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特開2022-188736硬化性組成物、膜形成方法及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188736
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】硬化性組成物、膜形成方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221214BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046038
(22)【出願日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2021096750
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】城野 潤平
(72)【発明者】
【氏名】清原 直樹
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44C
4F209AB04
4F209AC05
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AR17
4F209PA02
4F209PB01
4F209PJ06
4F209PN09
5F146AA31
5F146AA33
5F146JA20
(57)【要約】
【課題】硬化性組成物に関する新たな技術を提供する。
【解決手段】重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤とを含む硬化性組成物であって、前記重合性化合物は、芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造を有する化合物を少なくとも含み、前記硬化性組成物は、23℃において、2mPa・s以上60mPa・s以下の粘度を有し、前記硬化性組成物は、前記溶剤を除いた状態において、23℃において、30mPa・s以上10,000mPa・s以下の粘度を有し、前記硬化性組成物の全体に対する前記溶剤の含有量は、70体積%以上95体積%以下である、ことを特徴とする硬化性組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤とを含む硬化性組成物であって、
前記重合性化合物は、芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造を有する化合物を少なくとも含み、
前記硬化性組成物は、23℃において、2mPa・s以上60mPa・s以下の粘度を有し、
前記硬化性組成物は、前記溶剤を除いた状態において、23℃において、30mPa・s以上10,000mPa・s以下の粘度を有し、
前記硬化性組成物の全体に対する前記溶剤の含有量は、70体積%以上95体積%以下である、
ことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記重合性化合物は、一種類以上の重合性化合物を含み、
前記一種類以上の重合性化合物のそれぞれの常圧下における沸点は、250℃以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記重合性化合物は、一種類以上の重合性化合物を含み、
前記一種類以上の重合性化合物のそれぞれの分子量は、200以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記溶剤は、一種類以上の溶剤を含み、
前記一種類以上の溶剤のそれぞれの常圧下における沸点は、80℃以上250℃未満である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記溶剤は、常圧下における沸点が80℃以上250℃未満の重合性化合物を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記溶剤は、一種類以上の溶剤を含み、
前記一種類以上の溶剤のそれぞれの常圧下における沸点は、150℃以上200℃未満である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記重合性化合物として、重合性官能基を有するポリマーを少なくとも含む、
ことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記重合性化合物のオオニシパラメータが2.00以上3.00以下であり、
前記オオニシパラメータは、複数種類含まれていてもよい重合性化合物のそれぞれの分子のN/(N-N)値のモル分率加重平均値であって、Nは分子中の全原子数であり、Nは前記分子中の炭素原子数であり、Nは前記分子中の酸素原子数である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記複数種類含まれていてもよい重合性化合物の80℃における蒸気圧は、0.001mmHg以下である、
ことを特徴とする請求項8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記硬化性組成物の全体に対する前記溶剤の含有量は、70体積%以上85体積%以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記硬化性組成物は、インクジェット用の硬化性組成物である、
ことを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
型と基板との間の空間に硬化性組成物の膜を形成する膜形成方法であって、
前記基板上に、請求項1乃至11のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物の複数の液滴を離散的に配置する配置工程と、
前記基板上に離散的に配置された前記複数の液滴のそれぞれが隣接する液滴と結合して前記基板上で連続的な液膜を形成し、且つ、前記液膜に含まれる溶剤を揮発させ、前記溶剤の含有量が前記液膜の全体に対して10体積%以下になるまで待機する待機工程と、
前記待機工程の後、前記型と前記基板上の前記液膜とを接触させる接触工程と、
を有することを特徴とする膜形成方法。
【請求項13】
前記待機工程では、30℃以上200℃以下、且つ、10秒以上600秒以下の条件で前記基板を加熱する、
ことを特徴とする請求項12に記載の膜形成方法。
【請求項14】
前記配置工程では、前記基板上に、1.0pL以上の体積を有する前記硬化性組成物の液滴を、80個/mm以上の密度で配置する、
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の膜形成方法。
【請求項15】
前記待機工程の後に残存する前記硬化性組成物の体積を、前記型の膜形成領域の面積で除した値である平均残存液膜厚は、20nm以下である、
ことを特徴とする請求項12乃至14のうちいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項16】
前記型は、パターンを含み、
前記接触工程では、前記型の前記パターンと前記基板上の前記液膜とを接触させ、
前記接触工程の後、前記液膜を硬化させ、前記型の前記パターンに対応するパターンを有する硬化膜を形成する硬化工程を更に有する、
ことを特徴とする請求項12乃至15のうちいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項17】
前記型は、平坦面を含み、
前記接触工程では、前記型の前記平坦面と前記基板上の前記液膜とを接触させ、
前記接触工程の後、前記液膜を硬化させ、前記型の前記平坦面に倣った面を有する硬化膜を形成する硬化工程を更に有する、
ことを特徴とする請求項12乃至15のうちいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項18】
型と基板との間の空間に硬化性組成物の膜を形成する膜形成方法であって、
前記基板上に、請求項1乃至11のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物の複数の液滴を離散的に配置する配置工程と、
前記基板上に離散的に配置された前記複数の液滴のそれぞれが隣接する液滴と結合して前記基板上で連続的な液膜を形成し、且つ、前記液膜に含まれる溶剤が揮発するまで待機する待機工程と、
前記待機工程の後、前記型と前記基板上の前記液膜とを接触させる接触工程と、
を有し、
前記待機工程では、30℃以上200℃以下、且つ、10秒以上600秒以下の条件で前記基板を加熱する、
ことを特徴とする膜形成方法。
【請求項19】
前記配置工程では、インクジェット法を用いて、前記基板上に前記複数の液滴を離散的に配置する、
ことを特徴とする請求項12乃至18のうちいずれか1項に記載の膜形成方法。
【請求項20】
請求項12乃至19のうちいずれか1項に記載の膜形成方法を用いて、硬化性組成物の膜を基板に形成する工程と、
前記工程で前記膜が形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、膜形成方法及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどでは、微細化の要求が高まり、微細加工技術として、インプリント技術(光インプリント技術)が注目されている。インプリント技術では、微細な凹凸パターンが表面に形成された型(モールド)を、基板上に供給(塗布)された硬化性組成物に接触させた状態で、硬化性組成物を硬化させる。これにより、モールドのパターンを硬化性組成物の硬化膜に転写し、パターンを基板上に形成する。インプリント技術によれば、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターン(構造体)を形成することができる(特許文献1参照)。
【0003】
インプリント技術を利用したパターン形成方法の一例を説明する。まず、基板上のパターン形成領域に液状の硬化性硬化物を離散的に滴下(配置)する。パターン形成領域に配置された硬化性組成物の液滴は、基板上で広がる。かかる現象は、プレスプレッドと呼ばれる。次いで、基板上の硬化性組成物に対して、型を接触させる(押し当てる)。これにより、硬化性組成物の液滴は、毛細管現象によって、基板と型との隙間の全域に広がる。かかる現象は、スプレッドと呼ばれる。また、硬化性組成物は、毛細管現象によって、型のパターンを構成する凹部に充填される。かかる現象は、フィリングと呼ばれる。なお、スプレッド及びフィリングが完了するまでの時間は、充填時間と呼ばれる。硬化性組成物の充填が完了すると、硬化性組成物に対して光を照射して、硬化性組成物を硬化させる。そして、基板上の硬化した硬化性組成物から型を引き離す。これらの工程を実施することによって、型のパターンが基板上の硬化性組成物に転写され、硬化性組成物のパターンが形成される。
【0004】
また、半導体デバイスを製造するためのフォトリソグラフィ工程においては、基板を平坦化することも必要とされる。例えば、近年注目されているフォトリソグラフィ技術である極端紫外線露光技術(EUV)では、微細化に伴って投影像が結像される焦点深度が浅くなるため、硬化性組成物が供給される基板の表面の凹凸は、数十nm以下に抑えなければならない。インプリント技術においても、硬化性組成物の充填性や線幅精度の向上のために、EUVと同程度の平坦性が要求される(非特許文献1参照)。平坦化技術として、凹凸を有する基板上に、凹凸に対応する分量の硬化性組成物の液滴を離散的に滴下し、平坦面を有する型を接触させた状態で硬化性組成物を硬化させることで、平坦な表面を得る技術が知られている(特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6584578号公報
【特許文献2】特開2019-140394号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0286740号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Proc. SPIE 11324-11 (2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のパターン形成方法や平坦化技術では、基板上に滴下された液滴同士が互いに接触していない状態で型を接触させると、型と基板と硬化性組成物との間に巻き込まれる気泡が大きくなる。従って、かかる気泡が型や基板に拡散して消失するまでに長時間を要し、生産性(スループット)を低下させる要因の1つとなっている。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、硬化性組成物に関する新たな技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての硬化性組成物は、重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤とを含む硬化性組成物であって、前記重合性化合物は、芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造を有する化合物を少なくとも含み、前記硬化性組成物は、23℃において、2mPa・s以上60mPa・s以下の粘度を有し、前記硬化性組成物は、前記溶剤を除いた状態において、23℃において、30mPa・s以上10,000mPa・s以下の粘度を有し、前記硬化性組成物の全体に対する前記溶剤の含有量は、70体積%以上95体積%以下である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、硬化性組成物に関する新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一側面としてのパターン形成方法(膜形成方法)を説明するための図である。
図2】硬化性組成物の液滴の待機工程中の流動挙動を説明するための図である。
図3】従来技術における接触工程と、本発明における接触工程との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
本発明者らは、硬化性組成物に関する新たな技術を提供するにあたって、基板上に離散的に滴下(配置)された硬化性組成物の液滴同士が結合し、型が接触する前に実質的に連続的な液膜を形成することが可能な硬化性組成物及びそのプロセス条件を見出した。
【0015】
[硬化性組成物]
本発明における硬化性組成物(A)は、インクジェット用の硬化性組成物である。本発明における硬化性組成物(A)は、少なくとも、重合性化合物である成分(a)と、光重合開始剤である成分(b)と、溶剤である成分(d)とを含む組成物である。本発明における硬化性組成物(A)は、非重合性化合物(c)を更に含んでいてもよい。
【0016】
また、本明細書において、硬化膜とは、基板上で硬化性組成物を重合させて硬化させた膜を意味する。なお、硬化膜の形状は、特に限定されるものではなく、表面にパターン形状を有していてもよい。また、硬化性組成物の硬化膜の凹部(型のパターンの凸部)と基板との間に残存する硬化膜を残膜と称する。
【0017】
<成分(a):重合性化合物>
成分(a)は、重合性化合物である。本明細書において、重合性化合物は、光重合開始剤(成分(b))から発生した重合因子(ラジカルなど)と反応し、連鎖反応(重合反応)によって高分子化合物からなる膜を形成する化合物である。
【0018】
このような重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物が挙げられる。成分(a)である重合性化合物は、一種類の重合性化合物のみで構成されていてもよいし、複数種類(一種類以上)の重合性化合物で構成されていてもよい。
【0019】
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル系化合物、スチレン系化合物、ビニル系化合物、アリル系化合物、フマル系化合物、マレイル系化合物が挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリル系化合物とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物のことである。アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性p-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、PO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、1-又は2-ナフチル(メタ)アクリレート、1-又は2-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、3-又は4-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、シノアベンジル(メタ)アクリレート
【0021】
上述した単官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アロニックス(登録商標)M101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO-1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成製)、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、MMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、LA、IBXA、2-MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレートBO-A、EC-A、DMP-A、THF-A、HOP-A、HOA-MPE、HOA-MPL、PO-A、P-200A、NP-4EA、NP-8EA、エポキシエステルM-600A、POB-A、OPP-EA(以上、共栄社化学製)、KAYARAD(登録商標) TC110S、R-564、R-128H(以上、日本化薬製)、NKエステルAMP-10G、AMP-20G、A-LEN-10(以上、新中村化学工業製)、FA-511A、512A、513A(以上、日立化成製)、PHE、CEA、PHE-2、PHE-4、BR-31、BR-31M、BR-32(以上、第一工業製薬製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人製)
【0022】
また、アクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、o-、m-又はp-ベンゼンジ(メタ)アクリレート、o-、m-又はp-キシリレンジ(メタ)アクリレート
【0023】
上述した多官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ユピマー(登録商標)UV SA1002、SA2007(以上、三菱化学製)、ビスコート#195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート4EG-A、9EG-A、NP-A、DCP-A、BP-4EA、BP-4PA、TMP-A、PE-3A、PE-4A、DPE-6A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD(登録商標) PET-30、TMPTA、R-604、DPHA、DPCA-20、-30、-60、-120、HX-620、D-310、D-330(以上、日本化薬製)、アロニックス(登録商標)M208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成製)、リポキシ(登録商標)VR-77、VR-60、VR-90(以上、昭和高分子製)、オグソールEA-0200、オグソールEA-0300(以上、大阪ガスケミカル製)
【0024】
なお、上述した化合物群において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれと同等のアルコール残基を有するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はそれと同等のアルコール残基を有するメタクリロイル基を意味する。EOは、エチレンオキサイドを示し、EO変性化合物Aとは、化合物Aの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基とが、エチレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。また、POは、プロピレンオキサイドを示し、PO変性化合物Bとは、化合物Bの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基とが、プロピレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。
【0025】
スチレン系化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
スチレン、2,4-ジメチル-α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2,4,5-トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン及びオクチルスチレンなどのアルキルスチレン;フロロスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、ジブロモスチレン及びヨードスチレンなどのハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレ、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、2-ビニルビフェニル、3-ビニルビフェニル、4-ビニルビフェニル、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、4-ビニル-p-ターフェニル、1-ビニルアントラセン、α-メチルスチレン、o-イソプロペニルトルエン、m-イソプロペニルトルエン、p-イソプロペニルトルエン、2,3-ジメチル-α-メチルスチレン、3,5-ジメチル-α-メチルスチレン、p-イソプロピル-α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、α-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジビニルビフェニルなど、スチリル基を重合性官能基として有する化合物
【0026】
ビニル系化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、酢酸ビニル及びアクリロニトリル;ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンなどの共役ジエンモノマー;塩化ビニル及び臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン、有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、アジピン酸ジビニル等、(メタ)アクリロニトリルなど、ビニル基を重合性官能基として有する化合物
なお、本明細書において、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとの総称である。
【0027】
アクリル系化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル
【0028】
フマル系化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ-sec-ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ-n-ブチル、フマル酸ジ-2-エチルヘキシル、フマル酸ジベンジル
【0029】
マレイル系化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ-sec-ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ-n-ブチル、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジベンジル
【0030】
その他のラジカル重合性化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体(イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ-sec-ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ-n-ブチル、イタコン酸ジ-2-エチルヘキシル、イタコン酸ジベンジルなど)、有機カルボン酸のN-ビニルアミド誘導体(N-メチル-N-ビニルアセトアミドなど)、マレイミド及びその誘導体(N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなど)
【0031】
成分(a)が、重合性官能基を1つ以上有する複数種類の化合物で構成される場合には、単官能化合物と多官能化合物とを含むことが好ましい。これは、単官能化合物と多官能化合物とを組み合わせることで、機械的強度が強い、ドライエッチング耐性が高い、耐熱性が高いなど、性能のバランスに優れた硬化膜が得られるからである。
【0032】
本発明における膜形成方法においては、基板上に離散的に配置された硬化性組成物(A)の液滴同士が結合して実質的に連続的な液膜を形成するまでに数ミリ秒から数百秒を要するため、後述する待機工程が必要となる。待機工程では、溶剤(d)を揮発させる一方で、重合性化合物(a)は揮発してはならない。従って、複数種類含まれていてもよい重合性化合物(a)の常圧下における沸点は、全て250℃以上であることが好ましく、全て300℃以上であることがより好ましく、全て350℃以上であることが更に好ましい。また、硬化性組成物(A)の硬化膜において、高いドライエッチング耐性や高い耐熱性を得るために、芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造などの環構造を有する化合物を少なくとも含むことが好ましい。
【0033】
重合性化合物(a)の沸点は、概ね分子量と相関がある。このため、重合性化合物(a)は、全て分子量200以上であることが好ましく、全て分子量240以上であることがより好ましく、全て分子量250以上であることが更に好ましい。但し、分子量200以下であっても、沸点が250℃以上であれば、本発明の重合性化合物(a)として好ましく用いることができる。
【0034】
また、重合性化合物(成分(a))の80℃における蒸気圧は、0.001mmHg以下であることが好ましい。これは、後述する溶剤(成分(d))の揮発を加速するために、硬化性組成物を加熱することが好ましいが、かかる加熱の際に、重合性化合物の揮発を抑制するためである。
【0035】
なお、常圧下における各種有機化合物の沸点及び蒸気圧は、Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)5thEdition.5.3.04などにより計算することができる。
【0036】
<成分(a)のオオニシパラメータ>
有機化合物のドライエッチング速度V、有機化合物中の全原子数N、組成物中の全炭素原子数N、及び、組成物中の全酸素原子数Nは、以下の式(1)の関係にあることが知られている(非特許文献1参照)。
V∝N/(N-N) 式(1)
ここで、N/(N-N)は、「オオニシパラメータ」(以下、「OP」とする)とも呼ばれている。例えば、特許文献3には、OPが小さい重合性化合物成分を用いることで、ドライエッチング耐性の高い光硬化性組成物を得る技術が開示されている。
【0037】
式(1)によれば、分子中に酸素原子が多い、或いは、芳香環構造や脂環構造が少ない有機化合物ほど、OPが大きく、ドライエッチング速度が速いことが示唆される。
【0038】
本発明に用いる硬化性組成物は、(a)成分のOPを2.00以上3.00以下とすることが好ましく、2.00以上2.80以下とすることが更に好ましく、2.00以上2.60以下とすることが特に好ましい。(a)成分のOPを3.00以下とすることで、硬化性組成物(A)の硬化膜は、高いドライエッチング耐性を有する。また、(a)成分のOPを2.00以上とすることで、硬化性組成物(A)の硬化膜を用いてその下地層を加工した後に、硬化性組成物(A)の硬化膜を除去することが容易となる。(a)成分が複数種類の重合性化合物a、a、・・・、aで構成される場合には、以下の式(2)に示すように、モル分率に基づく加重平均値(モル分率加重平均値)としてOPを算出する。
【0039】
【数1】
【0040】
ここで、OPは成分aのOPであり、nは成分aの(a)成分全体に占めるモル分率である。
【0041】
(a)成分のOPを2.00以上3.00以下とするためには、芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造などの環構造を有する化合物を、少なくとも(a)成分として含むことが好ましい。
【0042】
芳香族構造としては、炭素数は、6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい。芳香族環の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環、フルオレン環、ベンゾシクロオクテン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、インデン環、インダン環、トリフェニレン環、ピレン環、クリセン環、ペリレン環、テトラヒドロナフタレン環
なお、上述した芳香族環のうち、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。芳香族環は、複数が連結した構造を有していてもよく、例えば、ビフェニル環やビスフェニル環が挙げられる。
【0043】
芳香族複素環構造としては、炭素数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~5が更に好ましい。芳香族複素環の具体例としては、以下のものが挙げられる。
チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、イソインドール環、インドール環、インダゾール環、プリン環、キノリジン環、イソキノリン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環
【0044】
脂環式構造としては、炭素数は、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、6以上が更に好ましい。また、脂環式構造としては、炭素数は、22以下が好ましく、18以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、5以下が一層好ましい。その具体例としては、以下のものが挙げられる。
シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロブテン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ジシクロペンタジエン環、スピロデカン環、スピロノナン環、テトラヒドロジシクロペンタジエン環、オクタヒドロナフタレン環、デカヒドロナフタレン環、ヘキサヒドロインダン環、ボルナン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、イソボルナン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環
【0045】
250℃以上の沸点を有する重合性化合物(a)の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ジシクロペンタニルアクリレート(沸点262℃、分子量206)、
ジシクロペンテニルアクリレート(沸点270℃、分子量204)、
1,3-シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(沸点310℃、分子量252)、
1,4-シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(沸点339℃、分子量252)、
4-ヘキシルレゾルシノールジアクリレート(沸点379℃、分子量302)、
6-フェニルヘキサン-1,2-ジオールジアクリレート(沸点381℃、分子量302)、
7-フェニルヘプタン-1,2-ジオールジアクリレート(沸点393℃、分子量316)、
1,3-ビス((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)シクロヘキサンジアクリレート(沸点403℃、分子量340)、
8-フェニルオクタン-1,2-ジオールジアクリレート(沸点404℃、分子量330)、
1,3-ビス((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)ベンゼンジアクリレート(沸点408℃、分子量334)、
1,4-ビス((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)シクロヘキサンジアクリレート(沸点445℃、分子量340)、
3-フェノキシベンジルアクリレート(mPhOBzA、OP2.54、沸点367.4℃、80℃蒸気圧0.0004mmHg、分子量254.3)、
【化1】
1-ナフチルアクリレート(NaA、OP2.27、沸点317℃、80℃蒸気圧0.0422mmHg、分子量198)、
【化2】
2-フェニルフェノキシエチルアクリレート(PhPhOEA、OP2.57、沸点364.2℃、80℃蒸気圧0.0006mmHg、分子量268.3)、
【化3】
1-ナフチルメチルアクリレート(Na1MA、OP2.33、沸点342.1℃、80℃蒸気圧0.042mmHg、分子量212.2)、
【化4】
2-ナフチルメチルアクリレート(Na2MA、OP2.33、沸点342.1℃、80℃蒸気圧0.042mmHg、分子量212.2)、
【化5】
4-シアノベンジルアクリレート(CNBzA、OP2.44、沸点316℃、分子量187)、
【化6】
以下の式に示すDVBzA(OP2.50、沸点304.6℃、80℃蒸気圧0.0848mmHg、分子量214.3)、
【化7】
以下の式に示すDPhPA(OP2.38、沸点354.5℃、80℃蒸気圧0.0022mmHg、分子量266.3)、
【化8】
以下の式に示すPhBzA(OP2.29、沸点350.4℃、80℃蒸気圧0.0022mmHg、分子量238.3)、
【化9】
以下の式に示すFLMA(OP2.20、沸点349.3℃、80℃蒸気圧0.0018mmHg、分子量250.3)、
【化10】
以下の式に示すATMA(OP2.13、沸点414.9℃、80℃蒸気圧0.0001mmHg、分子量262.3)、
【化11】
以下の式に示すDNaMA(OP2.00、沸点489.4℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量338.4)、
【化12】
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(DCPDA、OP3.29、沸点342℃、80℃蒸気圧0.0024mmHg、分子量304)、
【化13】
m-キシリレンジアクリレート(mXDA、OP3.20、沸点336℃、80℃蒸気圧0.0043mmHg、分子量246)、
【化14】
1-フェニルエタン-1,2-ジイルジアクリレート(PhEDA、OP3.20、80℃蒸気圧0.0057mmHg、沸点354℃、分子量246)、
【化15】
2-フェニル-1,3-プロパンジオールジアクリレート(PhPDA、OP3.18、沸点340℃、80℃蒸気圧0.0017mmHg、分子量260)、
【化16】
以下の式に示すVmXDA(OP3.00、沸点372.4℃、80℃蒸気圧0.0005mmHg、分子量272.3)、
【化17】
以下の式に示すBPh44DA(OP2.63、沸点444℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.3)、
【化18】
以下の式に示すBPh43DA(OP2.63、沸点439.5℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.3)、
【化19】
以下の式に示すDPhEDA(OP2.63、沸点410℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.3)、
【化20】
以下の式に示すBPMDA(OP2.68、沸点465.7℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量364.4)、
【化21】
以下の式に示すNa13MDA(OP2.71、沸点438.8℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量296.3)、
【化22】
【0046】
硬化性組成物(A)における成分(a)の配合割合は、成分(a)と、後述する成分(b)と、後述する成分(c)との合成、即ち、溶剤(d)を除く全成分の合計質量に対して、40重量%以上99重量%以下であることが好ましい。また、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上90重量%以下であることが更に好ましい。成分(a)の配合割合を40重量%以上にすることによって、硬化性組成物の硬化膜の機械強度が高くなる。また、成分(a)の配合割合を99重量%以下にすることによって、成分(b)や成分(c)の配合割合を高くすることができ、速い光重合速度などの特性を得ることができる。
【0047】
複数種類添加されていてもよい本発明の成分(a)の少なくとも一部は、重合性官能基を有するポリマーであってもよい。かかるポリマーは、芳香族構造、芳香族複素環構造又は脂環式構造などの環構造を少なくとも含むことが好ましい。例えば、以下の構造(1)~構造(6)のいずれかで表される構成単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0048】
【化23】
【0049】
構造(1)~構造(6)において、置換基Rは、それぞれ独立に芳香環を含む部分構造を含む置換基であり、Rは、水素原子又はメチル基である。本明細書において、構造(1)~構造(6)で表される構成単位中、R以外の部分を特定のポリマーの主鎖とする。置換基Rの式量は、80以上であり、100以上であることが好ましく、130以上であることがより好ましく、150以上であることが更に好ましい。置換基Rの式量の上限は、500以下であることが実際的である。
【0050】
重合性官能基を有するポリマーは、通常、重量平均分子量が500以上の化合物であり、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましい。重量平均分子量の上限は、特に定めるものではないが、例えば、50,000以下が好ましい。重量平均分子量を上述した下限値以上とすることにより、沸点を250℃以上とすることができ、硬化後の機械物性をより向上させることができる。また、重量平均分子量を上述した上限値以下とすることにより、溶剤への溶解性が高く、粘度が高すぎずに離散的に配置される液滴の流動性が維持され、液膜平面の平坦性をより向上させることができる。なお、本発明における重量平均分子量(Mw)は、特に述べない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したものをいう。
【0051】
ポリマーが有する重合性官能基の具体例としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタン基、メチロール基、メチロールエーテル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。重合容易性の観点から、特に、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0052】
成分(a)の少なくとも一部として重合性官能基を有するポリマーを添加する場合、その配合割合は、後述する粘度規定に収まる範囲であれば自由に設定することができる。例えば、溶剤(d)を除く全成分の合計質量に対して、0.1重量%以上60重量%以下であることが好ましく、1重量%以上50重量%以下であることがより好ましく、10重量%以上40重量%以下であることが更に好ましい。重合性官能基を有するポリマーの配合割合を0.1重量%以上とすることで、耐熱性、ドライエッチング耐性、機械強度や低揮発性を向上させることができる。また、重合性官能基を有するポリマーの配合割合を60重量%以下とすることで、後述する粘度の上限規定に収めることができる。
【0053】
<成分(b):光重合開始剤>
成分(b)は、光重合開始剤である。本明細書において、光重合開始剤は、所定の波長の光を感知して、上述した重合因子(ラジカル)を発生させる化合物である。具体的には、光重合開始剤は、光(赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線などの荷電粒子線、放射線)によりラジカルを発生する重合開始剤(ラジカル発生剤)である。成分(b)は、一種類の光重合開始剤のみで構成されていてもよいし、複数種類の光重合開始剤で構成されていてもよい。
【0054】
ラジカル発生剤としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-又はp-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体などの置換基を有してもよい2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-プロパン-1-オンなどのα―アミノ芳香族ケトン誘導体;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-t-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナンタラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノンなどのキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル誘導体;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾインなどのベンゾイン誘導体;ベンジルジメチルケタールなどのベンジル誘導体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタンなどのアクリジン誘導体;N-フェニルグリシンなどのN-フェニルグリシン誘導体;アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどのアセトフェノン誘導体;チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド誘導体;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)などのオキシムエステル誘導体;キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン
【0055】
上述したラジカル発生剤の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Irgacure 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI-1700、-1750、-1850、CG24-61、Darocur 1116、1173、Lucirin(登録商標) TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)
【0056】
上述したラジカル発生剤のうち、成分(b)は、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤であることが好ましい。なお、上述したラジカル発生剤のうち、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤は、以下のものである。
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド化合物
【0057】
硬化性組成物(A)における成分(b)の配合割合は、成分(a)と、成分(b)と、後述する成分(c)との合計、即ち、溶剤(d)を除く全成分の合計質量に対して、0.1重量%以上50重量%以下であることが好ましい。また、硬化性組成物(A)における成分(b)の配合割合は、溶剤(d)を除く全成分の合計質量に対して、0.1重量%以上20重量%以下であることがより好ましく、1重量%以上20重量%以下であることが更に好ましい。成分(b)の配合割合を0.1重量%以上にすることによって、組成物の硬化速度が速くなり、反応効率を向上させることができる。また、成分(b)の配合割合を50重量%以下にすることによって、ある程度の機械的強度を有する硬化膜を得ることができる。
【0058】
<成分(c):非重合性化合物>
本発明における硬化性組成物(A)は、上述した成分(a)及び成分(b)の他に、種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、成分(c)として、非重合性化合物を更に含むことができる。このような成分(c)としては、(メタ)アクリロイル基などの重合性官能基を有さず、且つ、所定の波長の光を感知して、上述した重合因子(ラジカル)を発生させる能力を有していない化合物が挙げられる。非重合性化合物としては、例えば、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、酸化防止剤、ポリマー成分、その他の添加剤などが挙げられる。成分(c)として、上述した化合物を複数種類含んでいてもよい。
【0059】
増感剤は、重合反応促進や反応転化率の向上を目的として、適宜添加される化合物である。増感剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0060】
増感剤としては、例えば、増感色素などが挙げられる。増感色素は、特定の波長の光を吸収することで励起され、成分(b)である光重合開始剤と相互作用する化合物である。ここで、相互作用とは、励起状態の増感色素から成分(b)である光重合開始剤へのエネルギー移動や電子移動などである。増感色素の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、キサントン誘導体、クマリン誘導体、フェノチアジン誘導体、カンファキノン誘導体、アクリジン系色素、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素
【0061】
水素供与体は、成分(b)である光重合開始剤から発生した開始ラジカルや重合生長末端のラジカルと反応し、より反応性が高いラジカルを発生する化合物である。成分(b)である光重合開始剤が光ラジカル発生剤である場合に、水素供与体を添加することが好ましい。
【0062】
このような水素供与体の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’-ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエタノールアミン、N-フェニルグリシンなどのアミン化合物、2-メルカプト-N-フェニルベンゾイミダゾール、メルカプトプロピオン酸エステルなどのメルカプト化合物
水素供与体は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、水素供与体は、増感剤としての機能を有していてもよい。
【0063】
型と硬化性組成物との間の界面結合力の低減、即ち、後述する離型工程における離型力の低減を目的として、硬化性組成物に内添型離型剤を添加することができる。本明細書において、内添型とは、硬化性組成物の配置工程の前に、予め硬化性組成物に添加されていることを意味する。内添型離型剤としては、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及び炭化水素系界面活性剤などの界面活性剤などを使用することができる。但し、本発明においては、後述するように、フッ素系界面活性剤には、添加量に制限がある。なお、本発明における内添型離型剤は、重合性を有していないものとする。内添型離型剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0064】
フッ素系界面活性剤としては、以下のものが含まれる。
パーフルオロアルキル基を有するアルコールのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなど)付加物、パーフルオロポリエーテルのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなど)付加物
なお、フッ素系界面活性剤は、分子構造の一部(例えば、末端基)に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、チオール基などを有していてもよい。例えば、ペンタデカエチレングリコールモノ1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルエーテルなどが挙げられる。
【0065】
フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用してもよい。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。
メガファック(登録商標)F-444、TF-2066、TF-2067、TF-2068、略称DEO-15(以上、DIC製)、フロラードFC-430、FC-431(以上、住友スリーエム製)、サーフロン(登録商標)S-382(AGC製)、EFTOP EF-122A、122B、122C、EF-121、EF-126、EF-127、MF-100(以上、トーケムプロダクツ製)、PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(以上、OMNOVA Solutions製)、ユニダイン(登録商標)DS-401、DS-403、DS-451(以上、ダイキン工業製)、フタージェント(登録商標)250、251、222F、208G(以上、ネオス製)
【0066】
また、内添型離型剤は、炭化水素系界面活性剤であってもよい。炭化水素系界面活性剤としては、炭素数1~50のアルキルアルコールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物やポリアルキレンオキサイドなどが含まれる。
【0067】
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物としては、以下のものが挙げられる。
メチルアルコールエチレンオキサイド付加物、デシルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物、セチルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物
なお、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物の末端基は、単純に、アルキルアルコールにポリアルキレンオキサイドを付加して製造できるヒドロキシル基に限定されるものではない。かかるヒドロキシル基が、その他の置換基、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ピリジル基、チオール基、シラノール基などの極性官能基やアルキル基、アルコキシ基などの疎水性官能基に置換されていてもよい。
【0068】
ポリアルキレンオキサイドとしては、以下のものが挙げられる。
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらのモノ又はジメチルエーテル、モノまたはジオクチルエーテル、モノ又はジノニルエーテル、モノ又はジデシルエーテル、モノアジピン酸エステル、モノオレイン酸エステル、モノステアリン酸エステル、モノコハク酸エステル
【0069】
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物は、市販品を使用してもよい。アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。
青木油脂工業製のポリオキシエチレンメチルエーテル(メチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON MP-400、MP-550、MP-1000)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンデシルエーテル(デシルアルコールエチレンオキサイド付加物)(FINESURF D-1303、D-1305、D-1307、D-1310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON EL-1505)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンセチルエーテル(セチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON CH-305、CH-310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンステアリルエーテル(ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON SR-705、SR-707、SR-715、SR-720、SR-730、SR-750)、青木油脂工業製のランダム重合型ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(BLAUNON SA-50/50 1000R、SA-30/70 2000R)、BASF製のポリオキシエチレンメチルエーテル(Pluriol(登録商標)A760E)、花王製のポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲンシリーズ)
【0070】
また、ポリアルキレンオキサイドは、市販品を使用してもよく、例えば、BASF製のエチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合物(Pluronic PE6400)などが挙げられる。
【0071】
フッ素系界面活性剤は、優れた離型力低減効果を示すため、内添型離型剤として有効である。硬化性組成物(A)におけるフッ素系界面活性剤を除いた成分(c)の配合割合は、成分(a)と、成分(b)と、成分(c)との合計、即ち、溶剤(d)を除く全成分の合計質量に対して、0重量%以上50重量%以下であることが好ましい。また、硬化性組成物(A)におけるフッ素系界面活性剤を除いた成分(c)の配合割合は、溶剤(d)を除く全成分の合計質量に対して、0.1重量%以上50重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以上20重量%以下であることが更に好ましい。フッ素系界面活性剤を除いた成分(c)の配合割合を50重量%以下にすることによって、ある程度の機械的強度を有する硬化膜を得ることができる。
【0072】
<成分(d):溶剤>
本発明における硬化性組成物は、成分(d)として、常圧下において、沸点が80℃以上250℃未満の溶剤を含む。成分(d)としては、成分(a)、成分(b)及び成分(c)が溶解する溶剤、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒などが挙げられる。成分(d)は、1種類を単独で、或いは、2種類以上を組み合わせて用いることができる。成分(d)の常圧下における沸点は、80℃以上とし、140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることが特に好ましい。成分(d)の常圧下における沸点は、250℃未満とし、200℃未満であることが好ましい。従って、成分(d)の常圧下における沸点は、150℃以上200℃未満であることが好ましい。成分(d)の常圧下における沸点が80℃未満であると、後述する待機工程における揮発速度が速すぎるため、硬化性組成物(A)の液滴同士が結合する前に成分(d)が揮発し、硬化性組成物(A)の液滴同士が結合しない可能性がある。また、成分(d)の常圧下における沸点が250℃以上であると、後述する待機工程において、溶剤(d)の揮発が不十分となり、硬化性組成物(A)の硬化物に成分(d)が残存する可能性がある。
【0073】
アルコール系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、iso-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾールなどのモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール系溶媒
【0074】
ケトン系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン
【0075】
エーテル系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
エチルエーテル、iso-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、2-n-ブトキシエタノール、2-n-ヘキソキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-(2-エチルブトキシ)エタノール、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、1-n-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン
【0076】
エステル系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミルγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸iso-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル
【0077】
含窒素系溶媒としては、例えば、例えば、以下のものが挙げられる。
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン
【0078】
上述した溶媒のうち、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒が好ましい。なお、成膜性に優れる観点から、より好ましいものとして、グリコール構造を有するエーテル系溶媒、エステル系溶媒が挙げられる。
また、更に好ましいものとして、以下のものが挙げられる。
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル
更に、特に好ましいものとして、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。なお、エチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなども挙げられる。
【0079】
本発明において、好ましい溶剤は、エステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれかを少なくとも1つ有する溶剤である。具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、乳酸エチルから選ばれる単独又はこれらの混合溶剤である。
【0080】
また、本発明において、成分(d)として、常圧下において沸点が80℃以上250℃未満である重合性化合物を用いることもできる。常圧下において沸点が80℃以上250℃未満である重合性化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
シクロヘキシルアクリレート(198℃)、ベンジルアクリレート(229℃)、イソボルニルアクリレート(245℃)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(202℃)、トリメチルシクロヘキシルアクリレート(232℃)、イソオクチルアクリレート(217℃)、n-オクチルアクリレート(228℃)、エトキシエトキシエチルアクリレート(沸点230℃)、ジビニルベンゼン(193℃)、1,3-ジイソプロペニルベンゼン(218℃)、スチレン(145℃)、α―メチルスチレン(165℃)
【0081】
本発明では、硬化性組成物(A)の全体を100体積%とした場合、溶剤(d)の含有量を、70体積%以上95体積%以下とし、好ましくは、70体積%以上85体積%以下とし、更に好ましくは、70体積%以上80体積%以下とする。溶剤(d)の含有量が70体積%よりも少ないと、実質的に連続的な液膜が得られる条件において、溶剤(d)の揮発後に薄い膜を得ることができない。また、溶剤(d)の含有量が95体積%よりも多いと、インクジェット法により最密に液滴を滴下したとしても、溶剤(d)の揮発後に厚い膜を得ることができない。
【0082】
<硬化性組成物の配合時の温度>
本発明における硬化性組成物(A)を調製する際には、少なくとも、成分(a)、成分(b)、成分(d)を所定の温度条件下で混合・溶解させる。所定の温度条件は、具体的には、0℃以上100℃以下の範囲とする。なお、硬化性組成物(A)が成分(c)を含む場合も同様である。
【0083】
<硬化性組成物の粘度>
本発明における硬化性組成物(A)は、液体とする。これは、後述する配置工程において、硬化性組成物(A)の液滴をインクジェット法により基板上に離散的に滴下するためである。本発明における硬化性組成物(A)の粘度は、23℃において、2mPa・s以上60mPa・s以下とし、5mPa・s以上30mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下であることが更に好ましい。硬化性組成物(A)の粘度が2mPa・s未満であると、インクジェット法による液滴の吐出性が不安定になる。また、硬化性組成物(A)の粘度が60mPa・sよりも大きいと、本発明において好ましい1.0~3.0pL程度の体積の液滴を形成することができない。
【0084】
硬化性組成物(A)から溶剤(d)が揮発した後の状態、即ち、硬化性組成物(A)の溶剤(d)を除く成分の混合物の23℃での粘度は、30mPa・s以上10,000mPa・s以下である。硬化性組成物(A)の溶剤(d)を除く成分の混合物の23℃での粘度は、90mPa・s以上2,000mPa・s以下、例えば、120mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましい。また、200mPa・s以上500mPa・s以下であることが更に好ましい。硬化性組成物(A)の溶剤(d)を除く成分の粘度を1000mPa・s以下にすることによって、硬化性組成物(A)と型とを接触させる際に、スプレッド及びフィルが速やかに完了する。従って、本発明における硬化性組成物(A)を用いることで、インプリント処理を高いスループットで実施することができるとともに、充填不良によるパターン欠陥を抑制することができる。また、硬化性組成物(A)の溶剤(d)を除く成分の粘度を1mPa・s以上にすることによって、溶剤(d)が揮発した後の硬化性組成物(A)の液滴の不要な流動を防止することができる。更に、硬化性組成物(A)と型とを接触させる際に、型の端部から硬化性組成物(A)が流出しにくくなる。
【0085】
<硬化性組成物の表面張力>
本発明における硬化性組成物(A)の表面張力に関しては、溶剤(成分(d))を除く成分の組成物について、23℃での表面張力が、5mN/m以上70mN/m以下であることが好ましい。また、溶剤(成分(d))を除く成分の組成物について、23℃での表面張力が、7mN/m以上50mN/m以下であることがより好ましく、10mN/m以上40mN/m以下であることが更に好ましい。なお、表面張力が高いほど、例えば、5mN/m以上であると、毛細管力が強く働くため、硬化性組成物(A)と型とを接触させた際に、充填(スプレッド及びフィル)が短時間で完了する。また、表面張力を70mN/m以下にすることによって、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜が、表面平滑性を有する硬化膜となる。
【0086】
<硬化性組成物の接触角>
本発明における硬化性組成物(A)の接触角に関しては、溶剤(成分(d))を除く成分の組成物について、基板の表面及び型の表面の双方に対して0°以上90°以下であることが好ましく、0°以上10°以下であることが特に好ましい。接触角が90°よりも大きいと、型のパターンの内部や基板と型との間隙において、毛細管力が負の方向(型と硬化性組成物との接触界面を収縮させる方向)に働き、充填しない可能性がある。接触角が小さいほど、毛細管力が強く働くため、充填速度が速くなる。
【0087】
<硬化性組成物に混入している不純物>
本発明における硬化性組成物(A)は、可能な限り、不純物を含まないことが好ましい。なお、不純物とは、上述した成分(a)、成分(b)、成分(c)及び成分(d)以外のものを意味する。従って、本発明における硬化性組成物(A)は、精製工程を経て得られたものであることが好ましい。このような精製工程としては、フィルタを用いた濾過などが好ましい。
【0088】
フィルタを用いた濾過としては、上述した成分(a)、成分(b)及び成分(c)を混合した後、例えば、孔径0.001μm以上5.0μm以下のフィルタで濾過することが好ましい。フィルタを用いた濾過を行う際には、多段階で行ったり、多数回繰り返したりすること(循環濾過)が更に好ましい。また、フィルタで濾過した液体を再度濾過してもよいし、孔径の異なる複数のフィルタを用いて濾過してもよい。濾過に用いるフィルタとしては、ポリエチレン樹脂製、ポリプロピレン樹脂製、フッ素樹脂製、ナイロン樹脂製などのフィルタが挙げられるが、特に限定されるものではない。このような精製工程を経ることで、硬化性組成物に混入したパーティクルなどの不純物を取り除くことができる。これにより、硬化性組成物に混入した不純物によって、硬化性組成物を硬化させた後に得られる硬化膜に不用意に凹凸が生じてパターンの欠陥となることを防止することができる。
【0089】
なお、本発明における硬化性組成物を、半導体集積回路を製造するために使用する場合、製品の動作を阻害しないようにするため、金属原子を含む不純物(金属不純物)が硬化性組成物に混入することを極力避けることが好ましい。硬化性組成物に含まれる金属不純物の濃度は、10ppm以下であることが好ましく、100ppb以下であることが更に好ましい。
【0090】
[基板]
本明細書では、硬化性組成物(A)の液滴が離散的に滴下される部材は、基板として説明される。
【0091】
基板は、被加工基板であって、通常、シリコンウエハが用いられる。基板は、表面に被加工層を有していてもよい。基板は、被加工層の下に更に他の層が形成されていてもよい。また、基板として石英基板を用いれば、インプリント用の型のレプリカ(レプリカモールド)を作製することができる。但し、基板は、シリコンウエハや石英基板に限定されるものではない。基板は、アルミニウム、チタン-タングステン合金、アルミニウム-ケイ素合金、アルミニウム-銅-ケイ素合金、酸化ケイ素、窒化ケイ素などの半導体デバイス用基板として知られているものから任意に選択することができる。なお、基板又は被加工層の表面は、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜などの表面処理によって、硬化性組成物(A)との密着性を向上させておくとよい。表面処理として成膜される有機薄膜の具体例としては、例えば、特表2009-503139号公報に記載される密着層を用いることができる。
【0092】
[パターン形成方法]
図1(a)乃至図1(g)を参照して、本発明におけるパターン形成方法について説明する。本発明によって形成される硬化膜は、1nm以上10mm以下のサイズのパターンを有する膜であることが好ましく、10nm以上100μm以下のサイズのパターンを有する膜であることがより好ましい。一般的に、光を利用してナノサイズ(1nm以上100nm以下)のパターン(凹凸構造)を有する膜を形成する膜形成方法は、光インプリント法と呼ばれている。本発明における膜形成方法は、光インプリント法を利用して、型と基板との間の空間に硬化性組成物の膜を形成する。但し、硬化性組成物は、その他のエネルギー(例えば、熱、電磁波)によって硬化されてもよい。また、本発明における膜形成方法は、パターンを有する膜を形成する方法、即ち、パターン形成方法として実施されてもよいし、パターンを有しない膜(例えば、平坦化膜)を形成する方法、即ち、平坦化膜形成方法として実施されてもよい。
【0093】
以下、本発明における膜形成方法がパターン形成方法に適用された例について説明する。パターン形成方法は、例えば、形成工程と、配置工程と、待機工程と、接触工程と、硬化工程と、離型工程とを含む。形成工程は、下地層を形成する工程である。配置工程は、下地層の上に硬化性組成物(A)の液滴を離散的に配置する工程である。待機工程は、硬化性組成物(A)の液滴同士が結合し、且つ、溶剤(d)が揮発するまで待機する工程である。接触工程は、硬化性組成物(A)と型とを接触させる工程である。硬化工程は、硬化性組成物(A)を硬化させる工程である。離型工程は、硬化性組成物(A)の硬化膜から型を引き離す工程である。配置工程は、形成工程の後に実施され、待機工程は、配置工程の後に実施され、接触工程は、待機工程の後に実施され、硬化工程は、接触工程の後に実施され、離型工程は、硬化工程の後に実施される。
【0094】
<配置工程>
配置工程では、図1(a)に模式的に示されるように、基板101の上に硬化性組成物(A)の液滴102が離散的に配置される。基板101として、下地層が積層されている基板を用いてもよい。また、基板101の表面は、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜などの表面処理によって、硬化性組成物(A)との密着性が向上されていてもよい。
【0095】
基板上に硬化性組成物(A)の液滴102を配置する配置方法としては、インクジェット法が特に好ましい。硬化性組成物(A)の液滴102は、型106のパターンを構成する凹部が密に存在する領域に対向する基板101の領域の上には密に、型106のパターンを構成する凹部が疎に存在する領域に対向する基板101の領域の上には疎に配置されることが好ましい。これにより、基板101の上に形成される後述する硬化性組成物(A)の膜(残膜)109は、型106のパターンの疎密にかかわらず、均一な厚さに制御される。
【0096】
配置すべき硬化性組成物(A)の体積を規定するために、平均残存液膜厚という指標を定義する。平均残存液膜厚は、配置工程において配置される硬化性組成物(A)(溶剤(d)を除く)の体積を型の膜形成領域の面積で除した値である。硬化性組成物(A)(溶剤(d)を除く)の体積は、硬化性組成物(A)の個々の液滴の、溶剤(d)が揮発した後の体積の総和である。この定義によれば、基板表面に凹凸がある場合にも、凹凸状態によらずに平均残存液膜厚を規定することができる。平均残存液膜厚は、形成するパターンのサイズが小さい場合ほど、薄いことが好ましい。例えば、500nm以下の幅のパターンを形成する場合には、平均残存液膜厚は、2000nm以下であることが好ましく、50nm以下の幅のパターンを形成する場合には、平均残存液膜厚は、200nm以下であることが好ましい。また、10nm以下の幅のパターンを形成する場合には、平均残存液膜厚は、20nm以下であることが好ましい。
【0097】
<待機工程>
本発明においては、配置工程の後、接触工程の前の間に、待機工程を設けている。ここで、1回のパターン形成で滴下される硬化性組成物(A)の液滴の総体積を、1回のパターン形成でパターンが形成される領域(パターン形成領域)の全面積で除した値を平均初期液膜厚と定義する。待機工程において、硬化性組成物(A)の液滴102は、図1(b)に模式的に示されるように、基板101の上で広がる。これにより、基板101のパターン形成領域は、全域にわたって、硬化性組成物(A)に被覆される。平均初期液膜厚が80nm以上である場合、図1(c)に模式的に示されるように、基板上で硬化性組成物(A)の液滴同士が結合して実質的に連続的な液膜103になることが、後述する実施例において、数値計算で示された。また、平均初期液膜厚が89nm以上である場合、液膜の表面が平坦となることも、後述する実施例において、数値計算で示された。平均初期液膜厚が80nm以上となる液膜は、1.0pL以上の体積の硬化性組成物(A)の液滴を、80個/mm以上の密度で配置することで得ることができる。同様に、平均初期液膜厚が89nmとなる液膜は、1.0pL以上の体積の硬化性組成物(A)の液滴を、89個/mmの密度で配置することで得ることができる。
【0098】
図2(a)乃至図2(d)を参照して、基板上に配置された硬化性組成物(A)の液滴の待機工程中の流動挙動について説明する。硬化性組成物(A)の液滴は、図2(a)に示されるように、基板上に離散的に配置され、図2(b)に示すように、各液滴が基板上で徐々に広がる。そして、図2(c)に示されるように、基板上の硬化性組成物(A)の液滴同士が結合し始めて液膜となり、図2(d)に示されるように、連続的な液膜となる(基板の表面が硬化性組成物(A)で被覆され、露出面がない状態となる)。図2(d)に示すような硬化性組成物(A)の状態を、「実質的に連続的な液膜」と称する。
【0099】
更に、待機工程においては、図1(d)に模式的に示されるように、液膜104に含まれている溶剤(d)105を揮発させる。待機工程の後の液膜103における溶剤(d)の残存量は、溶剤(d)以外の成分の合計重量を100体積%とすると、10体積%以下とすることが好ましい。溶剤(d)の残存量が10体積%よりも多い場合、硬化膜の機械物性が低くなる可能性がある。
【0100】
待機工程においては、溶剤(d)の揮発を加速させることを目的として、基板101及び硬化性組成物(A)を加熱するベーク工程を実施したり、基板101の周囲の雰囲気気体を換気したりしてもよい。加熱は、例えば、30℃以上200℃以下、好ましくは、80℃以上150℃以下、特に好ましくは、90℃以上110℃で行われる。加熱時間は、10秒以上600秒以下とすることができる。ベーク工程は、ホットプレート、オーブンなどの既知の加熱器を用いて実施することができる。
【0101】
待機工程は、例えば、0.1秒から600秒とし、好ましくは、10秒から300秒とする。待機工程が0.1秒よりも短いと、硬化性組成物(A)の液滴同士の結合が不十分となり、実質的に連続的な液膜が形成されない。待機工程が600秒を超えると、生産性が低下してしまう。そこで、生産性の低下を抑制するために、配置工程が完了した基板を、順次、待機工程に移行させ、複数の基板に対して並列に待機工程を実施し、待機工程が完了した基板を、順次、接触工程に移行させるようにしてもよい。なお、従来技術では、実質的に連続的な液膜が形成されるまで、理論上では、数千秒~数万秒を要するが、実際には、揮発の影響で硬化性組成物の液滴の広がりが停滞するため、連続的な液膜を形成することができない。
【0102】
待機工程において、溶剤(d)が揮発すると、成分(a)、成分(b)及び成分(c)からなる実質的に連続的な液膜104が残存する。溶剤(d)が揮発した(除去された)実質的に連続的な液膜104の平均残存液膜厚は、溶剤(d)が揮発した分だけ、液膜103よりも薄くなる。基板101のパターン形成領域は、全域にわたって、溶剤(d)が除去された硬化性組成物(A)の実質的に連続的な液膜104に被覆された状態が維持される。
【0103】
<接触工程>
接触工程では、図1(e)に模式的に示されるように、溶剤(d)が除去された硬化性組成物(A)の実質的に連続的な液膜104と型06とを接触させる。接触工程は、硬化性組成物(A)と型106とが接触していない状態から両者が接触した状態に変更する工程と、両者が接触した状態を維持する工程とを含む。これにより、型106が表面に有する微細なパターンの凹部に硬化性組成物(A)の液体が充填(フィル)され、かかる液体は、型106の微細なパターンに充填(フィル)された液膜となる。
【0104】
本発明では、待機工程において、硬化性組成物(A)は、溶剤(d)が除去された実質的に連続的な液膜104となるため、型106と基板101との間に巻き込まれる気体の体積が小さくなる。従って、接触工程における硬化性組成物(A)のスプレッドは、速やかに完了する。特許文献1などに開示されている従来技術における接触工程と、本発明における接触工程との比較(差異)を図3に示す。
【0105】
接触工程において硬化性組成物(A)のスプレッド及びフィルが速やかに完了すると、型106を硬化性組成物(A)に接触した状態を維持する時間(接触工程に要する時間)を短くすることができる。そして、接触工程に要する時間を短くすることは、パターンの形成(膜の形成)に要する時間を短縮することにつながるため、生産性の向上をもたらす。接触工程は、0.1秒以上3秒以下であることが好ましく、0.1秒以上1秒以下であることが特に好ましい。接触工程が0.1秒よりも短いと、スプレッド及びフィルが不十分となり、未充填欠陥と呼ばれる欠陥が多発する傾向がある。
【0106】
型106としては、硬化工程が光照射工程を含む場合、これを考慮して光透過性の材料で構成された型が用いられる。型106を構成する材料の材質としては、具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜などが好ましい。但し、型106を構成する材料として光透明性樹脂が用いられる場合は、硬化性組成物に含まれる成分に溶解しない樹脂が選択される。石英は、熱膨張係数が小さく、パターン歪みが小さいことから、型106を構成する材料として好適である。
【0107】
型106の表面に形成されるパターンは、例えば、4nm以上200nm以下の高さを有する。型106のパターンの高さが低いほど、離型工程において、型106を硬化性組成物の硬化膜から引き離す力、即ち、離型力を小さくすることができ、硬化性組成物のパターンが引きちぎられて型106に残存する離型欠陥の数を少なくすることができる。また、型を引き離す際の衝撃によって硬化性組成物のパターンが弾性変形し、隣接するパターン要素同士が接触し、癒着、或いは、破損が発生する場合がある。但し、パターン要素の幅に対してパターン要素の高さが2倍程度以下(アスペクト比2以下)であることが、それらの不具合を回避するために有利である。一方、パターン要素の高さが低過ぎると、基板101の加工精度が低くなる。
【0108】
型106には、硬化性組成物(A)に対する型106の剥離性を向上させるために、接触工程を実施する前に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、型106の表面に離型剤を塗布して離型剤層を形成することが挙げられる。型106の表面に塗布する離型剤としては、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤などが挙げられる。例えば、ダイキン工業(株)製のオプツール(登録商標)DSXなどの市販の塗布型離型剤も好適に用いることができる。なお、離型剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。上述した離型剤のうち、フッ素系及び炭化水素系の離型剤が特に好ましい。
【0109】
接触工程において、型106を硬化性組成物(A)に接触させる際に、硬化性組成物(A)に加える圧力は、特に限定されるものではなく、例えば、0MPa以上100MPa以下とする。なお、型106を硬化性組成物(A)に接触させる際に、硬化性組成物(A)に加える圧力は、0MPa以上50MPa以下であることが好ましく、0MPa以上30MPa以下であることがより好ましく、0MPa以上20MPa以下であることが更に好ましい。
【0110】
接触工程は、大気雰囲気下、減圧雰囲気下、不活性ガス雰囲気下のいずれの条件下でも行うことができるが、酸素や水分による硬化反応への影響を防ぐことができるため、減圧雰囲気や不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガス雰囲気下で接触工程を行う場合に用いられる不活性ガスの具体例としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、各種フロンガスなど、或いは、これらの混合ガスが挙げられる。大気雰囲気下を含めて特定のガスの雰囲気下で接触工程を行う場合、好ましい圧力は、0.0001気圧以上10気圧以下である。
【0111】
<硬化工程>
硬化工程では、図1(f)に模式的に示されるように、硬化用エネルギーとしての照射光107を硬化性組成物(A)に照射することによって、硬化性組成物(A)を硬化させて硬化膜を形成する。硬化工程では、例えば、硬化性組成物(A)に対して、型106を介して照射光107が照射される。より詳細には、型106の微細なパターンに充填された硬化性組成物(A)に対して、型106を介して照射光107が照射される。これにより、型106の微細なパターンに充填された硬化性組成物(A)が硬化して、パターンを有する硬化膜108となる。
【0112】
照射光107は、硬化性組成物(A)の感度波長に応じて選択される。具体的には、照射光107は、150nm以上400nm以下の波長の紫外光、X線、又は、電子線などから適宜選択される。なお、照射光107は、紫外光であることが特に好ましい。これは、硬化助剤(光重合開始剤)として市販されているものは、紫外光に感度を有する化合物が多いからである。紫外光を発する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep-UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、Fレーザなどが挙げられる。但し、紫外光を発する光源としては、超高圧水銀灯が特に好ましい。光源の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、型の微細なパターンに充填された硬化性組成物(A)の全域に対して光を照射してもよいし、一部の領域のみに対して(領域を限定して)光を照射してもよい。また、光の照射は、基板の全領域に対して断続的に複数回にわたって行ってもよいし、基板の全領域に対して連続的に行ってもよい。更に、第2照射過程で基板の第1領域に対して光を照射し、第2照射過程で基板の第1領域とは異なる第2領域に対して光を照射してもよい。
【0113】
<離型工程>
離型工程では、図1(g)に模式的に示されるように、硬化膜108から型106が引き離される。パターンを有する硬化膜108と型106とを引き離すことで、型106の微細なパターンを反転させたパターンを有する硬化膜108が自立した状態で得られる。ここで、パターンを有する硬化膜108の凹部にも硬化膜が残存する。かかる膜は、残膜と呼ばれる。
【0114】
パターンを有する硬化膜108から型106を引き離す手法としては、引き離す際にパターンを有する硬化膜108の一部が物理的に破損しなければよく、各種条件なども特に限定されない。例えば、基板101を固定して、型106を基板101から遠ざけるように移動させてもよい。また、型106を固定して、基板101を型106から遠ざけるように移動させてもよい。型106及び基板101の両方を正反対の方向に移動させることで、パターンを有する硬化膜108から型106を引き離してもよい。
【0115】
<繰り返し>
上述した配置工程から離型工程を、この順で有する一連の工程(製造プロセス)によって、所望の凹凸パターン形状(型106の凹凸形状に倣ったパターン形状)を、所望の位置に有する硬化膜を得ることができる。
【0116】
本発明におけるパターン形成方法では、配置工程から離型工程までの繰り返し単位(ショット)を、同一基板上で繰り返して複数回行うことができ、基板の所望の位置に複数の所望のパターンを有する硬化膜108を得ることができる。
【0117】
[平坦化膜形成方法]
以下、本発明における膜形成方法が平坦化膜形成方法に適用された例について説明する。平坦化膜形成方法は、例えば、配置工程と、待機工程と、接触工程と、硬化工程と、離型工程とを含む。配置工程は、基板上に硬化性組成物(A)の液滴を配置する工程である。待機工程は、硬化性組成物(A)の液滴同士が結合し、且つ、溶剤(d)が揮発するまで待機する工程である。接触工程は、硬化性組成物(A)と型とを接触させる工程である。硬化工程は、硬化性組成物(A)を硬化させる工程である。離型工程は、硬化性組成物(A)の硬化膜から型を引き離す工程である。平坦化膜形成方法では、基板としては、高低差が10~1,000nm程度の凹凸を有する基板が用いられ、型としては、平坦面を有する型が用いられ、接触工程、硬化工程及び離型工程を経て、型の平坦面に倣った面を有する硬化膜が形成される。配置工程においては、基板の凹部には、硬化性組成物(A)の液滴が密に配置され、基板の凸部には、硬化性組成物(A)が疎に配置される。待機工程は、配置工程の後に実施され、接触工程は、待機工程の後に実施され、硬化工程は、接触工程の後に実施され、離型工程は、硬化工程の後に実施される。
【0118】
[物品の製造方法]
本発明におけるパターン形成方法によって形成されたパターンを有する硬化膜108は、各種物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられる。また、本発明におけるパターン形成方法によって形成されたパターンを有する硬化膜108は、基板101(基板101が被加工層を有する場合は被加工層)に対するエッチングやイオン注入などのマスクとして一時的に用いられる。基板101の加工工程において、エッチングやイオン注入などが行われた後、マスクは除去される。これにより、各種物品を製造することができる。
【0119】
物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型などである。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性又は不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子などが挙げられる。光学素子としては、マイクロレンズ、導光体、導波路、反射防止膜、回折格子、偏光素子、カラーフィルタ、発光素子、ディスプレイ、太陽電池などが挙げられる。MEMSとしては、DMD、マイクロ流路、電気機械変換素子などが挙げられる。記録素子としては、CD、DVDのような光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、磁気ヘッドなどが挙げられる。センサとしては、磁気センサ、光センサ、ジャイロセンサなどが挙げられる。型としては、インプリント用の型などが挙げられる。
【0120】
また、本発明における平坦化膜形成方法によって形成された平坦化膜の上でインプリントリソグラフィ技術や極端紫外線露光技術(EUV)などの既知のフォトリソグラフィ工程を行うことができる。また、スピン・オン・グラス(SOG)膜及び/又は酸化シリコン層を積層し、その上に硬化性組成物を塗布してフォトリソグラフィ工程を行うことができる。これにより、半導体デバイスなどのデバイスを製造することができる。また、そのようなデバイスを含む装置、例えば、ディスプレイ、カメラ、医療装置などの電子機器を形成することもできる。デバイスの例としては、例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D-RDRAM、NANDフラッシュなどが挙げられる。
【0121】
[実施例]
上述した実施形態を補足するために、より具体的な実施例について説明する。
【0122】
<実質的に連続的な液膜を得る条件>
表面張力33mN/m、粘度3mPa・sの硬化性組成物(A)の1pLの液滴を複数個、平坦な基板上に所定の間隔の正方配列に滴下(配置)した。そして、硬化性組成物(A)のそれぞれの液滴が基板上で広がる挙動を、自由表面を有する薄膜近似(潤滑理論)されたナビエ・ストークス方程式に基づく数値計算(非特許文献1)で算出した。硬化性組成物(A)の液滴の滴下から300秒経過した後の、滴下位置中央部の液膜の厚さ(基板上の液膜の最厚部)、及び、正方配列された4つの液滴がなす正方形の中央部(基板上の液膜の最薄部)の液膜の厚さを、以下の表1に示す。なお、基板に対する硬化性組成物(A)の液滴の接触角を0°、硬化性組成物(A)の液滴の滴下から300秒間の溶剤(d)の揮発は無視できるものと仮定した。
【0123】
【表1】
【0124】
表1を参照するに、平均初期液膜厚が80nm以上となる実施例1、2では、基板の全域が硬化性組成物(A)に被覆されることが示された。更に、平均初期液膜厚が89nm以上となる実施例1では、最厚部の厚さと最薄部の厚さとがほぼゼロnmの平坦な液膜が形成されることが示された。
【0125】
<平均残存液膜厚の制御性の検証>
本発明における膜形成方法が適用される領域において、硬化性組成物(A)の液滴の体積や正方配列のピッチは変化させてよいが、溶剤(d)が揮発する前の液膜の厚さは、上述したように、最小となる領域でも80nmとする。実質的に連続的な液膜が得られた状態から溶剤(d)が揮発した後に残存する液膜の厚さを計算する。基板上に滴下する硬化性組成物(A)の液滴の正方配列のピッチの最小値を35μmと仮定し、型を接触させる前の厚さの最大値を算出した。実質的に連続的な液膜が得られる、溶剤(d)が揮発する前の液膜の厚さの最小値は、上述したように、80nmと算出されたため、型を接触させる前の液膜の厚さの最小値は、主成分濃度(体積%)×80nmと算出できる。ここで、主成分濃度(体積%)は、100体積%から溶剤(d)の体積%を差し引いた値とした。硬化性組成物(A)の液滴の体積が1.0pLである場合を以下の表2に示し、硬化性組成物(A)の液滴の体積が3.0pLである場合を以下の表3に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
本発明が適用される半導体デバイスを製造するためのフォトリソグラフィ工程において、パターン形成方法及び平坦化膜形成方法のいずれも、要求される膜厚は20nm以上200nm以下である。表2及び表3に示すように、主成分濃度が10体積%以上であると、200nm以上の厚い膜を得ることができ、主成分濃度が20体積%以下であると、20nm以下の薄い膜も形成可能である。従って、硬化性組成物(A)の主成分濃度は、10体積%以上20体積%以下、即ち、溶剤(d)の含有量は、80体積%以上90体積%以下であることが特に好ましいといえる。
【0129】
<硬化性組成物の評価>
以下の表4、表5及び表6に示す成分(a)、成分(b)及び成分(c)を合計100重量%となるように混合した。次に、成分(a)、成分(b)及び成分(c)のX体積%の混合物に対して、(100-X)体積%の成分(d)を加えて、合計100体積%の硬化性組成物(A)とした。溶剤(d)が揮発する前の液膜の厚さが80nmとなる条件で、硬化性組成物(A)をシリコン基板上に離散的に滴下(配置)し、待機工程として、23℃にて300秒間放置した。成分(a)が待機工程中に揮発する場合は、揮発性不良(×)と判定する。待機工程中に、成分(d)の揮発などによって、硬化性組成物(A)の液滴が十分に広がらず、実質的に連続的な液膜が形成されなかった場合は充填性不良(×)と判定する。実質的に連続的な液膜が形成され、成分(a)の揮発も生じなかった場合は、良好(○)と判定する。表4、表5及び表6には、各種の硬化性組成物(A)の揮発性及び充填性をまとめて示す。また、表4、表5及び表6において示す略称は、以下の通りである。
a1:1,3-シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(沸点310℃)
a2:m-キシリレンジアクリレート(沸点336℃)
a3:1,4-シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(沸点339℃)
a4:2-フェニル-1,3-プロパンジオールジアクリレート(沸点340℃)
a5:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(沸点342℃)
a6:1-フェニルエタン-1,2-ジイルジアクリレート(沸点354℃)
a7:3-フェノキシベンジルアクリレート(沸点367℃)
a8:4-ヘキシルレゾルシノールジアクリレート(沸点379℃)
a9:6-フェニルヘキサン-1,2-ジオールジアクリレート(沸点381℃)
a10:7-フェニルヘプタン-1,2-ジオールジアクリレート(沸点393℃)
a11:1,3-ビス((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)シクロヘキサンジアクリレート(沸点403℃)
a12:8-フェニルオクタン-1,2-ジオールジアクリレート(沸点404℃)
a13:1,3-ビス((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)ベンゼンジアクリレート(沸点408℃)
a14:1,4-ビス((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)シクロヘキサンジアクリレート(沸点445℃)
a15:1-ナフチルアクリレート(沸点317℃)
a16:2-ナフチルメチルアクリレート(沸点342℃)
a17:シアノベンジルアクリレート(沸点316℃)
a18:2-フェニルフェノキシエチルアクリレート(沸点364℃)
ac1:イソボルニルアクリレート(沸点245℃)
b1:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド
d1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)
d2:ベンジルアクリレート(沸点229℃)
dc1:アセトン(沸点56℃)
dc2:メチルノナフルオロブチルエーテル(沸点60℃)
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
【0132】
【表6】
【0133】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0134】
101:基板 102:液滴 103:液膜 104:液膜 105:溶剤 106:型 107:照射光 108:硬化膜 109:残膜
図1
図2
図3