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特開2022-188649炉心設計方法、原子炉運転方法、炉心設計装置、およびプログラム
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  • 特開-炉心設計方法、原子炉運転方法、炉心設計装置、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188649
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】炉心設計方法、原子炉運転方法、炉心設計装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
G21C17/00 220
G21C17/00 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096862
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 晃佑
(72)【発明者】
【氏名】服部 和裕
(72)【発明者】
【氏名】宗 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太郎
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA03
2G075CA08
2G075EA03
2G075FB07
(57)【要約】
【課題】炉心設計において燃料の健全性悪化を抑制しつつ、熱出力を向上させること。
【解決手段】炉心設計方法は、原子炉の燃料棒の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒の配置位置を示す第1レイアウトを決定するステップと、前記第1レイアウトで前記燃料棒を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出するステップと、を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の燃料棒の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒の配置位置を示す第1レイアウトを決定するステップと、
前記第1レイアウトで前記燃料棒を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出するステップと、
を有する、炉心設計方法。
【請求項2】
前記第1レイアウトを決定するステップにおいては、燃料棒の濃縮度の制約条件に基づき、前記第1レイアウトを決定する、
請求項1に記載の炉心設計方法。
【請求項3】
前記第1レイアウトは、複数の濃縮度の燃料棒の配置位置を示す、
請求項1または請求項2に記載の炉心設計方法。
【請求項4】
前記第1レイアウトを決定するステップにおいては、
燃料集合体の外周部セルの燃料棒の濃縮度に対して、前記外周部セルの燃料棒よりも前記外周部セルから遠い位置の燃料棒の濃縮度を低くする、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の炉心設計方法。
【請求項5】
前記原子炉には、前記燃料棒と、互いに離れて配置されたシンブルチューブとが搭載される、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炉心設計方法。
【請求項6】
前記第1レイアウトを決定するステップにおいては、
前記シンブルチューブと接する位置の燃料棒の濃縮度に対して、前記シンブルチューブと接する位置は前記シンブルチューブから遠い位置の燃料棒の濃縮度よりも低くする、
請求項5に記載の炉心設計方法。
【請求項7】
燃料集合体はガドリニウム酸化物及びウラン酸化物からなるガドリニウム燃料棒を備える、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の炉心設計方法。
【請求項8】
前記第1レイアウトを決定するステップにおいては、
前記ガドリニウム燃料棒と接する位置の燃料棒の濃縮度に対して、前記ガドリニウム燃料棒と接する位置は前記ガドリニウム燃料棒から遠い位置の燃料棒の濃縮度より高くする、
請求項7に記載の炉心設計方法。
【請求項9】
前記出力ピーキング係数に基づき、前記燃料棒の配置位置を示す第2レイアウトを決定するステップと、
をさらに有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の炉心設計方法。
【請求項10】
前記第2レイアウトを設定するステップにおいては、所定のサイクル燃焼度の領域における前記出力ピーキング係数が所定値以下となるように、前記第2レイアウトを設定する、
請求項9に記載の炉心設計方法。
【請求項11】
前記第2レイアウトは、複数の濃縮度の燃料棒の配置位置を示す、
請求項9または請求項10に記載の炉心設計方法。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の炉心設計方法で決定された前記第1レイアウトまたは前記第2レイアウトで前記燃料棒を配置し、前記原子炉を運転する、
原子炉運転方法。
【請求項13】
原子炉の燃料棒の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒の配置位置を示す第1レイアウトを決定する第1レイアウト決定部と、
前記第1レイアウトで前記燃料棒を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出する出力ピーキング係数算出部と、
を有する、炉心設計装置。
【請求項14】
原子炉の燃料棒の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒の配置位置を示す第1レイアウトを決定するステップと、
前記第1レイアウトで前記燃料棒を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炉心設計方法、原子炉運転方法、炉心設計装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の燃料棒の配置において、燃料集合体の構造に合わせて異なる濃縮度の燃料棒が配置される。例えば、特許文献1には、4種類または5種類の濃縮度からなる燃料棒が配置された燃料集合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-38490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、原子炉は、熱出力を向上することが求められているが、熱出力を向上させた場合には、出力が高くなることに起因して、燃料の健全性が悪化するおそれがある。そのため、燃料の健全性悪化を抑制しつつ、熱出力を向上させることが求められている。
【0005】
本開示は上記の課題に鑑みてなされたものであり、燃料の健全性悪化を抑制しつつ、熱出力を向上させることができる炉心設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる炉心設計方法は、原子炉の燃料棒の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒の配置位置を示す第1レイアウトを決定するステップと、前記第1レイアウトで前記燃料棒を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出するステップと、を有する。
【0007】
本開示にかかる原子炉運転方法は、前記炉心設計方法で決定された前記第1レイアウトまたは第2レイアウトで前記燃料棒を配置し、前記原子炉を運転する。
【0008】
本開示にかかる炉心設計装置は、原子炉の燃料棒の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒の配置位置を示す第1レイアウトを決定する第1レイアウト決定部と、前記第1レイアウトで前記燃料棒を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出する出力ピーキング係数算出部と、を有する。
【0009】
本開示にかかるプログラムは、原子炉の燃料棒の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒の配置位置を示す第1レイアウトを決定するステップと、前記第1レイアウトで前記燃料棒を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、燃料の健全性悪化を抑制しつつ、熱出力を向上させる炉心の設計方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態にかかる燃料集合体を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態にかかる燃料集合体の一例を、燃料棒の径方向で切ったときの断面図である。
図3図3は、実施形態にかかる炉心設計装置の構成例を示すブロック図である。
図4A図4Aは、第1レイアウトの燃料集合体の一例を模式的に示す図である。
図4B図4Bは、調整前レイアウトの出力ピーキング係数と、第1レイアウトの出力ピーキング係数との比較例を示すグラフである。
図5図5は、第2レイアウトの燃料集合体の一例を模式的に示す図である。
図6図6は、調整前レイアウトの出力ピーキング係数と、第1レイアウトの出力ピーキング係数と、第2レイアウトの出力ピーキング係数との比較例を示すグラフである。
図7図7は、実施形態にかかる炉心設計の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示にかかる実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
図1と、図2とを用いて、実施形態にかかる燃料集合体について説明する。図1は、実施形態にかかる燃料集合体を模式的に示す図である。図2は、実施形態にかかる燃料集合体の一例を、燃料棒の径方向で切ったときの断面図である。
【0014】
燃料集合体1は、図示しない加圧水型原子炉に装荷されており、原子炉内は減速材で満たされている。燃料集合体1は、17×17のセル10で構成されており、264本の燃料棒15と、25本のシンブルチューブ60と、燃料棒15とシンブルチューブ60とを束ねるグリッド18とを有する。燃料集合体1は、燃料棒15の軸方向上側に設けられた上部ノズル19と、軸方向下側に設けられた下部ノズル20とを有する。上部ノズル19および下部ノズル20は、それぞれ、燃料棒15、シンブルチューブ60の軸方向の上端部および下端部を固定している。
【0015】
シンブルチューブ60は、図2に示すように、制御棒が挿入される24本の制御棒案内管70と、炉内計装用検出器が挿入される1本の炉内計装用案内管80とを含む。燃料集合体1を加圧水型原子炉に装荷して、加圧水型原子炉の運転が開始されると、燃料集合体1は、制御棒案内管70に挿入される制御棒により核反応が制御されながら、発生した熱エネルギーにより減速材を加熱する。このとき、原子炉の内部は加圧されるため、減速材は、燃料集合体1の軸方向の全長にわたって液相状態となる。
【0016】
燃料棒15は、核燃料としてウラン235を所定の濃縮度にし、二酸化ウランとして焼き固め、ペレット状に形成したものである。核燃料としてウラン235を用いたが、これに限らず、例えば、プルトニウムなどの核分裂物質を用いてもよい。燃料棒15は、図2に示すように、燃料棒40と、ガドリニウム燃料棒50とを含む。燃料棒40は、ガドリニウムを含有しない従来の燃料棒である。ガドリニウム燃料棒50は、燃料棒40と同じ核燃料に加えて、ガドリニウムを含有する燃料棒である。実施形態では、ガドリニウム燃料棒50の軸方向に対してガドリニウムを分布するように含有させ、燃料集合体1に装荷している。
【0017】
燃料棒40の出力は、燃料集合体1に配置される位置によって変化する。燃料棒40の出力は、例えば、シンブルチューブ60付近と、外周部セル90のうちコーナー部セル91と、十字軸上外周部セル92とで大きくなる傾向がある。一方で、燃料棒40の出力は、例えば、外周部セル90のうちコーナー部セル91と十字軸上外周部セル92を除く位置と、ガドリニウム燃料棒50付近とで小さくなる傾向がある。外周部セル90とは、燃料集合体1のうち周囲すべてがセル10に囲まれていないセル10であり、燃料棒40が収納されるマトリクス状に並ぶ複数のセル10のうちで、径方向の最外側に配置されるセルである。コーナー部セル91とは、外周部セル90のうち燃料集合体1の中心から径方向に最も遠い位置にあるセル10である。十字軸上外周部セル92とは、外周部セル90のうち、コーナー部セル91同士の中点に位置するセル10である。
【0018】
(設計装置)
図3は、実施形態にかかる炉心設計装置の構成例を示すブロック図である。設計装置100は、濃縮度の異なる燃料棒40の配置位置を示す第1レイアウトの決定、第1レイアウトで燃料棒40を配置した状態での炉心解析、炉心解析で算出した出力ピーキング係数に基づき燃料棒40の配置位置を示す第2レイアウトの決定を行う装置である。設計装置100は、コンピュータで実現され得る。設計装置100は、例えば、原子力発電所に備えられる。設計装置100は、例えば、原子力発電所とは異なる施設に備えられてよい。
【0019】
図3に示すように、設計装置100は、入力部110と、出力部120、記憶部130と、通信部140と、制御部150とを備える。
【0020】
入力部110は、設計装置100に対する各種の入力を受け付ける。入力部110は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力デバイスで実現される。
【0021】
出力部120は、設計装置100によって設計されたレイアウトを含む各種の情報を出力する。出力部120は、ディスプレイおよびスピーカなどの出力デバイスで実現される。
【0022】
記憶部130は、各種の情報を記憶する。記憶部130は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0023】
通信部140は、外部の装置との間で情報の送受信を行う。通信部140は、例えば、通信モジュールなどによって実現される。
【0024】
制御部150は、設計装置100の各部の動作を制御する。制御部150は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、図示しない記憶部に記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。制御部150は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部150は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0025】
制御部150は、第1レイアウト決定部151と、出力ピーキング係数算出部152と、第2レイアウト決定部153と、を備える。
【0026】
(第1レイアウト決定)
図4Aは、第1レイアウトの燃料集合体の一例を模式的に示す図である。図4Aに示すように、第1レイアウト決定部151は、原子炉の燃料棒40の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒40の配置位置を示す第1レイアウトを決定する。すなわち、第1レイアウトとは、燃料棒40の出力の偏差が所定範囲に収まる、原子炉内における各燃料棒40の配置パターンであるといえる。燃料棒40の出力の偏差とは、原子炉内における各燃料棒40の出力分布の平坦さの度合いを指す。本実施形態では、燃料棒40の出力の偏差は、原子炉内における各燃料棒40の出力の平均値に対する、原子炉内において出力が最大となる燃料棒40の出力の比率であり、二次元の集合体計算により得られる集合体内相対出力分布の平均値と最大値との比率(すなわちいわゆるPeak/Average比)を用いてよい。また、所定範囲は、任意に設定してよい。
【0027】
また、本実施形態では、第1レイアウト決定部151は、燃料棒40の出力の偏差が所定範囲に収まり、かつ、燃料棒40の核燃料の濃縮度についての所定の規定を満たすように、第1レイアウトを決定する。核燃料の濃縮度についての規定は、適宜設定されてよいが、例えば、各燃料棒40の核燃料の濃縮度が所定の上限値以下であることと、各燃料棒40の核燃料の濃縮度の偏差が所定の偏差以上であることと、各燃料棒40の核燃料の濃縮度の平均値が所定範囲内であることと、各燃料棒40の核燃料の濃縮度の種類が所定数以内であることとの、少なくとも1つであってよく、これら全てを規定としてもよい。ここでの上限値は、例えば4.95wt%であり、所定の偏差は、例えば0.05wt%であってよい。
【0028】
本実施形態では、第1レイアウトの燃料集合体1Aは、高濃縮度の燃料棒41と、中濃縮度の燃料棒42と、低濃縮度の燃料棒43と、を備える。第1レイアウトにおいて組み合わせる燃料棒の濃縮度の種類は複数であればよく、2種類や4種類以上でもよい。
【0029】
第1レイアウト決定部151は、高濃縮度の燃料棒41と、中濃縮度の燃料棒42と、低濃縮度の燃料棒43と、の濃縮度と配置とを決定する。第1レイアウト決定部151は、例えば、高濃縮度の燃料棒41の濃縮度を4.95重量パーセントに決定する。第1レイアウト決定部151は、例えば、中濃縮度の燃料棒42の濃縮度を4.80重量パーセントに決定する。第1レイアウト決定部151は、例えば、低濃縮度の燃料棒43の濃縮度を4.47重量パーセントに決定する。第1レイアウト決定部151は、燃料棒40の濃縮度を4.95重量パーセント以下でかつ、濃縮度が異なる場合はその濃縮度の差を0.05重量パーセント以上に設定するのであれば、その他の値に決定してもよい。
【0030】
第1レイアウト決定部151は、燃料集合体1の外周部セル90にある第1位置の燃料棒の濃縮度に対して、第1位置よりも外周部セル90から遠い第2位置の燃料棒の濃縮度を低く設定する。より詳しくは、第1レイアウト決定部151は、燃料集合体1の径方向内側に向かうに従って燃料棒40の濃縮度が低くなるように、燃料棒40を配置してよい。また、第1レイアウト決定部151は、シンブルチューブ60と接する第3位置の燃料棒の濃縮度に対して、第3位置よりもシンブルチューブ60から遠い第4位置の燃料棒の濃縮度を低く設定する。より詳しくは、第1レイアウト決定部151は、シンブルチューブ60から遠ざかるに従って燃料棒40の濃縮度が低くなるように、燃料棒40を配置してよい。また、第1レイアウト決定部151は、ガドリニウム燃料棒50と接する第5位置の燃料棒の濃縮度に対して、第5位置よりもガドリニウム燃料棒50から遠い第6位置の燃料棒の濃縮度を高く設定する。より詳しくは、第1レイアウト決定部151は、ガドリニウム燃料棒50から遠ざかるに従って燃料棒40の濃縮度が高くなるように、燃料棒40を配置してよい。第1レイアウト決定部151は、燃料集合体1のコーナー部セル91または十字軸上外周部セル92にある第7位置の燃料棒の濃縮度よりも、第1位置よりもコーナー部セル91または十字軸上外周部セル92から遠い第8位置の燃料棒の濃縮度を高く設定する。より詳しくは、第1レイアウト決定部151は、コーナー部セル91または十字軸上外周部セル92から遠ざかるに従って燃料棒40の濃縮度が高くなるように、燃料棒40を配置してよい。第1レイアウト決定部151は、燃料集合体1の出力が大きくなる傾向のある高出力位置の燃料棒の濃縮度に対して、高出力位置よりも出力が小さくなる傾向のある低出力位置の燃料棒の濃縮度を高く設定するのであれば、その他の規則に従って濃縮度を決定してもよい。
【0031】
第1レイアウト決定部151は、例えば、シンブルチューブ60に隣接しかつ周囲にガドリニウム燃料棒50がない位置に、低濃縮度の燃料棒43を配置する。第1レイアウト決定部151は、例えば、燃料集合体1のコーナー部セル91及び十字軸上外周部セル92とその隣接位置に、低濃縮度の燃料棒43を配置する。第1レイアウト決定部151は、例えば、周囲に2本のシンブルチューブ60がある位置に、低濃縮度の燃料棒43を配置する。第1レイアウト決定部151は、例えば、ガドリニウム燃料棒50に隣接する位置に、高濃縮度の燃料棒41を配置する。第1レイアウト決定部151は、例えば、シンブルチューブ60に隣接しかつ周囲にガドリニウム燃料棒50がある位置に、中濃縮度の燃料棒42を配置する。第1レイアウト決定部151は、例えば、周囲にシンブルチューブ60がありかつガドリニウム燃料棒50に隣接しない位置に中濃縮度の燃料棒42を配置する。第1レイアウト決定部151は、例えば、燃料集合体1のコーナー部セル91及び十字軸上外周部セル92とその隣接位置を除く外周部セル90の位置に、高濃縮度の燃料棒41を配置する。第1レイアウト決定部151は、異なる順序または手順で燃料棒の配置を決定してもよい。
【0032】
以上、第1レイアウト決定部151による各燃料棒の配置(第1レイアウト)を説明したが、以上の説明は一例であり、以上の説明以外の配置としてもよい。
【0033】
(出力ピーキング係数算出)
出力ピーキング係数算出部152は、第1レイアウトで高濃縮度の燃料棒41と、中濃縮度の燃料棒42と、低濃縮度の燃料棒43と、を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出する。ここでの炉心解析は任意の方法で行ってよいが、例えば、燃料集合体1の出力の偏差を算出した際と同じ解析としてよい。出力ピーキング係数とは、炉心内における中性子束の平均値に対する最大値の比率であり、本実施形態では、三次元出力ピーキング係数(いわゆるFQ)および平面出力ピーキング係数(いわゆるFΔH)を指してよい。三次元出力ピーキング係数とは、原子炉における三次元での出力ピーキング係数である。平面出力ピーキング係数とは、原子炉における径方向の平面での出力ピーキング係数である。
【0034】
(出力ピーキング係数の例)
図4Bは、調整前レイアウトの出力ピーキング係数と、第1レイアウトの出力ピーキング係数との比較例を示すグラフである。調整前レイアウトとは、燃料棒40の濃縮度の調整を行う前のレイアウトであり、燃料集合体1の燃料棒40が同じ濃縮度である場合のレイアウトを指す。ここでは、調整前レイアウトを適用したときの出力ピーキング係数のサイクル中の変化と、第1レイアウトを適用したときの出力ピーキング係数のサイクル中の変化との比較例を示している。図4Bに示すように、第1レイアウトを設定することで、調整前レイアウトよりも、出力ピーキング係数を低減することが可能となる。すなわち例えば、図4Bに示すように、第1レイアウトではサイクルの初期における出力ピーキング係数を、調整前レイアウトと比べて抑制することができたことが認められた。このように、燃料棒の濃縮度の組み合わせのみを調整することで、出力ピーキング係数を低減させることができる。
【0035】
(第2レイアウト決定)
図5は、第2レイアウトの燃料集合体の一例を模式的に示す図である。図5に示すように、第2レイアウト決定部153は、出力ピーキング係数算出部152が算出した出力ピーキング係数に基づき、燃料棒の配置位置を示す第2レイアウトを決定する。本実施形態では、第2レイアウト決定部153は、燃料棒40の出力の偏差が所定範囲に収まり、かつ、所定のサイクル燃焼度における出力ピーキング係数が所定値以下となるように、第2レイアウトを決定する。すなわち、第2レイアウトは、燃料棒40の出力の偏差が所定範囲に収まり、かつ、出力ピーキング係数が所定値以下となるような燃料棒40の配置を指す。ここでの所定のサイクル燃焼度は、例えばサイクル初期など、全サイクルのうちの一部の範囲を指してもよいし、サイクル全体を指してもよい。また、ここでの所定値も、任意に設定してよい。
【0036】
第2レイアウト決定部153は、第1レイアウトにおいて出力が高くなった位置の燃料棒をより低い濃縮度の燃料棒に変更する。このとき、第2レイアウト決定部153は、第1レイアウトと同様に、燃料棒40の核燃料の濃縮度についての所定の規定を満たすように、第2レイアウトを決定することが好ましい。また、第2レイアウト決定部153は、燃料棒40の出力の偏差を所定範囲に収めつつ、第1レイアウトにおいて出力が高くなった位置の燃料棒を、より高い濃縮度の燃料棒に変更してもよい。具体的には、第2レイアウト決定部153は、例えば、ガドリニウム燃料棒50とシンブルチューブ60の両方に隣接する高濃縮度の燃料棒41を、やや低い濃縮度の燃料棒43aに変更する。第2レイアウト決定部153は、例えば、第1レイアウトで配置した低濃縮度の燃料棒43を、やや低い濃縮度の燃料棒43aと極低濃縮度の燃料棒43bに変更する。
【0037】
なお、第2レイアウトの設定は必須ではない。すなわち、第1レイアウトを設定し、第1レイアウトでの炉心解析を実行するが、第2レイアウトの設定を行わなくてもよい。また例えば、第1レイアウトでの炉心解析結果に基づき、第2レイアウトを設定するか判断してよい。すなわち例えば、第1レイアウトにおける出力ピーキング係数が所定値より高い場合に第2レイアウトを設定し、第1レイアウトにおける出力ピーキング係数が所定値以下である場合には、第2レイアウトを設定しなくてもよい。
【0038】
(出力ピーキング係数の例)
図6は、調整前レイアウトの出力ピーキング係数と、第1レイアウトの出力ピーキング係数と、第2レイアウトの出力ピーキング係数との比較例を示すグラフである。図6の横軸はサイクル燃焼度を示し、縦軸は出力ピーキング係数を示す。ここでは、調整前レイアウトを適用したときの出力ピーキング係数のサイクル中の変化と、第1レイアウトを適用したときの出力ピーキング係数のサイクル中の変化と、第2レイアウトを適用したときの出力ピーキング係数のサイクル中の変化との比較例を示している。図6に示すように、出力ピーキング係数が所定値以下となるように第2レイアウトを設定することで、出力偏差に基づいて設定された第1レイアウトよりも、出力ピーキング係数を低減することが可能となる。すなわち例えば、図6に示すように、第2レイアウトではサイクルの初期における出力ピーキング係数を調整前レイアウトと比べて悪化させることなく、第1レイアウトで見られたサイクルの中期から末期での出力ピーキング係数の増大を抑制することができたことが認められた。このように、燃料棒の濃縮度の組み合わせのみを調整することで、出力ピーキング係数を低減させる燃焼時点を柔軟に変更することができる。
【0039】
(効果)
ここで、原子炉は、熱出力を向上させることが求められているが、熱出力を向上させた場合には、出力が高くなることに起因して、燃料の健全性が悪化するおそれがある。そのため、燃料の健全性悪化を抑制しつつ、熱出力を向上させることが求められている。それに対し、本実施形態においては、燃料棒の出力の偏差が所定範囲に収まるように第1レイアウトまたは第2レイアウトを決定し、燃料棒を配置することで、出力ピーキングを抑えつつ燃料棒の出力分布を平坦にすることができる。そのため、本実施形態によると、局所的に出力が高くなることを抑制することで燃料の健全性の悪化を抑制しつつ、熱出力を向上させることができる。なお、本実施形態においては、以上のようにして決定された第1レイアウトまたは第2レイアウトで、実際に燃料棒40を配置し、原子炉を運転してよい。
【0040】
(フローチャート)
図7を用いて実施形態にかかる燃料棒の配置方法について説明する。図7は、実施形態にかかる炉心設計の流れを示すフローチャートである。まず、第1レイアウト決定部151は、燃料棒の出力の偏差が所定範囲に収まるように濃縮度の異なる燃料棒の配置位置を示す第1レイアウトを決定する(ステップS10)。次いで、出力ピーキング係数算出部152は第1レイアウトで燃料棒を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出する(ステップS20)。また、必要に応じて第2レイアウト決定部153は出力ピーキング係数に基づき、燃料棒の配置位置を示す第2レイアウトを決定する(ステップS30)。
【0041】
(本開示の効果)
各実施形態に記載の炉心設計方法、原子炉運転方法、炉心設計装置、およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0042】
第1の態様の炉心設計方法は、原子炉の燃料棒40の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒の配置位置を示す第1レイアウトを決定するステップと、第1レイアウトで燃料棒40を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出するステップと、を有する。
【0043】
この構成によれば、燃料集合体1において、燃料集合体1の炉心構造に合わせて濃縮度の異なる燃料棒40を配置し、出力ピーキング係数を見積もることで、出力の偏りを抑えることができる燃料棒40の配置を決定することができる。これにより燃料の健全性悪化を抑制しつつ、熱出力を向上させる炉心の設計方法を提供することができる。
【0044】
第2の態様の設計方法は、第1レイアウトを決定するステップにおいては、燃料棒40の濃縮度の制約条件に基づき、第1レイアウトを決定する。これにより燃料棒40の製造性を維持しながら燃料の健全性悪化を抑制しつつ、熱出力を向上させる炉心の設計方法を提供することができる。
【0045】
第3の態様の設計方法は、第1レイアウトは、複数の濃縮度の燃料棒40の配置位置を示す。これにより局所的な出力の増大や減少に対して異なる濃縮度の燃料棒40を用いることで出力を平坦にすることができるので、より燃料の健全性悪化を抑制する炉心の設計方法を提供することができる。
【0046】
第4の態様の設計方法は、第1レイアウトを決定するステップにおいては、燃料集合体の外周部セルの燃料棒の濃縮度に対して、外周部セル90の燃料棒40よりも外周部セル90から遠い位置の燃料棒40の濃縮度を低くする。これにより出力が低くなりやすい外周部セル90の燃料棒40の出力を調整することができ、より燃料の健全性悪化を抑制する炉心の設計方法を提供することができる。
【0047】
第5の態様の設計方法は、原子炉には、燃料棒40と、互いに離れて配置されたシンブルチューブ60とが搭載される。これにより、互いに離れて配置されたシンブルチューブ60が搭載される原子炉について、燃料の健全性悪化を抑制しつつ、熱出力を向上させる、炉心の設計方法を提供することができる。
【0048】
第6の態様の設計方法は、第1レイアウトを決定するステップにおいては、シンブルチューブ60と接する位置の燃料棒40の濃縮度に対して、シンブルチューブ60と接する位置はシンブルチューブから遠い位置の燃料棒40の濃縮度より低くする。これにより出力が高くなりやすいシンブルチューブ60の周囲の燃料棒40の出力を調整することができるので、より燃料の健全性悪化を抑制する炉心の設計方法を提供することができる。
【0049】
第7の態様の設計方法は、燃料集合体1はガドリニウム酸化物及びウラン酸化物からなるガドリニウム燃料棒50を備える。これによりガドリニウム燃料棒50を備える燃料集合体を有する原子炉について、燃料の健全性悪化を抑制しつつ、燃料の健全性悪化を抑制する炉心の設計方法を提供することができる。
【0050】
第8の態様の設計方法は、第1レイアウトを決定するステップにおいては、ガドリニウム燃料棒と接する位置の燃料棒40の濃縮度に対して、ガドリニウム燃料棒50と接する位置はガドリニウム燃料棒50から遠い位置の燃料棒40の濃縮度より高くする。これにより出力が低くなりやすいガドリニウム燃料棒50の周囲の燃料棒40の出力を調整することができるので、より燃料の健全性悪化を抑制する炉心の設計方法を提供することができる。
【0051】
第9の態様の炉心設計方法は、出力ピーキング係数に基づき、燃料棒40の配置位置を示す第2レイアウトを決定するステップと、をさらに有する。これにより濃縮度が同じである場合を示す調整前レイアウトに比べ、出力ピーキング係数を悪化させることなく、第1レイアウトを改良することができるので、より燃料の健全性悪化を抑制する炉心の設計方法を提供することができる。
【0052】
第10の態様の設計方法は、第2レイアウトを設定するステップにおいては、所定のサイクル燃焼度の領域における出力ピーキング係数が所定値以下となるように、第2レイアウトを設定する。これにより第1レイアウトにおいてあるサイクル燃焼度の時点で出力ピーキング係数が悪化した場合、第2レイアウトを設定するステップで調整することができるので、より燃料の健全性悪化を抑制する炉心の設計方法を提供することができる。
【0053】
第11の態様の設計方法は、第2レイアウトは、複数の濃縮度の燃料棒40の配置位置を示す。これにより第1レイアウトで局所的な出力の増大や減少が見られた場合、異なる濃縮度の燃料棒40を用いて出力を平坦にするよう調整することができるので、より燃料の健全性悪化を抑制する炉心の設計方法を提供することができる。
【0054】
第12の態様の原子炉運転方法は、第9の態様から第11の態様までのいずれかの炉心設計方法で決定された第1レイアウトまたは第2レイアウトで燃料棒40を配置し、原子炉を運転する。これにより燃料の健全性悪化を抑制しつつ、原子炉の熱出力を向上させる運転方法を提供することができる。
【0055】
第13の態様の炉心設計装置は、原子炉の燃料棒40の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒40の配置位置を示す第1レイアウトを決定する第1レイアウト決定部151と、第1レイアウトで燃料棒40を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出する出力ピーキング係数算出部152と、を有する。
【0056】
第14の態様のプログラムは、原子炉の燃料棒40の出力の偏差が所定範囲に収まるように、濃縮度の異なる燃料棒40の配置位置を示す第1レイアウトを決定するステップと、第1レイアウトで燃料棒40を配置した状態で炉心解析を実行して、出力ピーキング係数を算出するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0057】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B 燃料集合体
10 セル
15 燃料棒
18 グリッド
19 上部ノズル
20 下部ノズル
40,41,42,43,43a,43b 燃料棒
50 ガドリニウム燃料棒
60 シンブルチューブ
70 制御棒案内管
80 炉内計装用案内管
90 外周部セル
91 コーナー部セル
92 十字軸上外周部セル
100 設計装置
110 入力部
120 出力部
130 記憶部
140 通信部
150 制御部
151 第1レイアウト決定部
152 出力ピーキング係数算出部
153 第2レイアウト決定部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7