(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188658
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20221214BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20221214BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20221214BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20221214BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01F27/29 H
H01F17/04 Z
H01F27/29 125
H01F27/29 F
H01F27/28 152
H01F27/255
H01F27/24 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096873
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】有光 一統
(72)【発明者】
【氏名】北島 伸夫
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AB02
5E043AB04
5E043EA01
5E043EB05
5E070AA01
5E070AB01
5E070BB03
5E070EA02
5E070EA06
5E070EB03
(57)【要約】
【課題】信頼性の高いコイル装置を提供すること。
【解決手段】インダクタ1は、コア8と、コア8の内部に埋設されるコイル2と、コイル2の引出部3a,3bが接続される継線部42a,42bを具備し、継線部42a,42bがコア8の内部に配置される端子4a,4bと、を有し、端子4a,4bは、コア8の内部に配置され、コイル2の巻回軸方向の第2端部2bが設置されるベース部41a,41bを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体の内部に埋設されるコイルと、
前記コイルの引出部が接続される継線部を具備し、前記継線部が前記素体の内部に配置される端子と、を有し、
前記端子は、前記素体の内部に配置され、前記コイルの巻回軸方向の端部が設置されるベース部を有するコイル装置。
【請求項2】
前記ベース部には、前記コイルの巻回軸方向の端部とともに、前記コイルの引出部の一部が載置される請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記ベース部は、前記巻回軸方向に略直交する方向に延在する平板形状を有し、
前記継線部は、前記ベース部から、前記巻回軸方向に沿って立ち上げられている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記ベース部は、前記巻回軸方向に略直交する方向に延在する平板形状を有し、
前記ベース部には、前記継線部とは異なる位置で前記巻回軸方向に沿って立ち上げられ、前記素体の側面に沿って外部に露出するように延在する接続部が形成されている請求項1~3のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項5】
前記接続部は、前記ベース部に接続され、前記素体の側面に向かって延在する側方引出部と、前記側方引出部に接続され、前記素体の側面に沿って延在する実装補助部とを有し、
前記実装補助部には、前記素体の実装面に形成され、前記素体の中心に向かって延在する実装部が接続されている請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記ベース部には、前記コイルの外周面と内周面との間に前記ベース部の内方縁部が位置するように、前記コイルの巻回軸方向の端部が設置される請求項1~5のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項7】
前記コイルの中心は、前記素体の中心に対して位置ずれしている請求項1~6のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項8】
前記端子は、第1端子と第2端子とからなる一対を有し、
前記コイルは、前記コイルの外周面が前記第1端子の第1継線部と前記第2端子の第2継線部とを結ぶ仮想線よりも外側に露出しないように、前記ベース部に設置されている請求項1~7のいずれかに記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインダクタ等として用いられるコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタ等として用いられるコイル装置として、素体と、素体の内部に埋設されるコイルと、コイルの引出部が接続される継線部が素体の内部に配置される端子と、を有するコイル装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載のコイル装置は、引出部に端子(継線部)を接続した状態のコイルを金型の内部に設置するとともに、該コイルを覆うように、素体を構成する磁性粉末を金型の内部に充填し、金型の治具(上下パンチ等)を用いて磁性粉末を圧縮することにより製造される。
【0003】
このように磁性粉末を圧縮する工程では、圧縮成形時に発生する加圧力がコイルに作用することにより、磁性粉末の内部において、コイルが所定の位置から巻回軸方向に位置ずれする等の不具合が発生するおそれがある。この場合、素体内部におけるコイルの位置が定まらず、製品毎にインダクタンス特性等にばらつきが生じ、製品の信頼性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、信頼性の高いコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
素体と、
前記素体の内部に埋設されるコイルと、
前記コイルの引出部が接続される継線部を具備し、前記継線部が前記素体の内部に配置される端子と、を有し、
前記端子は、前記素体の内部に配置され、前記コイルの巻回軸方向の端部が設置されるベース部を有する。
【0007】
本発明に係るコイル装置では、端子が、素体の内部に配置され、コイルの巻回軸方向の端部が設置されるベース部を有する。そのため、コイル装置の製造時では、ベース部にコイルの巻回軸方向の端部を載置した状態で、金型の内部にコイルを端子とともに設置することが可能となっている。このように、ベース部にコイルの巻回軸方向の端部を載置しておくことにより、ベース部によってコイルの巻回軸方向の端部が支持されるため、圧縮成形時に加圧力がコイルに作用しても、コイルが巻回軸方向に位置ずれしにくくなり、コイルの巻回軸方向の端部の位置がベース部の位置に固定される。したがって、素体内部においてコイルの位置を所定の位置に定めることが可能となり、コイルの位置のばらつきに起因して製品毎にインダクタンス特性等にばらつきが発生することを防止し、信頼性の高いコイル装置を実現することができる。
【0008】
好ましくは、前記ベース部には、前記コイルの巻回軸方向の端部とともに、前記コイルの引出部の一部が載置される。このような構成とすることにより、ベース部によってコイルの引出部の一部が支持されるため、圧縮成型時に加圧力がコイルの引出部に作用しても、コイルの引出部が巻回軸方向に位置ずれしにくくなる。したがって、素体内部においてコイルの引出部の位置を所定の位置に定めることが可能となり、引出部の位置のばらつきに起因して製品毎にインダクタンス特性等のばらつきが発生することを効果的に防止することができる。
【0009】
好ましくは、前記ベース部は、前記巻回軸方向に略直交する方向に延在する平板形状を有し、前記継線部は、前記ベース部から、前記巻回軸方向に沿って立ち上げられている。ベース部の形状を上記のような平板形状とすることにより、コイルの巻回軸方向の端部を傾斜させることなく安定した状態でベース部に載置することができる。また、継線部をベース部から巻回軸方向に沿って立ち上げることにより、ベース部に載置されたコイルの引出部の引出位置の近くに継線部を配置させることが可能となり、継線部に対する引出部の接続が容易になる。また、当該コイルの引出部の高さ位置と継線部の高さ位置とを合わせやすくなり、この点においても、継線部に対する引出部の接続が容易になる。
【0010】
好ましくは、前記ベース部は、前記巻回軸方向に略直交する方向に延在する平板形状を有し、前記ベース部には、前記継線部とは異なる位置で前記巻回軸方向に沿って立ち上げられ、前記素体の側面に沿って外部に露出するように延在する接続部が形成されている。このように、接続部をベース部から立ち上げ、素体の側面に沿って外部に露出するように形成することにより、コイル装置の実装時において、接続部にハンダフィレットを形成することが可能となり、コイル装置の実装強度を高めることができる。
【0011】
好ましくは、前記接続部は、前記ベース部に接続され、前記素体の側面に向かって延在する側方引出部と、前記側方引出部に接続され、前記素体の側面に沿って延在する実装補助部とを有し、前記実装補助部には、前記素体の実装面に形成され、前記素体の中心に向かって延在する実装部が接続されている。側方引出部を介して、接続部を素体の側面に引き出し、さらに複数回にわたって接続部を折り曲げて実装補助部および実装部を形成することにより、実装補助部および実装部の長さを十分に確保することが可能となり、コイル装置の実装強度を高めることができる。
【0012】
好ましくは、前記ベース部には、前記コイルの外周面と内周面との間に前記ベース部の内方縁部が位置するように、前記コイルの巻回軸方向の端部が設置される。このような構成とすることにより、ベース部にコイルの巻回軸方向の端部を安定した状態で配置することができる。また、コイルの内周側を通過する磁束の通路にベース部の内方縁部が配置されることがないため、磁束の通路を良好に確保し、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置を実現することができる。
【0013】
好ましくは、前記コイルの中心は、前記素体の中心に対して位置ずれしている。このような構成とすることにより、コイルの周囲に、コイルの中心の位置ずれ幅に応じた面積のスペースを確保し、このスペースに端子の一部(継線部等)を配置することが可能となる。したがって、端子の一部を配置するスペースを確保するために、素体の一部を外側に拡張する必要がなく、コイル装置の小型化を図ることができる。
【0014】
好ましくは、前記端子は、第1端子と第2端子とからなる一対を有し、前記コイルは、前記コイルの外周面が前記第1端子の第1継線部と前記第2端子の第2継線部とを結ぶ仮想線よりも外側に露出しないように、前記ベース部に設置されている。このような構成とすることにより、コイルの外周面を素体の側面から十分に離間した位置に配置させることが可能となり、コイルの外周面と素体の側面との間において、素体の厚みを十分に確保し、素体の側面にクラックが生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
【
図2】
図2は
図1に示すコイル装置の内部の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は
図1に示すコイル装置の素体の形成時に用いられる第1コアの構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は
図1に示すコイル装置の素体の形成時に用いられる第2コアの構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6は
図2に示す一対の端子の構成を示す斜視図である。
【
図7A】
図7Aは
図6に示す一対の端子の各々のベース部にコイルを載置したときの状態を示す側面図である。
【
図7B】
図7Bは
図7Aに示す一対の端子およびコイルを別の角度から見たときの状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は
図2に示すコイル装置の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るインダクタ1は、表面実装型のインダクタからなり、略直方体形状を有する。
図1において、インダクタ1のZ軸負方向側の面が実装面と8aなり、当該面が回路基板等に対して対向して配置される。以下では、インダクタ1において、実装面とは反対側の面を反実装面8bと呼ぶ。
【0018】
図2に示すように、インダクタ1は、コイル2と、一対の端子4a,4bと、コア(素体)8とを有する。なお、
図2では、
図1に示すインダクタ1について、XZ平面に沿って180°だけ向きを回転させた状態で示しており、インダクタ1の実装面8aが紙面上方に配置され、インダクタ1の反実装面8bが紙面下方に配置されるように図示している。以下では、理解を容易にするために、インダクタ1について、紙面上方を上方とし、紙面下方を下方として説明を行う。
【0019】
インダクタ1の寸法は特に限定されないが、そのX軸方向幅は好ましくは2~20mmであり、Y軸方向幅は好ましくは2~20mmであり、Z軸方向幅は好ましくは1~10mmである。
【0020】
コア8は、磁性粉末とバインダ樹脂とを含む混合物からなり、
図3に示す第1コア5と
図4に示す第2コア6とを組み合わせることにより形成される。すなわち、コア8は、予め成形された第1コア5と第2コア6とを金型の内部で圧縮成形し、これらを一体化することにより形成される。なお、第1コア5と第2コア6との接合部分では、その境界部を識別することができず、これらは混然一体となっている。以下において、第1コア5および第2コア6の構成について説明する。
【0021】
図3に示すように、第1コア5は、コアベース部50と、コアベース部50の表面(上面)に形成された柱状部51とを有する。第1コア5は、主として、
図2に示すコア8の反実装面8b側の一部を形成する。
【0022】
第1コア5は、フェライト粒子または金属磁性体粒子が分散された合成樹脂で構成されている。ただし、第1コア5を構成する材料はこれに限定されるものではなく、これらの粒子を含まない合成樹脂で構成してもよい。フェライト粒子としては、Ni-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライトなどが例示される。金属磁性体粒子としては、特に限定されないが、たとえばFe-Ni合金粉、Fe-Si合金粉、Fe-Si-Cr合金粉、Fe-Co合金粉、Fe-Si-Al合金粉、アモルファス鉄などが例示される。
【0023】
第1コア5に含まれる合成樹脂としては、特に限定されないが、好ましくは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂などが例示される。
【0024】
コアベース部50は略直方体形状(略扁平形状)からなり、第1コア5を第2コア6(
図4)に組み合わせた状態において、コアベース部50の下面は
図1および
図2に示すコア8の反実装面8bを形成する。コアベース部50の表面(上面)には、2つの段差部500と、各段差部500の間に位置する段差上部501とが形成されている。段差上部501は、段差部500に対して段差の上面を形成しており、段差上部501には柱状部51が形成されている。段差上部501のY軸方向幅は、コアベース部50のY軸方向幅と一致しており、段差部501は、コアベース部50のY軸方向の一端から他端にかけて形成されている。段差上部501のX軸方向幅と、コアベース部50のX軸方向幅との比は、好ましくは1/4~1/2である。
【0025】
一方の段差部500は、柱状部51を間に挟んで、コアベース部50のX軸負方向側に形成されている。他方の段差部500は、柱状部51を間に挟んで、コアベース部50のX軸正方向側に形成されている。各段差部500は、Z軸方向から見て、同様の形状を有し、X軸方向およびY軸方向にそれぞれ所定長を有する略長方形状を有する。
【0026】
各段差部500のY軸方向幅は、コアベース部50のY軸方向幅と一致しており、各段差部500は、コアベース部50のY軸方向の一端から他端にかけて形成されている。一方の段差部500のX軸方向幅は、柱状部51のX軸負方向側の端部からコアベース部50のX軸負方向側の端部までの距離に略等しくなっており、一方の段差部500は、X軸方向に関して、柱状部51のX軸負方向側の端部の位置からコアベース部50のX軸負方向側の端部にかけて形成されている。他方の段差部500のX軸方向幅は、柱状部51のX軸正方向側の端部からコアベース部50のX軸正方向側の端部までの距離に略等しくなっており、他方の段差部500は、X軸方向に関して、柱状部51のX軸正方向側の端部の位置からコアベース部50のX軸正方向側の端部にかけて形成されている。
【0027】
各段差部500には、インダクタ1の製造時において、
図6に示す端子4a,4bのベース部41a,41bが配置され、これにより、各段差部500の位置で、ベース部41a,41bに対する端子4a,4bの位置決めを行うことが可能となっている。また、各段差部500に端子4a,4bのベース部41a,41bを配置することにより、端子4a,4bの位置ずれを防止することが可能となっている。
【0028】
このような位置決めを効果的に行う観点から、段差部500のZ軸方向に沿う深さD1は、ベース部41a,41bの厚みT1(
図6)に基づいて決定され、上記深さD1と上記厚みT1との比D1/T1は、好ましくは1/8≦D1/T1≦2であり、さらに好ましくは1/4≦D1/T1≦1である。特に、段差部500のZ軸方向に沿う深さD1は、各段差部500にベース部41a,41bを配置したときに、ベース部41a,41bの表面(上面)と段差上部501の表面とが面一となるよう、ベース部41a,41bの厚みT1と略等しくなっていることが好ましい。
【0029】
コアベース部50のX軸方向の各側面には、第1凹部52が形成されている。各第1凹部52には、
図6に示す端子4a,4bの接続部43a,43bが配置される。第1凹部52のX軸方向に沿う深さは、特に限定されるものではないが、
図6に示す接続部43a,43bの厚みと同程度か、それよりも大きい。各第1凹部52のX軸方向に沿う深さは、各第1凹部52に接続部43a,43bを配置したときに、各第1凹部52から接続部43a,43bの表面がはみ出さない程度の深さであることが好ましい。第1凹部52のY軸方向幅は、コアベース部50のY軸方向幅の1/3~3/4であることが好ましく、
図6に示す接続部43a,43bのY軸方向幅と略等しくなっていることが好ましい。
【0030】
柱状部51は、コアベース部50の略中心部に一体的に形成されており、Z軸方向に沿って延在している。より詳細には、柱状部51の位置(軸心)は、コアベース部50の中心に対して、Y軸負方向側に所定距離だけ位置ずれして配置されている。
【0031】
柱状部51には、
図5に示すコイル(空芯コイル)2が配置(挿入あるいは巻回)される。そのため、柱状部51の直径は、コイル2の内径よりも小さくなっている。また、上述したように、柱状部51の位置はコアベース部50の中心に対してY軸負方向側に位置ずれしているため、第1コア5を第2コア6(
図4)に組み合わせた状態において、コイル2の中心(巻回軸)は、
図2に示すコア8の中心に対してY軸負方向側に位置ずれして配置されることになる。
【0032】
柱状部51は円柱形状からなり、その高さはコイル2の高さよりも高くなっていることが好ましい。第1コア5に柱状部51を具備させることにより、コイル2の内側の領域における第1コア5の実効透磁率を十分に確保することが可能となり、インダクタ1のインダクタンス特性を良好なものとすることができる。
【0033】
図4に示すように、第2コア6は、略四角リング形状からなり、
図3に示す第1コア5の表面(上面)に載置され、コイル2が装着された状態の第1コア5に組み合わされる。第2コア6は、第1コア5と同種の材料で構成してもよく、あるいは異種の材料で構成してもよい。第2コア6は、本体部60と、収容孔61と、端子収容溝62a,62bと、連結溝63a,63bと、第2凹部64と、第3凹部65(
図9C)と、底部66とを有する。第2コア6は、主として、
図2に示すコア8の実装面8a側の一部を形成する。
【0034】
本体部60は、有底筒形状からなり、本体部60の外観形状は、略直方体形状となっている。本体部60のZ軸方向の厚みは、
図3に示すコアベース部50のZ軸方向の厚みよりも大きくなっている。本体部60のX軸方向幅はコアベース部50のX軸方向幅と略一致しており、本体部60のY軸方向幅はコアベース部50のY軸方向幅と略一致している。第1コア5を第2コア6に組み合わせたとき、本体部60の上面(底部66とは反対側の面)は、第1コア5のコアベース部50の表面(上面)に接続される。
【0035】
収容孔61は、本体部60の略中央部に形成されており、本体部60のZ軸方向の一方の面(上面)から他方の面(底部66)に向かって延在している。収容孔61の開口部の形状は、略円形状であり、
図5に示すコイル2の外周形状と略一致している。収容孔61の開口部とは反対側の端部は、底部66によって閉塞されている。収容孔61には、コイル2が装着された状態の第1コア5の柱状部51(
図3)が収容される。
【0036】
底部66は、本体部60の下面を形成している。収容孔61の内部に柱状部51が収容された状態(すなわち、第1コア5に第2コア6が組み合わされた状態)において、底部66は、
図1および
図2に示すコア8の実装面8aを形成する。すなわち、
図4において、底部66のZ軸負方向側の面には、端子4a,4bの実装部44a,44bが配置される。
【0037】
第2凹部64は、本体部60のX軸方向の各側面に形成されている。各第2凹部64には、
図6に示す端子4a,4bの接続部43a,43bが配置される。第2凹部64のX軸方向に沿う深さは、
図3に示す第1凹部52のX軸方向に沿う深さと同様となっている。また、第2凹部64のY軸方向幅は、第1凹部52のY軸方向幅と同様となっている。第1コア5に第2コア6を組み合わせた状態において、第2凹部64は、Z軸方向に沿って、第1凹部52に接続される。これにより、
図1に示すように、コア8のX軸方向の各側面には、側方凹部80が、Z軸方向の一端から他端にかけて延在するように形成される。
【0038】
図9Cに示すように、第3凹部65は、底部66の表面(外面)に形成されている。底部66には、2つの第3凹部65が形成されており、各第3凹部65は、本体部60のX軸方向の各側面に形成された各第2凹部64に対して連続的に形成されている。第3凹部65と第2凹部64とは、本体部60の角部において直交するように交差しており、第3凹部65は、第2凹部64のZ軸方向の端部から底部66の中心に向かって延在している。
【0039】
図4に示すように、端子収容溝62a,62bは、本体部60の角部に形成されている。本体部60のY軸正方向側の面とX軸正方向側の面とが交差する位置に形成された角部には、端子収容溝62aが形成されており、本体部60のY軸正方向側の面とX軸負方向側の面とが交差する位置に形成された角部には、端子収容溝62bが形成されている。
【0040】
端子収容溝62a,62bは、本体部60のZ軸方向の一方の面(上面)から他方の面(底部66)に向かって延在している。端子収容溝62a,62bの開口部の形状は、略長方形状となっている。
図3に示す第1コア5に第2コア6を組み合わせた状態において、端子収容溝62aの内部には、
図2に示す端子4aの継線部42aを収容することが可能となっている。端子収容溝62aには、ワイヤ3の引出部3aが溶融物9で接続された状態の継線部42aが収容され、端子収容溝62aの内部には、溶融物9を収容することが可能な大きさの空間が形成されている。
【0041】
また、
図3に示す第1コア5に第2コア6を組み合わせた状態において、端子収容溝62bの内部には、
図2に示す端子4bの継線部42bを収容することが可能となっている。端子収容溝62bには、ワイヤ3の引出部3bが溶融物9で接続された状態の継線部42bが収容され、端子収容溝62bの内部には、溶融物9を収容することが可能な大きさの空間が形成されている。
【0042】
端子収容溝62a,62bのX軸方向幅は、
図2に示す継線部42a,42bのX軸方向幅よりも大きくなっている。端子収容溝62a,62bのY軸方向幅は、
図2に示す継線部42a,42bに付着する溶融物9のY軸方向幅よりも大きくなっている。端子収容溝62a,62bのZ軸方向に沿う深さは、端子4a,4bの継線部42a,42bの全体を収容すること可能な深さとなっており、少なくとも継線部42a,42bのZ軸方向の長さよりも大きくなっている。
図2に示すように、継線部42aのZ軸方向に沿う長さは、継線部42bのZ軸方向に沿う長さよりも長くなっており、これに対応する形で、端子収容溝62aのZ軸方向に沿う長さを、端子収容溝62bのZ軸方向に沿う長さよりも長くしてもよい。
【0043】
連結溝63a,63bは、本体部60のZ軸方向の一方の面(上面)から他方の面(底部66)に向かって延在している。また、連結溝63a,63bは、Y軸方向に沿って延在し、収容孔61と端子収容溝62a,62bとを連結している。連結溝63aは収容孔62のX軸正方向側の端部に接続されており、連結溝63bは収容孔62のX軸負方向側の端部に接続されている。
【0044】
図3に示す第1コア5に第2コア6を組み合わせた状態において、連結溝63aの内部には、
図2に示すワイヤ3の引出部3aが収容され、連結溝63bには、ワイヤ3の引出部3bが収容される。連結溝63aのX軸方向幅は、引出部3aのX軸方向幅よりも大きくなっており、連結溝63bのX軸方向幅は、引出部3bのX軸方向幅よりも大きくなっている。連結溝63a,63bのZ軸方向に沿う深さは、引出部3a,3bの全体を収容すること可能な深さとなっている。
図2に示すように、引出部3aのZ軸方向の長さは、引出部3bのZ軸方向の長さよりも高くなっており、これに対応する形で、連結溝63aのZ軸方向に沿う長さを、連結溝63bのZ軸方向に沿う長さよりも長くしてもよい。
【0045】
図5に示すように、コイル2は、 フラットワイズコイルで構成されている。コイル2は、平角線からなるワイヤ3をα巻することにより形成され、Z軸方向に沿って2層で構成されている。コイル2の巻回軸方向は、Z軸方向に対応している。ワイヤ3は、平角線の外面を構成する4つの側面のうち、相対的に幅の広い2つの面がコイル2の内周側および外周側を向くように巻回されている。なお、平角線の外面を構成する4つの側面のうち、相対的に幅の狭い2つの面がコイル2の内周側および外周側を向くように巻回し、エッジワイズコイルからなるコイル2を形成してもよい。
【0046】
コイル2は空芯コイルからなり、インダクタ1の製造時において、
図3に示す第1コア5の柱状部51がコイル2の内部を挿通するように、コイル2は第1コア5に取り付けられる。第1コア5に第2コア6を組み付け、これらを圧縮した状態において、
図2に示すように、コイル2はコア8の内部に埋設される。
【0047】
ワイヤ3を構成する材料としては、例えば銅および銅合金、銀、ニッケルなどの金属の良導体が挙げられるが、導体材料であれば特に限定されない。ワイヤ3は絶縁被覆ワイヤからなり、ワイヤ3の表面には絶縁被覆が施されている。絶縁被覆を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリアミドイミド樹脂あるいはウレタン樹脂等が用いられる。また、ワイヤ3として、絶縁被覆の外側に融着被覆を有する自己融着線を用いてもよい。融着被覆を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリアミド樹脂あるいはエポキシ樹脂等が用いられる。
【0048】
図5に示すように、ワイヤ3の引出部3aは、コイル2の2層目(2段目)において、コイル2の第1引出位置2cから外側に引き出され、Y軸方向に沿って直線的に延在している。ワイヤ3の引出部3bは、コイル2の1層目(1段目)において、コイル2の第2引出位置2dから外側に引き出され、Y軸方向に沿って直線的に延在している。引出部3a,3bは、捻られることなく、互いに同一方向(Y軸方向)に引き出されている。第1引出位置2cと第2引出位置2dとは、Z軸方向に沿って位置ずれしており、引出部3a,3bは、Z軸方向に沿って位置ずれして配置されている。
【0049】
ワイヤ3の引出部3a,3bは、
図2に示す端子4a,4bの継線部42a,42bに接続される。なお、
図5に示す状態では、引出部3a,3bはY軸方向に沿って引き出されているが、継線部42a,42bに接続された状態では、Y軸方向に対して内側に傾斜した方向に延在する。
【0050】
図6に示すように、端子4aは、ベース部41aと、継線部42aと、接続部43aと、実装部44aとを有する。端子4bは、ベース部41bと、継線部42bと、接続部43bと、実装部44bとを有する。端子4a,4bは、例えば金属等の導電性を有する板材を機械加工して形成されるが、端子4a,4bの形成方法はこれに限定されるものではない。
【0051】
ベース部41a,41bは、コイル2の巻回軸方向に略直交する方向(すなわち、X軸方向およびY軸方向)に延在する平板形状を有する。ベース部41a,41bは、内方縁部41a1,41b1と、側方縁部41a2,41b2と、外方縁部41a3,41b3とを有する。内方縁部41a1,41b1は、ベース部41a,41bのX軸方向の内側の縁部であり、Y軸方向に沿って直線的に延在している。内方縁部41a1と内方縁部41b1とは、互いに向かい合って配置されている。
【0052】
側方縁部41a2,41b2は、ベース部41a,41bのY軸方向の縁部であり、継線部42a,42bとはY軸方向に沿って反対側に位置する。側方縁部41a2,41b2は、X軸方向に沿って直線的に延在している。側方縁部41a2,41b2は、接続部43a,43bのY軸負方向側の端部の位置よりもY軸方向の外側に位置している。
【0053】
外方縁部41a3,41b3は、ベース部41a,41bのX軸方向の外側の縁部であり、コア8の側面が位置する側を向いている。外方縁部41a3,41b3は、内方縁部41a1,41b1に対して略平行に延在している。
【0054】
ベース部41a,41bは、
図2に示すコア8の内部に配置される。ベース部41a,41bは、Z軸方向から見て、略長方形状を有している。インダクタ1の製造時において、ベース部41a,41bは、
図3に示す第1コア5のコアベース部50の各段差部500に、X軸方向に沿って所定の間隔で載置される。ベース部41aとベース部41bとの間の間隔は、各段差部500の間のX軸方向に沿う距離、すなわち段差上部501のX軸方向幅に対応している。
【0055】
ベース部41a,41bは段差部500の表面に配置されるため、第1コア5に
図4に示す第2コア6を組み合わせた状態(すなわち、
図2に示すコア8が形成された状態)では、ベース部41a,41bは、コア8の反実装面8bからZ軸方向に段差部500の厚み分だけ離間した位置に配置されることになる。
【0056】
コア8の反実装面8bからのベース部41a,41bのZ軸方向の高さHと、コア8のZ軸方向の厚みT2との比H/T2は、好ましくは1/15~1/2であり、さらに好ましくは1/8~1/3である。H/T2の値をこのような範囲に設定することにより、ベース部41a,41bとコア8の反実装面8bとの間に位置するコア8の一部に適度な厚みが具備され、当該部分にクラックが発生する等の不具合を防止することができる。
【0057】
図2に示すように、ベース部41a,41bの上面には、コイル2が載置される。より詳細には、ベース部41a,41bの上面には、コイル2の巻回軸方向の第2端部2bが設置され、第2端部2bとベース部41a,41bとが接触する。反実装面8bを基準としたときに、コイル2の第2端部2bのZ軸方向の位置は、ベース部41a,41bの底面のZ軸方向の位置よりも、ベース部41a,41bの厚み分だけ、Z軸方向の上方に位置しており、コイル2の第2端部2bとベース部41a,41bの底面との間には段差が形成されている。
【0058】
図8に示すように、ベース部41a,41bにコイル2の第2端部2bが設置された状態において、コイル2の外周面と内周面との間には、ベース部41a,41bの内方縁部41a1,41b1が位置する。このような構成とすることにより、ベース部41a,41bにコイル2の第2端部2bを安定した状態で配置することができる。また、コイル2の内周側を通過する磁束の通路にベース部41a,41bの内方縁部41a1,41b1が配置されることがないため、磁束の通路を良好に確保し、良好なインダクタンス特性を有するインダクタ1を実現することができる。
【0059】
上記のような配置を可能とするために、ベース部41aとベース部41bとの間のX軸方向の距離L1と、コイル2の内径R1と、コイル2の外径R2との関係は、好ましくはR1≦L1<R2である。
【0060】
図示のように、ベース部41aとベース部41bとの間のX軸方向の距離L1と、コイル2の内径R1とが略等しくなっている場合、コイル2の第2端部2bとベース部41a,41bとの接触面積を十分に確保することが可能となり、より安定した状態で、コイル2をベース部41a,41bに載置することができる。
【0061】
また、コイル2をベース部41a,41bに安定した状態で載置する観点では、ベース部41a,41bのX軸方向幅L2に関して、好ましくはL2≧(R2-R1)/4であり、さらに好ましくはL2≧(R2-R1)/2であり、特に好ましくはL2≧(R2-R1)/2、かつ、R1≦L1<R2である。この場合、コイル2をベース部41a,41bに載置した状態において、コイル2の外周面がベース部41a,41bの外方縁部41a3,41b3あるいは側方縁部41a2,41b2の外側にはみ出すことを防止し、ベース部41a,41bでコイル2の第2端部2bを十分な支持力で支持することが可能となる。
【0062】
ベース部41a,41bにコイル2が載置された状態において、コイル2の外周面は、ベース部41aの側方縁部41a2とベース部41bの側方縁部41b2とをX軸方向に結ぶ仮想線VL1よりもY軸方向の内側に配置されている。仮想線VL1よりもY軸方向の外側にコイル2の外周面が配置されないように、コイル2をベース部41a,41bに載置することにより、コイル2の外周面をコア8のY軸負方向側の側面から十分に離間した位置に配置させることが可能となり、コイル2の外周面(コイル2のY軸負方向側の端部)とコア8のY軸負方向側の側面との間において、コア8の厚みを十分に確保し、コア8のY軸負方向側の側面にクラックが生じることを防止することができる。なお、側方縁部41a2,41b2とコア8のY軸負方向側の側面との間の長さL4と、コア8のY軸方向幅L5との比L4/L5は、好ましくは1/32~1/6であり、さらに好ましくは1/20~1/10である。
【0063】
また、コイル2をベース部41a,41bに安定した状態で載置する観点では、ベース部41a,41bのY軸方向に沿う長さL3について、好ましくはL3≧R2/2であり、さらに好ましくはL3≧R2である。また、ベース部41a,41bのY軸方向に沿う長さL3は、接続部43a,43bのY軸方向に沿う長さよりも大きくなっていることが好ましい。
【0064】
L3≧R2とした場合、特にY軸方向に関して、コイル2の外周面が、ベース部41a,41bの側方縁部41a2,41b2あるいは継線部42a,42bの外側にはみ出すことを防止することができる。また、Y軸方向に関して、コイル2のY軸方向の一端から他端に至る領域を、ベース部41a,41bの内側に配置することが可能となり、コイル2をベース部41a,41bに安定した状態で載置することができる。
【0065】
ベース部41a,41bのX軸方向幅L2は、Y軸方向に沿って略一定となっており、例えばベース部41a,41bの内方縁部41a1,41b1には凹部等の形状は付与されていない。ベース部41a,41bは、側方縁部41a2,41b2の位置から継線部42a,42bが接続されるY軸正方向側の端部の位置まで連続的に延在している。
【0066】
図7Bに示すように、ベース部41bの上面には、コイル2の第2端部2bとともに、ワイヤ3の引出部3bの一部が載置される。より詳細には、ベース部41bの上面には、引出部3bの引出底部3b1が設置され、引出底部3b1とベース部41bとが接触する。これにより、引出部3bの引出底部3b1は、ベース部41b1によって支持されることになる。
【0067】
本実施形態では、ワイヤ3の引出部3bは、コイル2の下方(
図5に示す第2引出位置2d)から引き出されるため、コイル2の第2端部2bがベース部41bに載置された状態において、引出部3bは、引出底部3b1がベース部41bの上面に沿うように配置されつつ、Y軸方向の外側に引き出されることになる。一方で、ワイヤ3の引出部3aは、コイル2の上方(
図5に示す第1引出位置2c)から引き出されるため、ベース部41aの上面に載置されることはなく、ベース部41aの上面から所定の距離だけ離間した位置に配置されている。
【0068】
継線部42a,42bには、ワイヤ3の引出部3a,3bが接続される。
図2に示すように、継線部42a,42bは、コア8の内部に配置される。本実施形態では、引出部3a,3bは、互いに略同一方向(Y軸正方向側)に向けて引き出されているため、継線部42a,42bは、引出部3a,3bが引き出されるコイル2のY軸正方向側に配置されている。
【0069】
図6に示すように、継線部42a,42bは、ベース部41a,41bから、Z軸方向に沿って立ち上げられている。より詳細には、継線部42a,42bは、ベース部41a,41bのY軸正方向側の端部(側方縁部41a2,41b2とは反対側に位置する端部)から、ベース部41a,41bに対して略直交した状態で立ち上げられ、Z軸方向に沿って延在している。継線部42a,42bの立上位置は、接続部43a,43bのY軸正方向側の端部の位置よりもY軸方向の外側に位置している。
図2に示すように、ベース部41a,41bのY軸正方向側の端部は、コイル2のY軸方向の端部よりもY軸方向に沿って外側に配置されているため、継線部42a,42bの立上位置は、コイル2のY軸方向の端部よりもY軸方向に沿って外側に配置される。
【0070】
図7Bに示すように、第1継線部42aおよび第2継線部42bは、それぞれX軸方向に関して異なる位置で、互いに略平行となるように、Z軸方向に沿って延在している。
図6に示すように、第1継線部42aのZ軸方向に沿う長さL6は、第2継線部42bのZ軸方向に沿う長さL7よりも長くなっている。第2継線部42bのZ軸方向に沿う長さL7と、第1継線部42aのZ軸方向に沿う長さL6との比L7/L6は、好ましくは1/4≦L7/L6<1であり、さらに好ましくは1/3≦L7/L6<2/3である。
【0071】
図8に示すように、ベース部41a,41bにコイル2が載置された状態において、コイル2の外周面は、第1継線部42aと第2継線部42bとをX軸方向に結ぶ仮想線VL2よりもY軸方向の外側に露出してはおらず、仮想線VL2よりもY軸方向の内側に配置されている。このような構成とすることにより、コイル2の外周面をコア8のY軸正方向側の側面から十分に離間した位置に配置させることが可能となり、コイル2の外周面(コイル2のY軸正方向側の端部)とコア8のY軸正方向側の側面との間において、コア8の厚みを十分に確保し、コア8のY軸正方向側の側面にクラックが生じることを防止することができる。
【0072】
継線部42a,42bとコア8のY軸正方向側の側面との間のY軸方向に沿う長さはL8は、ベース部41a,41bの側方縁部41a2,41b2とコア8のY軸負方向側の側面との間の長さL4よりも大きくなっている。上述したように、本実施形態では、コイル2の中心が、コア8の中心に対してY軸負方向側に位置ずれしているからである。継線部42a,42bとコア8のY軸正方向側の側面との間のY軸方向に沿う長さはL8と、コア8のY軸方向幅L5との比L8/L5は、好ましくは1/16~1/4であり、さらに好ましくは1/8~1/5である。
【0073】
図6に示すように、継線部42aは、平板部420と、収容凹部421aと、一対の突出部422a,422aとを有する。また、継線部42bは、収容凹部421bと、一対の突出部422b,422bとを有する。
【0074】
平板部420は、XZ平面に平行な平板形状からなり、ベース部41aに対して略直交した状態でZ軸方向に沿って延在している。平板部420は、ベース部41aと一対の突出部422a,422aとを接続する役割を果たし、継線部42aに平板部420を具備させることにより、収容凹部421aのZ軸方向の位置を、ベース部41aの位置から上方にシフトさせることが可能となっている。すなわち、平板部420は、主として、収容凹部421aの高さ調整の便宜のために設けられるものである。
【0075】
平板部420は、継線部42aにのみ設けられており、継線部42bには設けられていない。そのため、継線部42aのZ軸方向の先端部の位置と、継線部42bのZ軸方向の先端部の位置とは、平板部420の高さに応じた距離だけ、Z軸方向に沿って位置ずれし、上記各先端部の間にZ軸方向に沿う段差が形成されている。なお、段差の高さは、継線部42aのZ軸方向に沿う長さL6と、継線部42bのZ軸方向に沿う長さL7との差分に対応する。
【0076】
図7Bに示すように、収容凹部421aには、ワイヤ3の引出部3aが収容される。収容凹部421aの位置(Z軸方向の高さ)は、引出部3aの第1引出位置2c(
図5)の位置(Z軸方向の高さ)に対応しており、収容凹部421aの収容底部421a1はコイル2のZ軸方向の略中央部に対応する位置に位置している。
【0077】
収容凹部421aは、継線部42aの頂部にZ軸方向に沿って形成された切り欠きからなる。収容凹部421aのZ軸方向の一端(上端)は開放されており、この開放部分からワイヤ3の引出部3aを差し込む(あるいはスライドする)ようにして収容凹部421aの内部に挿入することが可能となっている。
図7Aに示すように、収容凹部421aのZ軸方向の深さD2は、例えば、引出部3aの高さL9に基づいて決定され、上記深さD2と上記高さL9との比D2/L9は、好ましくは1<D2/L9≦1.5であり、さらに好ましくは1<D2/L9≦1.3である。
【0078】
上記比D2/L9を上記の範囲に設定した場合、収容凹部421aにワイヤ3の引出部3aを収容したときに、引出部3aの引出底部3a1と、収容凹部421aの収容底部421a1との間に隙間G1を形成することが可能となる。この場合、収容凹部421aに収容されたワイヤ3の引出部3aは、隙間G1のZ軸方向の長さGL1に応じた距離だけ、収容凹部421aの収容底部421a1よりも上方に位置する。隙間G1の長さGL1と収容凹部421aの深さD2との比GL1/D2は、好ましくは1/32~1/8であり、さらに好ましくは1/20~1/10である。
【0079】
このような構成とすることにより、例えば製造誤差により、引出部3aの第1引出位置2c(
図5)がZ軸方向(特に、Z軸下方)にずれた場合であっても、引出部3aを収容凹部421aに収容するにあたって、引出部3aに対して屈曲加工を施すことなく、引出部3aを直線的に引き出した状態で継線部42aに接続することができる。
【0080】
また、引出部3aと収容凹部421aの収容底部421a1との間に隙間(マージン)G1が形成されるように予め収容凹部421aの深さD2を比較的深くしておくことにより、コイル2を傾けることなく、引出部3aを収容凹部421aに確実に収容することができる。また、例えば設計変更等により、引出部3aの第1引出位置2c(
図5)をZ軸方向に沿って通常とは異なる位置に配置させるような事態が生じた場合であっても、引出部3aを収容凹部421aに確実に収容することができる。
【0081】
なお、引出部3aの引出底部3a1とは反対側の端部と、継線部42aのZ軸方向の頂部との間には隙間G2が形成されている。隙間G2のZ軸方向の長さGL2は、隙間G1のZ軸方向の長さGL1よりも大きくなっているが、これよりも小さくてもよい。このように、収容凹部421aに隙間G2を具備させることにより、例えば製造誤差により、引出部3aの第1引出位置2c(
図5)がZ軸方向(特に、Z軸上方)にずれた場合であっても、上述したように、引出部3aに対して屈曲加工を施すことなく、引出部3aを直線的に引き出した状態で継線部42aに接続することができる。また、引出部3aが収容凹部421aの外側にはみ出すことを防止することが可能となり、後述するように、継線部42aと引出部3aとの接合部に容易にレーザ溶接を施すことができる。なお、隙間G1およびG2は必須ではなく、省略してもよい。
【0082】
また、収容凹部421aのZ軸方向の深さD2は、例えば、
図6に示す継線部42aの長さL6に基づいて決定されてもよく、上記深さD2と上記高さL6との比D2/L6は、好ましくは1/4<D2/L6≦3/4であり、さらに好ましくは3/8<D2/L6≦5/8である。上記比D2/L6を上記のような範囲に設定することにより、引出部3aの一部が収容凹部421aの上端部から外側にはみ出さないように、引出部3aを収容凹部421aの内部に収容することができる。
【0083】
一対の突出部422a,422aは、収容凹部421aを間に挟んで形成されている。突出部422a,422aの延在方向は、平板部420の延在方向と同様であり、Z軸方向である。突出部422a,422aのZ軸方向に沿う長さは、収容凹部421aのZ軸方向に沿う長さD2に対応している。
【0084】
一方の突出部422aと他方の突出部422aとの間のX軸方向の間隔(すなわち、収容凹部421aのX軸方向幅)は、ワイヤ3の引出部3aの板厚よりも大きくなっている。収容凹部421aの内部に引出部3aを挿入しやすくするためである。引出部3aは、収容凹部421aの内部において、突出部422a,422aによって挟み込まれるように固定される。
【0085】
図7Bに示すように、収容凹部421bには、ワイヤ3の引出部3bが収容される。収容凹部421bの位置(Z軸方向の高さ)は、引出部3bの第2引出位置2d(
図5)の位置(Z軸方向の高さ)に対応している。
【0086】
収容凹部421bは、継線部42bの頂部にZ軸方向に沿って形成された切り欠きからなる。ただし、収容凹部421bの一部(底部)は、ベース部41bのY軸正方向側の端部に食い込んでおり、厳密には、収容凹部421bの一部はベース部41bにY軸方向に沿って形成されている。このように、収容凹部421bをベース部41bまで延長して形成することにより、ベース部41bと継線部42bとの交差部において、後述する一対の突出部422b,422bのZ軸への折り曲げ(立ち上げ)が容易になる。
【0087】
収容凹部421bのZ軸方向の一端(上端)は開放されており、この開放部分からワイヤ3の引出部3bを差し込む(あるいはスライドする)ようにして収容凹部421bの内部に挿入することが可能となっている。
図7Aに示すように、収容凹部421aに引出部3aを収容した場合、引出部3aの引出底部3a1と収容凹部421aの収容底部421a1との間にはギャップG1が形成されていたが、収容凹部421bに引出部3bを収容した場合には、このようなギャップが形成されることはない。そのため、引出部3bが収容凹部421bに収容された状態において、引出部3bの引出底部3b1はベース部41bの上面に載置され、引出底部3b1とベース部41bの上面とは接触している。
【0088】
なお、引出部3bの引出底部3b1とは反対側の端部と、継線部42bのZ軸方向の頂部との間には、収容凹部421aの場合と同様に、隙間G2が形成されている。
【0089】
収容凹部421bのZ軸方向の深さD3は、収容凹部421aのZ軸方向の深さD2と同様に、引出部3bの高さL9に基づいて決定されてもよい。この場合、上記深さD3と上記高さL9との比D3/L9は、好ましくは1<D3/L9≦1.5であり、さらに好ましくは1<D3/L9≦1.3である。なお、ここで規定する収容凹部421bのZ軸方向の深さD3は、収容凹部421bのうち引出部3bが実際に配置可能な部分の深さであり、継線部42bのZ軸方向の頂部からベース部41bの上面までの深さに対応している。収容凹部421bのZ軸方向の深さD3は、収容凹部421aのZ軸方向の深さD2と実質的に略等しくなっている。
【0090】
収容凹部421bのZ軸方向の深さD3は、
図6に示す継線部42bの長さL7に基づいて決定されてもよく、上記深さD3と上記高さL7との比D3/L7は、好ましくは1/2<D3/L7<1であり、さらに好ましくは5/8<D3/L7≦7/8である。上記比D3/L7を上記のような範囲に設定することにより、引出部3bの一部が収容凹部421bの上端部から外側にはみ出さないように、引出部3bを収容凹部421bの内部に収容することができる。
【0091】
一対の突出部422b,422bは、収容凹部421bを間に挟んで形成されている。突出部422b,422bの延在方向は、突出部422a,422aと同様であり、Z軸方向である。突出部422b,422bのZ軸方向に沿う長さは、継線部42bのZ軸方向に沿う長さL7(
図6)に対応している。
【0092】
一方の突出部422bと他方の突出部422bとの間のX軸方向の間隔(すなわち、収容凹部421bのX軸方向幅)は、ワイヤ3の引出部3bの板厚よりも大きくなっている。収容凹部421bの内部に引出部3bを挿入しやすくするためである。引出部3bは、収容凹部421bの内部において、突出部422b,422bによって挟み込まれるように固定される。
【0093】
図7Aに示すように、収容凹部421aと、収容凹部421bとは、Z軸方向に沿って位置ずれしている。また、収容凹部421aに収容された引出部3aのZ軸方向の位置と、収容凹部421bに収容された引出部3bのZ軸方向の位置とは位置ずれしている。
【0094】
本実施形態では、コイル2から引出部3aと引出部3bとがZ軸方向に沿って位置ずれした状態で引き出されるため、これに対応する形で、収容凹部421aと、収容凹部421bとがZ軸方向に沿って位置ずれするように、継線部42a,42bが形成されている。収容凹部421aと収容凹部421bとの間のZ軸方向に沿う位置ずれ幅は、引出部3aの引出位置2c(
図5)と引出部3bの引出位置2d(
図5)との間のZ軸方向に沿う距離に対応している。収容凹部421aと収容凹部421bとの間のZ軸方向に沿う位置ずれ幅は、ワイヤ3(引出部3a,3b)のZ軸方向に沿う幅に対応していてもよい。
【0095】
また、収容凹部421aと収容凹部421bとの間のZ軸方向に沿う位置ずれ幅は、一対の突出部422a,422aの先端部と、一対の突出部422b,422bの先端部と間の距離に対応していてもよい。また、収容凹部421aと収容凹部421bとの間のZ軸方向に沿う位置ずれ幅は、収容凹部421aの収容底部421a1と、ベース部41bの上面との間の距離に対応していてもよい。また、収容凹部421aと収容凹部421bとの間のZ軸方向に沿う位置ずれ幅は、継線部42aの平板部420のZ軸方向に沿う長さに対応していてもよい。
【0096】
継線部42a,42bを正面(Y軸正方向側)から見たとき、
図7Aおよび
図8に示すように、収容凹部421a,421bは、X軸方向に関して、コイル2の外周の位置よりも内側に配置されている。すなわち、収容凹部421aと収容凹部421bとの間の距離L10は、コイル2の外径R2よりも小さくなっている。また、上記距離L10は、ワイヤ3の引出部3aの第1引出位置2c(
図5)と引出部3bの第2引出位置2d(
図5)との間の距離よりも小さくなっており、収容凹部421aと収容凹部421bとは、第1引出位置2cと第2引出位置2dとの間に配置されている。そのため、
図8に示すように、引出部3a,3bは、Y軸方向に対して所定角度だけ内側に傾斜して引き出された状態で、収容凹部421a,421bに収容されることになる。
【0097】
この場合、
図7Aに示すように、引出部3aは、その弾性力により、一対の突出部422a,422aのうち、X軸方向の外側(X軸負方向側)の突出部422aにのみ当接する。また、引出部3bは、その弾性力により、一対の突出部422b,422bのうち、X軸方向の外側(X軸正方向側)の突出部422bにのみ当接する。
【0098】
収容凹部421a,421bにワイヤ3の引出部3a,3bが収容された状態において、継線部42a,42bに対してレーザ照射が行われ、
図2に示すように、継線部42a,42bに溶接玉等からなる溶融物(接合部あるいは接合部材)9が形成される。その結果、
図6に示す一対の突出部422a,422aの各々は溶融物9で接続され、一対の突出部422b,422bの各々は溶融物9で接続される。継線部42a,42bに対するレーザ照射は、Y軸方向に対して所定角度だけ傾斜した方向から行われ、引出部3a,3bの幅広面にレーザが照射されるように行われる。溶融物9は、主として継線部42a,42bのY軸正方向側の面(レーザ照射面)に形成される。
【0099】
図6に示すように、接続部43a,43bは、ベース部41a,41bにおいて、継線部42a,42bとは異なる位置でZ軸方向に沿って立ち上げられている。接続部43a,43bは、ベース部41a,41bの内方縁部41a1,41b1とはX軸方向の反対側の外方縁部41a3,41b3から立ち上げられており、Y軸方向に関して、ベース部41a,41bの側方縁部41a2,41b2に比べて、継線部42a,42bに近接して形成されている。接続部43a,43bは、ベース部41a,41bと実装部44a,44bとを接続している。
【0100】
接続部43a,43bは、実装補助部430a,430bと、側方引出部431a,431bとを有する。側方引出部431a,431bは、ベース部41a,41bの外方縁部41a3,41b3に接続されている。側方引出部431a,431bは、XY平面に平行な面を有し、X軸方向の外側に向かって、コア8のX軸方向の各側面の位置まで延在している。
【0101】
実装補助部430a,430bは、側方引出部431a,431bのX軸方向の端部に接続されており、上方に向かって延在している。実装補助部430a,430bは、YZ平面に平行な面を有し、コア8のX軸方向の各側面に沿って、コア8の実装面8aの位置まで延在している。側方引出部431a,431bはコア8の内部に埋設されている一方で、実装補助部430a,430bはコア8の外部に露出している。
【0102】
実装部44a,44bは、実装補助部430a,430bのZ軸方向の端部に接続されており、X軸方向の内側に向かって延在している。実装部44a,44bは、XY平面に平行な面を有し、
図2に示すコア8の実装面8aに沿って形成されている。実装部44a,44bは、実装面8aにおいて、コア8の外部に露出しており、インダクタ1の実装時において、回路基板等(図示略)との接続部を構成する。
【0103】
実装部44a,44bは、ハンダや導電性接着剤等の接続部材を介して、回路基板等に接続される。その際に、実装補助部430a,430bには、ハンダフィレットを形成することが可能となっており、これにより回路基板等に対するインダクタ1の実装強度を高めることができる。
【0104】
次に、
図9A~
図9E等を参照しつつ、インダクタ1の製造方法について説明する。本実施形態の方法では、まず、金属板(たとえば、Snめっき金属板)等の導電板を
図9Aあるいは
図9Cに示すような形状に打抜き加工する。同図に示すように、打抜き加工後の導電板には、接続部43a,43bを介してフレーム7に接続された端子4a,4bが形成されている。フレーム7において、端子4a,4bは、X軸方向に沿って所定の間隔で配置されており、当該間隔は
図8に示す距離L1に対応している。
【0105】
次に、
図9Aに示すように、コイル2の第2端部2bがベース部41a,41bと接触するように、ベース部41a,41bにコイル2を載置し、X軸方向に沿って所定の間隔で配置されたベース部41a,41bに対して、コイル2の第2端部2bを跨るように配置する。
【0106】
このとき、ワイヤ3の引出部3a,3bを、継線部42a,42bの収容凹部421a,421bに収容し、端子4a,4bに接続する。引出部3a,3bについては、例えば、収容凹部421a,421bの上端部から下方に向かって差し込む(スライドする)ようにして収容することが可能である。ワイヤ3の引出部3bについては、引出底部3b1がベース部41bと接触するように、ベース部41bに載置しておく。なお、引出部3a,3bを収容凹部421a,421bに収容した後、これらを接着剤等で仮固定してもよい。
【0107】
次に、
図9Bに示すように、継線部42a,42bに対してY軸方向に対して所定角度だけ傾斜した方向からレーザを照射し、継線部42a,42bに溶融物9を形成する。これにより、一対の突出部422a,422aを溶融物9で接続するとともに、一対の突出部422b,422bを溶融物9で接続する。なお、溶融物9を形成する範囲については、図示の範囲に限定されるものではなく、引出部3a,3bと継線部42a,42bとを良好に接続することが可能な範囲で適宜変更してもよい。
【0108】
次に、端子4a,4bが各端部に固定されたコイル2を金型の内部に設置し、
図9Cに示すように、当該コイル2に、
図3に示す第1コア5と
図4に示す第1コア6とを組み合わせ、
図9Dに示す仮組体を構成する。より詳細には、第1コア5の柱状部51(
図3)をコイル2の内側に挿入するとともに、コイル2をコアベース部50の段差上部501に載置する。同時に、コアベース部50の各段差部500に端子4a,4bのベース部41a,41bを載置する。
【0109】
また、端子収容溝62a,62bの内部に端子4a,4bの継線部42a,42bが収容され、連結溝63a,63bの内部にワイヤ3の引出部3a,3bが収容され、さらに第2コア6の収容孔61の内部に第1コア5の柱状部51およびコイル2が収容されるように、第1コア5と第2コア6とを組み合わせる。なお、端子4a,4bの接続部43a,43bについては第1コア5および第2コア6から露出させておく。第1コア5および第2コア6としては、予め成形しておいたコア(仮成形コア)が用いられる。第1コア5および第2コア6を構成する材料としては、流動性のある材料が用いられ、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂をバインダとした複合磁性材料が用いられる。
【0110】
次に、金型の治具(上下パンチ等)を用いて、
図9Dに示す仮組立体の第1コア5と第2コア6とを圧縮成形し、これらを一体化させることにより、コア8(
図9E)を形成する。このとき、熱をかけることにより、第1コア5と第2コア6とを容易に一体化させることができる。
【0111】
次に、
図9Eに示すように、接続部43a,43bのみ残るように、
図9Dに示すフレーム7を切断器具で切断して除去する。そして、接続部43a,43bを各第2凹部64および各第3凹部65に固定する。より詳細には、
図9Fに示すように、端子4a,4bの接続部43a,43bを
図9Eに示す状態から略垂直に折り曲げ、接続部43a,43bを各第2凹部64に固定する。また、その状態で、接続部43a,43bの先端部を略垂直に折り曲げ、各第3凹部65に固定する。これにより、第2凹部64には端子4a,4bの実装補助部430a,430bが形成され、第3凹部65には端子4a,4bの実装部44a,44bが形成される。以上のようにして、本実施形態におけるインダクタ1を得ることができる。
【0112】
本実施形態に係るコイル装置1では、
図2に示すように、端子4a,4bが、コイル2の第2端部2bが設置されるベース部41aを有する。そのため、コイル装置2の製造時では、ベース部41aにコイル2の第2端部2bを載置した状態で、金型の内部にコイル2を端子4a,4bとともに設置することが可能となっている。このように、ベース部41a,41bにコイル2の第2端部2bを載置しておくことにより、ベース部41a,41bによってコイル2の第2端部2bが支持されるため、第1コア5(
図3)および第2コア6(
図4)の圧縮成形時に加圧力がコイル2に作用しても、コイル2がZ軸方向に位置ずれしにくくなり、コイル2の第2端部2bの位置がベース部41a,41bの位置に固定される。したがって、コア8の内部においてコイル2の位置を所定の位置(ベース部41a,41bの上面)に定めることが可能となり、コイル2の位置のばらつきに起因して製品毎にインダクタンス特性等にばらつきが発生することを防止し、信頼性の高いインダクタ1を実現することができる。
【0113】
また、本実施形態では、
図7Bに示すように、ベース部41bには、コイル2の第2端部2bとともに、ワイヤの引出部3bの引出底部3b1が載置される。そのため、ベース部41bによって引出底部3b1が支持されるため、圧縮成型時に加圧力が引出部3bに作用しても、引出部3bがZ軸方向に位置ずれしにくくなる。したがって、コア8の内部において引出部3bの位置を所定の位置(ベース部41bの上面)に定めることが可能となり、引出部3bの位置のばらつきに起因して製品毎にインダクタンス特性等のばらつきが発生することを効果的に防止することができる。
【0114】
また、本実施形態では、
図2に示すように、ベース部41a,41bの形状が平板形状であるため、コイル2の第2端部2bを傾斜させることなく安定した状態でベース部41a,41bに載置することができる。また、継線部42a,42bはベース部41a,41bからZ軸方向に沿って立ち上げられているため、ベース部41a,41bに載置された引出部3a,3bの引出位置2c,2d(
図5)の近くに継線部42a,42bを配置させることが可能となり、継線部42a,42bに対する引出部3a,3bの接続が容易になる。また、引出部3a,3bの高さ位置と継線部42a,42bの高さ位置とを合わせやすくなり、この点においても、継線部42a,42bに対する引出部3a,3bの接続が容易になる。
【0115】
また、本実施形態では、ベース部41a,41bには、コア8の側面に沿って外部に露出するように延在する実装補助部430a,430bが形成されているため、インダクタ1の実装時において、実装補助部430a,430bにハンダフィレットを形成することが可能となり、インダクタ1の実装強度を高めることができる。
【0116】
また、本実施形態では、
図6に示すように、接続部43a,43bは、ベース部41a,41bに接続され、コア8の側面に向かって延在する側方引出部431a,431bと、側方引出部431a,431bに接続され、コア8の側面に沿って延在する実装補助部430a,430bとを有し、実装補助部430a,430bには、コア8の実装面8aに形成され、コア8の中心に向かって延在する実装部44a,44bが接続されている。側方引出部431a,431bを介して、接続部43a,43bをコア8の側面に引き出し、さらに複数回にわたって接続部43a,43bを折り曲げて実装補助部430a,430bおよび実装部44a,44bを形成することにより、実装補助部430a,430bおよび実装部44a,44bの長さを十分に確保することが可能となり、インダクタ1の実装強度を高めることができる。
【0117】
また、
図8に示すように、本実施形態では、ベース部41a,41bには、コイルの外周面と内周面との間にベース部の内方縁部41a1,41b1が位置するように、コイル2の第2端部2bが設置される。そのため、ベース部41a,41bにコイル2の第2端部2bを安定した状態で配置することができる。また、コイル2の内周側を通過する磁束の通路にベース部41a,41bの内方縁部41a1,41b1が配置されることがないため、磁束の通路を良好に確保し、良好なインダクタンス特性を有するインダクタ1を実現することができる。
【0118】
また、本実施形態では、Z軸方向から見て、コイル2の中心は、コア8の中心に対してY軸負方向側に位置ずれしている。そのため、コイル2のY軸正方向側に、コイル2の中心の位置ずれ幅に応じた面積のスペースを確保し、このスペースに端子4a,4bの一部(継線部42a,42bやベース部41a,41bのY軸正方向側の端部)を配置することが可能となる。したがって、端子4a,4bの一部を配置するスペースを確保するために、コア8のY軸正方向側の側部を外側に拡張する必要がなく、インダクタ1の小型化を図ることができる。
【0119】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0120】
上記実施形態では、本発明のインダクタに対する適用例について示したが、インダクタ以外のコイル装置に本発明を適用してもよい。
【0121】
上記実施形態において、ワイヤ3は平角線で構成されていたが、丸線や四角線等、平角線以外のワイヤで構成されていてもよい。
【0122】
上記実施形態では、ワイヤ3の巻回形状を円形螺旋状としたが、例えば楕円形螺旋状、あるいは角形螺旋状等であってもよい。
【0123】
上記実施形態では、第1コア5と第2コア6の2つのコアでコア8を構成したが、1つのコアのみでインダクタ1のコア8を構成してもよい。この場合、金型の内部において、圧粉成形あるいは射出成型等によりコア8を形成してもよい。
【符号の説明】
【0124】
1…インダクタ(コイル装置)
2…コイル
2a…第1端部
2b…第2端部
2c…第1引出位置
2d…第2引出位置
3…ワイヤ
3a,3b…引出部
3a1,3b1…引出底部
4a,4b…端子
41a,41b…ベース部
41a1,41b1…内方縁部
41a2,41b2…側方縁部
41a3,41b3…外方縁部
42a,42b…継線部
420…平板部
421a,421b…収容凹部
421a1…収容底部
422a,422b…突出部
43a,43b…接続部
430a,430b…実装補助部
431a,431b…側方引出部
44a,44b…実装部
5…第1コア
50…コアベース部
500…段差部
501…段差上部
51…柱状部
52…第1凹部
6…第2コア
60…本体部
61…収容孔
62a,62b…端子収容溝
63a,63b…連結溝
64…第2凹部
65…第3凹部
66…底部
7…フレーム
8…コア
8a…実装面
8b…反実装面
80…側方凹部
9…溶融物