(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018878
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220120BHJP
E02D 3/02 20060101ALI20220120BHJP
C09K 17/06 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D3/02 103
C09K17/06 P
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122295
(22)【出願日】2020-07-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】520396500
【氏名又は名称】飯田 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125818
【弁理士】
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】飯田 哲夫
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AA06
2D040AB09
2D040CA03
2D040CA09
2D040CA10
2D040CD07
2D043CA01
2D043EA04
4H026CA02
4H026CA06
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地盤改良の目的を達成しながら、残置時の環境への懸念が少ない地盤改良構造物を地中に形成する地盤改良方法を提供する。
【解決手段】地盤改良方法は、地盤に形成された穴内に、地盤を所望の強度にするための地盤改良構造物を形成する地盤改良方法であって、穴の形成された地盤から採取された現地土と、粒径が均一ではない砂と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合土を用意することと、混合された混合土を穴内で締め固めながら穴に充填することと、混合土に地盤から自然に水を吸収させることにより、混合土を固化して地盤改良構造物にすることとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された穴内に、前記地盤を所望の強度にするための地盤改良構造物を形成する地盤改良方法であって、
前記穴の形成された前記地盤から採取された現地土と、粒径が均一ではない砂と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合土を用意することと、
混合された前記混合土を前記穴内で締め固めながら前記穴に充填することと、
前記混合土に前記地盤から自然に水を吸収させることにより、前記混合土を固化して前記地盤改良構造物にすることと、
を含む、地盤改良方法。
【請求項2】
前記混合土を固化することが、水と前記混合土に含まれる生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、前記混合土内の水を減らすことと、前記反応の熱による水の蒸発により前記混合土内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む前記混合土の粒子間の結合を強くすることとを含む、
請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
充填前の前記混合土が、前記現地土に自然に含まれる水以外に外部から水を添加されない、
請求項1または請求項2に記載の地盤改良方法。
【請求項4】
前記混合土を前記穴に充填することが、前記穴の入口から前記穴の底部に向かう第1の方向に前記混合土を押し付けて前記混合土を締め固めると同時に、前記第1の方向に直交した第2の方向に向けて、前記混合土を前記穴の側面を構成する前記地盤に押し付けて前記混合土を締め固めることを含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の強度は場所に応じて様々である。例えば建造物をある領域の地盤に建設しようとするとき、建造物に必要な強度まで地盤を強化する必要がある。また、例えば地盤の液状化を防ぐために地盤の強化が必要とされる。そこで、従来、特許文献1に開示されているように、地表から地中に向けて穴を掘り、穴にセメント系固化材を含む材料を地中に投入して埋め戻すことにより固い柱状体を地中に形成する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セメント系固化材を使用して柱状体を形成すると、柱状体から六価クロムが地中に流出することによる環境への影響が懸念される。また、例えば建造物を撤去して柱状体が不要となった場合、環境への配慮、次の工事のしやすさといった観点から、セメント系固化材を使用して形成した柱状体を地中から抜いて埋め戻す必要がある。そのため、環境への影響の懸念が少なく、撤去の必要性の少ない柱状体が求められる。
【0005】
本発明の目的のうちの1つは、地盤改良の目的を達成しながら、残置時の環境への懸念が少ない地盤改良構造物を地中に形成する地盤改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の地盤改良方法は、地盤に形成された穴内に、地盤を所望の強度にするための地盤改良構造物を形成する地盤改良方法であって、穴の形成された地盤から採取された現地土と、粒径が均一ではない砂と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合土を用意することと、混合された混合土を穴内で締め固めながら穴に充填することと、混合土に地盤から自然に水を吸収させることにより、混合土を固化して地盤改良構造物にすることとを含む、地盤改良方法である。
【0007】
第1の態様によれば、地盤改良の目的を達成しながら、残置時の環境への懸念が少ない地盤改良構造物を地中に形成することができる。セメント系固化材を含めずに、粉体粘土と生石灰とを含む混合土を使用して地盤改良構造物を形成するので、セメント系固化材を含む場合に比べると地盤改良構造物が固くなりすぎない。そのため、不要になった後に地盤改良構造物を残置しても、後の地盤利用に影響を与えにくい。
【0008】
第2の態様の地盤改良方法は、混合土を固化することが、水と混合土に含まれる生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、混合土内の水を減らすことと、反応の熱による水の蒸発により混合土内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む混合土の粒子間の結合を強くすることとを含む、第1の態様に記載の地盤改良方法である。
【0009】
第2の態様によれば、水と混合土に含まれる生石灰との反応により、粉体粘土を含む混合土の粒子間の結合を強くすることができるので、強固な地盤改良構造物を形成することができる。反応により生じた消石灰は、地盤改良構造物の隙間を埋めて地盤改良構造物を強固にする役割を果たすとともに地盤を安定化することができる。従来は、地盤改良構造物の材料に粘土を含めると地盤改良構造物が弱くなるおそれがあるという理由から粘土の使用が避けられるが、本態様によれば、水を吸収可能な状態の粉体粘土を使用し、さらに生石灰と水との反応により粉体粘土に吸収された水を急速に抜いて、従来とは逆に強固な地盤改良構造物を作成することができる。
【0010】
第3の態様の地盤改良方法は、充填前の混合土が、現地土に自然に含まれる水以外に外部から水を添加されない、第1の態様または第2の態様に記載の地盤改良方法である。
【0011】
第3の態様によれば、過剰な水分が混合土に混じりにくいので、発熱後に固まった地盤改良構造物に水分の抜けた後の空隙を生じにくくすることができ、強固な盤改良構造物を形成することができる。
【0012】
第4の態様の地盤改良方法は、混合土を穴に充填することが、穴の入口から穴の底部に向かう第1の方向に混合土を押し付けて混合土を締め固めると同時に、第1の方向に直交した第2の方向に向けて、混合土を穴の側面を構成する地盤に押し付けて混合土を締め固めることを含む、第1の態様から第3の態様のいずれか1つに記載の地盤改良方法である。
【0013】
第4の態様によれば、第1の方向及び第2の方向における締め固めを確実に行って強固な盤改良構造物を形成することができる。また、第1の方向及び第2の方向における摩擦力の強い、抜けにくい地盤改良構造物を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地盤改良の目的を達成しながら、残置時の環境への懸念が少ない地盤改良構造物を地中に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態の地盤改良方法のフロー図である。
【
図2】
図1の地盤改良方法における種々の段階を例示的に示す図である。
【
図3】
図1の地盤改良方法に使用される例示的なオーガーの正面図である。
【
図4】
図3のオーガーの4-4線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(地盤改良方法)
図1のフロー図を参照して一実施形態の地盤改良方法について説明する。
図1の地盤改良方法における種々の段階を例示的に示した
図2も適宜参照する。地盤改良方法は、地盤210に形成された穴220内に、地盤210を所望の強度にするための地盤改良構造物240、例えば円柱状の固い構造物を形成する方法である。
【0017】
まず、ステップS11において地盤210に穴220を形成する。
図2(A)は掘削の途中段階の状態を示す例示的な図である。
図2(B)は掘削の完了段階の状態を示す例示的な図である。一例において後述の地盤改良オーガー100(以下、オーガーと呼ぶ)を正回転させることにより、地表から地中に向けて掘削を行う。オーガー100を、正回転させるのに伴って、ヘッド140と第1のブレード150と第2のブレード160とが一体的に回転して地盤210を掘削する。掘削により生じる掘削土は、螺旋搬送部120によって上方に搬送され、穴220から外に排出される。
【0018】
一例において、穴220の直径は500mm又は600mmであるがこれに限定されない。一例において、穴220の深さは0mより大きく8m以下であるがこれに限定されない。他の例において、穴220は既設の埋設物を引き抜いた後の穴220であってよい。既設の埋設物とは、例えば、以前に地盤改良のために形成された柱状の地盤改良構造物である。
【0019】
次に、ステップS12において、穴220の形成された地盤210から採取された現地土と、粒径が均一ではない砂と、実質的に水分を含まない粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合土を用意する。一例において現地土は、ステップS11により掘削されたものである。一例において現地土は穴220の周囲から別途採取される。別途採取される場合、穴220の内壁の地質と同じ地質の領域から採取されることが好ましい。充填前に形成された混合土は、現地土に自然に含まれる水以外に実質的に水分を含まず、外部から水を添加されない。
【0020】
一例において、現地土を除いた混合土の粒径は0mmより大きく2mm以下である。一例において、粉体粘土の粒径は好ましくは5μm以下、3.9μm未満、または2μm以下であるがこれらに限定されない。粉体粘土の水分は現地土から、または地盤から水を吸収可能な程度に十分に乾燥している。一例において、砂は主として粉体粘土より粒径が大きい。
【0021】
次に、ステップS13において、オーガー100を逆回転させることにより、混合土を穴220内で締め固めて圧密しながら穴220に充填する。
図2(C)は充填の途中段階の状態を示す例示的な図である。オーガー100を逆回転させるのに伴って、螺旋搬送部120により混合土が地表から穴220内の下方に運ばれ、ヘッド140周辺の空間に落下する。
図2(C)の例では穴220の下端に、すでに投入された混合土で形成された混合土柱230が存在する。
【0022】
新たに投入された混合土は、混合土柱230の上端と下押圧部152(詳細には
図3の押圧下面155)との間に(すなわち徐々に狭くなる空間に)送り込まれ、オーガー100の回転軸に沿って延びた穴220の側面と第1の横押圧部153(詳細には
図3の第1の横押圧面156)との間に(すなわち徐々に狭くなる空間に)送り込まれ、および、穴220の側面と第2の横押圧部162(詳細には
図3の第2の横押圧面163)との間に(すなわち徐々に狭くなる空間に)送り込まれる。このように混合土が狭い空間に送り込まれて「こて」のような作用によって締め固められる。
【0023】
言い換えると、穴220の入口から穴220の底部に向かう第1の方向(本例では鉛直下方)に混合土を押し付けて混合土を締め固めると同時に、第1の方向に直交した第2の方向(本例では水平方向(全方向))に向けて、混合土を穴220の側面を構成する地盤210に押し付けて混合土を締め固める。
【0024】
混合土を締め固めると、混合土中の水分や気泡が排出されるので、混合土を高密度に圧縮することができる。混合土をさらに投入して締め固めが進むと、オーガー100は混合土柱230の抵抗によって上に押し上げられる。オーガー100が所定の高さまで上昇した場合、すなわち、混合土柱230が所望の高さまで形成された場合、混合土の投入を終える。
【0025】
次に、ステップS13において、混合土を放置して自然に固化させる。
図2(D)は掘削の完了段階の状態を示す例示的な図である。充填された混合土は、採取された現地土又は穴220の周辺の水分を自然に吸収する。混合土中の生石灰が水分と反応して消石灰になる。生石灰が消石灰になる過程で熱が発生する(一例において発火する)ので、混合土が非常に高温となる。発生した熱により、混合土中の粘土が他の材料とともに焼き固められたような状態となり、混合土の材料が相互に強固に結びつく。このようにして混合土柱230が固化して強固な地盤改良構造物240となる。
【0026】
混合土に粒径が均一ではない砂が混ぜられているので、混合土を構成する材料間の隙間を小さくすることができる。さらに、混合土に粉体粘土が含まれているので、混合土を構成する材料間の隙間をさらに小さくすることができる。一旦、粉体粘土が土中の水分を吸収して流動性をもった粘土となるので、混合土の材料間の隙間が高密度に粘土で埋められる。そのため発熱により固まったときに空隙が非常に少ない地盤改良構造物240が形成される。発生した消石灰は地盤改良構造物240の空隙を埋めるとともに、地盤の安定化に役立つ。
【0027】
また、混合土が締め固められながら穴220に充填されるので、過剰な水分が混合土に混じりにくいので、発熱後に固まった地盤改良構造物240に水分の抜けた後の空隙が生じにくい。つまり、隙間の少ない強固な地盤改良構造物240を形成することができる。また、現地土が使用されるので、地盤改良構造物240が現地土に近い組成となり、環境に影響を与えにくくすることができる。セメント系固化材を含まないので六価クロムの溶出を防ぎ、環境に優しい地盤改良構造物240を形成することができる。
【0028】
こてのような作用により締め固めながら混合土柱230が形成されるので、混合土柱230が下方向や水平方向に周辺土を押す力が強くなる。完成した地盤改良構造物240と周辺土との摩擦力が大きいので、鉛直方向の力を下端だけでなく広い周辺面で受けることができる。したがって、完成した地盤改良構造物240は、鉛直方向のずれや抜けに強い。また、上下方向の力が、地盤改良構造物240の下端に集中することを防げる。穴220内で地盤210に対して水平方向に直接混合土を塗りつけながら締め固めるので、完成した地盤改良構造物240と周辺土との反力を高めることができる。
【0029】
締め固めながら混合土柱230が作成されるので、水や気泡を排除して密度の高い地盤改良構造物240を作成することができる。したがって、完成した地盤改良構造物240は、せん断、曲げなどに対する耐性が高い。その結果、完成した地盤改良構造物240に不要な水分による空隙が発生せず、強固な性能が得られる。一例において、締め固めの結果として、穴220の最下部付近の水平方向の直径が、それより上部の直径より大きくなり、例えば、上方に向かって徐々に径が小さくなる。
【0030】
(オーガー)
本説明において、互いに直交するx方向とy方向とz方向とを規定する。x方向は、互いに逆を向くx1方向とx2方向とを区別せずに表す。y方向は互いに逆を向くy1方向とy2方向とを区別せずに表す。z方向は互いに逆を向くz1方向とz2方向とを区別せずに表す。z1側を上と表現し、z2側を下と表現する場合がある。z方向を縦方向と呼び、z方向に直交する方向を横方向と呼ぶ場合がある。これらの方向は、相対的な位置関係を説明するために便宜上規定するのであって、実際の使用時の方向を限定するわけではない。
【0031】
構成要素の形状は、「略」という記載があるかないかにかかわらず、本明細書で開示された実施形態の技術思想が実現される限り、記載された表現に基づく厳密な幾何学的な形状に限定されない。回転軸に直交して回転軸から離れる方向を径方向とする。直径という場合、上下方向に直交する断面における直径をさすこととする。図中の寸法は、一例にすぎない。
【0032】
図3は、例示的なオーガー100の正面図である。
図4は、
図3の4-4線に沿ったxy平面に平行な断面を上から見た断面図である。オーガー100は、全体として、金属により一体的に形成される。オーガー100は、オーガー軸110を含む。オーガー軸110は、z方向に延びた仮想的な中心軸をもつ略円柱形である。
【0033】
オーガー100は、さらに、オーガー軸110の外周曲面から径方向に突設された螺旋搬送部120を含む。螺旋搬送部120は薄板状であり、オーガー軸110の上端から下端の全体または一部にわたってオーガー軸110を螺旋状に取り巻いている。螺旋搬送部120の一連の上面121は、上方を臨むなだらかな螺旋状の斜面となっている。オーガー100を地中の穴に入れて(
図4の矢印171の方向に)正回転させると、上面121に載った材料が、オーガー軸110の下端から上端に向かう方向に搬送される。また、オーガー100を、正回転とは反対に(
図4の矢印172の方向に)逆回転させると、上面121に載せた材料が、オーガー軸110の上端から下端に向かう方向に搬送される。
【0034】
螺旋搬送部120には、オーガー軸110から径方向に最も遠い外縁122にリブ123が設けられている。リブ123は外縁122から下方に延在する。リブ123の上下方向の幅は、1周分の螺旋搬送部120の上下方向の間隔よりも短い。
図3の例ではリブ123が下から3周分にわたって螺旋搬送部120に設けられているが、他の部分に設けられてもよい。オーガー軸110が穴の中で回転するとき、リブ123が穴の内壁に接触して、オーガー100のぶれを防止する。リブ123がない場合、尖った螺旋搬送部120が内壁に食い込むが、幅の広いリブ123によって、穴の内壁への食い込みを防いで安定した回転を維持できる。また、リブ123は、逆回転時に下に向けて送り込んだ材料が、穴の内壁と螺旋搬送部120との間を通って上方に逆流することを防ぎ、それによって、水平方向の締め固めの効率を高める。リブ123によって穴の内壁を締め固めてもよい。
【0035】
オーガー100は、さらに、オーガー軸110の下端から下方に延在する中継部130を含む。中継部130は、オーガー軸110の回転軸の延長上に中心軸をもつ円錐を、上下方向に直交する2つの平面で切り取った円錐台形である。中継部130の上端の直径は、オーガー軸110の下端の直径と同じである。中継部130の下端の直径は、中継部130の上端の直径よりも小さい。中継部130の直径は、オーガー軸110から下方に離れるほど減少する。すなわち、上下方向に直交する断面を比べたとき、中継部130の下端の面積は、中継部130の上端の面積よりも小さい。中継部130により、材料が上方に戻ることを防ぐことができる。回転体である円錐台形の中継部130により、回転方向に一様なねじり耐性をもたらすことができる。
【0036】
オーガー100は、さらに、中継部130の下端から下方に延在するヘッド140を含む。ヘッド140は、オーガー軸110の回転軸の延長上に中心軸をもつ円錐形で、その直径は、中継部130から下方に離れるほど減少する。オーガー軸110の上下方向に沿った回転軸を含む断面でみたとき、上下方向に対する中継部130の母線の傾斜角度は、上下方向に対するヘッド140の母線の傾斜角度より大きい。
【0037】
ヘッド140の最下端は、非常に径の小さい円錐形であるので、回転時にオーガー100の回転の中心を安定させることができる。一方、ヘッド140の上端にいくほど、回転時に受けるねじりの力が大きくなるが、ヘッド140の上端にいくほど直径が大きくなるので、ねじりに強い構造となっている。オーガー軸110に必要とされる直径と、ヘッド140の上端に必要とされる直径との差を、中継部130で補うことができる。
【0038】
オーガー100は、さらに、ヘッド140の外周曲面からx1方向に突設された第1のブレード150を含む。第1のブレード150は、第1の支持部151と下押圧部152と第1の横押圧部153と角部154とを含む。
【0039】
第1の支持部151は、ヘッド140の外周曲面からx1方向に突設されており、形状がzx平面に平行な平板状である。第1の支持部151の上端および下端は、x方向に沿っており、第1の支持部151のx1側端部はz方向に沿っている。
【0040】
下押圧部152は、第1の支持部151の下端から、z2方向とy2方向との間の方向に向かって延びている。下押圧部152は、形状が平板状である。下押圧部152は、押圧下面155(
図3に見える面とは反対側の面)を含む。押圧下面155は、x方向に平行であり、z2方向とy1方向との間の方向を向いている。下押圧部152の下端はx方向に平行である。
図3に示すように、下押圧部152のx2側端部は、ヘッド140に連結されている。
【0041】
図4に示すように、第1の横押圧部153は、第1の支持部151のx1側端部から、x1方向とy2方向との間の方向に延在している。第1の横押圧部153は、形状が平板状である。第1の横押圧部153は、第1の横押圧面156を含む。第1の横押圧面156は、z方向に平行であり、x1方向とy1方向との間の方向を向いている。第1の横押圧部153のx1側端部は、z方向に略平行である。
【0042】
図3に示すように、下押圧部152のx1側端部と第1の横押圧部153のz2側端部との間は、板状の角部154により連結される。
【0043】
図3に示すように、オーガー100は、さらに、ヘッド140の外周曲面からx2方向に突設された第2のブレード160を含む。第2のブレード160は、第2の支持部161と第2の横押圧部162とを含む。z方向の位置のみを比べたとき、第2のブレード160の下端は、第1のブレード150の上端と同じ高さか、第1のブレード150の上端より上方に位置する。
【0044】
第2の支持部161は、ヘッド140の外面曲面からx2方向に突設されており、形状がzx平面に平行な平板状である。第2の支持部161の上端と下端とは、x方向に略平行であり、第2の支持部161のx2側端部はz方向に沿っている。
【0045】
図4に示すように、第2の横押圧部162は、第2の支持部161のx2側端部から、x2方向とy1方向との間の方向に延在している。第2の横押圧部162は、形状が平板状である。第2の横押圧部162の第2の横押圧面163は、z方向(上下方向)に平行で、x2方向とy2方向との間の方向を向いている。第2の横押圧部162のx2側端部は、z方向に略平行である。
【0046】
図3に示すように、形状の似通った第1のブレード150と第2のブレード160とがヘッド140のx方向両側に設けられているので、オーガー100が安定して回転する。第1のブレード150と第2のブレード160とを上下にずらして配置することにより、ずらさない場合に比べて、第1のブレード150と第2のブレード160との各々が受け持つ混合土の量が多くなり、混合土から第1のブレード150と第2のブレード160との各々にかかる荷重が大きくなる。仮にずらさなければ荷重が小さくなるため混合土がブレードと一緒にぐるぐると回転するだけになる。しかし本例のようにずらすことにより、第1のブレード150と第2のブレード160とで混合土の塊を壊して攪拌しながら周囲に塗りつける動作が起こりやすくなる。その結果、混合土がオーガー100と一体となって回転することを防ぐことができる。
【0047】
回転時の安定性を高めるため、および、より回転軸に近い内側部分まで広く締め固めるためには、ヘッド140の先端が小さいことが好ましい。一方、搬送する混合土の抵抗を小さくするため、オーガー軸110の径を太くして螺旋搬送部120の幅を小さくすることが好ましい。
【0048】
オーガー100が中継部130を含むので、ヘッド140の上端の直径がオーガー軸110の直径よりも小さい。従って、中継部130がない場合に比べるとヘッド140周りの空間が広く、第1のブレード150と第2のブレード160とにかかる混合土からの荷重が大きい。また、第1のブレード150と第2のブレード160ととの径方向の長さの差が小さく、回転のバランスを取りやすい。中継部130は、オーガー軸110の逆回転時に、上方から送り込まれた混合土が、上方に戻るのを防ぐ役割も果たす。
【0049】
中継部130を設けることにより、オーガー軸110に必要とされる直径とは別に、ヘッド140の上端の直径を決定できる。例えば、ねじり耐性を高めるため、オーガー軸110の直径を大きくした場合でも、ヘッド140周辺の空間を大きくとって、第1のブレード150と第2のブレード160との径方向の長さを長くすることができる。下押圧部152を、径方向に長く設けることができるので、より広い面積を一度に締め固めることができる。特に、回転軸に近い内側部分まで、下押圧部152で締め固めて強い柱状体を作成することができる。また、下押圧部152は、掘削にも使用できるため、より長い下押圧部152で、より広い範囲を掘削することによって、掘削速度を速めることができる。
【0050】
他の例において、ヘッド140の上端の径とオーガー軸110の下端の径とを等しくして、中継部130を省略したオーガーが使用されてよい。
【0051】
(まとめ)
本実施形態によれば、地盤改良の目的を達成しながら、残置時の環境への懸念が少ない地盤改良構造物240を地中に形成することができる。セメント系固化材を含めずに、粉体粘土と生石灰とを含む混合土を使用して地盤改良構造物240を形成するので、セメント系固化材を含む場合に比べると地盤改良構造物240が固くなりすぎない。そのため、不要になった後に地盤改良構造物240を残置しても、後の地盤利用に影響を与えにくい。
【0052】
本実施形態によれば、水と混合土に含まれる生石灰との反応により、粉体粘土を含む混合土の粒子間の結合を強くすることができるので、強固な地盤改良構造物240を形成することができる。反応により生じた消石灰は、地盤改良構造物240の隙間を埋めて地盤改良構造物240を強固にする役割を果たすとともに地盤210を安定化することができる。従来は、地盤改良構造物240の材料に粘土を含めると地盤改良構造物240が弱くなるおそれがあるという理由から粘土の使用が避けられるが、本実施形態によれば、水を吸収可能な状態の粉体粘土を使用し、さらに生石灰と水との反応により粉体粘土に吸収された水を急速に抜いて、従来とは逆に強固な地盤改良構造物240を作成することができる。
【0053】
本実施形態によれば、過剰な水分が混合土に混じりにくいので、発熱後に固まった地盤改良構造物240に水分の抜けた後の空隙を生じにくくすることができ、強固な盤改良構造物を形成することができる。
【0054】
本実施形態によれば、第1の方向及び第2の方向における締め固めを確実に行って強固な盤改良構造物を形成することができる。また、第1の方向及び第2の方向における摩擦力の強い、抜けにくい地盤改良構造物240を形成することができる。
【符号の説明】
【0055】
100…地盤改良オーガー、110…オーガー軸、120…螺旋搬送部、121…上面、
122…外縁、123…リブ、130…中継部、140…ヘッド、
150…第1のブレード、151…第1の支持部、152…下押圧部、
153…第1の横押圧部、154…角部、155…押圧下面、156…第1の横押圧面、
160…第2のブレード、161…第2の支持部、162…第2の横押圧部、
163…第2の横押圧面、171…矢印、172…矢印、210…地盤、220…穴、
230…混合土柱、240…地盤改良構造物
【手続補正書】
【提出日】2021-02-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された穴内に、前記地盤を所望の強度にするための地盤改良構造物を形成する地盤改良方法であって、
前記穴の形成された前記地盤から採取された現地土と、粒径が均一ではない砂と、粉体粘土と、生石灰とを混合することによりセメント系固化材を含まない混合土を用意することと、
充填前に混合された前記混合土を前記穴内で締め固めながら前記穴に充填することと、
前記混合土に前記地盤から自然に水を吸収させることにより、前記穴内における前記混合土を固化して前記地盤改良構造物にすることと、
を含み、
前記混合土を固化することが、水と前記混合土に含まれる生石灰とが反応して消石灰が生じる反応により、前記混合土内の水を減らすことと、前記反応の熱による水の蒸発により前記混合土内の水をさらに減らすことにより、粉体粘土を含む前記混合土の粒子間の結合を強くすることとを含む、
地盤改良方法。
【請求項2】
充填前の前記混合土が、前記現地土に自然に含まれる水以外に外部から水を添加されない、
請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
前記混合土を前記穴に充填することが、前記穴の入口から前記穴の底部に向かう第1の方向に前記混合土を押し付けて前記混合土を締め固めると同時に、前記第1の方向に直交した第2の方向に向けて、前記混合土を前記穴の側面を構成する前記地盤に押し付けて前記混合土を締め固めることを含み、
前記混合土を前記穴に充填することが、オーガーを使用して実施され、
前記オーガーが、オーガー軸と前記オーガー軸とともに回転する横押圧部とを備え、
前記横押圧部が、横押圧面を備え、
前記オーガー軸が前記穴に挿入されて回転したときに、前記横押圧面と前記穴の前記側面との間の徐々に狭くなる空間に前記混合土が送り込まれることにより、前記混合土が前記第2の方向に締め固められる、
請求項1または請求項2に記載の地盤改良方法。