(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188681
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/52 20060101AFI20221214BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B60N2/52
B60N2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096910
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜誠
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 大地
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087BB22
3B087CC10
3B087DD03
3B087DD11
(57)【要約】
【課題】エアサスペンション装置とサスペンションロック装置とを有する構成においてシートクッションの高さを調節したい場合の操作性を向上させることができる車両用シートを得る。
【解決手段】エアサスペンション装置30のハイト調節器34は、ハイトレバー36の操作に応じてエアスプリング32に空気を給排することでシートクッションの高さを調節する。また、サスペンションロック装置50は、サスロックSW54のロック操作に応じてエアサスペンション装置30によるサスペンション機能をロックするサスペンションロック状態とし、サスペンションロック状態でハイトレバー36が操作された場合にサスペンションロック状態を解除する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座する着座部を構成するシートクッションと、
前記シートクッションのシート下方側に配置され、空気供給源から空気が供給されるエアスプリングと、前記エアスプリングの振動を減衰するダンパと、前記シートクッションの高さを調節するための操作部として設けられた高さ操作部と、前記高さ操作部の操作に応じて前記エアスプリングに空気を給排することで前記シートクッションの高さを調節する高さ調節部と、を備えるエアサスペンション装置と、
操作部としてロック操作部を備え、前記ロック操作部のロック操作に応じて前記エアサスペンション装置によるサスペンション機能をロックするサスペンションロック状態とし、前記サスペンションロック状態で前記高さ操作部が操作された場合に前記サスペンションロック状態を解除するサスペンションロック装置と、
を有する車両用シート。
【請求項2】
前記サスペンションロック装置は、
前記サスペンションロック状態と、前記サスペンションロック状態を解除するロック解除状態と、の間で作動可能なサスペンションロック機構と、
前記サスペンションロック機構の作動状態を記憶する記憶部を有すると共に、前記高さ操作部が操作された場合でかつ前記記憶部に記憶されているデータに基づいて前記サスペンションロック状態であると判断した場合に前記サスペンションロック状態を解除するように前記サスペンションロック機構を制御する電子制御ユニットと、
を備える請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記電子制御ユニットは、前記高さ操作部の操作に応じて前記シートクッションの高さが前記エアスプリングによって調節されたと判断した場合に、前記記憶部に記憶されているデータに基づいて、前記サスペンションロック機構の作動状態が前記高さ操作部の直近の操作時の直前と同じ状態になるように制御する、請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記ダンパの減衰力を変えるための操作部としてダンパ操作部が設けられ、
前記高さ操作部は、回動操作用の第一レバーで構成され、
前記ダンパ操作部は、回動操作用の第二レバーで構成され、
前記第二レバーを所定の軸線回りに回動可能に支持する軸部を備えると共に、前記所定の軸線回りに回動可能に構成されて前記第一レバーが回動操作された場合には前記第一レバーと一体的に回動し、前記第二レバーの回動操作によっては回動しないように構成された支持部材が設けられている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記第一レバーは嵌合構造を用いて前記支持部材に固定され、前記第二レバーは前記第一レバーによって抜け止めされている、請求項4記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいては、シートクッションの座面の高さを調節するための機能を備えたエアサスペンション装置を搭載したものが知られており(例えば、特許文献1、2参照)、このようなエアサスペンション装置には通常エアスプリングの振動を減衰するダンパが設けられている。また、このような車両用シートにおいては、更に、所定の手動操作がされた場合にエアサスペンション装置によるサスペンション機能をロックするサスペンションロック装置が設けられている場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-162397号公報
【特許文献2】特開2017-1573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エアサスペンション装置とサスペンションロック装置とを有する車両シートにおいては、エアサスペンション装置によるサスペンション機能をロックするサスペンションロック状態でシートクッションの座面の高さを調節したい場合には、手動でサスペンションロック状態を解除してから座面の高さを調節しなければならず、操作性の点で改善の余地がある。なお、エアサスペンション装置とサスペンションロック装置とを有する車両シートにおいては、例えばエアサスペンション装置のダンパの減衰力を変えるためのダンパ操作部を設ける場合があり、このような場合には、操作部が多くなって組み立て工程が複雑化する。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、エアサスペンション装置とサスペンションロック装置とを有する構成においてシートクッションの高さを調節したい場合の操作性を向上させることができる車両用シートを得ることを第1の目的とする。また、本発明は、上記事実を考慮し、上記に加え、組み立て工程の簡素化を可能にすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、乗員が着座する着座部を構成するシートクッションと、前記シートクッションのシート下方側に配置され、空気供給源から空気が供給されるエアスプリングと、前記エアスプリングの振動を減衰するダンパと、前記シートクッションの高さを調節するための操作部として設けられた高さ操作部と、前記高さ操作部の操作に応じて前記エアスプリングに空気を給排することで前記シートクッションの高さを調節する高さ調節部と、を備えるエアサスペンション装置と、操作部としてロック操作部を備え、前記ロック操作部のロック操作に応じて前記エアサスペンション装置によるサスペンション機能をロックするサスペンションロック状態とし、前記サスペンションロック状態で前記高さ操作部が操作された場合に前記サスペンションロック状態を解除するサスペンションロック装置と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、エアサスペンション装置の高さ調節部は、高さ操作部の操作に応じてエアスプリングに空気を給排することでシートクッションの高さを調節する。また、サスペンションロック装置は、ロック操作部のロック操作に応じてエアサスペンション装置によるサスペンション機能をロックするサスペンションロック状態とし、サスペンションロック状態で高さ操作部が操作された場合にサスペンションロック状態を解除する。このため、サスペンションロック状態で乗員が高さ操作部を操作する際に、手動でロック操作部を操作する必要がなくなるので、操作性が良い。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車両用シートは、請求項1記載の構成において、前記サスペンションロック装置は、前記サスペンションロック状態と、前記サスペンションロック状態を解除するロック解除状態と、の間で作動可能なサスペンションロック機構と、前記サスペンションロック機構の作動状態を記憶する記憶部を有すると共に、前記高さ操作部が操作された場合でかつ前記記憶部に記憶されているデータに基づいて前記サスペンションロック状態であると判断した場合に前記サスペンションロック状態を解除するように前記サスペンションロック機構を制御する電子制御ユニットと、を備える。
【0009】
上記構成によれば、サスペンションロック装置は、サスペンションロック機構と電子制御ユニットとを有する。サスペンションロック機構は、サスペンションロック状態と、サスペンションロック状態を解除するロック解除状態と、の間で作動可能になっている。また、電子制御ユニットは、サスペンションロック機構の作動状態を記憶部で記憶しており、高さ操作部が操作された場合でかつ記憶部に記憶されているデータに基づいてサスペンションロック状態であると判断した場合にサスペンションロック状態を解除するようにサスペンションロック機構を制御する。このため、上記の制御を機械的に構成する場合と比べて、構成を簡単にすることができ、組み立てを簡易にすることができる。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車両用シートは、請求項2記載の構成において、前記電子制御ユニットは、前記高さ操作部の操作に応じて前記シートクッションの高さが前記エアスプリングによって調節されたと判断した場合に、前記記憶部に記憶されているデータに基づいて、前記サスペンションロック機構の作動状態が前記高さ操作部の直近の操作時の直前と同じ状態になるように制御する。
【0011】
上記構成によれば、電子制御ユニットは、高さ操作部の操作に応じてシートクッションの高さがエアスプリングによって調節されたと判断した場合に、記憶部に記憶されているデータに基づいて、サスペンションロック機構の作動状態が高さ操作部の直近の操作時の直前と同じ状態になるように制御する。このため、乗員によるロック操作部の操作回数を減らすことができる。
【0012】
請求項4に記載する本発明の車両用シートは、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記ダンパの減衰力を変えるための操作部としてダンパ操作部が設けられ、前記高さ操作部は、回動操作用の第一レバーで構成され、前記ダンパ操作部は、回動操作用の第二レバーで構成され、前記第二レバーを所定の軸線回りに回動可能に支持する軸部を備えると共に、前記所定の軸線回りに回動可能に構成されて前記第一レバーが回動操作された場合には前記第一レバーと一体的に回動し、前記第二レバーの回動操作によっては回動しないように構成された支持部材が設けられている。
【0013】
上記構成によれば、第二レバーを所定の軸線回りに回動可能に支持する軸部を備えた支持部材は、前記所定の軸線回りに回動可能に構成されて第一レバーが回動操作された場合には第一レバーと一体的に回動し、第二レバーの回動操作によっては回動しないように構成されている。このような第一レバー、第二レバー及び支持部材はユニット化できるため、例えば第一レバーと第二レバーとを別々に車両用シートに組み付ける場合と比べて、車両用シートへの組付性が向上する。
【0014】
請求項5に記載する本発明の車両用シートは、請求項4記載の構成において、前記第一レバーは嵌合構造を用いて前記支持部材に固定され、前記第二レバーは前記第一レバーによって抜け止めされている。なお、「支持部材に固定され」は、支持部材に直接又は部材を介して固定されることを意味する。また、「第一レバーによって抜け止めされている」とは、抜け外れが第一レバーに当接することによって阻止されていることを意味する。
【0015】
上記構成によれば、ビスを用いないで第一レバー及び第二レバーを支持部材に組み付けることができるので、組付性がよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートによれば、エアサスペンション装置とサスペンションロック装置とを有する構成においてシートクッションの高さを調節したい場合の操作性を向上させることができる。また、請求項4及び請求項5に記載の本発明に係る車両用シートによれば、更に、組み立て工程の簡素化を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】
図1のシート支持装置の概略構成の一部を示すブロック図である。
【
図3】シート支持装置におけるコントロールレバーユニットの組立状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すコントロールレバーユニットを分解して
図3とは異なる方向から見た状態で示す分解斜視図である。
【
図5】
図3に示すコントロールレバーユニットの一部を分解すると共に
図4とほぼ同様の方向から見た状態でかつレバーベースを透視した状態で示す分解斜視図である。
【
図6】レバーベースよりもシート幅方向外側の構成部分からダンパレバー及びダンパレバーラチェットを除いた状態で分解してかつ拡大して示す分解斜視図である。
【
図7】ダンパレバーを不図示にしてハイトレバー用リテーナーの第一嵌合爪とハイトレバーの嵌合孔との嵌合状態を示す斜視図である。図中左側のハイトレバーアームシャフトの軸部の周囲部の図示を省略する。
【
図8】ダンパレバーを不図示にしてハイトレバー用リテーナーの第二嵌合爪とハイトレバーアームシャフトの嵌合孔との嵌合状態を示す斜視図である。図中右側のハイトレバーアームシャフトの軸部の周囲部の図示を省略する。
【
図9】ハイトレバーアームシャフト及びその周辺部を正面側とは反対側の裏側から見た状態で示す斜視図である。
【
図10A】ハイトレバーアームシャフト及びその周辺部の配置状態を裏側正面から見た状態で示す図である。
【
図10B】
図10Aにおけるハイトレバーアームシャフトとサスロック解除スイッチとの隣接部分を拡大して示す図である。
【
図11A】レバーベースにダンパレバーアームが組み付けられる前の状態を示す斜視図である。
【
図11B】
図11Aの状態からレバーベースにダンパレバーアームが組み付けられた状態を示す斜視図である。
【
図12】ダンパレバーが標準位置にある状態でのダンパレバーアーム及びダンパレバーラチェット等を裏側から見た状態で示す斜視図である。
【
図13】レバーベースにダンパレバーラチェットが嵌め込まれた状態を示す斜視図である。
【
図14A】
図12の状態からダンパレバーを30°回動させた状態を示す斜視図である。
【
図14B】
図14Aのダンパレバーアーム及びダンパレバーラチェット等の上部を拡大して裏側正面から見た状態で示す図である。
【
図15A】
図12の状態からダンパレバーを35°回動させた状態を示す斜視図である。
【
図15B】
図15Aのダンパレバーアーム及びダンパレバーラチェット等の上部を拡大して裏側正面から見た状態で示す図である。
【
図16】第2の実施形態の車両用シートに適用されるシート支持装置の概略構成の一部を示すブロック図である。
【
図17A】
図16のECUのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図18】
図16のECUによる制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図19】サスロック基本制御処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図20】状態復帰処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車両用シートについて
図1~
図15Bを用いて説明する。これらの図において適宜示される矢印FRはシート前方側を示しており、矢印UPはシート上方側を示しており、矢印INはシート幅方向内側を示している。
【0019】
図1には、本実施形態に係る車両用シート10が斜視図で示されている。
図1に示されるように、車両用シート10はシート本体10Hを有している。シート本体10Hは、乗員が着座する着座部を構成して着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を支持するシートバック14と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、を備えている。
【0020】
また、車両用シート10は、シートクッション12のシート下方側にシート支持装置20が配置されている。このシート支持装置20は、枠状のロアフレーム22と、ロアフレーム22の上方側に配置されてシート本体10Hを支持する枠状のアッパーフレーム24と、ロアフレーム22に対してアッパーフレーム24を上下動可能に支持するリンク機構26と、を備える。なお、
図1では、ロアフレーム22及びリンク機構26のそれぞれを一部省略してかつ簡略化して図示すると共にアッパーフレーム24を簡略して図示している。また、ロアフレーム22、アッパーフレーム24及びリンク機構26の各構成部は、例えば、特開2011-225177号公報、特開2021-46172号公報等で公知であるため、詳細説明を省略する。
【0021】
図2には、シート支持装置20の概略構成の一部がブロック図で示されている。
図2に示されるように、シート支持装置20は、エアサスペンション装置30とサスペンションロック装置(以下の説明では「サスロック装置」と略す)50とを含んで構成されている。
【0022】
エアサスペンション装置30は、エアスプリング32及びダンパ40を備える。エアスプリング32は、空気供給源(図示省略)から空気が供給され、アッパーフレーム24(
図1参照)の高さを調節する。ダンパ40は、ここではオイルダンパとされ、エアスプリング32の振動を減衰する。
【0023】
エアスプリング32には高さ調節部としてのハイト調節器34を介して高さ操作部としての回動操作用のハイトレバー36が接続されている。ハイトレバー36は、シートクッション12(
図1参照)の高さを調節するための操作部として設けられた第一レバー、言い換えれば、ハイト調節器34を操作するための第一レバーである。
図1に示されるように、ハイトレバー36は、シート支持装置20のエアサスペンション装置30のシート幅方向一方側(ここではシート右側)の側部に設けられてシート幅方向の軸線回りに回動可能に構成されている。ハイトレバー36については詳細後述する。
図2に示されるハイト調節器34は、バルブ(図示省略)を有し、ハイトレバー36の操作に応じて前記バルブを用いてエアスプリング32に空気を給排することで、アッパーフレーム24(
図1参照)の高さひいてはシートクッション12(
図1参照)の高さを調節する。
【0024】
ダンパ40には、ダンパ制御器42を介してダンパ操作部としての回動操作用のダンパレバー44が接続されている。ダンパレバー44は、ダンパ40の減衰力を変えるための操作部として設けられた第二レバーである。
図1に示されるように、ダンパレバー44は、シート支持装置20のエアサスペンション装置30の前記シート幅方向一方側(ここではシート右側)の側部に設けられてハイトレバー36の回動軸線と一致する軸線回りに回動可能に構成されている。すなわち、ハイトレバー36及びダンパレバー44は、同一の軸線回りに回動可能に構成されている。ダンパレバー44については詳細後述する。
図2に示されるダンパ制御器42は、ダンパレバー44の操作に応じてダンパ40の減衰力を変える。
【0025】
なお、エアサスペンション装置30の基本構成については、例えば、特開2021-46172号公報等の公知構成を適用できるため、詳細説明を省略する。
【0026】
サスロック装置50は、サスペンションロック機構(
図2及び以下の説明では「サスロック機構」と略す)52を備える。サスロック機構52は、例えばモータで駆動され、リンク機構26(
図1参照)の動作をロックしてサスペンション高さ位置を固定することができる。すなわち、サスロック機構52は、エアサスペンション装置30によるサスペンション機能をロックするサスペンションロック状態と、前記サスペンションロック状態を解除するロック解除状態と、の間で作動可能になっている。なお、サスロック機構52には、例えば、特開2021-46172号公報等で公知のサスロック機構を適用できるため、詳細説明を省略する。
【0027】
サスロック機構52には、ロック操作部としてのサスペンションロックスイッチ(
図2及び以下の説明では「サスロックSW」と略す)54及びサスペンションロック解除スイッチ(
図2及び以下の説明では「サスロック解除SW」と略す)56が接続されている。サスロックSW54は、乗員による操作部として設けられ、サスペンションロック状態にしたい場合にスイッチをONにするロック操作がなされ、ロック解除状態にしたい場合にスイッチをOFFにするロック解除操作がなされる。言い換えれば、サスロックSW54のロック操作に応じて、サスロック機構52は、サスペンションロック状態となるように作動し、サスロックSW54のロック解除操作に応じて、サスロック機構52は、ロック解除状態となるように作動する。一方、サスロック解除SW56は、詳細後述するように、シート支持装置20内に組み込まれており、サスロック解除SW56が操作された場合、サスロック機構52はロック解除状態となるように作動する。また、サスロック解除SW56は、ハイトレバー36及びダンパレバー44と共に、詳細後述するコントロールレバーユニット60の一部を構成している。
【0028】
次に、コントロールレバーユニット60について説明する。
図3には、コントロールレバーユニット60の組立状態が斜視図で示されている。このコントロールレバーユニット60は、エアサスペンション装置30(
図1参照)のシート幅方向一方側(ここではシート右側)に設けられる。
図4には、コントロールレバーユニット60を分解して
図3とは異なる方向から見た状態の分解斜視図が示され、
図5には、コントロールレバーユニット60の一部を分解すると共に
図3とほぼ同様の方向から見た状態でかつレバーベース62(
図3及び
図4参照)を透視した状態の分解斜視図が示されている。なお、
図5において、レバーベース62については外形形状を示す線の一部を二点鎖線で示す。
【0029】
図4及び
図5に示されるように、コントロールレバーユニット60は、ハイトレバー36、ハイトレバー用リテーナー38、ダンパレバー44、ダンパレバーアーム46、ダンパレバーラチェット48、レバーベース62、支持部材としてのハイトレバーアームシャフト64、トーションスプリング66(
図4参照)、及びサスロック解除SW56を備える。
【0030】
ハイトレバー36は、ハイトレバー用リテーナー38を介してハイトレバーアームシャフト64に連結されている。ハイトレバー36が回動操作された場合にハイトレバー36、ハイトレバー用リテーナー38及びハイトレバーアームシャフト64が一体的に回動するように構成されている。
【0031】
図6に示されるように、ハイトレバー36は、直線状に延在されたレバー本体36Aと、レバー本体36Aの基端側においてレバー本体36Aの長手方向と直交するようにハイトレバー用リテーナー38側に突出された軸部36Bと、を備える。レバー本体36Aにおいてシート後方側を向くように配置される長手方向一方側の部位はレバー本体36Aの正面視で円弧状に湾曲した円弧壁部36Cとなっている。円弧壁部36Cには嵌合孔36Dが貫通形成されている。また、レバー本体36Aの基端部は、裏側に開口して軸部36Bの周囲部が凹状に形成されており、円弧壁部36Cとの対向壁部36Eには、嵌合孔36Dとの対向部に嵌合孔36Fが貫通形成されている。
【0032】
ハイトレバー用リテーナー38は、ハイトレバー36とハイトレバーアームシャフト64とを連結する部品である。ハイトレバー用リテーナー38は、平板部38Aを備えており、この平板部38Aには、ハイトレバー36の軸部36Bが差し込まれる孔部38Bが貫通形成されている。また、ハイトレバー用リテーナー38には、ハイトレバー36の嵌合孔36D、36Fと嵌合する左右一対の第一嵌合爪38C、38Dが形成されている。
【0033】
図7には、ハイトレバー用リテーナー38の第一嵌合爪38Cとハイトレバー36の嵌合孔36Dとの嵌合状態がダンパレバー44(
図5参照)を不図示にした状態で示されている。
図6に示される第一嵌合爪38C、38Dと嵌合孔36D、36Fとの嵌合によって、ハイトレバー36及びハイトレバー用リテーナー38は、ハイトレバー36の回動方向において、互いの相対移動が規制される。
【0034】
ハイトレバー用リテーナー38には、平板部38Aからハイトレバーアームシャフト64側に延出されて形成された上下一対の第二嵌合爪38E、38Fが設けられている。これに対して、ハイトレバーアームシャフト64は、シート幅方向を軸方向として配置される円筒状の軸部64Aを備えると共にこの軸部64Aには第二嵌合爪38E、38Fが嵌合する嵌合孔64B、64Cが上下一対で貫通形成されている。
【0035】
図8には、ハイトレバー用リテーナー38の第二嵌合爪38Eとハイトレバーアームシャフト64の嵌合孔64Bとの嵌合状態がダンパレバー44(
図5参照)を不図示にした状態で示されている。
図6に示される第二嵌合爪38E、38Fと嵌合孔64B、64Cとの嵌合によって、ハイトレバー用リテーナー38とハイトレバーアームシャフト64とは、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aの軸方向において、互いの相対移動が規制される。
図6~
図8に示される構成についてまとめると、ハイトレバー36は嵌合構造を用いてハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aに固定されている。
【0036】
ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aは、
図4に示されるレバーベース62の軸受け部62Bによって回動可能に支持される。そして、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aは、ハイトレバー36の回動軸線と一致する軸線CL(所定の軸線)回りに回動可能に構成されてハイトレバー36が回動操作された場合にはハイトレバー36と一体的に回動するようになっている。レバーベース62は、ハイトレバーアームシャフト64のシート幅方向内側の部分、トーションスプリング66、及びサスロック解除SW56等を収容する収容ケース部62Aを備える。前述した軸受け部62Bは、シート幅方向視で収容ケース部62Aの中央部に形成されている。また、収容ケース部62Aには剛性確保用の多数のリブが形成されている。
【0037】
レバーベース62の収容ケース部62Aは、シート幅方向を厚さ方向として配置される側面壁部62A1と、側面壁部62A1の周端部からシート幅方向内側に延出された周壁部62A2と、側面壁部62A1の中央部側において段差部62A3を介して側面壁部62A1よりも一段シート幅方向外側に配置された中央壁部62A4と、を備える。側面壁部62A1におけるシート上下方向の上部及び下部には、軸受け部62Bの軸線を中心とする円弧形状に形成されたガイド孔62Dが貫通形成されている(
図10A参照)。また、周壁部62A2のシート幅方向内側の端部における所定部位からはフランジ部62Cが張り出している。フランジ部62Cには、車両用シート10(
図1参照)の下部のサイド部材(図示省略)に固定される被取付部62C1が設けられている。
【0038】
図9には、ハイトレバーアームシャフト64及びその周辺部を正面側とは反対側の裏側から見た状態の斜視図が示されている。ハイトレバーアームシャフト64は、ハイト調節器34(
図2参照)の操作用とされたハイトコントロール操作ケーブル68Aを操作する部材である。
図5及び
図9に示されるように、ハイトレバーアームシャフト64は、軸部64Aの軸線方向中間部から張り出した板状の張出部64Dを備える。張出部64Dは、略リング状の鍔部64D1と、鍔部64D1におけるシート上下方向両側から延出された延出部64D2と、で構成されている。
図5に示されるように、延出部64D2の表面側には、レバーベース62のガイド孔62D内に配置される突起64Tが形成されている。
【0039】
また、
図9に示されるように、ハイトレバーアームシャフト64には、張出部64Dにおける裏面から延出されてシート幅方向内側から見てシート前方側が開放されたV字状のV字壁部64Eが形成されている。さらにV字壁部64Eにおけるシート上下方向両側の端部側には、延出部64D2の裏面側にケーブル取付部64Fが形成されている。このケーブル取付部64Fには、ハイトコントロール操作ケーブル68Aの先端部に固定された被取付部材68Bが取り付けられている。
【0040】
ハイトコントロール操作ケーブル68Aは、インナケーブルとされ、アウタケーブル68Cの中を移動可能に挿通されて先端部側の部分がアウタケーブル68Cから露出している。ハイトコントロール操作ケーブル68Aは、アウタケーブル68Cと共にハイトコントロール用ケーブル68を構成している。そして、
図8に示されるハイトレバー36が回動されてハイトレバー用リテーナー38と共にハイトレバーアームシャフト64がハイトレバー36と一体的に回動することによって
図9に示されるハイトコントロール操作ケーブル68Aが変位し、ハイトコントロール操作ケーブル68Aの変位によってハイト調節器34(
図2参照)が操作されるようになっている。
【0041】
図10Aには、ハイトレバーアームシャフト64及びその周辺部の配置状態が裏側正面から見た状態の図で示されている。なお、この図では、ハイトコントロール操作ケーブル68A及びその先端部に固定された被取付部材68B(いずれも
図9参照)の図示を省略している。
【0042】
図9及び
図10Aに示されるように、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aの外周側にはトーションスプリング66が巻装されている。
図10Aに示されるように、トーションスプリング66の一端部66B側の部位は、ハイトレバーアームシャフト64の第一受け部64Gに当接し、レバーベース62の側面壁部62A1に貫通形成された第一長孔62Eに係止されている。第一長孔62Eは、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aの軸心を中心とする円弧状に形成され、その長手方向一端部はストッパとなっている。トーションスプリング66の他端部66C側の部位は、ハイトレバーアームシャフト64の第二受け部64Hに当接し、レバーベース62の側面壁部62A1に貫通形成された第二長孔62Fに係止されている。第二長孔62Fは、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aの軸心を中心とする円弧状部を備え、その長手方向一端部はストッパとなっている。そして、トーションスプリング66は、ハイトレバーアームシャフト64をその中立位置(
図10Aに示される位置)に配置させるように付勢している。
【0043】
レバーベース62の側面壁部62A1における裏面側には、ハイトレバーアームシャフト64のV字壁部64Eにおけるコーナ部64E1に対向する位置にサスロック解除SW56が配置されている。
図10Bには、
図10Aにおけるハイトレバーアームシャフト64とサスロック解除SW56との隣接部分が拡大された状態の図で示されている。
【0044】
図10Bに示されるように、ハイトレバーアームシャフト64のV字壁部64Eのシート上下方向下部側かつシート後方側には、シート幅方向内側から見て(
図10Bの方向視で)V字状に凹んだV字凹部64E2が形成されている。これに対して、サスロック解除SW56は、ハイトレバーアームシャフト64のV字壁部64Eにおけるコーナ部64E1及びV字凹部64E2に接するように曲げられた可動片56Aを備える。可動片56Aは、先端側においてV字凹部64E2に接すると共に、長手方向中間部においてV字壁部64Eのコーナ部64E1に接し、更に、V字壁部64Eのコーナ部64E1よりも基端側に略シート後方側を向く第一接点56Xが設けられている。また、サスロック解除SW56は、可動片56Aが所定量以上変形した場合に第一接点56Xと接触する第二接点56Yを備える。
【0045】
言い換えれば、
図8に示されるハイトレバー36が回動されてハイトレバー用リテーナー38と共にハイトレバーアームシャフト64がハイトレバー36と一体的に回動することによって
図10Bに示される可動片56Aが押圧されて変形し、可動片56Aが変形することで第一接点56Xが第二接点56Yと接触してサスロック解除SW56が操作されるようになっている。
【0046】
一方、
図5に示されるダンパレバー44は、ハイトレバー36に対してシート後方側に配置されて乗員に操作されるレバー本体44Aを備える。
図1の部分拡大図に示されるように、ダンパレバー44におけるレバー本体44Aは、正面視(シート側面視)でシート前方側の端部がハイトレバー36におけるレバー本体36Aのシート後方側の端部に合わせて円弧状に形成されている。
図5に示されるように、ダンパレバー44においてレバー本体44Aの基端側かつシート幅方向内側の部位は、ハイトレバー用リテーナー38の平板部38Aよりもシート幅方向内側に配置される回転基部44Bに一体に形成されている。回転基部44Bには、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aが差し込まれる円形の貫通部44Cが形成されている。そして、回転基部44Bは、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aによってシート幅方向の軸線CL(所定の軸線)回りに回動可能に支持されている。また、ダンパレバー44は、回転基部44Bがハイトレバー36に接することで、ハイトレバー36によって抜け止めされている。
【0047】
回転基部44Bは、レバー本体44Aの基端側かつシート幅方向内側の部位が連続するレバー基部44B1と、レバー基部44B1のシート幅方向外側に連続してレバー基部44B1より一回り小さい第一短円筒部44B2と、を有する。また、回転基部44Bは、レバー基部44B1のシート幅方向内側に連続してシート幅方向視でレバー基部44B1よりも大径とされた円板部44B3と、円板部44B3の外周部側の部位からシート幅方向内側に延出する第二短円筒部44B4と、を有する。第二短円筒部44B4の内径は、第一短円筒部44B2、レバー基部44B1及び円板部44B3を貫通する貫通部44Cの内径よりも大径とされる。第二短円筒部44B4には、シート幅方向内側に開口する切欠部44Dが第二短円筒部44B4の周方向に並ぶように複数形成されている。
【0048】
ダンパレバーアーム46は、第二短円筒部44B4の内側に差し込まれる円筒部46Aを備える。円筒部46Aには、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aが差し込まれる。そして、円筒部46Aは、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aに回転自在に支持されている。なお、図示を省略するが、円筒部46Aの内面には、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aへの組付時の仮止め用(軸方向の抜け止め用)として突起が形成されている。ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aにおいてその軸線方向に延びる左右対のスリット64Sは、ダンパレバーアーム46を組み付ける際に前記突起が干渉するのを回避するために設定されている。
【0049】
また、ダンパレバーアーム46は、円筒部46Aの外周側に一体に形成されてダンパレバー44の切欠部44Dに差し込まれるリブ46Bを備える。ダンパレバー44の切欠部44Dにダンパレバーアーム46のリブ46Bが差し込まれることで、ダンパレバー44及びダンパレバーアーム46は、ダンパレバー44の回動方向において、互いの相対移動が規制される。また、ダンパレバー44の切欠部44Dにおける開口側とは反対側の端部に、ダンパレバーアーム46のリブ46Bのシート幅方向外側の端部が当てられることで、ダンパレバーアーム46のシート幅方向外側への変位が規制される。これらにより、ダンパレバー44が回動されるとダンパレバーアーム46のみが回動されるように構成されている。また、ハイトレバーアームシャフト64は、ダンパレバー44の回動操作によっては回動しないように構成されている。
【0050】
また、ダンパレバーアーム46は、円筒部46Aの外周側に外周壁部46Cを有する。外周壁部46Cは、リブ46Bと一体に形成され、シート幅方向視でシート上方側及びシート下方側が先細りするような形状とされている。ダンパレバーアーム46の上端部にはケーブル取付部46Dが形成されている。
図3に示されるように、ケーブル取付部46Dには、ダンパコントロール操作ケーブル70Aの先端部に固定された被取付部材70Bが取り付けられている。
【0051】
ダンパコントロール操作ケーブル70Aは、インナケーブルとされ、アウタケーブル70Cの中を移動可能に挿通されて先端部側の部分がアウタケーブル70Cから露出している。ダンパコントロール操作ケーブル70Aは、アウタケーブル70Cと共にダンパコントロール用ケーブル70を構成している。そして、ダンパレバー44が回動されてダンパレバーアーム46がダンパレバー44と一体的に回動することによってダンパコントロール操作ケーブル70Aが変位した場合、ダンパコントロール操作ケーブル70Aによってダンパ制御器42(
図2参照)が操作されるようになっている。なお、ダンパコントロール操作ケーブル70A、被取付部材70B及びアウタケーブル70Cは、
図3以外では図示を省略する。
【0052】
図11Aには、レバーベース62にダンパレバーアーム46(
図11B参照)が組み付けられる前の状態の斜視図が示されており、
図11Bには、
図11Aの状態からレバーベース62にダンパレバーアーム46が組み付けられた状態の斜視図が示されている。
図11Aに示されるように、レバーベース62の中央壁部62A4のシート上下方向の下部には、軸受け部62Bの軸線を中心とする円弧形状に形成された長孔62Gが貫通形成されている。
図11Bに示されるように、ダンパレバーアーム46の下部にはレバーベース62の長孔62Gに差し込まれるピン46Pが形成されている。ピン46Pは、長孔62Gの長手方向の端部に当接することでストッパとして機能し、ダンパレバーアーム46の回動範囲を規制するための要素とされる。
【0053】
図12には、ダンパレバー44が標準位置にある状態でのダンパレバーアーム46等を裏側から見た状態の斜視図が示されている。
図12に示されるように、ダンパレバーアーム46は、裏面部46Eを備えている。裏面部46Eの中央部側領域46E1はその周囲部46E2に対してシート幅方向外側に一段凹んでいる。中央部側領域46E1とその周囲部46E2との境界部である段差面46E3には、シート幅方向内側から見て円形状に複数の雌スプライン46Sが連続的に形成された形状となっている。雌スプライン46Sは、段差面46E3の周方向において10°毎に設定されている。
【0054】
ダンパレバー44の中央部側領域46E1は、ダンパレバーラチェット48を介して
図11Aに示されるレバーベース62の中央壁部62A4に当てられる。
図13に示されるように、レバーベース62の中央壁部62A4は、軸受け部62Bの開口の外周部がその周囲部に対してシート幅方向外側に若干凸となっており、その外周側面部を構成する段差部62Lには、複数の凹部62Mが周方向に間隔をあけて並ぶように形成されている。これらの凹部62Mは、リング状のダンパレバーラチェット48の内周側に形成された複数の凸部48Bが嵌め込まれる。
【0055】
ダンパレバーラチェット48は、弾性変形可能な素材で形成され、円環状とされてレバーベース62の段差部62Lに沿って配置されるリング部48Aを備える。リング部48Aの外周側には、撓み変形可能でかつリング部48Aの一部と共に円弧状の空間を形成する複数の変形可能部48Cが形成されている。複数の変形可能部48Cの各々は、リング部48Aからその半径方向外側に短く延出された一対の延出部48C1と、一対の延出部48C1の延出方向先端部同士を繋いでリング部48Aの一部に沿って円弧状に延在された円弧部48C2と、を備える。複数の変形可能部48Cは、複数の凸部48Bに対応するように形成されている。より具体的には、変形可能部48Cの長手方向中央部は凸部48Bに対応する位置に設定されている。
【0056】
変形可能部48Cにおける円弧部48C2の長手方向中央部には雄スプライン48Sが一体に設けられている。雄スプライン48Sは、円弧部48C2からリング部48Aとは反対側に突き出しており、凸部48Bに対応する位置に設定されている。
【0057】
図14Aには、
図12の状態からダンパレバー44を矢印R方向に30°回動させた状態の斜視図が示され、
図14Bには、
図14Aのダンパレバーアーム46及びダンパレバーラチェット48等の上部を拡大して裏側正面から見た状態の図が示されている。
図14Bに示されるように、ダンパレバー44を10°単位で回動させた場合にはダンパレバーラチェット48の雄スプライン48Sがダンパレバーアーム46の雌スプライン46Sに嵌まった状態とされてダンパレバーアーム46が保持されるようになっている。
【0058】
図15Aには、
図12の状態からダンパレバー44を矢印R方向に35°回動させた状態の斜視図が示され、
図15Bには、
図15Aのダンパレバーアーム46及びダンパレバーラチェット48等の上部を拡大して裏側正面から見た状態の図が示されている。これらの図に示されるように、ダンパレバー44を10°単位以外で回動させた場合にはダンパレバーラチェット48の変形可能部48Cが撓んでダンパレバーアーム46における互いに隣り合う雌スプライン46S同士の境界部がダンパレバーラチェット48の雄スプライン48Sに当たった状態で保持されるようになっている。なお、
図15Bでは、ダンパレバーラチェット48の変形可能部48Cが撓まないと仮定した場合の変形可能部48C及び雄スプライン48Sの位置を二点鎖線で示す。
【0059】
(作用・効果)
次に、第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0060】
図2に示されるエアサスペンション装置30のハイト調節器34は、ハイトレバー36の操作に応じてエアスプリング32に空気を給排することでシートクッション12(
図1参照)の高さを調節する。また、サスロック装置50は、サスロックSW54のロック操作に応じてエアサスペンション装置30によるサスペンション機能をロックするサスペンションロック状態とする。
【0061】
ここで、サスロック装置50は、サスペンションロック状態で
図1に示されるハイトレバー36が回動操作された場合、
図5に示されるハイトレバー用リテーナー38及びハイトレバーアームシャフト64が一体的に回動し、これに連動して
図10Bに示されるサスロック解除SW56が操作されることで、サスペンションロック状態を解除する。このため、サスペンションロック状態で乗員が
図1に示されるハイトレバー36を操作する際に、手動で別途
図2に示されるサスロックSW54を操作する必要がなくなるので、操作性が良い。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用シート10によれば、エアサスペンション装置30とサスロック装置50とを有する構成においてシートクッション12の高さを調節したい場合の操作性を向上させることができる。
【0063】
また、
図5に示されるダンパレバー44をシート幅方向の軸線回りに回動可能に支持する軸部64Aを備えたハイトレバーアームシャフト64は、シート幅方向の軸線回りに回動可能であってハイトレバー36が回動操作された場合にはハイトレバー36と一体的に回動し、ダンパレバー44の回動操作によっては回動しない。このようなハイトレバー36、ダンパレバー44及びハイトレバーアームシャフト64を含んだ構成部材は、コントロールレバーユニット60としてユニット化することができるため、例えばハイトレバーとダンパレバーとを別々に車両用シートに組み付ける場合と比べて、車両用シートへの組付性が向上する。また、部品点数の削減にも寄与し得る。更に、ハイトレバー36とダンパレバー44とを近くに配置することができると共に操作ミスを抑える点でも有利な配置となっている。
【0064】
また、本実施形態では、
図6~
図8に示されるように、ハイトレバー36は嵌合構造を用いてハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aに固定され、
図3に示されるダンパレバー44はハイトレバー36によって抜け止めされている。このような構成では、ビスを用いないでハイトレバー36及びダンパレバー44をハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aに組み付けることができるので、組付性がよい。
【0065】
このように、本実施形態の車両用シート10によれば、組み立て工程の簡素化を可能にすることができる。なお、ハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aへのハイトレバー36及びダンパレバー44の組付構造は、ハイトレバー36及びダンパレバー44以外の二つのレバーにおける軸部への組み付けにも適用することが可能である。
【0066】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両用シートについて、
図16~
図20を用いて説明する。なお、本実施形態に係る車両用シートに適用されるシート本体は第1の実施形態のシート本体10H(
図1参照)と同様であるため、図示を省略する。
【0067】
図16には、本実施形態に係る車両用シートに適用されるシート支持装置80の概略構成の一部がブロック図で示されている。この図に示されるように、シート支持装置80は、サスロック装置50(
図2参照)に代えて、サスペンションロック装置(以下の説明では「サスロック装置」と略す)82を備える点で、第1の実施形態に係るシート支持装置20(
図1参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態と実質的に同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
図16に示されるように、サスロック装置82は、サスロックSW54と、サスロックSW54と電気的に接続された電子制御ユニットとしてのECU(Electronic Control Unit)90と、ECU90と電気的に接続されたサスペンションロック機構(
図16及び以下の説明では「サスロック機構」と略す)92と、を備える。サスロック機構92は、例えばモータで駆動され、エアサスペンション装置30によるサスペンション機能をロックするサスペンションロック状態と、前記サスペンションロック状態を解除するロック解除状態と、の間で作動可能になっており、ECU90によって作動が制御されている。また、ECU90は、ハイト調節器34と電気的に接続されており(図示省略)、ハイトレバー36が操作された後に所定の処理(詳細後述)を実行してからハイト調節器34に作動開始信号を送信するようになっている。また、本実施形態のハイト調節器34は、ECU90から作動開始信号を受信してから高さ調節のための作動を開始するようになっている。
【0069】
図17Aには、ECU90のハードウェア構成の一例がブロック図で示されている。
図17Aに示されるように、ECU90は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)90A、ROM(Read Only Memory)90B、RAM(Random Access Memory)90C、記憶部としてのストレージ90D、及び通信インタフェース(
図17Aでは「通信I/F」と略す。)90Eを有する。各構成は、バス90Zを介して相互に通信可能に接続されている。
【0070】
CPU90Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU90Aは、ROM90B又はストレージ90Dからプログラムを読み出し、RAM90Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU90Aは、ROM90B又はストレージ90Dに記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM90B又はストレージ90Dには、サスペンションロックに関する制御プログラム等が記憶されている。
【0071】
ROM90Bは、各種プログラム及び各種データを記憶する。RAM90Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ90Dは、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶する。本実施形態では、ストレージ90Dは、サスロック機構52の作動状態のデータを記憶する。
【0072】
通信インタフェース90Eは、ハイト調節器34等の他の機器と通信するためのインタフェースである。当該通信には、例えば、イーサネット(登録商標)若しくはFDDI等の有線通信の規格、又は、4G、5G、若しくはWi-Fi(登録商標)等の無線通信の規格が用いられる。
【0073】
図17Bには、ECU90の機能構成の一例がブロック図で示されている。
図17Bに示されるように、ECU90は、機能構成として、基本制御部900、自動解除制御部901及び復帰制御部902を有する。各機能構成は、CPU90AがROM90B又はストレージ90Dに記憶されたサスペンションロックに関する制御プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0074】
基本制御部900は、サスロックSW54のロック操作に応じて、エアサスペンション装置30によるサスペンション機能をロックするサスペンションロック状態とし、サスロックSW54のロック解除操作に応じてサスペンションロック状態を解除するように、サスロック機構52を制御する。
【0075】
自動解除制御部901は、ハイトレバー36が操作された場合でかつストレージ90Dに記憶されているデータに基づいてサスペンションロック状態であると判断した場合にサスペンションロック状態を解除するようにサスロック機構52を制御する。すなわち、サスロック装置50は、サスペンションロック状態でハイトレバー36が操作された場合にサスペンションロック状態を解除する。
【0076】
復帰制御部902は、ハイトレバー36の操作に応じてシートクッション12の高さがエアスプリング32によって調節されたと判断した場合に、ストレージ90Dに記憶されているデータに基づいて、サスロック機構52の作動状態がハイトレバー36の直近の操作時の直前と同じ状態になるように制御する。
【0077】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0078】
図18には、
図17Aに示されるECU90による制御処理の流れの一例がフローチャートで示されている。CPU90AがROM90B又はストレージ90Dからサスペンションロックに関する制御プログラムを読み出して、RAM90Cに展開して実行することにより、ECU90による制御処理が行なわれる。
図18に示される制御処理の実行は、一例として車両のイグニッションスイッチがONされた場合に開始される。
【0079】
まず、CPU90Aは、サスロック基本制御処理を実行する(ステップS101)。
図19には、サスロック基本制御処理ルーチンの一例がフローチャートで示されている。この
図19を参照しながらサスロック基本制御処理(ステップS101)について説明する。
【0080】
図19に示されるように、サスロック基本制御処理においては、まず、CPU90Aは、サスロックSW54がONか否かを判断する(ステップS1011)。サスロックSW54がONである場合(ステップS1011:Y)、CPU90Aは、サスペンションロック状態になるようにサスロック機構52を制御し、ステップS1014の処理へ移行する。サスロックSW54がOFFである場合(ステップS1011:N)、CPU90Aは、ロック解除状態になるようにサスロック機構52を制御し、ステップS1014の処理へ移行する。ステップS1014において、CPU90Aは、サスペンションロック状態及びロック解除状態のいずれの状態であるかについての情報をストレージ90Dに記憶させ、リターンする。
【0081】
次に、
図18に示されるように、CPU90Aは、ハイトレバー36によって高さ調節の操作がされているか否かを判断する(ステップS102)。ハイトレバー36によって高さ調節の操作がされていない場合(ステップS102:N)、CPU90AはステップS108の処理へ移行する。一方、ハイトレバー36によって高さ調節の操作がされている場合(ステップS102:Y)、CPU90AはステップS103の処理へ移行する。
【0082】
ステップS103において、CPU90Aは、サスロック機構52がロック解除状態か否かを判断する。サスロック機構52がロック解除状態でない場合(ステップS103:N)、CPU90Aは、サスロック機構52がロック解除状態となるように制御してその状態をストレージ90Dに記憶させ(ステップS104)、そのうえで、ステップS105の処理へ移行する。これにより、サスペンションロック状態で乗員がハイトレバー36を操作する際に、手動でサスロックSW54を操作する必要がなくなるので、操作性が良い。また、サスロック機構52がロック解除状態である場合(ステップS103:Y)、CPU90Aは、ステップS105の処理へ移行する。
【0083】
ステップS105において、CPU90Aは、通信インタフェース90Eを用いてハイト調節器34に作動開始信号を送信する。これにより、ハイト調節器34は作動を開始する。次に、CPU90Aは、ハイト調節器34の作動による高さ調節が終了しているか否かを判断する(ステップS106)。ハイト調節器34の作動による高さ調節が終了していない場合(ステップS106:N)、CPU90AはステップS106の処理を繰り返す。ハイト調節器34の作動による高さ調節が終了している場合(ステップS106:Y)、CPU90AはステップS107の処理へ移行する。
【0084】
ステップS107において、CPU90Aは、状態復帰処理を実行する。
図20には、状態復帰処理ルーチンの一例がフローチャートで示されている。この
図20を参照しながら状態復帰処理(ステップS107)について説明する。
【0085】
図20に示されるように、状態復帰処理においては、まず、CPU90Aは、ストレージ90Dに記憶されているデータに基づいて、ハイトレバー36の直近の操作時の直前の時点におけるサスロック機構52の状態がサスペンションロック状態であったか否かを判断する(ステップS1071)。直近のハイトレバー36の操作時の直前の時点におけるサスロック機構52の状態がロック解除状態であった場合(ステップS1071:N)、CPU90Aは、ステップS1073の処理へ移行する。また、直近のハイトレバー36の操作時の直前の時点におけるサスロック機構52の状態がサスペンションロック状態であった場合(ステップS1071:Y)、CPU90Aは、サスペンションロック状態になるようにサスロック機構52を制御し(ステップS1072)、ステップS1073の処理へ移行する。ステップS1073において、CPU90Aは、サスペンションロック状態及びロック解除状態のいずれの状態であるかについての情報をストレージ90Dに記憶させ、リターンする。このような制御により、乗員によるサスロックSW54の操作回数を減らすことができる。
【0086】
図18に示されるように、CPU90Aは、状態復帰処理(ステップS107)を実行した後、ステップS108の処理へ移行する。ステップS108において、CPU90Aは、例えば車両のイグニッションスイッチがOFFされたか否か等に基づいて、車両の運転が終了されたか否か判断する。運転が終了されていないと判断された場合(ステップS108:N)、CPU90Aは、ステップS101の処理に戻る。運転が終了されたものと判断された場合(ステップS108:Y)、CPU90Aは、
図18に示される制御処理を終了する。
【0087】
このように、本実施形態では、ECU90は、サスロック機構52の作動状態をストレージ90Dで記憶しており、ハイトレバー36が操作された場合でかつストレージ90Dに記憶されているデータに基づいてサスペンションロック状態であると判断した場合にサスペンションロック状態を解除するようにサスロック機構52を制御する。このため、上記の制御を機械的に構成する場合と比べて、構成を簡単にすることができ、組み立てを簡易にすることができる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば、エアサスペンション装置30とサスロック装置82とを有する構成においてシートクッション12の高さを調節したい場合の操作性を向上させることができる。
【0089】
[実施形態の補足説明]
なお、上記第2の実施形態では、
図17Bに示されるように、ECU90は機能構成として復帰制御部902を備えており、このような構成が好ましいが、電子制御ユニット(ECU)が復帰制御部902に相当する機能構成を備えない、といった構成も採り得る。
【0090】
また、上記実施形態では、
図4等に示されるハイトレバー36、ダンパレバー44及びハイトレバーアームシャフト64を含む部材がユニット化されて車両用シート10に組み付けられており、このような構成が好ましいが、高さ操作部とダンパ操作部とがユニット化されずに車両用シート10に組み付けられてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、ハイトレバー36は嵌合構造を用いてハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aに固定されているが、高さ操作部は嵌合構造を用いずにビス等を用いて支持部材としてのハイトレバーアームシャフト64の軸部64Aに固定されてもよい。
【0092】
また、上記実施形態で
図17Aに示されるCPU90Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0093】
また、上記実施形態で説明したプログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0094】
なお、上記実施形態及び上述の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0095】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
10 車両用シート
12 シートクッション
30 エアサスペンション装置
32 エアスプリング
34 ハイト調節器(高さ調節部)
36 ハイトレバー(第一レバー(高さ操作部))
40 ダンパ
44 ダンパレバー(第二レバー(ダンパ操作部))
50 サスペンションロック装置
54 サスペンションロックスイッチ(ロック操作部)
64 ハイトレバーアームシャフト(支持部材)
64A ハイトレバーアームシャフトの軸部(支持部材の軸部)
82 サスペンションロック装置
90 ECU(電子制御ユニット)
90D ストレージ(記憶部)
92 サスペンションロック機構