(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188715
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】突起具の使用方法
(51)【国際特許分類】
A61H 39/04 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
A61H39/04 B
A61H39/04 N
A61H39/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096971
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新津 貴利
(72)【発明者】
【氏名】西村 朋也
(72)【発明者】
【氏名】東城 武彦
【テーマコード(参考)】
4C101
【Fターム(参考)】
4C101BB10
4C101BB12
4C101BC02
4C101BC27
4C101BD15
4C101BD17
4C101BE02
4C101EB04
4C101EB12
(57)【要約】
【課題】角層の損傷を抑制することができ、且つ、突起具を皮膚に押し当てるのみで血流促進効果を得ることができ、皮膚を大きく変形したり、摩擦したりする動作も不要である突起具の使用方法を提供すること。
【解決手段】シート基部2から突出する微細突起3を有する突起具1の使用方法であって、突起具1が熱可塑性樹脂を含み、微細突起3の先端径WAが10μm以上400μm以下であり、突起具1を、皮膚に対して非侵襲又は低侵襲に押し付ける、皮膚刺激のための突起具の使用方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基部から突出する微細突起を有する突起具の使用方法であって、
前記突起具が熱可塑性樹脂を含み、
前記微細突起の先端径が10μm以上400μm以下であり、
前記突起具を、皮膚に対して非侵襲又は低侵襲に押し付ける、皮膚刺激のための突起具の使用方法。
【請求項2】
前記微細突起の高さが200μm以上2mm以下である、請求項1に記載の突起具の使用方法。
【請求項3】
前記皮膚刺激が、美容を目的とする皮膚刺激である、請求項1又は2に記載の突起具の使用方法。
【請求項4】
前記突起具を皮膚に対して押し付ける際には、
角層を傷つけない圧力で押し付ける、請求項1~3のいずれか一項に記載の突起具の使用方法。
【請求項5】
前記突起具を皮膚に押し付けることによって、該皮膚にフレア反応を生じさせる、請求項1~4のいずれか一項に記載の突起具の使用方法。
【請求項6】
前記微細突起の高さに対する該微細突起の先端径の比(先端径/高さ)が0.005以上2以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の突起具の使用方法。
【請求項7】
前記突起具を、回転可能なローラの周面に、前記微細突起が突出している面とは反対側の面を該ローラ側に向けて固定した状態とし、該ローラを前記皮膚に押し付ける、請求項1~6のいずれか一項に記載の突起具の使用方法。
【請求項8】
前記突起具は、該突起具を使用者の指に固定するための固定部を有し、
前記突起具を、前記微細突起が突出している面とは反対側の面を使用者の指に対向させた状態に固定して、前記皮膚に押し付ける、請求項1~6のいずれか一項に記載の突起具の使用方法。
【請求項9】
前記突起具を、前記微細突起が突出している面を皮膚に対向させた状態で、前記皮膚に貼着する、請求項1~6のいずれか一項に記載の突起具の使用方法。
【請求項10】
皮膚に対して非侵襲又は低侵襲に押し付けて使用する皮膚刺激のための突起具であって、
熱可塑性樹脂を含み、
シート基部から突出する微細突起を有し、
前記微細突起の先端径が10μm以上400μm以下である、突起具。
【請求項11】
前記微細突起の高さが200μm以上2mm以下である、請求項10に記載の突起具。
【請求項12】
前記微細突起の先端径が50μm以上400μm以下である、請求項10又は11に記載の突起具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突起具の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の微細突起を有する突起具が知られている(特許文献1及び2参照)。特許文献1には、複数の微細突起が基板の表面に形成されてなる皮膚刺激用突起具が記載されている。同文献の皮膚刺激用突起具は、顔の一部に、数時間貼付することを、例えば週1~4回、例えば1~6か月にわたり、連用して使用される。同文献には、皮膚刺激用突起具を顔の一部に貼付することによって、該皮膚刺激用突起具を貼付けた部分のみならず、顔全体の血行を良好にし、顔全体の色調を明るくすることが可能であると記載されている。
【0003】
特許文献2には、内部が中空の微細中空突起を基底上に備える皮膚刺激用突起具が記載されている。同文献の皮膚刺激用突起具は、微細突起が肌や皮膚を押すことによって刺激するものである。また同文献の皮膚刺激用突起具は、四肢のしびれ、腰痛、筋肉痛、肩こり等の肉体疲労の緩和を目的として、皮膚に刺激を与えたい身体の部位に、粘着剤を介して固定して使用される。
【0004】
また皮膚刺激用突起具とは別に、多数の突起を備えたマッサージ具が知られている。マッサージ具は、皮膚刺激用突起具が備える微細突起よりも大きな突起を有し、該突起を皮膚に押し当てて、患部を揉む等して、皮膚に大きな変形を与えることによって、血流を促進し、腰痛、筋肉痛等の肉体疲労を改善するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-164432号公報
【特許文献2】特開2018-89375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の皮膚刺激用突起具は、微細突起を皮膚に刺入して使用することによって所定の効果を得るものであり、特許文献1には、皮膚に非侵襲に適用するという発想がない。
また特許文献2の皮膚刺激用突起具は、フレア反応や局所的な血流を促進させる観点からの検討はなされていない。
またマッサージ具は、上述のように、皮膚に大きな変形を与えて使用するので、使用するときに大きな動作が必要であり、簡単な操作のみで、血流を促進させることができるものではない。
【0007】
本発明は、皮膚を大きく変形したり、摩擦したりする動作が不要であり、角層の損傷を抑制することができ、且つ、突起具を皮膚に押し当てるのみで血流促進効果を得ることのできる、突起具の皮膚刺激のため使用方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シート基部から突出する微細突起を有する突起具の使用方法に関する。
前記突起具は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
前記微細突起の先端径が10μm以上400μm以下であることが好ましい。
本発明の突起具の使用方法は、前記突起具を、皮膚に対して非侵襲又は低侵襲に押し付ける、皮膚刺激のため突起具の使用方法であることが好ましい。
【0009】
また本発明は、皮膚に対して非侵襲又は低侵襲に押し付けて使用する突起具に関する。
前記突起具は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
前記突起具は、シート基部から突出する微細突起を有することが好ましい。
前記微細突起の先端径が10μm以上400μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の突起具の使用方法によれば、角層の損傷を抑制することができ、且つ、突起具を皮膚に押し当てるのみで血流促進効果を得ることができ、皮膚を大きく変形したり、摩擦したりする動作も不要である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の突起具の使用方法において用いられる突起具の一例の平面図である。
【
図3】
図3(a)は、
図1に示す突起具が有する複数の微細突起のうちの1つを示す斜視図である。
図3(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の突起具の使用方法を説明する斜視図である。
【
図5】
図5(a)~(f)は、微細突起の先端径の測定方法を説明する図である。
【
図6】
図6(a)は、
図1に示す突起具の要部拡大図である。
図6(b)は、
図1に示す突起具の変形例を示す図であり、
図6(a)相当図である。
【
図8】
図8は、本発明の別の実施形態に係る突起具を示す斜視図である。
【
図9】
図9(a)及び(b)は、
図8に示す突起具の変形例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の更に別の実施形態に係る突起具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、その使用方法に用いられる突起具1の一例を参照しながら説明する。
本発明に用いられる突起具1は、シート基部2から突出する微細突起3を有する。
本発明に用いられる突起具1は、典型的には全体として偏平なシート状の形状を有しており、シート基部2及び該シート基部2の一方の表面から突出する複数の微細突起3を有している。
典型例の突起具1は、微細突起3が平面方向に分散した状態に複数配列された正方形状の突起配置領域を有している。突起配置領域の形状は、正方形状に限られず、円形、楕円形、長方形状、六角形状等の任意の形状とすることができる。
突起具1は、第1方向X及びこれと直交する第2方向Yを有している。典型的には突起具1における微細突起3は、第1方向X及び第2方向Yに分散した状態に配列されている。より具体的には、複数の微細突起3が、該微細突起3が第2方向Yに沿って間隔を置いて配された微細突起列3Lを形成しており、この微細突起列3Lが、複数列設けられている。複数列の微細突起列3Lは、第1方向Xに間隔を置いて配されている。第1方向Xに隣り合う微細突起列3Lを構成する微細突起3どうしは、第2方向Yの位置が一致している。突起具1は、微細突起列3Lを1つのみ有していてもよい。突起具1は、パッチ状の形態を有している。
このような構成を有する突起具1の一例を
図1に示す。
【0013】
突起具1は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。具体的には、突起具1を構成する基材が熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。典型的には、熱可塑性樹脂を含む基材シートを加熱により塑性変形させて形成されていることが好ましい。基材シートの加熱方法は、該基材シートの一部のみを加熱する方法であってもよいし、該基材シートの全体を加熱する方法であってもよい。基材シートの一部のみを加熱し、該基材シートを塑性変形させる方法としては、基材シートにおける微細突起の形成予定位置に、超音波振動を加えつつ加工針を刺入する方法や、基材シートにおける微細突起の形成予定位置に、加熱された加工針を刺入する方法等が挙げられる。基材シートの全体を加熱し、該基材シートを塑性変形させる方法としては、例えばヒーター等の加熱器具により該基材シートの全体を加熱しつつ、該基材シートにおける微細突起の形成予定位置に、加工針を刺入する方法等が挙げられる。これらの場合、基材シートにおける突起となった部分以外がシート基部2となる。
突起具1は、熱可塑性樹脂を含み複数の微細突起3が平面方向に分散配置された本体部分と、該本体部分以外の部分を有していても良い。
【0014】
本発明の突起具の使用方法に用いられる突起具の微細突起は、その先端径WAが10μm以上400μm以下である。微細突起3の先端径WAが上述の範囲内であることにより、突起具1を皮膚に押し付けて該微細突起3が皮膚に押し当ったときに、該微細突起3が角層を損傷させにくくなっている。この効果を一層顕著とする観点から、微細突起3は、その高さHが200μm以上2mm以下であることが好ましい。
【0015】
微細突起3の先端径WAを前述の下限以上とすることにより、突起具1を皮膚に適用したとき、該皮膚の角層が損傷されることを抑制することができる。また、微細突起3の先端径WAを前述の上限以下とすることにより、より小さい皮膚への押し付け圧力で該皮膚の血流を促進することができ、貼付したり単回又は複数回押し当てたりする等の簡易な操作で、血流促進効果を得ることができる。そのため、例えば化粧をした肌に本発明の突起具を使用した場合、化粧の上から軽く押しあてるだけで、化粧を落としたり乱したりすることなく血流を向上することが可能となる。
また微細突起3の高さHを前述の下限以上とすることによって、突起具1を皮膚に適用したとき、肌の変形により微細突起の刺激が低減されることを更に抑制し、一層効果的に皮膚を刺激し血流促進効果を更に高めることができる。また、微細突起3の高さHを前述の上限以下とすることによっても、皮膚の角層の損傷を更に抑制する効果を得ることができる。
血流促進効果の程度は、各種公知の方法で判定できるが、例えば、皮膚にフレア反応が生じるか否かで判断したり、レーザ血流計(LSFG)により血流分布を可視化して判断したりすることが好ましい。
本発明の突起具1は更に、微細突起3の仮想円直径(以下、「先端曲径」ともいう)WBが100μm以上1000μm以下となっていることが好ましい。
微細突起3の先端曲径WBを前述の下限以上とすることにより、突起具1を皮膚に適用したとき、該皮膚の角層が損傷されることを抑制する効果を更に高めることができる。
また、微細突起3の先端曲径WBを前述の上限以下とすることにより、貼付したり単回又は複数回押し当てたりする等の簡易な操作で、血流促進効果を更に高めることができる。
【0016】
微細突起3の先端径WAは、以下の測定方法Aで、先端曲径WBは以下の測定方法Bにより測定することができる。
図5(a)及び(d)、(b)及び(e)、並びに、(c)及び(f)は、それぞれ同一形状の突起を示している。
図5(a)は先端径WAと先端曲径WBが同じ数値となる例であり、(b)は先端径WAと比較して先端曲径WBが比較的大きい状態の先端形状を示す例であり、(c)は先端径WAと比較して先端曲径WBが比較的小さい状態の先端形状を示す例である。
図5(d)及び(e)は先端曲径WBが後述する範囲内となる例である。
【0017】
<微細突起の先端径WAの測定方法A>
微細突起3の先端部3Uの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)又はマイクロスコープを用いて所定倍率拡大した状態で、
図5(a)~(c)に示すように観察する。次に、
図5(a)~(c)に示すように、両側辺3a,3bの内の一側辺3aにおける直線部分に沿って仮想直線ILaを延ばし、他側辺3bにおける直線部分に沿って仮想直線ILbを延ばす。そして、先端側にて、一側辺3aが仮想直線ILaから離れる箇所を第1先端点3a1として求め、他側辺3bが仮想直線ILbから離れる箇所を第2先端点3b1として求める。このようにして求めた第1先端点3a1と第2先端点3b1とを結ぶ直線の長さを測定する。測定した該直線の長さを、微細突起3の先端径WAとする。なお、シート基部2から立ち上がる微細突起3の側面である両側辺3a,3bが直線でない曲線の場合は、シート基部2の上面の水平線と、微細突起3の中央を通る垂線との交点から、この垂線に対して左右に45°に延長した各々の仮想直線と微細突起表面の曲線が接する交点を左右仮想2点とし、この左右仮想2点間の距離を微細突起3の先端径WAとする。
【0018】
<微細突起の先端曲径WBの測定方法B>
微細突起3の先端部Uを、SEM又はマイクロスコープを用いて、
図5(d)~(f)に示すように所定倍率拡大した状態で観察する。次に、
図5(d)~(f)に示すように、先端部の外面形状に沿って、仮想円Cを想定する。前記仮想円Cは、先端部の先端の外面と、少なくとも3か所において接する仮想円のうち最大のものである。このようにして想定した仮想円Cの直径を、微細突起の先端曲径WBとする。
【0019】
微細突起3の高さHは、シート基部2における該微細突起3が突出している側の面から微細突起3の先端までの、該シート基部2の厚み方向Zに沿う距離を意味し、以下の方法により測定することができる。
<微細突起の高さの測定方法>
微細突起3を、SEM又はマイクロスコープを用いて、
図3(b)に示すように所定倍率拡大した状態で観察する。次に、
図3(b)に示すように、シート基部2の表面から微細突起3の先端までの、該シート基部2の厚み方向Zに沿う距離を測定する。このようにして測定された距離を、微細突起の高さHとする。
【0020】
突起具1は、微細突起3が配された面が肌に固定されるように粘着手段を備えていることが好ましい。具体的には、突起具1における微細突起3が突出している側の面に粘着剤4aを有していることが好ましい。突起具1は、粘着剤4aを介して皮膚に固定することができるパッチ状の形態として使用することができる。粘着剤4aは、シート基部2における微細突起3が突出している側の面の周縁部に配されている。粘着剤4aとしては、絆創膏等の技術分野で一般的に用いられる接着剤等を用いることができる。この一例を
図1及び2に示す。
【0021】
本発明の使用方法においては、突起具1を、皮膚に対して非侵襲又は低侵襲に押し付ける。皮膚は、一般に、表面側から内部に向かって順に角層を含む表皮、及び真皮を有している。本発明における「低侵襲」とは、突起具を皮膚に押し付けた際に、表皮は傷つくものの、真皮は傷つかない状態であることをいう。また、本発明における「非侵襲」とは、突起具を皮膚に押し付けても皮膚の角層が傷つかない状態であることをいう。より角層の損傷を防ぐ観点から、本発明の方法は非侵襲とすることが好ましい。
本発明の使用方法は、皮膚刺激のための突起具の使用方法である。皮膚刺激は、好ましくは、美容を目的とする皮膚刺激である。即ち、本発明の使用方法は、美容を目的とする突起具1の使用方法であることが好ましい。美容目的での使用方法には、人を手術、治療、診断する方法は含まれない。
本発明の使用方法によって得られる美容効果としては、例えば、突起具1を押し付けた部位における皮膚の美白、皮膚のシミの改善、皮膚のくすみ・くまの改善、皮膚の皺の改善、皮膚のたるみの改善、皮膚のターンオーバーの促進等が挙げられる。
また本発明の突起具の使用方法は、突起具1を押し付けた部位に皮膚刺激を与え、当該部位に上記の美容効果を生じさせる使用方法であることが好ましい。
【0022】
突起具1を皮膚に押し付ける方法は特に制限されず、例えば、一定時間の間、該突起具1を皮膚に押し付け続けてもよいし、該突起具1を複数回皮膚に押し付けてもよい。
突起具1を複数回皮膚に押し付ける方法(タッピング)としては、例えば、該突起具1を複数回軽くたたく方法が挙げられる、また、後述するローラ式補助具6のローラ6aに突起具1を取り付け、該ローラ6aを、皮膚上を転がすことにより、該突起具1を皮膚に軽く押し当てる方法等が挙げられる。
【0023】
本発明の使用方法では、突起具1を皮膚に対して押し付ける際には、角層を傷つけない圧力で押し付けることが好ましい。こうすることにより、角層の損傷を一層抑制することができる。また、肌を大きく変形させない圧力で押し付けることが好ましい。こうすることにより、例えば化粧した肌に対して化粧を落としたり、乱したりすることなく皮膚下の血流を促進することができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、突起具1を皮膚に対して押し付ける圧力は、好ましくは50N/cm2以下、より好ましくは40N/cm2以下、更に好ましくは30N/cm2以下である。
【0024】
また突起具1を皮膚に対して押し付ける際には、突起具1を皮膚に押し付けることによって、該皮膚にフレア反応を生じさせることが好ましい。こうすることにより、血流促進効果が確実に奏されるようにすることができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、突起具1を皮膚に対して押し付ける圧力は、好ましくは1N/cm2以上、より好ましくは2N/cm2以上、更に好ましくは5N/cm2以上である。
また突起具1を皮膚に対して押し付ける圧力は、角層の損傷を一層抑制しつつ、血流促進効果が確実に奏されるようにする観点から、好ましくは1N/cm2以上50N/cm2以下、より好ましくは2N/cm2以上40N/cm2以下、更に好ましくは5N/cm2以上30N/cm2以下である。ここで1N/cm2以上50N/cm2以下は、通常人が手で軽く押す程度の圧力を意味する。
【0025】
突起具1の微細突起3は、典型的には縦断面視して内部が中空となっている。具体的には、中空の空間が、シート基部2を貫通して、微細突起3の内部にまで亘って形成されていることが好ましい。突起具1においては、微細突起3の内部の空間が円錐台状に形成されている。本明細書にいて、中空とは、微細突起3の内部が実質的に微細突起を形成する材料で満たされていない空間であることを意味する。
第1実施形態の突起具1は、微細突起3の内部が中空となっているので、以下のような長所を有する。例えば、微細突起3の内部である中空部分に種々の充填剤を配置することができるので、充填剤の種類により微細突起3の剛性を調整することが可能になり、皮膚刺激の程度を症状や好みに合わせて選択することが可能になる。また、前記充填剤として、微細突起3の内部に磁気材料或いは発熱材料等の機能材を配置すれば、該機能材による血流の促進が期待でき、皮膚に刺激を効率的に与えることができる。また、第1実施形態の突起具1は、微細突起3の内部に空気層を形成する中空があるため断熱効果を生じるとともに、突起具1の熱容量が小さくなるため、金属製の針に比べて冷感を感じさせ難い。
【0026】
微細突起3の高さHに対する該微細突起3の先端径WAの比WA/Hは、突起具1を皮膚に押し付けたときに、軽く押し当てることで皮膚下の血流を向上する効果が一層確実に奏されるようにする観点から、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.1以上である。
また、比WA/Hは、一層簡易な操作によって血流促進効果が得られるようにする観点から、また好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.7以下である。
また、比WA/Hは、好ましくは0.005以上2以下、より好ましくは0.01以上1以下、更に好ましくは0.1以上0.7以下である(
図3(b)及び
図4参照)。
【0027】
微細突起3の先端径WAは、角層の損傷を一層抑制するとともに、痛みも抑制する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは100μm以上である。
また、先端径WAは、血流促進効果を向上させる観点から、好ましくは400μm以下、肌上にフレア反応を励起し、外観上でも血流効果を確認できるようにする観点から、より好ましくは300μm以下である。
また、先端径WAは、これらの両立の観点から、好ましくは10μm以上400μm以下、より好ましくは20μm以上300μm以下、さらに好ましくは100μm以上300μm以下である(
図4(a)~(f)参照)。
また突起具1の用途によっては、例えば外出先で、もしくは化粧の上から使用して皮膚の色合いを変化させたくない場合等、フレア反応を励起せずに血流促進効果が得られることが、外観上の変化を起こさずに血流促進効果が得られて好ましい場合がある。この観点からは、先端径WAは、200μm以上であることが好ましく、より好ましくは250μm以上400μm以下である。
【0028】
微細突起3は、上記測定方法Bにより測定した先端曲径WBが、角層の損傷を一層抑制する観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは120μm以上である。
また、先端曲径WBは、血流促進効果を向上させる観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは750μm以下である。
また、先端曲径WBは、これらの両立の観点から、好ましくは100μm以上1000μm以下、より好ましくは120μm以上750μm以下である。
【0029】
微細突起3の高さHは、血流促進効果を向上させる観点から、好ましくは200μm以上、より好ましくは250μm以上、更に好ましくは300μm以上である。
また、高さHは、角層の損傷を一層抑制する観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは500μm以下である。
また、高さHは、これらの両立の観点から、好ましくは200μm以上2000μm以下、より好ましくは250μm以上1000μm以下、更に好ましくは300μm以上500mm以下である(
図3(b)参照)。
【0030】
突起具1のシート基部2の厚みTは、突起具1を指等で把持しやすくし、該突起具1を使用しやすくする観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上、更に好ましくは200μm以上である。
また、厚みTは、突起具1を皮膚に押し当てやすくする観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは300μm以下である。
また、厚みTは、好ましくは100μm以上500μm以下、より好ましくは150μm以上400μm以下、更に好ましくは200μm以上300μm以下である(
図3(b)参照)。
【0031】
シート基部32の厚みTは、以下の方法により測定することができる。
<微細突起の高さの測定方法>
突起具1のシート基部2を、SEM又はマイクロスコープを用いて、
図3(b)に示すように所定倍率拡大した状態で観察する。次に、
図3(b)に示すように、シート基部2における微細突起が突出している側の面から、該面とは反対側の面までの、該シート基部の厚み方向Zに沿う距離を測定する。このようにして測定された距離を、シート基部の厚みTとする。
【0032】
突起具1は、微細突起3を1つのみ有していてもよいし、複数有していてもよいが、角層の損傷を抑制しつつ広い範囲で簡便に血流促進効果を得ることができるという効果が一層顕著に奏されるようにする観点からは、微細突起3を複数有することが好ましい。
突起具1は、平面視したときに、1cm2当たりの微細突起3の数Nが以下の通りになる領域を有することが好ましい。
微細突起3の数Nは、血流促進効果を向上させる観点から、好ましくは10個以上、より好ましくは30個以上、更に好ましくは50個以上である。
また、微細突起3の数Nは、角層の損傷を一層抑制する観点から、好ましくは500個以下、より好ましくは400個以下、更に好ましくは300個以下である。
また、微細突起3の数Nは、これらの両立の観点から、好ましくは10個以上500個以下、より好ましくは30個以上400個以下、更に好ましくは50個以上300個以下である。
【0033】
突起具1の平面視において、1cm2当たりの微細突起3の数は、以下の方法により測定することができる。
<1cm2当たりの微細突起の数Nの測定方法>
前記微細突起3の数Nは、突起具1を平面視した状態において、1cm四方の正方形状の領域に含まれる微細突起3の数を数えることによって測定することができる。前記領域の境界を跨ぐように微細突起3が存在している場合、該微細突起3の面積の50%以上が該領域内に含まれている場合、該微細突起3は、該領域内に含まれているものとして数える。
なお、微細突起3が形成されている領域の寸法が縦1cm、横1cmに満たない場合等には、前記微細突起3の数Nは、微細突起3が平面方向に分散した状態に複数配列された突起配置領域の全面積(cm2)と、該領域に含まれる突起の数(個)とから、突起の数/面積で求めることもできる。
【0034】
本発明に用いる突起具1は、第1方向Xに隣り合う微細突起列3Lを構成する微細突起3どうしは、第2方向Yの位置が一致していてもよいし、していなくてもよい。前者の一例を
図6(a)に、後者の一例を
図6(b)に示す。後者は、典型的には、第1方向Xに隣り合う微細突起列3Lどうしは、微細突起3を配置する位相がずれており、微細突起3は、全体として千鳥状に配置されている。
【0035】
以下、本発明の突起具の使用方法の好ましい第1実施態様について、突起具1を用いる場合を例に、
図4を参照しながら説明する。具体的には、突起具1における微細突起3が突出している側の面を皮膚に対向させた状態で該皮膚に貼着する突起具1は、粘着手段として粘着剤4aを備えているので、該突起具1を皮膚に貼着したときに、該突起具1が該皮膚に固定されるようになっている。突起具1を皮膚に貼着するとともに該突起具1を該皮膚に押し付けてもよいし、突起具1を皮膚に貼着した後に該突起具1を該皮膚に押し付けてもよい。
第1実施態様の使用方法によれば、突起具1を、皮膚に対して非侵襲又は低侵襲に押し付けるので、角層の損傷を抑制することができる。また突起具1を皮膚に押し付けたときに、微細突起3が皮膚に押し当るので、該微細突起3が押し当った部分において、血流促進効果を得ることができる。突起具1を皮膚に適用するためには、例えば
図4に示すように、突起具1を皮膚に貼付するだけでよく、従来のマッサージ具とは異なり、皮膚を大きく変形させたり、摩擦させたりする動作は不要である。
このとき、貼付している時間は、持続的な効果を得る観点から、10分間以上が好ましく、20分間以上がより好ましく、30分間以上が更に好ましい。
また、貼付している時間は、肌を必要以上に刺激しない観点から、12時間以下が好ましく、9時間以下がより好ましく、6時間以下が更に好ましい。
また、貼付している時間は、これらの両立の観点から、10分以上12時間以下が好ましく、20分間以上9時間以下がより好ましく、30分間以上6時間以下が更に好ましい。
このように、第1実施態様の突起具の使用方法によれば、角層の損傷を抑制しつつ血流促進効果を得ることができ、皮膚を大きく変形させる動作も不要である。
【0036】
また突起具1は、突起具1のシート基部2における微細突起3が配された面と反対側の面に、粘着剤4aを有する粘着シート4を備えていてもよい。粘着シート4は、シート状のシート基部2の面積よりも広い面積を有する粘着基材シート4sと、粘着基材シート4sの一面全面に塗工された粘着剤4aとを備えていることが好ましい。この一例を
図7に示す。
粘着基材シート4sとしては、絆創膏等の技術分野で一般的に用いられる不織布、フィルム等を用いることができる。
図7に示す突起具1も、
図1及び2に示す突起具1と同様に、皮膚に貼付することにより使用することができる。
【0037】
また突起具1は、非水溶性及び非油溶性のいずれか一方又は両方を有することが好ましい。こうすることにより、突起具1を皮膚に使用するにあたり、汗や皮脂により該突起具1が溶解することを防ぎ、該突起具1の形状を維持できるので、該突起具1を長期にわたり安定に使用できる。
【0038】
次に、本発明の突起具の使用方法の別の実施態様について説明する。これらの実施態様については、先に述べた実施態様と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、先に述べた実施態様についての説明が適宜適用され、同じ部材には同じ符号を付してある。これらの例を
図8及び9並びに
図10及び11に示す。
図8においては、説明の便宜上、後述する突起具1B及び微細突起3の大きさを大きく誇張して示しており、
図9~
図11においては、説明の便宜上、微細突起3の大きさを大きく誇張している。
【0039】
本発明に用いられる突起具は使用者の指に固定するための固定部を有することが好ましい。使用者の指に固定するための固定部を有する突起具(以下、「突起具1B」とも言う。)の一例について説明する。
突起具1Bは、シート基部2における微細突起3が突出している側の面とは反対側の面に粘着剤4aを有しており、該粘着剤4aが固定部となっている。この
図8に示す突起具1Bは、粘着剤4aを介して該突起具1Bを指等に貼付することができるようになっている。粘着剤4aにおけるシート基部2とは反対側の面は、突起具1Bの使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シートによって被覆されていてもよい。この例を
図8に示す。
【0040】
図8に示す突起具1Bの使用方法について説明する。
粘着剤4aにおけるシート基部2とは反対側の面が剥離シートによって被覆されている場合、該剥離シートを剥がして、粘着剤4aにおけるシート基部2とは反対側の面を露出させる。そして、
図8に示すように、突起具1を、微細突起3が突出している面とは反対側の面を使用者の指に対向させた状態に固定する。具体的には、突起具1を、粘着剤4aを介して使用者の指に貼付する。その後、突起具1を皮膚に押し付ける。突起具1が押し付けられる皮膚は、使用者自身のものであってもよいし、使用者以外の人の皮膚であってもよい。第2実施形態用の使用方法によれば、指に固定した突起具1Bを、皮膚に押し付けることができるので、該突起具1を任意の箇所に容易に押し付けたり、数回にわたりタップしたりすることができる。また突起具1を押し付けるときの押し付け時間、圧力、回数を、好みや目的とする効果に合わせて任意に変更することもできる。
このとき、複数回押し付けることが好ましいが、一回当たりの押し付け時間は、確実に一回毎の刺激を皮膚へ与える観点から、0.1秒以上が好ましく、0.5秒以上がより好ましく、1秒以上が更に好ましい。
また、一回当たりの押し付け時間は、効率的に複数回の刺激を皮膚へ与える観点から、30秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましく、5秒以下が更に好ましい。
また、一回当たりの押し付け時間は、これらを両立する観点から、0.1秒以上30秒以下が好ましく、0.5秒以上10秒以下がより好ましく、1秒以上5秒以下が更に好ましい。
【0041】
他の例としては、突起具1Bは、シート基部2における微細突起3が突出している領域の周縁部に切り欠き部2sを有しており、該切り欠き部2sが固定部となっている。切り欠き部2sに指等を挿入することで、該突起具1Bを、微細突起3が突出している面とは反対側の面を使用者の指に対向させた状態に固定することができる。この例を
図9(a)に示す。
【0042】
他の例としては、突起具1Bの別の変形例が示されている。
図9(b)に示す突起具1Bは、シート基部2が、一端が閉塞された筒状形状を有する本体部5を形成している。本体部5は内部が中空であり、該本体部5の内部に指等を挿入することができるようになっている。この突起具1Bは、指サック状の形態を有している。この突起具1Bにおいては、本体部5が固定部となっている。この突起具1Bは、本体部5の内部に指等を挿入することで、該突起具1Bを、微細突起3が突出している面とは反対側の面を使用者の指に対向させた状態に固定することができる。この例を
図9(b)に示す。
【0043】
本発明に用いられる突起具はタップ補助具に固定して用いることが好ましい。以下、タップ補助具に固定して用いられる突起具を「突起具1C」とも言う。突起具1Cは、タップ補助具に貼り付けて使用されることが好ましい。タップ補助具は、突起具1Cを皮膚に軽く押し当てる操作を繰り返し行うことを容易にする補助具である。
タップ補助具の一例としてのローラ式補助具6を用いることが好ましい。タップ補助具は、ローラ式補助具6のように、回転可能なローラ6aを備えることが、前記操作を繰り返し行うことを一層容易に行うことができるようにする観点から好ましい。ローラ式補助具6は、回転可能なローラ6aと、該ローラ6aを回転可能に支持する把持部6bとを備えることが好ましく、把持部6bは、片手で把持して操作可能なものが更に好ましい。この一例を
図10に示す。
ローラ式補助具6が、ローラ6aを回転可能に支持する把持部6bを備えることにより、前記操作を繰り返し行うことを一層容易に行うことができる。また、突起具1Cを固定したローラ式補助具6の把持部6bを片手で把持して、該突起具1Cを皮膚に軽く押し当てるといった操作を行うことができることにより、該操作を容易に、且つ皮膚の広い範囲にわたり行うことができ、また該突起具1Cを任意の箇所に容易に押し当てることもできる。
【0044】
突起具1Cは、微細突起3が突出している側の面とは反対側の面を、ローラ6aの表面に向けた状態で、該ローラ6aに取り付け可能になされていることが好ましい。ローラ6aの周面に突起具1Cを取り付ける手段としては、該突起具1Cにおける微細突起3が突出している面とは反対側の面又はローラ6aの周面に粘着層4aを設ける方法、突起具1Cをローラ6aの周面に取り付けた状態でピン等により固定する方法等が挙げられる。突起具1Cは、タップ補助具に、該突起具1Cを固定するための固定部として、該突起具1Cにおける微細突起3が突出している面とは反対側の面に粘着層4aを有していることが好ましい。
突起具1C又はローラ6aの周面に設けた粘着層は、剥離シートで被覆し保護しておき、該突起具1Cをローラ6aに固定する際に、該剥離シートを剥離して使用することが好ましい。
ローラ式補助具6は、断面円形状のローラ6aに代えて断面多角形状のローラを備えていてもよく、また把持部6bを有さず、ローラ6aを単独で皮膚上を転がして用いてもよい。断面多角形状のローラは、例えば、断面が3角形状、4角形状、5乃至8角形状又は9角形状以上である。断面多角形状のローラの周面を構成する複数の面には、連続する一つの突起具1Cを巻き付けてもよいし、複数の面のそれぞれに各別に突起具1Cを固定してもよい。
ローラ6aの軸方向と、把持部6bの軸方向とは一致していてもよいし(
図10参照)、交差していてもよい(
図11参照)。
【0045】
次に、上述した各実施形態に共通する事項について説明する。
上述した各実施形態の突起具1,1B,1Cは、材料のハンドリング性、該突起具の強度及び加工性の向上、並びに微細突起3に硬さを確保し血流促進効果を得る観点から、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等又はこれらの組み合わせが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ脂肪酸エステル、ポリ乳酸、ポリカプロラクタン、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、ナイロン等が挙げられる。
生分解性の観点から、ポリ脂肪酸エステルが好ましく用いられる。ポリ脂肪酸エステルとしては、具体的に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。
突起具1,1B,1Cにおけるシート基部2及び微細突起3のいずれか一方のみが、熱可塑性樹脂を含んでいてもよいし、シート基部2及び微細突起3の両方が、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。シート基部2及び微細突起3の両方が、熱可塑性樹脂を主な構成材料として含んでいることが好ましい。主な構成材料とは、突起具の基材シートの全質量中50%以上が熱可塑性樹脂の質量であることを意味し、熱可塑性樹脂の質量が100%であることがより好ましい。
突起具1,1B,1Cは、熱可塑性樹脂以外の樹脂からなるのもであってもよい。突起具1,1B,1Cは、熱可塑性樹脂以外に、可塑剤、着色料、薬剤、熱可塑性樹脂以外の樹脂等を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂以外の樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。
【0046】
突起具1,1B,1Cは、肌に押し付けられて使用され、好ましくはある程度の時間又は複数回押し付けられて使用される。微細突起による血流促進効果が維持されるようにする観点から、特許文献1に記載のヒアルロン酸からなる突起とは異なり、皮膚に適用したときに、該皮膚に存在する汗等の水分で溶解する材料ではない材料で形成されていることが好ましい。
【0047】
突起具1,1B,1Cの全質量に対する、該突起具1,1B,1Cに含まれる熱可塑性樹脂の質量の割合は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。
また、熱可塑性樹脂の質量の割合は、材料のハンドリング性、突起具の強度及び加工性、微細突起に硬さを確保し血流促進効果を得る向上させる観点から、100%であることが好ましく、現実的には100%以下である。
また、熱可塑性樹脂の質量の割合は、好ましくは50%以上100%以下、より好ましくは60%以上100%以下、更に好ましくは70%以上100%以下である。
【0048】
本発明をその好ましい各実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されず適宜変更可能である。
例えば、上述した各実施形態において、微細突起3は内部が中空であったが、微細突起3は中実であってもよい。
【0049】
また、突起具1,1B,1Cは、皮膚に対して非侵襲又は低侵襲に用いられる限り、微細突起3に加えて、上記(1)及び(2)のいずれも満たさない突起を有していてもよい。突起具1,1B,1Cが有する全ての突起のうち、微細突起3の割合は、好ましくは50%以上100%以下、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。突起具1,1B,1Cが有する全ての突起のうち、微細突起3の割合は、最も好ましくは100%である。換言すれば、突起具1,1B,1Cが有する全ての突起が、微細突起3であることが最も好ましい。
【0050】
また、微細突起3の配置パターンには特に制限はない。例えば、突起具1,1B,1Cでは、微細突起3はアレイ状(単数又は複数の列状)に配されているが、アレイ状以外に、複数の微細突起3が円形、星形等の任意の形状をなすように並んだ配置等、任意の配置であってもよい。
【0051】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
シート基部から突出する微細突起を有する突起具の使用方法であって、
前記突起具が熱可塑性樹脂を含み、
前記微細突起の先端径が10μm以上400μm以下であり、
前記突起具を、皮膚に対して非侵襲又は低侵襲に押し付ける、皮膚刺激のための突起具の使用方法。
【0052】
<2>
前記微細突起の高さが200μm以上2mm以下である、前記<1>に記載の突起具の使用方法。
<3>
前記皮膚刺激が、美容を目的とする皮膚刺激である、前記<1>又は前記<2>に記載の突起具の使用方法。
<4>
前記微細突起の先端径が10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは100μm以上である、前記<1>~前記<3>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<5>
前記微細突起の先端径が400μm以下、好ましくは300μm以下である、前記<1>~前記<4>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
【0053】
<6>
前記微細突起の高さが200μm以上、好ましくは250μm以上である、より好ましくは300μm以上である、前記<1>~前記<5>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<7>
前記微細突起の高さが2000μm以下、好ましくは1000μm以下である、より好ましくは500μm以下である、前記<1>~前記<6>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<8>
前記突起具の全質量に対する、該突起具に含まれる熱可塑性樹脂の質量の割合が50%以上100%以下である、前記<1>~前記<7>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<9>
前記突起具を皮膚に対して押し付ける際には、
角層を傷つけない圧力で押し付ける、前記<1>~前記<8>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
【0054】
<10>
前記突起具を皮膚に対して押し付ける際には、
好ましくは1N/cm2以上50N/cm2以下の圧力で押し付ける、前記<1>~前記<9>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<11>
前記突起具を皮膚に押し付けることによって、該皮膚にフレア反応を生じさせる、前記<1>~前記<10>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<12>
前記微細突起を複数有する、前記<1>~前記<11>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<13>
前記突起具の平面視において、1cm2当たりの前記微細突起の数が、10個以上500個以下である領域を有する、前記<1>~前記<12>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<14>
前記領域中の前記微細突起の数が、10個以上、好ましくは30個以上、より好ましくは50個以上である、前記<13>に記載の突起具の使用方法。
<15>
前記領域中の前記微細突起の数が、500個以下、好ましくは400個以下、より好ましくは300個以下である、前記<13>又は前記<14>に記載の突起具の使用方法。
<16>
前記微細突起の高さに対する該微細突起の先端径の比(先端径/高さ)が0.005以上2以下である、前記<1>~前記<15>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<17>
前記微細突起の高さに対する該微細突起の先端径の比(先端径/高さ)が0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上である、前記<1>~前記<16>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<18>
前記微細突起の高さに対する該微細突起の先端径の比(先端径/高さ)が2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下である、前記<1>~前記<17>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
【0055】
<19>
前記突起具を、回転可能なローラの周面に、前記微細突起が突出している面とは反対側の面を該ローラ側に向けて固定した状態とし、該ローラを前記皮膚に押し付ける、前記<1>~前記<18>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<20>
前記ローラは、片手で把持可能な把持部の一端部に設けられており、
前記把持部を把持し、前記ローラを前記皮膚に押し付ける、前記<19>に記載の突起具の使用方法。
<21>
前記突起具は、該突起具を使用者の指に固定するための固定部を有し、
前記突起具を、前記微細突起が突出している面とは反対側の面を使用者の指に対向させた状態に固定して、前記皮膚に押し付ける、前記<1>~前記<18>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<22>
前記微細突起の先端径が400μm以下、好ましくは300μm以下であり、
前記突起具を皮膚に対して押し付ける際には、一回当たりの押し付け時間が、好ましくは30秒以下、より好ましくは10秒以下、更に好ましくは5秒以下である、前記<21>に記載の突起具の使用方法。
<23>
前記突起具を、前記微細突起が突出している面を皮膚に対向させた状態で、前記皮膚に貼着する、前記<1>~前記<28>のいずれか1に記載の突起具の使用方法。
<24>
前記突起具を前記皮膚に貼着している時間が、10分間以上、好ましくは20分間以上、より好ましくは30分間以上である、前記<23>に記載の突起具の使用方法。
【0056】
<25>
皮膚に対して非侵襲又は低侵襲に押し付けて使用する皮膚刺激のための突起具であって、
熱可塑性樹脂を含み、
シート状の基部から突出する微細突起を有し、
前記微細突起の先端径が10μm以上400μm以下である、突起具。
<26>
前記微細突起の高さが200μm以上2mm以下である、前記<25>に記載の突起具。
<27>
前記微細突起の先端径が50μm以上、好ましくは100μm以上である、前記<25>又は前記<26>に記載の突起具。
<28>
前記微細突起を複数有する、前記<25>~前記<27>のいずれか1に記載の突起具。
<29>
前記突起具の平面視において、1cm2当たりの前記微細突起の数が、10個以上500個以下である領域を有する、前記<25>~前記<28>のいずれか1に記載の突起具。
<30>
前記微細突起の先端曲径が100μm以上1000μm以下、好ましくは120μm以上750μm以下である、前記<25>~前記<29>のいずれか1に記載の突起具。
【0057】
<31>
タップ補助具又は使用者の指に固定するための固定部を有する、前記<25>~前記<29>のいずれか1に記載の突起具。
<32>
前記突起具における前記微細突起が突出している側の面に粘着剤を有する、前記<25>~前記<30>のいずれか1に記載の突起具。
<33>
タップ補助具に貼り付けて使用され、
前記タップ補助具は、前記突起具が取り付けられるローラと、該タップ補助具を把持するための把持部とを有し、
前記突起具は、前記微細突起が突出している側の面とは反対側の面を、前記ローラの表面に向けた状態で、該ローラに取り付け可能になされている、前記<25>~前記<30>のいずれか1に記載の突起具。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図9(b)に示す突起具1Bと同様の構成を有する突起具を製造した。実施例1の突起具の微細突起の寸法、1cm
2当たりの微細突起の数は、表1に示すとおりである。突起具は、熱可塑性樹脂であるポリ乳酸100%からなる基材シートに超音波振動を印可した加工針による突起形成加工を施して形成した。
実施例1では、突起具を皮膚に押し付ける方法として、タッピングを用いた。具体的には、突起具を指に固定し、10秒間に10~20回、角層を傷つけない程度の力で皮膚を軽くたたいた。
(実施例2及び3)
微細突起の先端径を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして突起具を製造した。実施例2及び3では、突起具を皮膚に押し付ける方法として、実施例1と同様の方法を用いた。
(実施例4)
図10に示す突起具1Cと同様の構成を有する突起具を製造した。突起具の微細突起の寸法等を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同じ方法で形成した。
実施例4では、突起具を皮膚に押し付ける方法として、タッピングを用いた。具体的には、突起具をローラ式補助具に固定し、該突起具を固定したローラ式補助具のローラを、30秒間、角層を傷つけない程度の力で押し付け、皮膚上を転がした。
(実施例5)
図1に示す突起具1と同様の構成を有する突起具を製造した。突起具の微細突起の寸法等を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同じ方法で形成した。
実施例5では、突起具を皮膚に押し付ける方法として、該突起具を皮膚に貼付する方法を用いた。具体的には、突起具を、60分間、角層を傷つけない程度の力で押し付けて皮膚に貼付した。
【0059】
(比較例1)
微細突起の先端径を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして突起具を製造した。比較例1では、突起具を皮膚に押し付ける方法として、実施例1と同様の方法を用いた。
(比較例2)
微細突起の高さを表1に示すように変更し、突起具を皮膚に押し付ける方法を、10秒間に10~20回、70N/cm2の押し付け力で皮膚をタッピングした以外は、実施例1と同様にして突起具を製造した。比較例2では、突起具を皮膚に押し付ける方法として、実施例1と同様の方法を用いた。
【0060】
〔非侵襲性の評価〕
実施例1~5並びに比較例1及び2について、非侵襲性を以下の方法により評価した。
実施例1~5並びに比較例1及び2それぞれの方法によって、突起具をヒトの摘出皮膚(BPI社凍結皮膚TRANSKIN)に押し付けた。具体的には、ヒトの摘出皮膚を常温で解凍、並びに順化した後、突起具における微細突起が突出している側の面を皮膚に向けた状態で、実施例1~5並びに比較例1及び2それぞれの方法によって突起具を該皮膚に押し付けた。突起具を押し付けた状態の皮膚を、液体窒素で凍結させた後に突起具を外し、該皮膚における突起具の微細突起の先端部が押し当った部分を通るように該皮膚の厚み方向に後述するクライオミクロトームを用いて切断した。以上で得られた試料切断面を後述する走査型電子顕微鏡を用いて、-120℃にて切断面を観察し、以下の基準により非侵襲性を評価した。評価結果を表1に示す。
A:微細突起の先端部が押し当った部分において角層が実質的に損傷なく存在している。
B:微細突起の先端部が押し当った部分において角層が一部損傷している。
C:微細突起の先端部が押し当った部分において角層が存在していない。
皮膚の切断は、クライオシステム装置(Quorum Technologies Ltd製、型番:PP3010T)により制御されたクライオミクロトーム(Leica Microsystems GmbH製、型番:EM FC7)により行った。切断面の観察は、検出器(LEI:Lower secоndary Electrоn Image)、クライオシステム(Quorum製 PP3010T)を備える走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型番:JSM-7600F)を用いた。
【0061】
〔フレア反応の継続時間及び強度の評価〕
実施例1~5及び比較例1について、フレア反応の継続時間及び強度を以下の方法により評価した。
実施例1~5及び比較例1それぞれの方法により、突起具を被験者の皮膚に押し付けた。その後、突起具を押し付けた箇所を、マイクロスコープにより30倍の倍率で観察し、以下の基準によりフレア反応の継続時間とフレア反応の強度を評価した。評価結果を表1に示す。
<フレア反応の継続時間の評価基準>
A:30分以上
B:15分以上30分未満
C:15分未満
D:フレア反応が起こらない
<フレア反応の強度の評価基準>
A:皮膚に明確な赤色(赤斑)の変化がある。
B:皮膚に微弱な赤色(赤斑)の変化がある。
C:皮膚の色味に変化がない。
【0062】
〔血流促進効果の評価〕
実施例1~5及び比較例1について、血流促進効果を以下の方法により評価した。
実施例1~5及び比較例1それぞれの方法によって、突起具を被験者の皮膚に押し付けた。その後、突起具を押し付けた箇所を、レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)により観察し、以下の基準により血流促進効果を評価した。評価結果を表1に示す。
A:突起具を押し付ける前と比較してMBR(血流量)の変化が3倍以上
B:突起具を押し付ける前と比較してMBRの変化が2倍以上3倍未満
C:突起具を押し付ける前と比較してMBRの変化が1倍を超えて2倍未満
D:突起具を押し付ける前と比較してMBRの変化がない
【0063】
【0064】
表1に示すように、比較例1は、非侵襲性の評価はAであるが、血流促進効果、フレア反応の強度及びフレア反応の継続時間の評価がD又はCである。つまり、比較例1は、角層の損傷を抑制できる結果を得ることができる一方で、血流促進効果が得られないことが分かる。また、比較例2は血流促進効果、フレア反応の強度及びフレア反応の継続時間の評価がいずれもAであるが、非侵襲性の評価がCである。つまり、比較例2は血流促進効果を得ることができる一方で、角層を損傷させてしまうことが分かる。
比較例1及び2に対し、実施例1~5は、非侵襲性の評価がA又はBであり、血流促進効果、フレア反応の強度及びフレア反応の継続時間の評価がA、B又はCである。つまり、実施例1~5は、角層の損傷を抑制することができるとともに、血流促進効果を得ることができることが分かる。