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特開2022-188651乗員検知装置、方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188651
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】乗員検知装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/89 20060101AFI20221214BHJP
   B60R 21/015 20060101ALI20221214BHJP
   B60N 5/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G01S13/89
B60R21/015 312
B60N5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096864
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 準
(72)【発明者】
【氏名】植松 徹
(72)【発明者】
【氏名】不破 遼平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 朝美
(72)【発明者】
【氏名】中込 貴之
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 仁郁
【テーマコード(参考)】
3B088
5J070
【Fターム(参考)】
3B088QA06
5J070AB17
5J070AC01
5J070AC06
5J070AD06
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH31
5J070AK14
5J070BE03
(57)【要約】
【課題】車両の車室内での座席上の乗員の体に関する情報を検知することができる新規な乗員検知装置を得る。
【解決手段】実施形態の乗員検知装置は、電波センサと、作成部と、算出部と、を備える。電波センサは、車両の車室内に配置された座席の座面よりも車両の上下方向の上方に位置する。電波センサは、車室内に送信波を送信する送信部、および、送信波が座席上の乗員によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部を有する。作成部は、反射波に基づいて当該反射波の反射点の位置を三次元座標で表した車室内の三次元マップ情報を作成する。算出部は、三次元マップ情報に基づいて、座席上の乗員の背骨に関する情報である背骨情報を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に配置された座席の座面よりも前記車両の上下方向の上方に位置し、前記車室内に送信波を送信する送信部、および、前記送信波が前記座席上の乗員によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部を有する電波センサと、
前記反射波に基づいて当該反射波の反射点の位置を三次元座標で表した前記車室内の三次元マップ情報を作成する作成部と、
前記三次元マップ情報に基づいて、前記座席上の前記乗員の背骨に関する情報である背骨情報を算出する算出部と、
を備える、乗員検知装置。
【請求項2】
前記背骨情報は、前記背骨の長さと前記背骨の延び方向との少なくとも一方を含む、請求項1に記載の乗員検知装置。
【請求項3】
前記三次元マップ情報は、前記反射点に対応する前記反射波の強度を示す強度情報を含み、
前記算出部は、複数の前記反射点の群である点群における前記強度の重心位置と、前記点群のうち前記上下方向で最も上方に位置する上側点の位置と、に基づいて、前記背骨情報を算出する、請求項2に記載の乗員検知装置。
【請求項4】
前記三次元マップ情報は、前記座席の座面の位置を含み、
前記算出部は、前記座面の中心位置と、複数の前記反射点の群である点群のうち前記上下方向で最も上方に位置する上側点の位置と、に基づいて、前記背骨情報を算出する、請求項2に記載の乗員検知装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記上下方向と直交する複数の断面における位置であって、複数の前記反射点の群である点群において前記上下方向の位置が互いに異なる前記背骨の位置、を算出し、複数の前記断面の前記背骨の位置に基づいて、前記背骨情報を算出する、請求項2に記載の乗員検知装置。
【請求項6】
乗員検知装置で実行される方法であって、
前記乗員検知装置は、車両の車室内に配置された座席の座面よりも前記車両の上下方向の上方に位置し、前記車室内に送信波を送信する送信部、および、前記送信波が前記座席上の乗員によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部を有する電波センサを備え、
前記反射波に基づいて当該反射波の反射点の位置を三次元座標で表した前記車室内の三次元マップ情報を作成するステップと、
前記三次元マップ情報に基づいて、前記座席上の前記乗員の背骨に関する情報である背骨情報を算出するステップと、
を含む方法。
【請求項7】
車両の車室内に配置された座席の座面よりも前記車両の上下方向の上方に位置し、前記車室内に送信波を送信する送信部、および、前記送信波が前記座席上の乗員によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部を有する電波センサを備える乗員検知装置のコンピュータを、
前記反射波に基づいて当該反射波の反射点の位置を三次元座標で表した前記車室内の三次元マップ情報を作成する作成部と、
前記三次元マップ情報に基づいて、前記座席上の前記乗員の背骨に関する情報である背骨情報を算出する算出部と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員検知装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波を人物に照射し、人物で反射した電波の反射波に基づいて人物の姿勢や体格等を検知する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-81771号公報
【特許文献2】特開2021-32879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の技術を用いて、車両の車室内での座席上の乗員の体に関する情報を検知することができる新規な乗員検知装置、方法、およびプログラムが得られれば有益である。
【0005】
そこで、本発明の課題は、車両の車室内での座席上の乗員の体に関する情報を検知することができる新規な乗員検知装置、方法、およびプログラムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の乗員検知装置は、車両の車室内に配置された座席の座面よりも前記車両の上下方向の上方に位置し、前記車室内に送信波を送信する送信部、および、前記送信波が前記座席上の乗員によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部を有する電波センサと、前記反射波に基づいて当該反射波の反射点の位置を三次元座標で表した前記車室内の三次元マップ情報を作成する作成部と、前記三次元マップ情報に基づいて、前記座席上の前記乗員の背骨に関する情報である背骨情報を算出する算出部と、を備える。
【0007】
このような構成によれば、算出部によって座席上の乗員の体に関する情報として背骨に関する情報を算出すなわち検知するので、背骨に関する情報に基づいて乗員の姿勢や体格を把握することができる。よって、乗員の姿勢や体格に応じた乗員保護に関する制御を行うことができる。
【0008】
前記乗員検知装置では、例えば、前記背骨情報は、前記背骨の長さと前記背骨の延び方向との少なくとも一方を含む。
【0009】
このような構成によれば、背骨の長さは、乗員の座高に応じたものであり、乗員の座高は、乗員の体格に応じたものであるので、座席上の乗員の背骨の長さを算出する場合には、背骨の長さから乗員の体格を把握することができる。よって、例えば、乗員保護に関する制御として、車両の衝突時のエアバッグの展開制御や車両の衝突時のシートベルトの締め付け制御を行うことができる。また、背骨の延び方向は、乗員の姿勢(前かがみ姿勢や、左右どちらかに傾いて座っている姿勢等)に応じた方向となるので、背骨の延び方向を算出する場合には、背骨の延び方向から乗員の姿勢を把握することができる。よって、例えば、乗員保護に関する制御として、例えば車両の緊急停止時の衝撃緩和のため等に、座席の形状(座面の傾斜角度等)の制御を行うことができる。
【0010】
前記乗員検知装置では、例えば、前記三次元マップ情報は、前記反射点に対応する前記反射波の強度を示す強度情報を含み、前記算出部は、複数の前記反射点の群である点群における前記強度の重心位置と、前記点群のうち前記上下方向で最も上方に位置する上側点の位置と、に基づいて、前記背骨情報を算出する。
【0011】
このような構成によれば、点群における強度の重心位置を用いて背骨情報を算出するので、背骨情報の精度を比較的高くすることができる。
【0012】
前記乗員検知装置では、例えば、前記三次元マップ情報は、前記座席の座面の位置を含み、前記算出部は、前記座面の中心位置と、複数の前記反射点の群である点群のうち前記上下方向で最も上方に位置する上側点の位置と、に基づいて、前記背骨情報を算出する。
【0013】
このような構成によれば、座面の中心位置と、点群のうち上下方向で最も上方に位置する上側点の位置と、に基づいて、背骨情報を算出するので、背骨情報の算出における計算量を比較的少なくすることができる。
【0014】
前記乗員検知装置では、例えば、前記算出部は、前記上下方向と直交する複数の断面における位置であって、複数の前記反射点の群である点群において前記上下方向の位置が互いに異なる前記背骨の位置、を算出し、複数の前記断面の前記背骨の位置に基づいて、前記背骨情報を算出する。
【0015】
このような構成によれば、例えば、算出部が、点群の複数の断面の背骨の位置に基づいて、背骨情報を算出するので、背骨情報(例えば、背骨の延び方向)の精度を比較的高くすることができる。
【0016】
実施形態の方法は、乗員検知装置で実行される方法であって、前記乗員検知装置は、車両の車室内に配置された座席の座面よりも前記車両の上下方向の上方に位置し、前記車室内に送信波を送信する送信部、および、前記送信波が前記座席上の乗員によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部を有する電波センサを備え、前記反射波に基づいて当該反射波の反射点の位置を三次元座標で表した前記車室内の三次元マップ情報を作成するステップと、前記三次元マップ情報に基づいて、前記座席上の前記乗員の背骨に関する情報である背骨情報を算出するステップと、を含む。
【0017】
このような構成によれば、算出部によって座席上の乗員の体に関する情報として背骨に関する情報を算出すなわち検知するので、背骨に関する情報に基づいて乗員の姿勢や体格を把握することができる。よって、乗員の姿勢や体格に応じた乗員保護に関する制御を行うことができる。
【0018】
実施形態のプログラムは、車両の車室内に配置された座席の座面よりも前記車両の上下方向の上方に位置し、前記車室内に送信波を送信する送信部、および、前記送信波が前記座席上の乗員によって反射することによって発生する反射波を受信する受信部を有する電波センサを備える乗員検知装置のコンピュータを、前記反射波に基づいて当該反射波の反射点の位置を三次元座標で表した前記車室内の三次元マップ情報を作成する作成部と、前記三次元マップ情報に基づいて、前記座席上の前記乗員の背骨に関する情報である背骨情報を算出する算出部と、として機能させる。
【0019】
このような構成によれば、算出部によって座席上の乗員の体に関する情報として背骨に関する情報を算出すなわち検知するので、背骨に関する情報に基づいて乗員の姿勢や体格を把握することができる。よって、乗員の姿勢や体格に応じた乗員保護に関する制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1の実施形態における車両の模式図である。
図2図2は、第1の実施形態の電波センサと制御装置の機能構成とを示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態の三次元マップ情報の模式図である。
図4図4は、第1の実施形態の三次元マップ情報の一部の模式図である。
図5図5は、第1の実施形態の背骨情報の算出方法を説明するための説明図である。
図6図6は、第1の実施形態の制御装置による処理を示すフローチャートである。
図7図7は、第2の実施形態の背骨情報の算出方法を説明するための説明図である。
図8図8は、第3の実施形態の背骨情報の算出方法を説明するための説明図である。
図9図9は、第3の実施形態の背骨情報の算出方法における背骨位置の算出方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0022】
以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。
【0023】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における車両Cの模式図である。車両Cの車室R内に、乗員検知装置1を構成する電波センサ2と制御装置3が配置されている。電波センサ2は車室R内の天井部分に設置されている。制御装置3は、例えば、車室R内の前端部に設けられているダッシュボード内に設置されている。
【0024】
また、車両Cの車室Rには、乗員Mが着座可能な座席Sが複数設置されている。図1の場合、座席Sが2列(前列、後列)で配置される構成が示されている。なお、座席Sは、上記に限定されない。例えば、座席Sは、1列であってもよいし、3列以上であってもよい。
【0025】
図2は、実施形態の電波センサ2と制御装置3の機能構成とを示すブロック図である。電波センサ2は、送信部21と、受信部22と、を備える。
【0026】
送信部21は、車両Cの車室R内に、送信波を広範囲に送信(照射)する。送信波は、例えば、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)変調した電波(マイクロ波)である。受信部22は、送信波が車室R内の物体によって反射することによって発生する反射波を受信する。受信部22は、複数の受信アンテナを備えている。ここで、送信された電波は、車室R内に存在し得る乗員Mに当たった場合は反射し、その周波数は、乗員Mに動きがある場合、ドップラ効果により、乗員Mの移動速度(例えば、呼吸や心拍等の体表の移動速度等)に比例してシフトする。よって、受信部22において受信された反射波が周波数シフトしている場合、車室R内に乗員Mが存在する可能性を示すドップラ信号を受信したことになる。よって、この物体検出部324の検出結果333に基づいて、乗員Mを検知することができる。
【0027】
なお、電波センサ2において、送信部21と受信部22は一体化されてもよいし、個別に構成されてもよい。また、図1の場合、一つの電波センサ2で車室R内に存在し得る全ての乗員Mを検知できるように設置されているが、他の実施形態では、車室Rを複数の領域に分割して、それぞれの領域に電波センサ2を設けるようにしてもよい。例えば、座席Sの列ごとに電波センサ2を設けてもよい。
【0028】
制御装置3は、例えば、ハードウェアプロセッサ、メモリ等が搭載された集積回路を有するMCU(Micro Controller Unit)等により構成される。制御装置3は、ADC(Analog-to-Digital Converter)31と、処理部32と、記憶部33と、を備える。
【0029】
ADC31は、電波センサ2の受信部22から取得したアナログ信号をデジタル信号に変換して処理部32に出力する。
【0030】
記憶部33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置である。記憶部33は、処理部32が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なデータ、プログラムの実行によって生成されたデータ等を記憶する。記憶部33は、例えば、設定情報331と、三次元マップ情報332と、検出結果333と、生体情報334と、を記憶する。
【0031】
設定情報331は、乗員Mの生体信号か否かを判定するための周波数範囲や、各種閾値(反射源を特定するための反射源閾値、乗員Mを検知するための乗員閾値等)等の各種設定情報を記憶する。
【0032】
三次元マップ情報332は、作成部322によって反射波情報に基づいて作成される、車室R内の三次元の物体配置状態を示す情報である。
【0033】
検出結果333は、物体検出部324による検出結果の情報である。
【0034】
生体情報334は、算出部326によって算出される、乗員Mの生体情報である。
【0035】
ここで、FMCW方式による信号処理は、下記の通りである。まず、電波センサ2の送信部21から、車両Cの車室R内に、FMCW変調した送信波が送信される。そして、電波センサ2の受信部22が反射波を受信する。
【0036】
次に、作成部322によって、反射波に基づいて車室R内の三次元マップ情報が作成される。この三次元マップ情報は、乗員Mのほかに、反射率の高い金属などの物体(反射源)の情報が含まれている。つまり。この三次元マップ情報だけでは、認識された物体が金属なのか人物なのか等の区別がつかない。
【0037】
次に、物体検出部324による反射波のドップラシフトに基づく物体検出と、乗員検知部325による人物検知によって、乗員Mが検知される。また、算出部326によってその乗員Mの生体情報が算出される。生体情報は、乗員Mの体に関する情報、具体的には乗員Mの背骨に関する情報を含む。以下、処理部32の処理の詳細について説明する。
【0038】
処理部32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサによって構成される。処理部32は、記憶部33に格納されたプログラムを読み込んで演算処理を実行する。処理部32は、機能部として、取得部321と、作成部322と、特定部323と、物体検出部324と、乗員検知部325と、算出部326と、制御部327と、を備える。なお、各部321~327の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)を含む回路等のハードウェアによって構成してもよい。
【0039】
取得部321は、ADC31から反射波情報を取得する。
【0040】
作成部322は、反射波情報すなわち反射波に基づいて車室R内の三次元マップ情報を作成し、記憶部33に三次元マップ情報332として保存する。
【0041】
図3は、第1の実施形態の三次元マップ情報332の模式図である。図4は、第1の実施形態の三次元マップ情報332の一部の模式図である。図3,4に示すように、三次元マップ情報332は、乗員Mで反射した反射波の反射点Pの位置を三次元座標で表した情報を含む。三次元座標は、X軸、Y軸、およびZ軸を有する。X軸、Y軸、およびZ軸は、互いに直交する。X軸、Y軸、Z軸で示されるそれぞれの方向を、X方向、Y方向、Z方向と称する。X軸(X方向)は、車両Cの幅方向に沿う。Y軸は、車両Cの前後方向に沿い、Y方向は、車両Cの前後方向の前方と一致する。Z軸は、車両Cの上下方向に沿い、Z方向は、車両Cの上下方向の上方と一致する。また、三次元マップ情報332は、反射点Pに対応する反射波の強度を示す強度情報を含む。また、三次元マップ情報332は、座席Sの座面Saの位置を含む。なお、図3図4には、ある座席Sに着座した乗員Mの骨格が模式的示されている。この乗員Mの骨格は、ある座席Sと乗員Mとの関係を示すために示されたものであり、三次元マップ情報332には含まれない。
【0042】
特定部323は、三次元マップ情報332における反射源の位置を特定する。
【0043】
物体検出部324は、反射波のドップラシフトに基づいて車室R内の物体の動きを検出して、検出結果を記憶部33に検出結果333として保存する。
【0044】
乗員検知部325は、設定情報331、三次元マップ情報332、検出結果333に基づいて一人以上の乗員Mを検知する。乗員検知部325は、座席Sごとに乗員Mを検知する。
【0045】
算出部326は、三次元マップ情報332に基づいて、座席S上の乗員Mの背骨Ma(図4参照)に関する情報である背骨情報334aを算出する。背骨情報334aは、背骨Maの長さと背骨Maの延び方向との少なくとも一方(一例として両方)を含む。
【0046】
図5は、第1の実施形態の背骨情報334aの算出方法を説明するための説明図である。図5に示すように、算出部326は、複数の反射点Pの群である点群Gにおける反射波の記強度の重心位置Pcと、点群Gのうち車両Cの上下方向で最も上方に位置する上側点P1の位置と、に基づいて、背骨情報334aを算出する。詳細には、算出部326は、重心位置Pcと、上側点P1の位置と、を結ぶ線L1を算出する。算出部326は、線L1の長さを背骨Maの長さとみなし、線L1において重心位置Pcから上側点P1に向かう方向を背骨Maの延び方向とみなす。ここで、点群Gは、例えば、車両Cの上下方向での座席Sの座面Saの位置および座面Saよりも上方の位置の複数の反射点Pによって構成される。なお、図5では、重心位置Pcおよび上側点P1の反射点Pは、理解を容易にするために、他の反射点Pよりも大きく示されている。
【0047】
制御部327は、各部321~327が実行する演算以外の演算を実行する。
【0048】
図6は、実施形態の制御装置3による処理を示すフローチャートである。まずは、取得部321が、ADC31から反射波情報を取得する(S1)。次に、作成部322が、反射波情報に基づいて三次元マップ情報332を作成する(S2)。次に、算出部326が、三次元マップ情報332に基づいて背骨情報334aである背骨Maの長さと背骨Maの延び方向とを算出する(S3)。
【0049】
以上のように、第1の実施形態では、乗員検知装置1は、電波センサ2と、作成部322と、算出部326と、を備える。電波センサ2は、車両Cの車室R内に配置された座席Sの座面Saよりも車両Cの上下方向の上方に位置する。電波センサ2は、車室R内に送信波を送信する送信部21、および、送信波が座席S上の乗員Mによって反射することによって発生する反射波を受信する受信部22を有する。作成部322は、反射波に基づいて当該反射波の反射点Pの位置を三次元座標で表した車室R内の三次元マップ情報332を作成する。算出部326は、三次元マップ情報332に基づいて、座席S上の乗員Mの背骨Maに関する情報である背骨情報334aを算出する。
【0050】
このような構成によれば、算出部326によって座席S上の乗員Mの体に関する情報として背骨Maに関する情報を算出すなわち検知するので、背骨Maに関する情報に基づいて乗員Mの姿勢や体格を把握することができる。よって、乗員Mの姿勢や体格に応じた乗員保護に関する制御を行うことができる。
【0051】
また、乗員検知装置1では、例えば、背骨情報334aは、背骨Maの長さと背骨Maの延び方向との少なくとも一方を含む。
【0052】
このような構成によれば、背骨Maの長さは、乗員Mの座高に応じたものであり、乗員Mの座高は、乗員Mの体格に応じたものであるので、座席S上の乗員Mの背骨Maの長さを算出する場合には、背骨Maの長さから乗員Mの体格を把握することができる。よって、例えば、乗員保護に関する制御として、車両Cの衝突時のエアバッグの展開制御や車両Cの衝突時のシートベルトの締め付け制御を行うことができる。上記から分かるように、座標は体格の把握(認識)の指標である。また、背骨Maの延び方向は、乗員Mの姿勢(前かがみ姿勢や、左右どちらかに傾いて座っている姿勢等)に応じた方向となるので、背骨Maの延び方向を算出する場合には、背骨Maの延び方向から乗員Mの姿勢を把握することができる。よって、例えば、乗員保護に関する制御として、例えば車両Cの緊急停止時の衝撃緩和のため等に、座席Sの形状(座面Saの傾斜角度等)の制御を行うことができる。
【0053】
また、三次元マップ情報332は、反射点Pに対応する反射波の強度を示す強度情報を含む。算出部326は、複数の反射点Pの群である点群Gにおける強度の重心位置Pcと、点群Gのうち前記上下方向で最も上方に位置する上側点P1の位置と、に基づいて、背骨情報334aを算出する。
【0054】
このような構成によれば、点群Gにおける強度の重心位置Pcを用いて背骨情報334aを算出するので、背骨情報334aの精度を比較的高くすることができる。
【0055】
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態の背骨情報334aの算出方法を説明するための説明図である。
【0056】
第2の実施形態は、背骨情報334aの算出方法が第1の実施形態と異なる。
【0057】
図7に示すように、算出部326は、座面Saの中心位置Scと、点群Gのうち車両C上下方向で最も上方に位置する上側点P1の位置と、に基づいて、背骨情報334aを算出する。詳細には、算出部326は、中心位置Scと、上側点P1の位置と、を結ぶ線L21を算出する。算出部326は、線L2の長さを背骨Maの長さとみなし、線L2において中心位置Scから上側点P1に向かう方向を背骨Maの延び方向とみなす。なお、図7では、中心位置Scを示す点および上側点P1の反射点Pは、理解を容易にするために、他の反射点Pよりも大きく示されている。
【0058】
このような構成によれば、算出部326が、座面Saの中心位置Scと、点群Gのうち上下方向で最も上方に位置する上側点P1の位置と、に基づいて、背骨情報334aを算出するので、背骨情報334aの算出における計算量を比較的少なくすることができる。
【0059】
<第3の実施形態>
図8は、第3の実施形態の背骨情報334aの算出方法を説明するための説明図である。図9は、第3の実施形態の背骨情報334aの算出方法における背骨位置の算出方法を説明するための説明図である。
【0060】
第3の実施形態は、背骨情報334aの算出方法が第1の実施形態と異なる。
【0061】
図8に示すように、算出部326は、点群G(図8中の(a))から複数の断面Fを抽出すなわち作成する(図8中の(b))。複数の断面Fは、車両Cの上下方向すなわちZ軸と直交する断面であり、車両Cの上下方向の位置すなわちZ軸の位置(Z位置とも称する)が互いに異なる。
【0062】
次に、算出部326は、複数の断面Fにおける背骨Maの位置P2を算出する(図8中の(c))。詳細には、図9に示すように、算出部326は、断面F上で規定の距離だけ離間した、ある二つの反射点P(一例として、反射点P11,P12)を選択する。反射点P11,P12は、例えば、X方向やY方向に並ばない点であってよい。算出部326は、二つの反射点P11,P12を結ぶ線L11を算出し、当該線L11に対する垂直二等分線L12を算出する。垂直二等分線L12は、断面F上の線であり、車両Cの上下方向(Z方向)と直交する。同様に、算出部326は、断面F上で規定の距離だけ離間した、反射点P11,12とは別の二つの反射点P(一例として、反射点P21,P22)を選択する。反射点P21,P22は、例えば、X方向やY方向に並ばない点であってよい。算出部326は、二つの反射点P21,P22を結ぶ線L21を算出し、当該線L21に対する垂直二等分線L22を算出する。垂直二等分線L22は、断面F上の線であり、車両Cの上下方向(Z方向)と直交する。算出部326は、二つの垂直二等分線L12,L22の交点Pmを算出する。算出部326は、算出部326は、一つの交点Pmを背骨Maの位置P2とみなしてもよいし、断面F上の四つの反射点Pの複数の組を選択して、それらの複数の組の交点Pmの平均値を背骨Maの位置P2とみなしてもよい。背骨Maの位置は、断面中心とも称される。なお、図9では、反射点P11,P12,P21,P22は、理解を容易にするために、他の反射点Pよりも大きく示されている。
【0063】
図8に戻って、次に、算出部326は、複数の断面Fの背骨Maの位置P2に基づいて、背骨情報334aを算出する。詳細には、複数の断面Fの背骨Maの位置P2を結ぶ線L3を算出する(図8中の(d))。算出部326は、線L3の長さを背骨Maの長さとみなし、線L3において最も下側の背骨Maの位置P2から最も上側の背骨Maの位置P2に向かう方向を背骨Maの延び方向とみなす。なお、図8の例では、背骨情報334aの算出に三つの断面Fが用いられたが、断面Fの数はこれに限定されない。
【0064】
以上のように、第3の実施形態では、算出部326は、車両Cの上下方向と直交する複数の断面Fにおける位置であって、複数の反射点Pの群である点群Gにおいて車両Cの上下方向の位置が互いに異なる背骨Maの位置、を算出する。算出部326は、複数の断面Fの背骨Maの位置P2に基づいて、背骨情報334aを算出する。
【0065】
このような構成によれば、例えば、算出部326が、点群Gの複数の断面Fの背骨Maの位置P2に基づいて、背骨情報334aを算出するので、背骨情報334a(例えば、背骨Maの延び方向)の精度を比較的高くすることができる。また、上記構成によれば、乗員Mの表面やその近傍に反射点Pが集中した場合であっても背骨情報334aの精度を比較的高くすることができる。
【0066】
なお、制御装置3で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1…乗員検知装置、2…電波センサ、3…制御装置、21…送信部、22…受信部、322…作成部、326…算出部、332…三次元マップ情報、334a…背骨情報、C…車両、F…断面、G…点群、M…乗員、Ma…背骨、P…反射点、P1…上側点、P2…背骨の位置、Pc…重心位置、S…座席、Sa…座面、Sc…中心位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9