(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188653
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/51 20060101AFI20221214BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20221214BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/514 400
A61F13/56 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096867
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 和泉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
(72)【発明者】
【氏名】黒原 健志
(72)【発明者】
【氏名】丹下 雄貴
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200DA25
3B200DE01
(57)【要約】
【課題】装着者が想定外の取り扱いをした際に表示が浮かび上がる吸収性物品を提供する。
【解決手段】着用者の腰回りを覆う腰回り部を有する吸収性物品であって、前記着用者の股下を覆うように配置される吸収体と、少なくとも前記腰回り部において非肌面側に配置された白色又は半透明の外側層と、前記外側層よりも肌面側に配置され、非肌面側に表示が印刷された印刷層と、を、備え、前記外側層に所定の張力を与えると、前記印刷層に印刷された表示が前記外側層の非肌面側から視認可能となる、吸収性物品を提供する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腰回りを覆う腰回り部を有する吸収性物品であって、
前記着用者の股下を覆うように配置される吸収体と、
少なくとも前記腰回り部において非肌面側に配置された白色又は半透明の外側層と、
前記外側層よりも肌面側に配置され、非肌面側に表示が印刷された印刷層と、
を、備え、
前記外側層に所定の張力を与えると、前記印刷層に印刷された表示が前記外側層の非肌面側から視認可能となる、吸収性物品。
【請求項2】
前記表示は、当該表示の周辺部分にかかる張力が所定の張力を超えたことを警告する表示である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記外側層は、前記印刷層よりも周長が長い、請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記外側層は伸縮性を有し、伸張により透明度が増す、請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記印刷層を、内部に弾性部材を織り込んだウェストギャザーに相当する部分に付した、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記表示は、吸収性物品の腰回り方向に延在する、
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
着用者の腰回りを調整するフックテープの付け根に、
前記印刷層を設けた、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
使用済みの吸収性物品を丸めた状態で保持する破棄用テープの付け根に、
前記印刷層を設けた、
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品であるおむつにはサイズがあり、特に子供用のおむつは、子供の腹囲が成長するため、都度適切な製品に変更して使い続けていくのが一般的である。適切でない(過小な)サイズのおむつを使い続けると、排出物を十分に保持できなくなる。また、腹部が締め付けられて着用者に不快感を与えることもある。このため、テープ型おむつの面ファスナ雌部に様々なデザインのテープ貼付目標を付し、貼付目標にテープを貼り付けることができない場合には交換時期とするおむつが知られている(特許文献1)。また、おむつの後身頃領域の非肌面側に、折り畳まれた粘着性テープ片を引き延ばし、吸収体の肌面側当接部が露出しないように破棄可能なおむつも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-305761号公報
【特許文献2】特開2002-011041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
着用者に対して対応する腹囲が過小なおむつを用いると、腹部が締め付けられて着用者に不快感をもたらす。また、テープ等の比較的弱い構造物の接着部分で、破断を来たす場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、具体的には、着用者の腰回りを覆う腰回り部を有する吸収性物品であって、前記着用者の股下を覆うように配置される吸収体と、少なくとも前記腰回り部において非肌面側に配置された白色又は半透明の外側層と、前記外側層よりも肌面側に配置され、非肌面側に表示が印刷された印刷層と、を、備え、前記外側層に所定の張力を与えると、前記印刷層に印刷された表示が前記外側層の非肌面側から視認可能となる、吸収性物品である。
【0006】
前記表示は、当該表示の周辺部分にかかる張力が所定の張力を超えたことを警告する表示であってよい。
【0007】
前記外側層は、前記印刷層よりも周長が長くてよい。
【0008】
前記外側層は伸縮性を有し、伸張により透明度が増してよい。
【0009】
前記印刷層を、内部に弾性部材を織り込んだウェストギャザーに相当する部分に付してよい。
【0010】
前記表示は、吸収性物品の腰回り方向に延在してよい。
【0011】
着用者の腰回りを調整するフックテープの付け根に、前記印刷層を設けてよい。
【0012】
使用済みの吸収性物品を丸めた状態で保持する破棄用テープの付け根に、前記印刷層を
設けてよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、選択または用法が適切でないためにおむつに過度の張力がかかる場合に、おむつの非肌面側に表示が浮かび上がるので、装着者に対しておむつのサイズ変更や、適切な使用を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係るテープ型おむつの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るテープ型おむつの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るテープ型おむつのフロントパッチと面ファスナを有するテープの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るパンツ型おむつの斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るパンツ型おむつの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るパンツ型おむつを非肌面側から見た平面図である。
【
図7】
図7は、破棄用テープの例と、破棄用テープの使用例を示す図である。
【
図8】
図8は、ウェストギャザーの下に積層した警告表示が浮かび上がる例を示す図である。
【
図9】
図9は、面ファスナを有するテープの付け根に積層した警告表示が浮かび上がる例を示す図である。
【
図10】
図10は、破棄用テープの張力が安全範囲を超え、ウェストギャザーに警告表示が浮かび上がる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るおむつについて説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態では、使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に装着された状態(以下、「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0017】
<テープ型おむつ>
図1は、実施形態に係るテープ型おむつの斜視図である。テープ型おむつ1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。テープ型おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。テープ型おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はテープ型おむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0018】
テープ型おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、テープ型おむつ1には、テープ型おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の脚周り部(大腿部)を取り巻く部位にレグギャザー3AL,3ARが設けられ、レグギャザー3AL,3ARよりもテープ型おむつ1の幅方向内側に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BR及びウェストギャザー3Rは、弾性部材の弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、テープ型おむつ1から漏出することなくテープ型おむつ1の吸収体に吸収される。なお、弾性部材としては糸状や帯状のゴム等を適宜選択できる。
【0019】
図2は、実施形態に係るテープ型おむつの分解斜視図である。テープ型おむつ1は、着用状態において外表面を形成する白色又は半透明のカバーシート4を有する(本願でいう「外側層」の一例)。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材であり、おむつ1の外装面を形成する。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する部位に設けられる。カバーシート4は、後述するバックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナーカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。本実施形態におけるカバーシート4は、特にテープ型おむつ1の長手方向端部において幅方向に余裕が生まれるように形成されている。
【0020】
そして、テープ型おむつ1は、カバーシート4の肌面側において順に積層されるバックシート5、吸収体6、トップシート7を有する。バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。また、トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、テープ型おむつ1の着用状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。トップシート7は親水性を有していてもよい。また、吸収体6は、股下領域1Bを含んで配置されている。
【0021】
バックシート5、吸収体6C、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6とトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6Cに接触することになる。
【0022】
また、テープ型おむつ1は、上述したレグギャザー3AL,3ARを形成するための弾性部材4SL,4SRがカバーシート4とバックシート5の間に、テープ型おむつ1の長手方向に伸縮するように設けられる。弾性部材4SL,4SRは、テープ型おむつ1にお
いて設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて決定された適宜の本数(本実施形態では、3本)で設けられる。
【0023】
また、テープ型おむつ1は、細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる液不透過性のシートである。サイドシート8L,8Rには、カバーシート4と同様、着用者の大腿部が位置する部位に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、サイドシート8L,8Rには立体ギャザー3BL,3BRを形成するための弾性部材8EL,8ERが長手方向に沿って配置されている。サイドシート8L,8Rは、テープ型おむつ1が着用状態の形態、すなわち、テープ型おむつ1が側面視U字状の形態になると、弾性部材8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRとなる。
【0024】
なお、カバーシート4には、テープ型おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ弾性部材4Cが弾性部材4SL,4SRよりもテープ型おむつ1の幅方向内側でテープ型おむつ1の長手方向に沿って設けられている。弾性部材4Cは、テープ型おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて設けられる。
【0025】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための弾性部材9ERは、吸収体6Cの端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。弾性部材9ERは、伸縮方向となる長手方向がテープ型おむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、弾性部材9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、弾性部材9ERは、収縮力を発揮してテープ型おむつ1を着用者に密着させ、テープ型おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0026】
吸収体6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体6Cでは、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体6C全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収体6Cの厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0027】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0028】
なお、吸収体6は、本図では図示しないコアラップシート6Aで包まれていてよい。コアラップシート6Aは、ティッシュペーパー等のパルプ繊維や薄い樹脂繊維で形成された不織布からなる透水性のシートであり、吸収体6の形態を維持し、SAP粒子が他の構造に散らばるのを防ぐ。また、透水性のため、肌面側からの吸収体6への尿の通過を妨げない。
【0029】
図3は、実施形態に係るテープ型おむつのフロントパッチと面ファスナを有するテープ
の一例を示す図である。本実施形態におけるフロントパッチ2Fは、テープ型おむつ1の前身頃領域非肌面側に付された不織布である。フロントパッチ2Fは、表面に微小なループ状の構造を備えている。このため、フロントパッチ2Fは、後身頃領域の幅方向左右両側から突出し、微細なフックを備える樹脂製のテープ2L,2R(フックテープ)を固定する、面ファスナ用止着材として機能する。
【0030】
フロントパッチ2Fには、おむつの幅方向中心線からの距離に応じて異なる色彩が付された略円形の背景図形に、おむつの幅方向中心線からの距離に応じて異なる数字を付した、背景図形と数字とを複合した図形である2FMを付すことができる。装着者は、テープ2L,2Rを同一の数字を付した図形2FMに貼り付けることで、テープ型おむつ1の腰回りを調整し、適切な形で装着することができる。なお、背景図形の形態は略円形である必要はなく、多角形やハートマーク、花や葉などの簡易な図形であってよい。また、数字は黒色である必要はなく、白抜き数字であってよい。更に、図形2FMは必須ではなく、フロントパッチ2Fに何も付さないこともできる。また審美性を有する他の模様のみで代用してもよい。
【0031】
上述のテープ型おむつ1を破棄する場合、おむつ1を肌面側が内側になるように丸め、テープ2L,2Rをカバーシート4に直接貼り付ける。カバーシート4は不織布で構成されているため、テープ2L,2Rの面ファスナを貼り付けて固定することが可能である。フロントパッチ2Fとは異なり、カバーシート4を構成する繊維には、テープ2L,2Rに付された面ファスナの着脱に耐える強度がないため、テープ2L,2Rを何度も脱着すると毛羽立ってしまう。またその際、テープ2L,2Rの面ファスナ部分にはカバーシート4を構成する繊維が残って接合力が低下する。とはいえ、破棄の際にはテープ2L,2Rを再剥離させる必要はないため、テープ2L,2Rをフロントパッチ2F以外の場所に貼り付けても問題は発生しない。上述の対応により排出物を露出させずにテープ型おむつ1を破棄することができる。
【0032】
<パンツ型おむつ>
図4は、実施形態に係るパンツ型おむつの斜視図である。パンツ型おむつ10は、着用状態において着用者の股下部(陰部)を覆う股下領域に対応する部位である股下領域10Bと、着用者の胴周りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域10Fと、着用者の胴周りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域10Rとを有する。ここで、前身頃領域10Fは股下領域10Bの前側に位置し、後身頃領域10Rは股下領域10Bの後側に位置する。本実施形態に係るパンツ型おむつ10は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域10Fの左側の縁と後身頃領域10Rの左側の縁は互いに接合され、前身頃領域10Fの右側の縁と後身頃領域10Rの右側の縁は互いに接合されている。よって、パンツ型おむつ10には、前身頃領域10Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって胴開口部12Tが形成されている。また、パンツ型おむつ10には、上記接合が施されない股下領域10Bの左側の部位に左下肢開口部12Lが形成され、股下領域10Bの右側の部位に右下肢開口部12Rが形成されている。そして、パンツ型おむつ10は、着用者の左下肢が左下肢開口部12Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部12Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部12Tに入るように装着されると、前身頃領域10Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域10Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開口部12Lと右下肢開口部12Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ10がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、テープ型おむつ1の場合と同様に、着用者はパンツ型おむつ10を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0033】
パンツ型おむつ10にも、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域10B付近を中心に配置されている。また、パンツ型おむつ10には、パンツ型おむつ1
0と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部12Lに立体ギャザー13BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部12Rに立体ギャザー13BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー13Rが設けられている。また、ウェストギャザー13Rの股下領域10B側にはタミーギャザー13Tが形成されている。立体ギャザー13BL,13BRとウェストギャザー13Rとタミーギャザーは、弾性部材の弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される排泄液は、パンツ型おむつ10から殆ど漏出することなくパンツ型おむつ10の吸収体に吸収される。なお、弾性部材としては糸状や帯状のゴム等を適宜選択でき、本実施形態では糸ゴム(糸状のゴム)が採用されている。
【0034】
図5は、実施形態に係るパンツ型おむつの分解斜視図である。パンツ型おむつ10は、着用状態において外表面を形成する、白色又は半透明のカバーシート14F,14Rとパッドカバーシート16とを有する。カバーシート14Fは、主にパンツ型おむつ10の前身頃領域10Fの外表面を形成し、本願でいう外側層として機能する。また、パッドカバーシート16は、主にパンツ型おむつ10の股下領域10Bの外表面を形成する。また、カバーシート14Rは、主にパンツ型おむつ10の後身頃領域10Rの外表面を形成し、カバーシート14Fと同様、本願でいう外側層として機能する。カバーシート14F,14Rとパッドカバーシート16は、パンツ型おむつ10の外表面の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。また、液不透過性のシートには、液不透過性と透湿性とが発揮されるように、0.1~数μm程度の微細な孔が多数形成されていてもよい。また、カバーシート14F,14Rは、胴回りにおける通気性向上のため、複数の孔を一部または全面的に形成したものであってもよい。後身頃領域10Bのカバーシート14Rの非肌面側における幅方向中央部には、破棄用テープ22が接着されている。破棄用テープ22については後述する。
【0035】
また、パンツ型おむつ10は、カバーシート14Fの肌面側に積層されるインナーカバーシート15Fと、カバーシート14Fの肌面側に積層されるインナーカバーシート15Rとを有する。インナーカバーシート15Fは、カバーシート14Fのうち後述するミシン目14F6よりも股下領域10B側の部分に一致する形状を有するシート状の部材である。インナーカバーシート15Rもインナーカバーシート15Fと同様、インナーカバーシート15Rのうち後述するミシン目14R6よりも股下領域10B側の部分に一致する形状を有するシート状の部材である。
【0036】
また、パンツ型おむつ10は、パッドカバーシート16の肌面側において順に積層されるバックシート17、吸収体18、トップシート19を有する。パッドカバーシート16は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略直方体のシートである。また、バックシート17、吸収体18、トップシート19は、何れもパッドカバーシート16と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がパッドカバーシート16の長手方向と一致する状態でパッドカバーシート16に対して順に積層されている。なお、パッドカバーシート16、バックシート17、吸収体18、トップシート19の長手方向はパンツ型おむつ10の長手方向と一致し、パッドカバーシート16、バックシート17、吸収体18、トップシート19の幅方向は、パンツ型おむつ10の幅方向と一致する。
【0037】
バックシート17は、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート19は、吸収体18の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート19
は、その一部または全部において液透過性を有する。そのため、パンツ型おむつ10の着用状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート19を通って吸収体18に浸入し、そこで吸収される。液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、トップシート19は親水性を有していてもよい。
【0038】
吸収体18は、テープ型おむつ1の吸収体6と同様に、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性の高吸収性重合体等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体18は、着用者から排泄された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。吸収体18は、1枚のマットからなる単層構造であってもよいし、複数枚のマットを重ね合わせた積層構造であってもよい。また、吸収体18は、目的に応じた適宜の形状を採ることができる。吸収体18の形状としては、例えば、矩形状、中央部付近が括れた砂時計型、その他各種の形状が挙げられる。
【0039】
バックシート17、吸収体18、トップシート19は、何れも前身頃領域10Fから後身頃領域10Rにまで延在する。よって、バックシート17、吸収体18、トップシート19が積層されているパッドカバーシート16で着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート17、吸収体18、トップシート19の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体18に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート19を介して吸収体18に接触することになる。
【0040】
また、パンツ型おむつ10は、上述した立体ギャザー13BL,13BRを形成するための細長い帯状のサイドシート20L,20Rを有する。サイドシート20L,20Rは、トップシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って接着されている。よって、サイドシート10L,10Rは、前身頃領域10Fの左側の縁となるカバーシート14Fの縁14F7と、後身頃領域10Rの左側の縁となるカバーシート14Rの縁14R7とが互いに接合され、且つ、前身頃領域10Fの右側の縁となるカバーシート14Fの縁14F8と、後身頃領域10Rの右側の縁となるカバーシート14Rの縁14R8とが互いに接合されることにより、
図4に示したような完成状態のパンツ型おむつ10になると、糸ゴム20L1,20R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線20L2,20R2に沿ってトップシート19から立ち上がる。その結果、左下肢開口部12Lおよび右下肢開口部12Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー13BL,13BRが形成される。なお、カバーシート14Fにおける縁14F7およびカバーシート14Rにおける縁14R7、カバーシート14Fにおける縁14F8およびカバーシート14Rにおける縁14R8の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。
【0041】
また、パンツ型おむつ10は、パッドカバーシート16、バックシート17、吸収体18、トップシート19、サイドシート20L,20Rを挟んでカバーシート14Fの肌面側に積層される通気路形成シート21Fと、カバーシート14Rの肌面側に積層される通気路形成シート21Rとを有する。通気路形成シート21Fは、トップシート19の長手方向における一端側においてカバーシート14Fに重ねられる。また、通気路形成シート21Rは、トップシート19の長手方向における他端側においてカバーシート14Rに重ねられる。なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互
いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、通気路形成シート21Fは、パッドカバーシート16の長手方向における一端側の一部分が、カバーシート14Fの一部分に触れる状態で重ねられる。
【0042】
通気路形成シート21Fには、前身頃領域1Fの上側の縁に沿う左右方向に延在する領域に通気用の微細な通気孔21F1が多数配列されている。通気路形成シート21Rにも通気路形成シート21Fと同様、通気孔21R1が多数配列されている。ここで、通気孔とは、シートの一方の面の側の空間と他方の面の側の空間とを連通させる開口部を意味し、その形状は特に限定されない。よって、通気孔21F1,21R1としては、例えば、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形等)等の形状の開口部を適用することができる。通気路形成シート21F,21Rへの通気孔21F1,21R1の形成は、該通気路形成シート21F,21Rが通気性を有しない素材であることを意味するものでは無く、該通気路形成シート21F,21Rは通気性を有する素材と通気性を有しない素材の何れであってもよい。通気路形成シート21F,21Rは、通気性や液透過性を有する素材であることが好ましいが、例えば、非通気性の素材であってもよい。通気孔21F1,21R1の大きさや個数は特に限定されないが、例えば、開口面積が0.5~10mm2の孔であれば5~200個程度形成されることが好ましい。
【0043】
上記のように、パンツ型おむつ10は、吸収体18を間に挟んだバックシート17およびトップシート19の他、カバーシート14F,14R、通気路形成シート21F,21R、パッドカバーシート16、サイドシート20L,20Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0044】
図6は、実施形態に係るパンツ型おむつを非肌面側から見た平面図である。
図6は、展開および伸長した状態のパンツ型おむつ10の平面図を模式的に示している。カバーシート14Fは、ミシン目14F6において一端側が折り返されている。このミシン目14F6は、カバーシート14Fに直線状に入れられた細かい切れ目によって形成される通気孔が胴開口部12Tの縁に沿って点線状に並んだものである。ミシン目14F6を形成する点線状の通気孔は、着用者の指が入らない大きさとなっている。例えば、5mm以下の長さの切れ目によって形成される通気孔であれば、一般的な乳幼児の指が入ることはない。また、ミシン目14F6は、パンツ型おむつ10の通常の使用状態によって、カバーシート14Fがミシン目14F6を境界にして切り裂けることが無いように、点線状の通気孔を形成する切れ目同士の間隔が所定の長さを有している。カバーシート14Fを構成する素材の強度にもよるが、胴回りに求められる伸縮性と着用感を損なわない坪量が8~50g/m
2程度のシートであれば、切れ目同士の間隔は、2mm以上であることが好ましい。
【0045】
そして、上述したウェストギャザー13Rは、カバーシート14Fに対して糸ゴム14F2,14F3が伸張状態で接着され、カバーシート14Rに対して糸ゴム14R2,14R3が伸張状態で接着されることで形成される。カバーシート14Fに接着される糸ゴム14F2,14F3は、折り返されると前身頃領域10Fの上側の縁を形成することになるミシン目14F6沿いに、ミシン目14F6側から糸ゴム14F2、糸ゴム14F3の順に設けられている。また、カバーシート14Rに接着される糸ゴム14R2,14R3も、糸ゴム14F2,14F3と同様、折り返されると後身頃領域10Rの上側の縁を形成することになるミシン目14R6沿いに、ミシン目14R6側から糸ゴム14R2、糸ゴム14R3の順に設けられている。このため、糸ゴム14F2,14F3は、伸縮方向となる胴回り方向がおむつ1の幅方向(左右方向)となる向きでカバーシート14Fに設けられることになる。また、糸ゴム14R2,14R3は、伸縮方向となる長手方向がパンツ型おむつ10の幅方向(左右方向)となる向きでカバーシート14Rに設けられる
ことになる。よって、縁14F7と縁14R7が互いに接合され、縁14F8と縁14R8が互いに接合されると、糸ゴム14F2,14F3と糸ゴム14R2,14R3は、胴開口部12Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮性部材を形成し、胴開口部12Tを胴周り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム14F2,14F3と糸ゴム14R2,14R3は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、パンツ型おむつ10と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。糸ゴム14F2,14F3と糸ゴム14R2,14R3は、糸ゴムの長手方向において離散的に塗布された接着剤により、カバーシート14F,14Rに対し離散的に接着されている。糸ゴム14F2,14F3,14R2,14R3とカバーシート14F,14Rとを接合する接着剤は、糸ゴム14F2,14F3,14R2,14R3に対して塗布されたものであってもよいし、或いは、カバーシート14F,14Rに対して塗布されたものであってもよい。また、糸ゴム14F2,14F3,14R2,14R3は、接着剤の代わりに超音波溶着でカバーシート14F,14Rに接合されてもよい。なお、着用者の指がミシン目14F6の切れ目が通過しない長さになっているため、糸ゴム14F2,14F3等に指先が触れて糸ゴムが切れることは無い。
【0046】
更に、カバーシート14Fには糸ゴム14F4,14F5が伸張状態で接着され、カバーシート14Rには糸ゴム14R4,14R5が伸張状態で接着されている。糸ゴム14F4,14F5は、カバーシート14Fのうち糸ゴム14F3よりも股下領域10B側の領域に設けられる伸縮性部材である。パンツ型おむつ10には、糸ゴム14F4,14F5,14R4,14R5によって、ウェストギャザー13Rよりも股下領域10B側にタミーギャザー13Tが形成されている。ただし、糸ゴム14F4,14F5は、カバーシート14Fの左端から右端まで延在する糸ゴム14F2,14F3とは異なり、幅方向中央部が所定の横幅分だけカットされている。カバーシート14Fは、幅方向中央部がカットされた糸ゴム14F4,14F5を有することにより、吸収体18が吸水したことによる膨張を阻害することなく、着用者の下腹部に適度な密着感を付与する。カバーシート14Rについてもカバーシート14Fと同様であり、幅方向中央部が所定の横幅分だけカットされた糸ゴム14R4,14R5がカバーシート14Rに接着されることで、着用者の下腹部に適度な密着感を付与する。後身頃領域におけるカバーシート14Rの非肌面側幅方向中央部には、後述する破棄用テープ22が接着されている。
【0047】
図7は、破棄用テープの例と、破棄用テープの使用例を示す図である。
図7(a)は、後身頃領域におけるカバーシート14Rと、インナーカバーシート15Rと、カバーシート14Rの非肌面側に接着された破棄用テープ22部分を拡大した図である。破棄用テープ22は、樹脂製の、透明度が高く細長い帯状のテープ部材である。カバーシート14Rと破棄用テープ22は、接着剤で強固に固定されており、容易には剥離しない。破棄用テープ22同士も粘着層により仮固定されており、透明度が高いため、おむつのデザインや機能を阻害することはない。
【0048】
図7(b)は、破棄用テープ22を展開した状態を示す図である。破棄用テープ22は、一定程度の伸縮性を備えている。また、折り畳まれた破棄用テープ22同士の当接部には、剥離可能な粘着強度の粘着層22Gが設けられている。破棄用テープ22の先端には、剛性が高く、粘着層と接触しておらず、破棄用テープ22とは色彩が異なるつまみ22Dが形成されている。使用者がつまみ22Dを親指と人差し指で掴んで引っ張ると、粘着層22Gは剥離し、破棄用テープ22を引き出すことができる。
【0049】
図7(c)は、おむつを破棄するために破棄用テープ22を用いた一例である。使用後のパンツ型おむつ10を破棄する際には、吸収体18の肌面側が内側になるようにパンツ型おむつ10を長手方向に丸め、
図7(b)の方法により破棄用テープ22を引き出して、おむつの非肌面側に巻き付ける。この際、粘着層22Gがパンツ型おむつ10の非肌面
側と接着するため、パンツ型おむつ10を丸めて保持することができる。このようにすると、排出物を露出させずにパンツ型おむつ10を破棄することができる。
【0050】
なお、破棄用テープは、
図7のように幅方向中央部に、長手方向端部に向けて設けるのではなく、後身頃領域の幅方向中央部側から、長手方向端部かつ幅方向端部に向けて、逆ハの字型に設けられていてよい。この形態では、使用済みのパンツ型おむつをおむすび状に丸めて保持することができる。この形態でも、パンツ型おむつ10を、排出物を露出させずに破棄することができる。
【0051】
<警告表示の例>
以下に、テープ型おむつ1、パンツ型おむつ10の一部構造に対して想定外の張力がかかった場合に表示される警告表示の具体例を示す。警告表示が表示される機序は下記のとおりであり、これらの警告表示は、おむつの構造上張力に弱い部分に任意に付すことができる。
【0052】
図8は、ウェストギャザーの下に積層した警告表示が浮かび上がる例を示す図である。
図8は、パンツ型おむつ10の前身頃領域10Fの長手方向端部に付されたウェストギャザー13Rの拡大図である。
【0053】
図8(a)は、警告表示を付すシートの構造を示す図である。カバーシート14Fは半透明の不織布であり、他の構造物よりも余裕を持った長い周長で構成されている。カバーシート14Fの長手方向端部には、弾性部材14F2、14F3が織り込まれており、パンツ型おむつ10に力がかかっていない状態では、弾性部材の付勢力により皺状に収縮する。カバーシート14Fの肌面側に存在するインナーカバーシート15Fの非肌面側には、警告表示23が印刷されており、インナーカバーシート15Fは本願でいう印刷層として機能する。
【0054】
図8(b)は、パンツ型おむつ10のウェストギャザー13Rに想定外の張力がかかっていない状態での、前身頃領域10Fの長手方向端部を非肌面側から見た場合の見え方を示した図である。ウェストギャザー13Rの周辺部分にかかる張力が想定範囲内である場合、カバーシート14Fにかかる張力よりも弾性部材14F2,14F3の付勢力が勝るため、カバーシート14Fは皺を失わない。このため、警告表示23は当該皺に阻まれて非肌面側から明瞭に視認することはできない。
【0055】
図8(c)は、パンツ型おむつ10のウェストギャザー13Rに想定外の張力がかかった状態での、前身頃領域10Fの長手方向端部を非肌面側から見た場合の見え方を示した図である。ウェストギャザー13Rの周辺部分にかかる張力が所定の張力を超え、おむつの内部構造に影響が生じる虞がある場合、カバーシート14Fにかかる張力は弾性部材14F2,14F3の付勢力に勝り、カバーシート14Fから皺が消える。ここで、所定の張力とは、視認不能だった表示が視認可能となる場合の張力の大きさであり、例えば、ウェストギャザー13Rの周辺部分に張力が加わることにより、カバーシート14Fの非肌面側から視認不能だった警告表示23が視認可能になる場合の張力の大きさである。ウェストギャザー13Rの周辺部分に所定の張力を越える張力が加わり、カバーシート14Fから皺が消えると、警告表示23がカバーシート14の非肌面側に明瞭に浮かび上がり、非肌面側から容易に視認できるようになる。警告表示23を認めた装着者は、着用者に何らかの異常が発生していることを認識できる。当該警告表示23により、医療機関への早期受診を促すことができる。また、着用者に異常が発生していない場合にはパンツ型おむつ10のサイズが過小であることが判断できるため、適切なパンツ型おむつ10への買い替えを促すことができ、着用者の快適性を向上させることができる。
【0056】
一般的に、着用者の腹部の膨張度合いは変化しやすい。また、おむつを着用する場合に装着者が注目するのは腹側である。このため、前身頃領域10Fに付されたウェストギャザーに上述の加工を施すことは好適である。このため、本図では前身頃領域10Fに警告表示23を一つ付した形態を示しているが、警告表示23は後身頃領域10Bに付されたウェストギャザー部分のカバーシート14R,インナーカバーシート15Rにも付されよい。更に、警告表示23はパンツ型おむつ10のウェストギャザー13R外周全体に付されていてもよい。このように警告表示23の表示位置を増やすことで、装着者は着用者の腰回りのどの位置からも、警告表示を視認することができる。
【0057】
また、テープ型おむつ1の後身頃領域に付加されているウェストギャザー3Rにも、同様な加工を施してもよい。当該加工は、長手方向端部のカバーシート4とバックシート5の幅に余裕を持たせてバックシート5とトップシート7の間に設けられた弾性部材9ERの収縮力により収縮しやすくすると共に、バックシート5の非肌面側に警告表示を付加することにより実現できる。これにより、テープ型おむつ1に異常な伸張力が加わってカバーシート4とバックシート5が伸張した場合に、パンツ型おむつ10と同様の警告表示を浮かび上がらせることができる。
【0058】
図9は、面ファスナを有するテープの付け根に積層した警告表示が浮かび上がる例を示す図である。
図9は、テープ型おむつ1の前身頃領域に付されたフロントパッチ2Fに、面ファスナのフック部分を備えた樹脂製テープであるテープ2L,2Rを貼り付けた図である。テープ2L,2Rの付け根は、後身頃領域に存在するカバーシート4とバックシート5に接着されている。本図では、
図3に記載した図形2FMを省略しているが、図形2FMは付加されていてもよい。テープ2L,2Rの付け根を接着している部分のカバーシート4は半透明であり、伸縮性を備え、伸張することにより透明度が高くなる。バックシート5の非肌面側には、警告表示24が印刷されており、バックシート5は、本願でいう印刷層として機能する。
【0059】
図9(a)は、テープ2L,2Rをフロントパッチ2Fに貼り付けた際、テープ2L,2Rの付け根に想定外の張力がかかっていない状態を腹側の非肌面側から見た図である。想定外の張力がかかっていない状態では、カバーシート4の伸張力には依然余裕があり、透明度は高くない。このため、バックシート5の非肌面側に付された警告表示24は不明瞭であり、内容を視認することはできない。
【0060】
図9(b)は、テープ2L,2Rの付け根周辺部分に所定の張力がかかり、付け根の周辺部分が破断する可能性がある状態を、腹部の非肌面側から見た図である。想定外の張力がかかった状態では、カバーシート4は伸びきってしまい、透明度が高くなる。このため、バックシート5に付された警告表示24が、非肌面側から明瞭に視認できるようになる。
【0061】
警告表示24を認めた装着者は、テープ2L,2Rをフロントパッチ2Fに貼り付ける位置が正しくないことを認識できるので、適切な位置にテープ2L,2Rを貼りなおすことができる。適切な位置がない場合には、テープ型おむつ1のサイズが過小であることが判断できるので、適切なサイズのテープ型おむつへの買い替えを促すことができる。
【0062】
また、適切な位置にテープ2L,2Rを貼り付けたにもかかわらず警告表示24が視認できる場合には、着用者に何らかの異常が発生していることが推認できる。当該警告表示24により、医療機関への早期受診を促すことができる。
【0063】
図10は、破棄用テープの張力が安全範囲を超え、ウェストギャザーに警告表示が浮かび上がる例を示す図である。本図は、パンツ型おむつ10の破棄用テープ22に想定外の
張力が加わった場合に、ウェストギャザーの下部に積層した警告表示が浮かび上がる例を示す図である。前述の通り、破棄用テープ22は、パンツ型おむつ10の後身頃領域10Rの非肌面側に接着されている。破棄用テープ22はカバーシート14Rと強固に接着されており、一定の伸縮性を備えた丈夫な素材で構成されているが、それでも非常に強い張力がかかると、破断したりカバーシート14Rから剥離してしまったりすることがある。
【0064】
破棄用テープが破断または剥離すると、パンツ型おむつ10を丸めて固定し、排出物を表面に露出させずに破棄することができなくなるため、衛生上悪影響が生じる。このため、必要以上の張力がかかるのを防止することが望ましい。そこで、前述のカバーシート14Fと同様に、カバーシート14Rについても半透明で、他の構造物よりも余裕を持った大きさの不織布で構成する。パンツ型おむつ10の後身頃領域長手方向端部にも、前述の前身頃領域端部と同様にウェストギャザー13Rが構成されている。そこで、当該ウェストギャザー13Rの破棄用テープ22接着位置周辺部分のインナーカバーシート15の非肌面側に、警告表示25を付しておくことができる。この場合のインナーカバーシート15は、本願でいう印刷層として機能する。
【0065】
破棄用テープ22に対して非常に強い張力がかかり、カバーシート14Rにかかる張力が所定の張力を超えると、カバーシート14Rにかかる張力がウェストギャザー13R部分において弾性部材14R2,14R3の付勢力に勝り、破棄用テープ22接着部分で皺が消える。このため、警告表示25がカバーシート14Rの非肌面側に明瞭に浮かび上がり、非肌面側から容易に視認できるようになる。
【0066】
破棄用テープ22の付け根に現れた警告表示25により、使用者は破棄用テープ22にこれ以上の張力を与えるべきでないことを認識できる。このため、破棄用テープ22や接着部分の破断を避けながら、パンツ型おむつ10を丸めて破棄用テープ22により固定し、パンツ型おむつ10を衛生的に破棄することができる。
【0067】
なお、警告表示は必ずしもウェストギャザー13Rに付される必要はない。警告表示は、吸収体18延在部分の、破棄用テープ22接着部分周辺のインナーカバーシート15Rに付されていてもよい。破棄用テープ22に非常に強い張力がかかり、破棄用テープ22が接着されたカバーシート14Rが伸張した場合に、カバーシート14Rが引き延ばされて薄くなることで、当該警告表示を視認可能にすることもできる。
【0068】
以上、本発明における吸収性物品の実施の形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。上記実施形態では警告表示を文字列で示す例を示したが、記号で示してもよい。また、おむつが販売される国や地域に応じて、装着者が理解できるように変更することができる。
【0069】
以上で開示した実施形態や応用例は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0070】
1・・テープ型おむつ
1R・・後身頃領域
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
2R,2L・・テープ
2F・・フロントパッチ
2FM・・貼付目標
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
4・・カバーシート
5・・バックシート
6・・吸収体
7・・トップシート
8R,8L・・サイドシート
9ER・・弾性部材
10・・パンツ型おむつ
13R・・ウェストギャザー
14F,14R・・カバーシート
15F,15R・・インナーカバーシート
16・・パッドカバーシート
17・・バックシート
18・・吸収体
19・・トップシート
20L,20R・・サイドシート
20L1,20R1・・糸ゴム
20L2,20R2・・折り返し線
21F,21R・・通気路形成シート
22・・破棄用テープ
23,24,25・・警告表示