(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188767
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】タンパク質を利用した畜肉改良剤、並びにこれを用いた品質改善方法及び畜肉加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20221214BHJP
A23L 13/70 20160101ALI20221214BHJP
A23J 3/04 20060101ALI20221214BHJP
A23J 3/12 20060101ALI20221214BHJP
A23J 3/08 20060101ALI20221214BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20221214BHJP
A23J 3/18 20060101ALI20221214BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20221214BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20221214BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20221214BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20221214BHJP
A23L 13/40 20160101ALI20221214BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20221214BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20221214BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20221214BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23L13/70
A23J3/04 501
A23J3/12
A23J3/08
A23J3/16
A23J3/18
A23J3/14
A23J3/04
A23L15/00 B
A23L17/00 A
A23L17/00 D
A23L27/10 H
A23L13/40
A23L27/00 Z
A23L29/00
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093679
(22)【出願日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2021096685
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391004126
【氏名又は名称】株式会社キティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 和将
(72)【発明者】
【氏名】朝木 宏之
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】本発明は、畜肉加工品に使用した際に歩留まりを改善し、良好な畜肉の結着性を発揮し、タンパク質由来の特有の臭みや呈味を改善するタンパク質を配合した畜肉改良剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物b)酵母、及びc)アルカリ剤を含む畜肉改良剤に関する。本発明の畜肉改良剤は、d-1)アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、又はこれらの混合物、及び/又は、d-2)果物由来の果汁、果物由来の酢、又はこれらの混合物を更に含むことができる。本発明は、前記畜肉改良剤を使用した畜肉の結着性、臭気及び呈味を改善する方法、並びに結着性、臭気及び呈味の改善された畜肉の製造方法を包含する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、
b)酵母、及び
c)アルカリ剤
を含む、畜肉改良剤。
【請求項2】
a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、
b)酵母、
c)アルカリ剤、及び
d-1)アスコルビン酸又はその塩
を含む、畜肉改良剤。
【請求項3】
a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、
b)酵母、
c)アルカリ剤、及び
d-2)果物由来の果汁、果物由来の酢、又はこれらの混合物
を含む、畜肉改良剤。
【請求項4】
a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、
b)酵母、
c)アルカリ剤、
d-1)アスコルビン酸又はその塩、及び
d-2)果物由来の果汁、果物由来の酢、又はこれらの混合物
を含む、畜肉改良剤。
【請求項5】
前記動物性タンパク質が、血漿タンパク質、卵白タンパク質、魚類由来のタンパク質、又は乳タンパク質であり、前記植物性タンパク質が、豆類由来又は穀類由来のタンパク質である、請求項1~4の何れか1項に記載の畜肉改良剤。
【請求項6】
前記血漿タンパク質がブタ由来血漿タンパク質、ウシ由来血漿タンパク質、トリ由来血漿タンパク質、又はこれらの混合物である、請求項5に記載の畜肉改良剤。
【請求項7】
前記豆類由来のタンパク質が、エンドウ豆、大豆又はソラマメ由来のタンパク質であり、前記穀類由来のタンパク質が、米又は小麦由来のタンパク質である、請求項5に記載の畜肉改良剤。
【請求項8】
前記酵母がサッカロミセス・セレビシエである、請求項1~4の何れか1項に記載の畜肉改良剤。
【請求項9】
前記アルカリ剤が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択されるものである、請求項1~4の何れか1項に記載の畜肉改良剤。
【請求項10】
前記アスコルビン酸又はその塩は、アスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムである、請求項2又は4に記載の畜肉改良剤。
【請求項11】
前記果物由来の果汁がぶどう果汁、りんご果汁又はこれらの混合物から選択されるものであり、果物従来の酢がぶどう酢、りんご酢又はこれらの混合物から選択されるものである、請求項3又は4に記載の畜肉改良剤。
【請求項12】
(1)請求項1~4の何れか1項に記載の畜肉改良剤を提供する工程と、
(2)工程(1)で得た前記畜肉改良剤で畜肉を処理する工程と
を含む、畜肉の結着性、臭気及び呈味を改善する方法。
【請求項13】
(1)請求項1~4の何れか1項に記載の畜肉改良剤を提供する工程と、
(2)工程(1)で得た前記畜肉改良剤で畜肉を処理する工程と
を含む、結着性、臭気及び呈味の改善された畜肉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉改良剤、当該畜肉改良剤を使用した畜肉加工品の品質改善方法及び畜肉加工品の製造方法に関する。特に、本発明は、動物性又は植物性タンパク質、酵母及びアルカリ剤を少なくとも含む畜肉改良剤と、当該畜肉改良剤を用いた畜肉加工品の結着性、臭気及び呈味の改善方法、及び当該畜肉改良剤を用いた畜肉加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブタ、ウシ、トリ等の畜肉を使用した加工品、例えば畜肉の挽肉などを用いたソーセージ、ハンバーグ等を調製する際、加工品の品質を改善するために、畜肉片に結着剤、臭気・呈味改良剤などを添加することが行われている。
【0003】
例えば、動物の血液から採取した血漿タンパク質及びアルカリ剤を含む結着剤を使用することが、特開昭60-210963号公報(特許文献1)、特開昭61-265070号公報(特許文献2)などに開示されている。血漿タンパク質は血清とフィブリノーゲンを含むため、極めて凝固しやすく、そのため加熱時の内部指標温度である63℃よりも低い温度で凝固することから、ソーセージやハンバーグなどの畜肉加工品の品質(歩留まり、結着性)の改良剤として利用されている。
【0004】
別の例として、肉製品の軟らかさと口当たりを改良する新規のマリネー、及び、一口サイズの、任意にマリネーした肉片が、特表2007-517521号公報(特許文献3)に開示されている。この文献には、動物性タンパク質又は植物性タンパク質を用いたミートマリネーと、当該脂肪とタンパク質とを含んだミートマリネーが開示されている。このミートマリネーは、前記脂肪がマリネーの約0.1~25重量パーセント(w%)の量で存在し、且つ前記タンパク質がマリネーの約0.05~10重量パーセント(w%)の量で存在する。更に、このミートマリネーは、料理用クリームなどの脂肪含有及びタンパク質含有乳製品を含んでいてもよいことが開示されている。
【0005】
植物性タンパク質を畜肉改良剤として使用することも知られている。例えば、植物性タンパク質は、卵白や祖ゼラチンと同様にハムやソーセージなどの畜肉加工品の結着剤として使用されている。畜肉加工において使用される植物性タンパク質は、畜肉の加熱温度でもゲル化し、製品に適した弾力をもたらすことができる。畜肉加工向けの植物性タンパク質は多様な植物から製造されており、大豆、エンドウなどの豆類を原料とした製品、小麦、米などの穀類を原料とした製品がある。
【0006】
しかし、植物性タンパク質は、動物性タンパク質と同様に原料由来の特有の臭みや呈味を有しており、それらを配合した畜肉加工品は食感が改善されているものの、呈味や風味について改善が必要であった。
【0007】
例えば、特許第5284892号(特許文献4)には大豆タンパク質を含む食肉使用食品にソーマチンを添加することを特徴とする食肉の呈味感の改善方法が開示されている。しかしながら、ソーマチンなどの甘味料は畜肉加工品に不必要な呈味を与える可能性がある。更に、植物性タンパク質を利用した畜肉加工品の特有の風味及び呈味は、いまだ十分に改善できていなかった。
【0008】
以上のように、血漿タンパク質などを含めた動物性タンパク質、又は植物性タンパク質を配合した畜肉加工品には特有の臭みが生じてしまうという問題があり、動物性タンパク質、又は植物性タンパク質を利用した畜肉加工品の改良剤および品質改良方法には改善の余地があった。また、動物性タンパク質、又は植物性タンパク質を含む改良剤を使用した畜肉加工品は、特有の呈味や風味が生じるという課題があり、この課題も十分解決できていなかった。
【0009】
また、畜肉の品質を改善する添加剤として、酵素を含む改質剤も開示されている。例えば、特開2001-000148号公報(特許文献5)には、軟らかく、ジューシー感のある畜肉加工食品を歩留まりよく製造することが可能な畜肉用品質改良剤及びこれを用いた畜肉加工食品の製造法及び得られる畜肉加工食品が開示されている。この文献には、膨張剤と食物繊維及び/又はグルコン酸塩とが有効成分として含有されること、食物繊維がグアーガム酵素分解物、水溶性大豆繊維、難消化性デキストリン及び水溶性ヘミセルロースからなる群から選択される少なくとも1種であることが開示されている。
【0010】
上記開示に加え、畜肉食品の肉食及び獣臭を改善するために、酵母エキスを用いる技術が提案されている(例えば、特開2003-284528号公報(特許文献6)参照)。更に、鳥獣類由来の血漿から製造されるプラズマ製剤又はこの水溶液を用いて、均質で柔らかく、且つ、鮮度と肉色の良い均一に形の整った合成ステーキ肉及びその製造方法が提案されている(例えば、特開2004-166510号公報(特許文献7)参照)。
【0011】
しかしながら、これらの提案では、改良剤や製剤に起因するアルカリ臭・アルカリ味などの好ましくない品質の改善については、何ら記載も示唆もされていない。
【0012】
また、アルカリ剤及び酵母処理物を含む肉類及び魚介類の品質向上剤及びこれを用いた肉類及び魚介類の品質向上方法も開示されている(例えば、特開2016-202067号公報(特許文献8)参照)。ここで、肉類及び魚介類をアルカリ剤で処理すると、肉類及び魚介類とアルカリ剤に起因すると考えられる変色(発色)や好ましくない臭い、いわゆるアルカリ臭・アルカリ味が生じてしまうという問題があった。この文献には、肉類及び魚介類の食感や歩留りを向上させることができ、且つアルカリ臭・アルカリ味の発生を抑制若しくは防止することができることが開示されている。この文献は、酵母処理物がアルカリ臭・アルカリ味の発生を抑制若しくは防止することを開示している。
【0013】
また、肉類及び魚介類をアルカリ剤で処理した場合の、変色(発色)、好ましくない臭い(いわゆるアルカリ臭)又はアルカリ味が生じてしまうという問題があるが、この問題を解決する手段として、糖アルコール、クエン酸三ナトリウム、炭酸アルカリ、及び重炭酸アルカリを添加剤として加えることが提案されている(例えば、特開2006-034236号公報(特許文献9)参照)。
【0014】
しかしながら、これらの提案では、ある程度の効果は得られるものの、アルカリ臭・アルカリ味の抑制という点で、更なる技術が求められている。
【0015】
更に、食品タンパク質結着剤として、食酢と、炭酸塩と、食塩を含有する結着剤が開示されている(例えば、特開2019-140944号公報(特許文献10)参照)。この結着剤は、結着効果に優れ、歩留まりを改善し、安定性が高い結着効果を実現するものである。この文献では、優れた結着性の実現と、歩留まりの向上、及び、適度な歯ごたえ、弾力等を実現できることを開示するが、結着剤に起因する臭気及び呈味を改善することについての開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭60-210963号公報
【特許文献2】特開昭61-265070号公報
【特許文献3】特表2007-517521号公報
【特許文献4】特許第5284892号
【特許文献5】特開2001-000148号公報
【特許文献6】特開2003-284528号公報
【特許文献7】特開2004-166510号公報
【特許文献8】特開2016-202067号公報
【特許文献9】特開2006-034236号公報
【特許文献10】特開2019-140944号公報
【特許文献11】特許第3831850号公報
【特許文献12】特許第3702709号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】R. Yoshinaka, M. Shiraishi and S. Ikeda: Bull. Japan. Soc. Sci.Fish., 38, 511-515 (1972)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
動物性タンパク質又は植物性タンパク質を含む改良剤を使用した畜肉加工品は、これらのタンパク質特有の臭気及び呈味が生じるという課題があり、十分解決できていなかった。
【0019】
即ち、本発明の目的は、動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物を配合した畜肉改良剤をソーセージやハンバーグなどの畜肉加工品に使用した際に歩留まりを改善し、畜肉の結着性を改善し、畜肉及び上記タンパク質由来の特有の臭みや呈味を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1は、畜肉加工品の結着性、並びに臭気及び呈味を改善するための畜肉改良剤である。本発明の一実施形態の畜肉改良剤は、
a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、
b)酵母、及び
c)アルカリ剤
を含む。
【0021】
別の実施形態では、本発明の畜肉改良剤は、
a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、
b)酵母、
c)アルカリ剤、及び
d-1)アスコルビン酸又はその塩
を含む。
【0022】
別の実施形態では、本発明の畜肉改良剤は、
a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、
b)酵母、
c)アルカリ剤、及び
d-2)果物由来の果汁、果物由来の酢、又はこれらの混合物
を含む。
【0023】
別の実施形態では、本発明の畜肉改良剤は、
a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、
b)酵母、
c)アルカリ剤、
d-1)アスコルビン酸、及び
d-2)果物由来の果汁、果物由来の酢、又はこれらの混合物
を含む。
【0024】
本発明の畜肉改良剤では、上記動物性タンパク質が、血漿タンパク質、卵白タンパク質、魚類由来のタンパク質、又は乳タンパク質であり、上記植物性タンパク質が、豆類由来又は穀類由来のタンパク質であることが好ましい。
【0025】
本発明の畜肉改良剤では、上記血漿タンパク質は、例えば、ブタ由来血漿タンパク質、ウシ由来血漿タンパク質、トリ由来血漿タンパク質、又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0026】
本発明の畜肉改良剤では、上記の豆類由来のタンパク質が、エンドウ豆、大豆又はソラマメ由来のタンパク質であり、上記の穀類由来のタンパク質が、米又は小麦由来のタンパク質であることが好ましい。
【0027】
本発明の畜肉改良剤では、酵母はサッカロミセス・セレビシエであることがより好ましい。
【0028】
本発明の畜肉改良剤では、アルカリ剤は、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択される。
【0029】
本発明の畜肉改良剤では、アスコルビン酸又はその塩は、好ましくは、アスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムであり、より好ましくは、L-アスコルビン酸ナトリウムである。
【0030】
本発明の畜肉改良剤では、果物由来の果汁は、好ましくは、ぶどう果汁、りんご果汁、又はこれらの混合物から選択される。
【0031】
本発明の畜肉改良剤では、果汁由来の酢は、好ましくは、ぶどう酢、りんご酢、又はこれらの混合物から選択される。
【0032】
本発明の第2は、上記の畜肉改良剤を使用する畜肉の結着性、臭気及び呈味を改善する方法である。
【0033】
本発明の方法は、
(1)上記の畜肉改良剤を提供する工程と、
(2)工程(1)で得た前記畜肉改良剤で畜肉を処理する工程と
を含む。
【0034】
本発明の第3は結着性、臭気及び呈味の改善された畜肉の製造方法である。
【0035】
本発明の製造方法は、
(1)上記の畜肉改良剤を提供する工程と、
(2)工程(1)で得た前記畜肉改良剤で畜肉を処理する工程と
を含む。
【発明の効果】
【0036】
本発明の畜肉改良剤は、畜肉を配合した多様な加工食品の肉質の歩留まりを改善し、加工食品の結着性を改善し、畜肉及び動物性タンパク質由来若しくは植物性タンパク質由来の独特の臭気及び呈味を改善することができる。本発明では、好ましくは、血漿タンパク質又は穀類由来のタンパク質の独特の臭気及び呈味を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、多様な畜肉加工品に対して、結着性を含む品質の改良が可能であり、適した呈味を提供でき、動物性タンパク質又は植物性タンパク質、その他の成分に由来する臭気、風味等を改善できる、動物性タンパク質(例えば、卵白タンパク質、魚類由来のタンパク質、又は乳タンパク質など)又は植物性タンパク質(例えば、豆類、穀類などを由来とするタンパク質など)を含む畜肉改良剤を提供する。更に、本発明は、当該畜肉改良剤を使用した畜肉加工品の改良方法、並びに、当該畜肉改良剤を使用した畜肉の製造方法を提供する。本発明において、呈味は、食品又は加工品の甘味、塩味、酸味、苦味、うま味などの味覚をいう。また、本発明において、風味は、食品又は加工品の香り及び味をいう。
【0038】
以下に本発明を具体的に説明する。
【0039】
1. 畜肉改良剤
本発明の第1は、畜肉改良剤である。本発明の第1の実施形態では、畜肉改良剤は、a)動物性タンパク質、植物性タンパク質又はこれらの混合物、b)酵母、及びc)アルカリ剤を少なくとも含む。本発明の一実施形態では、畜肉改良剤は溶媒を含むことができ、溶液の形態とすることができる。溶媒は水であることが好ましい。別の実施形態では、本発明の畜肉改良剤は粉末の形態である。
【0040】
本発明者らは、畜肉を使用したソーセージやハンバーグなどの加工品を作る際に、畜肉に、動物性タンパク質、植物性タンパク質又はこれらの混合物、酵母、及びアルカリ剤を添加することで、上記タンパク質に起因する結着作用を阻害することなく、畜肉及び動物性タンパク質、植物性タンパク質又はこれらの混合物に特有の臭気及び呈味を改善できることを見出した。
【0041】
a)タンパク質(動物性タンパク質及び/又は植物性タンパク質)
本発明の畜肉改良剤は、タンパク質を含む。本発明では、畜肉改良剤は、特に動物性タンパク質、植物性タンパク質又はこれらの混合物(本明細書において、動物性タンパク質及び/又は植物性タンパク質、或いは単にタンパク質とも称する)を含む。
【0042】
(I)動物性タンパク質
本発明では、動物性タンパク質は、血漿タンパク質、コラーゲン、卵白タンパク質、魚類由来のタンパク質、乳タンパク質、その他の動物性タンパク質などである。本発明では、動物性タンパク質は、血漿タンパク質であることが特に好ましい。
【0043】
血漿タンパク質は、食材に添加することが可能なものであれば特に限定されず、畜肉改良剤を添加する食材により適宜選択すればよい。例えば、食材である畜肉と同種の畜肉由来の血漿タンパク質、食材である畜肉と異なる種の畜肉由来の血漿タンパク質、又はこれらの混合物であってよい。本発明では、食材である畜肉と同種の畜肉由来の血漿タンパク質であることが好ましい。本発明では、血漿タンパク質は、ブタ、ウシ、トリなどの畜肉由来であることがより好ましい。血漿タンパク質は、市販品として入手することができる。あるいは、血漿タンパク質は、当分野で公知の方法により得ることができる。例えば、対象とする畜肉の血液を採取して容器に入れ、抗凝固剤(例えば、フッ化カルシウム、クエン酸ナトリウム、EDTA-二カリウムなどの塩類)で処理し、遠心分離にかけ、上澄み液を分離し、回収することにより得ることができる。
【0044】
コラーゲンは、食材に添加することが可能なものであれば特に限定されず、畜肉改良剤を添加する食材により適宜選択すればよい。コラーゲンは市販品として入手することができる。
【0045】
卵白タンパク質は、食材に添加することが可能なものであれば特に限定されず、畜肉改良剤を添加する食材により適宜選択すればよい。卵白タンパク質としては、鶏卵などの鳥類由来の卵白由来のタンパク質などを例として挙げることができる。卵白タンパク質は市販品として入手することができる。
【0046】
魚類由来のタンパク質は、食材に添加することが可能なものであれば特に限定されず、畜肉改良剤を添加する食材により適宜選択すればよい。魚類由来のタンパク質としては、サケ、マグロ、タイ、アジ、サバなどの魚肉由来のタンパク質などを例として挙げることができる。魚類由来のタンパク質は市販品として入手することができる。
【0047】
乳タンパク質は、食材に添加することが可能なものであれば特に限定されず、畜肉改良剤を添加する食材により適宜選択すればよい。乳タンパク質としては、ウシ、ヤギなどの乳由来のタンパク質などを例として挙げることができる。また、乳タンパク質は、カゼイン、ホエイプロテイン(乳清タンパク質)などの乳成分であってもよい。乳タンパク質は市販品として入手することができる。
【0048】
(II)植物性タンパク質
タンパク質は、植物性タンパク質であってもよい。植物性タンパク質は、食材に添加することが可能なものであれば特に限定されず、畜肉改良剤を添加する食材により適宜選択すればよい。植物タンパク質としては、イネ属植物、コムギ属植物、オオムギ属植物及びカラスムギ属植物等の種子の穀類、大豆、ソラマメ、エンドウマメ、ヒヨコマメ等の豆類などに由来する植物性タンパク質を挙げることができる。本発明の畜肉改良剤では、植物性タンパク質は、米、小麦、エンドウマメ、大豆などの植物由来のタンパク質が好ましい。植物性タンパク質は市販品として入手することができる。
【0049】
本発明の畜肉改良剤における動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物の含有量は、畜肉改良剤の全重量(溶媒を含む)を基準として0.3重量%~8重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%、より好ましくは0.6重量%~5重量%、更により好ましくは0.7重量%~5重量%、さらにより好ましくは、0.7重量%~1.3重量%、最も好ましくは0.8重量%~1.3重量%である。また、溶媒を含まない畜肉改良剤を基準(固形分)にした場合、動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物の含有量は、10重量%~50重量%、好ましくは、15重量%~40重量%である。
【0050】
b)酵母
本発明の畜肉改良剤は酵母を含む。酵母は、本発明の畜肉改良剤の動物性タンパク質、植物性タンパク質又はこれらの混合物と共に使用することで、食材(好ましくは畜肉)の結着性、食材(好ましくは畜肉)及びタンパク質特有の臭気及び呈味、特に動物性及び植物性タンパク質特有の臭気及び呈味を改善することができる。本発明では、酵母はこのような目的を実現できるものであれば特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、酵母は、肉類又は魚介類などの食品、好ましくは畜肉に使用しうるものであれば、特に限定されない。酵母の例としては、乾燥酵母、酵母粉砕物(乾燥酵母粉末等)、酵母エキス(自己消化物、酵素処理物等)、酵母菌体の有機酸抽出物などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
酵母は例えば、以下の菌株から得られるものを挙げることができる。例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ミコトルラ(Mycotorula)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、キャンディダ(Candida)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、ピキア(Pichia)属などの菌株である。具体的な菌株の例としては、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces rouxii、Torulopsis utilis、Torulopsis candida、Mycotorula japonica、Mycotorula lipolytica、Torulaspora delbrueckii、Torulaspora fermentati、Candida sake、Candida tropicalis、Candida utilis、Hansenula anomala、Hansenula suaveolens、Saccharomycopsis fibligera、Saccharomyces lipolytica、Rhodotorula rubra、Pichia farinosaなどが挙げられる。
【0052】
特に、本発明では、酵母は例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)等を好適に用いることができる。より好ましくは、本発明の畜肉改良剤では、酵母は、サッカロミセス・セレビシエを使用することができる。本発明では、酵母は粉末状又は液状の何れの形態であってもよいが、本発明の畜肉改良剤の結着性及び呈味の改善、臭気の抑制又は防止の観点から、乾燥酵母、酵母粉砕物(乾燥酵母粉末等)が好ましい。
【0053】
酵母は、その細胞壁がβ-グルカンやマンナンなどの糖鎖で構成されており、これらの糖鎖は畜肉加工品に使用される食材の水分及び油分を乳化させる。その作用から、タンパク質は、畜肉加工品の結着性を引き出すことが出来る。また、成分こそ特定されていないが、酵母細胞壁は畜肉加工品に使用した場合、畜肉自体又はタンパク質に由来する臭気を低減させ、呈味を改善することができる。また、酵母は、タンパク質及びアルカリ剤と共に使用することで食材の結着性を更に向上させることができる。
【0054】
酵母は、市販品を使用してもよいし、酵母から調製したものを使用してもよい。酵母の種類は、一種類でもよく又は複数種類を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
本発明の畜肉改良剤における酵母の含有量は、畜肉改良剤の全重量(溶媒を含む)を基準として0.3重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、より好ましくは0.6重量~1.3重量%、更により好ましくは0.7重量%~1.3重量%、最も好ましくは0.8重量%~1.3重量%である。また、溶媒を含まない畜肉改良剤を基準(固形分)にした場合、酵母の含有量は、10重量%~50重量%、好ましくは、15重量%~40重量%である。
【0056】
c)アルカリ剤
本発明の畜肉改良剤は、アルカリ剤を含有する。
【0057】
アルカリ剤は、肉類又は魚介類、好ましくは畜肉に使用しうるものであれば特に限定されない。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウムなどを挙げることができる。本発明では、例えば、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが好ましく、炭酸ナトリウムがより好ましい。
【0058】
アルカリ剤は、タンパク質及び酵母と共に使用することで食材の結着性を向上させることができ、畜肉加工品の臭気及びは呈味を改善することができる。
【0059】
本発明の畜肉改良剤におけるアルカリ剤の含有量は、畜肉改良剤の全重量(溶媒を含む)を基準として0.3重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、より好ましくは0.5重量%~1.0重量%、更により好ましくは0.6重量%~1.0重量%、最も好ましくは0.7重量%~1.0重量%である。また、溶媒を含まない畜肉改良剤を基準(固形分)にした場合、アルカリ剤の含有量は、10重量%~50重量%、好ましくは、10重量%~30重量%である。
【0060】
本発明の畜肉改良剤の第2の実施形態では、畜肉改良剤は、a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、b)酵母、c)アルカリ剤、及びd-1)アスコルビン酸又はその塩を少なくとも含む。
【0061】
第2の実施形態の畜肉改良剤において、a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、b)酵母、及びc)アルカリ剤は上述したとおりである。
【0062】
d-1)アスコルビン酸又はその塩
本発明の畜肉改良剤は、アスコルビン酸又はその塩を含む。アスコルビン酸塩としては、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カリウム等を挙げることができる。
【0063】
本発明では、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、又はこれらの混合物を畜肉改良剤に加えることにより、畜肉改良剤の結着性、並びに臭気及び呈味の改善効果を高めることができる。
【0064】
なお、本発明の畜肉改良剤において、アスコルビン酸又はその塩に加えて、アスコルビン酸オキシダーゼを更に含有させることができる。アスコルビン酸又はその塩、及びアスコルビン酸オキシダーゼを組み合わせて食品に添加すると、食品中でデヒドロ-L-アスコルビン酸(DAsA)が生成し、その結果、食材として用いた畜肉の肉質を改善できることが提案されている(特許第3831850号(特許文献11)及び特許第3702709号(特許文献12))。デヒドロ-L-アスコルビン酸(DAsA)の作用は、R. Yoshinaka, M. Shiraishi and S. Ikeda: Bull. Japan. Soc. Sci. Fish., 38, 511-515 (1972)(非特許文献1)に記載されているように、畜肉の保水性及び弾力性の改良を僅かながら示すことである。
【0065】
畜肉改良剤におけるアスコルビン酸又はその塩の含有量は、畜肉改良剤の全重量(溶媒を含む)を基準として0.05重量%~0.5重量%、好ましくは0.1重量%~0.5重量%である。また、溶媒を含まない畜肉改良剤を基準(固形分)にした場合、アスコルビン酸又はその塩の含有量は、1重量%~5重量%、好ましくは、2重量%~4重量%である。
【0066】
本発明の第3の実施形態では、畜肉改良剤は、a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、b)酵母、c)アルカリ剤及びd-2)果物由来の果汁、果物由来の酢、又はこれらの混合物を含む。
【0067】
第3の実施形態の畜肉改良剤において、a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、b)酵母、及びc)アルカリ剤は上述したとおりである。
【0068】
d-2)果物由来の果汁及び果物由来の酢
本発明の畜肉改良剤は、果物由来の果汁、果物由来の酢、又はこれらの混合物(本明細書において、果実由来の果汁及び/又は果実由来の酢とも称する)を含むことができる。本発明の畜肉改良剤に使用される果物由来の果汁は、特に限定されないが、ぶどう、りんご、レモン、パイナップル、キウイ、オレンジ、ザクロなどの果物の果汁、特にりんご果汁、ぶどう果汁などが好ましい。果汁は、果実を直接搾ったもの、濃縮果汁、抽出物などの液体状のものであってよく、或いは、これらを粉末状にしたものでもよい。本発明では、果汁はストレート果汁、2~5倍の濃縮果汁などであることが好ましい。また、ぶどう果汁を発酵させたワイン等を用いることもできる。
【0069】
本発明の畜肉改良剤において、果物由来の酢は、果物由来の食酢のような食酢を包含する。食酢は、果物由来の果実酢が好ましいが、特にこれには限定されず、食品に用いることができる食酢であればよい。食酢は、醸造酢及び合成酢のいずれを用いることができる。醸造酢は特に限定されないが、例えば、りんご酢、ぶどう酢、シェリー酢、バルサミコ酢、ザクロ酢、パイナップル酢等の果実酢、米酢、玄米酢、粕酢、麦芽酢及びはと麦酢等の穀物酢、並びに醸造アルコールを原料に製造されるアルコール酢を挙げることができる。また、合成酢としては、氷酢酸又は酢酸の希釈液に砂糖類、酸味料、調味料、甘味料及び食塩等を加えたもの、或いはそれらに醸造酢を加えたものを挙げることができる。本発明の畜肉改良剤の食酢としては、特に醸造酢を使用することが好ましく、醸造酢のなかでも果実酢を使用することがより好ましい。好ましい果実酢は、りんご酢、ぶどう酢などである。
【0070】
本発明の畜肉改良剤に使用される酢(好ましくは果実酢)としては、溶液などの液体状のものであってよく、粉末状のものであってもよい。液体状の酢としては、特に限定されないが、4~5%程度の酸度(酢酸を初めとする酸成分全体の重量%)を含むものを挙げることができる。なお、より酸度の高い酢を、酸度が当該範囲となるように希釈して使用することもできる。また、粉末状の酢としては、液体状の酢を噴霧乾燥(スプレードライ)、凍結乾燥(フリーズドライ)、真空減圧乾燥又はドラム乾燥法などで粉末化したものを挙げることができる。
【0071】
また、本発明の畜肉改良剤において、果物由来の果汁及び/又は果物由来の酢の含有量は、畜肉改良剤の全重量(溶媒を含む)を基準として0.1重量%~3重量%、好ましくは0.2重量%~1重量%である。また、溶媒を含まない畜肉改良剤を基準(固形分)にした場合、果物由来の果汁及び/又は果物由来の酢の含有量は、2重量%~15重量%、好ましくは、5重量%~10重量%である。
【0072】
本発明の畜肉改良剤では、動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、酵母、及びアルカリ剤に加え、果物由来の果汁及び/又は果物由来の酢を含むことで、畜肉などの食材に対して、特に優れた結着効果を実現し、臭気及び呈味を改善することができる。
【0073】
本発明の第4の実施形態では、畜肉改良剤は、a)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、b)酵母、c)アルカリ剤、d-1)アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、又はこれらの混合物、及びd-2)果物由来の果汁及び/又は果物由来の酢を含む。
【0074】
第4の実施形態における各成分は、上述したとおりである。成分a)、b)、c)、d-1)及びd-2)を含有することで、本発明の畜肉改良剤は、特に優れた結着効果と、臭気及び呈味の改善を実現することができる。
【0075】
本発明において、畜肉改良剤の成分a)、b)、c)、d-1)及びd-2)は、いかなる性状を有していてもよい。具体的には、畜肉改良剤の成分は、固体形態、液体形態(溶液、懸濁液を含む)等のいずれの形態であってよい。
【0076】
<畜肉改良剤の調製方法>
本発明の畜肉改良剤は、上記第1から第4の実施形態に応じた各成分を、水などの溶媒中に溶解し、混合することにより調製することができる。得られた溶液は、特にpHが中性からアルカリ域となるように調整されることが好ましく、更にpHが弱アルカリ域となるように調整されることがより好ましい。本発明の畜肉改良剤のpHの調整には、食品に使用できるpH調整剤を制限なく好適に使用できる。pH調整剤としては、例えば、クエン酸、乳酸及び酒石酸等の有機酸、食品に使用できる各種バッファー剤等を挙げることができる。即ち、本発明の畜肉改良剤は、上記成分a)、b)、c)、d-1)及びd-2)に、クエン酸、乳酸及び酒石酸等の有機酸、各種バッファー剤等を、中性~アルカリ性の水溶液、好ましくは弱アルカリ性(例えばpH7~11)の水溶液とすることができる量添加し、当該範囲のpHの水溶液として調製することができる。本発明の畜肉改良剤は、pHをこの範囲とすることで重曹味のようなアルカリ臭を抑え、食品の味を改善することができる。
【0077】
本発明の畜肉改良剤は、粉末状の上記各成分を使用し、他の成分と混合することで粉末として調製することもできる。また、本発明の畜肉改良剤は、上述のように調製した溶液状の畜肉改良剤を準備し、得られた溶液を噴霧乾燥等により乾燥して粉末として調製することもできる。粉末の畜肉改良剤は、使用に際してそのまま食材に添加することができ、あるいは、粉末の畜肉改良剤を水などに溶解し、水溶液として食材に添加又は浸漬すればよい。
【0078】
本発明の畜肉改良剤を溶液として使用する場合は、畜肉改良剤は、使用する畜肉に対して0.5重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量、より好ましくは3重量~15重量%、更に好ましくは4~10重量%の濃度で使用することができる。本発明の畜肉改良剤を溶液とする場合、溶媒は、好ましくは水である。本発明の畜肉改良剤を粉末として使用する場合は、畜肉改良剤は、使用する畜肉に対して0.05重量%~15重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%の濃度で使用することができる。
【0079】
本発明の畜肉改良剤には、食感を調整する目的で種々の追加の添加剤を含んでいてもよい。例えば、本発明の畜肉改良剤には調味料を混合することができる。調味料は特に限定されない。畜肉に一般的に使用できるものであれば制限なく使用できる。また、調味料の濃度は、本発明の畜肉改良剤を使用した製品の風味などに影響しない範囲であればよい。他の添加剤としては、ジューシーさ、しなやかさ、歯ごたえ、弾力、喉ごしといった食感を調整するために、乳化剤、乳タンパク、ゼラチン及び卵白から選ばれる少なくとも1つの成分を添加することができる。ここで、乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチン等を挙げることができる。その他の添加剤成分としては、ショ糖、ぶどう糖、果糖、各種糖アルコール等の糖類;澱粉や穀粉;ステビア、アスパルテーム等の甘味料;デキストリン;有機酸やその塩、グリシンやDL-アラニン等の制菌作用がある成分;調味及び/又は呈味成分;香料;色素;フェルラ酸、茶抽出物等を挙げることができる。これらの添加剤は、添加剤の使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0080】
これらの追加の添加剤は、上述した各成分a)、b)及びc)、並びに任意選択的にd-1)及び/又はd-2)を混合する際に一緒に混合してもよく、別々に混合してもよい。追加の添加剤の添加量は特に限定されない。添加剤の使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0081】
上述のように構成される本発明の畜肉改良剤は、これを添加する食材に対して結着効果、即ちタンパク質含有食材同士を密着させる効果、並びに、当該食材及びタンパク質特有の臭気を改善し、及び食材の呈味を改善する効果を示す。
【0082】
2. 畜肉改良剤を用いた結着性、臭気及び呈味を改善する方法
本発明の第2は、上記本発明の畜肉改良剤を用いた結着性、臭気及び呈味を改善する方法である。本発明の改善方法は、以下の工程を含む。
【0083】
(1)本発明の畜肉改良剤を提供する工程と、
(2)工程(1)で提供された前記畜肉改良剤で畜肉を処理する工程。
【0084】
<工程(1)>
工程(1)は、本発明の畜肉改良剤を提供する工程である。この工程における畜肉改良剤は、上述した畜肉改良剤の調製方法で説明した手順に従って調製することができる。本工程(1)は、上記の畜肉改良剤の調製手順に従った畜肉改良剤の調製工程を含んだ工程としてもよく、又は上記の畜肉改良剤の調製手順若しくはその他の手順に従って既に調製済みの畜肉改良剤を提供する工程であってもよい。
【0085】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で提供された畜肉改良剤で畜肉を処理する。
畜肉を処理する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、工程(1)の畜肉改良剤が溶液である場合には、この溶液に畜肉を加えて混合する方法、畜肉を前記溶液に浸漬する方法、畜肉に前記溶液を散布又は塗布する方法などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。別の畜肉の処理方法としては、粉末の畜肉改良剤を用いる場合、直接畜肉に添加して混合する方法などがある。
【0086】
より具体的には、本発明において、本発明の畜肉改良剤が溶液状の場合、これを畜肉に添加して、手こね、単純混合、三本ロール機、サイレントカッターなどの切断混合機等により混合又は粉砕・切断混合する方法がある。その他、畜肉を、畜肉改良剤を含む溶液に所定時間(例えば0.5時間~1時間)浸漬して、畜肉に溶液を浸透させる方法などがある。更には、溶液を畜肉に散布又は塗布して、所定時間(例えば0.5時間~1時間)放置するなどの方法がある。また、上記の方法を組み合わせた混合方法により混合することもできる。
【0087】
このように処理することで畜肉に結着効果、並びに臭気及び呈味の改善効果を実現することができる。
【0088】
また、本発明の畜肉改良剤が粉末状の場合、畜肉改良剤を畜肉に直接混合することができる。混合は、例えば、手こね、単純混合、三本ロール機、サイレントカッターなどの切断混合機等による混合又は粉砕・切断混合方法などを挙げることができる。このようにして畜肉に結着効果、並びに臭気及び呈味の改善効果を実現することができる。
【0089】
本発明の畜肉改良剤を添加しうる畜肉の種類は、特に限定されず、食品として利用できる如何なるものも使用することができる。例えば、畜肉としては、牛肉、豚肉、羊肉、馬肉及び鶏肉を挙げることができる。なお、本発明の畜肉改良剤は、上記畜肉以外にも、鹿肉、猪肉、熊肉や鯨肉等の肉類にも使用することができる。また、本発明の畜肉改良剤は、上記の畜肉及び肉類に加えて、魚介肉及び植物などにも使用することができる。魚介肉としては、すけとうだら、ほっけ、あじ、まいわし、きんときだい、いとよりだい、しろぐち、たちうお、はも、ほしざめ、よしきりざめ、れんこだい及びくろかじき等の魚類、いか、えび及びかに等の甲殻類、ほたて等の貝類を挙げることができる。植物としては、イネ属植物、コムギ属植物、オオムギ属植物及びカラスムギ属植物等の種子を挙げることができる。
【0090】
上記の畜肉等を含む食材は、上述した具体的な食材を単独又は複数種類を組み合わせて使用することができる。
【0091】
本発明では、畜肉の食材は、上述した畜肉等の肉類を細かく切断する、あるいは磨り潰した挽肉であることが好ましい。上述した魚介肉用いる場合は、魚介類を細かく切断する或いは磨り潰したすり身であることが好ましい。本発明の畜肉改良剤は、当該挽肉(又はすり身)に対して優れた結着効果を示し、優れた食感の食品を製造することができる。また、結着効果に加え、畜肉食材及びタンパク質特有の臭気及び呈味を改善することができる。
【0092】
特に、本発明の畜肉改良剤は、タンパク質(特に本発明の成分a))に起因する臭気を低減することができる。
【0093】
本発明の畜肉改良剤を食材と混合する場合の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本発明では、畜肉改良剤の添加量(溶媒を含まない)は、食材(畜肉)1kgあたり、0.2%~10%、好ましくは0.5%~10%、より好ましくは1~5%の重量割合である。なお、本発明の畜肉改良剤を溶液として畜肉に添加する場合、前記重量割合となるように、本発明の畜肉改良剤の成分a)、b)、c)及び任意選択的な成分d-1)及び/又はd-2)を含む溶液を調製して、畜肉に添加すればよい。
【0094】
3. 畜肉改良剤を用いた結着性、臭気及び呈味の改善された畜肉の製造方法
本発明の第3は、上記本発明の畜肉改良剤を用いる、結着性、臭気及び呈味の改善された畜肉の製造方法である。本発明の製造方法は、以下の工程を含む。
【0095】
(1)本発明の畜肉改良剤を提供する工程と、
(2)工程(1)で提供された前記畜肉改良剤で畜肉を処理する工程。
【0096】
<工程(1)>
工程(1)は、本発明の畜肉改良剤を提供する工程である。この工程における畜肉改良剤は、上述した畜肉改良剤の調製方法で説明した手順に従って調製することができる。本工程(1)は、上記の畜肉改良剤の調製手順に従った畜肉改良剤の調製工程を含んだ工程としてもよく、又は上記の畜肉改良剤の調製手順若しくはその他の手順に従って既に調製済みの畜肉改良剤を提供する工程であってもよい。
【0097】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で提供された畜肉改良剤で畜肉を処理する。
畜肉を処理する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本工程は、上述した畜肉改良剤を用いた結着性、臭気及び呈味を改善する方法(第2の発明)の工程(2)と同様の手順を用いることができる。
【0098】
本発明の製造方法では、更に追加の工程を含むことができる。
【0099】
追加の工程としては、本発明の効果を損なわない限り制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、冷凍されている肉類又は魚介類を解凍する解凍工程などが挙げられる。別の工程としては、工程(2)の後に得られた処理後の食材を冷凍処理、加熱処理、煮込む、焼く、蒸す等の各種の調理工程などを挙げることができる。これらの工程は、当分野で周知の方法を適用することができる。
【0100】
本発明の畜肉改良剤を利用して製造する食品としては、特に限定されないが、例えば、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、ミートボール、サラミ及びナゲット等の畜肉を利用した食品を挙げることができる。上記の魚介類、植物などを原料とする食品の場合は、蒸しかまぼこ、焼きかまぼこ、ちくわ、はんぺん、つみれ、さつま揚げ及びフィッシュソーセージ等の魚介類を利用した食品、並びに、うどん、そば、パスタ、素麺及び米粉麺等の植物種子を利用した食品を挙げることができる。
【0101】
本発明の畜肉改良剤を用いた畜肉の製造方法によれば、上述した食品の結着性を向上させ、優れた食感を実現するとともに、臭気及び呈味を改善することができる。より具体的には、本発明の畜肉改良剤を用いた畜肉の製造方法によれば、上述した食材同士の結着効果を高めることに起因する、歯ごたえ及び弾力性が高くなるといった、独特の食感を達成することができる。なお、食品の歯ごたえは、食品の硬さで評価することができる。食品の硬さは、例えば、トレーニングを積んだパネラー(例えば5名)によって食材の硬さを評点法官能検査により評価することができる。
【実施例0102】
実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0103】
実施例において使用した原材料及び機器を以下に示す。
【0104】
<食材>
・食用畜肉:豚もも肉(赤身のみ、挽き肉)
【0105】
<各種原料>
・血漿タンパク質
品名:AProPork(APC Europe SLU社製)
【0106】
・米タンパク質
品名:米蛋白(提供元:上海フリーマンジャパン社製)
【0107】
・小麦タンパク質
品名:ニュートラリスW(ロケットジャパン社製)
【0108】
・酵母(粉末)
品名:LBI2190(Lallemand社製)
【0109】
・炭酸ナトリウム
品名:ソーダ灰(ソーダアッシュジャパン社製)
【0110】
・L-アスコルビン酸ナトリウム
品名:L-アスコルビン酸ナトリウム(協和ファーマケミカル社製)
【0111】
・ぶどう果汁
品名:コンコードグレープ透明濃縮果汁66(物産フードマテリアル社製)
【0112】
<機器>
・オーブン
スチームコンベクションオーブン(ニチワ電気社製)
【0113】
以下の実施例において、各数値のパーセンテージは重量%である。
【0114】
本実施例の畜肉改良剤を、以下の表1に示す各実施例の組成、及び表2に示す各比較例の組成に従って調製した。
【0115】
【0116】
【0117】
<畜肉改良剤及び試験品の調製>
上記表に示す各原材料を混合し、各畜肉改良剤(4%水溶液)を調製した。得られた各畜肉改良剤を食用畜肉に添加してハンバーグ試験品を調製した。ハンバーグの調製は以下の手順に従った。
【0118】
1. タンパク質(血漿タンパク質、米タンパク質又は小麦タンパク質)、酵母粉末、アルカリ剤などを含む下記実施例及び比較例の各組成に従って、各原材料を混合し、各畜肉改良剤(4%水溶液)を調製した。
2. 豚もも肉(赤身のみ、挽き肉)に対して、各実施例及び各比較例の4%水溶液を、当該肉の50%液量で添加して20秒間こねた。
3. こねた肉を耐熱容器に一定量詰め、詰めた肉の重量(g)を測定した。
4. 耐熱容器に入れた肉を、温度200℃、湿度90%に予熱したオーブン(スチームコンベクションオーブン)を用いて17分間焼成した。
5. 得られたハンバーグについて重量(g)を測定して、歩留まり測定を行った。更に、得られたハンバーグについて、官能評価を実施した。
【0119】
上記手順に従って得られたハンバーグについて、歩留まり及び官能検査を実施した。
【0120】
<ハンバーグの評価>
(ア)加熱歩留りの評価
ハンバーグの各試験品の焼成前と焼成放冷後の重量(g)(以下、それぞれ加熱前重量及び加熱後重量とも称し、測定単位はグラム(g)である)を測定し、歩留まりを求めた。以下の計算式より歩留まり(%)を求めた。
【0121】
歩留まり(%)=(A/B)×100
A:焼成放冷後のハンバーグの重さ(g)
B:焼成前のハンバーグの重さ(g)
【0122】
ハンバーグ試験品について測定した加熱歩留りとは、焼成処理によって流出した肉の水分や油分等の量を評価している。よって、食品タンパク質結着剤による結着性が高いほど水分や油分などの流出が抑制され、歩留りの数値(%)は維持(100%により近い数値)される。言い換えると、歩留りの数値が高い試作品ほど、ジューシーな食感を有することとなる。
【0123】
(イ)官能検査方法
官能評価は、トレーニングを積んだパネラー5名によってハンバーグのジューシー感、硬さ、弾力、味、香り、及び総合的な評価についての評点法官能検査を行うことで実施した。この評点法官能検査では、特に記載した場合を除き、比較例1のハンバーグ試験品の「ジューシー感」、「硬さ」、「弾力」、「味」、「香り」及び「総合評価」を4.0とした上で、残りの試作品に関するジューシー感」、「硬さ」、「弾力」、「味」、「香り」及び「総合評価」について1(非常に悪い)~4(普通)~7(非常に良い)で評価した。
【0124】
ジューシー感は、パサついた食感を非常に悪い(1点)とし、肉汁を感じる食感を非常によい(7点)とした。硬さは、柔らかい食感を非常に悪い(1点)とし、硬い食感を非常に良い(7点)とした。弾力については、弾力のない食感を非常に悪い(1点)とし、弾力を有する食感を非常に良い(7点)とした。味は、美味しくない、食べにくい食味(食べ物の味)を非常に悪い(1点)とし、美味しい、食べやすい食味を非常によい(7点)とした。香りは、臭みがある風味を非常に悪い(1点)とし、臭みがない風味を非常によい(7点)とした。
【0125】
ハンバーグ試験品について、硬さは、ハンバーグ試験品を変形させるのに必要な力であり、ハンバーグ試験品を形づくっている内部結合力の評価(ハンバーグを食べたときの歯ごたえを示す指標)となりうる。
【0126】
ハンバーグ試験品について、弾力はハンバーグを食べたときの弾力感を示す指標となる。
【0127】
また、本実施例における総合評価とは、ジューシー感、硬さ、弾力、味及び香りを加味した全体の食感がハンバーグとして好ましいかどうかに関する評価であり、ジューシー感、硬さ、弾力、味及び香りについて総合的に評価したものである。
【0128】
(実施例1、比較例1~3)
血漿タンパク質、酵母粉末及びアルカリ剤を含む畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品の調製
【0129】
上記「畜肉改良剤及び試験品の調製」に従い、上記表1の実施例1及び上記表2の比較例1~3の畜肉改良剤(表3に組成を抜粋した)を調製し、ハンバーグ試験品を作製した。
【0130】
【0131】
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例1及び比較例1~3の歩留まりの評価結果を表4に示した。
【0132】
【0133】
表4に示すように、本発明の畜肉改良剤を使用して作製した試験品では、比較例1~3の畜肉改良剤を使用した場合と比較して優れた歩留まりを達成し、優れた食感を有することがわかった。
【0134】
(ii)官能検査の結果
実施例1及び比較例1~3の官能検査の評価結果を表5に示した。
【0135】
【0136】
表5に示したとおり、本発明の畜肉改良剤は、比較例1~3の畜肉改良剤に比較して、各官能評価で優れた結果を示した。
【0137】
特に、本発明の成分a)、b)及びc)を必須成分とする、本発明の畜肉改良剤は、歩留まり及び官能検査で、一般的なハンバーグの製造で用いられる配合物(比較例1~3)と比較して優れた結果を示した。このことから、本発明の畜肉改良剤は、結着剤、臭気及び呈味改良剤として優れた性能を有することが明らかとなった。
【0138】
(実施例2、比較例4)
血漿タンパク質、酵母粉末、アルカリ剤、及び、アスコルビン酸又はその塩を含む畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品の調製
【0139】
上記「畜肉改良剤及び試験品の調製」に従い、アスコルビン酸を更に加えた畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品を調製した。本実施例及び比較例の畜肉改良剤の配合を表1及び表2から抜粋して表6に示した。表6には、参考として実施例1及び比較例1の配合量も記載した。
【0140】
【0141】
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例2及び比較例4の歩留まりの評価結果を表7に示した。表7には、参考として実施例1と比較例1の評価結果も併せて示した。なお、表7に示した実施例1及び比較例1の結果は、実施例2及び比較例4との比較の精度を高めるために、実施例2及び比較例4と同時に再試験した結果を示した。
【0142】
【0143】
表7に示すように、実施例2の畜肉改良剤を使用して作製した試験品では、比較例1及び4の畜肉改良剤を使用した場合と比較して優れた歩留まりを達成し、優れた食感を有することがわかった。また、実施例2の畜肉改良剤を使用して作製した試験品は実施例1と比較しても同程度の優れた結果を示した。
【0144】
(ii)官能検査の結果
実施例2及び比較例4の官能検査の評価結果を表8に示した。表8には、参考として実施例1と比較例1の評価結果も併せて示した。なお、表8に示した実施例1及び比較例1の結果は、実施例2及び比較例4との比較の精度を高めるために、実施例2及び比較例4と同時に再試験した結果を示した。
【0145】
【0146】
表8に示したとおり、本発明の畜肉改良剤は、比較例1及び4の畜肉改良剤に比較して、各官能評価で優れた結果を示した。
【0147】
特に、本発明の成分a)、b)、c)及びd-1)を成分とする本発明の畜肉改良剤は、歩留まり及び官能検査で、一般的なハンバーグの製造で用いられる配合物(比較例1及び4)と比較して優れた結果を示した。このことから、本発明の畜肉改良剤は、結着剤、臭気及び呈味改良剤として優れた性能を有することが明らかとなった。また、成分a)、b)、c)及びd-1)を成分とする、本発明の畜肉改良剤は、成分a)、b)及びc)を成分とする本発明の畜肉改良剤(実施例1)と同等の歩留まりを示し、より優れた官能検査の結果を示した。
【0148】
(実施例3、比較例5)
血漿タンパク質、酵母粉末、アルカリ剤、及び、果物由来の果汁又は果物由来の酢を含む畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品の調製
【0149】
上記「畜肉改良剤及び試験品の調製」に従い、果物由来の果汁を更に加えた畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品を調製した。本実施例及び比較例の畜肉改良剤の配合を表1及び表2から抜粋して表9に示した。表9には、参考として実施例1及び比較例1の配合量も記載した。
【0150】
【0151】
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例3及び比較例5の歩留まりの評価結果を表10に示した。表10には、参考として実施例1と比較例1の評価結果も併せて示した。なお、表10に示した実施例1及び比較例1の結果は、実施例3及び比較例5との比較の精度を高めるために、実施例3及び比較例5と同時に再試験した結果を示した。
【0152】
【0153】
表10に示すように、実施例3の畜肉改良剤を使用して作製した試験品では、比較例1及び5の畜肉改良剤を使用した場合と比較して優れた歩留まりを達成し、優れた食感を有することがわかった。また、実施例3の畜肉改良剤を使用して作製した試験品は実施例1と比較しても同程度の結果を示した。
【0154】
(ii)官能検査の結果
実施例3及び比較例5の官能検査の評価結果を表11に示した。表11には、参考として実施例1と比較例1の評価結果も併せて示した。なお、表11に示した実施例1及び比較例1の結果は、実施例3及び比較例5との比較の精度を高めるために、実施例3及び比較例5と同時に再試験した結果を示した。
【0155】
【0156】
表11に示したとおり、本発明の畜肉改良剤は、比較例1及び5の畜肉改良剤に比較して、各官能評価で優れた結果を示した。また、実施例3の畜肉改良剤を使用して作製した試験品は実施例1と比較しても同程度の官能検査の結果を示した。
【0157】
(実施例4)
血漿タンパク質、酵母粉末、アルカリ剤、アスコルビン酸ナトリウム及び果物由来の果汁又は果物由来の酢を含む畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品の調製
【0158】
上記「畜肉改良剤及び試験品の調製」に従い、血漿タンパク質、酵母粉末、アルカリ剤、アスコルビン酸ナトリウム及び果物由来の果汁を含む畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品を調製した。本実施例4の配合を表1から抜粋して表12に示した。表12には、参考として実施例1及び比較例1~3の配合量も記載した。
【0159】
【0160】
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例4及び比較例1~3の歩留まりの評価結果を表13に示した。表13には、参考として実施例1の評価結果も併せて示した。なお、表13に示した実施例1及び比較例1~3の結果は、実施例4及び比較例1~3との比較の精度を高めるために、実施例4と同時に再試験した結果を示した。
【0161】
【0162】
表13に示すように、実施例4の畜肉改良剤を使用して作製した試験品では、比較例1~3の畜肉改良剤を使用した場合と比較して優れた歩留まりを達成し、優れた食感を有することがわかった。また、実施例4の畜肉改良剤を使用して作製した試験品は実施例1と比較しても優れた結果を示した。
【0163】
(ii)官能検査の結果
実施例4及び比較例1~3の官能検査の評価結果を表14に示した。表14には、参考として実施例1の評価結果も併せて示した。なお、表14に示した実施例1及び比較例1~3の結果は、実施例4との比較の精度を高めるために、実施例4と同時に再試験した結果を示した。
【0164】
【0165】
表14に示したとおり、本発明の畜肉改良剤は、比較例1~3の畜肉改良剤に比較して、各官能評価で優れた結果を示した。また、実施例4の畜肉改良剤を使用して作製した試験品は実施例1と比較しても優れた官能検査の結果を示した。特に、本実施例の畜肉改良剤は、ジューシー感、弾力、香り等で優れた結果を示した。
【0166】
血漿タンパク質、酵母粉末、アルカリ剤、アスコルビン酸ナトリウム及び果物由来の果汁又は果物由来の酢を含む畜肉改良剤は、歩留まり及び官能検査において、最も優れた結果を示した。
【0167】
(実施例5~12、比較例6~7)
血漿タンパク質、酵母粉末及びアルカリ剤を含み、アスコルビン酸ナトリウム、及び果物由来の果汁又は果物由来の酢を任意成分として含む畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品の調製
【0168】
上記「畜肉改良剤及び試験品の調製」に従い、血漿タンパク質、酵母粉末及びアルカリ剤を含み、アスコルビン酸ナトリウム、及び果物由来の果汁又は果物由来の酢を任意成分として含む畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品を調製した。本実施例では、本発明の畜肉改良剤の各成分の含有量を評価した。実施例5~12及び比較例6~7の配合を表1及び表2から抜粋して表15に示した。表15には、参考として実施例1、実施例4及び比較例1の配合量も記載した。
【0169】
【0170】
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例5~12及び比較例6~7の歩留まりの評価結果を表16に示した。表16には、参考として実施例1、実施例4、比較例1の評価結果も併せて示した。ここで、実施例5~9は、比較例1、実施例1及び実施例4と比較し、実施例10~12は、比較例6~7と比較した。なお、表16に示した実施例1、実施例4及び比較例1の結果は、実施例5~9との比較の精度を高めるために、実施例5~9と同時に再試験した結果を示した。また、表16に示した比較例6~7の結果は、実施例10~12と同時に試験した結果である。
【0171】
【0172】
表16に示すように、実施例5~9の畜肉改良剤を使用して作製した試験品では、比較例1の畜肉改良剤を使用した場合と比較して優れた歩留まりを達成し、優れた食感を有することがわかった。また、実施例10~12の畜肉改良剤を使用して作製した試験品は、比較例6~7の畜肉改良剤を使用した場合と比較して同等又は優れた歩留まりを達成した。
【0173】
(ii)官能検査の結果
実施例5~12及び比較例6~7の官能検査の評価結果を表17に示した。表17には、参考として実施例1、実施例4、及び比較例1の評価結果も併せて示した。ここで、実施例5~9の評価は、比較例1の各官能評価の結果を基準にしたが、実施例10~12及び比較例7は、比較例6の各官能評価の結果を4.0とした結果を基準にして評価した。なお、表17に示した実施例1、実施例4及び比較例1の結果は、実施例5~9との比較の精度を高めるために、実施例5~9と同時に再試験した結果を示した。また、表17に示した比較例6~7の結果は、実施例10~12と同時に試験した結果である。
【0174】
【0175】
表17に示したとおり、本発明の畜肉改良剤は、比較例1、比較例6及び比較例7の畜肉改良剤と比較して、各官能評価で優れた結果を示した。また、実施例6の畜肉改良剤を使用して作製した試験品は実施例1及び4と比較しても同等の官能検査の結果を示した。本実施例の畜肉改良剤では、4%水溶液で畜肉に添加する場合、必須成分のa)血漿タンパク質、b)酵母粉末及びc)アルカリ剤の適した含有量は、それぞれ0.7重量%以上が好ましく、0.8重量%がより好ましいと考えられる。加えて、実施例12の畜肉改良剤を使用して作製した試験品は、実施例1及び4と比較しても同等以上の官能検査の結果を示した。本実施例の畜肉改良剤では、4%水溶液で畜肉に添加する場合、必須成分のa)血漿タンパク質、b)酵母粉末及びc)アルカリ剤の適した含有量は、それぞれ5重量%以下が好ましいと考えられる。
【0176】
(実施例13~14、比較例8~9)
植物性タンパク質、酵母粉末及びアルカリ剤を含む畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品の調製
上記「畜肉改良剤及び試験品の調製」に従い、植物性タンパク質、酵母粉末及びアルカリ剤を含む畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品を調製した。本実施例では、本発明の畜肉改良剤における植物性タンパク質の有効性を評価した。実施例13~14及び比較例8~9の配合を表1及び表2から抜粋して表18に示した。表18には、参考として実施例1及び比較例1の配合量も記載した。
【0177】
【0178】
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
実施例13~14及び比較例8~9の歩留まりの評価結果を表19に示した。表19には、参考として実施例1及び比較例1の評価結果も併せて示した。なお、表19に示した実施例1及び比較例1の結果は、実施例13~14及び比較例8~9との比較の精度を高めるために、実施例13~14及び比較例8~9と同時に再試験した結果を示した。
【0179】
【0180】
表19に示すように、実施例13~14の畜肉改良剤を使用して作製した試験品では、比較例1及び比較例8~9の畜肉改良剤を使用した場合と比較して優れた歩留まりを達成し、優れた食感を有することがわかった。また、実施例13及び14の畜肉改良剤を使用して作製した試験品は実施例1と比較しても同程度の結果を示した。
【0181】
(ii)官能検査の結果
実施例13~14及び比較例8~9の官能検査の評価結果を表20に示した。表20には、参考として実施例1及び比較例1の評価結果も併せて示した。なお、表20に示した実施例1及び比較例1の結果は、実施例13~14及び比較例8~9との比較の精度を高めるために、実施例13~14及び比較例8~9と同時に再試験した結果を示した。また、実施例1は、比較例1の各評価結果を4.0とした結果を基準にして評価し、実施例13は、比較例8の各評価結果を4.0とした結果を基準にして評価し、実施例14は、比較例9の各評価結果を4.0とした結果を基準にして評価した。
【0182】
【0183】
表20に示したとおり、本発明の実施例13及び実施例14の畜肉改良剤は、それぞれ、比較例8及び比較例9の畜肉改良剤に比較して、各官能評価で優れた結果を示した。また、実施例12及び13の畜肉改良剤を使用して作製した試験品は実施例1と比較しても同等の官能検査の結果を示した。
【0184】
(比較例10~12)
比較例として、以下の表21に示す組成(表2の抜粋)の畜肉改良剤とこれを使用した畜肉加工品を調製した。表21には、参考として実施例1及び4の配合量も記載した。
【0185】
【0186】
<評価結果>
(i)歩留まりの評価結果
比較例10~12の歩留まりの評価結果を表22に示した。表22には、参考として実施例1及び4の評価結果も併せて示した。なお、表22に示した実施例1及び4の結果は、比較例10~12との比較の精度を高めるために、比較例10~12と同時に再試験した結果を示した。
【0187】
【0188】
表22に示すように、本発明の畜肉改良剤では、必須成分のa)血漿タンパク質、b)酵母粉末及びc)アルカリ剤を含有することで、これらの成分のいずれかが欠けた組成物と比較して有意な歩留まりの向上を示した。また、必須成分のa)血漿タンパク質、b)酵母粉末及びc)アルカリ剤と、任意成分のd-1)アスコルビン酸ナトリウム及びd-2)果物由来の果汁又は果物由来の酢を含む本発明の畜肉改良剤は、更に優れた歩留まりを示した。
【0189】
(ii)官能検査の結果
比較例10~12の官能検査の評価結果を表23に示した。表23には、参考として実施例1及び実施例4の評価結果も併せて示した。なお、本試験においては、比較例10のハンバーグ試験品の「ジューシー感」、「硬さ」、「弾力」、「味」、「香り」及び「総合評価」を4.0とした。また、表23に示した実施例1及び4の結果は、比較例10~12との比較の精度を高めるために、比較例10~12と同時に再試験した結果を示した。
【0190】
【0191】
表23に示した結果から明らかなとおり、本発明の畜肉改良剤は、比較例10~12と比較して優れた結果を示した。
【0192】
本試験の結果及び比較例1~9の上述した結果から、本発明の畜肉改良剤では、必須成分のa)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、b)酵母粉末及びc)アルカリ剤を含有することで、これらの成分のいずれかが欠けた組成物と比較して結着剤、臭気及び呈味改良剤として十分な性能を有することが分かる。また、必須成分のa)動物性タンパク質、植物性タンパク質、又はこれらの混合物、b)酵母粉末及びc)アルカリ剤と、任意成分のd-1)アスコルビン酸ナトリウム及びd-2)果物由来の果汁、果物由来の酢又はこれらの混合物を含む本発明の畜肉改良剤は、更に優れたものとなることが分かった。
【0193】
本発明の畜肉改良剤は、比較例の畜肉改良剤と比較して、優れた結果を得ることができた。本発明の畜肉改良剤は、極めて優れたタンパク質結着性、並びに臭気及び呈味の改善を達成できることがわかった。