(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188789
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】表刷り用グラビア印刷インキ、それを用いた印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/10 20140101AFI20221215BHJP
【FI】
C09D11/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096993
(22)【出願日】2021-06-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中西 靖
(72)【発明者】
【氏名】佐井 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】野村 雄史
(72)【発明者】
【氏名】新保 雄基
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD05
4J039AD08
4J039AE04
4J039AE08
4J039BC36
4J039BC59
4J039CA02
4J039DA01
4J039EA39
4J039EA43
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、インキの保存安定性および印刷適性が良好であり、基材に対する接着性、塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性が良好であり、特に耐アルコール性および防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れた表刷り用グラビア印刷インキを提供することを課題とする。
【解決手段】ウレタン樹脂(A)、ポリアミド樹脂、それら以外のその他樹脂、キレート剤および有機溶剤を含有する表刷り用グラビア印刷インキであって、
前記印刷インキ総質量中に前記ポリアミド樹脂を0.1~3質量%含有し、
前記ウレタン樹脂(A)は、炭素数7~11の脂肪族二塩基酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有する、表刷り用グラビア印刷インキ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)、ポリアミド樹脂、それら以外のその他樹脂、キレート剤および有機溶剤を含有する表刷り用グラビア印刷インキであって、
前記印刷インキ総質量中に前記ポリアミド樹脂を0.1~3質量%含有し、
前記ウレタン樹脂(A)は、炭素数7~11の脂肪族二塩基酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有する、表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項2】
ウレタン樹脂(A)のアミン価が、1~20mgKOH/gである、請求項1に記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項3】
ウレタン樹脂(A)が、セバシン酸を含む脂肪族二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有する、請求項1または2に記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項4】
ポリアミド樹脂の重量平均分子量が、10,000を超え30,000以下である請求項1~3いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項5】
その他樹脂が、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を含有する、請求項1~4いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項6】
更に、脂肪酸アミドを含有する、請求項1~5いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項7】
キレート剤が、アセチルアセトン系チタンキレート及び/又はアセト酢酸アルキル系チタンキレートを含む、請求項1~7に記載の表刷り用グラビア印刷インキ。
【請求項8】
基材上に、請求項1~7いずれかに記載の表刷り用グラビア印刷インキからなる印刷層を有する印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表刷り用グラビア印刷インキおよびその印刷物に関するものである。
【0002】
より詳しくは、インキの長期保存が可能であり、基材に対する接着性、テーブルクロスなどに用いられる軟質塩化ビニルシートと印刷物が接着しないための耐塩ビブロッキング性や耐熱性、追随性、耐油性が良好でさらに環境衛生にも優れ、特に耐アルコール性、耐防曇フィルムブロッキング性および印刷適性に優れた表刷り用グラビア印刷インキに関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、商品パッケージその他の包装物には装飾や表面保護のために印刷が施されているのが一般的である。また、印刷物の意匠性、美粧性、高級感などの印刷品質のでき如何によって、消費者の購入意欲を促進させるものであり、産業上での価値は大きい。
【0004】
一方、食品メーカーや印刷加工会社などからは包装物の多様化、包装技術の高度化に伴い、表刷り用の印刷インキに対して高度の品質、性能が要求されるようになってきている。表刷り用印刷インキは例えばフレキソインキ、オフセットインキ、グラビア印刷インキその他が挙げられるが、中でも印刷速度が良好であるため、生産性の観点でグラビア印刷インキが多く使用されている。
【0005】
表刷り用グラビア印刷インキの性能としては、印刷性能の品質はもちろんのこと、基材に対する接着性、印刷して巻き取られた時にインキがフィルム基材の裏面に裏移り・接着しないための耐ブロッキング性、印刷層同士が接着しないための耐ブロッキング性、テーブルクロスなどに用いられている軟質塩化ビニルシートと印刷物が接着しないための耐塩ビブロッキング性、印刷面が傷つかないための耐摩擦性、油脂に対する耐油性、製袋時の耐熱性、袋を開ける時にフィルムに印刷された印刷面が追随するための延伸性などといった各種耐性が要求されている。
【0006】
また、最近のコロナウイルス感染拡大で社会の衛生意識が高まり、公共空間や一般家庭でアルコールなどの消毒液を使用する機会が増えている。パンやおにぎりなどの包装材料などでは包装材において内容物の外側に印刷する表刷り印刷が主流で、手に触れるところに印刷インキからなる印刷層が存在している。通常、フィルム包装の印刷層が落ちることはほとんどないが、エタノールで消毒した手でパッケージを触った場合、また、エタノール消毒液を直接噴霧した包装材をテーブルに置いた場合に、エタノール消毒液によってインキ塗膜が溶解し、手やテーブルクロスにインキが付着するケースが確認されており、包装材の外面を構成する表刷り印刷層に対して高い耐アルコール性が要求されている。
【0007】
各種耐性の優れた表刷り用グラビア印刷インキとして、例えば、アジピン酸とジオールからなるポリオール由来の構造単位、脂肪族ジオール由来の構造単位(ただし前記ポリオール中に含まれる構造単位は除く)、ウレタン結合濃度およびウレア結合濃度であるウレタン樹脂と特定の水酸基価である塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を含有する表刷り用グラビア印刷インキや(特許文献1)、アジピン酸とジオールからなるポリエステル由来の構造を有するウレタン樹脂およびセルロース誘導体および/又は塩化ビニル-酢酸ビニル共重合であるバインダー樹脂、キレート剤および特定の質量平均分子量であるポリアミド樹脂を含有する表刷り用グラビア印刷インキ(特許文献2)が提案されているが、開示されたものでは耐アルコール性が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019‐089941号公報
【特許文献2】特開2017‐025256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、インキの保存安定性および印刷適性が良好であり、基材に対する接着性、塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性が良好であり、特に耐アルコール性および防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れた表刷り用グラビア印刷インキを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の表刷り用グラビア印刷インキを用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0011】
すなわち本発明は、ウレタン樹脂(A)、ポリアミド樹脂、それら以外のその他樹脂、キレート剤および有機溶剤を含有する表刷り用グラビア印刷インキであって、
前記印刷インキ総質量中に前記ポリアミド樹脂を0.1~3質量%含有し、
前記ウレタン樹脂(A)は、炭素数7~11の脂肪族二塩基酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有する、表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0012】
また本発明は、ウレタン樹脂(A)のアミン価が、1~20mgKOH/gである、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0013】
また本発明は、ウレタン樹脂(A)が、セバシン酸を含む脂肪族二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有する、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0014】
また本発明は、ポリアミド樹脂の重量平均分子量が、10,000を超え30,000以下である上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0015】
また本発明は、その他樹脂が、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を含有する、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0016】
また本発明は、更に、脂肪酸アミドを含有する、上記表刷り用グラビア印刷インキに関する。
【0017】
また本発明は、キレート剤が、アセチルアセトン系チタンキレート及び/又はアセト酢酸アルキル系チタンキレートを含む、上記表刷り用グラビア印刷インキ。
【0018】
また本発明は、基材上に、上記表刷り用グラビア印刷インキからなる印刷層を有する印刷物に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、インキの保存安定性および印刷適性が良好であり、基材に対する接着性、塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性が良好であり、特に耐アルコール性および防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れた表刷り用グラビア印刷インキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0021】
なお、以下の説明において「表刷り用グラビア印刷インキ」は単に「グラビア印刷インキ」、「インキ」と略記する場合がある。また「部」は特に断らない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
【0022】
本発明において「表刷り」とはプラスチック基材へ印刷した場合、印刷層側から見て印刷模様や絵柄を確認できる印刷方法をいう。なお、積層体あるいは包装袋とした場合に最外面が印刷層となる。表刷り用グラビア印刷インキを印刷して得られる層は「印刷層」、「インキ層」または「インキ被膜」と表記する場合があるが同義である。
【0023】
<ウレタン樹脂(A)>
本発明において使用するウレタン樹脂(A)は、炭素数7~11の脂肪族二塩基酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有するが、その製造方法は、例えば特開2013-256551号公報や特開2016-043600号公報に記載の方法により合成することができ、好ましい形態として、上記構成単位を含む脂肪族ジオールを含むポリオール成分と、ポリイソシアネートとの反応で得られるウレタン結合を有するウレタン樹脂(A)である。また、必要に応じて残存するイソシアネートとポリアミンにより生成されるウレア結合を介して鎖延長されていてもよい。
上記ウレタン樹脂(A)が、炭素数7~11の脂肪族二塩基酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有することと、印刷インキ総質量中に0.1~3質量%含まれるポリアミド樹脂により、耐アルコール性を付与し、本願における課題解決に寄与する。
【0024】
なお、本発明の作用・効果を損なわない範囲で上記「炭素数7~11の脂肪族二塩基酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有するウレタン樹脂(A)」以外のウレタン樹脂を含んでもよく、公知のウレタン樹脂を使用することができる。
【0025】
(ポリオール)
ポリオールは、一分子中に水酸基を平均で1.7~2.3個程度有することが好ましく、平均2個有することがより好ましい。ポリオールとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体などのポリエーテルポリオール類、
エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタジオール、メチルペンタジオール、ヘキサジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、メチルノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコールと、後述する炭素数7~12の脂肪族二塩基酸を含む二塩基酸との脱水縮合物であるポリエステルポリオール類、
ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAの酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるポリオール類、
ダイマージオール類、ひまし油ポリオール類、水添ひまし油ポリオール類などの各種公知のポリオールが挙げることができる。
【0026】
ポリオールは、単独で用いても、2種以上併用してもよい。ポリオールの数平均分子量は、ウレタン樹脂(A)の溶解性と防曇基材への耐ブロッキング性を保つことができるため300以上であり、500~6000が好ましく、1000~3000がより好ましい。中でもポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールより選ばれる少なくとも一種のポリオールを使用することが好ましい。またポリオールはバイオマス由来の化合物ないし原料(バイオマス原料)を構成要素として有していても良い。
【0027】
本発明においては、ポリオールの中でも、ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムに対する接着性の観点からポリエステルポリオールが好ましい。また、2種以上のポリオールを併用する場合においては、基材に対する接着性と耐ブロッキング性の観点から、ポリエステルポリオールをポリオールの全質量に対して40質量%以上含むことがより好ましい。
【0028】
ウレタン樹脂(A)を構成するポリエステルポリオールは、炭素数7~11の脂肪族二塩基酸を含む二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有することが必要であり、前記脂肪族二塩基酸の炭素数は9~11であることが好ましい。基材に対する接着性、防曇フィルムへの耐ブロッキング性および耐アルコール性が良好となる。脂肪族二塩基酸炭素数が大きくなると、特に耐アルコール性が向上する。
【0029】
(脂肪族ジオール)
ウレタン樹脂(A)を構成するポリオールは、脂肪族ジオールを含むことが好ましい。当該脂肪族ジオールを用いた実施形態は、例えば、分子量が180以下の脂肪族ジオール由来の構造単位であって、下記一般式(1)で示される、2つの水酸基がイソシアネート化合物とウレタン結合を形成した形態などが挙げられ、この場合は、ポリエステルポリオール等のポリオールを構成している脂肪族ジオールを意味するものではない。また、別途、ポリエステルポリオール中には、上記脂肪族ジオールからなる構造単位を含んでいてもよく、そのようなポリエステルポリオールの利用を本発明から除外するものではない。
【0030】
一般式(1)
-NHCOO-R1-OCONH-
(式中、R1は置換または無置換のアルキレン基を表す。)
上記脂肪族ジオールは分子量130以下であればより好ましい。より詳しくは、アルキレン基の分子量は140以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。アルキレン基は置換基としてアルキル基を有していてもよい。
【0031】
脂肪族ジオールは例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖状ジオール類、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、メチルノナンジオール等の分岐ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、などの脂環族ジオール類等が挙げられ、複数種併用しても良い。中でも、炭素数1から6のアルキル基を置換基として有する脂肪族ジオールは、ポリオレフィン基材への接着性に優れ、またウレタンの溶解性を高めるため印刷適性が向上するため好ましい。より具体的には3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましく使用される。
【0032】
分子量が180以下の脂肪族ジオール由来の構造単位は、ウレタン結合密度を高めて結晶性と凝集力を付与し、ポリオール由来の構造単位は柔軟性と接着性に寄与する。そのため耐ブロッキング性と基材接着性を両立することができ、また、耐油性が良好となる。ポリオール由来の構造単位の総量中の前記脂肪族ジオール由来の構造単位(ただしポリオール中に含まれる構造単位は除く)の含有量は10~60質量%であり、20~40質量%が好ましい。10質量%以上であるとイソシアネートと反応して得られるウレタン結合の凝集力が向上し、防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れる。60質量%以下であると、ウレタン樹脂(A)の溶剤に対する溶解性を良好に維持可能である。
【0033】
他のポリオール成分としては、芳香族ジオールや分子量が180を超える脂肪族ジオール等が挙げられ、これらを併用しても良い。
【0034】
ポリイソシアネートとしてはジイソシアネートを使用することが好ましい。例えば、1,5ーナフチレンジイソシアネート、4,4’ージフェニルメタンジイソシアネート、4,4’ージフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’ージベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3ーフェニレンジイソシアネート、1,4ーフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ブタンー1,4ージイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4ートリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンー4、4’ージイソシアネート、1,3ービス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。中でもイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0035】
本発明に使用するウレタン樹脂(A)を得るためには、ポリイソシアネート由来のNCOとポリオールおよび脂肪族ジオールを含むOHの反応モル比(NCOモル当量/OHモル当量)が0.5以上2以下、好ましくは1.05以上3以下となるように反応させ、次いで、必要に応じて上述したポリアミンで鎖延長を行うこともでき、過剰反応を防止するため、更に反応停止剤も使用することもできる。
【0036】
ウレタン化反応は、有機溶剤中で行ってもよいし、無溶剤で行ってもよい。有機溶剤を使用する場合は、反応時の温度および粘度、副反応の制御の面から適宜選択して用いるとよい。また無溶剤でウレタン化反応を行う場合は、均一なウレタン樹脂(A)を得るために、攪拌が十分可能な粘度となるように温度を上げて行うことが望ましい。ウレタン化反応は10分~5時間行うのが望ましく、反応の終点は粘度測定、IR測定によるNCO由来ピーク、滴定によるNCO%測定等により判断される。
【0037】
鎖延長に用いるポリアミンとしては、エチレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、イソホロンジアミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ジアミン類であることが好ましい。また鎖延長剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類も使用することができる。
また反応停止剤としては、メタノール、エタノール等のモノアルコール類、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0038】
ウレタン樹脂(A)は、ウレア結合を有していても良いし、有していなくても良い。
ウレア結合を有する場合の製造方法は、特に限定されるものではないが、脂肪族ジオールおよびポリオール並びにポリイソシアネートを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの、イソシアネート基の数を1とした場合の鎖延長剤および反応停止剤中のアミノ基の合計数量が0.5~1.3の範囲内であることが好ましい。
【0039】
更に、ウレタン樹脂(A)のアミン価は1~20mgKOH/gであることが好ましく、5~15mgKOH/gであることがより好ましい。基材に対する接着性と防曇フィルムへの耐ブロッキング性が両立する。
【0040】
<ポリアミド樹脂>
本発明の表刷り用グラビア印刷インキはポリアミド樹脂を0.1~3質量%含む。含有量としては0.2~2.5質量%であることが好ましい。防曇フィルム等のフィルム基材への耐ブロッキング性、耐アルコール性および印刷適性が良好となる。
上記ポリアミド樹脂は以下に限定されるものではないが、好ましくは多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得ることができる有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドである。特に、重合脂肪酸及び/又はダイマー酸を含有する酸成分と、脂肪族及び/又は芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂であることが好ましく、更には一級および二級モノアミンを一部含有するものが好ましい。
【0041】
ポリアミド樹脂の原料で使用される多塩基酸としては、以下に限定されるものではないが、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、重合脂肪酸などが挙げられ、その中でもダイマー酸あるいは重合脂肪酸に由来する構造を主成分(ポリアミド樹脂中に50質量%以上)含有するポリアミド樹脂が好ましい。ここで、重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸(ダイマー酸)、三量化重合脂肪酸等を含むものである。なお、ダイマー酸あるいは重合脂肪酸を構成する脂肪酸は大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来など天然油に由来するものを好適に挙げることができ、オレイン酸およびリノール酸から得られるものが好ましい。
多塩基酸には、モノカルボン酸を併用することもできる。併用されるモノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
【0042】
多価アミンとしては、ポリアミン、一級または二級モノアミンなど挙げることができる。ポリアミド樹脂に使用されるポリアミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミンを挙げることができ、脂環族ポリアミンとしては、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。また、芳香脂肪族ポリアミンとしてはキシリレンジアミン、芳香族ポリアミンとしてはフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等を挙げることができる。さらに、一級及び二級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどを挙げることができる。
【0043】
また、上記ポリアミド樹脂の重量平均分子量が2,000以上30,000以下であることが好ましく、10,000を超え30,000以下であることがなお好ましく、15,000以上25,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合はインキの被膜強度が良好となり、耐擦傷性、耐熱性および耐アルコールが向上する。分子量が30,000以下の場合はインキの粘度が低粘度化でき、印刷適性および貯蔵安定性が良好となる。炭素数7~11の脂肪族二塩基酸とジオールからなるポリエステル由来の構成単位を含有する前記ウレタン樹脂(A)と上記の重量平均分子量範囲であるポリアミド樹脂を併用することにより、耐アルコール性がさらに向上する。
また、上記ポリアミド樹脂のアミン価は0.5~7mgKOH/gであることが好ましく、1~5mgKOH/gであることがなお好ましい。ポリアミド樹脂の酸価は0.5~17mgKOH/gであることが好ましく、1~15mgKOH/gであることがなお好ましい。
更に、ポリアミド樹脂は軟化点が80~140℃であることが好ましく、90~130℃あるいは100~125℃であることがなお好ましい。上記実施形態においてインキ被膜が強くなる。軟化点が80℃以上の場合は、印刷物のインキ被膜の表面タック切れが良好となり、ブロッキングを防ぐ。軟化点が140℃以下の場合はインキ被膜が柔軟となり基材に対する接着性が向上する。なお、軟化点はJISK2207(環球法)で測定された値を表す。
好ましいポリアミド樹脂としては、ポリマイドS-1962(重量平均分子量15,000、三洋化成工業社製)、レオマイドS-8500(重量平均分子量24,000、花王社製)等が挙げられる。
【0044】
<その他樹脂>
本発明の表刷り用グラビア印刷インキは、ウレタン樹脂(A)およびポリアミド樹脂以外の、その他樹脂を有することが好ましく、当該その他樹脂としてはハードレジンを含有することが好ましい。なおハードレジンとは融点またはガラス転移温度が50~250℃であり、有機溶剤に可溶な樹脂をいう。ハードレジンとしては、例えば、セルロース系樹脂、塩化ビニル共重合樹脂(塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂、塩化ビニル-アクリル共重樹脂など)ダイマー酸系樹脂、ロジン系樹脂(ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル樹脂など)マレイン酸系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、ダンマー樹脂、コーパル樹脂等が挙げられる。中でも塩化ビニル共重合樹脂、ロジン系樹脂およびケトン樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。それぞれで同等の効果が得られるためである。これらのハードレジンを利用すると、特に表面処理の行われていないプラスチックフィルムに対して接着性が向上する。ハードレジンの酸価は5~150mgKOH/gが好ましく、10~40mgKOH/gがより好ましい。
なかでも、当該その他樹脂としては、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂及び/又はセルロース系樹脂であることが好ましく、グラビア印刷インキ全質量中に固形分で0.1~6質量%含有することが好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。耐塩ビブロッキング性と防曇フィルムへの耐ブロッキング性が両立する。
【0045】
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーを共重合して得られる。分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、20,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材に対する接着性、被膜物性等が良好となる。また、水酸基を有することが好ましく、共重合において更にビニルアルコールを用いる、または酢酸ビニルの一部をケン化することで得られる。塩化ビニル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのモノマー比率は、樹脂被膜の性質や樹脂溶解挙動に影響を与え、例えば、塩化ビニルは樹脂被膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルは接着性や柔軟性を付与し、ビニルアルコールは極性溶剤への良好な溶解性を付与する。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の水酸基価は、50~180mgKOH/gが好ましく、70~160mgKOH/gがより好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0046】
また、ウレタン樹脂(A)と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分質量比(ウレタン樹脂(A)/塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)が95/5~50/50であることが好ましい。印刷された基材を引き延ばした際のインキ被膜の基材への追随性(基材への接着性に相当)と耐塩ビブロッキング性や防曇フィルムへの耐ブロッキング性が良好となるためである。
【0047】
<セルロース系樹脂>
セルロース系樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートその他のセルロースエステル樹脂、ニトロセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、およびカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、およびニトロセルロースが好ましい。特に好ましくはニトロセルロースである。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。ウレタン樹脂(A)との併用で耐ブロッキング性、耐擦傷性その他のインキ被膜物性が向上するためである。
【0048】
(ニトロセルロース)
上記ニトロセルロースは、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましく、平均重合度20~200、更には30~150の範囲のものが好ましい。平均重合度が20以上の場合、インキ被膜の強度が向上し、耐擦傷性が向上するため好ましい。又、平均重合度が200以下の場合、溶剤への溶解性、インキの低温安定性、併用樹脂との相溶性が向上するため好ましい。また、窒素分は10.5~12.5質量%であることが好ましい。
【0049】
<脂肪酸アミド>
本発明の表刷り用グラビア印刷インキには脂肪酸アミドを用いることが好ましい。脂肪酸アミドとしては飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、変性脂肪酸アミド等が挙げられ、グラビア印刷インキ組成物中に0.1~3質量%含有することが好ましく、より好ましくは、0.1~2.5質量%である。脂肪酸アミドを用いることで防曇フィルムへの耐ブロッキング性と印刷適性が両立しやすいことがある。
【0050】
<キレート剤>
本発明においてはキレート剤を用いることが好ましい。インキ被膜における凝集力向上のためである。キレート剤は、1分子中に、Ti-O-C型結合をもつものが好ましい。具体的には、チタンアルコキシド、チタンアシレートなどのチタンキレートを使用することが好ましく、チタンキレートの代表例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、トリエタノールアミンチタネート、チタンアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテート、オクチレングリコールチタネート、チタンテトラアセチルアセトナートなどのチタンキレートを挙げることができる。これらのうちチタンキレートであるキレート剤は、一般に架橋反応完結に加温が必要な反面、常温での加水分解が起り難く、安定性に優れておりインキへの使用に適しており、好適に使用することが出来る。
【0051】
チタンキレートは、1分子中に、アルコキシ基を有することによって樹脂の分子間あるいは分子内架橋結合に寄与する。チタンキレートが、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の水酸基に対してモル当量比で0.1~1.0であることが好ましい。0.1モル当量以上の場合、耐塩ビブロッキング性および防曇フィルムへの耐ブロッキング性が向上する。また、1.0モル当量以下の場合、インキの保存安定性が向上する。
【0052】
本発明においては、チタンキレートの中でも、アセチルアセトン系チタンキレート及び/又はアセト酢酸アルキル系チタンキレートであることが好ましく、グラビア印刷インキ全質量中に0.1~5質量%含有することが好ましい。基材への接着性、耐塩ビブロッキング性および防曇フィルムへの耐ブロッキング性が向上する。アセチルアセトン系チタンキレートとアセト酢酸アルキル系チタンキレートを併用することがより好ましく、インキの保存安定性と溶解性の向上が両立する。
【0053】
また、表刷り用グラビア印刷インキでは、耐熱性、耐油性や耐摩擦性の向上を目的として、架橋剤やワックス成分を含有させることができる。ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの既知の各種ワックスが利用できる。
【0054】
さらに、添加剤として顔料分散剤、レベリング剤、ポリエチレンワックスその他の炭化水素系ワックス、界面活性剤、可塑剤、接着補助剤等の各種インキ用添加剤の添加は任意である。なお接着補助剤としては塩素化ポリオレフィン樹脂が好ましく、中でも塩素化ポリプロピレン樹脂の使用が好ましい。炭化水素系ワックスとしてはポリエチレンワックスやフィッシャー・トロプシュワックスが好適に挙げられる。
【0055】
<顔料>
本発明の印刷インキは、着色剤を含んでもよい。着色剤としては顔料が挙げられる。本発明で利用可能な顔料は特に限定されず、一般に印刷インキや塗料で使用できる各種の無機顔料や有機顔料を好適に使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色顔料、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。また有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料などが好適である。なおこれらに限らず、前記顔料はカラーインデックスのジェネリックネームで記載のものが適宜使用可能である。これらの顔料の含有量としては、インキ総量中に0.5~50質量%が好ましい。
【0056】
<有機溶剤>
次に、本発明のインキ組成物で利用する溶剤としては、主に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン,メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤、および、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤が挙げることができ、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性などを考慮して、混合して利用することが好ましい。これらの有機溶剤の使用量としては、インキ総量中に30質量%以上含有することが好ましい。なお、印刷時の臭気や環境対応のため、有機溶剤はエステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤を主成分とすることが好ましく、その質量比(エステル系有機溶剤:アルコール系有機溶剤)が、50:50~90:10であることが好ましい。
【0057】
<表刷り用グラビア印刷インキの製造>
本発明の表刷り用グラビア印刷インキを製造する方法として、まず、顔料、ウレタン樹脂(A)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂および有機溶剤、および必要に応じて顔料分散剤、界面活性剤などを含む組成物を、攪拌混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等を利用して分散し、さらに、他の樹脂や添加等を混合する方法がある。中でもビーズミルを用いて顔料を含む組成物を混錬・分散することが好ましい。
【0058】
<基材>
本発明の印刷インキは、基材上に印刷されて印刷物となる。当該基材は特に限定されないが、フィルム基材であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル基材、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系基材、ナイロン基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデン基材、セロハン基材などのフィルム基材、およびこれらの複合材料からなるフィルム基材が挙げられる。プラスチック基材は、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの金属あるいは金属酸化物が蒸着されていても良く、更に蒸着面をポリビニルアルコールなどの塗料でコーティング処理を施されていてもよい。一般的に、印刷される基材表面はコロナ処理などの表面処理が施されている場合が多い。さらに基材は、予め防曇剤の塗工、練り込み、マット剤の表面塗工、練り込みなどプラスチックフィルムを加工して得られるフィルムも使用する事が可能である。
また、基材は、単層でもよいし、2つ以上の基材が積層された積層体(基材層)であってもよい。基材層を構成する基材は、同じでも異なっていてもよい。
中でもポリオレフィン基材であることが好ましい。当該ポリオレフィン基材は表面処理されていてもよいし、されていなくてもよい。
【0059】
防曇剤は界面活性剤が好ましく、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの多価アルコール脂肪酸エステルやエチレンオキサイド付加物などのイオン系界面活性剤を1種あるいは複数用いられる。
【0060】
<印刷物>
基材上に、本発明のグラビア印刷インキを用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって印刷層を形成し、印刷物を得ることができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブンによる乾燥によって被膜を定着することで得ることができる。
【実施例0061】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表す。
【0062】
(アミン価)
アミン価の測定は、JISK0070(1992年)に準じて以下の方法により行った。
・アミン価の測定方法
試料を0.5~2g精秤する(試料量:Sg)。精秤した試料に中性エタノール(BDG中性)30mLを加え溶解させる。得られた溶液に対して0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)を用いて滴定を行う。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とする。この時の滴定量(AmL)を用い、次の(式5)によりアミン価を求める。
(式5)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S
【0063】
(重量平均分子量)
重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めた。昭和電工社製「ShodexGPCSystem-21」を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量を求めた。以下に測定条件を示す。
カラム:下記の複数のカラムを直列に連結して使用。
東ソー株式会社製、TSKgel SuperAW2,500、
東ソー株式会社製、TSKgel SuperAW3,000、
東ソー株式会社製、TSKgel SuperAW4,000、
東ソー株式会社製、TSKgel guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)、
測定条件:カラム温度40℃、
溶離液:ジメチルホルムアミド
流速:0.5mL/分
【0064】
<合成例1>(ウレタン樹脂(A)PU1の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに数平均分子量(以下Mnという)2000の3-メチル-1,5-ペンタンジオールとセバシン酸の縮合物であるバイオマス原料由来のポリエステルポリオール(「MPD/SeA」と略記する)103.2部、ネオペンチルグリコール35.2部、イソホロンジイソシアネート121.4部、2-エチルヘキシル酸第一錫0.03部及び酢酸エチル65.1部を仕込み、窒素気流下に90℃で2時間反応させ、酢酸エチル165.3部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液490.2部を得た。次いでイソホロンジアミン33.6部、ジ-n-ブチルアミン1.2部、酢酸エチル237.5部、イソプロピルアルコール200.6部の混合物に、得られた末端イソシアネートプレポリマー490.2部を室温で徐々に添加、次に50℃で1時間反応させた。その後、イソホロンジイソシアネート5.3部を加えて粘度調整した後、酢酸エチル/イソプロピルアルコールを質量比で2/1の割合で混合した溶剤で固形分を30%に調整し、アミン価8.2mgKOH/g、重量平均分子量40,000のウレタン樹脂(A)(PU1)を得た。
【0065】
<合成例2~9>(ウレタン樹脂(A)PU2~PU9の合成)
表1に示した配合および原料を使用した以外は合成例1と同様の方法でウレタン樹脂(A)(PU2)~(PU9)を合成した。なお、表1中の略称は以下を示す。
MPD:3-メチル-1,5-ペンタンジオール
SeA:セバシン酸
AdA:アジピン酸
SuA:コハク酸
DoA:ドデカン二酸
NPG:ネオペンチルグリコール
IPA:イソプロピルアルコール
MPD/SeA:MPDとSeAの脱水縮合物である、数平均分子量2000のポリエステルポリオール
MPD/AdA・SeA:MPDとAdA・SeA(AdA:SeAの質量比50:50)の脱水縮合物である、数平均分子量2000のポリエステルポリオール
MPD/SuA:MPDとSuAの脱水縮合物である、数平均分子量2000のポリエステルポリオール
MPD/AdA:MPDとAdAの脱水縮合物である、数平均分子量2000のポリエステルポリオール
MPD/DoA:MPDとAdAの脱水縮合物である、数平均分子量2000のポリエステルポリオール
【0066】
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液の調製>
塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂(日信化学社製 製品名ソルバインTA5R)30部を、酢酸エチル70部に混合溶解させて、固形分30%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重樹脂溶液(塩酢ビワニスと略記する場合がある)を得た。
【0067】
<セルロース系樹脂溶液の調製>
ニトロセルロース イソプロピルアルコール湿潤品(Nobel Enterprises社製 製品名DLX5-8)43部を、酢酸エチル:エタノール=50:50(重量比)からなる混合溶剤57部に混合溶解させて、固形分30%のニトロセルロース溶液を得た。
【0068】
<ポリアミド樹脂溶液の調製>
ポリアミド樹脂A:重量平均分子量15,000
ポリアミド樹脂B:重量平均分子量24,000
ポリアミド樹脂C:重量平均分子量8,000
ポリアミド樹脂D:重量平均分子量35,000
各ポリアミド樹脂20部を、メチルシクロヘキサン:イソプロピルアルコール=70:30(重量比)からなる混合溶剤80部に混合溶解させて、固形分20%のポリアミド樹脂溶液をそれぞれ得た。
ポリアミド樹脂A~Dはいずれも重合脂肪酸および/またはダイマー酸に由来する構成単位をポリアミド樹脂中に有し、アミン価1~5mgKOH/g、酸価1~15mgKOH/g、軟化点100~125℃のポリアミド樹脂である。
【0069】
<実施例1>
フタロシアニン系青色顔料(トーヨーカラー社製 リオノールブルーFG-7400G(C.I.ピグメントブルー15:4)10部、ウレタン樹脂(A)(PU1)30部、塩酢ビワニス5部、ポリアミド樹脂A溶液2.5部、ラウリン酸アミド1部、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)0.5部、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)1部、酢酸n-プロピル:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メチルシクロヘキサン=35:30:20:15(重量比)からなる混合溶剤50部をサンドミル(アイガーミル)で混練し、表刷り用グラビア印刷インキ(インキS1)を調製した。
【0070】
<実施例2~18>
表2に記載した原料および配合比を使用した以外は実施例1と同様の方法で表刷り用グラビア印刷インキ組成物(インキS2~S18)を得た。
【0071】
<比較例1~8>
表3に記載した原料および配合比を使用した以外は実施例1と同様の方法でグラビア印刷インキ組成物(インキT1~T8)を得た。
【0072】
<表刷りグラビア印刷物の製造(印刷)>
実施例1で得られたグラビア印刷インキを希釈溶剤(ノルマルプロピルアセテート:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メシルシクロヘキサン=35:30:20:15(重量比))で希釈し、ザーンカップNo.3で15秒に調整し、印刷用の希釈インキとした。
次にコロナ放電処理したポリプロピレンフィルム(D-SHNY01、28μm、DIC(株)社製)または防曇フィルム(AF-CV2C 30μm、(フタムラ化学社製)にグラビア校正印刷機を利用して版深30ミクロンの腐蝕版で印刷(乾燥温度50℃、印刷速度50m/分)を行い、印刷物を得た。
【0073】
実施例2~18で得られたグラビア印刷インキを使用した以外は、上記と同様の方法でポリプロピレンフィルム印刷物および防曇フィルム印刷物をそれぞれ得た。
【0074】
比較例1~8で得られたグラビア印刷インキを使用した以外は、上記と同様の方法でポリプロピレンフィルム印刷物および防曇フィルム印刷物をそれぞれ得た。
【0075】
実施例1~18および比較例1~8で得られたグラビア印刷インキおよびその印刷物を用いて以下に記載の評価を行った。結果を表2および表3に示す。
【0076】
<接着性>
実施例1~18、比較例1~8のポリプロピレンフィルムに印刷した印刷物のインキ被膜面に粘着テープ(製品名セロハンテープ)を貼り付け、これを急速に剥がしたときのインキ被膜がフィルムから剥離する度合いから、接着性を評価した。なお、評価は印刷後に25℃で24時間静置後に行った。
A.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの
B.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
C.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が15%以上25%未満であるもの
D.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が25%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0077】
<耐塩ビブロッキング性>
実施例1~18、比較例1~8のポリプロピレンフィルムに印刷した印刷物を4cm角に切り、同じ大きさに切った軟質塩化ビニルシートと印刷物のインキ被膜面とを重ね合わせて、0.5kg/cm2の荷重をかけ、50℃80%RHの雰囲気で24時間放置後、印刷面と塩化ビニルシートを引き剥がし、インキ被膜の剥離の程度から耐塩ビブロッキング性を評価した。
A.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が5%未満であるもの
B.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が5%以上15%未満であるもの
C.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が15%以上25%未満であるもの
D.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が25%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0078】
<耐防曇フィルムブロッキング性>
実施例1~18、比較例1~8の防曇フィルムに印刷した各表刷りグラビア印刷物を4cm角に切り、各印刷面と非印刷面を合わせて、20kg/cm2の荷重をかけ、60℃の雰囲気で24時間放置後、印刷面を引き剥がし、インキの剥離の程度から耐ブロッキング性を評価した。
A.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が5%未満のもの
B.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が5以上15%未満であるもの
C.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が15以上25%未満であるもの
D.インキ被膜がフィルムから剥離した面積が25%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0079】
<版かぶり適性>
実施例1~18および比較例1~8で得られたグラビア印刷インキについて希釈溶剤(ノルマルプロピルアセテート:酢酸エチル:イソプロピルアルコール:メシルシクロヘキサン=35:30:20:15(重量比)にて、粘度をザーンカップNo.3で15秒(25℃)に調整し、印刷機における版の空転90分後の、版かぶり部分の面積を目視判定し、評価を行った。
A.版かぶり面積が目視で確認できない
B.版かぶり面積が0%以上5%未満であるもの
C.版かぶり面積が5%以上10%未満であるもの
D.版かぶり面積が10%以上であるもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0080】
<耐アルコール性>
実施例1~18、比較例1~8のポリプロピレンフィルムに印刷した印刷物のインキ被膜面に市販消毒薬(エタノール濃度75容積%)を噴霧し、直後に学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業社製)にてインキ皮膜を対布で荷重200g、50回擦ったときの布にインキが付着する程度、インキ被膜が剥離する程度から、耐アルコール性を評価した。
A.布にインキが付着せず、インキ被膜がフィルムから剥離していないもの
B.布にインキがわずかに付着しており、インキ被膜がフィルムから剥離していないもの
C.布にインキが付着しており、インキ被膜がフィルムからわずかに剥離したもの
D.布にインキが付着しており、インキ被膜がフィルムからはっきりと剥離したもの
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
実施例1~18および比較例1~8で得られたグラビア印刷インキの防曇フィルム印刷物を用いて接着性、耐塩ビブロッキング性および耐アルコール性の評価を行ってもポリプロピレンフィルム印刷物の場合と同様の評価結果が得られた。
【0085】
特に本発明の表刷り用グラビア印刷インキは、印刷物の耐アルコール性がエタノール濃度75容積%の消毒薬で噴霧し、荷重200g、50回擦った厳しい条件でも良好であるという特有な効果を奏した。
【0086】
本発明により、インキの保存安定性および印刷適性が良好であり、基材に対する接着性、塩化ビニルシートへの耐ブロッキング性が良好であり、特に耐アルコール性および防曇フィルムへの耐ブロッキング性に優れた表刷り用グラビア印刷インキを提供することができた。
特に、本願の耐アルコール性試験条件(促進試験)において、ポリアミド樹脂を含まない比較例1、ウレタン樹脂のポリエステル二塩基酸の炭素数が小さく範囲外の比較例3および4では基準に満たない評価であった。更に特開2017‐025256号公報に記載された発明に該当する比較例5においても基準に満たない評価であった。また、ウレタン樹脂のポリエステル二塩基酸の炭素数が大きく範囲外の比較例6では接着性において未達であった。ハードレジンなどのその他樹脂を含まない比較例7、キレートを有さない比較例8では耐ブロッキング性(防曇フィルム)において劣る結果であった。
ウレタン樹脂(A)が、セバシン酸を含む脂肪族二塩基酸とジオールとからなるポリエステル由来の構成単位を含有する、請求項1または2に記載の表刷り用グラビア印刷インキ。