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特開2022-188687セラミックス成形体の誘電乾燥方法及び誘電乾燥装置、並びにセラミックス構造体の製造方法
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  • 特開-セラミックス成形体の誘電乾燥方法及び誘電乾燥装置、並びにセラミックス構造体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188687
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】セラミックス成形体の誘電乾燥方法及び誘電乾燥装置、並びにセラミックス構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/24 20060101AFI20221214BHJP
   H05B 6/78 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B28B11/24
H05B6/78 B
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096919
(22)【出願日】2021-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】夫馬 義将
(72)【発明者】
【氏名】田島 裕一
【テーマコード(参考)】
3K090
4G055
【Fターム(参考)】
3K090AA01
3K090AB13
3K090EA03
3K090NA01
4G055AA08
4G055AC10
4G055BA05
4G055BA09
(57)【要約】
【課題】乾燥受台に載置された複数のセラミックス成形体の搬送方向Xと垂直な配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきを抑制することが可能なセラミックス成形体の誘電乾燥方法を提供する。
【解決手段】乾燥受台20の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置された複数のセラミックス成形体10を、上部電極130と下部電極140との電極間に搬送し、電極間に高周波を印加することによって乾燥させるセラミックス成形体10の誘電乾燥方法である。乾燥受台20の搬送は、乾燥受台20の配列方向Yにおける一部分を支持する1つ以上のコンベアベルト121を有するコンベア120によって行われる。また、コンベアベルト121によって支持されていない乾燥受台20の下方に1つ以上の電界調整部材150が配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置された複数のセラミックス成形体を、上部電極と下部電極との電極間に搬送し、前記電極間に高周波を印加することによって乾燥させるセラミックス成形体の誘電乾燥方法であって、
前記乾燥受台の搬送が、前記乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分を支持する1つ以上のコンベアベルトを有するコンベアによって行われ、
前記コンベアベルトによって支持されていない前記乾燥受台の下方に1つ以上の電界調整部材が配置されている、セラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項2】
前記電界調整部材は、前記コンベアベルトの厚さの20%以上100%未満の厚さの板材である、請求項1に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項3】
前記電界調整部材は、鉛直方向Zにおいて、上方の前記セラミックス成形体の位置に対応する領域に配置される、請求項1又は2に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項4】
前記電界調整部材は、導電体及び比誘電率が1.0以上の絶縁体から選択される1種以上から構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項5】
前記電界調整部材は、金属、セラミックス及び樹脂から選択される1種以上から構成されている、請求項4に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項6】
前記電界調整部材は、前記セラミックス成形体の乾燥状態に応じて位置が移動される、請求項1~5のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項7】
前記セラミックス成形体の含水率が1~60%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項8】
前記セラミックス成形体は、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム成形体である、請求項1~7のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法を含む、セラミックス構造体の製造方法。
【請求項10】
上部電極と、
下部電極と、
複数のセラミックス成形体が搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置される乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分を支持する1つ以上のコンベアベルトを有し、前記コンベアベルトによって前記上部電極と前記下部電極との電極間に前記複数のセラミックス成形体を搬送することが可能なコンベアと、
前記コンベアベルトによって支持されていない前記乾燥受台の下方に配置された1つ以上の電界調整部材と
を備えるセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項11】
前記電界調整部材は、前記コンベアベルトの厚さの20%以上100%未満の厚さの板材である、請求項10に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項12】
前記電界調整部材は、鉛直方向Zにおいて、上方の前記セラミックス成形体の位置に対応する領域に配置される、請求項10又は11に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項13】
前記電界調整部材は、導電体及び比誘電率が1.0以上の絶縁体から選択される1種以上から構成されている、請求項10~12のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項14】
前記電界調整部材は、金属、セラミックス及び樹脂から選択される1種以上から構成されている、請求項13に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項15】
前記電界調整部材の位置を移動可能な駆動機構を更に備える、請求項10~14のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス成形体の誘電乾燥方法及び誘電乾燥装置、並びにセラミックス構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス構造体は様々な用途で使用されている。例えば、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム形状のセラミックス構造体は、触媒担体や、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)などの各種フィルタなどに広く使用されている。
【0003】
セラミックス構造体は、セラミックス原料を含む坏土を成形してセラミックス成形体を得た後、セラミックス成形体を乾燥させて焼成することによって製造される。なお、本明細書において、押出成形後、乾燥させる前の状態をセラミックス成形体、焼成後の状態をセラミックス構造体と称する。
セラミックス成形体の乾燥方法としては誘電乾燥が一般に用いられている。誘電乾燥では、一対の電極間にセラミックス成形体を配置し、電極に通電することで発生する高周波エネルギーによってセラミックス成形体内の水の双極子を分子運動させ、その摩擦熱によってセラミックス成形体を乾燥させることができる。なお、本明細書において「誘電乾燥」とは、一対の電極間に被乾燥体を配置して乾燥を行う高周波誘電乾燥(周波数1~100MHz程度)のことを意味しており、発振器から電磁波を被乾燥体に放射して乾燥を行うマイクロ波乾燥(周波数300MHz~300GHz程度)は包含されない。
【0004】
しかしながら、誘電乾燥では、セラミックス成形体を均一に乾燥することが難しく、焼成時にクラックなどが発生したり、セラミックス構造体の寸法が不均一になったりするという問題がある。そのため、誘電乾燥において様々な工夫が行われている。
例えば、特許文献1には、乾燥受台にハニカム成形体(セラミックス成形体)を載置して誘電乾燥すると、上下端面付近に高水分領域が発生することから、ハニカム成形体の開口下端面が接する部分を含む一定領域を孔明板とした乾燥受台を用いて乾燥を行う方法が提案されている。
また、特許文献2には、コンベアによって連続して搬送されるハニカム成形体(セラミックス成形体)の乾きのばらつきを抑えるために、ハニカム成形体の開口上端面上方及び下端面下方に設けた電極を、上下対応する位置で複数に分割し、一対の電極単位毎にハニカム成形体を間欠的に移動させて乾燥を行う方法が提案されている。
さらに、特許文献3には、ハニカム成形体を均一に乾燥させるために、一対の電極の間でハニカム成形体をその長手軸を中心として回転させながら乾燥を行う方法が提案されている。
【0005】
他方、冷凍食材の高周波解凍装置に関するものではあるが、特許文献4には、冷凍食材の解凍状態に応じて電極の面積を変化させることにより、解凍ムラを抑制する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭60-37382号公報
【特許文献2】特開平5-105501号公報
【特許文献3】特開平6-298563号公報
【特許文献4】特許第4630189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セラミックス成形体の誘電乾燥は、乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yにセラミックス成形体を複数(例えば、2~5個)並べて載置し、コンベアによって乾燥受台を上部電極と下部電極との間に連続的に搬送して高周波を印加することによって行われる。コンベアは、配列方向Yにおいて乾燥受台の一部分を支持する1つ以上のコンベアベルトを有している。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、乾燥受台に載置された単一のセラミックス成形体における上部及び下部の乾燥状態のばらつきを抑制することができるものの、配列方向Y(乾燥受台の幅方向)における乾燥状態のばらつきを抑制することが難しい。実際、配列方向Yにおいて、コンベアベルトによって支持された部分では、局所的に電界強度が大きくなり、乾燥収縮量が増加する傾向にある。一方、コンベアベルトによって支持されていない部分では、電界強度が小さくなり、乾燥収縮量が低下する傾向にある。その結果、配列方向Yに並べて載置されたセラミックス成形体の位置の違いによって乾燥状態がばらついてしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載の方法は、複数の乾燥受台に載置されたセラミックス成形体の搬送方向Xにおける乾燥状態のばらつきを抑制することを目的としており、乾燥受台に載置された複数のセラミックス成形体の配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきを抑制するものではない。
また、特許文献3に記載の方法は、バッチ炉で用いられる方法であるため、大量生産を前提とする連続炉において、この方法を適用することは難しい。
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、乾燥受台に載置された複数のセラミックス成形体の搬送方向Xと垂直な配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきを抑制することが可能なセラミックス成形体の誘電乾燥方法及び誘電乾燥装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、形状の均一化が可能なセラミックス構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置された複数のセラミックス成形体の誘電乾燥について鋭意研究を行った結果、配列方向Yにおいて、コンベアベルトによって支持されていない乾燥受台の下方に1つ以上の電界調整部材を配置することにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置された複数のセラミックス成形体を、上部電極と下部電極との電極間に搬送し、前記電極間に高周波を印加することによって乾燥させるセラミックス成形体の誘電乾燥方法であって、
前記乾燥受台の搬送が、前記乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分を支持する1つ以上のコンベアベルトを有するコンベアによって行われ、
前記コンベアベルトによって支持されていない前記乾燥受台の下方に1つ以上の電界調整部材が配置されている、セラミックス成形体の誘電乾燥方法である。
【0012】
また、本発明は、前記セラミックス成形体の誘電乾燥方法を含む、セラミックス構造体の製造方法である。
【0013】
さらに、本発明は、上部電極と、
下部電極と、
複数のセラミックス成形体が搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置される乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分を支持する1つ以上のコンベアベルトを有し、前記コンベアベルトによって前記上部電極と前記下部電極との電極間に前記複数のセラミックス成形体を搬送することが可能なコンベアと、
前記コンベアベルトによって支持されていない前記乾燥受台の下方に配置された1つ以上の電界調整部材と
を備えるセラミックス成形体の誘電乾燥装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乾燥受台に載置された複数のセラミックス成形体の搬送方向Xと垂直な配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきを抑制することが可能なセラミックス成形体の誘電乾燥方法及び誘電乾燥装置を提供することができる。
また、本発明によれば、形状の均一化が可能なセラミックス構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るセラミックス成形体の誘電乾燥方法に用いるのに好適な誘電乾燥装置の搬送方向Xにおける概略図である。
図2図1の誘電乾燥装置の配列方向Yにおける概略図である。
図3】別の誘電乾燥装置の配列方向Yにおける概略図である。
図4図2の誘電乾燥装置において別の電界調整部材を配置した場合の概略図である。
図5】配列方向Yにおけるセラミックス成形体の位置と加熱量分配比との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0017】
(1)セラミックス成形体の誘電乾燥方法及び誘電乾燥装置
本発明の実施形態に係るセラミックス成形体の誘電乾燥方法は、乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置された複数のセラミックス成形体を、上部電極と下部電極との間(電極間)に搬送し、その電極間に高周波を印加することによって乾燥させることで実施される。
このセラミックス成形体の誘電乾燥方法に用いるのに好適な誘電乾燥装置の搬送方向Xにおける概略図を図1に示す。また、この誘電乾燥装置の配列方向Yにおける概略図を図2に示す。
【0018】
図1及び2に示されるように、誘電乾燥装置100は、上部電極130と、下部電極140と、複数のセラミックス成形体10が搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置される乾燥受台20の配列方向Yにおける一部分を支持する1つ以上のコンベアベルト121を有し、コンベアベルト121によって上部電極130と下部電極140との電極間に複数のセラミックス成形体10を搬送することが可能なコンベア120と、コンベアベルト121によって支持されていない乾燥受台20の下方に配置された1つ以上の電界調整部材150とを備える。上部電極130は誘電乾燥炉110の上方に設けられ、下部電極140は誘電乾燥炉110の下方に設けられる。また、誘電乾燥装置100は、本発明の効果を阻害しない範囲において、公知の構造(例えば、通風乾燥装置など)を更に備えていてもよい。
【0019】
乾燥受台20に載置された複数のセラミックス成形体10は、コンベア120のコンベアベルト121によって誘電乾燥炉110の上部電極130と下部電極140との電極間に搬送される。このとき、上部電極130と下部電極140との間に電流を流すことで発生した高周波エネルギーによってセラミックス成形体10内の水の双極子を分子運動させ、その摩擦熱によってセラミックス成形体10を乾燥させることができる。
【0020】
コンベア120のコンベアベルト121は、コンベア120の種類によっても異なるが、乾燥受台20の配列方向Yの長さよりも短く、乾燥受台20の配列方向Yにおける一部分を支持する。したがって、コンベアベルト121によって支持されていない乾燥受台20の下方には空間が生じる。例えば、コンベア120のコンベアベルト121は、図2に示されるように、乾燥受台20の配列方向Yの両端近傍を支持する2つのコンベアベルト121であることができる。或いは、コンベア120のコンベアベルト121は、図3に示されるように、乾燥受台20の配列方向Yの中央部を支持する1つのコンベアベルト121であることができる。なお、コンベアベルト121の数及び位置は、図2及び3で示した具体例に限定されない。
【0021】
上記のようなコンベアベルト121によって乾燥受台20に載置された複数のセラミックス成形体10を上部電極130と下部電極140との電極間に搬送すると、コンベアベルト121によって支持されていない乾燥受台20に載置されたセラミックス成形体10bにおける電界強度が、コンベアベルト121によって支持されている乾燥受台20に載置されたセラミックス成形体10aにおける電界強度よりも小さくなり、複数のセラミックス成形体10の乾燥状態が配列方向Yでばらついてしまう。
そこで、本発明の実施形態では、コンベアベルト121によって支持されていない乾燥受台20の下方の空間に、1つ以上の電界調整部材150を配置している。このような位置に電界調整部材150を配置することにより、配列方向Yにおける電界強度が概ね同程度となり、複数のセラミックス成形体10の配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきを抑制することができる。
【0022】
電界調整部材150としては、電界強度を調整することが可能なものであれば特に限定されないが、コンベアベルト121の厚さの20%以上100%未満の厚さの板材であることが好ましい。このような板材であれば、コンベアベルト121によって支持されていない乾燥受台20の下方の空間に容易に配置することができる。なお、コンベアベルト121の厚さは、特に限定されないが、例えば10~50mmである。
【0023】
電界調整部材150は、図2に示されるように、コンベアベルト121によって支持されていない乾燥受台20の下方の1つの空間に複数の電界調整部材150が分割して配置されていてもよいが、図4に示されるように、当該空間に1つの電界調整部材150が配置されていてもよい。電界調整部材150が分割して配置される場合、それぞれの電界調整部材150の配列方向Yにおける長さは、セラミックス成形体10の配列方向Yにおける長さと同じか、又はそれよりも大きいことが好ましい。
【0024】
電界調整部材150は、鉛直方向Zにおいて、上方のセラミックス成形体10bの位置に対応する領域(乾燥受台20の下方の空間)に配置されることが好ましい。このように電界調整部材150を配置することにより、配列方向Yにおける電界強度のばらつきを安定して抑制することができる。
【0025】
電界調整部材150は、導電体及び比誘電率が1.0以上の絶縁体から選択される1種以上から構成されていることが好ましい。電界調整部材150を導電体から構成することにより、電界調整部材150が下部電極140の一部として機能し、電界調整部材150が存在する領域で電極間の距離が短くなる。その結果、電界調整部材150が配置された領域で電界強度が増大し、配列方向Yにおける電界強度のばらつきを抑制することができる。また、電界調整部材150を比誘電率が1.0以上の絶縁体から構成することにより、電界調整部材150が配置された領域で電気を誘引させることができる。その結果、当該領域で電界強度が増大し、配列方向Yにおける電界強度のばらつきを抑制することができる。さらに、電界調整部材150を導電体と比誘電率が1.0以上の絶縁体との複合体から構成することにより、導電体及び絶縁体による上記の機能の両方が得られるため、電界調整部材150が配置された領域で電界強度が増大し、配列方向Yにおける電界強度のばらつきを抑制することができる。
【0026】
電界調整部材150を構成する上記の導電体及び絶縁体の例としては、金属、セラミックス、樹脂などが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような材料を用いることにより、電界調整部材150を容易に作製することができる。
【0027】
誘電乾燥装置100は、電界調整部材150の位置を移動可能な駆動機構を更に備えることが好ましい。このような駆動機構を設けることにより、セラミックス成形体10の乾燥状態に応じて電界調整部材150の位置を移動させることができるため、複数のセラミックス成形体10の配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきをより一層安定して抑制することができる。具体的には、誘電乾燥後のセラミックス成形体10の乾燥状態を測定し、当該測定結果に基づき、駆動機構によって電界調整部材150の位置(例えば、搬送方向X、配列方向Y及び鉛直方向Zの1つ以上の位置)を移動させることにより、電界調整部材150が存在する領域における電界強度を微調整することができる。
駆動機構としては、電界調整部材150の位置を調整可能なものであれば特に限定されず、例えば、モーター、エアジャッキなどの公知の部材が挙げられる。これらの駆動機構は、電界調整部材150と直接的に又は接続部材を介して間接的に接続すればよい。
電界調整部材150における駆動機構の接続位置としては、誘電乾燥の邪魔にならない位置であれば特に限定されず、例えば、電界調整部材150の側面に駆動機構を接続すればよい。
【0028】
乾燥受台20に載置される複数のセラミックス成形体10の数は、乾燥受台20の大きさなどに応じて適宜調整すればよいが、好ましくは2~5個、より好ましくは3~5個である。
乾燥受台20に載置される複数のセラミックス成形体10の大きさは、特に限定されないが、鉛直方向Zの長さが略同一であることが好ましく、全方向の長さが略同一であることがより好ましい。
【0029】
上部電極130及び下部電極140はいずれも、公知の電極板を用いることができる。また、上部電極130は、公知の方法によって加工することによって所望の形状にすることができる。
【0030】
複数のセラミックス成形体10の上端面11aには補助電極を載置してもよい。補助電極を載置することにより、誘電乾燥時に電界強度が不均一になり易いセラミックス成形体10の上端面11aにおける電界強度を均一化することができる。そのため、セラミックス成形体10の全体の加熱量を均一化して乾燥ムラを低減することができる。
【0031】
補助電極の材質としては、特に限定されないが、導電率がセラミックス成形体10の導電率よりも高いことが好ましい。このような導電率を有していれば、補助電極としての機能を十分に確保することができる。補助電極の材質の例としては、アルミニウム、銅、アルミニウム合金、銅合金、グラファイトなどが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
補助電極としては、例えば、孔明板を用いることができる。
ここで、本明細書において「孔明板」とは、開孔を有する板材のことを意味する。
【0032】
孔明板の開孔率は、特に限定されないが、好ましくは20~90%、より好ましくは40~80%である。このような範囲に開孔率を制御することにより、誘電乾燥時に電界強度が不均一になり易いセラミックス成形体10の上端面11aにおける電界強度を均一化することができる。そのため、セラミックス成形体10の全体の加熱量を均一化して乾燥ムラを低減することができる。
ここで、本明細書において「孔明板の開孔率」とは、セラミックス成形体10の上端面11aと接触する孔明板の面の総面積に対する開孔面積の割合のことを意味する。
セラミックス成形体10の上端面11aと接触する孔明板の面における開孔の形状としては、特に限定されず、例えば、円形、四角形、スリット状などの各種形状とすることができる。
【0033】
セラミックス成形体10が載置される乾燥受台20としては、特に限定されないが、複数のセラミックス成形体10の下端面11bと接する部分に孔明板を有することが好ましい。このような構成とすることにより、誘電乾燥時にセラミックス成形体10の下端面11bから水蒸気を除去し易くなるため、セラミックス成形体10が均一に乾燥され易くなる。
【0034】
孔明板の材質としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、アルミニウム合金、銅合金、グラファイトなどが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
乾燥受台20に用いられる孔明板の開孔率や開孔の形状は、特に限定されないが、補助電極に用いられる孔明板と同様にすることができる。
【0035】
誘電乾燥時の各種条件(周波数、出力、加熱時間など)は、被乾燥物(セラミックス成形体10)や誘電乾燥装置100の種類などに応じて適宜設定すればよい。例えば、誘電乾燥時の周波数は、10MHz~100MHzが好適である。
【0036】
誘電乾燥に供されるセラミックス成形体10としては、特に限定されないが、含水率が1~60%であることが好ましく、5~55%であることがより好ましく、10~50%であることが更に好ましい。このような範囲の含水率を有するセラミックス成形体10は、誘電乾燥時に乾燥状態がばらつき易い。そのため、このような範囲の含水率を有するセラミックス成形体10を用いることにより、本発明の効果がより得られ易い。
ここで、本明細書において、セラミックス成形体10の含水率とは、赤外線加熱式水分計によって測定される含水率のことを意味する。
【0037】
セラミックス成形体10としては、特に限定されないが、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム成形体であることが好ましい。
【0038】
ハニカム成形体のセル形状(セルが延びる方向に直交する断面におけるセル形状)としては、特に限定されない。セル形状の例としては、三角形、四角形、六角形、八角形、円形又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0039】
ハニカム成形体の形状としては、特に限定されず、円柱状、楕円柱状、端面が正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形などの多角柱状などを挙げることができる。
【0040】
セラミックス成形体10は、セラミックス原料及び水を含む原料組成物を混練して得られた坏土を成形することによって得ることができる。
セラミックス原料としては、特に限定されず、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウムなどを用いることができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42~56質量%、アルミナが30~45質量%、マグネシアが12~16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0041】
原料組成物は、セラミックス原料及び水以外に、分散媒、結合材(例えば、有機バインダ、無機バインダなど)、造孔材、界面活性剤などを含むことができる。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするセラミックス成形体10の構造、材質などに合わせた組成比とすることが好ましい。
【0042】
原料組成物を混練して坏土を形成する方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機などを用いることができる。また、セラミックス成形体10の成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形などの公知の成形方法を用いることができる。具体的には、セラミックス成形体10としてハニカム成形体を作製する場合、所望のセル形状、隔壁(セル壁)の厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形すればよい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金を用いることができる。
【0043】
本発明の実施形態に係るセラミックス成形体10の誘電乾燥方法及び誘電乾燥装置100は、コンベアベルト121によって支持されていない乾燥受台20の下方に1つ以上の電界調整部材150を配置しているため、配列方向Yにおける電界強度を同程度にすることができる。そのため、複数のセラミックス成形体10の配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきを抑制することができる。
【0044】
(2)セラミックス構造体の製造方法
本発明の実施形態に係るセラミックス構造体の製造方法は、上記のセラミックス成形体10の誘電乾燥方法を含む。
なお、本発明の実施形態に係るセラミックス構造体の製造方法において、上記の誘電乾燥方法以外の工程は、特に限定されず、当該技術分野において公知の工程を適用することができる。具体的には、本発明の実施形態に係るセラミックス構造体の製造方法は、上記の誘電乾燥方法を用いてセラミックス成形体10を乾燥させることによってセラミックス乾燥体を得た後に、セラミックス乾燥体を焼成してセラミックス構造体を得る焼成工程を更に含むことができる。
【0045】
セラミックス乾燥体の焼成方法としては、特に限定されず、例えば、焼成炉において焼成すればよい。また、焼成炉及び焼成条件は、作製するハニカム構造体の外形、材質などに応じて公知の条件を適宜選択することができる。なお、焼成前には仮焼成によってバインダなどの有機物を除去してもよい。
【0046】
本発明の実施形態に係るセラミックス構造体の製造方法は、複数のセラミックス成形体10の配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきを抑制することが可能な誘電乾燥方法を含んでいるため、セラミックス構造体の形状を均一化することができる。
【実施例0047】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0048】
<実施例1>
(セラミックス成形体の作製)
セラミックス成形体としてハニカム成形体を作製した。まず、セラミックス原料としてアルミナ、カオリン及びタルクを混合したコージェライト化原料を用い、有機バインダを含む結合材、造孔材としての吸水性樹脂、分散媒としての水をコージェライト化原料と混合して原料組成物とし、原料組成物を混錬して坏土を得た。次に、得られた坏土を押出成形し、セルの延びる方向に直交する断面形状が正方形であるセルを有するハニカム成形体を得た。ハニカム成形体は、外径(直径)を140mm、長さ(セルが延びる方向の長さ)を200mm、外径を円柱状とした。また、このハニカム成形体は、含水率が40%であった。ハニカム成形体の含水率及び重さは、作製した全てのハニカム成形体の平均値である。
【0049】
(セラミックス成形体の誘電乾燥)
上記で作製したセラミックス成形体(ハニカム成形体)を用いて誘電乾燥を行った。具体的には、次のような手順で行った。
ハニカム成形体の下端面と接する部分にアルミニウム製孔明板(開孔率60%、厚さ2mm)を有する乾燥受台(厚さ10mm)の上面に5個のセラミックス成形体を配列方向Yに並べて載置するとともに、5個のセラミックス成形体の上端面に補助電極(開孔率60%、厚さ2mmのアルミニウム製孔明板)を載置した。このようにして5個のセラミックス成形体を載置した乾燥受台を合計9個準備した。
誘電乾燥装置としては、乾燥受台の配列方向Yの両端近傍を支持する2つのコンベアベルト(厚さ20mm、配列方向Y長さ190mm)を有するコンベアを備える誘電乾燥装置(図2)を用いた。この誘電乾燥装置のコンベアベルト上に、5個のハニカム成形体を載置した9個の乾燥受台を載せ、コンベアベルトによって支持されていない乾燥受台の下方に電界調整部材(厚さ15mm、配列方向Y長さが190mmのアルミ板)を3つ配置した(図2)。なお、鉛直方向における補助電極と上部電極との間の距離は100mmとした。
誘電乾燥は、コンベアベルトを搬送方向Xに稼働させ、乾燥受台上に載置されたハニカム成形体を誘電乾燥炉内に搬送することによって行った。誘電乾燥における条件は、周波数40.68MHz(ISMバンド)、出力85.0kW、加熱時間12分とした。
【0050】
<比較例1>
コンベアベルトによって支持されていない乾燥受台の下方に電界調整部材を配置しなかったこと以外は実施例1と同様にしてハニカム成形体の誘電乾燥を行った。
【0051】
(加熱量の算出)
まず、配列方向Yに並べて載置された各セラミックス成形体を、時間領域差分法(FDTD法)を用いたシミュレーションによって解析した。シミュレーションでは、セラミックス成形体内の各格子点における電界強度Eを求めた。
次に、得られた電界強度Eから各格子点における加熱量Hを以下の式(1)から算出した。
【0052】
【数1】
【0053】
式(1)中、ωは角周波数(2π×40MHz)、εはセラミックス成形体の誘電率、tanδはセラミックス成形体の誘電正接である。
次に、各セラミックス成形体内の格子点における加熱量Hを合計し、各セラミックス成形体の総加熱量を算出した。配列方向Yにおける左端から右端までの5個のセラミックス成形体の総加熱量を順番にH1~H5と定義し、以下の式(2)によって加熱量分配比を求めた。
加熱量分配比(%)=各位置における総加熱量/全ての位置における総加熱量の和×100 ・・・ (2)
その結果を図5に示す。なお、図5では、左端から右端までの5個のセラミックス成形体の配列方向Yにおける位置を、X軸において1~5とそれぞれ表す。
【0054】
図5に示されるように、コンベアベルトによって支持されていない乾燥受台の下方に電界調整部材を配置して誘電乾燥を行った実施例1は、コンベアベルトによって支持されていない乾燥受台の下方に電界調整部材を配置しないで誘電乾燥を行った比較例1に比べて、配列方向Yにおけるセラミックス成形体の乾燥状態のばらつきが小さかった。具体的には、比較例1では、中央部のセラミックス成形体と両端部のセラミックス成形体との間の加熱量分配比の差が5%程度であったのに対し、実施例1では、当該加熱量分配比の差を1%未満に抑制することができた。
【0055】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、乾燥受台に載置された複数のセラミックス成形体の搬送方向Xと垂直な配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきを抑制することが可能なセラミックス成形体の誘電乾燥方法及び誘電乾燥装置を提供することができる。また、本発明によれば、形状の均一化が可能なセラミックス構造体の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
10,10a,10b セラミックス成形体
11a 上端面
11b 下端面
20 乾燥受台
100 誘電乾燥装置
110 誘電乾燥炉
120 コンベア
121 コンベアベルト
130 上部電極
140 下部電極
150 電界調整部材
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置された複数のセラミックス成形体を、上部電極と下部電極との電極間に搬送し、前記電極間に高周波を印加することによって乾燥させるセラミックス成形体の誘電乾燥方法であって、
前記乾燥受台の搬送が、前記乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分と接触する1つ以上のコンベアベルトを有するコンベアによって行われ、
前記コンベアベルトと接触していない前記乾燥受台の下方に1つ以上の電界調整部材が配置されている、セラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項2】
前記電界調整部材は、前記コンベアベルトの厚さの20%以上100%未満の厚さの板材である、請求項1に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項3】
前記電界調整部材は、前記乾燥受台と前記下部電極との間であり、且つ鉛直方向Zにおいて、上方の前記セラミックス成形体の位置に対応する領域に配置される、請求項1又は2に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項4】
前記電界調整部材は、導電体及び比誘電率が1.0以上の絶縁体から選択される1種以上から構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項5】
前記電界調整部材は、金属、セラミックス及び樹脂から選択される1種以上から構成されている、請求項4に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項6】
前記電界調整部材は、前記セラミックス成形体の乾燥状態に応じて位置が移動される、請求項1~5のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項7】
前記セラミックス成形体の含水率が1~60%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項8】
前記セラミックス成形体は、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム成形体である、請求項1~7のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法を含む、セラミックス構造体の製造方法。
【請求項10】
上部電極と、
下部電極と、
複数のセラミックス成形体が搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置される乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分と接触する1つ以上のコンベアベルトを有し、前記コンベアベルトによって前記上部電極と前記下部電極との電極間に前記複数のセラミックス成形体を搬送することが可能なコンベアと、
前記コンベアベルトと接触していない前記乾燥受台の下方に配置された1つ以上の電界調整部材と
を備えるセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項11】
前記電界調整部材は、前記コンベアベルトの厚さの20%以上100%未満の厚さの板材である、請求項10に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項12】
前記電界調整部材は、前記乾燥受台と前記下部電極との間であり、且つ鉛直方向Zにおいて、上方の前記セラミックス成形体の位置に対応する領域に配置される、請求項10又は11に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項13】
前記電界調整部材は、導電体及び比誘電率が1.0以上の絶縁体から選択される1種以上から構成されている、請求項10~12のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項14】
前記電界調整部材は、金属、セラミックス及び樹脂から選択される1種以上から構成されている、請求項13に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項15】
前記電界調整部材の位置を移動可能な駆動機構を更に備える、請求項10~14のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
セラミックス成形体の誘電乾燥は、乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yにセラミックス成形体を複数(例えば、2~5個)並べて載置し、コンベアによって乾燥受台を上部電極と下部電極との間に連続的に搬送して高周波を印加することによって行われる。コンベアは、配列方向Yにおいて乾燥受台の一部分と接触する1つ以上のコンベアベルトを有している。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、乾燥受台に載置された単一のセラミックス成形体における上部及び下部の乾燥状態のばらつきを抑制することができるものの、配列方向Y(乾燥受台の幅方向)における乾燥状態のばらつきを抑制することが難しい。実際、配列方向Yにおいて、コンベアベルトと接触した部分では、局所的に電界強度が大きくなり、乾燥収縮量が増加する傾向にある。一方、コンベアベルトと接触していない部分では、電界強度が小さくなり、乾燥収縮量が低下する傾向にある。その結果、配列方向Yに並べて載置されたセラミックス成形体の位置の違いによって乾燥状態がばらついてしまう。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明者らは、乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置された複数のセラミックス成形体の誘電乾燥について鋭意研究を行った結果、配列方向Yにおいて、コンベアベルトと接触していない乾燥受台の下方に1つ以上の電界調整部材を配置することにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
すなわち、本発明は、乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置された複数のセラミックス成形体を、上部電極と下部電極との電極間に搬送し、前記電極間に高周波を印加することによって乾燥させるセラミックス成形体の誘電乾燥方法であって、
前記乾燥受台の搬送が、前記乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分と接触する1つ以上のコンベアベルトを有するコンベアによって行われ、
前記コンベアベルトと接触していない前記乾燥受台の下方に1つ以上の電界調整部材が配置されている、セラミックス成形体の誘電乾燥方法である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
さらに、本発明は、上部電極と、
下部電極と、
複数のセラミックス成形体が搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置される乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分と接触する1つ以上のコンベアベルトを有し、前記コンベアベルトによって前記上部電極と前記下部電極との電極間に前記複数のセラミックス成形体を搬送することが可能なコンベアと、
前記コンベアベルトと接触していない前記乾燥受台の下方に配置された1つ以上の電界調整部材と
を備えるセラミックス成形体の誘電乾燥装置である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
図1及び2に示されるように、誘電乾燥装置100は、上部電極130と、下部電極140と、複数のセラミックス成形体10が搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置される乾燥受台20の配列方向Yにおける一部分と接触する1つ以上のコンベアベルト121を有し、コンベアベルト121によって上部電極130と下部電極140との電極間に複数のセラミックス成形体10を搬送することが可能なコンベア120と、コンベアベルト121と接触していない乾燥受台20の下方に配置された1つ以上の電界調整部材150とを備える。上部電極130は誘電乾燥炉110の上方に設けられ、下部電極140は誘電乾燥炉110の下方に設けられる。また、誘電乾燥装置100は、本発明の効果を阻害しない範囲において、公知の構造(例えば、通風乾燥装置など)を更に備えていてもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
コンベア120のコンベアベルト121は、コンベア120の種類によっても異なるが、乾燥受台20の配列方向Yの長さよりも短く、乾燥受台20の配列方向Yにおける一部分と接触する。したがって、コンベアベルト121と接触していない乾燥受台20の下方には空間が生じる。例えば、コンベア120のコンベアベルト121は、図2に示されるように、乾燥受台20の配列方向Yの両端近傍と接触する2つのコンベアベルト121であることができる。或いは、コンベア120のコンベアベルト121は、図3に示されるように、乾燥受台20の配列方向Yの中央部と接触する1つのコンベアベルト121であることができる。なお、コンベアベルト121の数及び位置は、図2及び3で示した具体例に限定されない。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
上記のようなコンベアベルト121によって乾燥受台20に載置された複数のセラミックス成形体10を上部電極130と下部電極140との電極間に搬送すると、コンベアベルト121と接触していない乾燥受台20に載置されたセラミックス成形体10bにおける電界強度が、コンベアベルト121と接触している乾燥受台20に載置されたセラミックス成形体10aにおける電界強度よりも小さくなり、複数のセラミックス成形体10の乾燥状態が配列方向Yでばらついてしまう。
そこで、本発明の実施形態では、コンベアベルト121と接触していない乾燥受台20の下方の空間に、1つ以上の電界調整部材150を配置している。このような位置に電界調整部材150を配置することにより、配列方向Yにおける電界強度が概ね同程度となり、複数のセラミックス成形体10の配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきを抑制することができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
電界調整部材150としては、電界強度を調整することが可能なものであれば特に限定されないが、コンベアベルト121の厚さの20%以上100%未満の厚さの板材であることが好ましい。このような板材であれば、コンベアベルト121と接触していない乾燥受台20の下方の空間に容易に配置することができる。なお、コンベアベルト121の厚さは、特に限定されないが、例えば10~50mmである。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
電界調整部材150は、図2に示されるように、コンベアベルト121と接触していない乾燥受台20の下方の1つの空間に複数の電界調整部材150が分割して配置されていてもよいが、図4に示されるように、当該空間に1つの電界調整部材150が配置されていてもよい。電界調整部材150が分割して配置される場合、それぞれの電界調整部材150の配列方向Yにおける長さは、セラミックス成形体10の配列方向Yにおける長さと同じか、又はそれよりも大きいことが好ましい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
本発明の実施形態に係るセラミックス成形体10の誘電乾燥方法及び誘電乾燥装置100は、コンベアベルト121と接触していない乾燥受台20の下方に1つ以上の電界調整部材150を配置しているため、配列方向Yにおける電界強度を同程度にすることができる。そのため、複数のセラミックス成形体10の配列方向Yにおける乾燥状態のばらつきを抑制することができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
(セラミックス成形体の誘電乾燥)
上記で作製したセラミックス成形体(ハニカム成形体)を用いて誘電乾燥を行った。具体的には、次のような手順で行った。
ハニカム成形体の下端面と接する部分にアルミニウム製孔明板(開孔率60%、厚さ2mm)を有する乾燥受台(厚さ10mm)の上面に5個のセラミックス成形体を配列方向Yに並べて載置するとともに、5個のセラミックス成形体の上端面に補助電極(開孔率60%、厚さ2mmのアルミニウム製孔明板)を載置した。このようにして5個のセラミックス成形体を載置した乾燥受台を合計9個準備した。
誘電乾燥装置としては、乾燥受台の配列方向Yの両端近傍と接触する2つのコンベアベルト(厚さ20mm、配列方向Y長さ190mm)を有するコンベアを備える誘電乾燥装置(図2)を用いた。この誘電乾燥装置のコンベアベルト上に、5個のハニカム成形体を載置した9個の乾燥受台を載せ、コンベアベルトと接触していない乾燥受台の下方に電界調整部材(厚さ15mm、配列方向Y長さが190mmのアルミ板)を3つ配置した(図2)。なお、鉛直方向における補助電極と上部電極との間の距離は100mmとした。
誘電乾燥は、コンベアベルトを搬送方向Xに稼働させ、乾燥受台上に載置されたハニカム成形体を誘電乾燥炉内に搬送することによって行った。誘電乾燥における条件は、周波数40.68MHz(ISMバンド)、出力85.0kW、加熱時間12分とした。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
<比較例1>
コンベアベルトと接触していない乾燥受台の下方に電界調整部材を配置しなかったこと以外は実施例1と同様にしてハニカム成形体の誘電乾燥を行った。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
図5に示されるように、コンベアベルトと接触していない乾燥受台の下方に電界調整部材を配置して誘電乾燥を行った実施例1は、コンベアベルトと接触していない乾燥受台の下方に電界調整部材を配置しないで誘電乾燥を行った比較例1に比べて、配列方向Yにおけるセラミックス成形体の乾燥状態のばらつきが小さかった。具体的には、比較例1では、中央部のセラミックス成形体と両端部のセラミックス成形体との間の加熱量分配比の差が5%程度であったのに対し、実施例1では、当該加熱量分配比の差を1%未満に抑制することができた。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置された複数のセラミックス成形体を、上部電極と下部電極との電極間に搬送し、前記電極間に高周波を印加することによって乾燥させるセラミックス成形体の誘電乾燥方法であって、
前記乾燥受台の搬送が、前記乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分と接触する1つ以上のコンベアベルトを有するコンベアによって行われ、
前記コンベアベルトと接触していない前記乾燥受台と前記下部電極との間であり、且つ鉛直方向Zにおいて、上方に前記セラミックス成形体が位置する領域に1つ以上の電界調整部材が配置されており、
前記電界調整部材は、導電体及び比誘電率が1.0以上の絶縁体から選択される1種以上から構成されている、セラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項2】
前記電界調整部材は、前記コンベアベルトの厚さの20%以上100%未満の厚さの板材である、請求項1に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項3】
前記電界調整部材は、前記乾燥受台と前記下部電極との間であり、且つ鉛直方向Zにおいて、上方の前記セラミックス成形体の位置に対応する領域に配置される、請求項1又は2に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項4】
前記電界調整部材は、金属、セラミックス及び樹脂から選択される1種以上から構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項5】
前記電界調整部材は、前記セラミックス成形体の乾燥状態に応じて位置が移動される、請求項1~のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項6】
前記セラミックス成形体の含水率が1~60%である、請求項1~のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項7】
前記セラミックス成形体は、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム成形体である、請求項1~のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥方法を含む、セラミックス構造体の製造方法。
【請求項9】
上部電極と、
下部電極と、
複数のセラミックス成形体が搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置される乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分と接触する1つ以上のコンベアベルトを有し、前記コンベアベルトによって前記上部電極と前記下部電極との電極間に前記複数のセラミックス成形体を搬送することが可能なコンベアと、
前記コンベアベルトと接触していない前記乾燥受台と前記下部電極との間であり、且つ鉛直方向Zにおいて、上方に前記セラミックス成形体が位置する領域に配置された1つ以上の電界調整部材と
を備え
前記電界調整部材は、導電体及び比誘電率が1.0以上の絶縁体から選択される1種以上から構成されているセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項10】
前記電界調整部材は、前記コンベアベルトの厚さの20%以上100%未満の厚さの板材である、請求項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項11】
前記電界調整部材は、前記乾燥受台と前記下部電極との間であり、且つ鉛直方向Zにおいて、上方の前記セラミックス成形体の位置に対応する領域に配置される、請求項又は10に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項12】
前記電界調整部材は、金属、セラミックス及び樹脂から選択される1種以上から構成されている、請求項9~11のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【請求項13】
前記電界調整部材の位置を移動可能な駆動機構を更に備える、請求項12のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の誘電乾燥装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
すなわち、本発明は、乾燥受台の上面に搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置された複数のセラミックス成形体を、上部電極と下部電極との電極間に搬送し、前記電極間に高周波を印加することによって乾燥させるセラミックス成形体の誘電乾燥方法であって、
前記乾燥受台の搬送が、前記乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分と接触する1つ以上のコンベアベルトを有するコンベアによって行われ、
前記コンベアベルトと接触していない前記乾燥受台と前記下部電極との間であり、且つ鉛直方向Zにおいて、上方に前記セラミックス成形体が位置する領域に1つ以上の電界調整部材が配置されており、
前記電界調整部材は、導電体及び比誘電率が1.0以上の絶縁体から選択される1種以上から構成されている、セラミックス成形体の誘電乾燥方法である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
さらに、本発明は、上部電極と、
下部電極と、
複数のセラミックス成形体が搬送方向Xと垂直な配列方向Yに並べて載置される乾燥受台の前記配列方向Yにおける一部分と接触する1つ以上のコンベアベルトを有し、前記コンベアベルトによって前記上部電極と前記下部電極との電極間に前記複数のセラミックス成形体を搬送することが可能なコンベアと、
前記コンベアベルトと接触していない前記乾燥受台と前記下部電極との間であり、且つ鉛直方向Zにおいて、上方に前記セラミックス成形体が位置する領域に配置された1つ以上の電界調整部材と
を備え
前記電界調整部材は、導電体及び比誘電率が1.0以上の絶縁体から選択される1種以上から構成されているセラミックス成形体の誘電乾燥装置である。