(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188647
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】目地ガスケットおよび目地のシール構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/684 20060101AFI20221214BHJP
E04F 19/02 20060101ALI20221214BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
E04B1/684 B
E04F19/02 T
F16J15/10 P
F16J15/10 D
F16J15/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096859
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
(72)【発明者】
【氏名】石丸 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】園田 千絵
【テーマコード(参考)】
2E001
3J040
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA04
2E001HD01
2E001HE01
2E001MA04
3J040BA07
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA21
3J040EA44
3J040EA50
3J040FA06
3J040FA08
3J040HA03
3J040HA15
(57)【要約】
【課題】良好な外観を有するとともに、目地への挿入性が担保された目地ガスケットを提供する。
【解決手段】目地ガスケット(1)は、互いに隣り合う2つの外壁パネル(300)の間に形成された目地(M)に配置され、頭部(3)の側方端部(31)と中空リップ(4)との連結部分の屋内側の面に第1凹部(71)が形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣り合う2つの外壁パネルの間に形成された目地に配置される目地ガスケットであって、
前記目地の延伸方向に沿って延伸する柱部と、
前記柱部の屋外側端部に連結され、前記2つの外壁パネルの側面に対向する側方端部の各々が該側面に向けて延伸する頭部と、
前記側方端部から延伸し、前記屋外側端部よりも屋内側で前記柱部に連結されるリップと、を備え、
前記側方端部と前記リップとの連結部分の屋内側の面に第1凹部が形成される、目地ガスケット。
【請求項2】
前記側方端部と前記リップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成される、請求項1に記載の目地ガスケット。
【請求項3】
互いに隣り合う2つの外壁パネルの間に形成された目地に配置される目地ガスケットであって、
前記目地の延伸方向に沿って延伸する柱部と、
前記柱部の屋外側端部に連結され、前記2つの外壁パネルの側面に対向する側方端部の各々が該側面に向けて延伸する頭部と、
前記側方端部から延伸し、前記屋外側端部よりも屋内側で前記柱部に連結されるリップと、を備え、
前記側方端部と前記リップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成される、目地ガスケット。
【請求項4】
前記側方端部と前記リップとの連結部分の屋内側の面に第1凹部が形成される、請求項3に記載の目地ガスケット。
【請求項5】
前記頭部と前記リップの一部とを屋外側から覆う意匠部と、
前記側面と対向する前記リップの面に、前記意匠部と間隔をあけて設けられる発泡体と、をさらに備え、
前記目地ガスケットが前記目地に配置された状態において、
前記意匠部と前記発泡体との各々が、前記側面に面接触する、請求項2または4に記載の目地ガスケット。
【請求項6】
前記リップは、
前記側方端部から前記側面に向けて屋内側に傾斜して延伸する第1壁部と、
前記第1壁部から屈曲し、屋内側に延伸する第2壁部と、
前記第2壁部から屈曲し、前記柱部に向けて屋内側に傾斜して延伸し、前記柱部に連結される第3壁部と、を含み、
前記発泡体は、前記第2壁部と前記第3壁部とに跨って設けられる、請求項5に記載の目地ガスケット。
【請求項7】
前記第1壁部と前記第2壁部との連結部分の前記柱部側の面に第2凹部が形成される、請求項6に記載の目地ガスケット。
【請求項8】
前記第2壁部は、前記柱部側に凸状となるよう湾曲し、
前記意匠部は、前記第1壁部と前記第2壁部とに跨って設けられ、
前記柱部を挟んで対向する2つの前記発泡体の目地幅方向の最大幅は、前記意匠部の前記目地幅方向の最大幅よりも大きい、請求項6または7に記載の目地ガスケット。
【請求項9】
互いに隣り合う2つの外壁パネルと、
前記2つの外壁パネルの間に形成された目地に配置される目地ガスケットと、を備え、
前記目地ガスケットは、
前記目地の延伸方向に沿って延伸する柱部と、
前記柱部の屋外側端部に連結され、前記2つの外壁パネルの側面に対向する側方端部の各々が該側面に向けて延伸する頭部と、
前記側方端部から延伸し、前記屋外側端部よりも屋内側で前記柱部に連結されるリップと、を備え、
前記側方端部と前記リップとの連結部分の屋内側の面に第1凹部が形成される、または、前記側方端部と前記リップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成される、目地のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地ガスケットおよび目地のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに隣り合う2つの外壁パネルの間に形成される目地から建物の内部に雨水等の水が浸入するのを防ぎ、かつ、建物の外観を良好に保つために、目地ガスケットが用いられている。目地ガスケットは、例えばゴムおよび樹脂等の水密性および弾性を有する材料で形成される。また目地ガスケットは、目地幅よりもやや幅広であり、かつ、目地に沿って延伸する長手形状であり、屋外側から目地に挿入されて該目地に配置される。
【0003】
また、目地ガスケットには、複数の板状のリップが設けられている。このリップは、目地を形成する外壁パネルの側面に接触して、雨水等が目地から建物の内部に浸入するのを防ぐ役割を果たす。しかしながら、前記板状のリップのみによる止水では不十分であったことから、目地ガスケットの止水性等を向上させるために種々の研究開発が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、柱部と、該柱部の屋外側に設けられた中空シール部とを備え、中空シール部の頭部に、柱部上端部に向けて突起が形成された目地ガスケットが開示されている。また、特許文献2には、板状の頭部と屋外側止水リップとの間に形成された隙間、および屋外側止水リップと屋内側止水リップとの間に形成された隙間のそれぞれがシール材(発泡体)で埋められた目地材が開示されている。さらに、特許文献3には、筒形中空状のシール部のシール面に、シリコン系被覆層を形成してなるトップ目地材を備える乾式目地ジョイナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-094334号公報(2011年5月12日公開)
【特許文献2】実開平03-076901号公報(1991年8月1日公開)
【特許文献3】特開2003-074130号公報(2003年3月12日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された目地ガスケットでは、柱部と頭部とが離間しているため、挿入時に屋外側から力を入れ難く、目地ガスケットが目地に挿入し難かった。そのため、目地ガスケットを目地に挿入する際の挿入性が低下していた。また、特許文献2に開示された目地材では、前記隙間のそれぞれがシール材で埋められているため、変形の自由度が非常に低く挿入性が低下していた。加えて、特許文献2に開示された目地材では、頭部が板状であるため、目地に配置された状態において頭部が屋内側に凹状に湾曲し易く、外観悪化の懸念があった。さらに、特許文献3に開示された乾式目地ジョイナーでは、目地に配置された状態において、筒形中空状のシール部の屋外側の面と外壁パネルの側面との間に比較的大きな隙間ができる場合がある。そのため、該隙間により影が生じ、外観悪化の懸念があった。
【0007】
本発明の一態様は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な外観を有するとともに目地への挿入性が担保された目地ガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の態様1に係る目地ガスケットは、互いに隣り合う2つの外壁パネルの間に形成された目地に配置される目地ガスケットであって、前記目地の延伸方向に沿って延伸する柱部と、前記柱部の屋外側端部に連結され、前記2つの外壁パネルの側面に対向する側方端部の各々が該側面に向けて延伸する頭部と、前記側方端部から延伸し、前記屋外側端部よりも屋内側で前記柱部に連結されるリップと、を備え、前記側方端部と前記リップとの連結部分の屋内側の面に第1凹部が形成される。
【0009】
前記構成では、柱部と頭部とが連結されているため、挿入時に頭部側から力を入れ易く、目地ガスケットが目地に挿入し易くなる。また、頭部の側方端部とリップとの連結部分の屋内側の面に形成された第1凹部で折れ曲がるように目地ガスケットが目地に挿入されるため、挿入時の目地ガスケットの姿勢が安定し、目地ガスケットを所望の配置態様で目地に配置することができる。また、前記構成では、第1凹部で折れ曲がった状態で目地ガスケットが目地に配置されるため、頭部が屋内側に凹状に湾曲する量・程度が小さくなる。従って、前記構成によれば、第1凹部がない場合に比べて、頭部の湾曲を抑え、頭部が平坦に近い状態で目地ガスケットを目地に配置することができる。
【0010】
従って、前記構成によれば、良好な外観を有するとともに目地への挿入性が担保された目地ガスケットを実現することができる。
【0011】
本発明の態様2に係る目地ガスケットは、前記態様1において、前記側方端部と前記リップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成されてもよい。
【0012】
目地ガスケットが目地に配置された状態において、目地幅の大きさに応じて頭部の屋外側の面と外壁パネルの側面との間に比較的大きな隙間ができ、影が生じる場合がある。前記構成によれば、頭部の側方端部とリップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成されているため、前記隙間を比較的小さくして、影が生じ難くなる。
【0013】
前記課題を解決するために、本発明の態様3に係る目地ガスケットは、互いに隣り合う2つの外壁パネルの間に形成された目地に配置される目地ガスケットであって、前記目地の延伸方向に沿って延伸する柱部と、前記柱部の屋外側端部に連結され、前記2つの外壁パネルの側面に対向する側方端部の各々が該側面に向けて延伸する頭部と、前記側方端部から延伸し、前記屋外側端部よりも屋内側で前記柱部に連結されるリップと、を備え、前記側方端部と前記リップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成される。
【0014】
前記構成では、柱部と頭部とが連結されているため、挿入時に頭部側から力を入れ易く、目地ガスケットが目地に挿入し易くなる。また、目地ガスケットが目地に配置された状態において、目地幅の大きさに応じて頭部の屋外側の面と外壁パネルの側面との間に比較的大きな隙間ができ、影が生じる場合がある。前記構成によれば、頭部の側方端部とリップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成されているため、前記隙間を比較的小さくして、影が生じ難くなる。
【0015】
従って、前記構成によれば、良好な外観を有するとともに目地への挿入性が担保された目地ガスケットを実現することができる。
【0016】
本発明の態様4に係る目地ガスケットは、前記態様3において、前記側方端部と前記リップとの連結部分の屋内側の面に第1凹部が形成されてもよい。
【0017】
前記構成では、頭部の側方端部とリップとの連結部分の屋内側の面に形成された第1凹部で折れ曲がるように目地ガスケットが目地に挿入されるため、挿入時の目地ガスケットの姿勢が安定し、目地ガスケットを所望の配置態様で目地に配置することができる。従って、前記構成によれば、目地ガスケットを目地に挿入する際の挿入性が向上する。
【0018】
また、前記構成では、第1凹部で折れ曲がった状態で目地ガスケットが目地に配置されるため、頭部が屋内側に凹状に湾曲する量・程度が小さくなる。従って、前記構成によれば、第1凹部がない場合に比べて、頭部の湾曲を抑え、頭部が平坦に近い状態で目地ガスケットを目地に配置することができる。
【0019】
本発明の態様5に係る目地ガスケットは、前記態様2または4において、前記頭部と前記リップの一部とを屋外側から覆う意匠部と、前記側面と対向する前記リップの面に、前記意匠部と間隔をあけて設けられる発泡体と、をさらに備え、前記目地ガスケットが前記目地に配置された状態において、前記意匠部と前記発泡体との各々が、前記側面に面接触してもよい。
【0020】
意匠部は、頭部よりも着色が容易な異材質にすることが可能である。従って、前記構成によれば、頭部の屋外側に意匠部を設けることにより、目地ガスケットの屋外側の面を外壁パネルの色に近い色にすることができ、建物の外観を向上することができる。
【0021】
また、発泡体は相対的に柔軟性が高いため、目地幅が増減しても追従性が高く、面接触している部分の止水性を確保し易い。そのため、目地ガスケットが目地に配置された状態において、例えば外壁パネルの側面と意匠部と発泡体とで囲まれる隙間によって規定される導水空間の体積を比較的小さくすることができ、導水空間に侵入可能な水量を比較的小さくすることが可能となる。従って、前記構成によれば、外壁パネルの面材内部に染み込む水量を比較的小さくでき、目地幅が異なる場合であっても止水性を確保し易くなる。
【0022】
本発明の態様6に係る目地ガスケットは、前記態様5において、前記リップは、前記側方端部から前記側面に向けて屋内側に傾斜して延伸する第1壁部と、前記第1壁部から屈曲し、屋内側に延伸する第2壁部と、前記第2壁部から屈曲し、前記柱部に向けて屋内側に傾斜して延伸し、前記柱部に連結される第3壁部と、を含み、前記発泡体は、前記第2壁部と前記第3壁部とに跨って設けられてもよい。
【0023】
前記構成では、リップの屈曲点がより多くなるため、目地ガスケットが目地に配置された状態において、それぞれの屈曲点でリップがより弾性変形し易くなり、リップによって意匠部と発泡体とが外壁パネルの側面に向けてより弾接し易くなる。また、発泡体は第2壁部と第3壁部とに跨って設けられるため、発泡体の設定長さが長くなり、外壁パネルの側面に対する発泡体の接触面積を大きくすることができる。従って、前記構成によれば、外壁パネルの側面に対する意匠部および発泡体の密着度がより向上し、止水性がさらに向上する。
【0024】
本発明の態様7に係る目地ガスケットは、前記態様6において、前記第1壁部と前記第2壁部との連結部分の前記柱部側の面に第2凹部が形成されてもよい。
【0025】
前記構成では、挿入時に第1凹部と第2凹部との2点で目地ガスケットが折れ曲がるため、第1壁部が外壁パネルの側面と略平行になり易くなる。目地ガスケットがこのように弾性変形すると、第1壁部の屋外側に設けた意匠部が外壁パネルの側面に弾接しながら目地ガスケットが目地に挿入されていくことになり、挿入時に目地ガスケットの姿勢がより安定する。従って、前記構成によれば、目地ガスケットを目地に挿入する際の挿入性がさらに向上する。
【0026】
本発明の態様8に係る目地ガスケットは、前記態様6または7において、前記第2壁部は、前記柱部側に凸状となるよう湾曲し、前記意匠部は、前記第1壁部と前記第2壁部とに跨って設けられ、前記柱部を挟んで対向する2つの前記発泡体の目地幅方向の最大幅は、前記意匠部の前記目地幅方向の最大幅よりも大きくてもよい。
【0027】
前記構成では、目地ガスケットが目地に配置された状態において、第2壁部が柱部側に撓み易くなり、意匠部と発泡体との間隔が小さくなる。それとともに、第2壁部を覆う意匠部の側面側の面と、発泡体の屋外側の面とでなす角度が目地に配置する前よりも目地に配置した状態のほうがさらに小さくなるように(回転するように)撓み変形する。従って、前記構成によれば、導水空間の体積をより小さくすることができ、目地ガスケットの止水性がさらに向上する。
【0028】
前記課題を解決するために、本発明の態様9に係るシール構造は、互いに隣り合う2つの外壁パネルと、前記2つの外壁パネルの間に形成された目地に配置される目地ガスケットと、を備え、前記目地ガスケットは、前記目地の延伸方向に沿って延伸する柱部と、前記柱部の屋外側端部に連結され、前記2つの外壁パネルの側面に対向する側方端部の各々が該側面に向けて延伸する頭部と、前記側方端部から延伸し、前記屋外側端部よりも屋内側で前記柱部に連結されるリップと、を備え、前記側方端部と前記リップとの連結部分の屋内側の面に第1凹部が形成される、または、前記側方端部と前記リップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成される。
【0029】
前記構造では、柱部と頭部とが連結されているため、挿入時に頭部側から力を入れ易く、目地ガスケットが目地に挿入し易くなる。
【0030】
加えて、頭部の側方端部と前記リップとの連結部分の屋内側の面に第1凹部が形成される場合、頭部の側方端部とリップとの連結部分に形成された第1凹部で折れ曲がるように目地ガスケットが目地に挿入されるため、挿入時の目地ガスケットの姿勢が安定し、目地ガスケットを所望の配置態様で目地に配置することができる。また、第1凹部で折れ曲がった状態で目地ガスケットが目地に配置されるため、頭部が内側に凹状に湾曲する量・程度が小さくなる。従って、前記構造によれば、第1凹部がない場合に比べて頭部の湾曲を抑え、頭部が平坦に近い状態で目地ガスケットを目地に配置することができる。
【0031】
また、目地ガスケットが目地に配置された状態において、目地幅の大きさに応じて頭部の屋外側の面と外壁パネルの側面との間に比較的大きな隙間ができ、影が生じる場合がある。側方端部とリップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成される場合、頭部の側方端部とリップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成されているため、前記隙間を比較的小さくして、影が生じ難くなる。
【0032】
従って、前記構成によれば、良好な外観を有するとともに目地への挿入性が担保された目地のシール構造を実現することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一態様によれば、良好な外観を有するとともに目地への挿入性が担保された目地ガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】符号1001は、本発明の一実施形態に係る目地ガスケットの全体形状を示す断面図である。符号1002は、符号1001に示される破線領域R1を示す拡大図である。
【
図2】符号2001は、前記目地ガスケットが目地に配置された状態における、該目地のシール構造を示す断面図である。符号2002は、符号2001に示される破線領域R2を示す拡大図である。
【
図3】符号3001は、本発明の一変形例に係る目地ガスケットの全体形状を示す断面図である。符号3002は、符号3001に示される目地ガスケットが目地に配置された状態における、該目地のシール構造の断面図である。
【
図4】
図1に示される目地ガスケットが狭幅の目地に配置された状態における、該目地のシール構造(第1実施例)の断面図である。
【
図5】
図1に示される目地ガスケットが中央幅の目地に配置された状態における、該目地のシール構造(第2実施例)の断面図である。
【
図6】
図1に示される目地ガスケットが広幅の目地に配置された状態における、該目地のシール構造(第3実施例)の断面図である。
【
図7】従来の目地ガスケットが狭幅の目地に配置された状態における、該目地のシール構造(第1比較例)の断面図である。
【
図8】従来の目地ガスケットが中央幅の目地に配置された状態における、該目地のシール構造(第2比較例)の断面図である。
【
図9】従来の別の目地ガスケットが中央幅の目地に配置された状態における、該目地のシール構造(第3比較例)の断面図である。
【
図10】従来のさらに別の目地ガスケットが狭幅の目地に配置された状態における、該目地のシール構造(第4比較例)の断面図である。
【
図11】従来のさらに別の目地ガスケットが広幅の目地に配置された状態における、該目地のシール構造(第5比較例)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図3を用いて詳細に説明する。なお、説明の便宜上、本実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、後掲の変形例では同じ符号を付記してその説明を繰り返さない。
【0036】
〔目地ガスケット1の概要および構成〕
<目地ガスケット1の概要>
本発明の一実施形態に係る目地ガスケット1は、目地Mから建物(不図示)の内部に雨水等の水(以下、「水」と略記)が浸入するのを防ぎ、かつ、建物の外観を良好に保つために、目地Mに配置される目地材である。目地Mは、
図2の符号2001に示すように、互いに隣り合う2つの外壁パネル300の間に形成された隙間である。外壁パネル300は、面材310、下地材320および断熱ボード330を備えており、屋外側から面材310、下地材320、断熱ボード330の順に配置されている(
図3の符号3002参照)。
【0037】
なお、目地ガスケット1が目地Mに配置された状態では、
図2の符号2001に示すように、目地ガスケット1および2つの外壁パネル300を必須の構成要素とする目地Mのシール構造500が成立している。このシール構造500は、良好な外観を有するとともに目地ガスケット1の挿入性も担保されている。また、このシール構造500によれば、後述する意匠部5で侵入を防ぎきれなかった、一部の水を後述する中空リップに設けられた第1発泡体6によって止水し、該水が外壁パネル300の側面312から該外壁パネル300の内部に浸入して、外壁パネル300が劣化することを効果的に低減することができる。言い換えれば、外壁パネル300の長期継続使用を実現することができる。
【0038】
<目地ガスケット1の構成>
図1および
図2を用いて、目地ガスケット1の構成について説明する。なお、本実施形態における以下の説明では、特段の言及がない限り、「外壁パネル300」は面材310を指すものとする。目地ガスケット1は、
図1の符号1001および
図2に示すように、柱部2、頭部3および中空リップ4を備えている。本実施形態では、目地ガスケット1は、柱部2、頭部3および中空リップ4が一連に繋がって構成される。また、目地ガスケット1は、頭部3と中空リップ4とを屋外側から覆う意匠部5および外壁100の側面312と対向する中空リップ4の面に設けられる第1発泡体(発泡体)6を備えている。
【0039】
目地ガスケット1の柱部2、頭部3および中空リップ4の形成材料としては、合成ゴムまたはTPE(熱可塑性エラストマー)等のゴム様弾性体が用いられる。合成ゴムではEPDM等が、TPEではTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)またはTPS(スチレン系熱可塑性エラストマー)等が挙げられるが、これらに限定されない。また、目地ガスケット1の柱部2、頭部3および中空リップ4の形成材料として用いられるゴム様弾性体は、発泡材でもよいし、非発泡材でもよい。
【0040】
(柱部2)
柱部2は、目地Mの延伸方向に沿って延伸する部分である。柱部2は、
図1の符号1001に示すように、第1柱部21および第2柱部22を有している。第1柱部21は、第2柱部22よりも屋外側に配置される部分である。第1柱部21は、頭部3の屋内側に連結される屋外側端部211と、屋外側端部211の屋内側に連なる柱基部212とを含む。屋外側端部211は、柱部2を構成する各部分の中で最も屋外側に配置される。屋外側端部211は、屋内側から屋外側に向かうにつれて、目地幅W方向における幅が大きくなっている。これにより、柱部2と頭部3との連結部分の強度を高めることができる。柱基部212は、屋外側端部211の屋内側に配置される。柱基部212は、目地幅W方向における幅が一定であり、本実施形態では第1柱部幅T1になっている。
【0041】
第2柱部22は、第1柱部21よりも屋内側に配置される部分であり、第1柱部21の第1柱部幅T1よりも幅広に形成されている。第2柱部22は、第1柱部21の屋内側に連結される膨出部221と、膨出部221の屋内側に連なる屋内側端部222とを含む。
【0042】
膨出部221は、第1柱部21との連結箇所から屋内側に向かうにつれて幅が大きくなっており、本実施形態では膨出部221の最大幅が第2柱部幅T2になっている。また、膨出部221は、第2柱部幅T2の部分から屋内側に向かうにつれて幅が小さくなっている。屋内側端部222は、膨出部221の屋内側に連なる。屋内側端部222は、柱部2を構成する各部分の中で最も屋内側に配置される。屋内側端部222は、目地幅W方向における幅が一定であり、柱基部212の第1柱部幅T1よりも大きく、膨出部221の第2柱部幅T2よりも小さくなっている。
【0043】
柱部2では、第1柱部21の柱基部212と第2柱部22の膨出部221との内部に跨って金属製の芯材23が埋設されている。芯材23における屋外側の端部は、1箇所折り曲げられている。一方、芯材23における屋内側の端部は、目地Mの延伸方向から見た断面視が膨出部221の断面形状と略同一の外形となるように3箇所折り曲げられている。これにより、屋内側に配置される第2柱部22の剛性が屋外側に配置される第1柱部21の剛性よりも高くなる。そのため、目地ガスケット1を目地Mに挿入する過程で、目地ガスケット1の全体が必要以上に、または意図せず傾くのを低減することができる。従って、挿入時の目地ガスケット1の姿勢がより安定する。
【0044】
ただし、柱部2の形状および内部構成を本実施形態のように設計することは、必須ではない。例えば、第1柱部幅T1と第2柱部幅T2とが略同一であってもよい。また例えば、芯材23は金属製でなくてもよく、柱部2の内部に芯材23が埋設されていなくてもよい。さらには、芯材23の形状および大きさも任意に設計変更してよい。
【0045】
(頭部3)
頭部3は、
図1の符号1001に示すように、柱部2の屋外側端部211に連結され、目地Mを覆うように目地Mの延伸方向に沿って延伸する部分である。頭部3は、目地Mの延伸方向から見た断面視が略T字の形状になるように、柱部2の屋外側端部211に連結される。頭部3は、
図2の符号2001に示すように、2つの外壁パネル300の側面312に対向する2つの側方端部31の各々が該側面312に向けて延伸している。頭部3は、
図1に示すように、側方端部31に向かうにつれて厚さが薄くなっている。具体的には、頭部3の屋外側の面は屋外側に凸状となるように緩やかに湾曲しており、頭部3の屋内側の面は略平坦になっている。
【0046】
このように、頭部3が側方端部31に向かうにつれて薄くなっていることにより、頭部3が側方端部31に向かうほど変形し易くなっているとともに、後述する第1凹部71で目地ガスケット1が屈曲し易くなっている。ただし、頭部3の形状を本実施形態のように設計することは、必須ではない。例えば、頭部3は厚さが略一定であってもよい。
【0047】
(中空リップ4)
中空リップ4は、頭部3の側方端部31から延伸し、屋外側端部211よりも屋内側で柱部2に連結されるリップである。この中空リップ4は、
図2の符号2001に示すように、外壁パネル300に向けて突出するリップであり、水が屋外側から目地Mに浸入するのを防ぐ役割を果たす。具体的には、目地ガスケット1は、一方の外壁パネル300の側面312に対向する中空リップ4と、他方の外壁パネル300に向けて延伸する対向する中空リップ4との2つの中空リップ4を備えている。
【0048】
中空リップ4は、
図1に示すように、第1壁部41、第2壁部42および第3壁部43を有している。第1壁部41は、頭部3の側方端部31から外壁100の側面312に向けて屋内側に傾斜して延伸する壁部である。第2壁部42は、第1壁部41から屈曲し、屋内側に延伸する壁部である。第3壁部43は、第2壁部42から屈曲し、柱部2に向けて屋内側に傾斜して延伸し、柱部2に連結される壁部である。本実施形態では、第3壁部43は、第2柱部22の膨出部221と屋内側端部222との連結部分に連結されている。第2壁部42は、柱部2側に凸状となるよう緩やかに湾曲している。一方、第3壁部43は、柱部2側に凹状となるよう緩やかに湾曲している。
【0049】
目地ガスケット1では、頭部3の側方端部31と中空リップ4の第1壁部41との連結部分の屋内側の面に第1凹部71が形成されている。また、目地ガスケット1では、第1凹部71に加えて、中空リップ4の第1壁部41と第2壁部42との連結部分の柱部2側の面に第2凹部72が形成されている。これにより、挿入時に第1凹部71と第2凹部72との2点で目地ガスケット1が折れ曲がるため、第1壁部41が外壁パネル300の側面312と略平行になり易くなる(
図2の符号2001参照)。目地ガスケット1がこのように弾性変形すると、第1壁部41の屋外側に設けた意匠部5が外壁パネル300の側面312に弾接しながら目地ガスケット1が目地Mに挿入されていくことになり、挿入時に目地ガスケット1の姿勢がより安定する。従って、目地ガスケット1を目地Mに挿入する際の挿入性がさらに向上する。
【0050】
(意匠部5)
意匠部5は、頭部3と中空リップ4の一部とを屋外側から覆う被膜層である。意匠部5は、屋外側の面が塗装または着色材料による被覆によって調色されており、目地ガスケット1の意匠面をなす。すなわち、外壁パネル300の屋外側の表面314に対して目地ガスケット1の違和感が少なるように、意匠部5の屋外側の面が形成されている。すなわち、意匠部5は、頭部3よりも着色が容易な異材質にすることが可能である。従って、頭部3の屋外側に意匠部5を設けることにより、目地ガスケット1の屋外側の面を外壁パネル300の色に近い色にすることができ、建物の外観を向上することができる。
【0051】
本実施形態では、意匠部5は、頭部3および該頭部3に繋がる中空リップ4の第1壁部41と第2壁部42とに跨って設けられている。第1壁部41に設けられた意匠部5の一部は、目地ガスケット1が目地Mに配置された状態において、外壁パネル300の側面312に面接触するように弾性変形する。意匠部5の形成材料は、目地ガスケット1の目地Mへの挿入時における頭部3および中空リップ4の撓みを阻害しない範囲で、目地ガスケット1の形成材料と異なっていてもよい。勿論、目地ガスケット1の形成材料と同一の形成材料であってもよい。
【0052】
また、意匠部5には、頭部3の側方端部31と中空リップ4との連結部分付近、つまり第1凹部71付近の屋外側に、互いに平行に延伸する2つの突起51が形成されている。この突起を意匠部5に形成することにより、後述するように、頭部3の屋外側の面と外壁パネル300の側面312と隙間を較的小さくして、影が生じ難くすることができる。
【0053】
なお、意匠部5は必須ではなく、省略してもよい。意匠部5を省略する場合、頭部3の側方端部31と中空リップ4との連結部分の屋外側に、突起51を直接形成してもよい。
【0054】
(第1発泡体6)
第1発泡体6は、例えば、柔軟性が高い高発泡スポンジ等で構成される。第1発泡体6は、外壁パネル300の側面312と対向する中空リップ4の面に、第2壁部42と第3壁部43とに跨って、第1発泡体6の屋外側の端部である発泡体屋外端P2と屋内側の端部である発泡体屋内端P3との間に設けられる。意匠部5と第1発泡体6とは、
図1の符号1002に示すように、意匠部5と間隔L5をあけて、配置されている。間隔L5は、意匠部5の屋内側の端部である意匠部屋内端P1と発泡体屋外端P2との、目地Mの奥行方向における距離である。
図2に示すように、目地ガスケット1が目地Mに配置された状態において、意匠部5と第1発泡体6との各々が、外壁パネル300の側面312に面接触する。第1発泡体6は相対的に柔軟性が高いため、目地幅Wが増減しても追従性が高く、面接触している部分の止水性を確保し易い。
【0055】
また、目地ガスケット1を目地Mに挿入する際、まず、外壁パネル300の側面312に第1発泡体6が面接触するように弾性変形する。次に、目地ガスケット1には前述した第1凹部71と第2凹部72とを形成しているため、目地ガスケット1の挿入時には、第1凹部71と第2凹部72との2点で折れ曲がり、第1壁部41が外壁パネル300の側面312と略平行になるように弾性変形し、第1壁部41の屋外側に設けられた意匠部5の一部が外壁パネル300の側面312に面接触する。これにより、意匠部5の第2壁部42の側面312側の面と、第1発泡体6の屋外側の面とがなす角度θが小さくなる。具体的には、目地Mに配置する前の角度θ1(
図1の符号1002参照)よりも、目地Mに配置した後の角度θ2(
図2の符号2002参照)のほうが小さくなる。また、さらに、前述したように、第2壁部42は柱部2側に凹状となるように緩やかに湾曲させているため、目地ガスケット1を目地Mに挿入する際、第2壁部42が柱部2側に撓み変形する。このことにより、目地Mに配置する前の角度θ1よりも目地Mに配置した後の角度θ2
のほうが、より小さくなる。以上のことから、目地ガスケット1が目地Mに配置された状態において、外壁パネル300の側面312と意匠部5と第1発泡体6とで囲まれる隙間によって規定される導水空間Sの体積が比較的小さくなり、導水空間Sに侵入可能な水量を比較的小さくすることが可能となる。従って、外壁パネル300の面材310の内部に染み込む水量を比較的小さくでき、目地幅Wが異なる場合であっても止水性を確保し易くなる。
【0056】
〔挿入過程における目地ガスケット1の中空リップの挙動〕
次に、
図2を用いて、目地ガスケット1を目地Mに挿入する過程における、中空リップ4の挙動について説明する。まず、柱部2の屋内側端部222を目地Mの開口部から屋内に向けて挿入することにより、目地ガスケット1の目地Mへの挿入が開始する。このとき、目地ガスケット1は、柱部2と頭部3とが連結されているため、頭部3側から力を入れ易く、目地ガスケット1が目地Mに挿入し易くなっている。目地Mの開口部は、
図2の符号2001に示すように、2つの外壁パネル300の傾斜面311で形成されている。
【0057】
挿入を開始した直後、第1発泡体6が、傾斜面311と接触する。挿入がさらに進むと、第1発泡体6と外壁パネル300の側面312との面接触が始まる。挿入が進むほど第1発泡体6と側面312との接触面積が増加し、第1発泡体6が傾斜面311と側面312との境界線よりも屋内側に配置された時点で、第1発泡体6と側面312との接触面積が最大になる。
【0058】
第1発泡体6と側面312との面接触が始まってから接触面積が最大になるまでの間、挿入が進むほど中空リップ4が第1発泡体6によって柱部2側に押圧され、第3壁部43および第2壁部42がこの順で柱部2側に撓む。これにより、意匠部5と第1発泡体6とがなす角度θが小さくなるように第2壁部42が柱部2側により凸状となり、間隔L5が短くなって意匠部5と第1発泡体6とが近づく。
【0059】
第1発泡体6と側面312との接触面積が最大になった後、さらに挿入が進むと、意匠部5が側面312に面接触していく。より具体的には、中空リップ4が意匠部5によって柱部2側に押圧され、第2壁部42および第1壁部41の順で柱部2側に撓む。このとき、第1凹部71と第2凹部72との2点で目地ガスケット1が折れ曲がり、第1壁部41が312側面と略平行になるように弾性変形していくとともに、第1壁部41の屋外側に設けた意匠部5が側面312に面接触していく。目地ガスケット1がこのように弾性変形すると、第1壁部41の屋外側に設けた意匠部5が側面312に弾接しながら目地ガスケット1が目地Mに挿入されていくことになり、挿入時に目地ガスケット1の姿勢がより安定する。従って、目地ガスケット1を目地Mに挿入する際の挿入性がさらに向上する。
【0060】
第1壁部41の屋外側に設けた意匠部5が傾斜面311と側面312との境界線付近の位置に配置された時点で、目地ガスケット1の目地Mへの挿入が完了し、
図2の符号2001に示すように目地ガスケット1が目地Mに配置された状態になる。ここで、導水空間Sは、目地ガスケット1の目地Mへの挿入が進むにつれて体積が小さくなり、目地ガスケット1の目地Mへの挿入が完了した時点で、導水空間Sが極小化する。
【0061】
また、第1凹部71で折れ曲がった状態で目地ガスケット1が目地Mに配置されるため、頭部3が屋内側に凹状に湾曲する量・程度が小さくなる。従って、頭部3の湾曲を抑え、頭部3が平坦に近い状態で目地ガスケット1を目地Mに配置することができる。
【0062】
さらに、目地ガスケットが目地に配置された状態において、目地幅の大きさに応じて頭部の屋外側の面と外壁パネルの側面との間に比較的大きな隙間ができ、影が生じる場合がある。前記構成によれば、頭部の側方端部とリップとの連結部分付近の屋外側に突起が形成されているため、前記隙間を比較的小さくして、影が生じ難くなる。
【0063】
〔目地ガスケット1のメリット〕
目地ガスケット1は、上述した特徴ある構成になっていることから、止水性および挿入
性の面で様々なメリットを有している。以下、
図1および
図2を用いて、目地ガスケット
1のメリットについて説明する。
【0064】
<1.柱部2と頭部3との連結>
本実施形態に係る目地ガスケット1では、柱部2と頭部3とが連結されていることが好ましい。仮に柱部2と頭部3とが離間している場合、挿入時に屋外側から力を入れ難く、目地ガスケット1が目地Mに挿入し難くなる。この点、目地ガスケット1では、柱部2と頭部3とが連結されているため、挿入時に頭部3側から力を入れ易く、目地ガスケット1が目地Mに挿入し易くなっている。
【0065】
<2.第1凹部71の形成>
本実施形態に係る目地ガスケット1では、頭部3の側方端部31と中空リップ4との連結部分の屋内側の面に第1凹部71が形成されていることが好ましい。これにより、第1凹部71で折れ曲がるように目地ガスケット1が目地Mに挿入されるため、挿入時の目地ガスケット1の姿勢が安定し、目地ガスケット1を所望の配置態様で目地Mに配置することができる。また、第1凹部71で折れ曲がった状態で目地ガスケット1が目地Mに配置されるため、頭部3が屋内側に凹状に湾曲する量・程度が小さくなる。従って、第1凹部71がない場合に比べて、頭部3の湾曲を抑え、頭部3が平坦に近い状態で目地ガスケット1を目地Mに配置することができる。
【0066】
<3.第2凹部72の形成>
本実施形態に係る目地ガスケット1では、中空リップ4の第1壁部41と第2壁部42との連結部分の柱部側の面に第2凹部72が形成されていることが好ましい。これにより、挿入時に第1凹部71と第2凹部72との2点で目地ガスケット1が折れ曲がるため、第1壁部41が外壁パネル300の側面312と略平行になり易くなる。目地ガスケット1がこのように弾性変形すると、第1壁部41の屋外側に設けた意匠部5が外壁パネル300の側面312に弾接しながら目地ガスケット1が目地に挿入されていくことになり、挿入時に目地ガスケット1の姿勢がより安定する。従って、目地ガスケット1を目地Mに挿入する際の挿入性がさらに向上する。
【0067】
なお、中空リップ4の第1壁部41と第2壁部42との連結部分の柱部側の面に第2凹部72が形成されていることは必須ではない。第2凹部72が形成されていなくても、挿入時に第1凹部71で目地ガスケット1が折れ曲がるため、目地ガスケット1は良好な外観および挿入性が担保されている。
【0068】
<4.突起51の形成>
本実施形態に係る目地ガスケット1では、頭部3の側方端部31と中空リップ4との連結部分付近、つまり第1凹部71付近の屋外側に突起51が形成されていることが好ましい。目地ガスケット1が目地Mに配置された状態において、目地幅Wの大きさに応じて頭部3の屋外側の面と外壁パネル300の側面312との間に比較的大きな隙間ができ、影が生じる場合がある。この点、目地ガスケット1では、頭部3の側方端部31中空リップ4との連結部分付近の屋外側に突起51が形成されているため、前記隙間を比較的小さくして影が生じ難くすることができる。
【0069】
なお、突起51は、前記影が生じ難くなる形状であればよい。突起51は、例えば、屋外側に突出した形状であってもよく、外壁パネル300の傾斜面311または側面312側に延伸した形状であってもよい。
【0070】
<5.意匠部5および第1発泡体6と外壁パネル300の側面312との面接触>
本実施形態に係る目地ガスケット1は、目地Mに配置された状態において、意匠部5と第1発泡体6との各々が、外壁パネル300の側面312に面接触することが好ましい。第1発泡体6は相対的に柔軟性が高いため、目地幅Wが増減しても追従性が高く、面接触している部分の止水性を確保し易い。そのため、目地ガスケット1が目地Mに配置された状態において、外壁パネル300の側面312と意匠部5と第1発泡体6とで囲まれる隙間によって規定される導水空間Sの体積が比較的小さくすることができ、導水空間Sに侵入可能な水量を比較的小さくすることが可能となる。従って、外壁パネル300の面材310の内部に染み込む水量を比較的小さくでき、目地幅Wが異なる場合であっても止水性を確保し易くなる。
【0071】
また、屋外からの水の一部が意匠部5と外壁パネル300の側面312との接触箇所を通過したとしても、第1発泡体6と側面312とが面接触している箇所でこれらの大半を堰き止めることができる。
【0072】
例えば、外壁パネル300の側面312は、一様な平面ではなく微細な凹凸がある。そのため、仮に、第1発泡体6と側面312とが線接触する場合、これらの接触箇所に微細な開口部が形成され、水がこの開口部を通過してより屋内側に浸入してしまう。一方、目地ガスケット1は、目地Mに配置された状態において、
図2の符号2001に示すように第1発泡体6と側面312とが面接触することから、これらが線接触する合に比べて前記開口部が連続的に形成されるようなことがない。よって、第1発泡体6と側面312とが線接触する場合よりも、意匠部5で浸入を防ぎ切れなかった一部の水がより屋内側に浸入するのを低減することができる。
【0073】
これらのことから、本実施形態に係る目地ガスケット1は、目地Mに浸入した水が例えば外壁パネル300の側面312を通過して該外壁パネル300の裏面313にまで伝わるのを効果的に低減することができる。また、本実施形態に係る目地ガスケット1は、目地Mに浸入した水が、側面312から外壁パネル300の内部に浸入するのを効果的に低減することもできる。
【0074】
<6.導水空間Sの形成>
本実施形態に係る目地ガスケット1は、目地Mに配置された状態において、意匠部5と第1発泡体6との各々が側面312に面接触し、外壁パネル300の側面312と意匠部5と第1発泡体6とで囲まれる隙間によって形成される導水空間Sが極小化されることが好ましい。
【0075】
第1発泡体6は相対的に柔軟性が高いため、目地幅Mが増減しても追従性が高く、側面312と面接触している部分の止水性を確保し易い。そのため、目地ガスケット1が目地Mに配置された状態において、導水空間Sの体積を比較的小さくすることができ、導水空間Sに侵入可能な水量を比較的小さくすることが可能となる。従って、外壁パネル300の面材310内部に染み込む水量を比較的小さくでき、目地幅Mが異なる場合であっても、止水性を確保し易くなる。
【0076】
なお、目地ガスケット1が目地Mに配置された状態において、意匠部5と第1発泡体6とが互いに接触していてもよい。これにより、導水空間Sを小さくして、導水空間Sに侵入可能な水量を比較的小さくすることが可能となる。
【0077】
<7.中空リップ4、意匠部5および第1発泡体6の配置>
本実施形態に係る目地ガスケット1では、中空リップ4は、第1壁部41と第2壁部42と第3壁部43とを含むことが好ましい。また、意匠部5は、第1壁部41と第2壁部42とに跨って設けられ、第1発泡体6は、第2壁部42と第3壁部43に跨って設けられることが好ましい。これにより、中空リップ4の屈曲点がより多くなるため、目地ガスケット1が目地Mに配置された状態において、それぞれの屈曲点でリップがより弾性変形し易くなり、中空リップ4によって意匠部5と第1発泡体6とが外壁パネル300の側面312に向けてより弾接し易くなる。また、第1発泡体6は第2壁部42と第3壁部43とに跨って設けられるため、第1発泡体6の設定長さが長くなり、外壁パネル300の側面312に対する第1発泡体6の接触面積を大きくすることができる。従って、外壁パネル300の側面312に対する意匠部5および第1発泡体6の密着度がより向上し、止水性がさらに向上する。
【0078】
<8.目地ガスケット1の目地幅W方向の寸法設計>
図1の符号1001に示すように、本実施形態に係る目地ガスケット1では、目地ガスケット1が目地Mに配置される前の状態において、柱部2を挟んで対向する2つの第1発泡体6の目地幅W方向の幅は第2壁部42と第3壁部43との連結部分付近で最大となっており、最大幅L1となっている。同様に、柱部2を挟んで対向する2つの中空リップ4の目地幅W方向の幅も前記連結部分付近で最大となっており、最大幅L2となっている。また、頭部3の目地幅W方向の幅、つまり2つの側方端部31の先端同士の間隔は、最大幅L3になっている。さらに、意匠部5の目地幅W方向の幅は第1壁部41と第2壁部42との連結部付近で最大となっており、最大幅L4になっている。本実施形態に係る目地ガスケット1では、最大幅L3、最大幅L2、最大幅L4、最大幅L1の順で大きくなるように、各部の目地幅W方向の寸法が設計されていることが好ましいが、必須ではない。例えば、最大幅L2と最大幅L4とは同じであってもよいし、最大幅L4のほうが最大幅L2よりも大きくなるようにしてもよい。
【0079】
本実施形態に係る目地ガスケット1では、第2壁部42は柱部2側に凸状となるよう緩やかに湾曲し、意匠部5は第1壁部41と第2壁部42とに跨って設けられ、第1発泡体6は第2壁部42と第3壁部43に跨って設けられ、上述したように第1発泡体6の最大幅L1が意匠部5の最大幅L4よりも大きくなっていることが好ましい。これにより、目地ガスケット1が目地Mに配置された状態において、第2壁部42が柱部2側に撓み易くなり、意匠部5と第1発泡体6との間隔L5が小さくなる。それとともに、第2壁部42を覆う意匠部5の側面312側の面と、第1発泡体6の屋外側の面とでなす角度θが目地Mに配置する前(角度θ1)よりも目地Mに配置した状態(角度θ2)のほうがさらに小さくなるように(回転するように)撓み変形する。従って、導水空間Sの体積をより小さくすることができ、目地ガスケット1の止水性がさらに向上する。
【0080】
<9.意匠部5と第1発泡体6との配置設計>
また、本実施形態に係る目地ガスケット1では、意匠部5と第1発泡体6とは、目地ガスケット1が目地Mに配置される前の状態において離間していることが好ましい。なぜなら、仮に意匠部5と第1発泡体6とが繋がっている場合、中空リップ4の変形の自由度が妨げられ、目地ガスケット1の挿入性が低下するためである。その点、本実施形態に係る目地ガスケット1は、該目地ガスケット1が目地Mに配置される前の状態において、
図1の符号1001に示すように意匠部5と第1発泡体6とが間隔L5だけ離間している。そのため、本実施形態に係る目地ガスケット1の挿入性が担保されることになる。
【0081】
なお、目地ガスケット1が目地Mに配置される前の状態において、意匠部5と第1発泡体6とが離間していることは必須ではない。前記配置前の状態において意匠部5と第1発泡体6とが接触していても、意匠部5と第1発泡体6とが離間している場合に比べて効果の程度は若干劣るものの、目地ガスケット1は良好な挿入性が担保されている。
【0082】
〔変形例〕
本実施形態に係る目地ガスケット1およびシール構造500については、複数の変形例が想定される。以下、
図3を用いて、本実施形態に係る目地ガスケット1およびシール構造500の変形例について説明する。目地ガスケット1の変形例としては、例えば、
図3に示すような目地ガスケット11が想定される。
【0083】
目地ガスケット11は、
図3の符号3001に示すように、屋外側柱部81および屋内側柱部82を有する柱部8を備えている。屋外側柱部81は、屋内側柱部82よりも屋外側に形成されており、上述した目地ガスケット1の柱部2と同一の部分である。さらに言えば、目地ガスケット11における、屋内側柱部82の屋外側端部の先端(
図3の符号3001中の破線部分)よりも屋外側の全部分は、目地ガスケット1に相当する。柱部8は、屋外側柱部81の屋内側端部(つまり柱部2の屋内側端部222)と屋内側柱部82の屋外側端部とが連なって切れ目なく構成されている。
【0084】
屋内側柱部82の側面には、屋外側止水リップ9が設けられている。また、屋内側柱部82の屋内側端部には、屋内側止水リップ10が設けられている。屋外側止水リップ9および屋内側止水リップ10は、ともに2つの外壁パネル300に向けて延伸している。屋外側止水リップ9および屋内側止水リップ10は、いずれも中空リップ4で浸入を防ぎ切れなかった一部の水がさらに屋内側に浸入することを防ぐ役割を果たす。
【0085】
屋外側止水リップ9は、屋内側柱部82の側面から外壁パネル300に向けて突出している根元部91と、先端面に第2発泡体61が設けられた先端部92とを有している。根元部91と先端部92との連結部分には屈折部93が形成されている。この屈折部93の屋外側の面に第3凹部73が形成されている。屋外側止水リップ9は屈折部93で折れ曲がった形状であり、先端部92が屈折部93から屋外側に傾斜して延伸している。
【0086】
屋内側止水リップ10は、屋内側柱部82の側面から外壁パネル300に向けて突出している根元部101と、屋内側の面に第3発泡体62が設けられた先端部102とを有している。屋内側柱部82と根元部101との連結部分の屋外側の面に第4凹部74が形成されている。また、根元部101と先端部102との連結部分には屈折部103が形成されている。屋内側止水リップ10は屈折部103で折れ曲がった形状であり、先端部102が屈折部103から屋内側に傾斜して延伸している。
【0087】
屋外側止水リップ9の根元部91、先端部92および屋内側止水リップ10の根元部101、先端部102の形状は、いずれも略板状である。また、屋内側柱部82、屋外側止水リップ9および屋内側止水リップ10は、いずれもゴム様弾性体で形成されており、目地ガスケット1相当部と同一の形成材料とするのが好ましいが必須ではなく、異なる形成材料であってもよい。さらに、第2発泡体61および第3発泡体62の形成材料も、第1発泡体6と同一の形成材料とするのが好ましいが必須ではなく、異なる形成材料であってもよい。
【0088】
目地ガスケット11が目地Mに配置された状態において、上述した目地ガスケット1に相当する部分の配置態様は、
図3の符号3002に示すように目地ガスケット1の配置態様と同様である。屋内側柱部82については、目地ガスケット11が目地Mに配置された状態において、2つの下地材320の間および2つの断熱ボード330の間に形成された空間に配置される。
【0089】
目地ガスケット11が目地Mに配置された状態において、屋外側止水リップ9および屋内側止水リップ10は、
図3の符号3002に示すように、第2発泡体61および第3発泡体62を外壁パネル300に面接触させる。具体的には、屋外側止水リップ9については、先端部92の先端面に設けられた第2発泡体61が、面材310の裏面313と面接触する。また、屋内側止水リップ10については、先端部102の屋内側の面に設けられた第3発泡体62が、断熱ボード330の屋外側の面331と面接触する。
【0090】
この目地ガスケット11が目地Mに配置された状態では、
図3の符号3002に示すように、目地ガスケット11および2つの外壁パネル300を必須の構成要素とする目地Mのシール構造510が成立している。
【0091】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態および変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態および変形例のそれぞれに開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0092】
〔実施例〕
以下、
図4~
図11を用いて、本発明の第1~第3実施例に係る目地Mのシール構造520、500および540、ならびに本発明の第1~第5比較例に係る目地Mのシール構造600、610、700、800および810のそれぞれについて、性能を評価した結果について説明する。なお、以下の説明では、「目地Mのシール構造・・・」を「シール構造・・・」と略記する場合がある。
【0093】
各実施例および各比較例の性能を評価する際、評価項目として「止水性」、「保持性」、「挿入性」および「外観」の4つを設定した。「保持性」とは、目地Mに配置された目地ガスケットの配置位置が、外力および時間の経過によっても変位し難い程度を指す。性能の評価は次のように行った。まず、4つの評価項目のそれぞれについて、「非常に良好」、「良好」、「普通」および「不良」の4段階で性能を官能評価した。次に、4つの評価項目の各評価結果を総合考慮した総合評価を前記4段階で示し、当該総合評価を、各実施例および各比較例における性能の最終的な評価結果とした。
【0094】
図4~6に示すように、第1~第3実施例に係るシール構造520、500および540のすべてについて、本実施形態に係る目地ガスケット1と2つの外壁パネル300とを必須の構成要素とした。第1実施例に係るシール構造520では、
図4に示すように目地Mの目地幅を狭幅W1とした。また、第2実施例に係るシール構造500では、
図5に示すように目地Mの目地幅を中央幅W2とした。さらに、第3実施例に係るシール構造540では、
図6に示すように目地Mの目地幅を広幅W3とした。ここで、中央幅W2の長さは、設計上の目地幅(中央値)として定義される。また、狭幅W1の長さは、設計上の目地幅の公差下限値として定義される。さらに、広幅W3の長さは、設計上の目地幅の公差上限値として定義される。
【0095】
<実施例1>
まず、第1実施例に係るシール構造520の各性能と第1比較例に係るシール構造600および第4比較例に係るシール構造800の各性能とを比較した。シール構造600については、
図7に示すように、特許文献1に係る目地ガスケット230と2つの外壁パネル300とを必須の構成要素とし、目地Mの目地幅を狭幅W1’とした。また、シール構造800については、
図10に示すように、特許文献3に係る目地ガスケット270と2つの外壁パネル300とを必須の構成要素とし、目地Mの目地幅を狭幅W1’とした。ここで、狭幅W1’の長さは、狭幅W1の長さと同様、設計上の目地幅の公差下限値として定義される。また、第1実施例の狭幅W1の長さと第1比較例および第4比較例の狭幅W1’の長さとが同一になるようにした。さらに、目地ガスケット230および目地ガスケット270については、全体の大きさを目地ガスケット1と同程度の大きさにするとともに、目地ガスケット230および目地ガスケット270におけるすべての部分の形成材料を、目地ガスケット1における対応する各部分の形成材料と同一にした。
【0096】
止水性については、シール構造520が非常に良好であり、シール構造600が普通であり、シール構造800が良好であることが判明した。シール構造520では、
図4に示すように、目地ガスケット1が狭幅W1の目地Mに配置された状態において導水空間S1が形成された。シール構造520では、意匠部5および第1発泡体6が外壁パネル300の側面312に強く密着し、導水空間S1は、水が通過できない程度に、つまり止水性を非常に良好と評価できる程度に小さな体積であった。そのため、シール構造520は止水性が非常に良好であることが判明した。
【0097】
一方、シール構造600では、
図7に示すように、目地ガスケット230が狭幅W1’の目地Mに配置された状態において導水空間S1’が形成された。しかしながら、目地ガスケット230は第1発泡体6に相当する部材を有していないため、中空リップ234、屋外側止水リップ237および屋内側止水リップ239と外壁パネル300の側面312との接触面積が小さく、側面312との密着度が目地ガスケット1に比べて低かった。そのため、シール構造600は止水性が普通であることが判明した。
【0098】
また、シール構造800では、
図10に示すように、目地ガスケット270が狭幅W1’の目地Mに配置された状態において導水空間S1”が形成された。導水空間S1”の体積は導水空間S1と同等であった。しかしながら、目地ガスケット270は第1発泡体に相当する部材を有していないため、意匠部285が形成された中空リップ284と外壁パネル300の側面312との密着度が目地ガスケット1に比べて低かった。そのため、シール構造810は止水性が良好であることが判明した。
【0099】
保持性については、シール構造520が非常に良好であり、シール構造600およびシール構造800が良好であることが判明した。シール構造520では、目地ガスケット1が第1発泡体6を備えるため、目地ガスケット1が狭幅W1の目地Mに配置された状態において、第1発泡体6が外壁パネル300の側面312に強く密着した。そのため、シール構造520は保持性が非常に良好であることが判明した。
【0100】
一方、シール構造520よりもシール構造600およびシール構造800のほうが評価が低かったのは、目地ガスケット230および目地ガスケット270は第1発泡体6に相当する部材を有していないため、外壁パネル300の側面312との密着度が目地ガスケット1に比べて低かったことが要因であると推察される。
【0101】
挿入性については、シール構造520とシール構造600とで変わりはほぼなく普通であり、シール構造800が不良であることが判明した。シール構造520の挿入性が普通になったのは、挿入時に第1発泡体6と外壁パネル300の側面312との摩擦抵抗が生じるが、第1凹部71と第2凹部72とで折れ曲がるように目地ガスケット1が目地Mに挿入されるため、目地ガスケット1を狭幅W1の目地Mに挿入する際の姿勢が安定し、かつ、前記摩擦抵抗が低減されたことが要因の一つであると推察される。
【0102】
一方、シール構造600の評価がシール構造520と同程度となったのは、目地ガスケット230が第1発泡体6に相当する部材を有しておらず第1発泡体6による摩擦抵抗は生じないが、柱部232と該柱部232を屋外側から覆う中空リップ234の頭部233とが離間しているため、挿入時に屋外側から力を入れ難く、目地ガスケット230が目地に挿入し難いことが要因であると推察される。
【0103】
また、シール構造800の評価がシール構造520よりも低かったのは、目地ガスケット270のトップ目地材280が第1凹部71および第2凹部72に相当する部材を有しないため、中空リップ284が折れ曲がらず、シリコン系被覆層である意匠部285と側面312との摩擦抵抗が大きかったことが要因の一つであると推察される。
【0104】
外観については、シール構造520およびシール構造800が不良である一方、シール構造600は良好であることが判明した。シール構造520およびシール構造800よりもシール構造600のほうが評価が高かったのは、目地ガスケット230の頭部233が目地ガスケット1の頭部3の幅がよりも小さかったこと、および柱部232と該柱部232を屋外側から覆う中空リップ234の頭部233とが離間しているため、頭部233は柱部232に引っ張られたりすることなく(撓み形態で規制を受けず)、目地ガスケット230が狭幅W1’の目地Mに配置された状態において、頭部233が湾曲する量・程度が小さくなったことが要因であると推察される。
【0105】
以上より、シール構造520とシール構造600およびシール構造800とを比較した場合、シール構造600は止水性および挿入性が普通であり、シール構造800は挿入性および外観が不良と低い結果となった。一方、シール構造520は外観が不良であるが、止水性および保持性において評価が非常に良好であった。
【0106】
<実施例2>
次に、第2実施例に係るシール構造500の各性能と第2比較例に係るシール構造610および第3比較例に係るシール構造700の各性能とを比較した。シール構造610については、
図8に示すように、特許文献1に係る目地ガスケット230と2つの外壁パネル300とを必須の構成要素とし、目地Mの目地幅を中央幅W2’とした。また、シール構造700については、
図9に示すように、特許文献2に係る目地ガスケット250と2つの外壁パネル300とを必須の構成要素とし、目地Mの目地幅を中央幅W2’とした。ここで、中央幅W2’の長さは、中央幅W2の長さと同様、設計上の目地幅(中央値)として定義される。また、第2実施例の中央幅W2の長さと第2比較例および第3比較例の中央幅W2’の長さとが同一になるようにした。さらに、目地ガスケット230および目地ガスケット250については、全体の大きさを目地ガスケット1と同程度の大きさにするとともに、目地ガスケット230および目地ガスケット250におけるすべての部分の形成材料を、目地ガスケット1における対応する各部分の形成材料と同一にした。
【0107】
止水性については、シール構造500が良好であり、シール構造610が不良であり、シール構造700が非常に良好であることが判明した。シール構造500では、
図5に示すように、目地ガスケット1が中央幅W2の目地Mに配置された状態において導水空間S2が形成された。シール構造500では、意匠部5および第1発泡体6が外壁パネル300の側面312に密着し、導水空間S2は、水がほとんど通過できない程度に、つまり止水性を良好と評価できる程度に小さな体積であった。そのため、シール構造500は止水性が良好であることが判明した。
【0108】
一方、シール構造610では、
図8に示すように、目地ガスケット230が中央幅W2’の目地Mに配置された状態において導水空間S2’が形成された。導水空間S2’の体積は導水空間S2に比べて大きく、しかも、目地ガスケット230は第1発泡体6に相当する部材を有していないため、中空リップ234、屋外側止水リップ237および屋内側止水リップ239と外壁パネル300の側面312との接触面積が小さく密着度が低かった。そのため、シール構造610は止水性が不良であることが判明した。
【0109】
また、シール構造700では、
図9に示すように、目地ガスケット250が中央幅W2’の目地Mに配置された状態において導水空間が形成されなかった。しかも、発泡体256と外壁パネル300の側面312との接触面積が大きく密着度が高かった。そのため、シール構造700のほうがシール構造500よりも止水性に優れ止水性が非常に良好であることが判明した。
【0110】
保持性については、シール構造500が良好であり、シール構造610が普通であり、シール構造700が非常に良好であることが判明した。シール構造700よりもシール構造500のほうが評価が低かったのは、
図1に示すように、目地ガスケット1には、当該目地ガスケット1の目地Mへの配置前に柱部2と頭部3と中空リップ4とで取り囲まれた空間が形成されることが要因であると推察される。つまり、前記空間が形成される分、
図5に示すように、配置前の空間よりも配置後の空間のほうが小さくなってはいるものの、空間がなくなっているわけではないため、配置後における意匠部5および第1発泡体6と外壁パネル300の側面312との密着度が目地ガスケット250より劣ることが要因であると推察される。
【0111】
一方、目地ガスケット250については、
図9に示すように、柱部252に設けられた頭部253と屋外側止水リップ257と屋内側止水リップ259との間の空間の略全域に発泡体256が充填されており、目地ガスケット1のような空間が形成されていない。このことが、シール構造700の保持性が高い要因であると推察される。
【0112】
また、シール構造500よりもシール構造610のほうが評価が低かったのは、目地ガスケット230と外壁パネル300の側面312との接触面積が小さく密着度が低かったことが要因であると推察される。
【0113】
挿入性については、シール構造500が良好であり、シール構造610が普通であり、シール構造700が不良であることが判明した。シール構造500の挿入性が良好になったのは、第1凹部71と第2凹部72とで折れ曲がるように目地ガスケット1が目地Mに挿入されるため、第1壁部41が外壁パネル300の側面312と略平行になり、挿入時の目地ガスケット1の姿勢が安定したことが要因であると推察される。
【0114】
一方、シール構造610の挿入性が普通になったのは、柱部232と該柱部232の屋外側に設けられた中空リップ234の頭部233とが離間しているため、挿入時に屋外側から力を入れ難く、目地ガスケット230が目地に挿入し難いことが要因であると推察される。
【0115】
また、シール構造700の挿入性が不良になったのは、頭部253と屋外側止水リップ257と屋内側止水リップ259とで取り囲まれた空間の略全域に発泡体256が充填されていることから、変形の自由度が非常に低いことが要因であると推察される。
【0116】
外観については、シール構造500が非常に良好である一方、シール構造610は良好であり、シール構造700は不良であることが判明した。シール構造500の外観が非常に良好になったのは、第1凹部71で折れ曲がった状態で目地ガスケット1が目地Mに配置されるため、頭部3が屋内側に凹状に湾曲する量・程度が小さくなり、頭部3の湾曲を抑え、頭部3が平坦に近い状態で目地ガスケット1を目地Mに配置されたことが要因の一つであると推察される。加えて、意匠部5に突起51が形成されているため、頭部3の屋外側の面と外壁パネル300の側面312との間の隙間が小さくなり、影が生じ難くなったこともが要因の一つであると推察される。
【0117】
一方、シール構造610の外観が良好になったのは、柱部232と該柱部232を屋外側から覆う中空リップ234の頭部233とが離間しているため、頭部233は柱部232に引っ張られたりすることなく(撓み形態で規制を受けず)、目地ガスケット230が中央幅W2’の目地Mに配置された状態において、頭部233が湾曲する量・程度が小さくなった点は良かったものの、頭部233と中空リップ234との連結部分に第1凹部71および突起51に相当する部材が形成されておらず、屋外側から見たときの中空リップ234と外壁パネル300の側面312との間の隙間が大きくなり、影が生じたことが要因であると推察される。また、シール構造700の外観が不良になったのは、頭部253が板状であるため、目地Mに配置された状態において頭部253が屋内側に凹状に湾曲し易いことが要因であると推察される。
【0118】
以上より、シール構造500とシール構造610およびシール構造700とを比較した場合、シール構造610は止水性が不良と低く、シール構造700は挿入性および外観が不良と低い結果となった。一方、シール構造500は止水性、保持性、挿入性および外観において評価が良好以上であり、バランス良く高評価が得られた。
【0119】
<実施例3>
次に、第3実施例に係るシール構造540の各性能と第5比較例に係るシール構造810の各性能とを比較した。シール構造810については、
図11に示すように、特許文献3に係る目地ガスケット270と外壁パネル300とを必須の構成要素とし、目地Mの目地幅を広幅W3’とした。ここで、広幅W3’の長さは、広幅W3の長さと同様、設計上の目地幅の公差上限値として定義される。また、第3実施例の広幅W3の長さと第3比較例の広幅W3´の長さとが同一になるようにした。
【0120】
止水性については、シール構造540が普通であり、シール構造810が不良であることが判明した。シール構造540では、
図6に示すように、目地ガスケット1が広幅W3の目地Mに配置された状態において、導水空間S3が形成された。シール構造540では、意匠部5および第1発泡体6が外壁パネル300の側面312にある程度密着し、導水空間S1は止水性を普通と評価できる程度に小さな体積であった。そのため、シール構造540は止水性が普通であることが判明した。シール構造540の止水性が普通になったのは、中空リップ4に設けられた第1発泡体6の追従性が高いため、第1発泡体6と外壁パネル300の側面312とが面接触が確保でき、かつ、目地Mが広幅W3であっても、第1発泡体6の存在によって導水空間S3の体積があまり大きくならなかったことが要因であると推察される。
【0121】
一方、シール構造810では、
図11に示すように、目地ガスケット270が広幅W3’の目地Mに配置された状態において導水空間S3’が形成された。ここで、導水空間S3’の体積は導水空間S3に比べて大きく、また、目地ガスケット270は第1発泡体6に相当する部材を有していないため、意匠部285が形成された中空リップ284と外壁パネル300の側面312との接触面積が小さく密着度が低かったことが要因であると推察される。
【0122】
保持性については、シール構造540とシール構造810とで変わりはほぼなく、ともに普通であることが判明した。このような結果になったのは、目地ガスケット1が追従性が高い第1発泡体6を有する一方、目地ガスケット270が、外壁パネル300の面材310の屋内側の面と断熱ボード330の屋外側の面とに挟持固定されるベース目地材290の垂直板291に係止される凸条(矢尻状部)288を備えていることが要因であると推察される。
【0123】
挿入性については、シール構造540が非常に良好であり、シール構造810が良好であることが判明した。シール構造540の挿入性が非常に良好になったのは、第1凹部71と第2凹部72とで折れ曲がるように目地ガスケット1が目地Mに挿入されるため、第1壁部41が外壁パネル300の側面312と略平行になり、挿入時の目地ガスケット1の姿勢が安定したこと、および、目地幅が広幅W3であることが要因であると推察される。
【0124】
一方、シール構造810の挿入性が普通になったのは、目地幅が広幅W3であるため、中空リップ284の撓み量が小さく、目地ガスケット270の中空リップ284の屋外側に設けているシリコン系被覆層である意匠部285と側面312の摩擦抵抗が小さかったことが要因であると推察される。
【0125】
外観については、シール構造540が良好である一方、シール構造810は普通であることが判明した。シール構造540の外観が良好になったのは、第1凹部71で折れ曲がった状態で目地ガスケット1が目地Mに配置されるため、頭部3が屋内側に凹状に湾曲する量・程度が小さくなり、頭部3の湾曲を抑え、頭部3が平坦に近い状態で目地ガスケット1を目地Mに配置されたことが要因の一つであると推察される。加えて、意匠部5に突起51が形成されているため、頭部3の屋外側の面と外壁パネル300の側面312との間の隙間がやや小さくなり、影が生じ難くなったこともが要因の一つであると推察される。
【0126】
一方、シール構造810の外観が普通になったのは、柱部282の頭部283と中空リップ234との連結部分に第1凹部71および突起51に相当する部材が形成されておらず、屋外側から見たときの中空リップ234と広幅W3’の外壁パネル300の側面312との間の隙間が大きくなり、影が生じたことが要因であると推察される。
【0127】
シール構造540とシール構造810とを比較した場合、シール構造810は止水性の評価が不良と低い一方、シール構造540は評価が不良となる指標が全くなく、バランスの良い評価が得られた。
【0128】
<総合評価>
【0129】
【表1】
表1は、上述した実施例1~実施例3の評価結果を纏めた表である。表1に示すように、目地ガスケット1では、挿入性、保持性、挿入性および外観のいずれの指標においても全体的にバランスよく評価が得られた。従って、止水性、保持性、挿入性および外観の目地ガスケット1の総合評価が非常に良好になることが判明した。
【0130】
一方、目地ガスケット230は、外観の評価は相対的に高かったが、止水性の評価が相対的に低かった。従って、止水性、保持性、挿入性および外観の目地ガスケット230の総合評価が普通になることが判明した。また、目地ガスケット250は、止水性および保持性の評価が相対的に高かったが、挿入性および外観の評価が相対的に低かった。従って、止水性、保持性、挿入性および外観の目地ガスケット250の総合評価が不良になることが判明した。さらに、目地ガスケット270は、止水性および保持性の評価が相対的に高かったが、挿入性および外観の評価が相対的に低かった。従って、止水性、保持性、挿入性および外観の目地ガスケット270の総合評価が普通になることが判明した。
【符号の説明】
【0131】
1、11 目地ガスケット
2、8 柱部
3 頭部
4 中空リップ(リップ)
5 意匠部
6 第1発泡体(発泡体)
21 第1柱部
22 第2柱部
31 側方端部
41 第1壁部
42 第2壁部
43 第3壁部
51 突起
71 第1凹部
72 第2凹部
81 屋外側柱部
82 屋内側柱部
211 屋外側端部
212 柱基部
221 膨出部
222 屋内側端部
300 外壁パネル
330 断熱ボード
500、510,520,540 シール構造
L1~L4 最大幅
L5 間隔
M 目地
P1 意匠部屋内端
P2 発泡体屋外端
P3 発泡体屋内端
T1 第1柱部幅
T2 第2柱部幅
W、W1~W3 目地幅
θ、θ1、θ2 角度