(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188717
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】広告出力装置、広告提供装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20221214BHJP
G06Q 20/06 20120101ALI20221214BHJP
【FI】
G06Q30/02 380
G06Q20/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096978
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】520464577
【氏名又は名称】竹井 悠人
(72)【発明者】
【氏名】竹井 悠人
(72)【発明者】
【氏名】ウォルレーブン 綾
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049BB08
5L055AA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】暗号資産の利用者たる人物を具体的に特定する必要なく、暗号資産の利用者に対して広告を配信することを可能にする広告出力装置、広告提供装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】広告出力装置1は、機器外部からの情報の入力を受け付ける情報入力部11と、暗号資産アドレスに関する情報を識別する暗号資産アドレス識別部13と、該暗号資産アドレス識別部13が識別した暗号資産アドレスに関する情報を広告選択部21に送信し、広告選択部21から広告を受領する広告出力管理部10と、広告出力管理部10が受領した広告を出力する広告出力部12と、を備える。広告提供装置2は、広告出力管理部10から暗号資産アドレスに関する情報を受領し、広告に関する情報が記録された広告記録部20から該暗号資産アドレスに関する情報を基に広告を選択し、該広告を広告出力管理部10に応答する広告選択部21を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器外部からの情報の入力を受け付ける情報入力部と、
暗号資産アドレスに関する情報を識別する暗号資産アドレス識別部と、
該暗号資産アドレス識別部が識別した暗号資産アドレスに関する情報を広告選択部に送信し、広告選択部から広告を受領する広告出力管理部と、
前記広告出力管理部が受領した広告を出力する広告出力部と、
を備えることを特徴とする広告出力装置。
【請求項2】
前記広告出力管理部から暗号資産アドレスに関する情報を受領し、広告に関する情報が記録された広告記録部から該暗号資産アドレスに関する情報を基に広告を選択し、該広告を広告出力管理部に応答する広告選択部と、
を備えることを特徴とする広告提供装置。
【請求項3】
前記広告出力管理部から前記広告選択部に送信される暗号資産アドレスに関する情報には、
該暗号資産アドレスに価値が記録された暗号資産に関する情報が含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の広告出力装置。
【請求項4】
前記広告出力管理部から前記広告選択部に送信される暗号資産アドレスに関する情報には、
該暗号資産アドレスに価値が記録された暗号資産に関する情報が含まれる、
ことを特徴とする請求項2に記載の広告提供装置。
【請求項5】
ブロックチェーンネットワークに接続して暗号資産アドレスに関する情報を取得することができるブロックチェーン接続部と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項3のいずれかに記載の広告出力装置。
【請求項6】
ブロックチェーンネットワークに接続して暗号資産アドレスに関する情報を取得することができるブロックチェーン接続部と、
を備えることを特徴とする請求項2または請求項4のいずれかに記載の広告提供装置。
【請求項7】
前記広告選択部が広告を選択する方法は、
該暗号資産アドレスに価値が記録された暗号資産に関する情報を、広告の表示条件によって評価して行う、
ことを特徴とする請求項2、請求項4または請求項6のいずれかに記載の広告提供装置。
【請求項8】
情報入力部が、機器外部からの情報の入力を受け付ける工程と、
暗号資産アドレス識別部が、暗号資産アドレスに関する情報を識別する工程と、
広告出力管理部が、該暗号資産アドレス識別部が識別した暗号資産アドレスに関する情報を広告選択部に送信し、広告選択部から広告を受領する工程と、
広告出力部が、前記広告出力管理部が受領した広告を出力する工程と、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
広告選択部が、前記広告出力管理部から暗号資産アドレスに関する情報を受領し、広告に関する情報が記録された広告記録部から該暗号資産アドレスに関する情報を基に広告を選択し、該広告を広告出力管理部に応答する工程と、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】
計算機を、
機器外部からの情報の入力を受け付ける情報入力部、
暗号資産アドレスに関する情報を識別する暗号資産アドレス識別部、
該暗号資産アドレス識別部が識別した暗号資産アドレスに関する情報を広告選択部に送信し、広告選択部から広告を受領する広告出力管理部、
前記広告出力管理部が受領した広告を出力する広告出力部、
として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項11】
計算機を、
前記広告出力管理部から暗号資産アドレスに関する情報を受領し、広告に関する情報が記録された広告記録部から該暗号資産アドレスに関する情報を基に広告を選択し、該広告を広告出力管理部に応答する広告選択部、
として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告出力装置、広告提供装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関し、特に、暗号資産の利用者に広告を表示できるようにする技術および利用者の暗号資産に関する行動を基にパーソナライズした広告を表示できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、暗号資産の取引が盛んに行われている。多くの暗号資産は、ブロックチェーン技術とよばれる分散型データベースを構築するための技術を用いている。これは、P2P(ピアーツーピア)ネットワーク等を利用して相互に接続された複数のノードが、取引を記録したトランザクションと呼ばれるデータ構造や、一つ以上のトランザクションを含むブロックと呼ばれるデータ構造等を、互いに同期・共有することにより動作させるものである。ブロックチェーン技術を用いて構築された分散型データベースを、単にブロックチェーンと呼ぶ。
【0003】
現在、暗号資産として最も広く知られるビットコイン(Bitcoin)や、スマートコントラクトと呼ばれる自律的なプログラム実行機能を備えたイーサリアム(Ethereum)等、数多くの暗号資産およびその取引を記録したブロックチェーンが存在している。ブロックチェーン技術を応用した暗号資産は、高い可用性(利用者がシステムを利用したい任意の時に、当該システムが利用可能であること)、完全性(改竄や欠損の虞なく、記録された情報の整合性が保たれていること)、可監査性(記録された情報に関する来歴が任意の第三者によって確認できること)、非中央集権性(システムを利用するにあたって信頼しなければならない第三者が存在しないこと)等の多くの特長を有することから、新たな価値記録手段として注目されている。また、暗号資産交換業等の事業者を通じて、法定通貨や他の銘柄の暗号資産と交換することができる暗号資産が存在する。
【0004】
さらに、唯一無二性がある価値を表現するためのNFT(非代替性トークン)と呼ばれる種類の暗号資産では、例えば特定の権利や美術品の鑑定書等を分散型データベースに記録する手段として利用されるようになっている。多くのNFTは、暗号資産アドレス間で所有権を移転する機能を備えていることから、個人間でのNFTの授受や、オークション形式のWebサービスを介した入札によるNFTの所有権移転が可能である。
【0005】
しかしながら、多くの暗号資産のブロックチェーンにおいては、暗号資産の利用者をアドレスと呼ばれる識別子によって管理していることから、真にその価値を所有する人を特定することは困難である。したがって暗号資産の利用者、とりわけ特定の趣味・嗜好を示唆するNFTの所有歴等がある利用者を特定し、これらの人に消費意欲を喚起する広告を表示することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-068103号公報
【特許文献2】特開2020-188446号公報
【特許文献3】特開2020-027381号公報
【特許文献4】特開2019-149098号公報
【特許文献5】特開2017-45337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、暗号資産の利用者たる人物を具体的に特定する必要なく、すべての暗号資産の利用者や特定の属性を持つ暗号資産の利用者に対してあまねく広告を配信することを可能とし、これによって配信される広告の効果を増大させるような広告出力装置、広告提供装置、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の広告出力装置は、機器外部からの情報の入力を受け付ける情報入力部と、暗号資産アドレスに関する情報を識別する暗号資産アドレス識別部と、該暗号資産アドレス識別部が識別した暗号資産アドレスに関する情報を広告選択部に送信し、広告選択部から広告を受領する広告出力管理部と、前記広告出力管理部が受領した広告を出力する広告出力部と、備えており、本発明の広告提供装置は、前記広告出力管理部から暗号資産アドレスに関する情報を受領し、広告に関する情報が記録された広告記録部から該暗号資産アドレスに関する情報を基に広告を選択し、該広告を広告出力管理部に応答する広告選択部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成を持つ本発明の広告出力装置および広告提供装置によれば、すべての暗号資産の利用者や特定の属性を持つ暗号資産の利用者を配信対象とした広告を可能とし、また利用者の暗号資産に関する行動を基にパーソナライズした広告を表示できるようにすることによって、配信される広告の効果を増大させることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】広告出力装置1および広告提供装置2の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】ブロックチェーンネットワーク3の概略構成の一例を示す図である。
【
図3】ブロックチェーンノード装置30の概略構成の一例を示す図である。
【
図5】実施例1において広告出力装置1および広告提供装置2で実行される処理を示すフローチャートである。
【
図6】実施例1のステップS10の時点でのアドレスAが関与した暗号資産の取引の履歴の一例を示す図である。
【
図7】実施例1のステップS10の時点でアドレスAに価値が現に記録されている暗号資産の銘柄および数量の一例を示す図である。
【
図8】実施例1のステップS12の時点で広告記録部20が保持している広告の一例を示す図である。
【
図9】実施例1のステップS12の時点でインターネット上から得られる暗号資産のリアルタイム交換レートの一例を示す図である。
【
図10】実施例1のステップS13の終了時点でウォレットソフトウェア40上にウォレット広告46が表示されている状態の一例を示す図である。
【
図11】実施例2において広告出力装置1および広告提供装置2で実行される処理を示すフローチャートである。
【
図12】実施例2のステップS20の時点でのPOSタブレット端末6の表示状態の一例を示す図である。
【
図13】実施例2でのステップS24の終了時点でPOSタブレット端末6上にPOS広告60が表示されている状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、説明において用いる用語は次の通りである。
「広告」とは、人間の知覚に作用することを目的とした情報、もしくはそのような情報を生成するための基礎となるデータまたはプログラムの情報を指し、例えば単なる文字列や映像・音声でもよいし、任意の文字列を後から差し込めるようなプレースホルダを持つ文章の雛形でもよいし、利用者からの入力によって対話的に変化する機構を備えた映像ソフトウェアを構成する情報であってもよい。
「暗号資産アドレス」とは、暗号資産の機構に係る技術的な概念であって、暗号資産の所有者またはスマートコントラクトと呼ばれるプログラムを個々に識別するための分散型データベース上の識別子を指す。また、例えばENS(Ethereum Name Service)のような、人間の記憶の便宜を図る等の目的で前記識別子に意味のある文字列を1対1で割り当てることを可能にする機構が存在しており、本発明の説明においては、該機構を用いることで前記識別子に変換できる文字列も、暗号資産アドレスとしてみなす。
【0012】
図1は、広告出力装置1および広告提供装置2の概略構成の一例を示す図である。なお、広告出力装置1および広告提供装置2は、単一の装置として実現されてもよいし、それぞれ以下に述べる構成を備える複数の機器からなる装置として実現されてもよい。
【0013】
図1に示すように、広告出力装置1は、広告出力管理部10、情報入力部11、広告出力部12および暗号資産アドレス識別部13を備える。また、暗号資産アドレス保存部14、特定の時刻に他の装置に信号を発出する機能を持つタイマー15、および/またはブロックチェーン接続部31を備えていてもよい。
前述構成を備える広告出力装置1には、例えば、下記(a1)から(a5)までの情報処理装置が含まれるが、これらはあくまで広告出力装置1の一例であり、これらに限定されない。
(a1)暗号資産ウォレット機能を持つ、デスクトップアプリケーション、WebアプリケーションまたはWebブラウザの拡張プログラムが動作するコンピューター
(a2)支払い等を目的とした暗号資産の移転機能を備える、スマートフォンもしくはタブレット端末等のモバイル機器、またはスマートウォッチ等の装着型デバイス
(a3)暗号資産の情報を活用する、テレビまたはカーナビ等の、人の日常生活で利用されうる情報機器
(a4)店舗に設置されたPOS機器または公共空間に設置されるデジタルサイネージ装置等の、購買を行う利用者もしくは近接する利用者に関する情報をもとに表示内容をパーソナライズする機能を持つ情報端末
(a5)利用者に代わって暗号資産を保管する事業者が提供する、Webアプリケーションサーバー
以下に、広告出力装置1を構成しうる各装置に関して説明する。
【0014】
広告出力管理部10は、広告の出力に関する処理を統括する役割を持っており、広告の対象となる暗号資産アドレスを認識し、出力すべき広告を問い合わせ、広告を出力する命令を行う機能を持つ。
具体的には、広告出力管理部10が、情報入力部11からの入力またはタイマー15からの信号によって起動し、広告の出力に関する処理を開始する。該処理では、まず、情報入力部11から入力された情報または暗号資産アドレス保存部14に保存された情報を取得し、該情報を暗号資産アドレス識別部13に転送し、暗号資産アドレス識別部13からの応答によって広告の対象となる暗号資産アドレスを認識する。このとき、暗号資産アドレスに関する情報をブロックチェーン接続部31に問い合わせてもよい。続いて、暗号資産アドレスに関する情報を広告選択部21に送信し、応答として広告を得る。最後に、広告出力部12に該広告を出力する命令を行う。
広告出力管理部10は、必要な機能を有していれば任意の回路または装置によって実現されてよく、CPU(中央処理装置)であってもよいし、専用の処理回路で実現されていてもよい。
【0015】
情報入力部11は、広告の出力に関する処理の端緒としての機能、または暗号資産アドレス、暗号資産アドレスに変換可能な情報もしくは暗号資産アドレスを抽出できる情報の入力を受け付ける機能を持つ。
情報入力部11は、例えば、マウス、キーボードのように人間が直接的に情報を入力するための機器であってもよいし、カメラやマイクロフォンのように映像や音声を随時取得する装置であってもよいし、他の機器から情報を受信する通信回路であってもよい。
また、情報入力部11が入力を受け付ける情報としては、下記(b1)から(b4)までのような例があるが、これらに限定されない。
(b1)人がキーボードによって入力する、暗号資産アドレスを示す文字列または暗号資産アドレスに変換可能な単語列
(b2)暗号資産アドレス保存部14に保存された情報を復号するために必要なパスワード
(b3)カメラが取得する、暗号資産アドレスを符号化した二次元コードの画像
(b4)外部の機器から受信する、暗号資産の移転を記録したトランザクションと呼ばれるデータ構造を含む信号列
【0016】
広告出力部12は、利用者に広告を知覚させる目的を持っており、広告を出力する機能を持つ。例えば、映像表示装置または音声再生装置のように人間に情報を提示するための機器であってもよいし、広告を表示する外部の装置に広告を転送する目的で他の機器へ情報を発信する通信回路であってもよい。
また、情報入力部11と広告出力部12とは、これらが一体となったタッチパネル装置等によって実現されていてもよい。
【0017】
暗号資産アドレス識別部13は、広告を表示する対象を特定する役割を持っており、広告出力管理部10から受け取る、情報入力部11によって入力された情報または暗号資産アドレス保存部14に保存された情報から、暗号資産アドレスの抽出または暗号資産アドレスへの変換もしくは復号を行う機能を持つ。
また、利用者が複数の暗号資産アドレスを利用している等の理由により、前述の処理によって複数の暗号資産アドレスが得られる場合には、暗号資産アドレス識別部13は複数の暗号資産アドレスを広告出力管理部10に応答してもよい。
【0018】
暗号資産アドレス保存部14は、利用者が暗号資産アドレスに関する情報の入力を省略できるようにする便宜を図る役割を持っており、暗号資産アドレスに関する情報を保存しておく機能を持つ。
また、利用者に代わって暗号資産の価値を管理するような機能を提供するウォレットソフトウェアにおいては、暗号資産アドレスを利用者に代わって生成することがある。このような場合において、暗号資産アドレス保存部14は該暗号資産アドレスを保存する。
【0019】
図1に示すように、広告提供装置2は、広告記録部20および広告選択部21を備える。また、広告登録部22および/またはブロックチェーン接続部31を備えていてもよい。
前述構成を備える広告提供装置2には、例えば、Webサーバー、データベースサーバーおよびこれらのサーバー群が含まれるが、これらはあくまで広告提供装置2の一例であり、これらに限定されない。
以下に、広告提供装置2を構成しうる各装置に関して説明する。
【0020】
広告記録部20は、利用者に表示する広告の一覧を保持する役割を持っており、広告選択部21の要求に応じて広告の情報を応答する機能を持つ。
広告記録部20が保存する各広告に関する情報としては、下記(c1)から(c7)までのような例があるが、これらに限定されないし、また必ずしもこれらを含まなくてもよい。
(c1)広告の表示に係る管理番号
(c2)広告の表示条件
(c3)広告の内容
(c4)広告の表示期間
(c5)広告主が指定した予算
(c6)利用可能な残り予算
(c7)優先度
ここで、(c2)においては、ある暗号資産アドレスに対する広告の表示の可否を定める、広告の表示条件を記録することができる。これには、下記(d1)から(d4)までのような例があるが、これらに限定されない。
(d1)該暗号資産アドレスにおいて、ある特定の銘柄のNFTの所有が記録されていること
(d2)該暗号資産アドレスにおいて、ある特定の銘柄の暗号資産の所有が記録されたことがあること
(d3)該暗号資産アドレスにおける暗号資産の残高の評価額が、ある一定の金額の範囲内であること
(d4)該暗号資産アドレスが、ある特定の暗号資産アドレスとの間での暗号資産の移転履歴があること
さらに、(c2)の広告の表示条件は、表示にいかなる条件も課さないことを意味する空値であっても、複数の条件を列挙する複合的条件であっても、論理式によって記述する条件であっても構わない。また、(c7)の優先度は、ある暗号資産アドレスが(c2)に記録された広告の表示条件に合致した程度によって変動する値として記録されていても構わない。
広告記録部20は、必要な機能を有していれば任意の回路または装置によって実現されてよく、ファイルシステムを記録したSSD(ソリッドステートドライブ)等の補助記憶装置でもよいし、独立したデータベースサーバーであってもよい。
【0021】
広告選択部21は、広告出力管理部10からの要求に基づいて広告を選択し応答する役割を持っており、暗号資産に関する情報と広告記録部20に記録された広告とを処理し、広告を選択し、応答する機能を持つ。
具体的には、広告出力管理部10から受信した暗号資産アドレスに関する情報について、広告記録部20に記録された広告の表示条件への合致を評価する。必要に応じて、該暗号資産アドレスまたは該暗号資産アドレスに保管された暗号資産に関して、ブロックチェーン接続部31に問い合わせる。広告選択部21は、評価の結果により広告の表示条件を満たした広告の中から、広告を選択する。評価の結果により広告の表示条件を満たした広告が複数存在する場合には、一つの広告を選択するために、各広告に関する、優先度、広告の表示期間、広告主が指定した予算、または利用可能な残り予算等の情報を用いてもよい。
なお、広告の表示条件への合致の評価においては、ブロックチェーン接続部31への問い合わせによって得られる情報だけを用いるのでなくともよく、例えばインターネット上に公開されたAPIから取得することができる、暗号資産のリアルタイム交換レートまたは暗号資産に関して利用者が付与したラベル・属性等を用いても良い。
ここで、広告選択部21による広告の表示条件への合致の評価方法の例を、(d1)から(d4)までをもとに説明する。
(d1)を評価するにあたっては、条件に記述されたNFTを発行するスマートコントラクトに対して指定された暗号資産アドレスの該NFTの所有数量を問い合わせる処理を、ブロックチェーン接続部31に実行させる。
(d2)を評価するにあたっては、条件に記述された暗号資産を発行するスマートコントラクトが指定された暗号資産アドレスの関与する移転を過去に記録しているか、ブロックチェーン接続部31に対して問い合わせる。
(d3)を評価するにあたっては、ブロックチェーン接続部31への問い合わせによって得られる、指定された暗号資産アドレスに現に価値が記録されている暗号資産の銘柄および数量に対して、インターネット上から得られる暗号資産のリアルタイム交換レートを乗じて総和する。
(d4)を評価するにあたっては、指定された暗号資産アドレスが行った過去の暗号資産の移転履歴をブロックチェーン接続部31に問い合わせ、条件に記述された特定アドレスとの関連を示す移転の有無を調査する。
広告選択部21は、必要な機能を有していれば任意の回路または装置によって実現されてよく、CPU(中央処理装置)であってもよいし、専用の処理回路で実現されていてもよい。
【0022】
広告登録部22は、広告記録部20の記録を変更する役割を持っており、広告記録部20に対して新たに情報を追加する機能、および/または広告記録部20に記録された情報を更新・削除する機能を持つ。
暗号資産の利用者に対して広告を表示することを希望する広告主、または係る広告主からの依頼を受けた広告代理店等は、広告登録部22を操作して、広告記録部20に新たな広告を登録する。
広告登録部22は、必要な機能を有していれば任意の回路または装置によって実現されてよく、CPU(中央処理装置)であってもよいし、専用の処理回路で実現されていてもよい。
【0023】
図2は、ブロックチェーンネットワーク3の概略構成の一例を示す図である。ブロックチェーンネットワーク3は、ブロックチェーンノード装置30で構成される。 ここで、ブロックチェーンノード装置30には、例えば、下記(e1)から(e5)までの情報処理装置が含まれるが、これらはあくまでブロックチェーンノード装置30の一例であり、これらに限定されない。
(e1)一般にパソコンと称される計算機(デスクトップ型コンピューターまたはラップトップ等)
(e2)集約的なデータ処理を目的としたサーバー
(e3)スマートフォンまたはタブレット端末等の携帯機器
(e4)VPS(仮想プライベートサーバー)やクラウドサーバーと称される、ホスティングを行うデータセンターに設置されたコンピューターや仮想マシン
(e5)暗号資産の価値移転記録を生成することを主たる目的としたマイニングハードウェアなどと呼ばれる専用ハードウェアやマイニングファームなどと称される専用の機器および/または機器群
また、ブロックチェーンネットワーク3を構成するブロックチェーンノード装置30は少なくとも1台あればよい。これは、ブロックチェーンノード装置30が1台あれば、ブロックチェーンノード装置30の種別を問わず分散型データベースが構築可能だからである。また、それぞれのブロックチェーンノード装置30は、必ずしも直接接続されていなくとも、ネットワーク機器等を経由して接続されていてもよいし、ソフトウェア定義ネットワーク等により仮想的に接続されていてもよい。
【0024】
図3は、ブロックチェーンノード装置30の概略構成の一例を示す図である。
図3に示すように、ブロックチェーンノード装置30は、ブロックチェーン接続部31およびブロックチェーン実行部32を備える。なお、ブロックチェーン実行部32は、分散型データベースの機能を提供していればよく、必ずしもブロックチェーンを構成するものでなくともよい。
【0025】
ブロックチェーン接続部31は、広告出力装置1、広告提供装置2またはブロックチェーンノード装置30をブロックチェーンネットワーク3に接続する役割をもち、暗号資産に関する情報を、他のブロックチェーン接続部31に送信し、または他のブロックチェーン接続部31から受信する機能をもつ。該暗号資産に関する情報には、例えば、暗号資産の移転を記録するトランザクションと呼ばれるデータ構造および一つ以上のトランザクションを含むブロックと呼ばれるデータ構造があるが、これらに限定されない。
また、ブロックチェーン接続部31は、暗号資産に関する情報の問い合わせを受理し、必要に応じて他のブロックチェーン接続部31から情報を取得し、該問い合わせに回答する機能を持っていてもよい。前述の問い合わせには、例えば、特定の暗号資産アドレスに保存された暗号資産の銘柄および数量に関する問い合わせ、特定の暗号資産アドレスが関与するトランザクションの履歴に関する問い合わせ、ならびに特定のNFTに関する所有者およびメタデータと呼ばれる付加情報の問い合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【実施例0026】
図4は、コンピューター上のWebブラウザの拡張機能として動作するウォレットソフトウェアにおける、本発明の1実施例の構成を示すものである。本実施例においては、コンピューター4においてウォレットソフトウェア40が稼働している。このとき、コンピューター4が広告出力装置1としての構成を有しており、コンピューター4に接続されているキーボード41およびマウス42が情報入力部11に、モニタ43が広告出力部12に、コンピューター4に備わる中央処理装置44が広告出力管理部10、暗号資産アドレス識別部13およびブロックチェーン接続部31に、コンピューター4に備わる補助記憶装置45が暗号資産アドレス保存部14に、それぞれ該当する。また、広告サーバー5は、広告提供装置2の構成を有する、ネットワーク経由で情報の問い合わせを行うことができる一般的なデータベースサーバーである。コンピューター4と広告サーバー5とは、インターネット経由で相互に接続されている。また、コンピューター4と広告サーバー5とは、暗号資産Ethereumを記録するブロックチェーンネットワークにそれぞれ接続しているが、これはブロックチェーンネットワーク3に該当する。ブロックチェーンネットワーク3は、
図4からは省略する。
実施形態の説明にて述べた装置に対応するものは、以下、実施形態の説明で用いた符号により参照する。
図5は、本実施例において広告出力装置1および広告提供装置2で実行される処理を示すフローチャートである。以下、
図5に示した各ステップについて説明する。
【0027】
(ステップS10)
利用者からの入力によって、広告出力管理部10が、利用者の暗号資産アドレスを認識する。
具体的には、利用者が、ウォレットソフトウェア上で暗号資産を利用するため、ニーモニックと呼ばれる複数の単語の羅列からなるパスフレーズを情報入力部11から入力する。広告出力管理部10が情報入力部11から得た情報を暗号資産アドレス識別部13に転送して、暗号資産アドレス識別部13が該利用者の暗号資産アドレスを復号し広告出力管理部10に応答する。
また、ウォレットソフトウェアが利用者に代わって暗号資産アドレスを生成し、暗号資産アドレス保存部14に記録する方式であっても構わない。この場合においては、前記手順の代わりに、広告出力管理部10が暗号資産アドレス保存部14に保存された情報を読み出し、該保存された情報を暗号資産アドレス識別部13に転送して、暗号資産アドレス識別部13が該利用者の暗号資産アドレスを識別し広告出力管理部10に応答する。
以後の説明の便宜のため、本実施例の説明では一例として、本ステップで認識した暗号資産アドレスが、アドレスAであったと仮定し、また、本ステップが実行された時点において、アドレスAが関与した暗号資産の取引の履歴は
図6に示した通りだったと仮定し、アドレスAに価値が現に記録されている暗号資産の銘柄および数量は
図7に示した通りだったと仮定する。
【0028】
(ステップS11)
広告出力管理部10が、広告を表示するための対象に関する情報を伝達する目的で、広告選択部21に暗号資産アドレスに関する情報を送信する。
具体的には、広告出力管理部10が、アドレスAに関して、ブロックチェーン接続部31に問い合わせる。ブロックチェーン接続部31が、必要に応じてブロックチェーンネットワーク3を通じて他のブロックチェーンノード装置30と通信を行い、
図7に示した通りであるところの、アドレスAに価値が記録された暗号資産の銘柄および数量を、広告出力管理部10に応答する。広告出力管理部10が、アドレスAならびにアドレスAに価値が記録された暗号資産の銘柄および数量を、広告選択部21に送信する。
また、広告出力管理部10によるブロックチェーン接続部31への問い合わせは省略しても構わない。この場合においては、前記手順の代わりに、広告出力管理部10が、アドレスAを、広告選択部21に送信する。
【0029】
(ステップS12)
広告選択部21が、該利用者に表示する広告を選択する。
具体的には、広告選択部21がステップS11で受信したアドレスAに関する情報について、広告記録部に記録された広告の表示条件への合致を評価する。表示条件への合致にあたっては、広告出力管理部10から受信したアドレスAに関する情報、アドレスAに関してブロックチェーン接続部31に問い合わせて得られる情報、およびインターネット上から得られる情報を用いる。広告選択部21は、評価の結果により表示条件を満たした広告の中から、広告を選択する。
以後の説明の便宜のため、本実施例の説明では一例として、本ステップが実行された時点において、広告記録部20が保持している広告は
図8に示した通りだったと仮定し、インターネット上から得られる暗号資産のリアルタイム交換レートは
図9に示した通りだったと仮定する。
【0030】
ここで、本実施例における広告の表示条件への合致の評価方法の例を説明する。
図8において広告IDが1として記録された広告の表示条件の評価にあたっては、暗号資産アドレスAに価値が記録されたことのある暗号資産を判別することによってでき、アドレスAが関与した暗号資産の取引の履歴を広告選択部21がブロックチェーン接続部31に問い合わせた結果が
図6に示した通りであるところにより、トランザクションIDが2000とされる取引において数量50のCATと呼ばれるNFTを購入したことが判明する。これにより、広告IDが1として記録された広告は、広告の表示条件を満たすことがわかる。
図8において広告IDが2として記録された広告の表示条件の評価は、暗号資産アドレスAに価値が記録されている暗号資産の銘柄および数量に対して、インターネット上から得られる暗号資産のリアルタイム交換レートを適用して総和することによってでき、これらが
図7および
図9に示した通りであるところにより、アドレスAの残高の評価額が525万円相当であることが判明する。これにより、広告IDが2として記録された広告は、広告の表示条件を満たすことがわかる。
図8において広告IDが3として記録された広告の表示条件の評価にあたっては、アドレスAが関与した暗号資産の取引の履歴を判別することによってでき、
広告IDが1として記録された広告の評価の際に得られた該アドレスAが関与した暗号資産の取引の履歴が
図6に示した通りであるところにより、暗号資産アドレスXYZとのトランザクションは存在しないことが判明する。これにより、広告IDが3として記録された広告は、広告の表示条件を満たさないことがわかる。
図8において広告IDが4として記録された広告は、広告の表示条件を指定しない広告があって、暗号資産を利用するすべての利用者を対象とした広告として評価することができることから、広告の表示条件を満たすことがわかる。
前述の一連の評価の結果から、広告IDが1、2および4である広告については広告の表示条件を満たす。広告選択部21は、これらの広告のうち、もっとも優先度が高く設定されている広告IDが1である広告を選択する。
【0031】
(ステップS13)
広告選択部21が、選択した広告を広告出力管理部10に回答し、広告出力管理部10は広告出力部12を通じて利用者に表示する。本実施例においては、
図10に示すように、ウォレットソフトウェア40上の表示において、ウォレット広告46のように表示することができる。
なお、ステップS12において、表示条件に合致する広告が一つも存在しなかった場合には、広告選択部21が、表示すべき広告が存在しなかった旨を広告出力管理部10に回答する。この場合、広告出力管理部10は従前の広告を継続して出力するか、広告に関して何も出力しないということが可能である。
【0032】
以上の各ステップを実行することで、暗号資産の利用者に対して広告を配信することができる。
例えば、暗号資産の利用者をあまねく対象とするサービスにあっては、広告の表示条件を空値とした広告を登録することで、利用者が暗号資産を利用しようとする時点において該サービスの広告を表示できる可能性があることから、広告の効果を増大させることが期待できる。また、特定の銘柄の暗号資産やとりわけ特定の趣味・嗜好を示唆するNFTの所有歴等がある利用者を判別することができることから、例えば、ゲーム等に利用できる嗜好性の高い暗号資産を発行するサービスにあっては、同種の他のゲームに利用できる暗号資産の所有者を対象とする広告の表示条件を設定することで、広告の効果を増大させることが期待できる。さらに、総計して一定以上の換算価値を持つ暗号資産を所有する利用者を対象とする広告の表示条件を設定することで、例えば、希少であり高い価値をもつNFTの購買を勧める広告を表示することができ、NFTのオークションハウス等の運営者は、特にNFTへの購買意欲が高い利用者層に対して広告を表示させることができるようになる。