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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188684
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】シート搭載型エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20221214BHJP
   B60R 21/215 20110101ALI20221214BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096914
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
(72)【発明者】
【氏名】大鉢 次郎
(72)【発明者】
【氏名】堀田 昌志
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054BB22
3D054CC04
3D054CC11
3D054CC29
3D054CC45
(57)【要約】
【課題】窓と乗員の頭部との間の隙間が狭くても、エアバッグ本体がスムーズに展開されるシート搭載型エアバッグ装置を得る。
【解決手段】車両の衝突が検出又は予知されることで作動してガスを噴出するインフレータ28と、インフレータ28から噴出されたガスにより、ヘッドレスト16の窓18側のサイド部24Rから窓18と乗員Pの頭部Phとの間を通ってシート前方側へ展開し、窓18と乗員Pの頭部Phとの間に配置される前後チャンバと、前後チャンバのシート前方側端部からシート幅方向内側へ展開し、乗員Pの顔のシート前方側に配置される先端チャンバと、を有するエアバッグ本体32と、エアバッグ本体32の展開に先行してサイド部24Rから突出し、エアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在する誘導部材40と、を備えたシート搭載型エアバッグ装置30とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突が検出又は予知されることで作動してガスを噴出するインフレータと、
前記インフレータから噴出されたガスにより、ヘッドレストの窓側のサイド部から窓と乗員の頭部との間を通ってシート前方側へ展開し、前記窓と前記乗員の頭部との間に配置される前後チャンバと、該前後チャンバのシート前方側端部からシート幅方向内側へ展開し、前記乗員の顔のシート前方側に配置される先端チャンバと、を有するエアバッグ本体と、
前記エアバッグ本体の展開に先行して前記サイド部から突出し、前記エアバッグ本体と前記乗員の頭部との間に介在する誘導部材と、
を備えたシート搭載型エアバッグ装置。
【請求項2】
前記誘導部材は、布で構成されている請求項1に記載のシート搭載型エアバッグ装置。
【請求項3】
前記誘導部材は、前記サイド部の前壁で構成されている請求項1に記載のシート搭載型エアバッグ装置。
【請求項4】
前記誘導部材は、前記サイド部の前壁と、該前壁に設けられた布と、で構成されている請求項1に記載のシート搭載型エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搭載型エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前面衝突時に、シートバックの一方の側部から前方へ展開し、乗員の上半身(頭部を含む)の側方に配置されるエアバッグ本体部と、そのエアバッグ本体部からシート幅方向内側へ展開し、乗員の顔面前方に配置されるエアバッグ突出部と、を備えたサイドエアバッグ装置は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-008105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シートバックの窓側を向く側部にエアバッグ装置が搭載されている場合、車両の前面衝突時に、乗員の頭部が窓側に寄っていると、窓と乗員の頭部との間の隙間が狭くなって、エアバッグが展開し難くなり、エアバッグの展開が遅れるおそれがある。特に展開速度が速い蛇腹折りで収納されているエアバッグの場合は、展開時にエアバッグが乗員の頭部に引っ掛かる可能性がある。このように、窓と乗員の頭部との間の隙間を通ってエアバッグが展開するエアバッグ装置には、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、窓と乗員の頭部との間の隙間が狭くても、エアバッグ本体がスムーズに展開されるシート搭載型エアバッグ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のシート搭載型エアバッグ装置は、車両の衝突が検出又は予知されることで作動してガスを噴出するインフレータと、前記インフレータから噴出されたガスにより、ヘッドレストの窓側のサイド部から窓と乗員の頭部との間を通ってシート前方側へ展開し、前記窓と前記乗員の頭部との間に配置される前後チャンバと、該前後チャンバのシート前方側端部からシート幅方向内側へ展開し、前記乗員の顔のシート前方側に配置される先端チャンバと、を有するエアバッグ本体と、前記エアバッグ本体の展開に先行して前記サイド部から突出し、前記エアバッグ本体と前記乗員の頭部との間に介在する誘導部材と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、エアバッグ本体が、インフレータから噴出されたガスにより、ヘッドレストの窓側のサイド部から窓と乗員の頭部との間を通ってシート前方側へ展開する際、エアバッグ本体と乗員の頭部との間に介在する誘導部材が、エアバッグ本体の展開に先行してサイド部から突出する。そのため、ヘッドレストの窓側のサイド部からエアバッグ本体が展開しても、そのエアバッグ本体が乗員の頭部に引っ掛かるおそれがない。したがって、例えば乗員の頭部が窓側に寄って、窓と乗員の頭部との間の隙間が狭くなっていても、エアバッグ本体は、スムーズに展開される。
【0008】
また、請求項2に記載のシート搭載型エアバッグ装置は、請求項1に記載のシート搭載型エアバッグ装置であって、前記誘導部材は、布で構成されている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、誘導部材が、布で構成されている。したがって、誘導部材が、例えばプラスチックで構成されている場合に比べて、誘導部材が乗員の頭部に当たっても、その頭部が傷付くおそれが少ない。
【0010】
また、請求項3に記載のシート搭載型エアバッグ装置は、請求項1に記載のシート搭載型エアバッグ装置であって、前記誘導部材は、前記サイド部の前壁で構成されている。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、誘導部材が、サイド部の前壁で構成されている。したがって、誘導部材が、サイド部とは別体で設けられている場合に比べて、ヘッドレストの製造コストが低減される。
【0012】
また、請求項4に記載のシート搭載型エアバッグ装置は、請求項1に記載のシート搭載型エアバッグ装置であって、前記誘導部材は、前記サイド部の前壁と、該前壁に設けられた布と、で構成されている。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、誘導部材が、サイド部の前壁と、その前壁に設けられた布と、で構成されている。したがって、誘導部材が、布のみで構成されている場合に比べて、ヘッドレストの製造コストが低減される。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、窓と乗員の頭部との間の隙間が狭くても、エアバッグ本体をスムーズに展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置の展開後の状態を示す側面図である。
図2】本実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置の展開後の状態を示す平面図である。
図3】第1実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置の展開前の状態を一部破断して示す拡大平面図である。
図4】第1実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置の展開途中の状態を一部破断して示す拡大平面図である。
図5】第1実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置における折り畳み前のエアバッグ本体を拡大して示す展開図である。
図6】第2実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置の展開途中の状態を一部破断して示す拡大平面図である。
図7】第3実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置の展開前の状態を一部破断して示す拡大平面図である。
図8】第3実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置の展開途中の状態を一部破断して示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPをシート上方向、矢印FRをシート前方向、矢印RHをシート右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両用シートにおける上下、前後、左右を示すものとする。また、左右方向は、シート幅方向と同義である。
【0017】
また、本実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置(以下、単に「エアバッグ装置」という)30は、車両の後席としての車両用シート10のヘッドレスト16を構成するケース部20(後述)の内部に設けられている。したがって、本実施形態に係る車両用シート10は、後席として説明するが、このエアバッグ装置30は、前席に設けられていてもよい。
【0018】
また、このエアバッグ装置30は、後述するように、窓としてのサイドウインド18と乗員Pの頭部Phとの間を通って(サイドウインド18に沿って)前方側へ展開する。したがって、このエアバッグ装置30は、カーテンエアバッグ装置が設けられていない車両に適用され、後述する前後チャンバ34がカーテンエアバッグとして機能する。
【0019】
更に、本実施形態における「窓」には、サイドウインド18が閉じている状態のときだけではなく、開いている状態のときも含まれる。また、本実施形態における「乗員P」とは、一例として、人体ダミーAM50に相当する乗員である。
【0020】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係るエアバッグ装置30について説明する。図1図2に示されるように、車両用シート10は、乗員Pが着座する(乗員Pの臀部及び大腿部を支持する)シートクッション12と、乗員Pの背部を支持するシートバック14と、乗員Pの頭部Phを支持するヘッドレスト16と、を有している。
【0021】
ヘッドレスト16は、シートバック14の上端部におけるシート幅方向中央に昇降可能に設けられたブロック状の本体部16Aを有している。具体的に説明すると、本体部16Aの下面におけるシート幅方向中央には、円柱状のステー(図示省略)が左右一対で設けられている。
【0022】
各ステーは、シートバック14の上端部におけるシート幅方向中央に左右一対で設けられた略円筒状のヘッドレストサポート26(図3図4参照)に、昇降可能かつ所定の複数の位置で固定可能に挿通されている。また、ヘッドレスト16は、本体部16Aの後方から左右両側方にかけて連続して設けられたケース部20を有している。
【0023】
つまり、このケース部20は、平面視で前方側が開放された略「U」字状に形成されている。そして、ケース部20の内側に本体部16Aがほぼ隙間無く配置されている。なお、ケース部20において、前後方向に延在する左右のサイド部24の前端面(前壁20Fの外面)は、本体部16Aの前面と略面一になっている(図2図3参照)。
【0024】
また、ケース部20における左右の(サイド部24の)外側壁20A及び後壁20Bは、平面視で略「U」字状に形成された樹脂製のカバー部材22で構成されている。そして、ケース部20における上壁(図示省略)、下壁(図示省略)、前壁20F及び本体部16Aと対向する内周壁20Cは、ウレタンフォーム23で構成されており、カバー部材22及びウレタンフォーム23の外面が表皮材21で一体に被覆されている。
【0025】
ケース部20の内部には、所定の空間部S(後述する収納部S1及び配置部S2を含む)が形成されている。そして、ケース部20におけるサイドウインド18側(図示のものは右側)のサイド部24R内に形成された収納部S1には、エアバッグ装置30のエアバッグ本体32が収納されている。
【0026】
図1図2に示されるように、エアバッグ装置30は、後述するインフレータ28(図3図4参照)からガスが噴出されることによって、車両用シート10に着座した乗員Pの頭部Phの後方側(詳細には右側方後側)から前方側へ展開するエアバッグ本体32を有している。
【0027】
エアバッグ本体32は、サイドウインド18と乗員Pの頭部Phとの間に配置される前後チャンバ34と、前後チャンバ34の前方側端部からシート幅方向内側へ展開し、乗員Pの顔の前方側に配置される先端チャンバ36と、を有している。そして、このエアバッグ本体32は、前後チャンバ34の上端部における所定位置と、先端チャンバ36の上端部における所定位置とを連結する紐状のテザー38を有している。
【0028】
つまり、このエアバッグ本体32は、平面視で略「V」字状に折り曲げられて乗員Pの頭部Ph及び胸部の少なくとも一部を拘束するようになっている。なお、テザー38は、少なくとも前後チャンバ34の上端部と先端チャンバ36の上端部とを連結するように設けられていればよく、例えば前後チャンバ34の下端部における所定位置と先端チャンバ36の下端部における所定位置とを更に連結するように設けられていてもよい。
【0029】
図3に示されるように、ケース部20に形成されている空間部Sの後部側である配置部S2には、インフレータ28が配置されている。インフレータ28は、略円筒状に形成されており、その軸心部がシート幅方向に沿って配置されるように、その外周部が、リテーナ(図示省略)を介して、筐体状に形成された反力板(図示省略)に支持されている。
【0030】
反力板は、例えばシートバックフレーム(図示省略)にブラケット(図示省略)を介して固定されており、前方側へ展開するエアバッグ本体32からインフレータ28を介して伝達される反力を受け止められる構成になっている。なお、反力板及びリテーナも配置部S2に配置されている。
【0031】
インフレータ28は、車両に設けられたエアバッグECU(図示省略)と電気的に接続されており、車両に設けられた加速度センサー等の検出装置(図示省略)とエアバッグECUとが電気的に接続されている。したがって、インフレータ28は、検出装置によって車両の衝突が検出されると、エアバッグECUを介して作動し、ガスを瞬時に噴出するようになっている。
【0032】
なお、インフレータ28は、車両の衝突が検出されることによって作動する構成ではなく、衝突予知センサー等(図示省略)によって、車両の衝突が予知されることで作動する構成とされていてもよい。そして、そのインフレータ28の噴出口に、エアバッグ本体32の接続部31(図5も参照)が嵌められて接続されている。
【0033】
エアバッグ本体32は、サイド部24Rに形成された収納部S1に、平面視で蛇腹状に(所定の長さで交互に複数)折り畳まれた状態で収納されている。したがって、図4に示されるように、このエアバッグ本体32は、インフレータ28から噴出されたガスにより、蛇腹状がほどけながら、サイド部24Rからサイドウインド18と乗員Pの頭部Phとの間を通って(サイドウインド18に沿って)前方側へ展開するようになっている。
【0034】
また、サイド部24Rの前端面を構成する前壁20Fは、エアバッグ本体32の展開に伴い、例えば上下方向に沿った直線状に破断されるようになっている。ここで、破断される箇所は、前壁20Fのシート幅方向外側端部20Tであることが好ましい。換言すれば、前壁20Fのシート幅方向外側端部20Tに、破断され易くなる脆弱部等を形成しておくことが好ましい。
【0035】
破断される箇所が、前壁20Fのシート幅方向外側端部20Tであると、その前壁20Fは、シート幅方向内側端部20Nをヒンジ部として開放されることになるため、展開するエアバッグ本体32が乗員Pの頭部Phに接触することをより一層回避できる。
【0036】
また、図3に示されるように、サイド部24Rに形成された収納部S1には、エアバッグ本体32の展開に先行してサイド部24R(収納部S1)から突出し、エアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在する誘導部材40としての布(以下「誘導布」という)42が設けられている。
【0037】
誘導布42は、その一端部が、展開後でも収納部S1に残るエアバッグ本体32の基部32Aにおけるシート幅方向内側の側壁32Bに縫製等によって固定されている。そして、誘導布42の他端部は、蛇腹状に折り畳まれた状態で収容されているエアバッグ本体32と前壁20Fの内面との間を通り、サイド部24Rの外側壁20Aの内面に沿って配置されている。
【0038】
したがって、図4に示されるように、インフレータ28からガスが噴出され、エアバッグ本体32が前壁20Fを破断して展開すると、そのエアバッグ本体32に押されて誘導布42の他端部側がサイド部24R(収納部S1)から突出し、誘導布42がエアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在するようになっている。
【0039】
なお、誘導布42の突出方向に沿った長さは、平面視で乗員Pの顔の右側を覆うことができる程度の長さとされることが好ましい。また、誘導布42の高さ(上下方向に沿った長さ)は、乗員Pの顔の右側を覆うことができる程度の高さとすることが好ましく、例えば250mm~300mm程度とされることが好ましい。
【0040】
また、誘導布42は、エアバッグ本体32よりも剛性が高い方が好ましく、エアバッグ本体32を構成する素材(基布)にシリコンゴム等がコーティングされたコート布であることが好ましい。しかしながら、誘導布42は、これに限定されるものではなく、例えばエアバッグ本体32と同じ素材で構成されていても構わない。
【0041】
また、図5に示されるように、ガスが充填されていない状態のエアバッグ本体32の前後方向略中央部には、上下方向に延在する3つの第1非膨張部35が、その上下方向に所定の間隔を空けて縫製によって形成されている。そして、上下方向略中央部の第1非膨張部35の展開方向上流側には、前後方向に延在する第2非膨張部37が縫製によって連続的に形成されている。
【0042】
この第1非膨張部35及び第2非膨張部37によって、先端チャンバ36が前後チャンバ34に対してシート幅方向内側へ折れ曲がることが可能になっており、シート幅方向内側へ展開可能となる構成になっている。つまり、エアバッグ本体32は、第1非膨張部35よりも展開方向上流側が前後チャンバ34となっており、第1非膨張部35よりも展開方向下流側が先端チャンバ36となっている。
【0043】
以上のような構成とされた第1実施形態に係るエアバッグ装置30において、次にその作用について説明する。
【0044】
車両が前面衝突したことを検出装置が検出すると、インフレータ28が作動し、エアバッグ本体32の内部へガスを瞬時に噴出する。エアバッグ本体32の内部へガスが噴出されると、エアバッグ本体32が展開するが、その展開に先行して誘導布42がサイド部24Rから突出する。すなわち、展開するエアバッグ本体32によって、サイド部24Rの前壁20Fが破断されるとともに、誘導布42の他端部側がサイド部24R(収納部S1)から押し出される。
【0045】
これにより、誘導布42が、エアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在し、エアバッグ本体32は、その誘導布42のシート幅方向外側において、前方側へサイドウインド18に沿って展開する。すなわち、エアバッグ本体32は、サイド部24Rからサイドウインド18と誘導布42(乗員Pの頭部Ph)との間の隙間を通って前方側へ展開する。
【0046】
したがって、その展開時に、例えば図3図4に実線で示されるように、乗員Pの頭部Phが二点鎖線で示される位置からサイドウインド18側に寄っていて、サイドウインド18と誘導布42(乗員Pの頭部Ph)との間の隙間が狭くなっていても、エアバッグ本体32は、乗員Pの頭部Phに引っ掛かるおそれがなく、サイドウインド18に沿って容易かつスムーズに展開することができる。
【0047】
そして、完全に展開されたエアバッグ本体32(前後チャンバ34及び先端チャンバ36)により、車両用シート10に着座している乗員Pの頭部Ph及び少なくとも胸部の一部が拘束される。したがって、その乗員Pの頭部Ph及び少なくとも胸部の一部が慣性力によって前方へ移動するのをエアバッグ本体32(前後チャンバ34及び先端チャンバ36)によって抑制することができる。
【0048】
また、上記したように、誘導布42は、エアバッグ本体32よりも先に突出してエアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在する。そのため、エアバッグ本体32が展開するときに、乗員Pの顔が、エアバッグ本体32によって傷付くおそれがない。換言すれば、誘導布42によって、乗員Pの顔を保護することができる。
【0049】
また、誘導部材40が誘導布42で構成されているため、誘導部材40が、例えばプラスチックで構成されている場合に比べて、誘導部材40(誘導布42)が乗員Pの頭部Phに当たっても、その頭部Phが傷付くおそれが少ない。
【0050】
また、エアバッグ本体32の展開時に、前壁20Fが、シート幅方向内側端部20Nをヒンジ部として開放されることになっている。そのため、展開するエアバッグ本体32が乗員Pの頭部Phに接触することを、その前壁20Fによってより一層回避することができる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るエアバッグ装置30について説明する。なお、上記第1実施形態と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
【0052】
図6に示されるように、この第2実施形態では、誘導布42が設けられておらず、誘導部材40が、前壁20Fのみで構成されている点だけが、上記第1実施形態と異なっている。すなわち、エアバッグ本体32の展開に伴ってシート幅方向外側端部20Tが破断された前壁20Fが、シート幅方向内側端部20Nをヒンジ部として開放されることにより、その前壁20Fが、展開するエアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在するようになっている。
【0053】
これにより、エアバッグ本体32は、インフレータ28から噴出されたガスにより、サイド部24Rからサイドウインド18と乗員Pの頭部Phとの間を通って前方側へ展開する際、乗員Pの頭部Phに引っ掛かることが抑制又は防止され、サイドウインド18に沿って容易かつスムーズに展開することができる。
【0054】
また、第2実施形態のように、誘導部材40が、サイド部24Rの前壁20Fのみで構成されていると、誘導部材40が、サイド部24Rとは別体で設けられている場合(例えば誘導布42のみで構成されている場合)に比べて、ケース部20(ヘッドレスト16)の製造コストを低減させることができる。
【0055】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るエアバッグ装置30について説明する。なお、上記第1実施形態及び第2実施形態と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
【0056】
図7図8に示されるように、この第3実施形態では、前壁20Fのシート幅方向外側端部20Tに誘導布44が設けられている点だけが、上記第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。すなわち、第3実施形態における誘導部材40は、前壁20Fと誘導布44とで構成されている。
【0057】
誘導布44は、誘導布42よりも、その突出方向に沿った長さが短く形成されていることだけが、その誘導布42と異なっており、その高さ(上下方向に沿った長さ)は、誘導布42と同一とされている。そして、誘導布44の一端部が、前壁20Fのシート幅方向外側端部20Tに縫製等によって取り付けられており、誘導布44の他端部が、サイド部24Rの外側壁20Aの内面に沿って配置されている。
【0058】
なお、この状態で、誘導布44の他端部は、誘導布42の他端部と同じ位置に配置されている。換言すれば、サイド部24Rの外側壁20Aの内面に沿って配置された誘導布44の他端部が、誘導布42の他端部と同じ位置に配置されるように、その誘導布44の突出方向に沿った長さが設定されている。
【0059】
このような構成とされた誘導部材40の場合は、図8に示されるように、展開するエアバッグ本体32によってサイド部24Rの前壁20Fにおけるシート幅方向外側端部20Tが破断し、その前壁20Fがシート幅方向内側端部20Nをヒンジ部として回動すると、誘導布44の他端部側がサイド部24R(収納部S1)から押し出される。
【0060】
これにより、前壁20F及び誘導布44が、エアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在し、エアバッグ本体32は、その前壁20F及び誘導布44のシート幅方向外側において、前方側へサイドウインド18に沿って展開する。すなわち、エアバッグ本体32は、サイド部24Rからサイドウインド18と前壁20F及び誘導布44(乗員Pの頭部Ph)との間の隙間を通って前方側へ展開する。
【0061】
したがって、その展開時に、例えば図7図8に実線で示されるように、乗員Pの頭部Phが二点鎖線で示される位置からサイドウインド18側に寄っていて、サイドウインド18と前壁20F及び誘導布44(乗員Pの頭部Ph)との間の隙間が狭くなっていても、エアバッグ本体32は、乗員Pの頭部Phに引っ掛かるおそれがなく、サイドウインド18に沿って容易かつスムーズに展開することができる。
【0062】
また、第3実施形態のように、誘導部材40が、サイド部24Rの前壁20Fと、その前壁20Fに設けられた誘導布44と、で構成されていると、誘導部材40が、例えば誘導布42のみで構成されている場合に比べて、ケース部20(ヘッドレスト16)の製造コストを低減させることができる。
【0063】
以上、本実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置30について、図面を基に説明したが、本実施形態に係るシート搭載型エアバッグ装置30は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、インフレータ28を支持する反力板は、シートバックフレームではなく、ヘッドレストサポート26にブラケットを介して固定されていてもよい。
【0064】
また、誘導部材40は、誘導布42又は前壁20F、更には前壁20F及び誘導布44で構成されるものに限定されるものではない。誘導部材40は、エアバッグ本体32の展開に先行してサイド部24Rから突出し、エアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在するような構成になっていれば、どのような構成のものでもよい。
【0065】
例えば、誘導部材40は、エアバッグ本体32の展開に伴い、ケース部20の内周壁20Cの内面に沿ってスライドして突出し、エアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在する柔らかい樹脂製のシート状部材で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
16 ヘッドレスト
18 サイドウインド(窓)
20F 前壁(誘導部材)
24R サイド部
28 インフレータ
30 エアバッグ装置(シート搭載型エアバッグ装置)
32 エアバッグ本体
34 前後チャンバ
36 先端チャンバ
40 誘導部材
42 誘導布(布)
44 誘導布(布)
P 乗員
Ph 頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8