(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188660
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】成膜方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20221214BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20221214BHJP
H01L 21/203 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
C23C14/34 K
C23C14/08 K
H01L21/203 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096878
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 翔太
(72)【発明者】
【氏名】北田 亨
(72)【発明者】
【氏名】長坂 恵一
【テーマコード(参考)】
4K029
5F103
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029BA50
4K029BC06
4K029BD01
4K029CA06
4K029EA08
4K029FA01
4K029JA01
4K029KA01
4K029KA09
5F103AA08
5F103BB22
5F103BB41
5F103BB52
5F103BB57
5F103DD30
5F103LL13
5F103NN01
5F103RR05
(57)【要約】
【課題】酸素欠陥を抑制する成膜方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板を200K以下の極低温状態に冷却する工程と、冷却された前記基板に酸化物半導体膜を成膜する工程と、を有する、成膜方法。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を200K以下の極低温状態に冷却する工程と、
冷却された前記基板に酸化物半導体膜を成膜する工程と、を有する、成膜方法。
【請求項2】
前記基板を前記極低温状態に冷却する工程は、
前記基板を冷却する第1チャンバで処理され、
前記基板に前記酸化物半導体膜を成膜する工程は、
前記基板に前記酸化物半導体膜を成膜する第2チャンバで処理される、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記基板を前記極低温状態に冷却する工程及び前記基板に前記酸化物半導体膜を成膜する工程は、
同一のチャンバで処理される、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記基板を前記極低温状態に冷却する工程は、
ゲート膜、前記ゲート膜の上にゲート誘電体膜を有する前記基板を冷却し、
前記基板に前記酸化物半導体膜を成膜する工程は、
前記ゲート誘電体膜の上に前記酸化物半導体膜を成膜する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記酸化物半導体膜は、インジウムガリウム亜鉛酸化物膜である、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
基板を200K以下の極低温状態に冷却する、第1チャンバと、
前記基板に酸化物半導体膜を成膜する、第2チャンバと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1チャンバで前記基板を200K以下の極低温状態に冷却する工程と、
前記第2チャンバで冷却された前記基板に酸化物半導体膜を成膜する工程と、を実行する、
基板処理装置。
【請求項7】
基板を載置する載置台と、
前記載置台を冷却する冷凍装置と、
スパッタするターゲットを保持するターゲットホルダと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記基板を200K以下の極低温状態に冷却しながら、前記基板に酸化物半導体膜を成膜する、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ゲート電極と、ゲート誘電体層と、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)を含む酸化物半導体層と、ソース電極と、ドレイン電極と、バックチャネル保護層と、エッチング停止層と、を含む、薄膜トランジスタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、酸化物半導体としてIGZO膜を用いた薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)は、IGZO膜中の酸素欠陥の影響で臨界電圧が負側にシフトする。また、成膜後の後処理でアニール処理をすることにより、臨界電圧を正側へシフトさせることができる。しかし、アニール処理後のTFTであっても、ゲート電圧0VにおいてTFTはオン状態である。このため、IGZO膜を用いたTFTは、ゲート電圧0Vにおいてリーク電流が発生する。または、IGZO膜を用いたTFTは、TFTをオフ状態とするためのゲート電圧が必要となる。
【0005】
上記課題に対して、一側面では、酸素欠陥を抑制する成膜方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、基板を200K以下の極低温状態に冷却する工程と、冷却された前記基板に酸化物半導体膜を成膜する工程と、を有する、成膜方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、酸素欠陥を抑制する成膜方法及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る半導体製造装置の一例の概略断面図である。
【
図2】本実施形態に係る半導体製造装置のウエハの搬送経路の一例を示した概略断面図である。
【
図3】本実施形態に係る半導体製造装置の基板処理装置の一例の概略断面図である。
【
図4】本実施形態に係る半導体製造装置の基板処理装置の一例の概略断面図である。
【
図5】本実施形態に係る成膜方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る成膜方法の他の一例を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態に係るTFTの一例を示す図である。
【
図8】参考例に係る成膜方法で酸化物半導体膜を成膜したTFTのI-V特性を示すグラフの一例である。
【
図9】本実施形態に係る成膜方法で酸化物半導体膜を成膜したTFTと参考例に係る成膜方法で酸化物半導体膜を成膜したTFTのI-V特性を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。なお、理解を容易にするため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。
【0010】
平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0011】
<半導体製造装置1>
図1は本実施形態に係る半導体製造装置(基板処理装置)の一例である半導体製造装置1の概略断面図である。半導体製造装置1は基板Wに対して複数の処理(エッチング、成膜、アッシング等の所望の処理)を施す。半導体製造装置1は、処理部2と、搬出入部3と、制御部4と、を備える。基板Wは特に限定しないが、例えば半導体ウエハ(以下では単にウエハと呼ぶ)である。
【0012】
搬出入部3は、処理部2に対しウエハを一例とする基板を搬出入する。処理部2は、ウエハに対して所望の真空処理を施す複数(本実施形態では10個)のプロセスモジュールPM1~PM10を備える。複数のプロセスモジュールPM1~PM10に対しては、第1の搬送装置11によりウエハがシリアル搬送(順次搬送)される。
【0013】
第1の搬送装置11は複数の搬送モジュールTM1~TM5を備える。搬送モジュールTM1~TM5は、それぞれ真空に保持されている平面形状が六角状の容器30a、30b、30c、30d及び30eを有する。また、搬送モジュールTM1~TM5は、それぞれ容器30a、30b、30c、30d及び30eに設けられている多関節構造の搬送機構31a、31b、31c、31d及び31eを有する。
【0014】
搬送モジュールTM1~TM5の搬送機構31a、31b、31c、31d及び31eの間には、それぞれ搬送バッファとしての受け渡し部41、42、43及び44が設けられている。搬送モジュールTM1~TM5の容器30a、30b、30c、30d及び30eは連通して一つの搬送室12を構成する。
【0015】
なお、搬送室12は図中Y方向に延びている。プロセスモジュールPM1~PM10は、開閉可能なゲートバルブGを介して搬送室12の両側に5個ずつ接続されている。プロセスモジュールPM1~PM10のゲートバルブGは、プロセスモジュールPM1~PM10に搬送モジュールTM1~TM5がアクセスする際に開かれ、所望の処理を行っている際に閉じられる。
【0016】
搬出入部3は、処理部2の一端側に接続されている。搬出入部3は、大気搬送室21と、3つのロードポート22と、アライナーモジュール23と、2つのロードロックモジュールLLM1及びLLM2と、第2の搬送装置24とを有する。大気搬送室21には、ロードポート22と、アライナーモジュール23と、ロードロックモジュールLLM1及びLLM2と、が接続されている。また、第2の搬送装置24は大気搬送室21内に設けられている。
【0017】
大気搬送室21は、図中X方向を長手方向とする直方体状をなしている。3つのロードポート22は、大気搬送室21の処理部2と反対側の長辺壁部に設けられている。ロードポート22は載置台25と搬送口26とを有する。載置台25は複数のウエハを収容する基板収容容器であるFOUP20が載置される。載置台25上のFOUP20は、搬送口26を介して大気搬送室21に密閉した状態で接続される。アライナーモジュール23は大気搬送室21の一方の短辺壁部に接続されている。アライナーモジュール23においてウエハのアライメントが行われる。
【0018】
2つのロードロックモジュールLLM1及びLLM2は、大気圧である大気搬送室21と真空雰囲気である搬送室12との間でウエハの搬送を可能にするためのものであり、大気圧と搬送室12と同程度の真空との間で圧力可変となっている。2つのロードロックモジュールLLM1及びLLM2は、それぞれ2つの搬送口を有している。一方の搬送口は大気搬送室21の処理部2側の長辺壁部にゲートバルブG2を介して接続される。他方の搬送口はゲートバルブG1を介して処理部2の搬送室12に接続されている。
【0019】
ロードロックモジュールLLM1はウエハを搬出入部3から処理部2に搬送する際に用いられる。ロードロックモジュールLLM2はウエハを処理部2から搬出入部3に搬送する際に用いられる。なお、ロードロックモジュールLLM1及びLLM2で、デガス処理等の処理を行うようにしてもよい。
【0020】
大気搬送室21内の第2の搬送装置24は、多関節構造を有しており、ロードポート22上のFOUP20と、アライナーモジュール23と、ロードロックモジュールLLM1及びLLM2と、に対するウエハの搬送を行う。具体的には、第2の搬送装置24はロードポート22のFOUP20から未処理のウエハを取り出し、アライナーモジュール23へ搬送し、アライナーモジュール23からロードロックモジュールLLM1へウエハを搬送する。また、第2の搬送装置24は、処理部2からロードロックモジュールLLM2に搬送された処理後のウエハを受け取り、ロードポート22のFOUP20へ搬送する。
図1では、第2の搬送装置24のウエハを受け取るピックが1本の例を示しているが、ピックが2本であってもよい。
【0021】
なお、上記の第1の搬送装置11と第2の搬送装置24とで、半導体製造装置1の搬送部が構成される。上記の処理部2は、搬送室12の一方側に、ロードロックモジュールLLM1側から順に、プロセスモジュールPM1、PM3、PM5、PM7及びPM9が配置される。また、処理部2は、搬送室12の他方側に、ロードロックモジュールLLM2側から順に、プロセスモジュールPM2、PM4、PM6、PM8及びPM10が配置される。第1の搬送装置11においては、ロードロックモジュールLLM1及びLLM2側から順に搬送モジュールTM1、TM2、TM3、TM4及びTM5が配置されている。
【0022】
搬送モジュールTM1の搬送機構31aは、ロードロックモジュールLLM1及びLLM2、プロセスモジュールPM1及びPM2、並びに、受け渡し部41にアクセス可能である。搬送モジュールTM2の搬送機構31bは、プロセスモジュールPM1、PM2、PM3及びPM4、並びに、受け渡し部41及び42にアクセス可能である。
【0023】
搬送モジュールTM3の搬送機構31cは、プロセスモジュールPM3、PM4、PM5及びPM6、並びに、受け渡し部42及び43にアクセス可能である。搬送モジュールTM4の搬送機構31dは、プロセスモジュールPM5、PM6、PM7及びPM8、並びに受け渡し部43及び44にアクセス可能である。搬送モジュールTM5の搬送機構31eは、プロセスモジュールPM7、PM8、PM9及びPM10、並びに、受け渡し部44にアクセス可能である。
【0024】
第2の搬送装置24及び第1の搬送装置11の搬送モジュールTM1~TM5は
図1に示すように構成されている。このため、
図2に示すように、FOUP20から取り出されたウエハは、処理部2において略U字状の経路Pに沿って一方向にシリアル搬送されて各プロセスモジュールPM1~PM10で処理され、FOUP20に戻される。すなわち、ウエハは、プロセスモジュールPM1、PM3、PM5、PM7、PM9、PM10、PM8、PM6、PM4、PM2の順にシリアル搬送されて、所望の処理がなされる。
【0025】
半導体製造装置1は、例えば、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)に用いられる積層膜(MTJ(Magnetoresistive Tunnel Junction)膜)の製造に用いることができる。MTJ膜の製造には、前洗浄処理、成膜処理、酸化処理、加熱処理、冷却処理等の複数の所望の処理が存在し、これら所望の処理のそれぞれを、プロセスモジュールPM1~PM10で行う。プロセスモジュールPM1~PM10の1つ以上がウエハを待機させる待機モジュールであってもよい。
【0026】
制御部4は半導体製造装置1の各構成部を制御する。制御部4は、例えば搬送モジュールTM1~TM5(搬送機構31a~31e)と、第2の搬送装置24と、プロセスモジュールPM1~PM10と、ロードロックモジュールLLM1及びLLM2と、搬送室12と、ゲートバルブG、G1及びG2と、を制御する。制御部4は、例えばコンピュータである。
【0027】
<基板処理装置5>
次に、プロセスモジュールPM1~PM10のいずれかに用いられる基板処理装置5について説明する。
図3は、本実施形態に係る半導体製造装置の基板処理装置の一例である基板処理装置5の概略断面図である。ここで、基板処理装置5は、基板Wを200K以下の極低温状態に冷却する装置である。
【0028】
基板処理装置5は、処理容器50の内部に、基板Wを載置する載置台60を備える。また、基板処理装置5は、冷凍熱媒体80を備える。更に、基板処理装置5は、載置台60を支持する外筒85を備える。
【0029】
載置台60は、基板Wが載置される上方の静電チャック65と、下方のプレート62と、を備える。静電チャック65は、誘電体膜67内に埋設されたチャック電極66を有する。チャック電極66には、直流電源72から所定の電位が与えられる。プレート62は、熱伝導性の高い銅(Cu)により形成される。
【0030】
載置台60は、静電チャック65を備えることにより、基板Wを静電チャック65により吸着し、載置台60の上面に基板Wを固定できる。なお、載置台60は、静電チャック65とプレート62の積層体以外にも、一つのプレートによって全体が形成されている形態であってもよいし、焼結等により全体が一体に成形されている形態であってもよい。
【0031】
また、載置台60には、静電チャック65とプレート62を上下に貫通する貫通孔63が形成されている。貫通孔63は、載置台60の下方にある隙間GAPに連通している。隙間GAPに供給された冷媒は、貫通孔63を介して載置台60(静電チャック)の上面と基板Wの下面との間に供給される。冷媒は、貫通孔63を介して載置台60(静電チャック)の上面と基板Wの下面との間に供給されることにより、冷媒や冷凍熱媒体80の有する冷熱を、効率よく基板Wに伝達することが可能になる。
【0032】
なお、
図3に示す例では、冷媒供給流路81を流通した冷媒が貫通孔63を介して基板Wの下面に供給される。また、貫通孔63を介して排出された冷媒が冷媒排出流路82を流通して排出される。冷媒の供給及び排出については、
図3に示す例に限らず、その他の冷媒の供給及び排出形態であってもよい。例えば、貫通孔63に対して冷媒供給流路81や冷媒排出流路82とは異なる独立した冷媒流路を設け、この独立した冷媒流路を介して、貫通孔63を介した冷媒の供給や排出が行われてもよい。
【0033】
載置台60を構成するプレート62の下面には、冷凍熱媒体80側に向かって突出する凸部62aが形成される。図示例の凸部62aは、載置台60の中心軸CLを取り囲む円環状の凸部である。一方、冷凍熱媒体80の上面、すなわち、載置台60の有する凸部62aと対向する面には、凸部62aが遊嵌する凹部87が形成されている。図示例の凹部87は、載置台60の中心軸CLを取り囲む円環状を有している。
【0034】
載置台60は、外筒85により支持されている。外筒85は、冷凍熱媒体80の上部の外周面を覆うように配設される。外筒85の上部が処理容器50の内部に進入し、処理容器50の内部において載置台60を支持する。外筒85は、冷凍熱媒体80の外径よりも僅かに大きい内径を有する円筒を有する。外筒85は載置台60を直接支持する。外筒85は、例えばステンレス等の金属により形成されている。
【0035】
基板処理装置5は、外筒85の外側に、略円筒状のベローズ51を備える。ベローズ51は、上下方向に伸縮自在な金属製の蛇腹構造体である。ベローズ51は、外筒85を包囲し、減圧自在な処理容器50の内部空間と処理容器50の外部空間とを分離する。
【0036】
冷凍熱媒体(コールドリンクとも称する。)80は、冷凍機(図示せず)の上に固定される。冷凍熱媒体80及び冷凍機は、載置台60を200K以下の極低温状態に冷却する冷凍装置を構成する。冷凍機は、冷凍熱媒体80を保持し、冷凍熱媒体80の上面を極低温に冷却する。冷凍機には、冷却能力の観点から、GM(Gifford-McMahon)サイクルを利用する形態が好ましい。冷凍熱媒体80の上部は処理容器50の内部に収容される。冷凍熱媒体80は、熱伝導性の高い銅(Cu)等により形成される。冷凍熱媒体80は、略円柱状を有する。冷凍熱媒体80は、載置台60の中心軸CLにその中心が一致するように配置される。
【0037】
冷凍熱媒体80は、内部に、冷凍熱媒体80と載置台60の間の隙間GAPに冷媒(冷却ガス)を供給する冷媒供給流路81と、載置台60からの伝熱により昇温した冷媒を排出する冷媒排出流路82を有する。冷媒供給流路81及び冷媒排出流路82はそれぞれ冷媒供給装置71に接続される。
【0038】
冷媒供給装置71から供給された冷媒は、冷媒供給流路81を流通し、隙間GAPに供給される。一方、隙間GAPから排出された冷媒は、冷媒排出流路82を流通し、冷媒供給装置71に排出される。なお、冷媒供給流路と冷媒排出流路が同じ流路により形成されていてもよい。載置台60を冷却するべく隙間GAPに供給される冷媒としては、高い熱伝導性を有するヘリウム(He)ガスが好適に用いられる。
【0039】
冷媒供給装置71は、制御部4に接続される。冷媒供給装置71は、設定された温度の冷媒を冷媒供給流路81に供給する。また、冷媒供給装置71は、冷媒排出流路82から戻ってきた冷媒を回収して、冷媒を設定された温度に調整して冷媒供給流路81から供給する。
【0040】
載置台60は、静電チャック65に温度センサ64を備える。温度センサ64は、温度変換器73に接続される。温度変換器73は、温度センサからの信号を温度信号に変換して、制御部4に出力する。制御部4は、温度センサ64により載置台60の温度を測定する。なお、温度センサ64は、載置台60の温度を測定する測定部の一例である。
【0041】
<基板処理装置6>
次に、プロセスモジュールPM1~PM10のいずれかに用いられる基板処理装置6について説明する。
図4は、本実施形態に係る半導体製造装置の基板処理装置の一例である基板処理装置56概略断面図である。ここで、基板処理装置6は、基板Wを200K以下の極低温状態に冷却した状態で、基板Wにインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)の酸化物半導体膜を成膜する装置である。
【0042】
基板処理装置6は、例えば、超高真空かつ極低温の雰囲気を形成し、処理ガスによる基板処理を実行する処理容器50の内部において、被処理体である半導体ウエハ等の基板Wに対して酸化物半導体膜等を形成するPVD(Physical Vaper Deposition)装置である。ここで、超高真空とは、例えば10-5Pa以下の圧力雰囲気を意味しており、極低温とは、200K以下の温度雰囲気を意味している。
【0043】
基板処理装置6は、基板処理装置5(
図3参照)と同様に、処理容器50と、処理容器50の内部において基板Wを載置する載置台60と、冷凍装置(冷凍熱媒体80及び冷凍機)と、を有する。
【0044】
処理容器50の内部において、載置台60の上方には、複数のターゲットホルダ91が固定されている。そして、各ターゲットホルダ91の下面には、異種のターゲットTが取り付けられている。
【0045】
また、処理容器50は、真空ポンプ等の排気装置(図示せず)を作動することにより、その内部が超高真空に減圧されるように構成されている。さらに、処理容器50には、処理ガス供給装置に連通するガス供給管(いずれも図示せず)を介して、スパッタ成膜に必要な処理ガス(例えばアルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、ネオン(Ne)等の希ガスや窒素(N2)ガス)が供給されるようになっている。
【0046】
ターゲットホルダ91には、プラズマ発生用電源(図示せず)からの交流電圧もしくは直流電圧が印加される。プラズマ発生用電源からターゲットホルダ91及びターゲットTに交流電圧が印加されると、処理容器50の内部においてプラズマが発生し、処理容器50の内部にある希ガス等がイオン化され、イオン化した希ガス元素等によりターゲットTがスパッタリングされる。スパッタリングされたターゲットTの原子もしくは分子は、ターゲットTに対向して載置台60に保持されている基板Wの表面に堆積する。
【0047】
なお、基板処理装置6は、載置台60を回転させる回転装置(図示せず)、載置台60を昇降させる第一昇降装置(図示せず)、冷凍装置(冷凍熱媒体80及び冷凍機)を昇降させる第二昇降装置(図示せず)を有していてもよい。
【0048】
<成膜方法>
次に、本実施形態に係る成膜方法について、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態に係る成膜方法の一例を示すフローチャートである。ここでは、薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)を形成する際の酸化物半導体膜の成膜方法を説明する。
【0049】
ステップS101において、ゲート電極及びゲート誘電体膜が形成された基板Wを準備する。まず、半導体製造装置1のプロセスモジュールPM1~PM10のいずれかに用いられるゲート電極成膜装置において、基板Wにゲート電極が形成される。次に、半導体製造装置1のプロセスモジュールPM1~PM10のいずれかに用いられるゲート誘電体膜成膜装置において、ゲート電極の上にゲート誘電体膜が形成される。ゲート電極及びゲート誘電体膜が形成された基板Wは、搬送モジュールTM1~TM5のいずれかによって、
図3に示す基板処理装置5(第1チャンバ)に搬送され、載置台60に載置される。
【0050】
ステップS102において、基板Wを冷却する。ここでは、冷凍装置(冷凍熱媒体80及び冷凍機)を用いて、載置台60に載置された基板Wを200K以下の極低温状態に冷却する。
【0051】
ステップS102において極低温状態に冷却された基板Wは、搬送モジュールTM1~TM5のいずれかによって、半導体製造装置1のプロセスモジュールPM1~PM10のいずれかに用いられる成膜装置(第2チャンバ)に搬送される。
【0052】
ステップS103において、200K以下の極低温状態に冷却された基板Wにインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)を含む酸化物半導体膜を成膜する。成膜装置は、例えばPVD装置である。搬送された成膜装置で酸化物半導体膜が成膜される。
【0053】
その後、酸化物半導体膜が成膜された基板Wは、搬送モジュールTM1~TM5のいずれかによって、半導体製造装置1のプロセスモジュールPM1~PM10のいずれかに搬送され、酸化物半導体膜の上にソース電極、ドレイン電極等が形成され、基板WにTFTが形成される。また、基板Wは、半導体製造装置1のプロセスモジュールPM1~PM10のいずれか、または、半導体製造装置1外のアニール装置に搬送され、後アニール処理が施される。これにより、ステップS103において成膜された非結晶の酸化物半導体膜がアニール処理される。
【0054】
次に、本実施形態に係る他の成膜方法について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係る成膜方法の他の一例を示すフローチャートである。ここでは、TFTを形成する際の酸化物半導体膜の成膜方法を説明する。
【0055】
ステップS201において、ゲート電極及びゲート誘電体膜が形成された基板Wを準備する。まず、半導体製造装置1のプロセスモジュールPM1~PM10のいずれかに用いられるゲート電極成膜装置において、基板Wにゲート電極が形成される。次に、半導体製造装置1のプロセスモジュールPM1~PM10のいずれかに用いられるゲート誘電体膜成膜装置において、ゲート電極の上にゲート誘電体膜が形成される。ゲート電極及びゲート誘電体膜が形成された基板Wは、搬送モジュールTM1~TM5のいずれかによって、
図4に示す基板処理装置6(第2チャンバ)に搬送され、載置台60に載置される。
【0056】
ステップS202において、基板Wを200K以下の極低温状態に冷却しながら、基板Wにインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)を含む酸化物半導体膜を成膜する。ここでは、冷凍装置(冷凍熱媒体80及び冷凍機)を用いて、載置台60に載置された基板Wを200K以下の極低温状態に冷却するとともに、ターゲットTをスパッタして、載置台60に保持されている基板Wの表面に酸化物半導体膜を成膜する。
【0057】
その後、酸化物半導体膜が成膜された基板Wは、搬送モジュールTM1~TM5のいずれかによって、半導体製造装置1のプロセスモジュールPM1~PM10のいずれかに搬送され、酸化物半導体膜の上にソース電極、ドレイン電極等が形成され、基板WにTFTが形成される。また、基板Wは、半導体製造装置1のプロセスモジュールPM1~PM10のいずれか、または、半導体製造装置1外のアニール装置に搬送され、後アニール処理が施される。これにより、ステップS202において成膜された非結晶の酸化物半導体膜がアニール処理される。
【0058】
なお、
図5に示すフローでは、ステップS102における基板Wの冷却と、ステップS103における酸化物半導体膜の成膜と、を異なるチャンバで行うものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、基板処理装置6(
図4参照)を用いて、ステップS102における基板Wの冷却と、ステップS103における酸化物半導体膜の成膜と、を同一のチャンバで行ってもよい。
【0059】
例えば、ステップS102において、第二昇降装置(図示せず)を用いて冷凍装置(冷凍熱媒体80及び冷凍機)を上昇させ、プレート62と冷凍熱媒体80とを熱的に接続し、載置台60に載置された基板Wを冷却する。
【0060】
そして、ステップS103において第二昇降装置(図示せず)を用いて冷凍装置(冷凍熱媒体80及び冷凍機)を下降させ、プレート62と冷凍熱媒体80との接続を解除し、回転装置(図示せず)を用いて載置台60を回転させながらスパッタリングを行い、基板Wに酸化物半導体膜を成膜してもよい。
【0061】
<TFT>
次に、酸化物半導体膜340を有するTFT300の一例について、
図7を用いて説明する。
図7は、一実施形態に係るTFT300の一例を示す図である。
図7(a)はTFT300の平面図を示し、
図7(a)はTFT300の断面図を示す。
【0062】
TFT300は、基板310と、ゲート電極320と、ゲート誘電体膜330と、酸化物半導体膜340と、ゲート電極350と、ドレイン電極360と、ソース電極370と、絶縁膜380と、を有する。
【0063】
基板310は、例えば、シリコン基板を窒化して形成される。
【0064】
ゲート電極320は、基板310上に形成される導電膜である。ゲート電極320は、例えば、TiNで形成される。
【0065】
ゲート誘電体膜330は、ゲート電極320の上に形成される誘電体膜である。ゲート誘電体膜330は、例えば、SiCN、AlOを積層して形成される。
【0066】
酸化物半導体膜340は、ゲート誘電体膜330の上に形成される酸化物半導体膜である。酸化物半導体膜340は、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)で形成される。なお、本実施形態のTFT300は、
図5及び
図6のフローチャートに示すように、極低温状態で酸化物半導体膜340が成膜される。
【0067】
ゲート電極350は、ゲート電極320と接続するように形成される。ドレイン電極360及びソース電極370は、酸化物半導体膜340の上に形成される。また、ドレイン電極360及びソース電極370は、ドレイン電極360とソース電極370との間にチャネル390を形成するように、離間して形成される。なお、ゲート電極350、ドレイン電極360及びソース電極370は、例えば、TiN、Wで形成される。
【0068】
絶縁膜380は、酸化物半導体膜340の上に形成される絶縁膜である。絶縁膜380は、例えば、SiOで形成される。なお、ゲート電極350、ドレイン電極360及びソース電極370は、上端が絶縁膜380の上面から露出するように形成されている。
【0069】
<TFTのI-V特性>
次に、TFT300のI-V特性について、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0070】
まず、参考例に係る成膜方法で酸化物半導体膜340を成膜したTFT300のI-V特性について、
図8を用いて説明する。
図8は、参考例に係る成膜方法で酸化物半導体膜340を成膜したTFT300のI-V特性を示すグラフの一例である。横軸は、ゲート電圧Vgを示し、縦軸はドレイン電流Idを示す。
【0071】
また、
図8に示す参考例に係るTFT300では、常温(室温)で酸化物半導体膜340を成膜した。また、
図8に示す参考例に係るTFT300では、TFT300を形成後に、基板Wをアニール処理を施した。アニール処理前の参考例に係るTFT300のI-V特性を破線で示し、アニール処理後の参考例に係るTFT300のI-V特性を実線で示す。
【0072】
アニール処理前のTFT300のI-V特性(破線)は、酸化物半導体膜340の酸素欠陥の影響で臨界電圧が負側にシフトする。これに対し、アニール処理後のTFT300のI-V特性(実線)では、臨界電圧をアニール処理前よりも正側へシフトさせることができる。しかし、アニール処理後のTFT300においても、ゲート電圧Vgが0Vにおけるドレイン電流Idが生じており、TFT300はオン状態である。
【0073】
このため、参考例に係るTFT300では、ゲート電圧Vgが0Vにおいてリーク電流が発生する。または、参考例に係るTFT300では、TFT300をオフ状態とするためのオフセット電圧をゲート電圧Vgに印加する必要がある。
【0074】
次に、本実施形態に係る成膜方法で酸化物半導体膜340を成膜したTFT300のI-V特性について、参考例と対比しつつ、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態に係る成膜方法で酸化物半導体膜340を成膜したTFT300と参考例に係る成膜方法で酸化物半導体膜340を成膜したTFT300のI-V特性を示すグラフの一例である。横軸は、ゲート電圧Vgを示し、縦軸はドレイン電流Idを示す。
【0075】
また、
図9に示す本実施形態に係るTFT300では、100Kの極低温状態で酸化物半導体膜340を成膜し、TFT300を形成後に基板Wをアニール処理を施した。また、
図9に示す参考例に係るTFT300では、常温(室温)で酸化物半導体膜340を成膜し、TFT300を形成後に基板Wをアニール処理を施した。アニール処理後の参考例に係るTFT300のI-V特性を破線で示し、アニール処理後の本実施形態に係るTFT300のI-V特性を実線で示す。
【0076】
本実施形態に係る成膜方法では、200K以下の極低温状態で酸化物半導体膜340を成膜する。これにより、基板Wにスパッタリングで酸化物半導体膜340を成膜する際、酸化物半導体膜340から酸素原子(O)が抜けることを抑制し、酸化物半導体膜340の酸素欠陥を低減することができる。よって、
図9に示すように、アニール処理後の本実施形態に係るTFT300(実線参照)では、アニール処理後の参考例に係るTFT300(破線参照)と比較して、臨界電圧を正側にシフトさせることができる。
【0077】
また、アニール処理後の本実施形態に係るTFT300では、ゲート電圧Vgが0Vにおいてリーク電流(ドレイン電流Id)の発生を防止することができる。即ち、本実施形態に係るTFT300は、ノーマリーオフのTFTとすることができる。また、本実施形態に係るTFT300では、オフセット電圧の印加を不要とすることができる。
【0078】
なお、酸化物半導体膜340を成膜する際の温度は、200K以下の極低温状態が好ましい。これにより、酸化物半導体膜340の酸素欠陥を抑制することができる。また、酸化物半導体膜340を成膜する際の温度は、100K以上150K以下がより好ましい。これにより、酸化物半導体膜340の酸素欠陥を更に抑制することができる。
【0079】
以上、成膜方法及び基板処理装置を上記実施形態により説明したが、本発明に係る成膜方法及び基板処理装置は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 半導体製造装置(基板処理装置)
4 制御部
5 基板処理装置
6 基板処理装置
50 処理容器(チャンバ)
60 載置台
80 冷凍熱媒体
91 ターゲットホルダ
310 基板
320 ゲート電極
330 ゲート誘電体膜
340 酸化物半導体膜
350 ゲート電極
360 ドレイン電極
370 ソース電極
380 絶縁膜
390 チャネル
T ターゲット
W 基板
PM1~PM10 プロセスモジュール