IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 塩野香料株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人 川崎学園の特許一覧

特開2022-188669コロナウイルス感染症予防用香料組成物及び結合阻害剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188669
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】コロナウイルス感染症予防用香料組成物及び結合阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20221214BHJP
   A01N 31/14 20060101ALI20221214BHJP
   A01N 31/04 20060101ALI20221214BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20221214BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/121 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 36/10 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 36/54 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/08 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C11B9/00 Q
A01N31/14
A01N31/04
A01N35/02
A01P1/00
C11B9/00 J
C11B9/00 L
C11B9/00 D
A61P31/14
A61K31/11
A61K31/121
A61K31/365
A61K31/045
A61K36/10
A61K36/61
A61K36/54
A61K36/23
A61K31/08
A61K31/341
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096893
(22)【出願日】2021-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000121512
【氏名又は名称】塩野香料株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597039984
【氏名又は名称】学校法人 川崎学園
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野見山 謙太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真哉
(72)【発明者】
【氏名】山内 明
(72)【発明者】
【氏名】西村 泰光
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
4C206
4H011
4H059
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA03
4C086BA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA08
4C086NA01
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC41
4C088AA11
4C088AB33
4C088AB40
4C088AB57
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088CA03
4C088NA01
4C088NA14
4C088ZB33
4C088ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA09
4C206CA21
4C206CB02
4C206CB09
4C206CB14
4C206CB18
4C206KA01
4C206KA04
4C206KA08
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA13
4C206NA01
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC41
4H011AA04
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB05
4H059BA14
4H059BA23
4H059BA24
4H059BA36
4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】香料成分を用いたコロナウイルス感染症予防用香料組成物及び結合阻害剤を提供する。
【解決手段】分子量200以下である特定構造を有する第1の香料成分及びそのアセタール化合物、分子量200以下である特定構造を有する第2の香料成分及びそのアセタール化合物、10-Undecenal、Methylβ-naphthyl ketone、2-Methyl-3-(3,4-Methylenedioxyphenyl)Propanal、γ-Nonalactone、Citral、dihydroactinidiolide、α-fenchol、(E)-4-decenal、5-(hydroxymethyl)furfural、Shogaol、Oakmoss absolute、Clove bud oil、Bay leaf oil並びにCaraway oilからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表され且つ分子量200以下である第1の香料成分及びそのアセタール化合物、一般式(2)で表され且つ分子量200以下である第2の香料成分及びそのアセタール化合物、10-Undecenal、Methyl β-naphthyl ketone、2-Methyl-3-(3,4-Methylenedioxyphenyl)Propanal、γ-Nonalactone、Citral、dihydroactinidiolide、α-fenchol、(E)-4-decenal、5-(hydroxymethyl)furfural、Shogaol、Oakmoss absolute、Clove bud oil、Bay leaf oil並びにCaraway oilからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするコロナウイルス感染症予防用香料組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rはヒドロキシ基、ホルミル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のヒドロキシアルケニル基、炭素数1~6のホルミルアルケニル基又は炭素数1~6のアルキルエステル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~6のアルケニル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【化2】
(一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示し、Rは炭素数1~6のアルケニル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示す。)
【請求項2】
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)とコロナウイルス(SARS-CoV-2)との結合を阻害する結合阻害剤であって、
一般式(1)で表され且つ分子量200以下である第1の香料成分及びそのアセタール化合物、一般式(2)で表され且つ分子量200以下である第2の香料成分及びそのアセタール化合物、10-Undecenal、Methyl β-naphthyl ketone、2-Methyl-3-(3,4-Methylenedioxyphenyl)Propanal、γ-Nonalactone、Citral、dihydroactinidiolide、α-fenchol、(E)-4-decenal、5-(hydroxymethyl)furfural、Shogaol、Oakmoss absolute、Clove bud oil、Bay leaf oil並びにCaraway oilからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする結合阻害剤。
【化3】
(一般式(1)中、Rはヒドロキシ基、ホルミル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のヒドロキシアルケニル基、炭素数1~6のホルミルアルケニル基又は炭素数1~6のアルキルエステル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~6のアルケニル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【化4】
(一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示し、Rは炭素数1~6のアルケニル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コロナウイルス感染症予防用香料組成物及び結合阻害剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2019年に発生した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)として「パンデミック」と呼ばれる世界的大流行を引き起こしており、2021年現在でも猛威をふるっている。そのため、新型コロナウイルス感染予防及び治療に対する有効な医薬品や予防薬の早期開発が望まれている。
【0003】
新型コロナウイルスがヒト細胞に侵入する初期段階では、当該ウイルスの表面に存在するタンパク質(スパイクタンパク質)がヒト細胞表面に存在するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合して体内に侵入することで感染に至ることが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ACE2(蛋白質)、ACE2と特定の阻害剤との組み合わせ、組換えACE2(組換え蛋白質)、ACE2をコードする核酸(DNA等)等を医薬に使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008-540600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本出願人は、これまでの検討により、フレーバー(食品香料)やフレグランス(香水、コロン、室内芳香剤などの香粧品)等の原料として用いられる香料素材(香料成分)の香料以外の用途や機能について種々見出してきた。
【0007】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、香料成分を用いたコロナウイルス感染症予防用香料組成物及び結合阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の香料成分やその組み合わせがアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)とコロナウイルス(SARS-CoV-2)との結合を阻害することを見出し、さらなる検討を重ねて本発明を完成した。換言すると、本発明は、コロナウイルス感染症(COVID-19)予防という香料成分の新たな用途を見出したものである。本開示は、具体的には以下のとおりである。
【0009】
なお、本明細書において、コロナウイルスには、スパイクタンパク質の遺伝情報の一部が変異して、性質の一部が変化した変異ウイルス(変異株:特定のRBDを指して変異型ともいう)も含まれる。つまり、本開示の香料組成物及び結合阻害剤は、新型コロナウイルスの従来株(特定のRBDを指して従来型ともいう)だけでなく、変異株に対しても好適に適用でき、有用である。なお、変異株としては、スパイクタンパク質に、N501Y、E484K、L452R、P681R、E484Q等と呼ばれる変異のある変異ウイルス等が挙げられる。これらの変異株は、Global Initiative on Sharing All Influenza Data (GISAID)にも登録されている変異株である。従来株はSクレードと呼ばれる株(A.1 - A.6系統)とされている。N501Yは英国株VOC-202012/01(B.1.1.7系統)、南アフリカ株501Y.V2(B.1.351系統)、ブラジル501Y.V3(P.1系統)、フィリピン株(P.3系統)などでみられる。L452はインド株(B.1.617系統)、米国株(B.1.427/B.1.429系統)などでみられる。
【0010】
本開示のコロナウイルス感染症予防用香料組成物は、
・一般式(1):
【0011】
【化1】
【0012】
(一般式(1)中、Rはヒドロキシ基、ホルミル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のヒドロキシアルケニル基、炭素数1~6のホルミルアルケニル基又は炭素数1~6のアルキルエステル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~6のアルケニル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
で表され且つ分子量200以下である第1の香料成分及びそのアセタール化合物、
・一般式(2):
【0013】
【化2】
【0014】
(一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示し、Rは炭素数1~6のアルケニル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示す。)
で表され且つ分子量200以下である第2の香料成分及びそのアセタール化合物、
・10-Undecenal、Methyl β-naphthyl ketone、2-Methyl-3-(3,4-Methylenedioxyphenyl)Propanal、γ-Nonalactone、Citral、dihydroactinidiolide、α-fenchol、(E)-4-decenal、5-(hydroxymethyl)furfural、Shogaol、Oakmoss absolute、Clove bud oil、Bay leaf oil並びにCaraway oil
からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする。
【0015】
本開示の結合阻害剤は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)とコロナウイルス(SARS-CoV-2)との結合を阻害する結合阻害剤であり、
・前記一般式(1)で表され且つ分子量200以下である第1の香料成分及びそのアセタール化合物、
・前記一般式(2)で表され且つ分子量200以下である第2の香料成分及びそのアセタール化合物、
・10-Undecenal、Methyl β-naphthyl ketone、2-Methyl-3-(3,4-Methylenedioxyphenyl)Propanal、γ-Nonalactone、Citral、dihydroactinidiolide、α-fenchol、(E)-4-decenal、5-(hydroxymethyl)furfural、Shogaol、Oakmoss absolute、Clove bud oil、Bay leaf oil並びにCaraway oil
からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、香料成分を用いたコロナウイルス感染症予防用香料組成物及び結合阻害剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0018】
<コロナウイルス感染症予防用香料組成物>
本開示のコロナウイルス感染症予防用香料組成物(以下、単に「香料組成物」ともいう。)は、以下に示す特定の香料成分を含有することで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質(その受容体結合ドメイン(RBD))がヒトのアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合するのを阻害する(以下、香料組成物が発現する活性を「RBD-ACE2結合阻害活性」という。)。即ち、この香料組成物は、SARS-CoV-2が体内に侵入するのを阻害、抑制できるため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防が期待できる。換言すると、本開示の香料組成物は、コロナウイルス感染症の予防に用いることができる。
【0019】
ところで、コロナウイルス感染症の予防に関しては、ワクチンの接種により達成できると考えられるものの、現状では、ワクチンの接種は安全性や供給量に不安がある。また、ワクチンは大変高価である。
【0020】
一方、本開示の香料組成物であれば、有効成分として含有する香料成分は、フレーバーやフレグランス等の香料素材として利用され安全性が実証されており、供給量が問題になることもなく、安価である。このように、この香料組成物であれば、人体への応用、原料の確保や製品の流通等の点で有利である。
【0021】
また、本開示の香料組成物であれば、有効成分として含有する香料成分の吸入が可能であり、吸入による香料成分の投与方法や投与装置も簡易である。そのため、香料成分の吸入投与は、呼吸器系へのSARS-CoV-2の感染を阻害する予防方法又は予防薬の投与方法として理に適っているといえる。
【0022】
(特定の香料成分)
本開示の香料組成物は、有効成分として、以下に示す種々の香料成分の少なくとも1種を含有する。つまり、香料組成物は、有効成分として、特定の香料成分1種のみを含有するものでもよく、特定の香料成分を組み合わせて複数成分を含有するものでもよい。
【0023】
[一般式(1)で表される第1の香料成分]
特定の香料成分の一つとして、一般式(1):
【0024】
【化3】
【0025】
で表される第1の香料成分が挙げられる。第1の香料成分は、ベンゼン環を有する香料化合物(合成香料)である。
【0026】
一般式(1)中、Rはヒドロキシ基〔-OH〕、ホルミル基〔-CHO〕、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルケニル基、炭素数1~6のホルミルアルケニル基又は炭素数1~6のアルキルエステル基を示す。
【0027】
本明細書において、「エーテル結合を有していてもよい」置換基とは、エーテル結合を有する置換基〔-O-置換基〕又はエーテル結合を有しない置換基(この場合、単に「置換基」と記載する)をいう。
【0028】
本明細書において、「炭素数1~6のヒドロキシアルキル基」又は「炭素数1~6のヒドロキシアルケニル基」とは、アルキル基又はアルケニル基のいずれかの炭素原子にヒドロキシ基が結合した(いずれかの水素原子がヒドロキシ基で置換された)炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルケニル基をいう。
【0029】
本明細書において、炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分枝鎖状の飽和非環式炭化水素基が挙げられる。アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0030】
本明細書において、炭素数1~6のアルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(1‐プロペニル、2-プロペニル(アリル基)等)、イソプロペニル基(1-メチルエテニル基)、ブテニル基、1-メチルアリル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の直鎖状又は分枝鎖状の、二重結合を有する不飽和炭化水素基を示す。アルケニル基は置換基を有していてもよい。
【0031】
本明細書において、「炭素数1~6のホルミルアルケニル基」とは、アルケニル基のいずれかの炭素原子にホルミル基が結合した(いずれかの水素原子がホルミル基で置換された)炭素数1~6のアルケニル基をいう。
【0032】
本明細書において、「炭素数1~6のアルキルエステル基」とは、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するエステル基をいう。
【0033】
の中では、ヒドロキシ基、ホルミル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6の直鎖状ヒドロキシアルキル基、炭素数1~6の直鎖状ヒドロキシアルケニル基、炭素数1~6の直鎖状ホルミルアルケニル基及び炭素数1~6の直鎖状アルキルエステル基が好ましく、ヒドロキシ基、ホルミル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~4の直鎖状ヒドロキシアルキル基、炭素数2~4の直鎖状ヒドロキシアルケニル基、炭素数1~4の直鎖状ホルミルアルケニル基及び炭素数1~3の直鎖状アルキルエステル基〔-C(=O)O-(CH-CH(n:1又は2)〕がより好ましく、ヒドロキシ基、ホルミル基、炭素数1~3の直鎖状ヒドロキシアルキル基〔-(CH-OH(n:1~3)〕、炭素数1~3の直鎖状ホルミルアルケニル基及び炭素数1又は2の直鎖状アルキルエステル基がさらに好ましく、ヒドロキシ基、ホルミル基、炭素数2又は3の直鎖状ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基)、ホルミルエテニル基〔-CH=CH-CHO〕及びメチルエステル基〔-C(=O)O-CH〕がさらに一層好ましい。
【0034】
一般式(1)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基〔-NH〕又は炭素数1~6のアルコキシ基〔-OR〕を示す。Rの中では、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基及び炭素数1~3の直鎖状アルコキシ基が好ましく、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基及び炭素数1又は2のアルコキシ基がより好ましく、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基及びメトキシ基がさらに好ましい。
【0035】
一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。Rの中では、水素原子及び炭素数1~3の直鎖状アルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0036】
一般式(1)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~6のアルケニル基を示す。Rの中では、水素原子、ヒドロキシ基及び炭素数1~6の直鎖状アルケニル基が好ましく、水素原子及び炭素数2~4の直鎖状アルケニル基がより好ましく、水素原子及び直鎖状プロペニル基(アリル基)がさらに好ましい。
【0037】
一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。Rの中では、水素原子及び炭素数1~3の直鎖状アルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
【0038】
一般式(1)において、Rがヒドロキシ基のときのR~Rの組み合わせは、好ましくはRが炭素数1~3の直鎖状アルコキシ基、Rが水素原子、Rが炭素数1~6の直鎖状アルケニル基、Rが水素原子であり、より好ましくはRが炭素数1又は2のアルコキシ基、Rが水素原子、Rが炭素数2~4の直鎖状アルケニル基、Rが水素原子であり、さらに好ましくはRがメトキシ基、Rが水素原子、Rが直鎖状プロペニル基(アリル基)、Rが水素原子である。
【0039】
一般式(1)において、Rがホルミル基のときのR~Rの組み合わせは、好ましくはRがヒドロキシ基、R~Rが水素原子である。
【0040】
一般式(1)において、Rがエーテル結合を有していてもよい炭素数1~6の直鎖状ヒドロキシアルキル基のときのR~Rの組み合わせは、好ましくはR~Rが水素原子である。
【0041】
一般式(1)において、Rが炭素数1~6の直鎖状ヒドロキシアルケニル基のときのR~Rの組み合わせは、好ましくはR~Rが水素原子である。
【0042】
一般式(1)において、Rが炭素数1~6の直鎖状ホルミルアルケニル基のときのR~Rの組み合わせは、好ましくはR~Rが水素原子である。
【0043】
一般式(1)において、Rが炭素数1~6の直鎖状アルキルエステル基のときのR~Rの組み合わせは、好ましくはRがヒドロキシ基又はアミノ基、Rが水素原子又は炭素数1~3の直鎖状アルキル基、Rが水素原子又はヒドロキシ基、Rが水素原子又は炭素数1~3の直鎖状アルキル基であり、より好ましくはRがヒドロキシ基又はアミノ基、Rが水素原子又はメチル基、Rが水素原子又はヒドロキシ基、Rが水素原子又はメチル基であり、さらに好ましくはRがアミノ基、R~Rが水素原子である。
【0044】
第1の香料成分の分子量は200以下であり、好ましくは180以下、より好ましくは170以下、さらに好ましくは160以下、さらに一層好ましくは140以下である。
【0045】
分子量200以下である第1の香料成分の具体例としては、以下の香料化合物(合成香料)が挙げられる。
68(以下の表中の「No.」(番号)を示す。以下同様。):β-Phenylethyl alcohol(2-フェニルエチルアルコール)、一般式(1)中、Rはヒドロキシエチル基、R~Rは水素原子である。
83:Methyl anthranilate(アントラニル酸メチル、2-アミノ安息香酸メチル)、一般式(1)中、Rはメチルエステル基、Rはアミノ基、R~Rは水素原子である。
85:Eugenol(オイゲノール)、一般式(1)中、Rはヒドロキシ基、Rはメトキシ基、Rは水素原子、Rは直鎖状プロペニル基(アリル基)、Rは水素原子である。
86:Cinnamaldehyde(シンナムアルデヒド)、一般式(1)中、Rはホルミルエテニル基、R~Rは水素原子である。
91:Methyl atrarate(アトラル酸、3,6-ジメチル-2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル)、一般式(1)中、Rはメチルエステル基、Rはヒドロキシ基、Rはメチル基、Rはヒドロキシ基、Rはメチル基である。
135:Cinnamyl alcohol(シンナミルアルコール)、一般式(1)中、Rは直鎖状ヒドロキシプロペニル基、R~Rは水素原子である。
320:2-phenoxyethanol(2-フェノキシエタノール)、一般式(1)中、Rはエーテル結合を有するヒドロキシエチル基〔-O(CH)OH〕、R~Rは水素原子である。
321:benzyl alcohol(ベンジルアルコール)、一般式(1)中、Rはヒドロキシメチル基、R~Rは水素原子である。
322:3-phenyl-1-propanol(3-フェニル-1-プロパノール)、一般式(1)中、Rはヒドロキシプロピル基、R~Rは水素原子である。
324:2-hydroxybenzaldehyde(2-ヒドロキシベンズアルデヒド、salicylaldehyde(サリチルアルデヒド)、一般式(1)中、Rはホルミル基、Rはヒドロキシ基、R~Rは水素原子である。
なお、第1の香料成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
第1の香料成分の中では、入手性、コスト、安全性及びRBD-ACE2結合阻害活性の観点から、68:β-Phenylethyl alcohol、83:Methyl anthranilate、85:Eugenol、86:Cinnamaldehyde、91:Methyl atrarate、321:benzyl alcohol、322:3-phenyl-1-propanol及び324:2-hydroxybenzaldehydeが好ましく、68:β-Phenylethyl alcohol、83:Methyl anthranilate、85:Eugenol、86:Cinnamaldehyde、322:3-phenyl-1-propanol及び324:2-hydroxybenzaldehydeがより好ましく、68:β-Phenylethyl alcohol、86:Cinnamaldehyde、322:3-phenyl-1-propanol及び324:2-hydroxybenzaldehydeがさらに好ましく、324:2-hydroxybenzaldehydeがさらに一層好ましい。
【0047】
第1の香料成分は、前記で例示した香料成分の誘導体であってもよい。香料成分の誘導体としては、同一炭素原子が2個のエーテル結合をしたような構造をもつジアルコキシ化合物や、アルコキシ基の一方をヒドロキシ基で置換したヘミアセタール等のアセタール化合物等が挙げられる。
【0048】
[一般式(2)で表される第2の香料成分]
特定の香料成分の一つとして、一般式(2):
【0049】
【化4】
【0050】
で表される第2の香料成分が挙げられる。第2の香料成分は、シクロヘキセン環を有する香料化合物(合成香料)である。
【0051】
一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示す。Rの中では、炭素数1~3の直鎖状アルキル基及び炭素数1~3の直鎖状ヒドロキシアルキル基〔-(CH-OH(n:1~3)〕が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基及び炭素数1又は2のヒドロキシアルキル基がより好ましく、メチル基及びヒドロキシメチル基がさらに好ましい。
【0052】
一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルケニル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示す。Rの中では、炭素数1~6の分岐鎖状アルケニル基及び炭素数1~6の分岐鎖状ヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数2~4の分岐鎖状アルケニル基及び炭素数2~4の分岐鎖状ヒドロキシアルキル基がより好ましく、イソプロペニル基及びヒドロキシイソプロピル基〔-CH(CH)CHOH〕がさらに好ましい。
【0053】
一般式(2)において、Rが炭素数1~6のアルキル基のときのRは、好ましくは炭素数1~6の分岐鎖状ヒドロキシアルキル基であり、より好ましくは炭素数2~4の分岐鎖状ヒドロキシアルキル基であり、さらに好ましくはヒドロキシイソプロピル基である。
【0054】
一般式(2)において、Rが炭素数1~6のヒドロキシアルキル基のときのRは、好ましくは炭素数1~6の分岐鎖状アルケニル基であり、より好ましくは炭素数2~4の分岐鎖状アルケニル基であり、さらに好ましくはイソプロペニル基である。
【0055】
一般式(2)で表される第2の香料成分の分子量は200以下であり、好ましくは180以下、より好ましくは160以下である。
【0056】
分子量200以下である第2の香料成分の具体例としては、以下の香料化合物(合成香料)が挙げられる。
303:perilla alcohol(ぺリリルアルコール、p-1,8-menthadien-7-ol(p-メンタ-1,8-ジエン-7-オール)、一般式(2)中、Rはヒドロキシメチル基、Rはイソプロペニル基である。
323:p-1-menthen-9-ol(1-p-メンテン-9-オール)、一般式(2)中、Rはメチル基、Rはヒドロキシイソプロピル基である。
なお、第2の香料成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
第2の香料成分の中では、入手性、コスト、安全性及びRBD-ACE2結合阻害活性の観点から、303:perilla alcoholが好ましい。
【0058】
第2の香料成分は、前記で例示した香料成分の誘導体であってもよい。香料成分の誘導体としては、同一炭素原子が2個のエーテル結合をしたような構造をもつジアルコキシ化合物や、アルコキシ基の一方をヒドロキシ基で置換したヘミアセタール等のアセタール化合物等が挙げられる。
【0059】
[第3の香料成分]
特定の香料成分の一つとして、以下に示す第3の香料成分が挙げられる。第3の香料成分は、前記した第1及び第2の香料成分以外の香料化合物(合成香料)である。
【0060】
第3の香料成分の具体例としては、以下の香料化合物(合成香料)が挙げられる。
60:Aldehyde. C11(Lenic)(10-Undecenal、10-ウンデセナール)
81:Methyl β-naphthyl ketone(メチルβ-ナフチルケトン)
105:Helional(登録商標):2-Methyl-3-(3,4-Methylenedioxyphenyl)Propanal〔2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)プロパナール〕
119:Aldehyde. C18(γ-Nonalactone、γ-ノナラクトン)
125:Citral(シトラール)
242:dihydroactinidiolide(ジヒドロアクチニジオリド)
304:α-fenchol(α-フェンコール、α-fenchyl alcohol(α-フェンチルアルコール))
306:(E)-4-decenal((E)-4-デセナール)
317:5-(hydroxymethyl)furfural(5-(ヒドロキシメチル)フルフラール)
329:Shogaol(ショーガオール)
なお、第3の香料成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
第3の香料成分の中では、入手性、コスト、安全性及びRBD-ACE2結合阻害活性の観点から、60:10-Undecenal、119:γ-Nonalactone、242:dihydroactinidiolide、317:5-(hydroxymethyl)furfural及び329:Shogaolが好ましく、317:5-(hydroxymethyl)furfural及び329:Shogaolがより好ましい。
【0062】
第3の香料成分は、前記で例示した香料成分の誘導体であってもよい。香料成分の誘導体としては、同一炭素原子が2個のエーテル結合をしたような構造をもつジアルコキシ化合物や、アルコキシ基の一方をヒドロキシ基で置換したヘミアセタール等のアセタール化合物等が挙げられる。
【0063】
[第4の香料成分]
特定の香料成分の一つとして、以下に示す第4の香料成分が挙げられる。第4の香料成分は、前記した第1~第3の香料成分(合成香料)とは異なり、天然香料(精油・エッセンシャルオイルと呼ばれる天産品からの抽出物)であり、フレーバー(食品香料)やフレグランス(香粧品:香水・芳香剤)等の香料製品用素材として広く使用されている。
【0064】
第4の香料成分の具体例としては、以下の天然香料が挙げられる。
11:Oakmoss absolute(オークモスAbs.)、主成分:methyl everninate、methyl β-orcinol、carboxylate
12:Clove bud oil(チョウジ花油)、主成分:eugenol、acetoeugenol、β-caryophyllene
14:Bay leaf oil(ベイリーフ油)、主成分:eugenol、β-pinene、methyl eugenol
22:Caraway oil(キャラウェイ油)、主成分:d-carvone、d-limonene、carveol
なお、第4の香料成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0065】
第4の香料成分の中では、入手性、コスト、安全性及びRBD-ACE2結合阻害活性の観点から、11:Oakmoss absolute及び12:Clove bud oilが好ましい。
【0066】
第1~第4の香料成分の中では、入手性、コスト、安全性及びRBD-ACE2結合阻害活性の観点から、11:Oakmoss abs.、12:Clove bud oil、14:Bay leaf oil、22:Caraway oil、60:10-Undecenal、68:β-Phenylethyl alcohol、83:Methyl anthranilate、85:Eugenol、86:Cinnamaldehyde、119:γ-Nonalactone、242:dihydroactinidiolide、303:perilla alcohol、317:5-(hydroxymethyl)furfural、321:benzyl alcohol、322:3-phenyl-1-propanol、324:2-hydroxybenzaldehyde及び329:Shogaolが好ましく、11:Oakmoss abs.、12:Clove bud oil、68:β-Phenylethyl alcohol、83:Methyl anthranilate、85:Eugenol、86:Cinnamaldehyde、303:perilla alcohol、317:5-(hydroxymethyl)furfural、321:benzyl alcohol、322:3-phenyl-1-propanol、324:2-hydroxybenzaldehyde及び329:Shogaolがより好ましく、68:β-Phenylethyl alcohol、86:Cinnamaldehyde、322:3-phenyl-1-propanol及び324:2-hydroxybenzaldehydeがさらに好ましく、324:2-hydroxybenzaldehydeがさらに一層好ましい。
【0067】
本開示の香料組成物は、有効成分として、第1~第4の香料成分を複数含有していてもよい。同じ群の香料成分(例えば第1の香料成分)の中から選択された複数の香料化合物を組み合わせて使用してもよく、異なる群の香料成分(例えば第1の香料成分と第2の香料成分)を併用してもよい。例えば、第1の香料成分の好ましい組み合わせ(併用)として、85:Eugenolと322:3-phenyl-1-propanolの組み合わせ等が挙げられる。85:Eugenol及び322:3-phenyl-1-propanolを有効成分として含有する香料組成物は、85:Eugenol又は322:3-phenyl-1-propanolをそれぞれ単独で含有する香料組成物よりもRBD-ACE2結合阻害活性が向上する。このように香料成分の組み合わせによっては、併用による相乗効果が得られる。
【0068】
香料組成物における特定の香料成分の濃度(有効成分濃度、特定の香料成分を複数含有する場合は各濃度の合計)は、RBD-ACE2結合阻害活性を向上する観点から、好ましくは0.05%(体積%(vol%)、以下同様)以上、より好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.25%以上、さらに一層好ましくは0.5%以上である。当該濃度の上限値は、ADI〔Acceptable Daily Intake、許容一日摂取量、無毒性量/安全係数(100)、動物に全く害のない量(無毒性量)の100分の1(単位:mg/kg/day)〕を基準に決定される濃度以下である。つまり、香料組成物は、香料成分を、ADI値を超えない濃度で含有するため、安全性が確保される。
【0069】
一般的に、ADI値は、NOAEL〔Non Observed Adverse Effect Level、無毒性量〕の100分の1の量とされている。そのため、ADI値は、NOAEL値を100分の1にすることで算出される。例えば、番号68:β-Phenylethyl alcohol(CAS:60-12-8)では、NOAEL値が120mg/kg/dayであるため、ADI値は1.2mg/kg/dayとなる。また、番号324:2-Hydroxybenzaldehyde(CAS:90-02-8)では、NOAEL値が40mg/kg/dayであるため、ADI値は0.4mg/kg/dayとなる(https://www.env.go.jp/chemi/report/h18-12/pdf/chpt2/2-2-2-16.pdf)。なお、NOAEL値は、例えば、以下のサイトから取得できる(https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/information/ra/20181116_130.pdf)。
【0070】
(溶媒)
本開示の香料組成物は、前記した特定の香料成分を溶解するための溶媒を含有するものでもよい。つまり、香料組成物は、特定の香料成分と溶媒とを含有する溶液として用いてもよい。この場合、溶媒を用いて、香料組成物における特定の香料成分の濃度を前記した範囲になるように調整すればよい。溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコールなどの低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレンアルコール、グリセリンなどの多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、クエン酸トリエチル、フタル酸ジエチルなどのエステル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素:流動パラフィンなどの鎖式飽和炭化水素;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒などが挙げられる。溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0071】
本開示の香料組成物は、本開示の目的や効果を阻害しない範囲内で、酸化防止剤、前記した特定の香料成分以外の香料素材などをさらに含有するものでもよい。
【0072】
酸化防止剤としては、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、γ-オリザノール、カテキン、カンゾウ油性抽出物、グアヤク脂、クエルセチン、クエン酸イソプロピル、クローブ抽出物、酵素処理イソクエルシトリン、酵素処理ルチン(抽出物)、酵素分解リンゴ抽出物、ゴマ油不けん化物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物、次亜硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、単糖・アミノ酸複合物、チャ抽出物、トコトリエノール、dl-α-トコフェロール、d-α-トコフェロール、d-γ-トコフェロール、d-δ-トコフェロール、生コーヒー豆抽出物、二酸化硫黄、ヒマワリ種子抽出物、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェルラ酸、ブチルヒドロキシアニソール、ブドウ種子抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、没食子酸、没食子酸プロピル、ミックストコフェロール、メラロイカ精油、ヤマモモ抽出物、ルチン酵素分解物、ルチン(抽出物)、アズキ全草抽出物、エンジュ抽出物、ソバ全草抽出物、ローズマリー抽出物などが挙げられる。酸化防止剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
特定の香料成分以外の香料素材としては、前記した第4の香料成分以外の公知の精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出物、合成香料、溶剤抽出、水蒸気蒸留品、酵素処理食品原料(リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼなど)、アミノ酸・タンパク質と糖の加熱反応を利用した食品や香料素材など、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。香料素材は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0074】
(香料組成物の製造方法)
本開示の香料組成物は、例えば、前記した特定の香料成分の少なくとも1種を所定濃度となるように配合し、これら配合物を前記した溶媒で溶解することにより、容易に調製できる。配合物を溶媒で溶解するときは、室温(25℃程度)で行ってもよく、40~80℃程度の温浴下で行ってもよい。
【0075】
(香料組成物の使用方法(用途))
本開示の香料組成物は、例えば、フレーバー(食品香料)、フレグランス(香水、コロン、室内芳香剤などの香粧品)又はその素材に使用される。具体的には、香料組成物がフレーバーとして飲食物に添加されることで、RBD-ACE2結合阻害活性を有する特定の香料成分を飲食物から投与(以下「飲食投与」ともいう)できる。香料組成物がフレグランス製品に使用されることで、当該香料成分を吸入投与できる。これら投与方法は、安全性、生産性、コストの点で、ワクチン接種よりも有利である。また、これら投与方法は簡易であり、コロナウイルス感染症予防方法や予防薬として導入し易いため、安価かつ迅速に実用化可能な方法といえる。特に、フレグランスとして吸入投与する場合、特定の香料成分による芳香により、コロナウイルス感染症の予防対策が実施されていることを容易に確認できるという利点もある。なお、香料組成物は、前記の他、クリーム、乳液、ボディーローション、ボディーパウダー類、ヘアークリーム、ヘアーローション、ヘアースプレー、マスク、消臭剤、生理用品、吸入薬等の医薬品、繊維、衣類等にも好適に適用でき、いずれの形態であってもよい。
【0076】
香料組成物は、特定の香料成分による芳香を利用して、関連症状である嗅覚・味覚障害などの簡易検査などにも適用可能である。
【0077】
香料組成物(フレグランス用途)の具体的な使用場面・場所は特に限定されないが、例えば、フレグランスを日常的に使用している生活場面、職場、学校関連施設、各種商業施設、各種種運動施設、医療・介護現場などの感染リスクの高い場面(介護施設;医療施設、特に待合室、救急救命室、初療対応、医療従事者による感染患者のケア、看取りの際の家族との対話、死亡者のエンゼルケアや遺体の移送時など)などが挙げられる。
【0078】
<結合阻害剤>
次に、本開示の結合阻害剤について、以下に説明する。この結合阻害剤は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)とコロナウイルス(SARS-CoV-2)との結合を阻害するRBD-ACE2結合阻害剤である。
【0079】
結合阻害剤は、前記した特定の香料成分の1種を有効成分として含有する。即ち、結合阻害剤は、前記一般式(1)で表され且つ分子量200以下である第1の香料成分及びそのアセタール化合物、前記一般式(2)で表され且つ分子量200以下である第2の香料成分及びそのアセタール化合物、10-Undecenal、Methyl β-naphthyl ketone、2-Methyl-3-(3,4-Methylenedioxyphenyl)Propanal、γ-Nonalactone、Citral、dihydroactinidiolide、α-fenchol、(E)-4-decenal、5-(hydroxymethyl)furfural、Shogaol、Oakmoss absolute、Clove bud oil、Bay leaf oil並びにCaraway oilからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【0080】
結合阻害剤は、上述の香料組成物で説明したすべての事項(第1~第4の香料成分の種類や含有量、その他成分、製造方法、用途など)が適用される。
【0081】
結合阻害剤は、吸入剤、経皮剤、経口剤等として用いることができる。結合阻害剤の形態は、特に限定されず、錠剤、粉末、顆粒、溶液、カプセル剤等が挙げられる。結合阻害剤の使用方法は、上述した香料組成物の使用方法(用途)と同様の方法を採用できる。具体的には、溶液状の結合阻害剤であれば、飲食投与や吸入投与などが挙げられる。錠剤状の結合阻害剤であれば、飲食投与などが挙げられる。
【0082】
結合阻害剤は、そのまま又は前記した溶媒で希釈した状態で、布、不織布や綿等の繊維、セラミック、シルカゲル、多孔性セルロース粒子等の多孔物質;ゼラチン、寒天、メチルセルロース等の天然高分子物質を使用した水系ゲル;ポリアクリル系化合物、ポリメタクリル酸系化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂等の合成高分子物質;木材チップ;粘土物質;高級脂肪酸エステル;高級ワックス;油性物質等に担持させて用いてもよい。
【0083】
結合阻害剤は、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム、軟膏等の形態で提供できる。また、香料組成物は、ヘアーローション、ヘアートニック、ヘアーミルク、ヘアージェル、ヘアークリーム、ヘアーパック、ヘアートリートメント、ヘアーシャンプー、ヘアーリンス等の形態の養毛剤又は毛髪用化粧料としても提供できる。
【0084】
<効果>
以上説明したように、本開示の香料組成物及び結合阻害剤によれば、以下の効果を得ることができる。
・本開示の香料組成物及び結合阻害剤は、有効成分として、RBD-ACE2結合阻害活性を有する特定の香料成分の少なくとも1種を含有する。これら有効成分は、安全性及び生産性が高い一方、コストは低い。そのため、香料組成物及び結合阻害剤は、コロナウイルス感染症予防方法や予防薬として導入し易く、経済的に厳しい国や地域でも安価な予防手段として実用可能である。
・本開示の香料組成物及び結合阻害剤は、飲食投与や吸入投与が可能であるため、様々な場面・場所において、簡易にコロナウイルス感染症の予防ができる。
【実施例0085】
以下に、本開示を実施例に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施例に限定されるものではなく、以下の実施例を本開示の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本開示の範囲から除外するものではない。
【0086】
<実施例1:従来株に対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無の評価>
SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)と宿主であるACE2との結合を阻害する評価系(ELISA変法)を用いて、種々の香料化合物について、従来株に対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無を評価した。用いた材料や評価方法等を以下に記載する。
【0087】
(材料)
・RBD-ACE2結合阻害アッセイキット:AcroBIOSYSTEMS社製 SARS-CoV-2 Inhibitor screening Kit(品番:EP-105)(内容:組換えSARS-CoV-2 S protein RBDタンパク質(従来株)、組換えBiotinylated Human ACE2タンパク質、Streptavidin‐HRP、対照用SARS-CoV-2 Inhibitor(抗体))
・ELISA用96穴プレート:Corning社製 (品番#9018)
・各種試薬:
・Coating Buffer : 15mmol/L sodium carbonate (Na2CO3), 35mmol/L sodium hydrogen carbonate (NaHCO3), 7.7mmol/L sodium azide (NaN3), pH9.6
・Wash Buffer: PBS with 0.05% (v/v) Tween‐20 (pH7.4)
・Blocking Buffer: Wash Buffer with 2%(w/v) bovine serum albumin (BSA) (Sigma‐Aldrich社製, 品番A4737)
・Dilution Buffer: PBS with 1.5%(v/v) Tween‐20 (pH7.4) and 0.5%(w/v) BSA (Sigma‐Aldrich社製, 品番A4737)
・Substrate Dilution Buffer: 50mM disodium hydrogen phosphate (Na2HPO4) and 25mM citric acid, (pH 5.5 with 1M Sodium hydroxide)
・Substrate Stock Solution: 20mg/mL 3,3’,5,5’-Tetramethylbenzidine (TMB) (Sigma‐Aldrich社製, 品番860336) in Dimethyl sulfoxide (Sigma‐Aldrich社製, 品番D8418)
・TMB Substrate Working Solution: 125μL substrate stock solution in 25mL substrate dilution buffer and add 20μL of 5% H2O
・Stop Solution: 1M sulfuric acid (aqueous)。
・香料成分:以下の表に示す香料サンプル336種、塩野香料株式会社製。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
(評価方法)
〔評価サンプルの調製〕
・まず凍結保存しておいた組換えSARS-CoV-2 S protein RBDタンパク質(100μg/mL)を解凍後Dilution Bufferにて0.5μg/mLに希釈し、1ウェルあたり100μL をELISA用96穴プレートに加え、4℃にて16時間コーティングした。
・コーティング後、各ウェルを、300μLのWash Bufferにて4回洗浄後、各ウェルに300μLのBlocking Bufferを加え37℃で1.5時間ブロッキングした。
・ブロッキング後、各ウェルを300μLのWash Bufferにて4回洗浄後、各ウェルに任意の濃度(以下「投入濃度」という)(例えば1体積%(vol%)、以下同様)の香料サンプル(1.5%Tween20/0.5%BSA/PBSに溶解)を1ウェルあたり50μL加えた。陰性対照(基準)としてDMSO(濃度1% in 1.5%Tween20/0.5%BSA/PBS)を用い、1ウェルあたり50μL加えた。また検量線作成には、香料サンプルの代わりに対照用SARS-CoV-2 Inhibitor(抗体)を0.31μg/mL~20μg/mLの濃度で加えた。
・次に、凍結保存していた組換えBiotinylated Human ACE2タンパク質 (100μg/mL)を1.5%Tween20/0.5%BSA/PBSにて希釈して0.12μg/mLとし、1ウェルあたり50μL を加えて、37℃で1時間結合反応を行った。この時、香料サンプルの反応時の濃度(以下「反応濃度」という)は投入濃度の1/2であった([反応濃度]=[投入濃度]/2)。例えば投入濃度が1%の場合、反応濃度は0.5%である。なお、香料サンプルの反応濃度は、上記の「香料組成物における特定の香料成分の濃度(有効成分濃度、特定の香料成分を複数含有する場合は各濃度の合計)」と同等である。
・結合反応後、各ウェルを、300μLのWash Bufferにて4回洗浄後、Streptavidin-HRP溶液(50μg/mL)をDilution Bufferにて0.1μg/mLに希釈し、各ウェルに100μLを加え、密閉遮光して37℃で1時間反応させた。
・反応後、各ウェルを、300μLのWash Bufferにて4回洗浄後、各ウェルに200μLのTMB Substrate Working Solutionを加え、密閉・遮光して37℃で20分間反応させた。
・最後に、各ウェルに50μLのStop Solutionを加え、3分間揺すってインキュベート後、450nmの波長で吸光度を計測した。
【0097】
〔RBD-ACE2結合阻害活性の評価方法〕
前記で得られた計測値(吸光度)を基に、反応濃度0.5体積%のDMSOのRBD-ACE2結合阻害活性:1(100%)に対する、香料成分の反応時の有効成分濃度(各香料サンプルの反応濃度又はその合計)0.5体積%のときの相対活性値を算出し、以下の評価基準に基づいて、各香料サンプルのRBD-ACE2結合阻害活性を評価した。なお、相対活性値が小さいほど、RBD-ACE2結合阻害活性が高いことを意味する。例えば、相対活性値が0.4(40%)の場合、反応濃度0.5体積%のDMSO(基準)に対して、RBD-ACE2結合阻害活性が40%に低下した(換言すると、RBD-ACE2結合が60%阻害(抑制)された)こと意味する。
(評価基準)
◎:香料成分の有効成分濃度0.5体積%のときの相対活性値が0.4以下である。
〇:香料成分の有効成分濃度0.5体積%のときの相対活性値が0.4超過0.5以下である。
×:香料成分の有効成分濃度0.5体積%のときの相対活性値が0.5超過である。
【0098】
(評価結果)
各香料サンプルのうち、評価が◎又は〇のものを以下の表9に示す。なお、表9中の「%」は「体積%」を意味する。
【0099】
【表9】
【0100】
表9の結果から、表9に示す香料サンプルは、従来株に対して優れたRBD-ACE2結合阻害活性を有することが分かった。特に、324:2-hydroxybenzaldehyde及び後述するNo.333は、従来株に対するRBD-ACE2結合阻害活性が高いことが分かった。即ち、表9に示す香料成分は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を予防することが期待できる。
【0101】
また、No.333は、No.85:EugenolとNo.322:3-phenyl-1-propanolとを1:1の混合比率で含有する有効成分濃度の合計が0.5体積%の香料サンプルである。このNo.333は、Eugenol又は3-phenyl-1-propanolをそれぞれ有効成分濃度0.5体積%で含有するNo.85及びNo.322と比較して、RBD-ACE2結合阻害活性がさらに向上することが分かった。これにより、複数の香料成分の組み合わせ(併用)により相乗効果が得られる可能性について示唆された。
【0102】
<実施例2:従来株に対するRBD-ACE2結合阻害活性を発現する有効成分濃度の評価>
次に、表9に示す香料サンプルを用い、従来株に対するRBD-ACE2結合阻害活性を発現する有効成分濃度を評価した。具体的には、香料成分の反応時の有効成分濃度(各香料サンプルの反応濃度又はその合計)を0.5体積%から0.15体積%、0.05体積%、0.015体積%又は0.005体積%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、濃度0.5体積%のDMSOのRBD-ACE2結合阻害活性:1に対するRBD-ACE2結合阻害活性を評価した。その結果を表10に示す。なお、表10中の「%」は「体積%」を意味する。また、表10中の有効成分濃度「0.5%」における相対活性値(0.5%DMSO=1)は、表9に示す相対活性値と同じ値である。
【0103】
【表10】
【0104】
表10の結果から、香料組成物における香料成分の反応時の有効成分濃度(各香料サンプルの反応濃度又はその合計)は、少なくとも0.05体積%以上であることが分かった。有効成分濃度は、コロナウイルス感染症の予防効果を向上させるためには、濃度0.5体積%のDMSO(基準:1)に対する相対活性値が0.5以下になる、0.15体積%以上(例えば324:2-hydroxybenzaldehyde)が好ましく、0.5体積%以上がより好ましいといえる。
【0105】
特に高いRBD-ACE2結合阻害活性(有効性)を示す有効成分濃度は、ロジスティックモデルを含む非線形モデルにより算出される香料成分の濃度に対する相対活性値の低下を示す阻害曲線に基づき、相対活性値が0.4以下になる濃度範囲と判定される。
【0106】
<実施例3:変異株(N501Y)に対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無の評価>
表9に示す香料サンプルを用い、変異株に対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無を評価した。具体的には、変異株として組換えSARS-CoV-2 S protein RBDタンパク質(N501Y)(AcroBIOSYSTEMS社製、品番:SPD-C52HN)に変更したこと以外は実施例1及び2と同様にして、各有効成分濃度において、N501Yに対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無を評価した。各香料サンプルのうち、有効成分濃度0.5体積%のときの相対活性値が0.5以下(評価が◎又は〇)のものを以下の表11に示す。なお、表11中の「%」は「体積%」を意味する。
【0107】
【表11】
【0108】
表11の結果から、表9に示す香料成分のうち、表11に示す香料成分は、前記の有効成分濃度0.5体積%以上において、N501Yに対して優れたRBD-ACE2結合阻害活性を有することが分かった。表11に示す香料成分は、従来株だけでなく、変異株に対しても新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を予防することが期待できる。
【0109】
<実施例4:変異株(L452R)に対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無の評価>
変異株として組換えSARS-CoV-2 S protein RBDタンパク質(L452R)(AcroBIOSYSTEMS社製、品番:SPD-C52HE)に変更したこと以外は実施例3と同様にして、各有効成分濃度において、L452Rに対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無を評価した。各香料サンプルのうち、有効成分濃度0.5体積%のときの相対活性値が0.5以下(評価が◎又は〇)のものを以下の表12に示す。なお、表12中の「%」は「体積%」を意味する。
【0110】
【表12】
【0111】
表12の結果から、表9に示す香料成分のうち、表12に示す香料成分は、前記の有効成分濃度0.5体積%以上(No.105は0.15体積%以上)において、L452Rに対して優れたRBD-ACE2結合阻害活性を有することが分かった。特に、No.105:Helional(登録商標)は、L452Rに対するRBD-ACE2結合阻害活性が顕著に高い(RBD-ACE2結合が100%阻害されている)ことが分かった。表12に示す香料成分は、従来株だけでなく、変異株についても新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を予防することが期待できる。
【0112】
<実施例5:変異株(E484K)に対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無の評価>
変異株として組換えSARS-CoV-2 S protein RBDタンパク質(E484K)(AcroBIOSYSTEMS社製、品番:SRD-C52H3)に変更したこと以外は実施例3と同様にして、各有効成分濃度において、E484Kに対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無を評価した。各香料サンプルのうち、有効成分濃度0.5体積%のときの相対活性値が0.5以下(評価が◎又は〇)のものを以下の表13に示す。なお、表13中の「%」は「体積%」を意味する。
【0113】
【表13】
【0114】
表13の結果から、表9に示す香料成分のうち、表13に示す香料成分は、前記の有効成分濃度0.5体積%以上(No.324は0.15体積%以上)において、E484Kに対して優れたRBD-ACE2結合阻害活性を有することが分かった。特に、No.324:2-hydroxybenzaldehydeは、E484Kに対するRBD-ACE2結合阻害活性が顕著に高いことが分かった。表13に示す香料成分は、従来株だけでなく、変異株に対しても新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を予防することが期待できる。
【0115】
<実施例6:3重変異株(K417N, E484K, N501Y)に対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無の評価>
変異株として組換えSARS-CoV-2 S protein RBDタンパク質(K417N, E484K, N501Y)(以下「3重変異株」ともいう)(AcroBIOSYSTEMS社製、品番:SPD-C52HP)に変更したこと以外は実施例3と同様にして、各有効成分濃度において、3重変異株に対するRBD-ACE2結合阻害活性の有無を評価した。各香料サンプルのうち、有効成分濃度0.5体積%のときの相対活性値が0.5以下(評価が◎又は〇)のものを以下の表14に示す。なお、表14中の「%」は「体積%」を意味する。
【0116】
【表14】
【0117】
表14の結果から、表9に示す香料成分のうち、表14に示す香料成分は、前記の有効成分濃度0.5体積%以上(No.12、83、119、135、303、333は0.15体積%以上)において、3重変異株に対して優れたRBD-ACE2結合阻害活性を有することが分かった。特に、No.105:Helional(登録商標)は、有効成分濃度0.5体積%のときに、3重変異株に対するRBD-ACE2結合阻害活性が顕著に高い(RBD-ACE2結合が100%阻害されている)ことが分かった。これは、表12(実施例4)に示すL452Rに対するRBD-ACE2結合阻害活性と同様の傾向である。表14に示す香料成分は、従来株だけでなく、変異株に対しても新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を予防することが期待できる。
【0118】
<考察>
以上の評価結果から、表9~14に示す香料成分は、従来株だけでなく、前記の各種変異株に対してもRBD-ACE2結合阻害活性を有することが示された。具体的には、従来株に対して優れたRBD-ACE2結合阻害活性を有する香料成分(特に、有効成分濃度0.5体積%のときの相対活性値が0.4以下(評価が◎)の香料成分)は、スパイクタンパク質をコードする遺伝子に1つの変異(N501Y、L452R、E484K等)又は3つの変異(K417N, E484K, N501Y)が生じた変異株に対しても優れたRBD-ACE2結合阻害活性を有することが分かった。これら結果から、表9~14に示す香料成分は、公知の変異株だけでなく、今後新たに発見される変異株(特にスパイクタンパク質のRBDに変異が生じた変異株)に対してもRBD-ACE2結合阻害活性を有する可能性が高いことが示唆される。
【0119】
また、複数の香料成分の組み合わせ(併用)により相乗効果が得られることが確認されたため(表9参照)、従来株又は各種変異株に対するRBD-ACE2結合阻害活性が特に優れた香料成分を複数組み合わせて有効成分とすることも示唆される。当該有効成分を含有する香料組成物及び結合阻害剤は、種々の変異株が存在する状況において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防用として汎用的に使用できる可能性についても示唆された。
【0120】
<RBD-ACE2結合阻害活性を発現する分子機序の検討>
上述したように、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質(その受容体結合ドメイン(RBD))は、ヒトのアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合して体内に取り込まれる。そして、表9~14に示す香料成分(以下「特定の香料成分」という)により、スパイクタンパク質のRBD(従来株及び前記の各種変異株の何れも含む)とACE2との結合が阻害されることを見出した。これら知見を考慮すると、特定の香料成分によるスパイクタンパク質のRBDとACE2との結合を阻害する作用機序としては、以下の3点が考えられる。
・特定の香料成分がACE2に結合することにより、スパイクタンパク質のRBDがACE2に結合し難くなる。
・特定の香料成分がスパイクタンパク質に結合することにより、当該スパイクタンパク質のRBDがACE2に結合し難くなる。
・特定の香料成分がスパイクタンパク質とACE2の両方に結合することにより、当該スパイクタンパク質のRBDがACE2に結合し難くなる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本開示のコロナウイルス感染症予防用香料組成物は、フレーバー(食品香料)、フレグランス(香水、コロン、室内芳香剤などの香粧品)又はその素材に適用できる。本開示の結合阻害剤は、コロナウイルス感染症予防薬やその素材に適用できる。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
(一般式(1)中、Rはヒドロキシ基、ホルミル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数~6のヒドロキシアルケニル基、炭素数~6のホルミルアルケニル基又は炭素数1~6のアルキルエステル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数~6のアルケニル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
で表され且つ分子量200以下である第1の香料成分及びそのアセタール化合物、
・一般式(2):
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
(一般式(2)中、Rは炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示し、Rは炭素数~6のアルケニル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示す。)
で表され且つ分子量200以下である第2の香料成分及びそのアセタール化合物、
・10-Undecenal、Methyl β-naphthyl ketone、2-Methyl-3-(3,4-Methylenedioxyphenyl)Propanal、γ-Nonalactone、Citral、dihydroactinidiolide、α-fenchol、(E)-4-decenal、5-(hydroxymethyl)furfural、Shogaol、Oakmoss absolute、Clove bud oil、Bay leafoil並びにCaraway oil
からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
一般式(1)中、Rはヒドロキシ基〔-OH〕、ホルミル基〔-CHO〕、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、炭素数~6のヒドロキシアルケニル基、炭素数~6のホルミルアルケニル基又は炭素数1~6のアルキルエステル基を示す。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
本明細書において、「炭素数1~6のヒドロキシアルキル基」又は「炭素数~6のヒドロキシアルケニル基」とは、アルキル基又はアルケニル基のいずれかの炭素原子にヒドロキシ基が結合した(いずれかの水素原子がヒドロキシ基で置換された)炭素数1~6のアルキル基又は炭素数~6のアルケニル基をいう。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
本明細書において、炭素数~6のアルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、プロペニル基(1‐プロペニル、2-プロペニル(アリル基)等)、イソプロペニル基(1-メチルエテニル基)、ブテニル基、1-メチルアリル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の直鎖状又は分枝鎖状の、二重結合を有する不飽和炭化水素基を示す。アルケニル基は置換基を有していてもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
本明細書において、「炭素数~6のホルミルアルケニル基」とは、アルケニル基のいずれかの炭素原子にホルミル基が結合した(いずれかの水素原子がホルミル基で置換された)炭素数~6のアルケニル基をいう。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
の中では、ヒドロキシ基、ホルミル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~6の直鎖状ヒドロキシアルキル基、炭素数~6の直鎖状ヒドロキシアルケニル基、炭素数~6の直鎖状ホルミルアルケニル基及び炭素数1~6の直鎖状アルキルエステル基が好ましく、ヒドロキシ基、ホルミル基、エーテル結合を有していてもよい炭素数1~4の直鎖状ヒドロキシアルキル基、炭素数2~4の直鎖状ヒドロキシアルケニル基、炭素数~4の直鎖状ホルミルアルケニル基及び炭素数1~3の直鎖状アルキルエステル基〔-C(=O)O-(CH-CH(n:1又は2)〕がより好ましく、ヒドロキシ基、ホルミル基、炭素数1~3の直鎖状ヒドロキシアルキル基〔-(CH-OH(n:1~3)〕、炭素数~3の直鎖状ホルミルアルケニル基及び炭素数1又は2の直鎖状アルキルエステル基がさらに好ましく、ヒドロキシ基、ホルミル基、炭素数2又は3の直鎖状ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基)、ホルミルエテニル基〔-CH=CH-CHO〕及びメチルエステル基〔-C(=O)O-CH〕がさらに一層好ましい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
一般式(1)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基又は炭素数~6のアルケニル基を示す。Rの中では、水素原子、ヒドロキシ基及び炭素数~6の直鎖状アルケニル基が好ましく、水素原子及び炭素数2~4の直鎖状アルケニル基がより好ましく、水素原子及び直鎖状プロペニル基(アリル基)がさらに好ましい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
一般式(1)において、Rがヒドロキシ基のときのR~Rの組み合わせは、好ましくはRが炭素数1~3の直鎖状アルコキシ基、Rが水素原子、Rが炭素数~6の直鎖状アルケニル基、Rが水素原子であり、より好ましくはRが炭素数1又は2のアルコキシ基、Rが水素原子、Rが炭素数2~4の直鎖状アルケニル基、Rが水素原子であり、さらに好ましくはRがメトキシ基、Rが水素原子、Rが直鎖状プロペニル基(アリル基)、Rが水素原子である。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
一般式(1)において、Rが炭素数~6の直鎖状ヒドロキシアルケニル基のときのR~Rの組み合わせは、好ましくはR~Rが水素原子である。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
一般式(1)において、Rが炭素数~6の直鎖状ホルミルアルケニル基のときのR~Rの組み合わせは、好ましくはR~Rが水素原子である。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
一般式(2)中、Rは炭素数~6のアルケニル基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を示す。Rの中では、炭素数~6の分岐鎖状アルケニル基及び炭素数1~6の分岐鎖状ヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数2~4の分岐鎖状アルケニル基及び炭素数2~4の分岐鎖状ヒドロキシアルキル基がより好ましく、イソプロペニル基及びヒドロキシイソプロピル基〔-CH(CH)CHOH〕がさらに好ましい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
一般式(2)において、Rが炭素数1~6のヒドロキシアルキル基のときのRは、好ましくは炭素数~6の分岐鎖状アルケニル基であり、より好ましくは炭素数2~4の分岐鎖状アルケニル基であり、さらに好ましくはイソプロペニル基である。
【手続補正14】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーバー又はフレグランスの原料として用いられる香料素材として一般式(1)で表され且つ分子量200以下である第1の香料成分を、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)とコロナウイルス(SARS-CoV-2)との結合を阻害するための有効成分として含有することを特徴とするコロナウイルス感染症予防用香料組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R はホルミル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、エーテル結合を有するヒドロキシエチル基〔-O(CH) OH〕、ヒドロキシプロペニル基又はメチルエステル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基又はアミノ基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又はヒドロキシ基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【請求項2】
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)とコロナウイルス(SARS-CoV-2)との結合を阻害する結合阻害剤であって、
フレーバー又はフレグランスの原料として用いられる香料素材として一般式(1)で表され且つ分子量200以下である第1の香料成分を有効成分として含有することを特徴とする結合阻害剤。
【化2】
(一般式(1)中、R はホルミル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、エーテル結合を有するヒドロキシエチル基〔-O(CH) OH〕、ヒドロキシプロペニル基又はメチルエステル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基又はアミノ基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又はヒドロキシ基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【請求項3】
Eugenolを有効成分としてさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のコロナウイルス感染症予防用香料組成物。
【請求項4】
Eugenolを有効成分としてさらに含有することを特徴とする請求項2に記載の結合阻害剤。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーバー又はフレグランスの原料として用いられる香料素材として一般式(1)で表され且つ分子量200以下である第1の香料成分を、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)とコロナウイルス(SARS-CoV-2)との結合を阻害するための有効成分として含有することを特徴とするコロナウイルス感染症予防用香料組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rはホルミル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、エーテル結合を有するヒドロキシエチル基〔-O(CH)OH〕、ヒドロキシプロペニル基又はメチルエステル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基又はアミノ基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又はヒドロキシ基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。但し、R がメチルエステル基及びR がヒドロキシ基のとき、R ~R は同一ではない(同時に水素原子ではない)。
【請求項2】
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)とコロナウイルス(SARS-CoV-2)との結合を阻害する結合阻害剤であって、
フレーバー又はフレグランスの原料として用いられる香料素材として一般式(1)で表され且つ分子量200以下である第1の香料成分を有効成分として含有することを特徴とする結合阻害剤。
【化2】
(一般式(1)中、Rはホルミル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、エーテル結合を有するヒドロキシエチル基〔-O(CH)OH〕、ヒドロキシプロペニル基又はメチルエステル基を示し、Rは水素原子、ヒドロキシ基又はアミノ基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又はヒドロキシ基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。但し、R がメチルエステル基及びR がヒドロキシ基のとき、R ~R は同一ではない(同時に水素原子ではない)。
【請求項3】
Eugenolを有効成分としてさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のコロナウイルス感染症予防用香料組成物。
【請求項4】
Eugenolを有効成分としてさらに含有することを特徴とする請求項2に記載の結合阻害剤。