特開 2022-188697 エアバッグ装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022188697

(43)【公開日】2022-12-21

(54)【発明の名称】エアバッグ装置

(51)【国際特許分類】

   B60R 21/36 20110101AFI20221214BHJP

   B60R 21/2346 20110101ALI20221214BHJP

【ＦＩ】

B60R21/36 352

B60R21/2346

【審査請求】未請求

【請求項の数】6

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021096932

(22)【出願日】2021-06-09

(71)【出願人】

【識別番号】000241463

【氏名又は名称】豊田合成株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100076473

【弁理士】

【氏名又は名称】飯田 昭夫

(72)【発明者】

【氏名】尾関 誠

(72)【発明者】

【氏名】安田 陽

(72)【発明者】

【氏名】末光 泰三

【テーマコード（参考）】

3D054

【Ｆターム（参考）】

3D054CC10

3D054CC11

3D054DD13

3D054EE26

3D054FF16

(57)【要約】

【課題】外周側をインナチューブに覆われた状態のインフレーターを、円滑に、エアバッグの内部に配置させることが可能なエアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】インフレーター３０が、略円柱状のインフレーター本体３１を有して、インフレーター本体の外周側を、略筒状のインナチューブ９０に覆われた状態として、エアバッグ４５に形成される挿入用開口を経て、エアバッグの内部に挿入された状態で、インフレーター本体から突出する取付手段３９を、挿入用開口の周縁において、エアバッグから突出させて収納部位２０に連結させることにより、エアバッグ及びインナチューブとともに、収納部位に連結される。インナチューブが、ガス流出口を有するチューブ本体９１と、チューブ本体のインフレーター本体の外周側への巻付状態を維持可能にチューブ本体の外周側に巻き付けられる巻き布１００と、を備える。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

エアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給可能なインフレーターと、を有して、折り畳まれた前記エアバッグと前記インフレーターとを、収納部位内に収納させる構成とされ、
前記インフレーターが、略円柱状のインフレーター本体と、該インフレーター本体から突出するように配置されて前記収納部位に取り付けるための取付手段と、を備えるとともに、前記インフレーター本体における少なくとも一部の外周側を、前記膨張用ガスを整流して流出させるためのガス流出口を有した略筒状のインナチューブに覆われた状態として、前記エアバッグに形成される挿入用開口を経て、前記エアバッグの内部に挿入された状態で、前記取付手段を、前記挿入用開口の周縁において、前記エアバッグから突出させて前記収納部位に連結させることにより、前記エアバッグ及び前記インナチューブとともに、前記収納部位に連結される構成のエアバッグ装置であって、
前記インナチューブが、可撓性を有したシート体から構成され、
前記インフレーター本体の外周側を覆う構成とされて、前記膨張用ガスを流出可能な前記ガス流出口を有するチューブ本体と、
該チューブ本体と幅寸法を略同一として構成されて、前記エアバッグ内への挿入作業時に、前記チューブ本体の前記インフレーター本体の外周側への巻付状態を維持可能に、前記チューブ本体の外周側に巻き付けられる巻き布と、
を備え、
前記巻き布が、前記インフレーター本体からの前記膨張用ガスの吐出時に、前記チューブ本体の外周側への巻付を解除されて、前記チューブ本体を、前記取付手段側から離隔させつつ、前記ガス流出口を開口させるように展開可能に、配設されていることを特徴とするエアバッグ装置。

【請求項2】

前記チューブ本体が、一部を、前記巻き布に対して、分離可能に連結されていることを特徴とする請求項１に記載のエアバッグ装置。

【請求項3】

前記チューブ本体と前記巻き布とが、分断予定部を有した仮止めタブを介して、連結されていることを特徴とする請求項２に記載のエアバッグ装置。

【請求項4】

前記分断予定部が、前記仮止めタブに断続的に設けられるスリットから、構成されていることを特徴とする請求項３に記載のエアバッグ装置。

【請求項5】

前記仮止めタブが、前記巻き布における巻付の終端側の端縁と、前記チューブ本体と、を連結するように、配置されていることを特徴とする請求項３または４に記載のエアバッグ装置。

【請求項6】

前記チューブ本体が、前記インフレーターの周囲で折り畳んだ折畳体の状態として、
前記巻き布が、前記折畳体の周囲に、巻き付けられて、配設されることを特徴とする請求項１に記載のエアバッグ装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、エアバッグと、エアバッグの内部に挿入されるインフレーターと、を有して、折り畳まれたエアバッグとインフレーターとを、収納部位内に収納させる構成のエアバッグ装置に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、このような構成のエアバッグ装置としては、略円柱状のインフレーター本体から取付手段を突出させて構成されるインフレーターの外周側に、膨張用ガスの流れを整流して流出させるためのインナチューブを配置させ、インフレーターを、外周側をインナチューブに覆われた状態で、エアバッグに形成される挿入用開口を経て、エアバッグの内部に挿入させる構成のものがあった（例えば、特許文献１参照）。具体的には、この従来のエアバッグ装置では、エアバッグにおいて、インフレーターを挿入させるための挿入用開口は、スリット状に形成されており、インフレーターは、エアバッグの内部に挿入された状態で、挿入用開口の周縁において、取付手段をエアバッグから突出させる構成とされていた。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１９－１７２１７０公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

このような構成のエアバッグ装置では、膨張完了時のエアバッグからのガス漏れを極力少なくする観点から、挿入用開口の大きさ（スリットの長さ）は、極力小さくすることが好ましい。そして、極力小さく設定される挿入用開口に、外周側をインナチューブに覆われた状態のインフレーターを挿入させるためには、インナチューブを、インフレーターの外周側でコンパクトに折り畳んだ状態で、インフレーターとともに、挿入用開口から挿入させることとなるが、インフレーターは、インフレーター本体から突出する取付手段を、挿入用開口の周縁において、エアバッグから突出させる構成であり、このエアバッグから突出した取付手段を収納部位に連結させる構成であることから、収納部位への連結時におけるインナチューブの取付手段の周縁部位での噛み込みの発生等を抑制可能とするように、エアバッグ内に、外周側をインナチューブに覆われた状態のインフレーターを、円滑に配置させる点に、改善の余地があった。

【0005】

本発明は、上述の課題を解決するものであり、外周側をインナチューブに覆われた状態のインフレーターを、円滑に、エアバッグの内部に配置させることが可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明に係るエアバッグ装置は、エアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給可能なインフレーターと、を有して、折り畳まれたエアバッグとインフレーターとを、収納部位内に収納させる構成とされ、
インフレーターが、略円柱状のインフレーター本体と、インフレーター本体から突出するように配置されて収納部位に取り付けるための取付手段と、を備えるとともに、インフレーター本体における少なくとも一部の外周側を、膨張用ガスを整流して流出させるためのガス流出口を有した略筒状のインナチューブに覆われた状態として、エアバッグに形成される挿入用開口を経て、エアバッグの内部に挿入された状態で、取付手段を、挿入用開口の周縁において、エアバッグから突出させて収納部位に連結させることにより、エアバッグ及びインナチューブとともに、収納部位に連結される構成のエアバッグ装置であって、
インナチューブが、可撓性を有したシート体から構成され、
インフレーター本体の外周側を覆う構成とされて、膨張用ガスを流出可能なガス流出口を有するチューブ本体と、
チューブ本体と幅寸法を略同一として構成されて、エアバッグ内への挿入作業時に、チューブ本体のインフレーター本体の外周側への巻付状態を維持可能に、チューブ本体の外周側に巻き付けられる巻き布と、
を備え、
巻き布が、インフレーター本体からの膨張用ガスの吐出時に、チューブ本体の外周側への巻付を解除されて、チューブ本体を、取付手段側から離隔させつつ、ガス流出口を開口させるように展開可能に、配設されていることを特徴とする。

【0007】

本発明のエアバッグ装置では、インフレーター本体における少なくとも一部の外周側を、インナチューブによって覆う構成であるが、インナチューブは、膨張用ガスを整流して流出させるチューブ本体と、このチューブ本体と幅寸法を略同一に設定される巻き布と、を備える構成であり、チューブ本体は、外周側に巻き布を巻き付けられ、この巻き布によってインフレーター本体の外周側への巻付状態を維持された状態で、エアバッグ内に挿入されることとなる。そのため、本発明のエアバッグ装置では、インフレーター本体の周囲に巻き付けられたチューブ本体は、外周側を、幅方向の略全域にわたって巻き布に覆われる構成であることから、インフレーターとインナチューブとを、外形寸法をコンパクトにして、エアバッグの挿入用開口から容易に挿入させることができる。また、本発明のエアバッグ装置では、インフレーター本体から突出している取付手段を、挿入用開口の周縁から突出させる際にも、外周側を覆う巻き布により、チューブ本体を、噛み込みを防止できる巻付状態でインフレーター本体の外周側に巻き付けられていれば、チューブ本体の一部が、誤って間に介在されること（噛み込まれること）を抑制できて、収納部位への連結時におけるインナチューブの取付手段の周縁部位での噛み込みの発生等を抑制することができる。

【0008】

したがって、本発明のエアバッグ装置では、外周側をインナチューブに覆われた状態のインフレーターを、円滑に、エアバッグの内部に配置させることができる。

【0009】

また、本発明のエアバッグ装置では、巻き布は、インフレーター本体からの膨張用ガスの吐出時に、チューブ本体の外周側への巻付を解除されて、チューブ本体を、取付手段側から離隔させつつ、ガス流出口を開口させるように展開可能に、構成されている。そのため、インフレーターの作動時には、チューブ本体は、巻き布の影響を受けることなく、エアバッグ内に、ガス流出口から、迅速に膨張用ガスを流入させることができて、エアバッグを、迅速に膨張させることができる。

【0010】

さらに、本発明のエアバッグ装置において、チューブ本体を、一部を巻き布に対して分離可能に、連結させる構成とすれば、巻き布をインフレーターの周囲に巻き付ける際に、チューブ本体を、巻き布と一体的に取り扱うことができて、巻付作業が容易となって、好ましい。

【0011】

さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、チューブ本体と巻き布とを、分断予定部を有した仮止めタブを介して、連結させる構成とすれば、チューブ本体と巻き布との連結を、仮止めタブに設けられる分断予定部を分断させることにより、解除できることから、連結解除時に、チューブ本体にダメージが生じることを抑制できて、チューブ本体による整流作用を損なうことなく、好ましい。

【0012】

具体的には、分断予定部としては、仮止めタブに断続的に設けられるスリットを例示することができる。

【0013】

さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、仮止めタブを、巻き布における巻付の終端側の端縁と、チューブ本体と、を連結するように、配置させる構成とすれば、巻き布を、インフレーターの周囲に巻き付ける際に、同時に、チューブ本体も一緒に折り畳むことができて、チューブ本体単体の折畳作業が不要となり、インフレーターの周囲への巻付作業が、一層容易となって、好ましい。

【0014】

さらにまた、エアバッグ装置としては、チューブ本体を、インフレーターの周囲で折り畳んだ折畳体の状態として、巻き布を、折畳体の周囲に巻き付けて、配設させる構成としてもよい。

【図面の簡単な説明】

【0015】

【図1】本発明の一実施形態である歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の平面図である。

【図2】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の前後方向に沿った概略縦断面図であり、インフレーターの部位を示す。

【図3】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の前後方向に沿った概略縦断面図であり、取付ブラケットの部位を示す。

【図4】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、インフレーターの部位を示す左右方向に沿った概略縦断面図である。

【図5】実施形態の歩行者用エアバッグ装置で使用するエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。

【図6】図５のエアバッグを平らに展開した状態の底面図である。

【図7】図５のエアバッグにおける挿入用開口部を示す部分拡大底面図である。

【図8】図５のエアバッグとインナチューブとを構成する基材を並べた平面図である。

【図9】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において使用するインナチューブにおいて、チューブ本体と巻き布とを並べた状態の平面図である。

【図10】図９のインナチューブにおいて、チューブ本体と巻き布とを仮止めタブによる仮結合前の状態と、仮止めタブによる仮結合後の状態と、を示す平面図である。

【図11】図１０のXI－XI部位の断面図である。

【図12】図１０のXII－XII部位の断面図である。

【図13】図９のインナチューブにおいて、仮止めタブの部位の部分拡大平面図である。

【図14】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、インナチューブをインフレーターの外周側に巻き付ける状態を説明する概略断面図である。

【図15】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略平面図である。

【図16】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略縦断面図である。

【図17】本発明の他の形態であるインナチューブの平面図である。

【図18】図１７のインナチューブをインフレーターの外周側に巻き付ける状態を説明する概略断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0016】

以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、エアバッグ装置として、車両Ｖにおけるフードパネル１５の後端１５ｃ付近に搭載される歩行者用エアバッグ装置Ｍを、例に採り、説明をする。歩行者用エアバッグ装置（以下「エアバッグ装置」と省略する）Ｍは、図１～４に示すように、フードパネル１５の後端１５ｃに近接した位置であって、左右のフロントピラー５Ｌ，５Ｒの間となる車両Ｖの左右方向の略中央となる位置に、配置されている。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Ｖの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて説明する。

【0017】

フードパネル１５は、図１に示すように、車両Ｖにおけるエンジンルームの上方を覆うように配設されるもので、左右両縁側における後端１５ｃ近傍に配置される図示しないヒンジ部により、車両Ｖのボディ１側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル１５は、実施形態の場合、鋼板や、アルミニウム（アルミニウム合金）等の板材からなり、図２，３に示すように、アウタパネル１５ａとインナパネル１５ｂとを備えている。フードパネル１５は、後述するフロントウィンドシールド４に合わせて、図１に示すように、後端１５ｃ側を、左右方向の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲させて構成されている。

【0018】

フードパネル１５の後方には、図２，３，１６に示すように、ボディ１側の合成の高いカウルパネル７ａと、カウルパネル７ａの上方の合成樹脂製のカウルルーバ７ｂと、からなるカウル７が、配設されている。カウルルーバ７ｂは、後端側をフロントウィンドシールド４の下部４ａ側に連ならせるように、配設されている。このカウル７も、フードパネル１５の後端１５ｃの湾曲形状に合わせて湾曲して形成されている（図１参照）。また、カウル７の部位には、図１に示すように、ワイパ８が、配設されている。このワイパ８は、図２，３，１６の二点鎖線に示すように、カウルルーバ７ｂから上方に突出するように配設されている。フロントウィンドシールド４の左右の外方には、フロントピラー５Ｌ，５Ｒが、配設されている。

【0019】

エアバッグ装置Ｍは、図１～４に示すように、エアバッグ４５と、エアバッグ４５に膨張用ガスを供給するインフレーター３０と、エアバッグ４５内においてインフレーター３０の外周側を覆うインナチューブ９０と、折り畳まれたエアバッグ４５とインフレーター３０とを収納する収納部位としてのケース２０と、折り畳まれたエアバッグ４５を覆うエアバッグカバー２５と、エアバッグ４５の後述する取付片部７０をケース２０に取り付ける取付ブラケット１１５と、を備えている。

【0020】

収納部位としてのケース２０は、板金製として、図２，３に示すように、底壁部２１と、底壁部２１から上方に延びて上端側を開口させて構成される略四角筒形状の周壁部２２と、を備えた略箱形状とされるもので、上端側の突出用開口２０ａから、膨張するエアバッグ４５を突出させる構成である。底壁部２１には、インフレーター３０を取り付ける取付ボルト３９と、エアバッグ４５の取付片部７０を取り付ける取付ボルト１１７と、を、それぞれ、挿通させて、ナット４２，１１９止めして取り付けるための取付孔２１ａが、形成されている（図２～４参照）。実施形態の場合、ケース２０は、前側の領域をフードパネル１５の後端１５ｃの直下に位置させ、後側の領域をフードパネル１５よりも後側に位置させるように、配置されるもので、図示しないブラケットを利用して、ボディ１側のカウルパネル７ａに取り付けられる構成である。

【0021】

エアバッグカバー２５は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー（ＴＰＯ）等の軟質合成樹脂製とされるもので、ケース２０の上端側の突出用開口２０ａを覆うように配置されて、エアバッグ４５の展開膨張時に、エアバッグ４５に押されて後側に向かって開き可能な扉部２６を、有する構成とされている（図２，３，１６参照）。このエアバッグカバー２５は、所定箇所を、図示しない取付手段を用いてケース２０に取り付けられている。

【0022】

インフレーター３０は、インフレーター本体３１と、インフレーター本体３１をケース２０に取り付けるための取付ブラケット３５と、を備える構成とされている。

【0023】

インフレーター本体３１は、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプとされるもので、図２，４に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして、エアバッグ４５における後述するカウルカバー部４８の前後左右の略中央となる位置の内部に、配置される構成である。詳細には、インフレーター本体３１は、カウルカバー部４８の前後の中央よりもやや後方となる位置に、配置されている（図５，６の二点鎖線参照）。インフレーター本体３１は、図４に示すように、軸方向の一端側（実施形態の場合、右端３１ｂ側）に、膨張用ガスＧを吐出可能なガス吐出部３２を配設させて構成されるもので、軸方向の他端側（左端３１ａ側）から延びる図示しないリード線を介して、図示しない作動回路と電気的に接続されている。作動回路は、センサからの信号に基づいて車両Ｖと歩行者との衝突を検知した際に、インフレーター本体３１を作動させることとなる。

【0024】

インフレーター本体３１をケース２０に取り付けるための取付ブラケット３５は、図２，４に示すように、インフレーター本体３１を保持する保持部３６と、保持部３６から下方に突出する複数（実施形態の場合、３個）の取付ボルト３９と、を備える構成とされている。保持部３６は、板金製として、インフレーター本体３１の下面側を支持するように左右方向（インフレーター本体３１の軸方向）に略沿って延びる帯状として構成され、左右方向に沿った複数箇所（実施形態の場合、３箇所）に、インフレーター本体３１を支持する支持片部３７を、前後両側に突出させて構成されている。各支持片部３７は、インフレーター本体３１の外周面を支持可能に、保持部３６の前後の縁部から先端を前後の外方に向けつつ上側に向かって延びるように傾斜して形成されるもので、前後で対称形とされている（図２参照）。実施形態の場合、支持片部３７は、図４に示すように、取付ボルト３９に対応した位置に、形成されている。取付ボルト３９は、保持部３６の左右両端側と左右の略中央との３箇所において、それぞれ、下方に突出するように形成されている。そして、実施形態では、この取付ブラケット３５は、保持部３６にインフレーター本体３１を保持させた状態で、外周側からクランプ４０を巻き付けることにより、インフレーター本体３１を取り付ける構成である。クランプ４０は、実施形態の場合、保持部３６の左右両端側の２箇所に、配置されている（図４参照）。

【0025】

すなわち、実施形態のインフレーター３０では、図３，４に示すように、インフレーター本体３１の外周面３１ｃから、インフレーター本体３１の軸直交方向（下方）に、取付手段としての取付ボルト３９が、突出するように配置されている。そして、インフレーター３０は、クランプ４０を用いて、取付ブラケット３５にインフレーター本体３１を取り付け、挿通孔９２ｃから取付ボルト３９を突出させるように、外周側をインナチューブ９０に覆われた状態で、後述する挿通孔５２及び取付孔５６から、取付ボルト３９を外部に突出させるようにして、インフレーター本体３１と取付ブラケット３５における保持部３６とを、エアバッグ４５の内部に挿入させた状態で、ケース２０の底壁部２１に取り付けられる構成である。詳細には、インフレーター３０は、エアバッグ４５における後述する蓋パネル５４から突出している各取付ボルト３９を、ケース２０の底壁部２１から突出させてナット４２止めすることにより、エアバッグ４５とともに、ケース２０に取り付けられる構成である（図２参照）。また、実施形態では、インフレーター３０は、インフレーター本体３１と取付ブラケット３５における保持部３６との外周側を、インナチューブ９０に覆われて、エアバッグ４５内に収納される構成である。すなわち、インフレーター３０のケース２０への取付時に、エアバッグ４５に加えてインナチューブ９０も、ともに、ケース２０に連結される構成である。そして、実施形態の場合、インフレーター３０（インフレーター本体３１）は、軸方向の中央を、エアバッグ４５（バッグ本体４６）の左右の中央と略一致させるようにして（図５，６参照）、エアバッグ４５におけるカウルカバー部４８の前後の中央よりもやや後側となる位置に、収納される構成であり、さらに詳細には、ガス吐出部３２を配設させている右端３１ｂ側を、蓋パネル５４よりも右方（すなわち、後述する挿入用スリット５１よりも右方）に位置させ、左端３１ａ側を蓋パネル５４の左縁よりも右方に位置させるようにして、カウルカバー部４８内に収納されている。

【0026】

エアバッグ４５は、図５～７に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体４６と、バッグ本体４６の膨張完了時の厚さを規制するテザー６２ＡＬ，６２ＢＬ，６２ＣＬ，６２ＡＲ，６２ＢＲ，６２ＣＲ，６４Ｌ，６４Ｒ，６５，６６Ｌ，６６Ｒと、バッグ本体４６の後述する車体側壁部４６ａ側をケース２０に取り付ける取付片部７０（７０Ｌ，７０Ｒ）と、を備える構成とされている。また、バッグ本体４６は、インフレーター３０を内部に挿入させるための挿入用開口部５０を、有している。

【0027】

バッグ本体４６は、膨張完了時の外形形状を、正面側から見て、左右に幅広の略Ｕ字形状とされるもので、フロントウィンドシールド４の下部４ａに略沿うように左右方向に略沿って配置されるカウルカバー部４８と、カウルカバー部４８の両端からそれぞれ後方へ延びて左右のフロントピラー５Ｌ，５Ｒの前面の下部５ａ側を覆うピラーカバー部６０Ｌ，６０Ｒと、を備える構成とされている。また、バッグ本体４６は、膨張完了時にボディ１側に配置される車体側壁部４６ａと、車体側壁部４６ａと対向して配置される歩行者側壁部４６ｂと、を有し、車体側壁部４６ａと歩行者側壁部４６ｂとの外周縁相互を全周にわたって結合（縫着）させることにより、袋状とされている。

【0028】

カウルカバー部４８は、膨張完了時にフードパネル１５の後端１５ｃからカウル７にかけての領域の上面側を覆うもので、詳細には、実施形態の場合、膨張完了時に、フードパネル１５の後端１５ｃ側の部位から、カウル７を経て、フロントウィンドシールド４の下部４ａ側にかけての領域の上面側（前面側）を、車幅方向（左右方向）の略全域にわたって、ワイパ８も含めて覆うように構成されている（図１５，１６参照）。実施形態のエアバッグ４５では、このカウルカバー部４８における前後左右の略中央となる位置に、インフレーター３０が収納される構成であり、車体側壁部４６ａにおいて、カウルカバー部４８の前後左右の略中央となる領域が、インフレーター３０を内部に挿入させるための挿入用開口部５０を、構成している（図６，７参照）。

【0029】

詳細には、インフレーター３０は、カウルカバー部４８の前後の中央よりもやや後側となる位置に、収納されるもので、挿入用開口部５０も、カウルカバー部４８における前後の中央よりもやや後側となる位置に、配設されている。具体的には、挿入用開口部５０は、車体側壁部４６ａにおいて、後述する前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒと後側左右テザー６５との間の領域に、配設されている。挿入用開口部５０は、図７に示すように、挿入用開口としての挿入用スリット５１と、インフレーター３０の取付ボルト３９（取付手段）を突出させるための挿通孔５２と、挿入用スリット５１を外周側から塞ぐ蓋パネル５４と、を備えている。挿入用開口としての挿入用スリット５１は、インフレーター３０（インフレーター本体３１）を挿入させるためのもので、インフレーター本体３１の軸方向に略沿うように、左右方向に略沿った直線状に形成されている。この挿入用スリット５１は、長さ寸法を、インフレーター本体３１を挿入可能な範囲で、かつ、ガス漏れを抑制できるように、インフレーター本体３１の長さ寸法より小さく設定されている（図７参照）。挿通孔５２は、インフレーター３０の取付ボルト３９を突出させるためのもので、挿入用スリット５１の周縁となる位置、具体的には、挿入用スリット５１の前側に、配置されている。挿通孔５２は、取付ボルト３９に対応して、左右方向に沿って３箇所に形成されている。蓋パネル５４は、可撓性を有したシート体からなる別部材から構成されるもので、車体側壁部４６ａの外周側において、挿入用スリット５１を塞ぎ可能に構成されるもので、外形形状を、左右方向側を幅広とした略長方形状とされている。蓋パネル５４は、後端５４ｂ側を、挿入用スリット５１の後側となる位置で、左右の略全域にわたって連続的に形成される結合部位５５によって車体側壁部４６ａに結合させ、前端５４ａ側に、インフレーター３０の取付ボルト３９を突出させるための取付孔５６を、挿通孔５２に対応して、配設させている構成である。実施形態の場合、蓋パネル５４は、図８に示すような蓋パネル用基布８３から、形成されている。

【0030】

バッグ本体４６内において、バッグ本体４６の膨張完了時の厚さを規制するテザーとしては、実施形態の場合、前後テザー６２ＡＬ，６２ＢＬ，６２ＣＬ，６２ＡＲ，６２ＢＲ，６２ＣＲと、前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒと、後側左右テザー６５と、端側テザー６６Ｌ，６６Ｒと、が、歩行者側壁部４６ｂと車体側壁部４６ａとを連結して、膨張完了時の歩行者側壁部４６ｂと車体側壁部４６ａとの離隔距離を規制するように、配設されている（図１６参照）。前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒは、カウルカバー部４８の前後の中央よりやや前方となる位置であって、挿入用開口部５０の前側において、左右方向に略沿うように配設されている。後側左右テザー６５は、挿入用開口部５０の後側において左右方向に略沿うように配設されている。前後テザー６２ＡＬ，６２ＢＬ，６２ＣＬ，６２ＡＲ，６２ＢＲ，６２ＣＲは、各前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒの左右の外方となる位置の１箇所と、各前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒの前側の２箇所と、に、それぞれ、配置されるもので、前後方向に略沿うようにして、左右方向側で並設されている。前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒの左右の外方に配置される前後テザー６２ＡＬ，６２ＡＲは、前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒよりも後方に延びるように、幅寸法を、残りの前後テザー６２ＢＬ，６２ＣＬ，６２ＢＲ，６２ＣＲよりも大きく設定されている。実施形態の場合、前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒと前後テザー６２ＡＬ，６２ＢＬ，６２ＣＬ，６２ＡＲ，６２ＢＲ，６２ＣＲとには、膨張用ガスを流通可能に開口した開口部６２ａ，６４ａが、それぞれ、形成されている（図５，１６参照）。各前後テザー６２ＡＬ，６２ＢＬ，６２ＣＬ，６２ＡＲ，６２ＢＲ，６２ＣＲには、開口部６２ａは、上下方向に略沿った長孔状として、１つずつ、形成されている。各前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒには、開口部６４ａは、上下方向に略沿った長孔状として、２つずつ、形成されている。端側テザー６６Ｌ，６６Ｒは、カウルカバー部４８と各ピラーカバー部６０Ｌ，６０Ｒとの境界部位付近において、それぞれ、左右の内側を後方に位置させるように、左右方向に対して傾斜して、配設されている。これらの前後テザー６２ＡＬ，６２ＢＬ，６２ＣＬ，６２ＡＲ，６２ＢＲ，６２ＣＲ、前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒ、後側左右テザー６５、及び、端側テザー６６Ｌ，６６Ｒは、バッグ本体４６内において、左右対称的に配置されている。

【0031】

バッグ本体４６の車体側壁部４６ａ側をケース２０に取り付ける取付片部７０は、挿入用開口部５０の左右両側に配設されるもので、バッグ本体４６と別体として、可撓性を有したシート体から構成されて、図３，６に示すように、前端側と後端側とを、車体側壁部４６ａに結合（縫着）されている。この取付片部７０（７０Ｌ，７０Ｒ）は、取付ブラケット１１５を用いて、ケース２０の底壁部２１に取り付けられる構成であり、実施形態の場合、図６に示すように、バッグ本体４６を平らに展開した状態で、挿入用開口部５０と端側テザー６６Ｌ，６６Ｒとの間であって、かつ、前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒの後側において、略左右対称となる２箇所に、配置されている。この取付片部７０（７０Ｌ，７０Ｒ）は、車体側壁部４６ａとの間に、取付ブラケット１１５の後述する取付プレート１１６を挿入させるもので（図３参照）、取付ブラケット１１５に形成される後述する取付ボルト１１７を挿通可能な貫通穴７０ａを、有している。

【0032】

実施形態のエアバッグ４５は、図８に示すように、バッグ本体４６において車体側壁部４６ａを構成する車体側基布７５及び歩行者側壁部４６ｂを構成する歩行者側基布７６と、前後テザー６２ＡＬ，６２ＢＬ，６２ＣＬ，６２ＡＲ，６２ＢＲ，６２ＣＲ，前側左右テザー６４Ｌ，６４Ｒ，後側左右テザー６５，端側テザー６６Ｌ，６６Ｒをそれぞれ構成するテザー用基布７８Ａ，７８Ｂ，７９，８０，８１と、蓋パネル５４を構成する蓋パネル用基布８３と、取付片部７０と、から構成されている。なお、これらの基布（基材）は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布を、所定形状に裁断して、形成されている。

【0033】

インフレーター３０の外周側を覆うインナチューブ９０は、図９～１１に示すように、実施形態の場合、チューブ本体９１と、巻き布１００と、チューブ本体９１と巻き布１００とを連結させる仮止めタブ１０２と、を備える構成とされている。インナチューブ９０は、可撓性を有したシート体から構成されるもので、実施形態の場合、エアバッグ４５と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布から、構成されている。

【0034】

チューブ本体９１は、インフレーター本体３１（具体的には、インフレーター本体３１と取付ブラケット３５における保持部３６）の外周側を覆うような略筒状とされるもので、実施形態の場合、図９，１１，１２に示すように、インフレーター本体３１の外周側を覆うとともに取付ボルト３９を突出させるように構成される取付側部９２と、インフレーター本体３１から吐出される膨張用ガスＧを整流させるガス整流部９５と、を備える構成とされている。

【0035】

取付側部９２は、インフレーター本体３１の外周側を覆い可能に、長手方向を、インフレーター本体３１の軸方向に沿わせた略帯状として構成されるもので、幅方向の略中央となる位置に、取付ブラケット３５の取付ボルト３９を突出させるための挿通孔９２ｃを、長手方向に沿った３箇所に、配設させている（図８参照）。この取付側部９２は、インフレーター本体３１の外周側を、車両搭載状態において、上面側を除いて覆い可能に構成されるもので、長手方向側（左右方向側）の幅寸法を、インフレーター本体３１の長さ寸法より大きく設定されて、インフレーター本体３１の外周側を左右の全域にわたって覆い可能とされている（図９参照）。

【0036】

ガス整流部９５は、左右両端側を開口させた略筒状とされるもので、具体的には、取付側部９２の前縁９２ｄ側と後縁９２ｅ側とから延びるようにして、先端相互を結合させることにより、取付側部９２から上方に部分的に突出するような略筒状とされている。このガス整流部９５は、インフレーター本体３１における右端３１ｂ側に配置されるガス吐出部３２の外周側を覆うように、取付側部９２における右側の領域に配設されるもので、右端９５ｂを取付側部９２の右端９２ｂと一致させて、左側にかけて拡径されるような筒状とされている。また、ガス整流部９５は、左端９５ａを、取付側部９２の左右の中央よりやや左方となる位置に配置させるように、左右に幅広に構成されている。そして、ガス整流部９５は、左端９５ａ側と、取付側部９２の右端９２ｂと一致している右端９５ｂ側と、に、膨張用ガスを整流して流出させるためのガス流出口９６Ｌ，９６Ｒを、有する構成とされている。ガス整流部９５は、上述したごとく、左右の中央側となる左側にかけて拡径されるような略筒状とされており、詳細な図示は省略するが、左側のガス流出口９６Ｌは、開口面積を、右側のガス流出口９６Ｒよりも大きく構成されている。また、ガス整流部９５は、周壁９７の領域にも、膨張用ガスを整流して流出可能なガス流出口９８を、有する構成とされている。周壁９７に設けられるガス流出口９８は、略四角形状に開口して、前後両側において、それぞれ、左右方向側で２個ずつ並設されている。

【0037】

巻き布１００は、インフレーター３０をエアバッグ４５内に挿入させる際に、インフレーター本体３１の外周側に巻き付けられるチューブ本体９１の巻付状態を維持させるためのものであり、実施形態の場合、仮止めタブ１０２の非結合の状態で、かつ、巻付前の状態では、元部１００ａ側を、チューブ本体９１に縫着（結合）されて、チューブ本体９１から延びるように配置されている（図１０～１２参照）。具体的には、巻き布１００の元部１００ａは、チューブ本体９１の取付側部９２において、車両搭載時に後側に配置される後側部位９３の、上下の中間部位となる位置に、左右の略全域にわたって、結合部位１０１を形成されるようにして、縫着されている。巻き布１００は、幅寸法（左右方向側の幅寸法）を、チューブ本体９１の左右方向側の幅寸法と略同一とした略長方形状とされている。また、巻き布１００は、前後方向側の幅寸法を、チューブ本体９１の外周側への巻き付け時に、チューブ本体９１の上面側の領域（詳細には、ガス整流部９５の外周側と、取付側部９２における上縁側の領域）の外周側を覆い可能な寸法に、設定されている（図１４のＢ参照）。さらに詳細には、巻き布１００の前後方向側の幅寸法は、仮止めタブ１０２による仮結合前の状態でチューブ本体９１と巻き布１００とを重ねて平らに展開した状態で、チューブ本体９１におけるガス整流部９５の左端９５ａ側の部位、すなわち、仮止めタブ１０２を、先端１００ｂよりも突出させるような幅寸法に、設定されている（図１０のＡ参照）。そして、後述するごとく、仮止めタブ１０２を、巻き布１００の先端１００ｂ側に、結合部位１０３を形成するようにして結合させた状態では、ガス整流部９５は、左端９５ａ側の部位を、部分的に縮められるようにして、弛んだ状態で、配置されることとなる（図１０のＢ，１４のＡ参照）。巻き布１００の先端１００ｂは、インフレーター３０の外周側に巻き付けた状態で、インフレーター本体３１の前側となる位置であって、元部１００ａ側の結合部位１０１と前後で略対向する位置に配置されることとなり、実施形態では、巻き布１００を、先端１００ｂを前方に向けるように、単にインフレーター３０の外周側に巻き付けるだけで、チューブ本体９１のガス整流部９５を、インフレーター３０の車両搭載時における上側の領域に、配置させることができる。

【0038】

チューブ本体９１と巻き布１００とを連結させる仮止めタブ１０２は、実施形態の場合、チューブ本体９１側から延びるように、配設されている。具体的には、仮止めタブ１０２は、チューブ本体９１におけるガス整流部９５の左端９５ａ側において、車両搭載時における上面側から延びるように、１箇所に、配設されている（図９，１０参照）。すなわち、仮止めタブ１０２は、インナチューブ９０の左右の中央側の一箇所に、形成されている。仮止めタブ１０２は、外形形状を略長方形状として、先端１０２ａ側を、巻き布１００の先端１００ｂ側（巻付の始端側）に、縫合糸を用いて縫着（結合）される構成であり、巻き布１００への結合部位１０３より前方（チューブ本体９１側）の領域に、エアバッグ４５の展開膨張時に分断可能な分断予定部１０４を、配設させている。分断予定部１０４は、実施形態の場合、図１３に示すように、前側（チューブ本体９１側）の領域において左右方向に沿った直線状に形成されるメインスリット１０５と、メインスリット１０５の後側における左右両端側に形成される２つのサブスリット１０６，１０６と、から構成されている。メインスリット１０５は、仮止めタブ１０２の左右両縁側を除いて、左右方向に略沿った略直線状として連続的に形成されるもので、２つのサブスリット１０６，１０６は、それぞれ、仮止めタブ１０２の左縁１０２ｂ，右縁１０２ｃからメインスリット１０５の端部と前後方向側で重なる領域まで進入するように、略直線状に形成されている（図１３参照）。実施形態の場合、チューブ本体９１を構成するチューブ本体用基布１１０は、図１３に示すように、経糸ＶＴを前後方向に略沿わせるようにして構成されており、すなわち、仮止めタブ１０２を構成する経糸ＶＴは、メインスリット１０５またはサブスリット１０６，１０６により、予め分断されている構成である。そのため、仮止めタブ１０２は、エアバッグ４５の膨張時に、メインスリット１０５とサブスリット１０６，１０６との間で、分断されている経糸ＶＴを緯糸ＨＴから抜けるように、糸抜けを生じさせて分断され、チューブ本体９１を巻き布１００に対して分離させることができる。実施形態では、チューブ本体９１とチューブ本体９１から延びる仮止めタブ１０２とは、図８に示すようなチューブ本体用基布１１０から、構成されており、チューブ本体９１は、このチューブ本体用基布１１０を二つ折りして、対応する縁部相互を結合（縫着）させることにより、ガス整流部９５の部位を筒状とされている。

【0039】

取付片部７０（７０Ｌ，７０Ｒ）をケース２０の底壁部２１に取り付ける取付ブラケット１１５は、それぞれ、略長方形板状の取付プレート１１６と、取付プレート１１６から下方に突出する取付ボルト１１７と、を備えている。取付プレート１１６は、外形形状を、図６の二点鎖線に示すように、左右方向側を幅広とした略長方形板状とされている。取付ボルト１１７は、詳細な図示は省略するが、左右方向に沿って２個並設されている。この取付ブラケット１１５は、取付片部７０から突出している取付ボルト１１７を、ケース２０の底壁部２１から突出させてナット１１９止めすることにより、取付片部７０を、ケース２０の底壁部２１に取り付ける構成である（図３参照）。

【0040】

次に、実施形態のエアバッグ装置Ｍの車両Ｖへの搭載について説明をする。インフレーター３０は、クランプ４０を利用して取付ブラケット３５にインフレーター本体３１を保持させた状態としておく。そして、まず、このインフレーター３０を、インナチューブ９０におけるチューブ本体９１の取付側部９２内に、取付ボルト３９を挿通孔９２ｃから突出させるようにして、挿入させる。次いで、巻き布１００を、図１４のＡ，Ｂに示すように、先端１００ｂ側から、チューブ本体９１ごと、インフレーター３０の外周側に巻き付け、巻き布１００の外周側に、インフレーター本体３１におけるガス吐出部３２からの膨張用ガスの吐出時に破断可能なテープ材１２５を巻き付けて（図１４のＢの二点鎖線参照）、巻き布１００のインフレーター３０（インフレーター本体３１）の外周側への巻き付け状態を保持させる。実施形態の場合、テープ材１２５は、詳細な図示を省略するが、巻き布１００の両端側となる２箇所に、巻き付けられている。そして、実施形態では、この巻き布１００のインフレーター３０の外周側への巻付時に、同時に、チューブ本体９１も、インフレーター３０（インフレーター本体３１）の外周側に巻き付けられることとなり、また、テープ材１２５によって巻付状態を保持される巻き布１００によって、チューブ本体９１のインフレーター３０（インフレーター本体３１）の外周側への巻付状態も、維持されることとなる。

【0041】

次いで、エアバッグ４５を、ケース２０内に収納可能に折り畳む。具体的には、エアバッグ４５は、詳細な図示を省略するが、インフレーター３０の収納スペースを確保するために、外形形状をインフレーター３０と略同形としたダミーインフレーターを内部に収納させた状態で、歩行者側壁部４６ｂを車体側壁部４６ａに重ねるようにバッグ本体４６を平らに展開した状態から、前後方向側と左右方向側との幅寸法を縮めるようにして、ケース２０内に収納可能に折り畳まれる。その後、折り畳まれたエアバッグ４５（折り完了体）の周囲を、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材によりくるむ。このとき、エアバッグ４５における挿入用開口部５０と取付片部７０との部位は、ラッピング材から露出させておく。そして、挿入用開口部５０における蓋パネル５４の部位を開いて、ダミーインフレーターを、挿入用スリット５１から抜くようにして、折り完了体（エアバッグ４５）から取り出し、上述したごとくインナチューブ９０を外周側に巻き付けた状態のインフレーター３０を、挿入用スリット５１を経て、折り完了体（エアバッグ４５）内に挿入させ、各取付ボルト３９を挿通孔５２から突出させて、インフレーター３０をエアバッグ４５の内部に収納させる。その後、蓋パネル５４を、挿入用スリット５１を覆うように閉じて、前端５４ａ側の取付孔５６に、各取付ボルト３９を挿通させる。また、各取付片部７０に取付ブラケット１１５を取り付けて、エアバッグ組付体を製造する。その後、エアバッグ組付体を、各取付ボルト３９，１１７を底壁部２１から突出させるようにして、ケース２０内に収納させ、底壁部２１から突出している各取付ボルト３９，１１７に、ナット４２，１１９を締結させれば、エアバッグ４５とインフレーター３０とを、ケース２０に取り付けることができる。そして、エアバッグカバー２５をケース２０に取り付け、インフレーター本体３１を、図示しない作動回路に接続させれば、エアバッグ装置Ｍを車両Ｖに搭載することができる。

【0042】

実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ６に配置される図示しないセンサからの信号に基づいて、車両Ｖと歩行者との衝突を検知した際に、インフレーター３０が作動されて、内部に膨張用ガスを流入させてエアバッグ４５が膨張することとなり、膨張するエアバッグ４５が、エアバッグカバー２５の扉部２６を押し開き、扉部２６を押し開いて形成されるケース２０の突出用開口２０ａから上方に向かって突出しつつ、フードパネル１５の後端１５ｃの上面からカウル７の上面にかけてと、フロントピラー５Ｌ，５Ｒの前面の下部５ａ側と、を覆うように、膨張を完了させることとなる（図１５，１６参照）。

【0043】

そして、実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、インフレーター本体３１の外周側を、インナチューブ９０によって覆う構成であるが、インナチューブ９０は、膨張用ガスを整流して流出させるチューブ本体９１と、このチューブ本体９１と幅寸法を略同一に設定される巻き布１００と、を備える構成であり、チューブ本体９１は、外周側に巻き布１００を巻き付けられて、この巻き布１００によって、インフレーター本体３１の外周側への巻付状態を維持された状態で、エアバッグ４５内に挿入されることとなる。そのため、実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、インフレーター本体３１の周囲に巻き付けられたチューブ本体９１は、外周側を、幅方向の略全面にわたって巻き布１００に覆われる構成であることから、インフレーター３０とインナチューブ９０とを、外形寸法をコンパクトにして、エアバッグ４５の挿入用スリット５１（挿入用開口）から容易に挿入させることができる。また、実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、インフレーター本体３１から突出している取付ボルト３９（取付手段）を、挿入用スリット５１の周縁（挿通孔５２）から突出させる際にも、外周側を覆う巻き布１００により、チューブ本体９１（具体的には、ガス整流部９５）を、噛み込みを防止できる巻付状態でインフレーター本体３１の外周側に巻き付けられていることから、チューブ本体９１の一部が、誤って間に介在されること（噛み込まれること）を抑制できて、収納部位としてのケース２０への連結時におけるインナチューブ９０の取付ボルト３９の周縁部位での噛み込みの発生等を抑制することができる。特に、実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、インフレーター３０を挿入させるためにエアバッグ４５に形成される挿入用開口は、車体側壁部４６ａに直線状の切目を形成して構成される挿入用スリット５１であり、また、この挿入用スリット５１は、長さ寸法を、インフレーター本体３１の長さ寸法より小さく設定されているが、インフレーター本体３１の周囲に巻き付けられたチューブ本体９１は、部分的に突出するように形成されるガス整流部９５の外表面側を巻き布１００によって全面にわたって覆われていることから、凹凸が表面側に露出せず、インナチューブ９０を巻き付けられた状態のインフレーター３０を、挿入用スリット５１を経て、エアバッグ４５内に円滑に挿入させることができる。

【0044】

したがって、実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、外周側をインナチューブ９０に覆われた状態のインフレーター３０を、円滑に、エアバッグ４５の内部に配置させることができる。

【0045】

また、実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、巻き布１００は、破断可能なテープ材１２５を利用して、インフレーター３０の外周側への巻付を維持されている構成であり、インフレーター本体３１からの膨張用ガスの吐出時に、テープ材１２５を破断させることにより、チューブ本体９１の外周側への巻付を解除されて、チューブ本体９１を、取付ボルト３９側から離隔させつつ、ガス流出口９６Ｌ，９６Ｒ，９８を開口させるように展開可能に、構成されている。そのため、インフレーター３０の作動時には、チューブ本体９１は、巻き布１００の影響を受けることなく、エアバッグ４５内に、ガス流出口９６Ｌ，９６Ｒ，９８から、迅速に膨張用ガスＧを流入させることができて、エアバッグ４５を、迅速に膨張させることができる。

【0046】

さらに、実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、チューブ本体９１が、一部を巻き布１００に対して分離可能に、連結される構成であることから、巻き布１００をインフレーター３０の周囲に巻き付ける際に、チューブ本体９１を、巻き布１００と一体的に取り扱うことができて、巻付作業が容易となる。なお、このような点を考慮しなければ、後述するごとく、図１７に示すようなインナチューブ９０Ａを、使用してもよい。

【0047】

さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、チューブ本体９１と巻き布１００とが、分断予定部１０４を有した仮止めタブ１０２を介して、連結される構成である。そのため、チューブ本体９１と巻き布１００との連結を、仮止めタブ１０２に設けられる分断予定部１０４を分断させることにより、解除できることから、連結解除時に、チューブ本体９１にダメージが生じることを抑制できて、チューブ本体９１による整流作用を損なうことがない。特に、実施形態では、分断予定部１０４が、仮止めタブ１０２に断続的にスリットを形成することにより、構成されており、具体的には、仮止めタブ１０２の中間部位に、分断予定部１０４として、メインスリット１０５と、２つのサブスリット１０６，１０６と、仮止めタブ１０２の長さ方向側（前後方向側）でずらし、かつ、幅方向側（左右方向側）で部分的に重ならせるように、配置させている。そのため、メインスリット１０５とサブスリット１０６との間の領域で、容易に糸抜けを生じさせることができ、インフレーター３０の作動時に、迅速に、仮止めタブ１０２による連結状態を解除させることができる。なお、仮止めタブに設けられる分断予定部としては、断続的に設けられるスリットに限らず、例えば、分断予定部を、破断可能な縫合糸による縫着や、剥離可能な接着剤による接着等により、構成してもよい。

【0048】

さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、仮止めタブ１０２が、巻き布１００における巻付の終端側の端縁（先端１００ｂ）と、チューブ本体９１と、を連結するように、配置される構成であることから、巻き布１００を、インフレーター３０の周囲に巻き付ける際に、同時に、チューブ本体９１も一緒に折り畳むことができて、チューブ本体９１単体の折畳作業が不要となり、インフレーター３０の周囲への巻付作業が、一層容易である。特に、実施形態のエアバッグ装置Ｍでは、巻き布１００は、前後方向側の幅寸法を、平らに展開した状態のチューブ本体９１におけるガス整流部９５の左端９５ａ側の部位の前後方向側の幅寸法よりも短く設定されており、仮止めタブ１０２を巻き布１００の先端１００ｂ側に結合させた状態では、チューブ本体９１は、ガス整流部９５の左端９５ａ側の領域を弛ませている。そのため、巻き布１００を、先端１００ｂを前方に向けるように、単にインフレーター３０の外周側に巻き付けるだけで、チューブ本体９１のガス整流部９５を、取付ボルト３９側となる下面側の領域に配置されることを抑制して、インフレーター３０の車両搭載時における上側の領域に、配置させることができる。

【0049】

なお、実施形態では、仮止めタブ１０２は、チューブ本体９１側から延びるようにして、チューブ本体９１と一体的に形成されているが、仮止めタブは、巻き布側から延ばすようにして、巻き布と一体的に形成してもよく、さらには、チューブ本体及び巻き布と別体として、チューブ本体側と巻き布側とに、それぞれ、縫合糸を用いた縫着等によって、連結させる構成としてもよい。

【0050】

また、インナチューブ９０Ａとしては、図１７に示すような構成のものを使用してもよい。インナチューブ９０Ａは、仮止めタブを備えない以外は、前述のインナチューブ９０と同一の構成である。すなわち、インナチューブ９０Ａは、巻き布１００Ａを、元部１００ａ側のみで、チューブ本体９１Ａに連結させた構成とされている。このようなインナチューブ９０Ａを使用する場合には、インフレーター３０を、インナチューブ９０Ａにおけるチューブ本体９１Ａの取付側部９２Ａ内に挿入させた状態で、まず、図１８のＡ，Ｂに示すように、チューブ本体９１Ａにおけるガス整流部９５Ａを、折畳体１２７を形成するように折り畳み、次いで、巻き布１００Ａを、先端１００ｂ側から、折畳体１２７の周囲を覆うように、インフレーター３０の外周側に巻き付け、巻き布１００Ａの外周側に、テープ材１２５を巻き付ければ（図１８のＣ参照）、テープ材１２５によって巻付状態を保持される巻き布１００Ａによって、チューブ本体９１Ａのインフレーター３０（インフレーター本体３１）の外周側への巻付状態を、維持させることができる。

【0051】

なお、実施形態のインナチューブ９０，９０Ａでは、巻き布１００，１００Ａは、元部１００ａ側で、チューブ本体９１，９１Ａに縫着されて一体化されているが、巻き布は、チューブ本体と一体化させず、別体として、チューブ本体の周囲に巻き付ける構成としてもよい。

【0052】

また、実施形態では、歩行者用エアバッグ装置を例に採り、説明しているが、本発明を適用可能なエアバッグ装置は、歩行者用エアバッグ装置に限定されるものではない。例えば、インナチューブに外周側を覆われるインフレーターを、エアバッグ内に収納させる構成であれば、サイドエアバッグ装置等にも、本発明は適用可能である。

【符号の説明】

【0053】

２０…ケース（収納部位）、２５…エアバッグカバー、３０…インフレーター、３１…インフレーター本体、３９…取付ボルト（取付手段）、４５…エアバッグ、５１…挿入用スリット（挿入用開口）、５６…取付孔、９０，９０Ａ…インナチューブ、９１，９１Ａ…チューブ本体、９５，９５Ａ…ガス整流部、９６Ｌ，９６Ｒ，９８…ガス流出口、１００，１００Ａ…巻き布、１００ｂ…先端、１０２…仮止めタブ、１０４…分断予定部、１２５…テープ材、Ｍ…歩行者用エアバッグ装置（エアバッグ装置）。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】