(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188711
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】容器保持ラックおよび前処理装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20221214BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20221214BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20221214BHJP
B67B 7/18 20060101ALI20221214BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G01N35/04 H
G01N35/02 B
G01N1/00 101H
B67B7/18
B65D25/20 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096959
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
3E062
3E081
【Fターム(参考)】
2G052AA24
2G052AD26
2G052DA02
2G052DA12
2G052DA32
2G052ED17
2G052GA27
2G052JA04
2G052JA07
2G058AA01
2G058BA06
2G058GA14
3E062AA09
3E062AB01
3E062CA05
3E062KB17
3E081AA14
3E081AB03
3E081AC11
3E081BB11
3E081EE01
(57)【要約】
【課題】複数の容器にキャップを容易に着脱することが可能な容器保持ラックを提供する。
【解決手段】容器保持ラック100は、複数の容器収容部と、ラッチ部材140およびベルト部材150を備える。複数の容器収容部は、複数の容器1を収容する。ラッチ部材140は、第1の状態と第2の状態とに切り替え可能に設けられる。ベルト部材150は、複数の容器収容部の側面に沿って配置される。ベルト部材150は、ラッチ部材140が第2の状態にあるときに、ラッチ部材140が第1の状態にあるときよりも大きい圧力で複数の容器1を押圧する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理装置に使用されるとともに、複数の容器を保持し、前記前処理装置が有する着脱装置により各容器のキャップが着脱される容器保持ラックであって、
前記複数の容器を収容する複数の容器収容部と、
第1の状態と第2の状態とに切り替え可能に設けられたラッチ部材と、
前記複数の容器収容部の側面に沿って配置され、前記ラッチ部材が前記第2の状態にあるときに、前記ラッチ部材が前記第1の状態にあるときよりも大きい圧力で前記複数の容器を押圧するベルト部材とを備える、容器保持ラック。
【請求項2】
前記ベルト部材は、第1の端部と第2の端部とを有し、前記ラッチ部材が前記第2の状態にあるときに、前記ラッチ部材が前記第1の状態にあるときよりも前記第1の端部と前記第2の端部とが近づくように前記ラッチ部材に接続される、請求項1記載の容器保持ラック。
【請求項3】
前記ラッチ部材は、固定端と、前記固定端に対して移動可能な自由端とを有し、
前記ベルト部材の前記第1の端部および前記第2の端部は、前記ラッチ部材の前記固定端および前記自由端にそれぞれ接続される、請求項2記載の容器保持ラック。
【請求項4】
前記複数の容器に接触可能に前記容器収容部内に設けられた押圧部材をさらに備え、
前記ベルト部材は、前記押圧部材を介して前記複数の容器を押圧する、請求項1~3のいずれか一項に記載の容器保持ラック。
【請求項5】
前記押圧部材は、前記複数の容器にそれぞれ対応するように複数設けられ、
複数の押圧部材の各々は、対応する容器に接触可能に配置される、請求項4記載の容器保持ラック。
【請求項6】
前記複数の押圧部材の各々は、対応する容器の周囲を取り囲むように配置される、請求項5記載の容器保持ラック。
【請求項7】
前記複数の容器収容部が前記複数の容器をそれぞれ嵌め込む複数の凹部として形成された一面を有する底部材をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の容器保持ラック。
【請求項8】
前記ベルト部材は、前記ラッチ部材が前記第2の状態にあるときに、前記ラッチ部材が前記第1の状態にあるときよりも大きい圧力で前記複数の容器の各々を対応する凹部の内周面に押圧する、請求項7記載の容器保持ラック。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の容器保持ラックと、
前記容器保持ラックに保持された複数の容器のキャップを着脱する前記着脱装置とを備え、
前記着脱装置は、前記ラッチ部材が前記第2の状態にあるときに、前記容器保持ラックに保持された各容器の前記キャップを着脱する、前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器保持ラックおよび前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置において試料の分析が行われる前に、遠沈管等の容器を用いて試料の前処理が行われることがある。例えば、前処理において、分析対象の試料がキャップ付きの容器に注入されるとともに、収容された試料に所定の溶媒または試薬が添加される。また、容器の内容物の撹拌等が行われる。その後、内容物が容器から抽出され、所定のバイアルに注入される。前処理後の試料を含む内容物がバイアルから分析装置に供給されることにより、試料について所望の分析が行われる。
【0003】
前処理においては、容器に内容物を注入する前後、または容器から内容物を抽出する前後にキャップの開閉が行われる。このようなキャップの開閉作業を作業者が繰り返し手動で行うことが面倒である。そこで、容器のキャップの開閉を自動で行うキャップ開閉装置が用いられる。例えば、特許文献1記載のキャップ開閉装置においては、グリップ開閉駆動部の一対のグリッパにより試料容器が把持されるとともに、ロボットハンドによりキャップが把持される。この状態で、グリップ開閉駆動部が回転されることにより、キャップの開閉が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のキャップ開閉装置によれば、1個単位でキャップの開閉が行われる。そのため、容器の数が多い場合には、キャップの開閉に長時間を要することとなり、スループットが低下する。
【0006】
本発明の目的は、複数の容器にキャップを容易に着脱することが可能な容器保持ラックおよび前処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、前処理装置に使用されるとともに、複数の容器を保持し、前記前処理装置が有する着脱装置により各容器のキャップが着脱される容器保持ラックであって、前記複数の容器を収容する複数の容器収容部と、第1の状態と第2の状態とに切り替え可能に設けられたラッチ部材と、前記複数の容器収容部の側面に沿って配置され、前記ラッチ部材が前記第2の状態にあるときに、前記ラッチ部材が前記第1の状態にあるときよりも大きい圧力で前記複数の容器を押圧するベルト部材とを備える、容器保持ラックに関する。
【0008】
本発明の他の態様は、上記の容器保持ラックと、前記容器保持ラックに保持された複数の容器のキャップを着脱する前記着脱装置とを備え、前記着脱装置は、前記ラッチ部材が前記第2の状態にあるときに、前記容器保持ラックに保持された各容器の前記キャップを着脱する、前処理装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の容器のキャップを容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る容器保持ラックの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1の容器保持ラックの本体部を示す平面図である。
【
図3】容器保持ラックの内部の構成を示す平面図である。
【
図4】容器保持ラックの動作を説明するための断面図である。
【
図5】容器保持ラックの動作を説明するための断面図である。
【
図6】分析システムの一例を示すブロック図である。
【
図7】第1の変形例に係る容器保持ラックの内部の構成を示す平面図である。
【
図8】第2の変形例に係る容器保持ラックの内部の構成を示す平面図である。
【
図9】他の実施の形態に係る容器保持ラックの内部の構成を示す断面図である。
【
図10】他の実施の形態に係る容器保持ラックの内部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)容器保持ラックの構成
以下、本発明の実施の形態に係る容器保持ラックおよび前処理装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る容器保持ラックの外観を示す斜視図である。
図1に示すように、容器保持ラック100は、本体部110およびカバー部120を含む。容器保持ラック100は、本体部110により複数(本例では4つ)の容器1を保持することができる。各容器1は、例えば試料分析の前処理において用いられる遠沈管であり、円形の外周面を有する。また、各容器1の上部には、ねじ式のキャップ2が着脱可能である。
【0012】
カバー部120は、例えば、略直方体形状を有する樹脂材料等により形成され、本体部110の上部を被覆するように本体部110に取り付けられる。カバー部120の上面には、後述する本体部110の4つの凹部114の上部に位置しかつ凹部114と同じ大きさの円形状を有する4つの貫通孔121が形成される。各貫通孔121には、本体部110により保持される容器1が挿通される。
【0013】
図2は、
図1の容器保持ラック100の本体部を示す平面図である。
図2に示すように、本体部110は、例えば樹脂材料により形成され、底部材111、周壁部材112および中央壁部材113を含む。底部材111は、略正方形状を有する。周壁部材112は、底部材111の縁部から上方に突出するように設けられる。
【0014】
中央壁部材113は、底部材111の中央部から上方に突出するように設けられる。周壁部材112と中央壁部材113との間において、底部材111の上面の四隅には、円形状を有する凹部114がそれぞれ形成される。各凹部114は、容器収容部の例である。各凹部114の直径は、後述する押圧部材130の外径よりもわずかに大きい。
【0015】
以下の説明では、4つの凹部114を区別する場合は、4つの凹部114をそれぞれ凹部114a~114dと呼ぶ。水平面内において、底部材111の対向する一対の辺が延びる方向をX方向と呼び、X方向に直交する方向をY方向と呼ぶ。また、X方向に平行でかつ底部材111の中心を通る直線を仮想線Mxと呼び、Y方向に平行でかつ底部材111の中心を通る直線を仮想線Myと呼ぶ。
【0016】
さらに、凹部114aを含みかつ仮想線Mx,Myにより区画された底部材111の領域を領域S1と呼ぶ。凹部114bを含みかつ仮想線Mx,Myにより区画された底部材111の領域を領域S2と呼ぶ。凹部114cを含みかつ仮想線Mx,Myにより区画された底部材111の領域を領域S3と呼ぶ。凹部114dを含みかつ仮想線Mx,Myにより区画された底部材111の領域を領域S4と呼ぶ。領域S2,S4は、仮想線Mxに関して領域S1,S3とそれぞれ対称な構成を有する。領域S1,S2は、仮想線Myを挟んで領域S3,S4とそれぞれ対向する。
【0017】
なお、Y方向における中央壁部材113の一端部は、凹部114aと凹部114cとの間に位置する。Y方向における中央壁部材113の他端部は、凹部114bと凹部114dとの間に位置する。中央壁部材113の一端部および他端部の上面には、上下方向に延びるねじ孔101がそれぞれ形成される。2つのねじ部材102(
図1参照)が、カバー部120を通して中央壁部材113の2つのねじ孔101にそれぞれ螺合される。これにより、カバー部120が本体部110の上部に取り付けられる。
【0018】
図3は、容器保持ラック100の内部の構成を示す平面図である。
図3に示すように、容器保持ラック100は、本体部110およびカバー部120に加えて、複数(本例では4つ)の押圧部材130、ラッチ部材140およびベルト部材150をさらに含む。複数の押圧部材130は、複数の凹部114にそれぞれ対応する。
【0019】
各押圧部材130は、例えばシリコーンゴムにより形成され、円筒形状を有する。各押圧部材130は、他のゴム材料により形成されてもよいし、比較的高い可撓性および比較的高い静止摩擦係数を有する材料により形成されてもよい。各押圧部材130の内径は、
図1の容器1の外径よりもわずかに大きい。各押圧部材130は、容器1の外周面に接触可能に、対応する凹部114に内側に触れるように配置される。
【0020】
ラッチ部材140は、中央壁部材113のY方向における側面等に取り付けられ、例えばパチン錠(draw latch)であり、固定端141、自由端142および回動軸143を含む。固定端141は、例えば中央壁部材113のY方向における側面に取り付けられる。自由端142は、回動軸143を中心に回動可能に設けられる。回動軸143は固定端141と接続され、自由端142と組み合わせて一つの部材を構成する。ラッチ部材140は、自由端142が固定端141に対して自由に回動する開状態と、自由端142が固定端141に係止される閉状態とに切り替え可能である。開状態および閉状態は、それぞれ第1および第2の状態の例である。
図3には、開状態のラッチ部材140が図示される。
【0021】
ベルト部材150は、例えばステンレスにより形成され、長尺形状を有する。ベルト部材150は、他の金属材料により形成されてもよいし、比較的高い剛性を有する他の材料により形成されてもよい。ベルト部材150は、複数の押圧部材130を取り囲むように配置される。ベルト部材150の一方の端部151は、ラッチ部材140の固定端141に接続される。ベルト部材150の他方の端部152は、ラッチ部材140の自由端142に接続される。端部151,152は、それぞれ第1および第2の端部の例である。
【0022】
本例では、自由端142に対して回動可能な環状部材144が自由端142に設けられる。ベルト部材150の端部152は、環状部材144を挿通され、折り返された状態で、ねじ部材103によりベルト部材150の他の部分に固定される。ベルト部材150の端部152の固定の方法は、上記の方法に限定されない。ベルト部材150の端部152は、例えばラッチ部材140の自由端142に直接固定されてもよい。
【0023】
また、本例では、ベルト部材150の端部151がラッチ部材140の固定端141に直接接続されるが、実施の形態はこれに限定されない。ベルト部材150の端部151は、例えば中央壁部材113の側面に固定されてもよい。この場合、ベルト部材150の端部151とラッチ部材140の固定端141とは、中央壁部材113を介して間接的に接続される。
【0024】
(2)容器保持ラックの動作
図4および
図5は、容器保持ラック100の動作を説明するための断面図である。
図4に示すように、使用者は、ラッチ部材140を開状態にする。次に、使用者は、カバー部120の各貫通孔121(
図1参照)を通して、本体部110の底部材111の上面の各凹部114に容器1を嵌め込む。この場合、各押圧部材130は、対応する容器1の周囲を取り囲みつつ、当該容器1と接触する。これにより、本体部110に4つの容器1が保持される。
【0025】
その後、使用者は、
図5に矢印Aで示すように、ラッチ部材140を閉状態にする。この場合、ベルト部材150の端部151と端部152とが、ラッチ部材140が開状態にあるときよりも互いに近づく。そのため、
図5に矢印Bで示すように、ベルト部材150は、ラッチ部材140が開状態にあるときよりも大きい圧力で外方から内方に複数の押圧部材130を押圧する。したがって、ベルト部材150は、各押圧部材130を介して、対応する容器1を各凹部114の内周面に押圧する。
【0026】
この状態においては、対応する押圧部材130により各容器1の回転が規制される。その結果、複数の容器1の上部で、
図1の複数のキャップ2がそれぞれ回転する際に容器1は回転せず、各容器1の上部のキャップ2を着脱することができる。
【0027】
この構成によれば、容器保持ラック100のみにより各容器1の回転の規制を実現することができるので、各容器1を押圧するための力を容器保持ラック100に加えるアクチュエータを設ける必要がない。そのため、キャップ2の着脱装置における容器保持ラック100の位置決め機構が、アクチュエータにおける容器保持ラック100の位置決め機構と抵触することがない。これにより、キャップ2の着脱をより容易に行うことができる。
【0028】
(3)容器保持ラックの使用例
容器保持ラック100の使用例を説明する。
図6は、分析システムの一例を示すブロック図である。
図6に示すように、分析システム500は、前処理装置200および分析装置300を含む。前処理装置200は、試料収容部210、添加部220、振とう部230、分離部240、注入部250および廃棄部260を含む。試料収容部210には、前処理用の4つの容器1を保持する容器保持ラック100が導入される。注入部250には、分析用の複数のバイアル311を保持するバイアルラック310が導入される。
【0029】
試料収容部210、添加部220および注入部250の各々には、容器保持ラック100の複数の容器1のキャップ2を回転させることにより各容器1にキャップ2を着脱する着脱装置270が設けられる。
【0030】
試料収容部210は、導入された容器保持ラック100の各容器1からキャップ2を取り外した後、各容器1に分析対象の試料を収容し、各容器1にキャップ2を取り付ける。分析対象の試料は、例えば食品を含む。その後、試料収容部210は、容器保持ラック100を振とう部230に搬出するとともに、振とう部230から搬入された容器保持ラック100を添加部220に搬出する。
【0031】
添加部220は、試料収容部210から搬入された容器保持ラック100の各容器1からキャップ2を取り外した後、各容器1に所定の溶媒または内部標準試薬等を添加し、各容器1にキャップ2を取り付ける。その後、添加部220は、容器保持ラック100を振とう部230に搬出するとともに、振とう部230から搬入された容器保持ラック100を分離部240に搬出する。
【0032】
振とう部230は、試料収容部210から搬入された容器保持ラック100の各容器1を振とうすることにより容器1の内容物を撹拌した後、容器保持ラック100を試料収容部210に搬出する。また、振とう部230は、添加部220から搬入された容器保持ラック100の各容器1を振とうすることにより容器1の内容物を撹拌した後、容器保持ラック100を添加部220に搬出する。分離部240は、添加部220から搬入された容器保持ラック100の各容器1に遠心力を加えることにより容器1の内容物を成分ごとに分離する。その後、分離部240は、容器保持ラック100を注入部250に搬出する。
【0033】
注入部250は、分離部240から搬入された容器保持ラック100の各容器1からキャップ2を取り外した後、各容器1から内容物の一部を抽出し、抽出された内容物をバイアルラック310の各バイアル311に注入する。これにより、前処理後の試料を含む内容物が各バイアル311に収容される。その後、注入部250は、容器保持ラック100の各容器1にキャップ2を取り付け、容器保持ラック100を廃棄部260に搬出する。また、注入部250は、バイアルラック310を分析装置300に搬出する。廃棄部260は、注入部250から搬入された容器保持ラック100の各容器1の内容物を廃棄する。
【0034】
分析装置300は、前処理装置200から搬入されたバイアルラック310の各バイアル311の内容物について所定の分析を行う。分析は、例えば試料である食品中の残留農薬の定量を含む。分析装置300は、例えば液体クロマトグラフィ質量分析装置(LC/MS)であってもよいし、ガスクロマトグラフィ質量分析装置(GC/MS)であってもよいし、他の分析装置であってもよい。
【0035】
前処理装置200において、容器保持ラック100を用いることにより、複数の容器1にキャップ2を同時にかつ自動的に着脱することができる。これにより、スループットを向上させることができる。また、省人化を行うことができる。
【0036】
(4)効果
本実施の形態に係る容器保持ラック100においては、ラッチ部材140が開状態であるときに、底部材111の上面の各凹部114に、対応する容器1が嵌め込まれる。この場合、各容器1は、対応する凹部114内で、対応する押圧部材130に取り囲まれかつベルト部材150と対向した状態で、安定的に保持される。
【0037】
また、各容器1が対応する凹部114に嵌め込まれた後、ラッチ部材140が閉状態にされる。この場合、各容器1は、対応する押圧部材130を介して、ベルト部材150と、対応する凹部114の内周面とにより、ラッチ部材140が開状態にあるときよりも大きい圧力で強固に押圧される。これにより、複数の容器1の回転が規制される。その結果、複数の容器1にキャップ2を容易に着脱することが可能になる。
【0038】
(5)変形例
本実施の形態において、各押圧部材130は対応する容器1の周囲を取り囲むように配置されるが、実施の形態はこれに限定されない。
図7は、第1の変形例に係る容器保持ラック100の内部の構成を示す平面図である。
図7に示すように、第1の変形例においては、各押圧部材130は、円筒形状ではなく、湾曲板形状を有する。各押圧部材130は、対応する容器1に対抗しかつ当該容器1に接触可能に配置される。
【0039】
第1の変形例においては、ラッチ部材140が閉状態にあるときに、各容器1は、対応する押圧部材130を介して、ベルト部材150と、対応する凹部114の内周面とにより、ラッチ部材140が開状態にあるときよりも大きい圧力で強固に押圧される。この場合、複数の容器1の回転が規制されるので、複数の容器1にキャップ2を容易に着脱することが可能になる。
【0040】
図8は、第2の変形例に係る容器保持ラック100の内部の構成を示す平面図である。
図8に示すように、第2の変形例においては、複数ではなく1つの押圧部材130が設けられる。押圧部材130は、帯形状を有し、複数の容器1と接触可能にベルト部材150の内周面に取り付けられる。
【0041】
第2の変形例においては、ラッチ部材140が閉状態にあるときに、各容器1は、共通の押圧部材130を介して、ベルト部材150と、対応する凹部114の内周面とにより、ラッチ部材140が開状態にあるときよりも大きい圧力で強固に押圧される。この場合、複数の容器1の回転が規制されるので、複数の容器1にキャップ2を容易に着脱することが可能になる。
【0042】
(6)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、ベルト部材150は、複数の容器1を外方から内方に押圧するように設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。
図9および
図10は、他の実施の形態に係る容器保持ラック100の内部の構成を示す断面図である。
図9および
図10に示すように、本実施の形態においては、ベルト部材150は、複数の押圧部材130と対向するように、中央壁部材113の内側面に沿って設けられる。
図9に示すように、使用者は、ラッチ部材140を開状態にして、本体部110の底部材111の上面の各凹部114に容器1を嵌め込む。
【0043】
その後、使用者は、
図10に矢印Cで示すように、ラッチ部材140を閉状態にする。この場合、各凹部114の円形状の内周面に沿ったベルト部材150の部分に対して、対応する凹部114の円形状の中心に向かう力が加わる。そのため、
図10に矢印Dで示すように、ベルト部材150は、ラッチ部材140が開状態にあるときよりも大きい圧力で内方から外方に複数の押圧部材130を押圧する。したがって、ベルト部材150は、各押圧部材130を介して、対応する容器1を周壁部材112の内周面に押圧する。
【0044】
この状態においても、対応する押圧部材130により各容器1の回転が規制される。したがって、複数の容器1の上部で、
図1の複数のキャップ2がそれぞれ回転されることにより、各容器1の上部にキャップ2を着脱することができる。
【0045】
図10の容器保持ラック100においても、第1の変形例と同様に、複数の円筒形状の押圧部材130に代えて、複数の湾曲板形状の押圧部材130が設けられてもよい。あるいは、第2の変形例と同様に、複数の円筒形状の押圧部材130に代えて、共通の帯形状の押圧部材130が設けられてもよい。
【0046】
(b)上記実施の形態において、容器保持ラック100は押圧部材130を含むが、実施の形態はこれに限定されない。ラッチ部材140が閉状態にあるときに各容器1を十分強固に押圧可能である場合には、容器保持ラック100は、押圧部材130を含まなくてもよい。第1または第2の変形例においても同様である。この構成においては、ラッチ部材140が閉状態にあるときに、各容器1は、ベルト部材150により直接的に押圧される。
【0047】
(c)上記実施の形態において、底部材111の上面に複数の凹部114が形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。底部材111の上面に凹部114が形成されなくてもよい。また、複数の容器1を安定的に配置可能である場合には、本体部110は、容器収容部を含む限り、底部材111を含まなくてもよい。
【0048】
(d)上記実施の形態において、容器保持ラック100は4つの容器1を保持するように構成されるが、実施の形態はこれに限定されない。容器保持ラック100は、2つまたは3つの容器1を保持するように構成されてもよいし、5つ以上の容器1を保持するように構成されてもよい。
【0049】
(7)態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0050】
(第1項)一態様に係る容器保持ラックは、
前処理装置に使用されるとともに、複数の容器を保持し、前記前処理装置が有する着脱装置により各容器のキャップが着脱される容器保持ラックであって、
前記複数の容器を収容する複数の容器収容部と、
第1の状態と第2の状態とに切り替え可能に設けられたラッチ部材と、
前記複数の容器収容部の側面に沿って配置され、前記ラッチ部材が前記第2の状態にあるときに、前記ラッチ部材が前記第1の状態にあるときよりも大きい圧力で前記複数の容器を押圧するベルト部材とを備えてもよい。
【0051】
この構成によれば、ラッチ部材を第1の状態にすることにより、複数の容器をベルト部材と対向するように容器保持ラックに保持させることができる。また、複数の容器が容器保持ラックに保持された状態で、ラッチ部材を第2の状態にすることにより、ラッチ部材が第1の状態にあるときよりも大きい圧力で複数の容器をベルト部材により押圧することができる。これにより、複数の容器の回転が規制される。その結果、複数の容器にキャップを容易に着脱することが可能になる。
【0052】
(第2項)第1項に記載の容器保持ラックにおいて、
前記ベルト部材は、第1の端部と第2の端部とを有し、前記ラッチ部材が前記第2の状態にあるときに、前記ラッチ部材が前記第1の状態にあるときよりも前記第1の端部と前記第2の端部とが近づくように前記ラッチ部材に接続されてもよい。
【0053】
この場合、簡単な構成で、ラッチ部材が第2の状態にあるときの複数の容器への押圧の圧力をラッチ部材が第1の状態にあるときの複数の容器への押圧の圧力よりも大きくすることができる。
【0054】
(第3項)第2項に記載の容器保持ラックにおいて、
前記ラッチ部材は、固定端と、前記固定端に対して移動可能な自由端とを有し、
前記ベルト部材の前記第1の端部および前記第2の端部は、前記ラッチ部材の前記固定端および前記自由端にそれぞれ接続されてもよい。
【0055】
この場合、簡単な接続関係で、ラッチ部材が第2の状態にあるときに、ラッチ部材が第1の状態にあるときよりもベルト部材の第1の端部と第2の端部とを近づけることができる。
【0056】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の容器保持ラックは、
前記複数の容器に接触可能に前記容器収容部内に設けられた押圧部材をさらに備え、
前記ベルト部材は、前記押圧部材を介して前記複数の容器を押圧してもよい。
【0057】
この場合、複数の容器は、押圧部材を介してより強固に押圧される。これにより、ラッチ部材が第2の状態にあるときに、複数の容器の回転がより確実に規制される。その結果、複数の容器にキャップをより容易に着脱することが可能になる。
【0058】
(第5項)第4項に記載の容器保持ラックにおいて、
前記押圧部材は、前記複数の容器にそれぞれ対応するように複数設けられ、
複数の押圧部材の各々は、対応する容器に接触可能に配置されてもよい。
【0059】
この場合、各容器は、対応する押圧部材により、より強固に押圧される。これにより、ラッチ部材が第2の状態にあるときに、複数の容器の回転がより確実に規制される。その結果、複数の容器にキャップをより容易に着脱することが可能になる。
【0060】
(第6項)第5項に記載の容器保持ラックにおいて、
前記複数の押圧部材の各々は、対応する容器の周囲を取り囲むように配置されてもよい。
【0061】
この場合、各容器は、対応する押圧部材により、さらに強固に押圧される。これにより、ラッチ部材が第2の状態にあるときに、複数の容器の回転がさらに確実に規制される。その結果、複数の容器にキャップをより容易に着脱することが可能になる。
【0062】
(第7項)第1項~第6項のいずれか一項に記載の容器保持ラックは、
前記複数の容器収容部が前記複数の容器をそれぞれ嵌め込む複数の凹部として形成された一面を有する底部材をさらに備えてもよい。
【0063】
この場合、各容器を対応する凹部内で安定して保持することができる。
【0064】
(第8項)第7項に記載の容器保持ラックにおいて、
前記ベルト部材は、前記ラッチ部材が前記第2の状態にあるときに、前記ラッチ部材が前記第1の状態にあるときよりも大きい圧力で前記複数の容器の各々を対応する凹部の内周面に押圧してもよい。
【0065】
この場合、各容器は、ベルト部材と、対応する凹部の内周面とにより、さらに強固に押圧される。これにより、ラッチ部材が第2の状態にあるときに、複数の容器の回転がさらに確実に規制される。その結果、複数の容器にキャップをより容易に着脱することが可能になる。
【0066】
(第9項)他の態様に係る前処理装置は、
第1項~第8項のいずれか一項に記載の容器保持ラックと、
前記容器保持ラックに保持された複数の容器のキャップを着脱する前記着脱装置とを備え、
前記着脱装置は、前記ラッチ部材が前記第2の状態にあるときに、前記容器保持ラックに保持された各容器の前記キャップを着脱してもよい。
【0067】
この場合、複数の容器にキャップを容易に着脱することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…容器,2…キャップ,100…容器保持ラック,101…ねじ孔,102,103…ねじ部材,110…本体部,111…底部材,112…周壁部材,113…中央壁部材,114,114a~114d…凹部,120…カバー部,121…貫通孔,130…押圧部材,140…ラッチ部材,141…固定端,142…自由端,143…回動軸,144…環状部材,150…ベルト部材,151,152…端部,200…前処理装置,210…試料収容部,220…添加部,230…振とう部,240…分離部,250…注入部,260…廃棄部,270…着脱装置,300…分析装置,310…バイアルラック,311…バイアル,500…分析システム,Mx,My…仮想線,S1~S4…領域