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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188696
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20221214BHJP
   B60R 21/20 20110101ALI20221214BHJP
【FI】
B60R21/36 352
B60R21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096931
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】尾関 誠
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽
(72)【発明者】
【氏名】末光 泰三
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054BB30
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】エアバッグカバーに設けられる扉部を迅速に開くことができて、エアバッグを円滑に膨張可能なエアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】折り畳まれたエアバッグを収納させるケース35と、折り畳まれたエアバッグを覆うエアバッグカバー45と、を備える。エアバッグカバーの取付片部52CBが、リベット70を貫通させるようにして、ケースの周壁部39に取り付けられる。ケースが、周壁部と底壁部との境界部位付近を、断面略円弧状に、湾曲させている。取付片部が、リベットの貫通部位よりも先端側となる端縁に、周壁部側に向かって突出する突出部55を備える。突出部が、周壁部と底壁部との境界部位を構成する湾曲部位42と対向する位置に配置されるとともに、周壁部の外側面よりも底壁部の中央側に向かうように突出させ、かつ、突出端面56における周壁部側の縁56aを、湾曲部位に対して非圧接状態で配置させている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能なエアバッグと、折り畳まれた前記エアバッグを収納させるとともに膨張する前記エアバッグを突出可能な突出用開口を有する剛性を有したケースと、軟質合成樹脂製として折り畳まれた前記エアバッグを覆うエアバッグカバーと、を備える構成とされて、
前記ケースが、底壁部と、該底壁部から延びる略四角筒形状の周壁部と、を有して、前記突出用開口を備える略箱形状とされ、
前記エアバッグカバーが、
前記突出用開口を覆うとともに前記エアバッグの展開膨張時に周縁を破断されつつ前記エアバッグに押されて開き可能な扉部を、有した天井壁部と、
前記天井壁部において、前記扉部の開き時の回転中心となるヒンジ部側、若しくは、前記扉部の開き時の先端側から延びて、前記周壁部に取り付けられる取付片部と、
を備える構成の車両に搭載されるエアバッグ装置において、
前記取付片部が、前記周壁部に対して、前記取付片部と前記周壁部とに設けられた貫通孔を貫通させるように配置される複数のリベットにより、取り付けられる構成とされ、
前記ケースが、前記周壁部と前記底壁部との境界部位付近を、断面略円弧状に、湾曲させて構成され、
前記取付片部が、少なくとも1つの前記リベットの貫通部位よりも先端側となる端縁に、前記周壁部側に向かって突出する突出部を、備える構成とされ、
該突出部が、前記取付片部の前記周壁部への取付状態において、前記周壁部と前記底壁部との境界部位を構成する湾曲部位と対向する位置に配置されるとともに、前記周壁部の外側面よりも前記底壁部の中央側に向かうように突出させ、かつ、突出端面における前記周壁部側の縁を位置規制縁部として、前記湾曲部位に対して非圧接状態で配置させるように、構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記取付片部の外側面側に、前記取付片部を、前記周壁部とによって挟むように、当て板が、配設され、
該当て板が、前記突出部の配置領域まで延びるように構成されるとともに、前記リベットを用いて、前記周壁部及び前記取付片部に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記扉部が、前記突出用開口を略全面にわたって覆うように1枚配設され、
前記突出部が、前記ヒンジ部側に配置されるヒンジ部側取付片部の先端側のみに、形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能なエアバッグと、折り畳まれたエアバッグを収納させるとともに膨張するエアバッグを突出可能な突出用開口を有する剛性を有したケースと、軟質合成樹脂製として折り畳まれたエアバッグを覆うエアバッグカバーと、を備える構成のエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置としては、車両のフードパネルの後端近傍に配設される歩行者用エアバッグ装置であって、ケースの上端側に配置される突出用開口を覆うように配設されるエアバッグカバーが、突出用開口を覆う扉部の周縁から下方に延びる取付片部を、ケースの周壁部に、ブラインドリベットを利用して連結させることにより、ケースに取り付けられる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6375484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のエアバッグ装置では、エアバッグカバーに設けられる扉部は、エアバッグの展開膨張時に、周縁に設けられる破断予定部を破断されつつ、エアバッグに押されて前方側若しくは後方側に向かって開く構成であるが、このエアバッグの膨張初期において、膨張するエアバッグが扉部を押し上げる際に、この扉部の押し上げに連動して、取付片部が上方へ移動しようとすることとなる。そのため、取付片部においてブラインドリベットを貫通させている貫通孔の部位に応力が集中して、貫通孔が開口を広げるように伸びる場合があり、このような貫通孔周縁の伸びによって、扉部の押上力を低減させてしまい、扉部の周縁に設けられる破断予定部を、迅速に破断できない場合があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグカバーに設けられる扉部を迅速に開くことができて、エアバッグを円滑に膨張可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能なエアバッグと、折り畳まれたエアバッグを収納させるとともに膨張するエアバッグを突出可能な突出用開口を有する剛性を有したケースと、軟質合成樹脂製として折り畳まれたエアバッグを覆うエアバッグカバーと、を備える構成とされて、
ケースが、底壁部と、底壁部から延びる略四角筒形状の周壁部と、を有して、突出用開口を備える略箱形状とされ、
エアバッグカバーが、
突出用開口を覆うとともにエアバッグの展開膨張時に周縁を破断されつつエアバッグに押されて開き可能な扉部を、有した天井壁部と、
天井壁部において、扉部の開き時の回転中心となるヒンジ部側、若しくは、扉部の開き時の先端側から延びて、周壁部に取り付けられる取付片部と、
を備える構成の車両に搭載されるエアバッグ装置において、
取付片部が、周壁部に対して、取付片部と周壁部とに設けられた貫通孔を貫通させるように配置される複数のリベットにより、取り付けられる構成とされ、
ケースが、周壁部と底壁部との境界部位付近を、断面略円弧状に、湾曲させて構成され、
取付片部が、少なくとも1つのリベットの貫通部位よりも先端側となる端縁に、周壁部側に向かって突出する突出部を、備える構成とされ、
突出部が、取付片部の周壁部への取付状態において、周壁部と底壁部との境界部位を構成する湾曲部位と対向する位置に配置されるとともに、周壁部の外側面よりも前記底壁部の中央側に向かうように突出させ、かつ、突出端面における周壁部側の縁を位置規制縁部として、湾曲部位に対して非圧接状態で配置させるように、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアバッグ装置では、ケース内に折り畳まれて収納されるエアバッグが、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバーの扉部を押し開く際に、扉部の押し上げに連動して、取付片部が、ケースの突出用開口側へ移動しようとすることとなっても、取付片部において周壁部に取り付けられるリベットよりも先端側に設けられている突出部が、周壁部側の縁からなる位置規制縁部を、取付片部の移動時に、ケースの周壁部と圧接させることとなって、取付片部のさらなる移動を規制することができる。そのため、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、膨張するエアバッグによる押圧力が、取付片部においてリベットを貫通させている貫通孔の周縁に作用することを抑制でき、扉部の周縁に円滑に作用させることができて、周縁を迅速に破断させつつ、扉部を迅速に開かせることができる。
【0008】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、エアバッグカバーに設けられる扉部を迅速に開くことができて、エアバッグを円滑に膨張させることができる。
【0009】
また、本発明のエアバッグ装置では、取付片部の端縁側に形成される突出部は、ケース側に向かって突出するように形成される構成であるものの、取付片部の周壁部への取付状態においては、ケースにおける底壁部と周壁部との境界部位を構成する湾曲部位と対向する位置において、湾曲部位に対して非圧接状態で配置される構成である。換言すれば、突出部は、取付片部の周壁部への取付状態においては、ケースの周壁部と圧接されるような位置に配置されておらず、取付片部を周壁部に重ねてリベットを貫通させる際にも、ケースとの間に隙間を設けられるようにして配置されることとなる。そのため、このリベットによる連結作業時に、取付片部が周壁部から浮き上がらず、取付片部と周壁部との貫通孔周縁の部位を、相互に面接触させることができて、連結作業を安定して行うことができる。
【0010】
さらに、本発明のエアバッグ装置において、取付片部の外側面側に、取付片部を周壁部とによって挟むように、当て板を、配設させ、
当て板を、突出部の配置領域まで延びるように構成されるとともに、リベットを用いて、周壁部及び取付片部に連結させる構成とすることが、好ましい。
【0011】
エアバッグ装置を上記構成とすれば、取付片部の周壁部から離隔するような動きを、当て板によって規制できることから、エアバッグの膨張時における取付片部の移動を、一層的確に抑制することができる。
【0012】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、扉部を、突出用開口を略全面にわたって覆うように1枚配設させ、
突出部を、ヒンジ部側に配置されるヒンジ部側取付片部の下端側のみに、形成させる構成とすることが、好ましい。
【0013】
エアバッグ装置を上記構成とすれば、エアバッグの膨張初期に、扉部における開きの回転中心となるヒンジ部側(扉部の元部側)が、膨張するエアバッグに押圧されてケースから離隔するように移動することを規制でき、扉部周縁の破断時に作用する引張応力を、扉部周縁における破断の始点に集中させることができて、破断の始点を素早く破断させることができることから、扉部全体を、迅速に開かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の平面図である。
図2】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の前後方向に沿った概略縦断面図であり、ケースの左右方向の中央の部位を示す。
図3】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の前後方向に沿った概略縦断面図であり、ケースにおける後壁部とエアバッグカバーの取付片部との部位を示す部分拡大図である。
図4】実施形態の歩行者用エアバッグ装置を後方側から見た背面図である。
図5図4の背面図において、左右方向の中央側の領域を示す部分拡大図である。
図6】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において使用されるエアバッグカバーを後方から見た状態の概略斜視図である。
図7】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、膨張するエアバッグがエアバッグカバーを押し上げる際の取付片部の動きを説明する部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、エアバッグ装置として、車両Vにおけるフードパネル15の後端15c付近に搭載される歩行者用エアバッグ装置Mを、例に採り、説明をする。歩行者用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Mは、図1,2に示すように、フードパネル15の後端15cに近接した位置であって、左右のフロントピラー5L,5Rの間となる車両Vの左右方向の略中央となる位置に、配置されている。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて説明する。
【0016】
フードパネル15は、図1に示すように、車両Vにおけるエンジンルームの上方を覆うように配設されるもので、左右両縁側における後端15c近傍に配置される図示しないヒンジ部により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、実施形態の場合、鋼板や、アルミニウム(アルミニウム合金)等の板材からなり、図2に示すように、アウタパネル15aとインナパネル15bとを備えている。フードパネル15は、後述するフロントウィンドシールド4に合わせて、図1に示すように、後端15c側を、左右方向の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲させて構成されている。
【0017】
フードパネル15の後方には、図2に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド4の下部4a側に連ならせるように、配設されている。このカウル7も、フードパネル15の後端15cの湾曲形状に合わせて湾曲して形成されている(図1参照)。また、カウル7の部位には、図1に示すように、ワイパ8が配設されている。このワイパ8は、図2の二点鎖線に示すように、カウルルーバ7bから上方に突出するように配設されている。フロントウィンドシールド4の左右の外方には、フロントピラー5L,5Rが、配設されている。
【0018】
エアバッグ装置Mは、図2,4に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能なエアバッグ17と、エアバッグ17に膨張用ガスを供給するインフレーター20と、折り畳まれたエアバッグ17とインフレーター20とを収納するケース35と、折り畳まれたエアバッグ17を覆うエアバッグカバー45と、ケース35を車両のボディ1側であるカウル7側に取り付ける取付ブラケット60と、を備える構成とされている。
【0019】
エアバッグ17は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能に、可撓性を有したシート体からなる袋状とされている。エアバッグ17は、実施形態の場合、膨張完了時の外形形状を、図1の二点鎖線に示すように、正面側から見て、左右に幅広の略U字形状として、フードパネル15の後端15cからカウル7にかけてと、左右のフロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側と、を覆うように、構成されている。
【0020】
インフレーター20は、インフレーター本体21と、インフレーター本体21をケース35に取り付けるための取付ブラケット25と、を備える構成とされるもので、実施形態の場合、取付ブラケット25の取付ボルト28を外部に突出させるようにして、エアバッグ17の内部に挿入されて、エアバッグ17と連結されている。インフレーター本体21は、外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略円柱状として、軸方向の一端側に、図示しないガス吐出部を配設させている。取付ブラケット25は、インフレーター本体21を保持する保持部26と、保持部26から下方に突出する取付ボルト28と、を備える構成であり、取付ボルト28は、詳細な図示は省略するが、保持部26の長手方向に沿った方向側(左右方向側)で、複数個、並設されている。また、実施形態では、取付ブラケット25は、保持部26にインフレーター本体21を保持させた状態で、所定箇所に、外周側から図示しないクランプを巻き付けることにより、インフレーター本体21を取り付けている。また、インフレーター20は、エアバッグ17から突出させた取付ボルト28を、ケース35の底壁部36から突出させて、ナット29止めすることにより、エアバッグ17とともに、ケース35に取り付けられている。
【0021】
ケース35は、板金製として、剛性を有する構成とされるもので、図2に示すように、底壁部36と、底壁部36から上方に延びる略四角筒形状の周壁部37、を備えて、上端側に、膨張するエアバッグ17を突出可能な突出用開口35aを配設させている。周壁部37において、前後方向側で対向する前壁部38と後壁部39とには、図2に示すように、エアバッグカバー45における後述する取付片部52を取り付けるためのブラインドリベット70(リベット)を貫通可能な貫通孔38a,39aが、それぞれ、形成されている。貫通孔38a,39aは、詳細な図示は省略するが、ブラインドリベット70のボディ70bやシャフト70dの頭部70eを貫通可能に、略円形に開口して形成されるもので、ブラインドリベット70に対応して、左右方向に沿って複数箇所に、形成されている。
【0022】
また、実施形態のケース35は、図2に示すように、周壁部37における前壁部38,後壁部39と、底壁部36と、の境界部位付近を、断面略円弧状に湾曲させて構成されている。すなわち、実施形態のケース35では、前壁部38,後壁部39と、底壁部36と、の境界部位は、断面略円弧状に湾曲した湾曲部位41,42から、構成されている。
【0023】
エアバッグカバー45は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質合成樹脂製とされるもので、図2,4~6に示すように、ケース35の突出用開口35aを覆う扉部48を有した天井壁部46と、天井壁部46における扉部48の周縁から下方に延びてケース35の周壁部37に取り付けれられる取付片部52と、を備えている。
【0024】
扉部48は、実施形態の場合、突出用開口35aの上方を略全面にわたって覆うように1枚配設されるもので(図2参照)、天井壁部46と一体的に構成されて、後縁48b側に、開き時の回転中心となるヒンジ部49を配置させ、残りの前縁側,左縁側,右縁側に、破断予定部50を、配置させて、エアバッグ17の膨張時に、破断予定部50を破断させつつ、後開きで開く構成である。実施形態の場合、扉部48は、後縁48b側を前縁48a側よりも下側に位置させるように、後下がりに傾斜して配設されている(図2参照)。
【0025】
取付片部52は、ヒンジ部49側となる扉部48の後縁48b側と、扉部48の開きの先端側となる前縁48a側と、において、周壁部37における前後で対向する前壁部38,後壁部39の外周面側を覆うように、下方に延びるように形成されている。実施形態の場合、取付片部52は、実施形態の場合、図4,6に示すように、左右方向(ケース35の長手方向)側で、複数個並設されている。各取付片部52は、それぞれ、ブラインドリベット70により、前壁部38若しくは後壁部39に取り付けられる構成であり、前壁部38,後壁部39に形成される貫通孔38a,39aに対応して、ブラインドリベット70のボディ70bや頭部70eを貫通可能な貫通孔52aを、有している。
【0026】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、ヒンジ部49側となる扉部48の後縁48b側であって、かつ、ケース35の左右の中央側に配置される後側中央取付片部52CBが、ヒンジ部側取付片部を構成している。この後側中央取付片部52CBは、下端52b側の端縁に、後壁部39側(前側)に向かって突出する突出部55を、備えている(図2,3参照)。すなわち、後側中央取付片部52CBに形成される突出部55は、貫通孔52a(ブラインドリベット70の貫通部位)よりも先端側に、形成されるものであって、車両搭載状態において、後壁部39と底壁部36との境界部位を構成する湾曲部位42と、前後で対向する位置に、配置されている。具体的には、後側中央取付片部52CBの下端52b側に形成される突出部55は、下面を後側中央取付片部52CBの下端面から連ならせるようにして、後壁部39側に突出するように配置されるもので、実施形態の場合、厚さ寸法を、後側中央取付片部52CBの板厚と略同一として、後壁部39側となる先端面(突出端面)56を、上下方向に略沿わせる(後壁部39に略沿わせる)ように、構成されている。具体的には、この突出部55は、後側中央取付片部52CBの左右の略全域にわたって、形成されている(図5参照)。また、突出部55は、湾曲部位42の上下の中間部位付近(詳細には、上下の中央よりやや下方)となる位置に、配置されるもので、後壁部39の外側面(後面39b)よりも底壁部36の中央側(前方側)に向かうように、構成されている。すなわち、突出部55は、先端面(突出端面)56を、後壁部39の後面39bよりも前方に位置させるように、構成されており(図3参照)、具体的には、先端面(突出端面)56を、後壁部39の板厚の中央より前方に位置させるように、構成されている。さらに、突出部55は、先端面(突出端面)56における周壁部37(後壁部39)側の縁である上縁56aを、位置規制縁部として、後側中央取付片部52CBの後壁部39への取付状態(車両搭載状態)において、湾曲部位42に対して非圧接状態で配置させるように、構成されている。すなわち、突出部55は、後側中央取付片部52CBの内周面(前面)からの突出量を、車両搭載状態において、先端面(突出端面)56を上下の全域にわたって湾曲部位42と非接触の状態とするように、設定されている(図3参照)。
【0027】
取付ブラケット60は、エアバッグ装置M(ケース35)をボディ1側のカウル7に取り付けるためのもので、板金素材から、形成されている。取付ブラケット60は、ケース35の後側に配置されるもので、実施形態の場合、図4に示すように、ケース35の左右方向の中央側と、左右両端側と、の3箇所に、配設されている。実施形態では、左右方向の中央側に配置される中央側取付ブラケット60Cを、例に採り、詳細に説明する。
【0028】
中央側取付ブラケット60Cは、後側中央取付片部52CBを含めて、左右両側に配置される取付片部52LB,52RBの中央側の領域の後方に配置されている。中央側取付ブラケット60Cは、取付片部52LB,52RB,後側中央取付片部52CBの外周面(後面)に沿うように配置されて取付片部52LB,52RB,後側中央取付片部52CBとともにケース35の周壁部37における後壁部39に取り付けられるケース側取付部61と、ケース側取付部61の上縁側と下縁側から後方に延びてカウルパネル7aとカウルルーバ7bとにそれぞれ取り付けられるパネル側取付部66,ルーバ側取付部67と、を備えている。
【0029】
ケース側取付部61は、後側中央取付片部52CB及び取付片部52LB,52RBとともにブラインドリベット70を利用して後壁部39に取り付けられるもので、実施形態の場合、3つの取付部本体62と、取付部本体62間を連結している2つの連結板部63と、を備えている。取付部本体62は、中央側取付ブラケット60Cの左右の中央側と、左右両端側と、の3箇所に、配置されている。各取付部本体62は、後壁部39に略沿って配置される板状とされており、後壁部39に形成される貫通孔39aと取付片部52に形成される貫通孔52aに対応した位置に、ブラインドリベット70のボディ70bや頭部70eを貫通可能な貫通孔62bを、配設させている。連結板部63は、上下方向側の幅寸法を、取付部本体62の半分程度に設定されて、取付部本体62相互を、上側の領域において連結している(図4,5参照)。取付部本体62において、左右の中央側に配置される取付部本体62Cは、後側中央取付片部52CBの後側に配置される部位であり、当て板として、後側中央取付片部52CBの外側面側(後側面側)において、後側中央取付片部52CBを、後壁部39とによって挟むように、配設されている。この中央側の取付部本体62Cは、図3に示すように、下端62aを、後側中央取付片部52CBの下端52bと略一致させるように、構成されるもので、すなわち、後側中央取付片部52CBの下端52b側に設けられている突出部55の配置領域まで延びるように、構成されている。具体的には、実施形態の場合、取付部本体62Cの下端面62cは、突出部55の上面(先端面56における上縁56a)より下方であって、後側中央取付片部52CBの下端面52cより僅かに上側となる位置に、配置されている(図3参照)。
【0030】
実施形態の中央側取付ブラケット60Cでは、パネル側取付部66は、各連結板部63における左右方向の端部側における下縁63bから後斜め下方に延びるように、2個形成されており、ルーバ側取付部67は、各連結板部63において、パネル側取付部66と取付部本体62との間の領域の上縁63aから後斜め上方に延びるように、2個形成されている(図2の二点鎖線及び図4,5参照)。これらのパネル側取付部66,ルーバ側取付部67は、詳細な図示は省略するが、図示しない取付手段を用いて、カウルパネル7a若しくはカウルルーバ7bに取り付けられている。
【0031】
エアバッグカバー45の取付片部52をケース35の周壁部37(前壁部38及び後壁部39)に取り付けるブラインドリベット70は、エアバッグカバー45における取付片部52若しくは取付ブラケット60における取付部本体62(62C)の外側面側に露出しているフランジ70aと、取付部本体62(62C),取付片部52,周壁部37(前壁部38若しくは後壁部39)を貫通するように配設されるボディ70bと、ボディ70b内に配設されるシャフト70dと、シャフト70dの先端側において周壁部37の内周面側に配置される頭部70eと、を備えている。このブラインドリベット70は、詳細な図示を省略するが、取付片部52及び周壁部37(前壁部38若しくは後壁部39)(取付部本体62(62C))を重ねた状態で、拡径部70c形成前の状態のボディ70bを、頭部70eを先端側に設けたシャフト70d(図2の二点鎖線参照)を挿入させた状態で、外側から、貫通孔38a,39a,52a,62bに貫通させるように差し込み、シャフト70dをフランジ70a側から引き抜いて、残された頭部70eの押圧によって、ボディ70bの先端側に拡径された拡径部70cを形成することにより、取付片部52を周壁部37(前壁部38若しくは後壁部39)に取り付ける構成である。
【0032】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。まず、エアバッグ17を、ケース35内に収納可能に折り畳み、折り畳まれたエアバッグ17内に、取付ボルト28を突出させるようにしてインフレーター20を収納させて、エアバッグ組付体を製造する。その後、エアバッグ組付体をケース35内に収納させ、ケース35の底壁部36から突出しているインフレーター20の取付ボルト28に、ナット29を締結させれば、エアバッグ17とインフレーター20とを、ケース35に取り付けることができる。その後、エアバッグカバー45を、ケース35の上方から被せる。取付ブラケット60を、ケース側取付部61をエアバッグカバー45の取付片部52の外側面側に重ねるように配置させた状態で、ブラインドリベット70を使用して、ケース35にエアバッグカバー45を取り付けると同時に、取付ブラケット60をケース35側に取り付ける。次いで、取付ブラケット60におけるパネル側取付部66とルーバ側取付部67とを、図示しない取付手段を利用して、カウルパネル7aとカウルルーバ7bに取り付け、インフレーター20を、図示しない作動回路に接続させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0033】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ6に配置される図示しないセンサからの信号に基づいて、車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、インフレーター20が作動されて、内部に膨張用ガスを流入させてエアバッグ17が膨張することとなり、膨張するエアバッグ17が、エアバッグカバー45の扉部48を押し開き、扉部48を押し開いて形成されるケース35の突出用開口35aから上方に向かって突出しつつ、フードパネル15の後端15cの上面からカウル7の上面にかけてと、フロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側と、を覆うように、膨張を完了させることとなる(図1の二点鎖線参照)。
【0034】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース35内に折り畳まれて収納されるエアバッグ17が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー45の扉部48を押し開く際に、扉部48の押し上げに連動して、エアバッグカバー45の取付片部52(後側中央取付片部52CB)が、ケース35の突出用開口35a側となる上方へ移動しようとすることとなっても、後側中央取付片部52CBにおいて周壁部37(後壁部39)に取り付けられるブラインドリベット70よりも先端側(下端52b側)に設けられている突出部55が、周壁部37(後壁部39)側の縁からなる位置規制縁部(上縁56a)を、後側中央取付片部52CBの移動時に、ケース35の後壁部39と圧接させることとなって(図7のB参照)、後側中央取付片部52CBのさらなる上方移動を規制することができる。そのため、実施形態の歩行者用エアバッグ装置では、膨張するエアバッグ17による押圧力が、後側中央取付片部52CBにおいてブラインドリベット70を貫通させている貫通孔52aの周縁に作用することを抑制でき、扉部48の周縁に円滑に作用させることができて、周縁の破断予定部50を迅速に破断させつつ、扉部48を迅速に開かせることができる。
【0035】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー45に設けられる扉部48を迅速に開くことができて、エアバッグ17を円滑に膨張させることができる。
【0036】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、後側中央取付片部52CBの端縁側(下端52b側)に形成される突出部55は、ケース35側に向かって突出するように形成される構成であるものの、後側中央取付片部52CBの周壁部37(後壁部39)への取付状態(車両搭載状態)においては、ケース35における底壁部36と後壁部39との境界部位を構成する湾曲部位42と前後で対向する位置において、湾曲部位42に対して非圧接状態で配置される構成である。換言すれば、突出部55は、後側中央取付片部52CBの後壁部39への取付状態においては、ケース35の後壁部39と圧接されるような位置に配置されておらず、後側中央取付片部52CBを後壁部39に重ねてブラインドリベット70を貫通させる際にも、ケース35との間に隙間を設けられるようにして配置されることとなる。そのため、このブラインドリベット70による連結作業時に、後側中央取付片部52CBが後壁部39から浮き上がらず、後側中央取付片部52CBと後壁部39との貫通孔39a,52a周縁の部位を、相互に面接触させることができて、連結作業を安定して行うことができる。
【0037】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、後側中央取付片部52CBの外側面側(後側面側)に、後側中央取付片部52CBを後壁部39とによって挟むように、当て板としての中央側取付ブラケット60Cのケース側取付部61の取付部本体62Cが、配設される構成であり、この取付部本体62Cは、突出部55の配置領域まで延びるように構成されるとともに、ブラインドリベット70を用いて、後壁部39及び後側中央取付片部52CBに連結される構成である。そのため、後側中央取付片部52CBの後壁部39から離隔するような後方へ向かう動きを、取付部本体62Cによって規制できることから、エアバッグ17膨張時における後側中央取付片部52CBの移動を、一層的確に抑制することができる。
【0038】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、扉部48が、ケース35の突出用開口35aを略全面にわたって覆うように1枚配設される構成であり、突出部55は、ヒンジ部49側に配置されるヒンジ部側取付片部である後側中央取付片部52CBの下端52b側のみに、形成されている。そのため、エアバッグ17の膨張初期に、扉部48における開きの回転中心となるヒンジ部49側(扉部48の元部側である後縁48b側)が、膨張するエアバッグ17に押圧されてケース35から離隔するように移動することを規制でき、扉部48周縁の破断時に作用する引張応力を、扉部48周縁における破断の始点に集中させることができて、破断の始点を素早く破断させることができることから、扉部48全体を、迅速に開かせることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…ボディ、17…エアバッグ、20…インフレーター、35…ケース、35a…突出用開口、36…底壁部、37…周壁部、38…前壁部、39…後壁部、41,42…湾曲部位、45…エアバッグカバー、46…天井壁部、48…扉部、49…ヒンジ部、52…取付片部、52CB…後側中央取付片部(ヒンジ部側取付片部)、52a…貫通孔、52b…下端、55…突出部、56…先端面(突出端面)、56a…上縁(位置規制縁部)、60…取付ブラケット、61…ケース側取付部、62,62C…取付部本体(当て板)、70…ブラインドリベット、M…歩行者用エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7