(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188795
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】点検支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20120101AFI20221215BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20221215BHJP
G06F 3/04842 20220101ALI20221215BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20221215BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G06F3/01 510
G06F3/0484 120
G06F3/0346 421
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097005
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】宗田 昇大
(72)【発明者】
【氏名】清重 直也
(72)【発明者】
【氏名】細木 茂俊
【テーマコード(参考)】
5B087
5E555
5L049
【Fターム(参考)】
5B087AA09
5B087CC32
5B087CC33
5B087DD03
5E555AA64
5E555BA01
5E555BA84
5E555BA87
5E555BB01
5E555BC17
5E555BD01
5E555BE17
5E555CA42
5E555CA44
5E555CA45
5E555CB21
5E555CB23
5E555CB45
5E555CB47
5E555CB51
5E555CB82
5E555CC05
5E555DA09
5E555DA21
5E555DB53
5E555DB56
5E555DC09
5E555DD07
5E555DD08
5E555EA07
5E555EA22
5E555EA25
5E555FA00
5L049CC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造物の点検を容易、かつ、適正に行えるようにする点検支援システムを提供する。
【解決手段】点検支援システム1は、護岸101に対する過去の点検において発見された、クラックを含む異常部・変状部Fの位置と画像を記憶する点検支援サーバー3と、位置検出機能、通信機能及びAR(Augmented Reality;拡張現実)機能を備えたスマートグラス2と、を備える。スマートグラス2を装着した点検者Mが、点検支援サーバー3に記憶された異常部Fの位置に近づくと、この異常部・変状部Fの画像をスマートグラス2に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に対する過去の点検において発見された、クラックを含む異常部の位置と画像を記憶する点検結果記憶手段と、
位置検出機能、通信機能およびAR機能を備えたメガネ型のウェアラブル端末と、
を備え、前記ウェアラブル端末を装着した点検者が前記点検結果記憶手段に記憶された異常部の位置に近づくと、該異常部の画像を前記ウェアラブル端末に表示する、
ことを特徴とする点検支援システム。
【請求項2】
前記ウェアラブル端末を通して見える前記異常部の寸法を計測する計測手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の点検支援システム。
【請求項3】
前記ウェアラブル端末を通して見える前記異常部を撮影する撮影手段を前記ウェアラブル端末に備え、
前記計測手段による計測結果と前記撮影手段で撮影された画像とが、関連付けて前記点検結果記憶手段に記憶される、
ことを特徴とする請求項2に記載の点検支援システム。
【請求項4】
前記計測手段による計測結果に基づいて所定の報告書の作成を支援する報告支援手段を備える、
ことを特徴とする請求項2または3のいずれか1項に記載の点検支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、護岸などの構造物の点検を支援する点検支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電力会社では、護岸などの土木構造物に対して年に一度点検を実施している。この定期点検では、護岸などに目地開きやクラックなどが発生、進行していないかを目視点検し、必要に応じてスケールによりそれらの幅・間隙を計測したり、写真撮影したりして、経時的変化の有無などを確認、管理している。
【0003】
一方、危険予知活動を好適に支援することができる、という情報処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この装置は、対話画面を表示部に表示し、この対話画面において作業現場に潜在する危険事項を表す入力文の入力を作業者から受け付け、この危険事項への対策を表す出力文を対話画面に表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のようにして護岸などを定期点検する場合、前回の点検結果と比べながら、目地開きやクラックなどがどのくらい進行していかを確認、点検する必要がある。このため、前回の点検結果が記憶された携帯端末などを持って、どこにクラックなどがあったかを確認しながら点検をする必要があるが、携帯端末などを持って点検しなければならず点検者の負担が大きい(手間と時間がかかる)ばかりでなく、クラックなどを見落とすおそれがある。
【0006】
また、目地開きやクラックなどの幅・間隙を人がスケールで計測するため、計測する人や周囲環境などによって計測精度にバラツキが生じるおそれがある。また、計測箇所が多いと多大な時間と労力を要する。さらに、打診するためのハンマーなども所持、使用する必要があるため、両手が塞がる場合があり、作業性、安全性が劣るおそれがある。さらには、カメラで写真撮影を要する場合もあり、これらの器具を持ち替えることが必要で、器具を落下させるおれがある。
【0007】
このようなことから、構造物の点検を容易かつ適正に行えるようにする技術が望まれていた。これに対して、特許文献1に記載の情報処理装置では、危険事項への対策を表す出力文が対話画面に表示されるが、前回の点検で発見されたクラックの場所などは表示されず、構造物の点検を支援することはできない。
【0008】
そこで本発明は、構造物の点検を容易かつ適正に行えるようにする点検支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、構造物に対する過去の点検において発見された、クラックを含む異常部の位置と画像を記憶する点検結果記憶手段と、位置検出機能、通信機能およびAR機能を備えたメガネ型のウェアラブル端末と、を備え、前記ウェアラブル端末を装着した点検者が前記点検結果記憶手段に記憶された異常部の位置に近づくと、該異常部の画像を前記ウェアラブル端末に表示する、ことを特徴とする点検支援システムである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の点検支援システムにおいて、前記ウェアラブル端末を通して見える前記異常部の寸法を計測する計測手段を備える、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載の点検支援システムにおいて、前記ウェアラブル端末を通して見える前記異常部を撮影する撮影手段を前記ウェアラブル端末に備え、前記計測手段による計測結果と前記撮影手段で撮影された画像とが、関連付けて前記点検結果記憶手段に記憶される、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の点検支援システムにおいて、前記計測手段による計測結果に基づいて所定の報告書の作成を支援する報告支援手段を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、ウェアラブル端末を装着した点検者が構造物の周りを歩き、過去の点検時に発見された異常部に近づくと、この異常部の画像がウェアラブル端末に表示される。このため、過去に発見された異常部を見過ごすことなく(漏れなく)、あるいは、容易にその異常部を発見して、進行具合などを点検することができる。しかも、ウェアラブル端末に表示された過去の点検時の画像と、現在の異常部の状態とを見比べることで、進行具合などを適正かつ容易に点検・判断することが可能となる。また、メガネ型のウェアラブル端末に異常部の画像が表示されるため、両手が空いた状態となり、端末やその他の器具を落下させるおそれがなくなり、作業性、安全性が向上する。これらの結果、構造物の点検を容易かつ適正に行うことが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、ウェアラブル端末を通して見える異常部、つまり、現在の異常部の寸法が計測手段で自動的に計測されるため、点検者がスケールで計測する場合に比べて、バラツキなく高精度に計測することが可能となる。また、点検者の負担が軽減され、計測箇所が多い場合であっても時間と労力を著しく削減することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、ウェアラブル端末を通して見える異常部、つまり、現在の異常部を撮影した画像と、計測手段による計測結果つまり異常部の寸法とが、関連付けて点検結果記憶手段に記憶される。このように、現在の異常部の寸法と画像とが関連付けて記憶されるため、構造物の状態を適正に管理することができるとともに、次回の点検時において過去の寸法と画像と現在のそれらとを比較することで、異常部の進行具合や構造物の劣化度などを適正かつ容易に点検・判断することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、計測手段による計測結果つまり異常部の寸法に基づいて、報告書の作成が報告支援手段で支援されるため、報告書の作成に要する時間と労力を削減することが可能となる。しかも、異常部の寸法に基づいて支援されるため、異常部の状態に基づいた適正な報告書(例えば、構造物の劣化度などを判断するのに適した報告書)を作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施の形態に係る点検支援システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1の点検支援システムの点検支援サーバーの概略構成ブロック図である。
【
図3】
図2の点検支援サーバーの点検データベースのデータ構成図である。
【
図4】
図1の点検支援システムのスマートグラスに表示される第1の画像例を示す図である。
【
図5】
図1の点検支援システムのスマートグラスで撮影された画像例を示す図である。
【
図6】
図1の点検支援システムのスマートグラスに表示される第2の画像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
図1は、この発明の実施の形態に係る点検支援システム1を示す概略構成図である。この点検支援システム1は、構造物の点検を支援するシステムであり、この実施の形態では、スマートグラス(ウェアラブル端末)2と、点検支援サーバー(点検結果記憶手段)3と、を備える。ここで、この実施の形態では、構造物が発電所の護岸101であり、数百mに及ぶ護岸101を年に一度定期点検する場合について説明する。
【0020】
スマートグラス2は、位置検出機能、通信機能およびAR機能などを備えたメガネ型のウェアラブル端末であり、点検者?が目を覆うように頭部に装着する。すなわち、既製・既知のスマートグラスと同様に、光透過性ディスプレイ、通信部、GPS(位置検出部)、スピーカー、マイク、操作部、ステレオカメラ(撮影手段)、ジャイロスコープ、加速度計、方位計、高度計、温度計などを備えた多機能ウェアラブル端末であり、特に、この発明に関連する機能として次のような機能を備える。
【0021】
第1に、スマートグラス2のレンズを通して見える景色・背景を見ながら、光透過性・疑似ディスプレイで画像・映像を見ることができるAR(Augmented Reality;拡張現実)機能を有する。具体的には、点検支援サーバー3から受信した画像を随時表示し、点検者?がこの画像と景色を同時に見える(画像越しに景色を見える)ようになっている。第2に、スマートグラス2を通して見える景色をステレオカメラで撮影し、撮影した画像などを点検支援サーバー3に送信できるようになっている。ここで、スマートグラス2を通して見える景色には、スマートグラス2を通して見える景色と同等の背景を含み、必ずしもスマートグラス2のグラスを通してステレオカメラで撮影する必要はない。例えば、スマートグラス2のグラスの近傍に配置されたステレオカメラで撮影することで、点検者?がスマートグラス2を通して見えると想定される背景を撮影できればよい。
【0022】
第3に、GPSで検出した現在の位置情報(緯度、経度)を必要に応じて、点検支援サーバー3に逐次送信できるようになっている。第4に、点検者?がスマートグラス2を装着したままスピーカーとマイクを介して通話などを行え、例えば、点検支援サーバー3からの音声指令などを聞き取れるようになっている。第5に、ハンズフリーで各種操作(撮影操作、画像の送信操作など)を行え、例えば、点検の開始時に所定の操作(例えば、電源オン)を行うと、点検開始情報が点検支援サーバー3に送信されるようになっている。ここで、この実施の形態では、スマートグラス2と点検支援サーバー3とが直接通信する場合について説明するが、無線中継装置などを介して通信するようにしてもよい。
【0023】
点検支援サーバー3は、構造物の点検を支援する点検支援サービスを提供するためのサーバーであり、複数のスマートグラス2と通信自在で、同時に複数のスマートグラス2つまり点検者?に対して点検支援サービスを提供できるようになっている。また、任意または特定のコンピューター、例えば、後述する点検報告書を作成するコンピューターとも通信自在となっている。
【0024】
この点検支援サーバー3は、点検支援サービスを提供する事業者や点検対象の構造物を点検、管理する事業者などによって運用され、
図2に示すように、主として、点検データベース(点検結果記憶手段)31と、メインタスク32と、誘導タスク33と、計測タスク(計測手段)34と、報告タスク(報告支援手段)35と、これらを制御などする中央処理部36と、を備える。
【0025】
点検データベース31は、護岸101に対する過去の点検において発見された、異常部Fの位置と画像を含む点検情報を記憶するデータベースである。ここで、異常部Fには、クラックや目地開き、段差などのすべての変状部を含む。点検データベース31には、
図3に示すように、異常部ID311ごとに、位置312、点検結果313、その他314が記憶されている。異常部ID311には、異常部Fを識別するための識別情報が記憶され、1つの異常部Fに対して1つの特有の識別情報が記憶される。また、後述するように、スマートグラス2から新たな異常部Fが発見された旨の新規異常部情報を受信した場合には、新たな識別情報が設定されて異常部ID311~その他314が記憶される。
【0026】
位置312には、この異常部Fの位置情報(緯度、経度)が記憶され、点検結果313には、この異常部Fに対する過去の点検結果が記憶されている。具体的には、日時3131ごとに、画像3132、計測値3133、その他31334が記憶される。つまり、同じ異常部Fに対して過去に複数回点検した場合、その点検日時(日時3131)ごとに画像3132などが記憶される。また、後述するように、スマートグラス2から過去に発見された異常部Fに対する異常部更新情報を受信した場合には、新たな点検日時が設定されて日時3131~その他3134が記憶される。
【0027】
画像3132には、この点検時にスマートグラス2から受信した画像が記憶される。計測値3133には、この点検時の異常部Fに対して後述する計測タスク34で計測された寸法・計測値が記憶される。このような点検データベース31のデータ・情報は、点検対象の構造物が複数存在する場合には、点検対象の構造物ごとに設けられる。
【0028】
メインタスク32は、各サブタスク33~35を起動制御などするタスク・プログラムであり、常時起動・スタンバイされ、スマートグラス2からの情報・指令を常時受信して各サブタスク33~35の起動などを行えるようになっている。
【0029】
誘導タスク33は、スマートグラス2を装着した点検者?を誘導するタスク・プログラムであり、スマートグラス2から点検開始情報を受信した際に起動される。そして、スマートグラス2を装着した点検者Mが点検データベース31に記憶された異常部Fの位置に近づくと、この異常部Fの画像を点検データベース31に表示させる。
【0030】
具体的には、スマートグラス2を装着した点検者Mが点検の開始時に所定の操作を行うと、点検開始情報が点検支援サーバー3に送信され、これを受けてスマートグラス2つまり点検者Mの位置情報を逐次取得する。そして、点検者Mが護岸101の周りを巡視して、過去に発見された異常部Fの位置に近づくと、この異常部Fの画像を含む異常部接近情報をスマートグラス2に送信する。これを受けて、
図4に示すように、スマートグラス2にこの異常部Fの画像が表示されるとともに、スマートグラス2から注意音が発せられる。
【0031】
ここで、点検データベース31の画像3132に複数の画像が記憶されている場合、スマートグラス2に表示させる異常部Fの画像は、予め選択・設定された画像であってもよいし、最新の画像や後述する計測結果画像などであってもよい。あるいは、複数の画像を順次表示するようにしてもよい。
【0032】
計測タスク34は、スマートグラス2を通して見える異常部Fの寸法を計測するタスク・プログラムであり、スマートグラス2から計測要求を受信した際に起動される。すなわち、点検者Mがスマートグラス2を通して見える異常部Fをステレオカメラで撮影し、所定の操作をすることで、
図5に示すような撮影画像と位置情報を含む計測要求が点検支援サーバー3に送信される。これを受けて起動され、受信した画像を解析して異常部Fを抽出し、異常部Fの寸法(クラックの幅寸法、長さ寸法など)を計測する。ここで、寸法を計測する解析手法は、既知・既存の手法のうち、どのような手法であってもよいが、例えば、異常部Fが占めるピクセル数をカウントして計測したり、ステレオカメラによる三角測量法によって計測したりする。
【0033】
そして、計測結果をスマートグラス2に送信するとともに、点検データベース31に記憶する。この実施の形態では、計測した寸法を画像の異常部Fに記した計測結果画像を作成し、この計測結果画像をスマートグラス2に送信する。これを受けて
図6に示すように、スマートグラス2に計測結果画像が表示される。ここで、
図6では、異常部Fが目地で、その開きの寸法が3cm、段差寸法が2cmであることを示している。
【0034】
また、計測要求に含まれる位置情報と同じ位置情報が記憶された位置312が、点検データベース31にあるか否かを検索する。そして、位置312がある場合、つまり、この異常部Fが過去に発見された異常部Fの場合には、この異常部ID311に対して新たな日時3131~その他3134を作成し、日時3131に現在日時、画像3132に計測要求の画像および計測結果画像、計測値3133に異常部Fの寸法を記憶する。一方、位置312がない場合、つまり、この異常部Fが過去に発見されていない場合には、新たな異常部ID311~その他314を作成し、位置312に計測要求の位置情報を記憶し、日時3131~計測値3133に対して上記と同様に記憶する。このようにして、撮影された画像と計測結果とが関連付けて点検データベース31に記憶される。
【0035】
また、点検者Mが新たな異常部Fを発見したり、過去に発見された異常部Fを点検したりして、その情報を点検支援サーバー3に送信すると、その情報がメインタスク32によって点検データベース31に記憶されるようになっている。この場合、上記の計測要求の場合とは異なり、異常部Fの寸法は計測、記憶しないものとする。すなわち、点検者Mが新たな異常部Fを発見し、スマートグラス2で異常部Fを撮影して所定の操作を行うと、その画像と位置情報を含む新規異常部情報が点検支援サーバー3に送信される。これを受けて上記と同様に、新たな異常部ID311~その他314を作成し、位置情報、日時、画像などを記憶する。また、点検者Mが過去に発見された異常部Fを点検し、スマートグラス2で異常部Fを撮影して所定の操作を行うと、その画像と位置情報を含む異常部更新情報が点検支援サーバー3に送信される。これを受けて上記と同様に、該当する異常部ID311に対して新たな日時3131~その他3134を作成し、日時、画像などを記憶する。
【0036】
報告タスク35は、計測タスク34による計測結果などに基づいて点検報告書(所定の報告書)の作成を支援するタスク・プログラムであり、点検報告書を作成するコンピューターから支援要求を受信した際に起動される。ここで、すべての異常部Fに対して報告書を作成すると、報告書の量が膨大となるため、この報告タスク35では、新規に発見された異常部Fや進行・変化が大きい異常部Fに対する報告書を作成する。また、すべての異常部Fに対して同日に点検され、点検データベース31の全異常部ID311において、最新の日時3131はすべて同日であり、最新の点検日に対する報告書を作成するものとする。
【0037】
具体的には、まず、点検データベース31の最初の異常部ID311に対して、日時3131が1つである場合には、新規に発見された異常部Fであるとして報告対象とする。一方、日時3131が複数ある場合、最新・今年の計測値3133の寸法と直前・昨年の計測値3133の寸法とを比較し、その差が所定の閾値以上の場合には、進行・変化が大きい異常部Fであるとして報告対象とする。このようにして、すべての異常部ID311に対して報告対象であるか否かを判断する。次に、予め設定・記憶された報告書フォームの所定欄に、各報告対象の異常部ID311、日時3131、画像3132、計測値3133などのデータ・画像を入力するものである。
【0038】
次に、このような構成の点検支援システム1の動作、点検支援システム1による点検支援方法などについて説明する。
【0039】
まず、スマートグラス2を装着した点検者Mが点検の開始時に所定の操作を行うと、点検開始情報が点検支援サーバー3に送信され、これを受けて誘導タスク33が起動される。次に、点検者Mが過去に発見された異常部Fに近づくと、スマートグラス2にこの異常部Fの画像が表示されるとともに、スマートグラス2から注意音が発せられる。このため、点検者Mは、この異常部Fに対して過去の画像を見ながら点検を行う。
【0040】
続いて、点検者Mがスマートグラス2を通して見える異常部Fをステレオカメラで撮影し、所定の操作をすると、計測要求が点検支援サーバー3に送信される。これを受けて計測タスク34が起動され、異常部Fの寸法が計測されて、その計測結果がスマートグラス2に表示されるとともに点検データベース31に記憶される。
【0041】
また、点検者Mが新たな異常部Fを発見し、スマートグラス2で異常部Fを撮影して所定の操作を行うと、新規異常部情報が点検支援サーバー3に送信され、その画像と位置情報などが点検データベース31に記憶される。同様に、点検者Mが過去に発見された異常部Fを点検し、スマートグラス2で異常部Fを撮影して所定の操作を行うと、異常部更新情報が点検支援サーバー3に送信され、その画像と位置情報などが点検データベース31に記憶される。
【0042】
このようにして、巡視した各異常部Fの点検結果(計測結果などを含む)が点検データベース31に記憶される。そして、護岸101に対する点検が終了して点検報告書を作成する際に、任意のコンピューターから点検支援サーバー3に支援要求を送信すると、これを受けて報告タスク35が起動され、点検報告書の作成が支援される。すなわち、今回・今年の点検において、新規に発見された異常部Fや進行・変化が大きい異常部Fに対して、報告書フォームの所定欄に異常部Fの識別情報、点検日時、画像、寸法などが入力されて、点検報告書の全部または一部が作成されるものである。
【0043】
以上のように、この点検支援システム1によれば、スマートグラス2を装着した点検者Mが護岸101の周りを歩き、過去の点検時に発見された異常部Fに近づくと、この異常部Fの画像がスマートグラス2に表示される。このため、過去に発見された異常部Fを見過ごすことなく(漏れなく)、あるいは、容易にその異常部Fを発見して、進行具合などを点検することができる。しかも、スマートグラス2に表示された過去の点検時の画像と、現在の異常部Fの状態とを見比べることで、進行具合などを適正かつ容易に点検・判断することが可能となる。また、メガネ型のスマートグラス2に異常部Fの画像が表示されるため、両手が空いた状態となり、端末やその他の器具を落下させるおそれがなくなり、作業性、安全性が向上する。これらの結果、護岸101の点検を容易かつ適正に行うことが可能となる。
【0044】
また、スマートグラス2を通して見える異常部F、つまり、現在の異常部Fの寸法が計測タスク34で自動的に計測されるため、点検者Mがスケールで計測する場合に比べて、バラツキなく高精度に計測することが可能となる。また、点検者Mの負担が軽減され、計測箇所が多い場合であっても時間と労力を著しく削減することが可能となる。このため、例えば、夏季における熱中症などを防止することが可能となる。
【0045】
さらに、スマートグラス2を通して見える異常部F、つまり、現在の異常部Fを撮影した画像と、計測タスク34による計測結果つまり異常部Fの寸法とが、関連付けて点検データベース31に記憶される。このように、現在の異常部Fの寸法と画像とが関連付けて記憶されるため、護岸101の状態を適正に管理することができるとともに、次回の点検時において過去の寸法と画像と現在のそれらとを比較することで、異常部Fの進行具合や護岸101の劣化度などを適正かつ容易に点検・判断することが可能となる。
【0046】
また、計測タスク34による計測結果つまり異常部Fの寸法に基づいて、点検報告書の作成が報告タスク35で支援されるため、点検報告書の作成に要する時間と労力を削減することが可能となる。しかも、異常部Fの寸法に基づいて支援されるため、異常部Fの状態に基づいた適正な点検報告書(例えば、護岸101の劣化度などを判断するのに適した報告書)を作成することが可能となる。
【0047】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、異常部Fの位置と画像を含む点検情報を点検支援サーバー3の点検データベース31に記憶する場合について説明したが、別のサーバーに記憶したり、スマートグラス2自体に記憶したりしてもよい。これにより、例えば、スマートグラス2に誘導タスク33を備えて、スマートグラス2自体で該当する画像を表示してもよい。同様に、点検支援サーバー3に計測手段としての計測タスク34を備えているが、スマートグラス2に計測手段を備えて、スマートグラス2自体で異常部Fの寸法を計測してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 点検支援システム
2 スマートグラス(ウェアラブル端末)
3 点検支援サーバー
31 点検データベース(点検結果記憶手段)
34 計測タスク(計測手段)
35 報告タスク(報告支援手段)
101 護岸(構造物)
M 点検者
F 異常部・変状部