右方向)に延びる回動軸34Bの軸心を中心にして、回動部材34Cを回転移動させることにより、当接端面34D1を、上方に位置する待機位置P11と、下方に位置してガラスシート112の積層位置を規制する規制位置P12との間で変位可能な構成となっている。
従って、積層工程S01において、下方から上方に向かって順に積み重ねられる複数の層(ガラス樹脂部材群110A、並びに当て板121及び離型シート122)に対して、既に積み重ねられた当て板121、及び離型シート122に干渉等することなく、待機位置P11から規制位置P12に当接端面34D1を変位させることができる。
【0082】
そして、上記規制位置P12に位置した状態において、当接部材34Dの下面は、上記第1の層として積層されるガラスシート112の下面と、略同一の仮想水平面上に位置するように設定されており、当該ガラスシート112の端面を、当接部材34Dの当接端面34D1に押し当てることにより、上記ガラスシート112の積層位置が規制され、ガラスシート112の位置決めが行われる。
【0083】
樹脂板用規制治具35は、前述したように、規制治具の一例であって、積層工程S01において、ガラス樹脂積層体110の第3の層として積層される樹脂板111の積層位置を、規制するものである。
樹脂板用規制治具35は、図4(a)に示すように、支持部材35A、回動軸35B、回動部材35C等を有する。
【0084】
支持部材35Aは、移動プレート33より、回動部材35Cを回転移動可能に支持するものである。
支持部材35Aは、上述したガラスシート用規制治具34の支持部材34Aと略同等な構成からなり、例えば図4(b)に示すように、上下方向に延びる支持部材側本体部35A1と、支持部材側本体部35A1の下端部に設けられ、平滑な取付け面35A2aを有する根元部35A2とを有する。
【0085】
支持部材側本体部35A1の上端部には、水平方向、且つ移動プレート33の移動方向との直交方向(左右方向)に貫通する、貫通孔35A1aが設けられる。
また、貫通孔35A1aには、回動軸35Bが同軸上に嵌め込まれる。
【0086】
そして、図4(a)に示すように、支持部材35Aは、移動プレート33の上面において、上記貫通孔35A1aの軸方向の他方側(本実施形態においては、右側)に配置され、後述する位置調整機構36を介在しつつ、取付け面35A2aを介して当該移動プレート33に設置される。
【0087】
回動部材35Cは、回動軸35Bの軸心を中心にして回転移動可能に設けられ、ガラス樹脂積層体110の第3の層として積層される樹脂板111の積層位置を規制する際、当該樹脂板111の端面と接触するものである。
回動部材35Cは、例えば、回動軸35Bの軸方向(左右方向)との直交方向(本実施形態においては、前後方向)に延びる回動部材側本体部35C1と、回動部材側本体部35C1の延びる方向の一端部(本実施形態においては、後端部)に設けられる一対のハウジング部35C2・35C2とを有する。
【0088】
上記一対のハウジング部35C2・35C2は、回動軸35Bの軸方向(左右方向)に対向して設けられ、その離間寸法は、支持部材側本体部35A1の上端部の幅寸法(左右方向の寸法)に比べて僅かに大きく設定されている。
また、一対のハウジング部35C2・35C2には、上記軸方向(左右方向)に同軸上に貫通する貫通孔35C2a・35C2aが、各々設けられている。
【0089】
一方、図4(b)に示すように、回転部材側本体部35C1の延びる方向の他端部(本実施形態においては、前端部)には、下方に延びる延出部35C3が設けられ、当該延出部35C3の前側面は、平面視円弧状に形成され、上記樹脂板111の端面と接触可能な当接側面35C3aとして構成される。
【0090】
そして、回転部材35Cは、一対のハウジング部35C2・35C2の間に、支持部材側本体部35A1の上端部を介在させるとともに、上記一対の貫通孔35C2a・35C2aが、支持部材側本体部35A1の貫通孔35A1aと同軸上に位置するように配置される。
また、上記一対の貫通孔35C2a・35C2aには、例えばブッシング等からなる軸受部材(図示せず)が設けられ、同軸上に配置されたこれらの貫通孔35A1a・35C2a・35C2aに対して、回動軸35Bが嵌め込まれる。
これにより、回動部材35Cは、支持部材35Aに対して、水平方向に延びる回動軸35Bの軸心を中心にして、上下方向に回転移動可能に設けられる。
【0091】
このように、樹脂板用規制治具35は、水平方向(左右方向)に延びる回動軸35Bの軸心を中心にして、回動部材35Cを回転移動させることにより、当接側面35C3aを、上方に位置する待機位置P21と、下方に位置して樹脂板111の積層位置を規制する規制位置P22との間で変位可能な構成となっている。
従って、積層工程S01において、下方から上方に向かって順に積み重ねられる複数の層(ガラス樹脂部材群110A、並びに当て板121及び離型シート122)に対して、既に積み重ねられた当て板121、離型シート122、ガラスシート112、及び中間膜113に干渉等することなく、待機位置P21から規制位置P22に当接側面35C3aを変位させることができる。
【0092】
そして、上記規制位置P22に位置した状態において、回動部材35Cの下面は、上記第3の層として積層される樹脂板111の下面と、略同一の仮想水平面上に位置するように設定されており、当該樹脂板111の端面を、当接側面35C3aに押し当てることにより、上記樹脂板111の積層位置が規制され、樹脂板111の位置決めが行われる。
【0093】
位置調整機構36は、移動プレート33上におけるガラスシート用規制治具34及び樹脂板用規制治具35の配置位置を、それぞれ単独に調整可能とするものである。
位置調整機構36は、例えば本実施形態においては、矩形帯板状の部材からなり、その平面には、複数の長円形状の貫通孔36a・36a・・・が、所定の配置位置にて形成されている。
【0094】
ここで、位置調整機構36・36は、移動プレート33と、ガラスシート用規制治具34の支持部材34A、及び樹脂板用規制治具35の支持部材35Aとの間において、上下方向に平面を向けつつ、貫通孔36aの長手方向を、移動プレート33の移動方向(前後方向)に向けた状態で、各々配置される。
また、各位置調整機構36は、上面において、締結部材51を用いて、ガラスシート用規制治具34の支持部材34A、または樹脂板用規制治具35の支持部材35Aと固定されるとともに、下面において、締結部材52を用いて、貫通孔36aを介して移動プレート33と固定される。
【0095】
一方、後述するように、位置決め装置30は、ガラスシート用規制治具34の当接端面34D1、及び樹脂板用規制治具35の当接側面35C3aを、載置位置P1にて積層される樹脂板111、及びガラスシート112に向けた状態で配置されている。
そして、締結部材51を、貫通孔36aの長手方向に沿ってスライドさせて、各位置調整機構36を移動プレート33の移動方向(前後方向)に移動させることにより、当該移動プレート33上におけるガラスシート用規制治具34及び樹脂板用規制治具35の配置位置は、これらの樹脂板111及びガラスシート112に対して、近接方向(本実施形態においては、前方向)及び離間方向(本実施形態においては、後方向)に単独で調整可能な構成となっている。
【0096】
このような構成からなる位置調整機構36を設けることにより、たとえ外形サイズの異なる多種類のガラス樹脂積層体110であっても、各種類のガラス樹脂積層体110において、外形サイズの異なる樹脂板111、及びガラスシート112に対して、確実に対応可能であり、より正確な位置合わせを行いつつ、これらの樹脂板111、及びガラスシート112を積層することができる。
【0097】
なお、位置調整機構36の構成については、本実施形態に限定されるものではなく、移動プレート33上におけるガラスシート用規制治具34及び樹脂板用規制治具35の配置位置を、それぞれ単独に調整可能な構成であれば、何れのような構成であってもよい。
【0098】
以上のような構成からなる位置決め装置30・30・30は、上述したように、1基の積層装置1において複数(3個)設けられ、図3に示すように、ガラスシート用規制治具34の当接端面34D1、及び樹脂板用規制治具35の当接側面35C3aを、フレーム11の内側に向けた状態で、当該フレーム11の上面に設置される。
具体的には、これら複数の位置決め装置30・30・30は、載置位置P1にて積層される、平面視矩形状の樹脂板111、及びガラスシート112に対して、少なくとも、当該樹脂板111及びガラスシート112の角部を挟んだ2辺(本実施形態においては、左端面及び後端面の2辺)に沿って配置される。
【0099】
このような構成を有することにより、積層工程S01において、ガラス樹脂積層体110の第1の層としてガラスシート112を積層する場合、或いは第3の層として樹脂板111を積層する場合、これらガラスシート112及び樹脂板111の角部を挟んだ2辺を、ガラスシート用規制治具34の当接端面34D1、或いは樹脂板用規制治具35の当接側面35C3aに押し当てるだけで、容易且つ正確に積層位置を規制することができる。
【0100】
また、上述したように、各位置決め装置30は、移動規制手段32によって、移動プレート33とともにガラスシート用規制治具34及び樹脂板用規制治具35を、水平方向の一方向に往復移動可能に設けられており、フレーム11の上面において、載置位置P1との近接側に位置し、積層される樹脂板111及びガラスシート112の積層位置を規制する積層位置P31と、載置位置P1との離間側に位置し、積層された樹脂板111及びガラスシート112から退避する退避位置P32との間を往復移動可能に構成されている。
【0101】
[位置決め装置30の操作手順]
次に、積層装置1を用いて積層工程S01を行う場合の、位置決め装置30の操作手順について、図3図6を用いて説明する。
【0102】
先ず始めに、図3において、積層装置1は初期状態となっており、複数の位置決め装置30・30・30は、退避位置P32に各々移動された状態となっている。
また、各位置決め装置30において、ガラスシート用規制治具34の当接端面34D1は、図4(c)に示すように、待機位置P11に位置した状態となっており、且つ樹脂板用規制治具35の当接側面35C3aは、図4(b)に示すように、待機位置P21に位置した状態となっている。
【0103】
当て板・離型シート積層工程S11が開始されると、作業者は、支持台10の上面に当て板121を載置し、その後、載置した当て板121を搬送手段12によって移動させ、複数のストッパ20・20・20の当接面20a・20a・20aに、当該当て板121の角部を挟んだ2辺(左端面及び後端面)を各々押し当てることにより、当て板121を載置位置P1に規制する。
【0104】
載置位置P1に当て板121が規制されると、作業者は、当て板121の周囲から周縁部を僅かに食み出させた状態で、当該当て板121の上面に離型シート122を積層する。
これにより、当て板・離型シート積層工程S11が終了する。
【0105】
当て板121に離型シート122を積層した後、作業者は、ガラスシート位置決め工程S12を実施する。
具体的には、作業者は、複数の位置決め装置30・30・30を、それぞれ積層位置P31に移動させ、図5(b)に示すように、各ガラスシート用規制治具34の当接端面34D1を、規制位置P12に変位させる。
【0106】
ここで、規制位置P12における当接部材34Dの下面は、離型シート122の上面に対して接触または非接触の何れの状態でもよいが、非接触の状態である場合には、当接部材34Dと離型シート122との間の隙間は、少なくとも、ガラスシート112の厚み寸法に比べて、小さく設定されている必要がある。
【0107】
そして、作業者は、複数の当接部材34D・34D・34Dの当接端面34D1・34D1・34D1に、ガラスシート112の角部を挟んだ2辺(左端面及び後端面)を各々押し当て、当該ガラスシート112の位置決めを行いつつ、離型シート122の上面にガラスシート112を積層する。
これにより、ガラスシート位置決め工程S12が終了する。
【0108】
離型シート122にガラスシート112を積層した後、作業者は、中間膜積層工程S13を実施する。
具体的には、図5(c)に示すように、作業者は、ガラスシート112の上面全体を覆うようにして、当該ガラスシート112に中間膜113を積層する。
この際、中間膜113の周縁部は、ガラスシート112の周囲から食み出した状態で積層されることとなり、当該周縁部の下面は、当接部材34Dの端部上面と接触した状態となる。
これにより、中間膜積層工程S13が終了する。
【0109】
ガラスシート112に中間膜113を積層した後、作業者は、樹脂板位置決め工程S14を実施する。
具体的には、図6(a)に示すように、作業者は、各樹脂板用規制治具35の当接側面35C3aを、規制位置P22に変位させる。
【0110】
ここで、規制位置P22に変位された延出部35C3の下面は、中間膜113の上面に対して接触または非接触の何れの状態でもよいが、非接触の状態である場合には、延出部35C3の下面と中間膜113との間の隙間は、少なくとも、樹脂板111の厚み寸法に比べて、小さく設定されている必要がある。
【0111】
そして、図6(b)に示すように、作業者は、複数の延出部35C3・35C3・35C3の当接側面35C3a・35C3a・35C3aに、樹脂板111の角部を挟んだ2辺(左端面及び後端面)を各々押し当て、当該樹脂板111の位置決めを行いつつ、中間膜113の上面に樹脂板111を積層する。
これにより、樹脂板位置決め工程S14が終了する。
【0112】
中間膜113の上面に樹脂板111を積層した後、作業者は、図6(c)に示すように、複数の位置決め装置30・30・30を、それぞれ退避位置P32に向かって水平方向に移動させ、その後、各ガラスシート用規制治具34の当接端面34D1を、待機位置P11に変位させるとともに、各樹脂板用規制治具35の当接側面35C3aを、待機位置P21に変位させる。
これにより、積層装置1は、上述した初期状態に復帰される。
【0113】
その後、作業者は、積層された樹脂板111に対して、中間膜113、ガラスシート112、離型シート122、及び当て板121の順に、これらの部材を積層する。
これにより、積層構造体101が構築され、積層工程S01は完了する。
【0114】
なお、上記した、積層装置1における初期状態の復帰作業を実施するタイミングについては、本実施形態に限定されることはなく、少なくとも、樹脂板位置決め工程S14の終了後であれば、何れのタイミングで実施してもよい。
【0115】
このように、本実施形態においては、積層工程S01において、樹脂板位置決め工程S14の終了後、各位置決め装置30(より具体的には、ガラスシート用規制治具34及び樹脂板用規制治具35)を、退避位置P32に向かって水平方向に移動させ、既に積層された樹脂板111、ガラスシート112、及び中間膜113から退避させる構成となっている。
【0116】
このような構成を有することにより、樹脂板位置決め工程S14の終了後、正確な位置合わせを行いつつ、下方から上方に向かって順に積み重ねられた樹脂板111、中間膜113、及びガラスシート112に対して、干渉等することなくガラスシート用規制治具34及び樹脂板用規制治具35を退避させることができ、高品質な積層形態を維持することができる。
【0117】
[別実施形態]
次に、本発明の別実施形態について、図7を用いて説明する。
【0118】
前述した積層工程S01の別実施形態として、ガラスシート位置決め工程S12において、ガラス樹脂積層体110の第1の層として積層されるガラスシート112に対して、第2の層として積層される中間膜113を予め積層させた状態で、これらのガラスシート112及び中間膜113を一体として、ともに離型シート122の上面に積層した後、各樹脂板用規制治具35の当接側面35C3aを規制位置P22に変位させ、当該樹脂板用規制治具35を配置する構成としてもよい。
【0119】
即ち、離型シート122の上面にガラスシート112を積み重ね、その後、当該ガラスシート112の上面に中間膜113を積み重ねる場合、離型シート122の表面は一般的に滑らかであり摩擦係数が小さく、また中間膜113の表面は一般的に粗く摩擦係数が大きいために、ガラスシート112の上面に中間膜113を積み重ねる際に、離型シート122に対して当該ガラスシート112の位置ズレが発生する虞がある。
【0120】
従って、上記の別実施形態のように、予めガラスシート112の上面に中間膜113を積み重ね、その後、これらのガラスシート112及び中間膜113をともに纏めて離型シート122の上面に積み重ねることとすれば、このような離型シート122に対するガラスシート112の位置ズレを防止することができ、より高品質な積層形態を維持することができる。
【0121】
また、前述した積層装置1の別実施形態のである積層装置201として、図7に示すように、支持台210において、複数の搬送手段212・212・・・の上端によって構成される、積層構造体101を支持する支持面Saは、各位置決め装置230に向かって下方に傾斜し、水平面Yに対して角度θをなすように設けられる構成としてもよい。
より具体的には、例えば、載置位置P1にて積層される、平面視矩形状の樹脂板111、及びガラスシート112に対して、当該樹脂板111及びガラスシート112の角部を挟んだ2辺に沿って複数の位置決め装置230・230・・・が設けられる場合、支持台210の支持面Saは、上記角部に向かって下方に傾斜するように設けられる構成としてもよい。
【0122】
このような構成を有することにより、支持台210の支持面Saに支持される積層構造体101は、常に自重によって、複数の位置決め装置230・230・・・に向かって押付けられることとなる。
従って、離型シート122の上面にガラスシート112を積み重ね、その後、当該ガラスシート112の上面に中間膜113を積み重ねる場合、たとえ離型シート122の上面を滑ってガラスシート112の位置ズレが発生しようとしても、これら複数の位置決め装置230・230・・・によって、当該位置ズレを確実に防止することができ、より高品質な積層形態を維持することができる。
【0123】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0124】
30 位置決め装置
34 ガラスシート用規制治具(第1層用規制治具)
34D1 ガラスシート用規制治具の当接端面(第1層用当接部)
35 樹脂板用規制治具(規制治具)
35C3a 樹脂板用規制治具の当接側面(当接部)
36 位置調整機構
110 ガラス樹脂積層体
110A ガラス樹脂部材群(複数の層)
111 樹脂板(第3の層)
111a 樹脂板の端面
112 ガラスシート(第1の層)
112a ガラスシートの端面
113 中間膜(第2の層)
210 支持台(別実施形態)
230 位置決め装置(別実施形態)
P11 ガラスシート用規制治具における待機位置
P12 ガラスシート用規制治具における規制位置
P21 樹脂板用規制治具における待機位置
P22 樹脂板用規制治具における規制位置
S01 積層工程
S12 ガラスシート位置決め工程(第1層位置決め工程)
S14 樹脂板位置決め工程(位置決め工程)
Sa 支持面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7