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特開2022-188761窒素原子含有複素環化合物を用いる血小板産生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188761
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】窒素原子含有複素環化合物を用いる血小板産生方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/404 20060101AFI20221214BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/422 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 31/4353 20060101ALI20221214BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221214BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20221214BHJP
【FI】
A61K31/404
A61P7/04
A61K31/4439
A61K31/497
A61K31/506
A61K31/4709
A61K31/427
A61K31/422
A61K31/4353
A61K45/00
A61P43/00 111
C12N5/078
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092657
(22)【出願日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2021096465
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】大達 一弘
(72)【発明者】
【氏名】藤森 悠介
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】多賀 亮介
(72)【発明者】
【氏名】坂元 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】桑野 望
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BC50
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA531
4C084ZC011
4C084ZC412
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086BC17
4C086BC28
4C086BC69
4C086BC73
4C086BC82
4C086CB05
4C086GA02
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA53
4C086ZC01
(57)【要約】
【課題】in vitroにおいて巨核球細胞等の血小板前駆細胞から血小板の産生を促進させる方法を提供すること。
【解決手段】 一般式[I]:
[式中、各記号は明細書に記載のとおりである]
で表される化合物またはその塩を含む血小板産生促進剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[I]:
[式中、
R11は、水素原子、ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルであり、
R2は、水素原子または-C1-6アルキルであり、
R3は、ハロゲン、-Qk-(C1-6アルキル)m-Qp-R31、置換基を有していてもよいフェニルまたはフリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリダジルまたはピリミジルからなる群から選択される置換基を有していてもよいヘテロアリールであり、
R31は、-C1-6アルキルまたは-C3-8シクロアルキルであり、
Qは各々独立して、同一または異なって酸素原子、硫黄原子、-C(=O)-O-または-NH-であり、
k、m、pは、0または1であり、
nは、0、1または2であり、nが2のときは、R3は各々独立して、同一または異なる置換基である
Wは、炭素原子または窒素原子であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはN-R12であり、
Yは、炭素原子または窒素原子であり、
Zは、各々独立して、同一または異なって窒素原子またはC-Hであり、
ただし、XとYは同時に炭素原子ではない
R12は、水素原子、-C1-6アルキル、-C1-6アルキル-O-C1-6アルキル、-C(=O)-C1-6アルキル、-C(=O)-アリールまたは-C(=O)-O-C1-6アルキルであり、
環Aは、アリールまたはヘテロアリールであり、
---は、単結合または二重結合であり、
ただし、XがN-H、Yが炭素原子、全てのZがC-Hのとき、環Aは2-(-O-C1-6アルキル)フェニルまたは2,5-ジ(-O-C1-6アルキル)フェニルを除く]
で表される化合物またはその塩を含む血小板産生促進剤。
【請求項2】
一般式[I]中、
[式中、R11、W、X、Y、Zおよび---は上記定義と同じ]
である請求項1に記載の促進剤。
【請求項3】
一般式[I]中、
[式中、R3およびnは上記定義と同じ]
である請求項1に記載の促進剤。
【請求項4】
一般式[I]中、環Aにおけるヘテロアリールが
フラン、チオフェン、ピリジンおよびキノリンから選ばれる、
請求項1に記載の促進剤。
【請求項5】
一般式[I]中、
[式中、Vは同一または異なって、各々独立して窒素原子またはC-Hであり、R4は水素原子、ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルである]
である、請求項1に記載の促進剤。
【請求項6】
一般式[Ia]
[式中、R11は、水素原子、ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルであり、
はピリジルベンゼン、(ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルで置換されていてもよいピリミジル)ベンゼン、フェニルチオフェン、ピリジルチオフェンまたはピリミジルチオフェンである]
で表される請求項1に記載の促進剤。
【請求項7】
化合物が下記から選ばれる請求項1に記載の促進剤。
【請求項8】
芳香族炭化水素受容体阻害剤と併用するための、請求項1から7のいずれかに記載の促進剤。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の化合物またはその塩を用いる血小板産生方法。
【請求項10】
血小板産生を促進させるための、請求項1から7のいずれかに記載の化合物またはその塩の使用。
【請求項11】
請求項1から7のいずれかに記載の化合物またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養することを含む、血小板産生を促進させるための方法。
【請求項12】
請求項1から7のいずれかに記載の化合物またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養することを含む、血小板の製造方法。
【請求項13】
血小板産生を促進させるための血小板前駆細胞の培養方法であって、請求項1から7のいずれかに記載の化合物またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素原子含有複素環化合物を用いて、in vitroにおいて巨核球細胞等の血小板前駆細胞から血小板の産生を促進させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板製剤は、手術時や傷害時の大量出血、または抗がん剤治療後の血小板減少に伴う出血傾向を呈する患者に対して、その症状の治療および予期せぬ出血に対する予防を目的として投与される。
現在、血小板製剤は献血に依存しているが、血小板製剤は保存期間が4日程度と非常に短い。さらに、献血人口の減少により献血のみに供給を依存する場合、近い将来、血小板製剤が不足すると予測されている。
これらのニーズに応えるべく、in vitroで血小板を産生する方法が研究されている。
In vitroでの血小板産生方法として、各種幹細胞を分化させて巨核球細胞を得て、これを培養して血小板を放出させる方法が開発されている。例えば、Takayamaらが、ヒトES細胞から巨核球細胞および血小板を分化誘導することに成功している(非特許文献1)
また、in vitroで造血前駆細胞から血小板を産生する方法として、芳香族炭化水素受容体アンタゴニストおよびトロンボポエチン(TPO)ないしROCK(Rho-associated coiled-coil forming kinase)阻害剤の存在下で培養する方法が提案されている(特許文献1,2,3、非特許文献2,3,4)。
インドリルアクリルアミド化合物は、転写因子阻害剤として開示されている(特許文献4、非特許文献5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2014/138485号公報
【特許文献2】WO2016/204256号公報
【特許文献3】WO2010/059401号公報
【特許文献4】WO2019/167973号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Takayama et al., Blood, 111, 5298 (2008)
【非特許文献2】Boitano et al., Science, 329, 1345 (2010)
【非特許文献3】Strassel et al., Blood, 127, 2231 (2016)
【非特許文献4】Ito et al., Cell, 174, 636 (2018)
【非特許文献5】Perron et al., J. Biol. Chem., 293, 8285 (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、窒素原子含有複素環化合物またはその塩を用いてin vitroにおいて巨核球細胞等の血小板前駆細胞から血小板の産生を促進させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、下記の式[I]で示される窒素原子含有複素環化合物を用いることにより血小板の産生を促進させる方法を見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1-1] 一般式[I]:
[式中、
R11は、水素原子、ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルであり、
R2は、水素原子または-C1-6アルキルであり、
R3は、ハロゲン、-Qk-(C1-6アルキル)m-Qp-R31、置換基を有していてもよいフェニルまたはフリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリダジルまたはピリミジルからなる群から選択される置換基を有していてもよいヘテロアリールであり、
R31は、-C1-6アルキルまたは-C3-8シクロアルキルであり、
Qは各々独立して、同一または異なって酸素原子、硫黄原子、-C(=O)-O-または-NH-であり、
k、m、pは、0または1であり、
nは、0、1または2であり、nが2のときは、R3は各々独立して、同一または異なる置換基である
Wは、炭素原子または窒素原子であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはN-R12であり、
Yは、炭素原子または窒素原子であり、
Zは、各々独立して、同一または異なって窒素原子またはC-Hであり、
ただし、XとYは同時に炭素原子ではない
R12は、水素原子、-C1-6アルキル、-C1-6アルキル-O-C1-6アルキル、-C(=O)-C1-6アルキル、-C(=O)-アリールまたは-C(=O)-O-C1-6アルキルであり、
環Aは、アリールまたはヘテロアリールであり、
---は、単結合または二重結合であり、
ただし、XがN-H、Yが炭素原子、全てのZがCHのとき、環Aは2-(-O-C1-6アルキル)フェニルまたは2,5-ジ(-O-C1-6アルキル)フェニルを除く]
で表される化合物またはその塩を含む血小板産生促進剤。
[1-2]
一般式[I]中、
[式中、R11、W、X、Y、Zおよび---は上記定義と同じ]
である[1-1]に記載の促進剤。
[1-3] 一般式[I]中、
[R3およびnは上記定義と同じ]
である[1-1]に記載の促進剤。
[1-4] 一般式[I]中、環Aにおけるヘテロアリールがフラン、チオフェン、ピリジンおよびキノリンから選ばれる、
[1-1]に記載の促進剤。
[1-5] 一般式[I]中、
[式中、Vは同一または異なって、各々独立して窒素原子またはC-Hであり、R4は水素原子、ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルである]
である、[1-1]に記載の促進剤。
[1-6] 一般式[Ia]
[式中、R11は、水素原子、ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルであり、
はピリジルベンゼン、(ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルで置換されていてもよいピリミジル)ベンゼン、フェニルチオフェン、ピリジルチオフェンまたはピリミジルチオフェンである]
で表される[1-1]に記載の促進剤。
[1-7] 化合物が下記から選ばれる[1-1]に記載の促進剤
[1-8] 芳香族炭化水素受容体阻害剤と併用するための、[1-1]から[1-7]のいずれかに記載の促進剤。
[2] [1-1]から[1-7]のいずれかに記載の化合物またはその塩を用いる血小板産生方法。
[3] 血小板産生を促進させるための、[1-1]から[1-7]のいずれかに記載の化合物またはその塩の使用。
[4] [1-1]から[1-7]のいずれかに記載の化合物またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養することを含む、血小板産生を促進させるための方法。
[5] [1-1]から[1-7]のいずれかに記載の化合物またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養することを含む、血小板の製造方法。
[6] 血小板産生を促進させるための血小板前駆細胞の培養方法であって、[1-1]から[1-7]のいずれかに記載の化合物またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る方法は、in vitroにおいて血小板前駆細胞から血小板の産生を促進させる優れた効力を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中で用いる語句および用語について、以下に詳述する。
【0010】
本明細書中、「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素が挙げられる。より好ましくはフッ素または塩素である。
【0011】
本明細書中、「C1-6アルキル」は、炭素数1~6(C1-6)の直鎖または分枝鎖状アルキルであり、その具体例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル等を例示できる。
また、「C1-6アルキル」には、1~7個の水素原子が重水素原子に置換されたC1-6アルキルも包含される。
【0012】
本明細書中、「C3-8シクロアルキル」は、炭素数3~8(C3-8)のシクロアルキルであり、その具体例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等を例示できる。
【0013】
本明細書中、「アリール」は、単環式または多環式の芳香環をいう。「アリール」の具体例は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等を例示できる。
【0014】
本明細書中、「ヘテロアリール」は、環構成元素として窒素、酸素および硫黄からなる群から独立して選択されるヘテロ原子を1~3個含有するヘテロ芳香環をいう。「ヘテロアリール」の具体例は、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン等を例示できる。
【0015】
本明細書中、「置換基を有していてもよいフェニル」は、無置換のフェニルまたは1~3個の置換基で置換されたフェニルをいう。置換基としては、ハロゲン、-C1-6アルキル、-O-C1-6アルキル等を例示できる。具体例は、フェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、ヨードフェニル等を例示できる。
【0016】
本明細書中、「フリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリダジルおよびピリミジルから選ばれる置換基を有していてもよいヘテロアリール」は、無置換または1~3個の置換基で置換されたフリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリダジルまたはピリミジルをいう。置換基としては、ハロゲン、-C1-6アルキル、-O-C1-6アルキル等を例示できる。具体例は、フリル、フルオロフリル、クロロフリル、ブロモフリル、ヨードフリル、メチルフリル、エチルフリル、メトキシフリル、エトキシフリル、チエニル、フルオロチエニル、クロロチエニル、ブロモチエニル、ヨードチエニル、メチルチエニル、エチルチエニル、メトキシチエニル、エトキシチエニル、オキサゾリル、フルオロオキサゾリル、クロロオキサゾリル、ブロモオキサゾリル、ヨードオキサゾリル、メチルオキサゾリル、エチルオキサゾリル、メトキシオキサゾリル、エトキシオキサゾリル、チアゾリル、フルオロチアゾリル、クロロチアゾリル、ブロモチアゾリル、ヨードチアゾリル、メチルチアゾリル、エチルチアゾリル、メトキシチアゾリル、エトキシチアゾリル、ピラゾリル、フルオロピラゾリル、クロロピラゾリル、ブロモピラゾリル、ヨードピラゾリル、メチルピラゾリル、エチルピラゾリル、メトキシピラゾリル、エトキシピラゾリル、ピリジル、フルオロピリジル、クロロピリジル、ブロモピリジル、ヨードピリジル、メチルピリジル、エチルピリジル、メトキシピリジル、エトキシピリジル、ピラジル、フルオロピラジル、クロロピラジル、ブロモピラジル、ヨードピラジル、メチルピラジル、エチルピラジル、メトキシピラジル、エトキシピラジル、ピリダジル、フルオロピリダジル、クロロピリダジル、ブロモピリダジル、ヨードピリダジル、メチルピリダジル、エチルピリダジル、メトキシピリダジル、エトキシピリダジル、ピリミジル、フルオロピリミジル、クロロピリミジル、ブロモピリミジル、ヨードピリミジル、メチルピリミジル、エチルピリミジル、メトキシピリミジル、エトキシピリミジル等を例示できる。
【0017】
本明細書中、「置換基を有していてもよいピリミジル」は、無置換のピリミジルまたは1~3個の置換基で置換されたピリミジルをいう。置換基としては、ハロゲン、-C1-6アルキル、-O-C1-6アルキル等を例示できる。具体例は、ピリミジル、フルオロピリミジル、クロロピリミジル、ブロモピリミジル、ヨードピリミジル、メチルピリミジル、エチルピリミジル、メトキシピリミジル、エトキシピリミジル等を例示できる。
【0018】
本明細書中、「アルキルハライド」としては、ヨードメタン、ヨードエタン、1-ヨードプロパン、2-ヨードプロパン、1-ヨードブタン、2-ヨードブタン、1-ヨード-2-メチルプロパン、tert-ブチルヨージド、1-ヨードペンタン、2-ヨードペンタン、1-ヨード-2,2-ジメチルプロパン、1-ヨードヘキサン、2-ヨードヘキサン、3-ヨードメチルペンタンを例示することができる。
【0019】
本明細書中、「酸無水物」としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水n-酪酸、無水イソ酪酸、無水n-吉草酸、無水イソ吉草酸、無水イソ吉草酸、無水ピバル酸、無水n-ヘキサン酸、無水ヘプタン酸、無水安息香酸を例示することができる。
【0020】
本明細書中、「酸ハライド」としては、塩化ベンゾイル、塩化アセチル、臭化アセチル、塩化プロピオニル、塩化n-ブチリル、塩化イソブチリル、塩化ペンタノイル、塩化イソペンタノイル、塩化DL-2-メチルブチリル、塩化ピバロイル、塩化n-ヘキサノイル、塩化4-メチルペンタノイル、塩化ヘプタノイルを例示することができる。
【0021】
本明細書中、「ハロカルボン酸エステル」としては、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸プロピル、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸ブチル、クロロギ酸sec-ブチル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸ペンチル、クロロギ酸ネオペンチル、クロロギ酸n-ヘキシルを例示することができる。
【0022】
本明細書中、「ボロン酸」または「ボロン酸エステル」(例えば、後述する化合物[V])は別途製造し、単離精製したものを用いてもよいし、例えば、前駆体のハロゲン化化合物等にビスピナコールジボランをパラジウム化合物存在下で反応させ、単離精製することなくカップリング反応に用いてもよい。
【0023】
本明細書中、「塩基」は特に限定されないが、例えば、無機塩基、有機塩基等が挙げられる。「無機塩基」としては、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸セシウム)、アルカリ土類金属リン酸塩(例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム)、アルカリ金属アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド)、アルカリ金属ヒドリド(例えば、ナトリウムヒドリド、カリウムヒドリド)、水素化ナトリウム等が挙げられる。「有機塩基」としては、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA))、ジアルキルアミン(例えば、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N-メチルモルホリン、ピコリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0] -7-ウンデセン(DBU)等が挙げられる。これらから1種または2種以上を適宜選択、混合して使用することができる。
【0024】
本明細書中、「縮合剤」としては、特に限定されないが、具体的には、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(WSC・HCl)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(BOP)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(PyBOP)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロホスファート(COMU)等であり、好ましくは、WSC・HCl、HATU、COMUである。
【0025】
本明細書中、「添加剤」は、特に限定されないが、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、N-ヒドロキシこはく酸イミド(HOSu)、エチル(ヒドロキシイミノ)シアノアセテート(Oxyma)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、N-メチルモルホリン等であり、好ましくは、HOBt、TEA、DIPEAである。
【0026】
本明細書中、「パラジウム化合物」としては、特に限定するものではないが、例えば、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価パラジウム触媒類;[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(Pd(dppf)Cl2・CH2Cl2)、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',4',6'-トリイソプロピル-1,1'-ビフェニル)[2-(2'-アミノ-1,1'-ビフェニル)]パラジウム(II) メタンスルホナート(XPhos Pd G3)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ-1,5-ジエン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)-ジクロロメタン錯体等の2価パラジウム触媒類;トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd2(dba)3)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)等の0価パラジウム触媒類等が挙げられる。これらのパラジウム化合物は、1種単独でまたは2種以上混合して使用される。
【0027】
本明細書中、「脱離基」としては、具体的には、ハロゲン、C1-18アルカンスルホニル、低級アルカンスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ、アラルキルスルホニルオキシ、ペルハロアルカンスルホニルオキシ、スルホニオ、トルエンスルホキシ等である。本反応における好ましい脱離基としては、ハロゲンが挙げられる。
【0028】
上記「C1-18アルカンスルホニル」の例としては、炭素数1~18(C1-18)の直鎖または分枝鎖状アルカンスルホニルを含み、その具体例は、メタンスルホニル、1-プロパンスルホニル、2-プロパンスルホニル、ブタンスルホニル、シクロヘキサンスルホニル、ドデカンスルホニル、オクタデカンスルホニル等である。
【0029】
上記「低級アルカンスルホニルオキシ」の例としては、炭素数1~6(C1-6)の直鎖または分枝鎖状アルカンスルホニルオキシを含み、その具体例は、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、1-プロパンスルホニルオキシ、2-プロパンスルホニルオキシ、1-ブタンスルホニルオキシ、3-ブタンスルホニルオキシ、1-ペンタンスルホニルオキシ、1-ヘキサンスルホニルオキシ等である。
【0030】
上記「アリールスルホニルオキシ」の例としては、フェニル環上に置換基として炭素数1~6(C1-6)の直鎖または分枝鎖状アルキル、炭素数1~6(C1-6)の直鎖または分枝鎖状アルコキシ、ニトロおよびハロゲンなる群より選ばれた基を1~3個有することのあるフェニルスルホニルオキシ、ナフチルスルホニルオキシ等を含む。上記「置換基を有することのあるフェニルスルホニルオキシ」の具体例は、フェニルスルホニルオキシ、4-メチルフェニルスルホニルオキシ、2-メチルフェニルスルホニルオキシ、4-ニトロフェニルスルホニルオキシ、4-メトキシフェニルスルホニルオキシ、2-ニトロフェニルスルホニルオキシ、3-クロロフェニルスルホニルオキシ等である。上記「ナフチルスルホニルオキシ」の具体例は、α-ナフチルスルホニルオキシ、β-ナフチルスルホニルオキシ等である。
【0031】
上記「アラルキルスルホニルオキシ」の例としては、フェニル環上に置換基として炭素数1~6(C1-6)の直鎖または分枝鎖状アルキル、炭素数1~6(C1-6)の直鎖または分枝鎖状アルコキシ、ニトロおよびハロゲンなる群より選ばれた基を1~3個有することのあるフェニルで置換された炭素数1~6(C1-6)の直鎖または分枝鎖状アルカンスルホニルオキシ、ナフチルで置換された炭素数1~6(C1-6)の直鎖または分枝鎖状アルカンスルホニルオキシ等を含む。上記「フェニルで置換されたアルカンスルホニルオキシ」の具体例は、ベンジルスルホニルオキシ、2-フェニルエチルスルホニルオキシ、4-フェニルブチルスルホニルオキシ、4-メチルベンジルスルホニルオキシ、2-メチルベンジルスルホニルオキシ、4-ニトロベンジルスルホニルオキシ、4-メトキシベンジルスルホニルオキシ、3-クロロベンジルスルホニルオキシ等である。上記「ナフチルで置換されたアルカンスルホニルオキシ」の具体例は、α-ナフチルメチルスルホニルオキシ、β-ナフチルメチルスルホニルオキシ等である。
【0032】
上記「ペルハロアルカンスルホニルオキシ」としては、具体例としてトリフルオロメタンスルホニルオキシ等である。
【0033】
上記「スルホニオ」としては、具体例は、ジメチルスルホニオ、ジエチルスルホニオ、ジプロピルスルホニオ、ジ(2-シアノエチル)スルホニオ、ジ(2-ニトロエチル)スルホニオ、ジ-(アミノエチル)スルホニオ、ジ(2-メチルアミノエチル)スルホニオ、ジ-(2-ジメチルアミノエチル)スルホニオ、ジ-(2-ヒドロキシエチル)スルホニオ、ジ-(3-ヒドロキシプロピル)スルホニオ、ジ-(2-メトキシエチル)スルホニオ、ジ-(2-カルバモイルエチル)スルホニオ、ジ-(2-カルバモイルエチル)スルホニオ、ジ-(2-カルボキシエチル)スルホニオ、ジ-(2-メトキシカルボニルエチル)スルホニオまたはジフェニルスルホニオ等である。
【0034】
本明細書中、「溶媒」は、反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、水、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル)、ハロ炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、アセトニトリル)が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0035】
本明細書中の一般式[I]で表される化合物(以下、「化合物[I]」と称する。)における各置換基について、以下に説明する。
【0036】
化合物[I]におけるR11は、水素原子、ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルであり、好ましくは水素原子、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、-O-メチル、-O-エチル、-O-n-プロピル、-O-イソプロピル、-O-n-ブチル、-O-イソブチル、-O-sec-ブチル、-O-tert-ブチル、-O-n-ペンチル、-O-イソペンチル、-O-ネオペンチル、-O-n-ヘキシル、-O-イソヘキシルまたは-O-3-メチルペンチルであり、さらに好ましくは水素原子、塩素、メチルまたは-O-メチルである。
【0037】
化合物[I]におけるR12は、水素原子、-C1-6アルキル、-C1-6アルキル-O-C1-6アルキル、-C(=O)-C1-6アルキル、-C(=O)-アリールまたは-C(=O)-O-C1-6アルキルであり、好ましくは水素原子、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、-メチル-O-メチル、-メチル-O-エチル、-メチル-O-プロピル、-エチル-O-メチル、-エチル-O-エチル、-エチル-O-プロピル、-プロピル-O-メチル、-プロピル-O-エチル、-プロピル-O-プロピル、-C(=O)-メチル、-C(=O)-エチル、-C(=O)-n-プロピル、-C(=O)-イソプロピル、-C(=O)-n-ブチル、-C(=O)-イソブチル、-C(=O)-sec-ブチル、-C(=O)-tert-ブチル、-C(=O)-n-ペンチル、-C(=O)-イソペンチル、-C(=O)-ネオペンチル、-C(=O)-n-ヘキシル、-C(=O)-イソヘキシル、-C(=O)-3-メチルペンチル、-C(=O)-フェニル、-C(=O)-ナフチル、-C(=O)-O-メチル、-C(=O)-O-エチル、-C(=O)-O-n-プロピル、-C(=O)-O-イソプロピル、-C(=O)-O-n-ブチル、-C(=O)-O-イソブチル、-C(=O)-O-sec-ブチル、-C(=O)-O-tert-ブチル、-C(=O)-O-n-ペンチル、-C(=O)-O-イソペンチル、-C(=O)-O-ネオペンチル、-C(=O)-O-n-ヘキシル、-C(=O)-O-イソヘキシルまたは-C(=O)-O-3-メチルペンチルであり、さらに好ましくは、水素原子、メチル、-エチル-O-メチル、-C(=O)-メチル、-C(=O)-フェニルまたは-C(=O)-O-メチルである。
【0038】
化合物[I]におけるR2は、水素原子または-C1-6アルキルであり、好ましくは水素原子、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシルまたは3-メチルペンチルであり、さらに好ましくは、水素原子またはメチルである。
【0039】
化合物[I]におけるR3は、ハロゲン、-Qk-(C1-6アルキル)m-Qp-R31、置換基を有していてもよいフェニルまたはフリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリダジルまたはピリミジルからなる群から選択されるヘテロアリールであり、該ヘテロアリールは置換基を有していてもよく、好ましくは、ハロゲン、-Qk-(C1-6アルキル)m-Qp-R31、置換基を有していてもよいフェニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリダジルおよび置換基を有していてもよいピリミジルであり、より好ましくは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-ブチル、-O-メチル-O-メチル、-O-エチル-O-メチル、-O-エチル-O-エチル、-O-メチル-シクロプロピル、-O-メチル-シクロブチル、-O-メチル-シクロペンチル、-O-エチル-シクロプロピル、-O-エチル-シクロブチル、-O-エチル-シクロペンチル、-S-メチル、-S-エチル、-S-プロピル、-メチル-S-メチル、-メチル-S-エチル、-エチル-S-エチル、-NH-メチル、-NH-エチル、-C(=O)-O-メチル、-C(=O)-O-エチル、-C(=O)-O-n-プロピル、-C(=O)-O-イソプロピル、-C(=O)-O-n-ブチル、-C(=O)-O-イソブチル、-C(=O)-O-sec-ブチル、-C(=O)-O-tert-ブチル、-C(=O)-O-n-ペンチル、-C(=O)-O-イソペンチル、-C(=O)-O-ネオペンチル、-C(=O)-O-n-ヘキシル、-C(=O)-O-イソヘキシル、-C(=O)-O-3-メチルペンチル、フェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、ヨードフェニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリミジル、フルオロピリミジル、クロロピリミジル、ブロモピリミジル、ヨードピリミジル、メチルピリミジル、エチルピリミジル、メトキシピリミジル、エトキシピリミジルまたはピリダジルであり、より好ましくは、フッ素、メチル、-O-メチル、-O-エチル、-O-エチル-O-メチル、-O-メチル-シクロプロピル、-S-エチル、-メチル-S-メチル、-NH-エチル、-C(=O)-O-メチル、フェニル、フルオロフェニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリミジル、フルオロピリミジル、メチルピリミジル、メトキシピリミジルまたはピリダジルである。
【0040】
化合物[I]におけるR31は、-C1-6アルキルまたは-C3-8シクロアルキルであり、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルであり、さらに好ましくは、メチルまたはシクロプロピルである。
【0041】
化合物[I]におけるR4は、水素原子、ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルであり、好ましくは、水素原子、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピルまたは-O-ブチルであり、さらに好ましくは、水素原子、フッ素、メチルまたは-O-メチルである。
【0042】
化合物[I]におけるQは、各々独立して、同一または異なって酸素原子、硫黄原子、-C(=O)-O-または-NH-である。
【0043】
化合物[I]におけるk、m、pは同一または異なって、各々独立して、0または1である。
【0044】
化合物[I]におけるnは、0、1または2であり、nが2のときは、R3は各々独立して、同一または異なる置換基である。
【0045】
化合物[I]におけるVは、同一または異なって、各々独立して、窒素原子またはC-Hである。
【0046】
化合物[I]におけるWは、炭素原子または窒素原子であり、好ましくは炭素原子である。
【0047】
化合物[I]におけるXは、炭素原子、窒素原子またはN-R12である。
【0048】
化合物[I]におけるYは、炭素原子または窒素原子である。
【0049】
化合物[I]におけるZは、各々独立して、同一または異なって、各々独立して、窒素原子またはC-Hである。
【0050】
化合物[I]における環Aは、アリールまたはヘテロアリールであり、そのアリールとして、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンを挙げることができ、そのヘテロアリールとして、例えば、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン等を挙げることができる。
【0051】
また、化合物[I]における
である。
【0052】
化合物[I]における
の具体例は、エトキシベンゼン、メトキシエトキシベンゼン、シクロプロピルメトキシベンゼン、エチルスルファニルベンゼン、メチルスルファニルメチルベンゼン、エチルアミノベンゼン、安息香酸メチル、ビフェニル、フルオロビフェニル、メトキシビフェニル、ピリジルベンゼン、ピリミジルベンゼン、(フルオロピリミジル)ベンゼン、(メチルピリミジル)ベンゼン、(メトキシピリミジル)ベンゼン、ピラジルベンゼン、ピリダジルベンゼン、フリルベンゼン、チエニルベンゼン、オキサゾリルベンゼン、チアゾリルベンゼン、ピラゾリルベンゼン、フェニルフラン、エトキシチオフェン、フェニルチオフェン、フリルチオフェン、チエニルチオフェン、ピリジルチオフェン、ピリミジルチオフェン、メチルキノリン、メトキシキノリン、エトキシピリジンであり、好ましくは、ピリジルベンゼン、ピリミジルベンゼン、(フルオロピリミジル)ベンゼン、(メチルピリミジル)ベンゼン、(メトキシピリミジル)ベンゼン、フェニルチオフェン、ピリジルチオフェン、ピリミジルチオフェンであり、さらに好ましくは、2-ピリジルベンゼン、2-ピリミジルベンゼン、2-(5-フルオロピリミジル)ベンゼン、2-(5-メチルピリミジル)ベンゼン、2-(5-メトキシピリミジル)ベンゼン、3-フェニルチオフェン、3-(2-ピリジル)チオフェン、3-(2-ピリミジル)チオフェンである。
【0053】
また、化合物[I]における
である。
【0054】
化合物[I]における
---
は、単結合または二重結合である。
【0055】
好ましい化合物[I]としては、例えば、一般式[I]中、
R11は、水素原子、ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルであり、
R2は、水素原子であり、
R3は、フェニル、ピリジル、(ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルで置換されていてもよい)ピリミジルであり、
Xは、N-Hであり、
Yは、炭素原子であり、
Zは、窒素原子またはC-Hであり、
環Aは、ベンゼンまたはチオフェンである化合物が挙げられる。
【0056】
より好ましい化合物[I]としては、例えば、一般式[Ia]
[式中、R11は、水素原子、ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルであり、
は、ピリジルベンゼン、(ハロゲン、-C1-6アルキルまたは-O-C1-6アルキルで置換されていてもよいピリミジル)ベンゼン、フェニルチオフェン、ピリジルチオフェンまたはピリミジルチオフェンである]で表される化合物が挙げられ、
特に、一般式[Ia]中、
R11は、水素原子、メチルまたは-O-メチルであり、
は、ピリジルベンゼン、ピリミジルベンゼン、(フルオロピリミジル)ベンゼン、(メチルピリミジル)ベンゼン、(メトキシピリミジル)ベンゼン、フェニルチオフェン、ピリジルチオフェンまたはピリミジルチオフェンである化合物が挙げられる。
【0057】
さらに好ましい化合物[I]としては、下記から選ばれる化合物が挙げられる。
【0058】
化合物[I]またはその塩は、血小板産生促進剤として有用である。したがって、本発明の態様の一つは、化合物[I]またはその塩を含む血小板産生促進剤である。
また、本態様には、芳香族炭化水素受容体阻害剤と併用するための、血小板産生促進剤も含まれる。
【0059】
本発明の態様の一つは、血小板産生を促進させるための、化合物[I]またはその塩の使用である。
また、本態様には、芳香族炭化水素受容体阻害剤とともに使用される、使用も含まれる。
【0060】
本発明の態様の一つは、化合物[I]またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養することを含む、血小板産生を促進させるための方法である。
また、本態様には、さらに芳香族炭化水素受容体阻害剤の共存下、血小板前駆細胞を培養することを含む、方法も含まれる。
【0061】
本発明の態様の一つは、化合物[I]またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養することを含む、血小板の製造方法である。
また、本態様には、さらに芳香族炭化水素受容体阻害剤の共存下、血小板前駆細胞を培養することを含む、方法も含まれる。
【0062】
本発明の態様の一つは、血小板産生を促進させるための血小板前駆細胞の培養方法であって、化合物[I]またはその塩の存在下、血小板前駆細胞を培養する方法である。
また、本態様には、さらに芳香族炭化水素受容体阻害剤の共存下、血小板前駆細胞を培養することを含む、方法も含まれる。
【0063】
本明細書全体において、本発明の方法に用いることができる化合物[I]またはその塩、使用、方法および組成物の異なる特徴に関する好ましい態様および選択肢の提示は、これらが組合せ可能であって矛盾のない限り、当該異なる特徴についての好ましい態様および選択肢の組合せの提示も含む。
【0064】
以下、化合物[I]の製造法について説明する。化合物[I]は下記に示す製造方法に基づき製造することができる。また、化合物[I]は、例えばWO2019/167973号公報に記載の方法で製造することができる。これらの製造方法は例示であって、化合物[I]の製造方法はこれらに限定されない。
【0065】
以下の反応式において、アルキル化反応、加水分解反応、アミノ化反応、エステル化反応、アミド化反応、エーテル化反応、求核置換反応、付加反応、酸化反応、還元反応等を行う場合、これらの反応は、自体公知の方法に従って行われる。このような方法としては、例えば、実験化学講座(第5版、日本化学会編、丸善株式会社)、オーガニック・ファンクショナル・グループ・プレパレーションズ(ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS)第2版、アカデミックプレス社(ACADEMIC PRESS, INC.)1989年刊;コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(Comprehensive Organic Transformations)VCH Publishers Inc.、1989年刊、ウッツ(P.G.M.Wuts)およびグリーン(T.W.Greene)著、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis」(第4版、2006年)等に記載の方法等が挙げられる。
【0066】
化合物[I]の一般的な合成経路(1)
(式中、各記号は上記に定義したとおりである)
【0067】
上記反応式で示される反応により、本発明の方法に使用することができる化合物[I]を製造することができる。具体的には、化合物[II]と化合物[III]を縮合させることで化合物[I]を製造することができる。
【0068】
他の反応条件(反応温度、反応時間等)は、自体公知の縮合反応に基づいて適宜決定することができる。
【0069】
化合物[I]の一般的な合成経路(2)
(式中、R12aは-C1-6アルキルであり、その他の各記号は上記に定義したとおりである)
【0070】
上記反応式で示される反応により、本発明の方法に使用することができる化合物[Ic]を製造することができる。具体的には、化合物[Ib]とアルキルハライドと反応させることで化合物[Ic]を製造することができる。
【0071】
他の反応条件(反応温度、反応時間等)は、自体公知の縮合反応に基づいて適宜決定することができる。
【0072】
化合物[I]の一般的な合成経路(3)
(式中、R12bは-C(=O)-C1-6アルキル、-C(=O)-アリールまたは-C(=O)-O-C1-6アルキルであり、その他の各記号は上記に定義したとおりである)
【0073】
上記反応式で示される反応により、本発明の方法に使用することができる化合物[Id]を製造することができる。具体的には、化合物[Ib]と酸無水物、酸ハライドまたはハロカルボン酸エステルと反応させることで化合物[Id]を製造することができる。
【0074】
他の反応条件(反応温度、反応時間等)は、自体公知の縮合反応に基づいて適宜決定することができる。
【0075】
化合物[I]の一般的な合成経路(4)
(式中、環Bは置換基を有していてもよいベンゼンまたはチオフェンであり、Uは脱離基であり、他の記号は上記に定義したとおりである)
【0076】
上記反応式で示される反応により、本発明の方法に使用することができる化合物[Ie]を製造することができる。具体的には、脱離基(U)を有する化合物[IV]と化合物[V]をパラジウム化合物存在下でカップリングさせることにより化合物[Ie]を製造することができる。
【0077】
他の反応条件(反応温度、反応時間等)は、公知のカップリング反応に基づいて適宜決定することができる。
【0078】
上記反応式における各反応において、生成物は反応液のまま、または粗生成物として次反応に用いることもできるが、常法に従って反応混合物から単離することもでき、通常の分離手段により容易に精製することもできる。通常の分離手段としては、例えば、再結晶、蒸留、クロマトグラフィーが挙げられる。
【0079】
上記各工程における出発原料化合物、中間体化合物および目的化合物並びに本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩には、幾何異性体、立体異性体、光学異性体および互変異性体が含まれる。各種異性体は一般的な光学分割法により分離できる。また、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。
【0080】
本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩は、上記の各反応式にて示された合成方法またはそれに準ずる方法により製造することができる。
【0081】
本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩の製造における原料化合物は具体的製法を述べない場合、市販のものを用いてもよく、自体公知の方法またはそれに準ずる方法に従って製造したものを用いてもよい。
【0082】
上記各工程における出発原料化合物および目的化合物を適切な塩形態で使用することができる。このような塩としては、下記に本発明の方法に用いることができる化合物[I]の塩として例示されるものと同様のものが挙げられる。
【0083】
また、本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩には、その塩の形態が含まれ、酸付加塩または置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もある。かかる「酸」の例としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等);および有機酸(例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸等)等が挙げられる。かかる「塩基」の例としては、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等);および有機塩基(例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピリジン、ピコリン、コリン等);およびアンモニウム塩等が挙げられる。また、例えばリジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸と塩を形成してもよい。
【0084】
本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩には、1つまたは複数の原子を1つまたは複数の同位体原子で置換された化合物が含まれる。同位体原子の例としては重水素(2H)、三重水素(3H)、13C、15N、18O等が挙げられる。
【0085】
本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩は、in vitroにおいて血小板前駆細胞から血小板の産生を促進する機能を有する。
【0086】
以下、本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩を用いて、血小板前駆細胞から血小板を産生する方法について説明する。
【0087】
血小板は、本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩を1種類または2種類以上の存在下、血小板前駆細胞(例えば、巨核球細胞またはその前駆細胞)を培養することにより産生することができる。本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩の培地中の濃度は特に限定されず、当業者が血小板産生促進剤に応じて適宜決定することができ、例えば、1 nM~100 μMであり、好ましくは10 nM~100 μMでありさらに好ましくは100 nM~10 μMであるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外の量であってもよい。
【0088】
本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩は、巨核球細胞からの血小板産生量を増大させることができる。本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩は、限定はされないが、例えば、コントロールと比較して200%以上、好ましくは300%以上、さらに好ましくは400%以上血小板数を増大させることができる。
【0089】
本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩を培地に添加する(存在させる)タイミングは、所望の効果を奏する限り特に限定されない。例えば、本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩は、巨核球細胞またはその前駆細胞に添加される。巨核球細胞は、多核化前の巨核球細胞であっても、多核化した巨核球細胞であってもよく、多核化した巨核球細胞は、血小板産生中の巨核球細胞であってもよい。後述のように、巨核球より未分化な細胞において、癌遺伝子、ポリコーム遺伝子、およびアポトーシス抑制遺伝子からなる群より選択される遺伝子の少なくとも1つを強制発現させて不死化巨核球細胞を作製し、その後強制発現を解除して不死化巨核球細胞の多核化を進める場合には、強制発現の解除後に、培地に本発明の方法に用いることができる化合物[I]またはその塩を添加することが好ましい。本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩は、血小板産生のための培養を開始すると同時に、培養を開始してから、1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後に培地に添加してもよい。
【0090】
本発明に使用することができる巨核球細胞は公知の細胞を使用することができ、例えばWO2016/204256号公報で開示された方法を用いて不死化巨核球細胞を調製することができる。
【0091】
巨核球細胞またはその前駆細胞の起源は血小板を産生する能力を有すれば特に限定されず、例えば多能性幹細胞、特に誘導多能性幹細胞(iPS細胞)または胚性幹細胞(ES細胞)を挙げることができる。iPS細胞およびES細胞の由来は特に限定されないが、例えばヒト由来細胞を挙げることができる。
【0092】
本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩は、1または2種類以上の芳香族炭化水素受容体阻害剤(AhR antagonist)、1または2種類以上のトロンボポエチン(TPO)またはTPO受容体アゴニスト、1または2種類以上のROCK (Rho-associated coiled-coil forming kinase)阻害剤、および/または1または2種類以上のADAM(a disintegrin and metalloprotease)阻害剤等と組み合わせて血小板産生促進剤として使用することができる。
【0093】
本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩は、芳香族炭化水素受容体阻害剤と共存させて血小板前駆細胞を培養することにより、より優れた血小板産生促進効果を発揮する。
【0094】
本発明の方法に用いることができる化合物またはその塩とともに用いることができる芳香族炭化水素受容体阻害剤としては、血小板産生促進作用を有すれば、特に限定されないが、例えば、下記の化合物などが挙げられる。これらの化合物は例えばWO2020/050409公報に記載の方法で合成することができる。
・4-[2-[[2-ベンゾ[b]チエン-3-イル-9-(1-メチルエチル-9H-プリン-6-イル]アミノ]エチル]フェノール(4-[2-[[2-benzo[b]thien-3-yl-9-(1-methylethyl)-9H-purin-6-yl]amino]ethyl]phenol)(化合物A1)
・N-[2-(1H-インドル-3-イル)エチル]-9-(1-メチルエチル-2-(5-メチル-3-ピリジニル)-9H-プリン-6-アミン(N-[2-(1H-indol-3-yl)ethyl]-9-(1-methylethyl)-2-(5-methyl-3-pyridinyl)-9H-Purin-6-amine)(化合物A2)
・4-(2-メチル-4-ピリジニル)-N-[4-(3-ピリジニル)フェニル]-ベンゼンアセタミド(4-(2-Methyl-4-pyridinyl)-N-[4-(3-pyridinyl)phenyl]-benzeneacetamide)(化合物A3)
・1-メチル-N-[2-メチル-4-[2-(2-メチルフェニル)ジアゼニル]フェニル]-1H-ピラゾル-5-カルボキサミド(1-Methyl-N-[2-methyl-4-[2-(2-methylphenyl)diazenyl]phenyl]-1H-pyrazole-5-carboxamide)(化合物A4)
・3-[5-[2-[[2-(5-フルオロピリジン-3-イル)-8,8-ジメチル-7H-プリノ[8,9-b][1,3]オキサゾル-4-イル]アミノ]エチル]-2-ヒドロキシフェニル]ベンゾニトリル(3-[5-[2-[[2-(5-Fluoropyridin-3-yl)-8,8-dimethyl-7H-purino[8,9-b][1,3]oxazol-4-yl]amino]ethyl]-2-hydroxyphenyl]benzonitrile)(化合物A5)
【0095】
芳香族炭化水素受容体阻害剤の濃度は特に限定されず、当業者が化合物に応じて適宜決定することができる。芳香族炭化水素受容体阻害剤の濃度は、例えば、1.0 nM~1000μM、10 nM~100μM、100 nM~100μM または100 nM~10μMとすることができるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外の量であってもよい。
【0096】
ROCK阻害剤としては、例えばY27632、Y39983、ファスジル塩酸塩、リパスジル、SLX-2119、RKI-1447、アザインドール1(Azaindole 1)、SR-3677、スタウロスポリン(Staurosporine)、H1152二塩酸塩(H1152 Dihydrochloride)、AR-12286、INS-117548などが挙げられるが、これらに限定されない。ROCK阻害剤の濃度は特に限定されず、当業者が化合物に応じて適宜決定することができる。ROCK阻害剤の濃度は、例えば、1.0 nM~1.0 mM、10 nM~0.1 mM、100 nM~0.1 mMまたは100 nM~0.01 mMとすることができるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外の量であってもよい。
【0097】
トロンボポエチンには、トロンボポエチン(TPO)およびヒトリコンビナントトロンボポエチンが含まれる。また、TPO受容体アゴニストとしては、例えばTA-316などが挙げられるが、これらに限定されない。TPOおよびヒトリコンビナントTPOの濃度は特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。TPOおよびヒトリコンビナントTPOの濃度は、例えば、0.5 ng/mL~5 μg/mL、好ましくは5~500 ng/mL、さらに好ましくは50 ng/mLとすることができるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外の量であってもよい。TPO受容体アゴニストの濃度は特に限定されず、当業者が化合物に応じて適宜決定することができる。TPO受容体アゴニストの濃度は、例えば、0.1 ng/mL~1 mg/mL、好ましくは1 ng/mL~100 μg/mL、さらに好ましくは10 ng/mL~10 μg/mLとすることができるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外の量であってもよい。
【0098】
ADAM阻害剤としては、例えばKP-457などが挙げられるが、これらに限定されない。ADAM阻害剤の濃度は特に限定されず、当業者が化合物に応じて適宜決定することができる。ADAM阻害剤の濃度は、例えば、1.0 nM~1.0 mM、好ましくは10 nM~0.1 mM、さらに好ましくは100 nM~0.1 mMとすることができるが、所望の効果を奏する限り、この範囲外の量であってもよい。
【0099】
本発明の方法に使用することができる化合物またはその塩は、1または2種類以上の芳香族炭化水素受容体アンタゴニスト、1または2種類以上のTPOまたはTPO受容体アゴニスト、1または2種類以上のROCK阻害剤、および/または1または2種類以上のADAM阻害剤等と組み合わせたキットとすることができる。
【0100】
組み合わせて使用する化合物を添加する(培地に本発明の方法に使用することができる化合物またはその塩と共存させる)タイミングは、所望の効果を奏する限り特に限定されない。組み合わせて使用する化合物は、本発明の方法に使用することができる化合物またはその塩の培地への添加前、添加後、または添加と同時に、培地に添加することができる。巨核球より未分化な細胞において、癌遺伝子、ポリコーム遺伝子、およびアポトーシス抑制遺伝子からなる群より選択される遺伝子の少なくとも1つを強制発現させて不死化巨核球細胞を作製し、その後強制発現を解除して不死化巨核球細胞の多核化を進める場合には、強制発現の解除後(解除と同時を含む)に、培地に添加することが好ましい。
【0101】
上記強制発現の期間は特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。なお、強制発現後に、細胞を継代培養してもよく、最後の継代から強制発現を解除する日までの期間も特に限定されないが、例えば、1日間、2日間または3日間以上としてもよい。
【0102】
上記強制発現の解除後に本発明の方法に使用することができる化合物またはその塩を培地に加える場合、強制発現解除後本発明の方法に使用することができる化合物またはその塩を培地に加えるまでの期間は特に限定されないが、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、または6日以内に培養を開始してもよい。本発明の方法に使用することができる化合物またはその塩の存在下で細胞を培養する期間も特に限定されない。通常、本発明の方法に使用することができる化合物またはその塩を培地に添加して1日目頃から徐々に機能的な血小板が放出されるようになり、数は培養日数に伴って増えていく。本発明の方法に使用することができる化合物またはその塩の存在下で細胞を培養する期間は、例えば5~10日間であるが、培養日数はそれより短くても長くてもよい。本発明の方法に使用することができる化合物またはその塩は、培養期間中、1回以上追加で培地に添加してもよい。
【0103】
細胞の培養条件は、通常の条件とすることができる。例えば、温度は約35℃~約42℃、好ましくは約36℃~約40℃、さらに好ましくは約37℃~約39℃とすることができ、5% CO2および/または20% 02としてもよい。静置培養であっても、振とう培養であってもよい。振とう培養の場合の振とう速度も特に限定されず、例えば、10 rpm~200 rpm、好ましくは30 rpm~150 rpm等とすることができる。
【0104】
巨核球細胞および/またはその前駆細胞を本発明の方法に使用することができる化合物またはその塩と接触させ培養すると、成熟した巨核球細胞が得られ、その細胞質から血小板が産生される。ここで、巨核球細胞が成熟するとは、巨核球細胞が多核化し、血小板を放出できるようになることをいう。
【0105】
巨核球細胞を培養する際の培地は特に限定されず、巨核球細胞から血小板が産生されるのに好適な公知の培地やそれに準ずる培地を適宜使用することができる。例えば、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えばIMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM) 培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM) 培地、Ham's F12培地、RPMI1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium (ライフテクノロジーズ)およびこれらの混合培地が挙げられる。
【0106】
培地は、血清または血漿を含有していてもよく、あるいは無血清でもよい。血清を用いる場合は、ウシ胎児血清(FBS)、ヒト血清を使用することができる。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、セレン、脂肪酸、微量元素、2-メルカプトエタノール、チオールグリセロール、モノチオグリセロール(MTG)、脂質、アミノ酸(例えばL-グルタミン)、アスコルビン酸、ヘパリン、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、サイトカインなどの1つ以上の物質も含有し得る。サイトカインとは、血球系分化を促進するタンパク質であり、例えば、VEGF、TPO、TPO受容体アゴニスト、SCF、ITS(インスリン-トランスフェリン-セレナイト)サプリメント、ADAM阻害剤などが例示される。
【0107】
上記血小板産生促進剤および血小板の製造方法について説明した、薬剤および使用量、それらの培地への添加のタイミング、血小板前駆細胞、その培養方法および培養条件などは、その他の本発明の態様(剤、使用、方法など)にも同様に適用することができる。
【0108】
本明細書において引用されるすべての特許文献および非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
【実施例0109】
本発明は、更に以下の参考例、製造例および実施例によって詳しく説明されるが、これらは本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
本明細書において、以下の略語を用いることがある。
【0110】

【0111】
以下の参考例、製造例および実施例中の「室温」は、通常、約10℃~約35℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
1HNMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)はフーリエ変換型NMR(Bruker AVANCE III 400(400MHz)およびBruker AVANCE III HD(500MHz)の何れか)で測定した。
MS(マススペクトル)は、LC/MS(ACQUITY UPLC H-Class)により測定した。イオン化法としては、ESI法を用い、データは実測値(found)を記載した。通常、分子イオンピーク ([M+H]+、[M-H]- など) が観測される。塩の場合は、通常、フリー体の分子イオンピークもしくはフラグメントイオンピークが観測される。
シリカゲルカラムクロマ卜グラフィーにおいて、塩基性と記載した場合は、アミノプロピルシラン結合シリカゲルを用いた。
化合物の絶対配置は、公知のX線結晶構造解析法(例えば大場茂および矢野重信著、「化学者のための基礎講座12 X線結晶構造解析」(第1版、1999年))により決定、または史不斉エポキシ化の経験則(Waldemar Adam, Rainer T. Fell, Chantu R. Saha-Moller and Cong-Gui Zhao : Tetrahedron: Asymmetry 1998, 9, 397-401. Yuanming Zhu, Yong Tu, Hongwu Yu, Yian Shi :Tetrahedron Lett. 1988, 29, 2437-2440)から推定した。
【0112】
[参考例]
参考例1
(E)-N-[2-(2-ブロモフェニル)エチル]-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エンアミドの製造
(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エン酸(25.0 mg)、2-ブロモフェネチルアミン(19.8 μl)のDCM(2 ml)溶液に、DIPEA(40.2 μl)、COMU(59.1 mg)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(28 mg)を得た。
【0113】
参考例2
2-(2-アミノエチル)-N-エチルアニリン・二塩酸塩の製造
tert-ブチル N-[2-(2-アミノエチル)フェニル]-N-エチルカルバマート(180 mg)のEtOH(2 ml)に溶液に、4N HCl/AcOEt(1 ml)を加え、50℃で1.5時間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣をAcOEtで分散洗浄し、目的物(170 mg)を得た。
【0114】
参考例3
tert-ブチル N-[2-(2-アミノエチル)フェニル]-N-エチルカルバマートの製造
tert-ブチル N-[2-(2-アジドエチル)フェニル]-N-エチルカルバマート(300 mg)のEtOH(3 ml)溶液に,10%Pd/C(50 mg)を加え、水素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。固形物をセライトろ過し、ろ液を濃縮し、目的物(208 mg)を得た。
【0115】
参考例4
tert-ブチル N-[2-(2-アジドエチル)フェニル]-N-エチルカルバマートの製造
tert-ブチル N-[2-(2-アジドエチル)フェニル]カルバマート(1.0 g)のDMF(3 ml)溶液に、NaH(0.18 g)、ヨードエタン(0.37 ml)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液に水を加えAcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(940 mg)を得た。
【0116】
参考例6
2-(3-エトキシチオフェン-2-イル)エタンアミン・塩酸塩の製造
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(14.7 mg)のDCM(2ml)溶液に、窒素雰囲気下、0℃にてジエチルシラン(310 μl)、2-(3-エトキシチオフェン-2-イル)アセトニトリル(160 mg)のDCM(1ml)溶液を加え、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮し,残渣に4N HCl/AcOEt(718 μl)を加えた。析出した固体をろ取し、目的物(38 mg)を得た。
【0117】
参考例7
2-(3-エトキシチオフェン-2-イル)アセトニトリルの製造
KOtBu(524 mg)のDME(4ml)懸濁液に、窒素雰囲気下、-50℃にてTosMIC(502 mg)のDME(3 ml)溶液を滴下後,3-エトキシチオフェン-2-カルバルデヒド(365 mg)のDME(3 ml)溶液を滴下し、1時間撹拌した。室温にし、MeOH(10 ml)を加え、加熱還流下にて1時間撹拌した。反応液に水を加えAcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(162 mg)を得た。
【0118】
参考例8
(E)-N-[2-(2-ブロモ-5-フルオロフェニル)エチル]-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エンアミドの製造
(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エン酸(25.0 mg)、2-ブロモ-5-フルオロフェネチルアミン(30.1 mg)のDCM(2 ml)溶液に、DIPEA(40.2 μl)、HATU(52.5 mg)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(43 mg)を得た。
【0119】
参考例13
2-(2-ピリミジン-2-イルフェニル)エタンアミン・塩酸塩の製造
tert-ブチル N-[2-(2-ブロモフェニル)エチル]カルバマート(200 mg)のトルエン(4 ml)溶液にアルゴン雰囲気下、2-トリブチルスタンニルピリミジン(232 μl)、Pd(PPh3)4(77.0 mg)を加え、加熱還流で終夜撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製した。精製物のEtOH(1 ml)溶液に、4N HCl/AcOEt(0.5 ml)を加え50℃で1.5時間撹拌した。反応液を濃縮し、目的物(76.0 mg)を得た。
【0120】
参考例14
(E)-N-[2-(3-ブロモチオフェン-2-イル)エチル]-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エンアミドの製造
LAH(0.084 g)のTHF(4 ml)懸濁液に0℃、窒素雰囲気下、3-ブロモ-2-[(E)-2-ニトロエテニル]チオフェン(400 mg)のTHF(3 ml)溶液を滴下し、室温で2時間撹拌した。水(0.15 ml)、15% NaOH水溶液(0.15 ml)、水(0.45 ml)を加え、セライトろ過し、ろ液を濃縮した。残渣のDCM(1 ml)溶液に、(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エン酸(40.0 mg)、DIPEA(0.048 ml)、HATU(91.0 mg)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(0.032 g)を得た。
【0121】
参考例15
2-(3-チオフェン-2-イルチオフェン-2-イル)エタンアミン・塩酸塩の製造
tert-ブチル N-[2-(3-ブロモチオフェン-2-イル)エチル]カルバマート(57.0 mg)、2-チオフェンボロン酸(40.5 mg)、PdCl2(dppf)DCM(7.6 mg)、K3PO4(79.0 mg)、1,4-ジオキサン/水(4/1) (1 ml)の混合物を窒素雰囲気下、90℃で2時間撹拌した。反応液をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製した。精製物のEtOH(0.5 ml)溶液に4N HCl/AcOEt(0.5 ml)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を濃縮し、目的物(38.2 mg)を得た。
【0122】
参考例19
2-(2-ピリミジン-4-イルフェニル)エタンアミン・塩酸塩の製造
tert-ブチル N-[2-[2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]エチル]カルバマート(150 mg)、4-クロロピリミジン塩酸塩(98.0 mg)、PdCl2(dppf)DCM(35.3 mg)、K3PO4(183 mg)、DME/水(4/1) (2 ml)の混合物を窒素雰囲気下、加熱還流で終夜撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製した。精製物のEtOH(1 ml)溶液に、4N HCl/AcOEt(0.5 ml)を加え50℃で1.5時間撹拌した。反応液を濃縮し、目的物(55.0 mg)を得た。
【0123】
参考例20
(E)-3-(7-メトキシ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-3-イル)プロプ-2-エン酸の製造
7-メトキシ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン(420 mg)のAcOH(3 ml)溶液に、ヘキサメチレンテトラミン(265 mg)を加え100℃で6時間撹拌した。反応液に飽和NaHCO3水溶液を加えAcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をDCM(3 ml)に懸濁し、DIBOC(439 μl)、DMAP(23.1 mg)を加え30分撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製した。
ジエチルホスホノ酢酸エチル(113 μl)のTHF(3 ml)溶液に、NaH(22.7 mg)を加え30分撹拌後、さきの精製物(104 mg)のTHF(2 ml)溶液を滴下し、室温で1時間撹拌した。反応液に水を加えAcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製した。
精製物(104 mg)のTHF-MeOH-水(1:1:1) (6 ml)溶液に5N NaOH水溶液(240 μl)を加え加熱還流で終夜撹拌した。濃縮後、残渣に1N HCl水溶液を加え中性にし、固形物をろ取して、目的物(48.0 mg)を得た。
【0124】
参考例22
(E)-3-(4-メトキシインドル-1-イル)プロプ-2-エン酸の製造
4-メトキシインドール(300 mg)のDMF(3 ml)溶液にCs2CO3(996 mg)、プロピオル酸エチル(248 μl)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に水を加えAcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製した。精製物のTHF-tert-ブタノール-水(1:1:0.5) (9 ml)溶液に、5N NaOH水溶液(636 μl)を加え加熱還流にて3時間撹拌した。濃縮後、残渣に1N HCl水溶液を加え、固形物をろ取して、目的物(212 mg)を得た。
【0125】
参考例23
(E)-3-(8-メトキシイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)プロプ-2-エン酸の製造
ジエチルホスホノ酢酸エチル(378 μl)のTHF(5 ml)溶液に、NaH(76.0 mg)を加え1時間撹拌後、8-メトキシイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-カルバルデヒド(280 mg)のTHF(10 ml)溶液を滴下し、室温で1時間撹拌した。反応液に水を加えAcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をIPEで洗浄した。精製物のTHF-MeOH-水(1:1:1) (6 ml)溶液に5N NaOH水溶液(804 μl)を加え加熱還流で終夜撹拌した。濃縮後、残渣に5N HCl水溶液を加え弱酸性にし、固形物をろ取して、目的物(212 mg)を得た。
【0126】
参考例26
2-[2-(5-フルオロピリミジン-2-イル)フェニル]エタンアミン塩酸塩の製造
tert-ブチル N-[2-[2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]エチル]カルバマート(222 mg)、2-クロロ-5-フルオロピリミジン(118 μl)、Pd(tBu3P)2(16.3 mg)、K3PO4(271 mg)、1,4-ジオキサン/水(4/1) (2.5 ml)の混合物を窒素雰囲気下、90℃で7時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製した。精製物のEtOH(1 ml)溶液に、4N HCl/AcOEt(0.5 ml)を加え50℃で1.5時間撹拌した。反応液を濃縮し、目的物 (128 mg)を得た。
【0127】
上記参考例1~4、6~8、13~15、19、20、22、23および26と同様にして、参考例5、9~12、16~18、21、24、25、27および28の化合物をそれぞれ製造した。参考例1~28の化合物の構造式および物性データを表1-1~表1-5にそれぞれ示す。
【0128】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0129】
[製造例]
製造例10
(E)-N-[2-[2-(シクロプロピルメトキシ)フェニル]エチル]-3-(7-メトキシ-1-メチルインドル-3-イル)-N-メチルプロプ-2-エンアミドの製造
(E)-N-[2-[2-(シクロプロピルメトキシ)フェニル]エチル]-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)-N-メチルプロプ-2-エンアミド(25.0 mg)、DMF(1 ml)溶液に、ヨードメタン(5.80 μl)、Cs2CO3(40.3 mg)を加え、室温で5時間撹拌した。反応液に水を加え、AcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(23.0 mg)を得た。
【0130】
製造例17
(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)-N-[2-(2-ピリミジン-2-イルフェニル)エチル]プロプ-2-エンアミドの製造
(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エン酸(30.0 mg)、2-(2-ピリミジン-2-イルフェニル)エタンアミン塩酸塩(71.6 mg)のDCM(3 ml)溶液に、DIPEA(96.0 μl)、COMU(71.0 mg)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に飽和NaHCO3水溶液を加え、AcOEtで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(40 mg)を得た。
【0131】
製造例19
(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)-N-[2-(2-チオフェン-2-イルフェニル)エチル]プロプ-2-エンアミドの製造
(E)-N-[2-(2-ブロモフェニル)エチル]-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エンアミド(30.0 mg)、2-チオフェンボロン酸(12.5 mg)、PdCl2(dppf)DCM(3.1 mg)、K3PO4(31.9 mg)、1,4-ジオキサン/水(4/1) (1 ml)の混合物を窒素雰囲気下、90℃で6時間撹拌した。反応液をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(24.7 mg)を得た。
【0132】
製造例24
(E)-3-(1-アセチル-7-メトキシインドル-3-イル)-N-[2-(2-フェニルフェニル)エチル]プロプ-2-エンアミドの製造
(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)-N-[2-(2-フェニルフェニル)エチル]プロプ-2-エンアミド(25.0 mg)のDCE(0.6 ml)溶液に、TEA(0.050 ml)、DMAP(7.2 mg)、無水酢酸(0.011 ml)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製した。精製物のDCE(0.6 ml)溶液に、TEA(0.050 ml)、DMAP(3.0 mg)、無水酢酸(0.011 ml)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(20.2 mg)を得た。
【0133】
製造例25
(E)-3-(1-ベンゾイル-7-メトキシインドル-3-イル)-N-[2-(2-フェニルフェニル)エチル]プロプ-2-エンアミドの製造
(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)-N-[2-(2-フェニルフェニル)エチル]プロプ-2-エンアミド(19.7 mg)のDCE(0.6 ml)溶液に、TEA(0.039 ml)、DMAP(5.7 mg)、塩化ベンゾイル(0.011 ml)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(22.2 mg)を得た。
【0134】
製造例29
(E)-N-[2-(2-エトキシピリジン-3-イル)エチル]-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エンアミドの製造
2-(2-エトキシピリジン-3-イル)アセトニトリル(140 mg)、NaBH4(140 mg)、THF(3 ml)の混合物に0℃でTFA(0.28 ml)を加え、室温で1時間撹拌した。水、飽和NaHCO3水溶液を加え、AcOEtで抽出し、有機層を濃縮した。残渣のDCM(1 ml)溶液に、(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エン酸(30.0 mg)、DIPEA(0.036 ml)、HATU(68.3 mg)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(10.8 mg)を得た。
【0135】
製造例45
(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)-N-[2-(3-ピリミジン-2-イルチオフェン-2-イル)エチル]プロプ-2-エンアミドの製造
2-(3-ピリミジン-2-イルチオフェン-2-イル)エタンアミン塩酸塩(16.2 mg)、DCM(0.6 ml)の混合液に、DIPEA(82.0 μl)、(E)-3-(7-メトキシ-1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エン酸(15.0 mg)、HATU(33.1 mg)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt)で精製し、目的物(11.8 mg)を得た。
【0136】
製造例47
(E)-3-(1H-インドル-3-イル)-N-[2-(2-ピリミジン-2-イルフェニル)エチル]プロプ-2-エンアミドの製造
2-(2-ピリミジン-2-イルフェニル)エタンアミン塩酸塩(45.0 mg)、DCM(0.6 ml)の混合液に、DIPEA(128 μl)、(E)-3-(1H-インドル-3-イル)プロプ-2-エン酸(27.5 mg)、HATU(72.6 mg)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液をカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt/MeOH)で精製し、目的物(36.1 mg)を得た。
【0137】
上記製造例10、17、19、24、25、29、45および47と同様にして、製造例1~9、11~16、18、20~23、26~28、30~44、46および48~56の化合物をそれぞれ製造した。製造例1~56の化合物の構造式および物性データを表2-1~表2-13にそれぞれ示す。
【0138】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【0139】
[実施例]
実施例1(血小板産生:振とう培養)
WO 2016/204256に記載の方法で得た不死化巨核球細胞株を、D-PBS(-)で2度洗浄し、ドキシサイクリンを含まない培地中で培養することで強制発現を解除した(遺伝子発現OFF培養)。培養は、ポリカーボネート製三角フラスコ125 mL(Corning #431143)に播種密度1 × 105 cells/mL、25 mL/Flaskで播種し、次の培地中で100 rpmで振とう培養した。培養条件は、37℃、5% CO2とした。
培地は、IMDMを基本培地として、以下の成分を加えた(濃度は終濃度)。
FBS 15%
L-グルタミン 2 mM
ITS 100倍希釈
MTG 450 μM
アスコルビン酸 50 μg/mL
SCF 50 ng/mL
TA-316 0.1 μg/mL
ADAM阻害剤 15 μM
ROCK阻害剤 0.5 μM
細胞播種と同時に芳香族炭化水素受容体阻害剤(化合物A5、終濃度0.1 μM)またはDMSO(コントロール)を添加して培養を開始した。培養後3日目に本発明の方法に使用することができる化合物(製造例1~製造例56、終濃度10 μM)またはDMSO(コントロール)を添加し,計6日間培養した後、血小板の数を測定した。測定方法は以下のとおりである。コントロールについても同様の操作を行った。
遺伝子発現OFF培養6日後に培養上清の一部を回収し、以下の抗体およびFlow-Count Fluorospheres(Beckman Coulter #7547053)と懸濁して染色を行った。
抗CD41抗体 APC標識(BioLegend #303710)
抗CD42a抗体 eFluor 450標識 (eBioscience #48-0428-42)
抗CD42b抗体 PE標識(BioLegend #303906)

染色反応30分後に日本BD社FACSVerseを用いて血小板数(CD41,CD42a,CD42b陽性細胞)をFlow-Count Fluorospheresを用いて算出した。血小板数はコントロールに対する比率を記載した。
表3に細胞播種と同時にDMSOを添加して培養した結果を、表4に細胞播種と同時に芳香族炭化水素受容体阻害剤を添加して培養した結果を示した。
+、++はコントロールと比較して、各々1.5倍以上6.5倍未満、6.5倍以上血小板産生量が増加したことを示す。
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】