(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188797
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 123/22 20060101AFI20221215BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20221215BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221215BHJP
【FI】
C09J123/22
C09J153/02
C09J7/38
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097009
(22)【出願日】2021-06-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】石原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小倉 透
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕貴
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA06
4J004AA07
4J004AB01
4J004DB02
4J004DB03
4J004EA05
4J004FA01
4J040DA141
4J040DM011
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA26
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA10
4J040NA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低透湿性及び凹凸追従性を有するとともに、粘着性及び透明性を備え、かつ、フレキシブルなディスプレイの製造工程を簡略化可能な粘着剤組成物及び粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着剤組成物は、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレン共重合体、及びスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体からなる群から選ばれるエラストマー成分(A)と、水素添加脂肪族粘着付与樹脂、水素添加芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族粘着付与樹脂等からなる群から選ばれる粘着付与樹脂(B)と、を含み、前記粘着付与樹脂(B)の軟化点が90℃以上140℃未満であり、前記粘着付与樹脂(B)の含有量が、前記エラストマー成分(A)100質量部に対して50質量部以上100質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレン共重合体、及びスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むエラストマー成分(A)と、
水素添加脂肪族粘着付与樹脂、水素添加芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/芳香族粘着付与樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む粘着付与樹脂(B)と、を含み、
前記粘着付与樹脂(B)の軟化点が90℃以上140℃未満であり、
前記粘着付与樹脂(B)の含有量が、前記エラストマー成分(A)100質量部に対して50質量部以上100質量部以下である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着付与樹脂(B)の軟化点は、90℃以上130℃以下である請求項1に記粘着剤組成物。
【請求項3】
前記粘着付与樹脂(B)は、水素添加脂環族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、脂環族/脂肪族粘着付与樹脂、脂環族/芳香族粘着付与樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
粘着組成物の23℃における貯蔵弾性率が0.4以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記エラストマー成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、5万以上400万以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を含む粘着シート。
【請求項7】
23℃における損失正接(tanδ)が、1.0以上である請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
少なくとも一方の面に離型フィルムが貼合された請求項6または7に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のディスプレイ(画像表示装置)は、薄型化、フレキシブル化が進んでいる。
このようなディスプレイ内部の素子は、大気中の水分や酸素に非常に弱いため、一般に、水分や酸素等の透過を抑制するバリア層を備えた光学フィルムが設けられている。
【0003】
この光学フィルムをディスプレイに貼合するために粘着シートが用いられており、粘着シートにも水分を透過しないことが求められている。
従来より、透湿性の低いエポキシ樹脂を封止剤として用いる試みが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、低い透湿性のエポキシ樹脂を用いた場合、エポキシ樹脂封入工程及び硬化工程が必要となり製造工程が煩雑化し、歩留まりが低下する問題があった。また、低い透湿性のエポキシ樹脂は柔軟性を保持しておらず、近年のディスプレイの薄型化、フレキシブル化への対応が困難であった。
また、近年においては、光学フィルムに用いられる粘着シートには、封止材としての用途も求められている。このため、粘着シートには、凹凸追従性も必要となってきている。
【0006】
そこで、本発明は、低透湿性及び凹凸追従性を有するとともに、粘着性及び透明性を備え、かつ、フレキシブルなディスプレイの製造工程を簡略化可能な粘着剤組成物及び粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粘着剤組成物は、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレン共重合体、及びスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むエラストマー成分(A)と、
水素添加脂肪族粘着付与樹脂、水素添加芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/芳香族粘着付与樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む粘着付与樹脂(B)と、を含み、前記粘着付与樹脂(B)の軟化点が90℃以上140℃未満であり、
前記粘着付与樹脂(B)の含有量が、前記エラストマー成分(A)100質量部に対して50質量部以上100質量部以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低透湿性及び凹凸追従性を有するとともに、粘着性及び透明性を備え、かつ、フレキシブルなディスプレイの製造工程を簡略化可能な粘着剤組成物及び粘着シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の粘着剤組成物、粘着シートの好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る粘着シートの構成を示す断面図である。
【0011】
本実施形態において、粘着シート1は、粘着シート1の一方の面側に貼合された第一離型フィルム2と、粘着シート1の他方の面側に貼合された第二離型フィルム3とを有している。
粘着シート1は、水分や酸素等の透過を抑制するバリア層を備えた光学フィルムに貼合されるものである。
【0012】
粘着シート1は、主として、粘着剤組成物で構成されている。
本発明において、粘着剤組成物は、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレン共重合体、及びスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むエラストマー成分(A)と、水素添加脂肪族粘着付与樹脂、水素添加芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/芳香族粘着付与樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む粘着付与樹脂(B)とを含む。
【0013】
さらに、本発明において、粘着付与樹脂(B)の軟化点が、90℃以上140℃未満であり、粘着付与樹脂(B)の含有量が、エラストマー成分(A)100質量部に対して50質量部以上100質量部以下である。
このような特徴を有することにより、低透湿性及び凹凸追従性を有するとともに、粘着性及び透明性を備え、かつ、フレキシブルなディスプレイの製造工程を簡略化可能な粘着剤組成物及び粘着シートを提供することができる。
なお、可塑剤を含む場合、加熱時に凝集力及び粘着力が低下し、剥がれや発泡が生じる虞れがあるが、粘着組成物の貯蔵弾性率が0.4MPa未満にならなければ、含有してもよい。
【0014】
粘着付与樹脂(B)の軟化点は、90℃以上140℃未満であるが、90℃以上130℃以下であるのがより好ましく、100℃以上125℃以下であるのがさらに好ましい。粘着付与樹脂(B)の軟化点が前記下限値未満であると、粘着力が不十分となり、剥がれが生じる虞れがある。これに対して、粘着付与樹脂(B)の軟化点が前記上限値を超えると、粘着シート1が硬くなり、粘着力が不足してしまい、衝撃によって光学フィルムと粘着シート1との間に剥離が生じてしまう場合がある。
【0015】
また、粘着剤組成物中における粘着付与樹脂(B)の含有量は、エラストマー成分(A)100質量部に対して50質量部以上100質量部以下であるが、55質量部以上90質量部以下であるのがより好ましい。粘着付与樹脂(B)の含有量が前記下限値未満であると、粘着シート1の25℃における損失正接(tanδ)が低下し、貼合時に凹凸に追従することができない。これに対して、粘着付与樹脂(B)の含有量が前記上限値を超えると、粘着組成物自体が硬くなりすぎるため、常温での貼合ができない。
【0016】
粘着付与樹脂(B)としては、軟化点が上記範囲のもので、かつ水素添加脂肪族粘着付与樹脂、水素添加芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/芳香族粘着付与樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものであればよいが、水素添加脂環族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/芳香族粘着付与樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものであるのが好ましく、水素添加脂環族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族粘着付与樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものであるのがより好ましい。これにより、粘着シート1の凹凸追従性をより高いものとすることができる。さらに、光学フィルムと粘着シート1との界面での剥離をより効果的に防止することができる。
【0017】
ここで、水素添加脂肪族粘着付与樹脂とは、不飽和結合を有する脂肪族炭化水素樹脂の不飽和結合の少なくとも一部を水素化したものを指す。
また、水素添加芳香族粘着付与樹脂とは、芳香族C9留分から合成された芳香族炭化水素樹脂の不飽和結合の少なくとも一部を水素化したものを指す。
また、水素添加脂肪族/芳香族粘着付与樹脂とは、C5留分から抽出される1,3-ペンタジエンに代表される脂肪族化合物と、芳香族C9留分との共重合により合成された脂肪族/芳香族炭化水素樹脂の少なくとも一部を水素化したものを指す。
また、水素添加脂環族粘着付与樹脂とは、C5留分からイソプレンを精製する際に発生するジシクロペンタジエン(DCPD)に代表される脂環族化合物から合成される脂環族炭化水素樹脂の少なくとも一部を水素化したものを指す。
【0018】
また、水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂とは、上記脂環族化合物と、上記脂肪族化合物と、芳香族C9留分との共重合により合成された脂環族/脂肪族/芳香族炭化水素樹脂の少なくとも一部を水素化したものを指す。
また、水素添加脂環族/脂肪族粘着付与樹脂とは、上記脂環族化合物と、上記脂肪族化合物との共重合により合成される脂環族/脂肪族炭化水素樹脂の少なくとも一部を水素化したものを指す。
また、水素添加脂環族/芳香族粘着付与樹脂とは、上記脂環化合物と、芳香族C9留分との共重合により合成された脂環族/芳香族炭化水素樹脂の少なくとも一部を水素化したものを指す。
【0019】
本発明で使用できる水素添加脂肪族粘着付与樹脂、水素添加芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂肪族/芳香族粘着付与樹脂、水素添加脂環族粘着付与樹脂、水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂は、例えば後述の方法で未水素添加炭化水素樹脂を用いて作製することができる。
未水素添加炭化水素樹脂をシクロヘキサン、テトラヒドロフランなどの溶媒に溶解して、ニッケル、パラジウム、コバルト、白金、ロジウム系触媒の存在下で、120~300℃、好ましくは150~250℃の温度、1~6MPaの反応圧力の条件で、1~7時間、好ましくは2~5時間反応させる。
次いで、得られた水素化反応混合液を、例えば、温度100~300℃、圧力100~1mmHgで10分~3時間処理して揮発分(溶媒のほかに低分子量体も揮発し得る)を除去すれば、水素添加された粘着付与樹脂を得ることができる。
【0020】
本発明で使用できる、市販されている粘着付与樹脂(B)としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
水素添加脂肪族粘着付与樹脂としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の脂肪族系炭化水素樹脂であるQuintone(登録商標)CX495等を挙げることができる。
水素添加芳香族粘着付与樹脂としては、例えば、荒川化学工業株式会社製の水素化石油樹脂であるArkonP-100、ArkonP-115、ArkonP-125、ArkonM-90、ArkonM-115、ArkonM-135等を挙げることができる。
【0021】
水素添加脂肪族/芳香族粘着付与樹脂としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の脂肪族/芳香族炭化水素樹脂であるQuintoneS195、QuintoneDX395等を挙げることができる。
水素添加脂環族粘着付与樹脂としては、例えば、RESIN CHEMICALS CO.,LTD.製の水素化DCPD炭化水素樹脂であるHSU100、HSU115、HSU125、ENEOS株式会社製の水添DCPD炭化水素樹脂であるT-REZ HA085、T-REZ HA103、T-REZ HA105、T-REZ HA125、日本ゼオン株式会社製の脂環族系炭化水素樹脂であるQuintone1105、Quintone1325、Quintone1340等を挙げることができる。
【0022】
水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂としては、例えば、KOLON INDUSTRIES CO.,LTD製の水素化炭化水素樹脂であるSukorezSU-200、SukorezSU-210、SukorezSU-220、SukorezSU-230、SukorezSU-400、SukorezSU-420、出光興産株式会社製のDCPD/芳香族共重合系の水添石油樹脂であるI-marv S-100、I-marv S-110、I-marv P-100、I-marv P-125、I-marv P140等を挙げることができる。
【0023】
水素添加脂環族/脂肪族粘着付与樹脂としては、例えば、KOLON INDUSTRIES CO.,LTD製の水素化炭化水素樹脂であるSukorezSU-90、SukorezSU-100S、SukorezSU-110、SukorezSU-120、SukorezSU-130等を挙げることができる。
水素添加脂環族/芳香族粘着付与樹脂としては、例えば、ENEOS株式会社製の脂環族/芳香族炭化水素樹脂であるネオレジンPremiumEP-140等を挙げることができる。
【0024】
なお、水素添加芳香族粘着付与樹脂は、主としてC9留分から合成され、水素添加脂環族粘着付与樹脂は、主としてC5留分からイソプレンを精製する際に発生するジシクロペンタジエン(DCPD)に代表される脂環族化合物から合成される。このため、水素添加脂環族粘着付与樹脂には、橋掛け構造等が存在しており、嵩高い特性がある。
【0025】
上述したように、本発明において粘着剤組成物中には、エラストマー成分(A)が含まれている。
エラストマー成分(A)としては、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレン共重合体、及びスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものを用いるが、ポリイソブチレンを含むものを用いるのが好ましい。
エラストマー成分(A)としては、その重量平均分子量(Mw)が5万以上400万以下であるものを用いるのが好ましく、30万以上350万以下であるものを用いるのがより好ましい。これにより、粘着シート1の硬さが良好なものとなり、衝撃によって光学フィルムと粘着シート1との間に剥離が生じるのをより効果的に防止することができる。
【0026】
また、エラストマー成分(A)の多分散度(Mw/Mn)は限定するものではないが、0.5以上5.0以下であるのが好ましい。これにより、粘着シート1の凹凸追従性をより高いものとすることができる。また、粘着シート1の粘着性が良好なものとなる。
エラストマー成分(A)としては、例えば、JXTGエネルギー社製 ポリイソブチレン「ハイモール」「テトラックス」、BASF社製 ポリイソブチレン「オパノールB100」、「オパノールB200」、「オパノールB30」、「オパノールN100」、「オパノールN50」、「オパノールN80」、カネカ社製 スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体「SIBSTAR 103T」「SIBSTAR 73T」、JSR社製 イソブチレン-イソプレン共重合体 「JSR BUTYL065」「JSR BUTYL268」、「JSR BUTYL365」が挙げられ、これらを2つ以上含んで用いてもよい。
【0027】
なお、粘着剤組成物中には、上記成分の他、紫外線防止剤、架橋剤、触媒、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、酸化防止剤、レベリング剤、安定剤、防腐剤、帯電防止剤、滑剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0028】
粘着シート1の厚みは、特に限定されないが、1μm以上100μm以下であるのが好ましく、5μm以上80μm以下であるのがより好ましく、8μm以上60μm以下であるのがさらに好ましい。
【0029】
また、粘着シート1の25℃における損失正接(tanδ)は、1.0以上であることが好ましい。これにより、凹凸追従性がさらに向上する。
また、粘着シートの25℃における損失正接(tanδ)は、2.0以下であることが好ましい。上記損失正接(tanδ)が前記上限値を超えると、25℃における流動性が高くなり、シート形状を維持するのが困難となる場合がある。
【0030】
また、粘着シート1の25℃における貯蔵弾性率(G’)は、0.4以上であることが好ましい。これにより、被着体を選ばず粘着力を発現することができる。
【0031】
第一離型フィルム2及び第二離型フィルム3は、粘着シート1の粘着面を保護する機能を有している。
このような第一離型フィルム2及び第二離型フィルム3としては、例えば、プラスチックフィルムの表面に離型処理を施したものを用いることができる。
【0032】
プラスチックフィルムとしては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルムなどが挙げられる。なかでも、フィルムの機械的特性、汎用性、コストなどの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又はポリエチレン(PE)フィルムを用いるのが好ましい。
【0033】
第一離型フィルム2、第二離型フィルム3の厚さは、通常12μm以上250μm以下であり、好ましくは19μm以上250μm以下である。
【0034】
以上、本発明の粘着剤組成物及び粘着シートの好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
前述した実施形態では、粘着シートが2枚の離型フィルムを備える場合について説明したが、離型フィルムは1枚でもよいし、無くてもよい。
【実施例0035】
以下、具体的な実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
1.粘着剤組成物の成分
粘着剤組成物の成分として、以下のものを用いた。
(エラストマー成分(A))
・エラストマー成分(1)
ポリイソブチレン、Mw:160万、Mw/Mn:2.9
・エラストマー成分(2)
ポリイソブチレン、Mw:110万、Mw/Mn:3.2
・エラストマー成分(3)
ポリイソブチレン、Mw:305万、Mw/Mn:2.8
なお、本発明において、粘着剤の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いて、標準ポリスチレンで換算することにより得られる測定値のことを意味する。
【0036】
(粘着付与樹脂(B))
・水素添加脂環族/脂肪族粘着付与樹脂(1)
Sukorez SU-100、KOLON INDUSTRIES CO.,LTD.製、水素化炭化水素樹脂、軟化点:100℃
・水素添加脂環族/脂肪族粘着付与樹脂(2)
Sukorez SU-90、KOLON INDUSTRIES CO.,LTD.製、水素化炭化水素樹脂、軟化点:90℃
・水素添加脂環族粘着付与樹脂(1)
T-REZ HA125、ENEOS株式会社製、水添DCPD炭化水素樹脂、軟化点:125℃
・水素添加芳香族粘着付与樹脂
Arkon P-100、荒川化学工業株式会社製、水素化石油樹脂、軟化点:100℃
・水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂(1)
I-marv S-100、出光興産株式会社、水添石油樹脂、軟化点:100℃
・水素添加脂環族粘着付与樹脂(2)
T-REZ HA085、ENEOS株式会社、水添DCPD炭化水素樹脂、軟化点:85℃
・水素添加脂環族/脂肪族/芳香族粘着付与樹脂(2)
Imarv P-140、出光興産株式会社、水添石油樹脂、軟化点:140℃
【0037】
(可塑剤(C))
・可塑剤(1)
YSレジンLP、ヤスハラケミカル株式会社、液状テルペン粘着付与樹脂、粘度50~90mPa・s/80℃
・可塑剤(2)
HV100、ENEOS株式会社、液状ポリブテン樹脂、粘度8,500mPa・s/23℃
【0038】
2.粘着シートの製造
(実施例1)
表1に示す粘着剤組成物の成分を表1に示す割合で混合し、させ、剥離性PETフィルム(第二離型フィルム)に乾燥後の塗工量が25μmになるように塗布した。その後、110℃で3分間乾燥させ剥離性PETフィルム(第一離型フィルム)を上から貼合し粘着シートを得た。
【0039】
(実施例2~13、比較例1~5)
粘着剤組成物の成分及び配合量を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。
なお、各実施例及び各比較例で得られた粘着シートは、全て透明なものであった。
【0040】
3.評価試験
(1)透湿度の測定
得られた粘着シートを210mm幅×300mm長になるように裁断し、両面に貼合された剥離性PETフィルムを剥離し、ローラーを用いて粘着シートの両面にPETフィルムに貼り合わせ、その後50℃、0.5MPa条件下で10分間オートクレーブ処理を行った。
得られた試験片をJIS Z 0208に基づき測定し、得られた結果を透湿度とした。
【0041】
(2)粘着力の測定
得られた粘着シートを25mm幅×150mm長になるように裁断し、剥離性PETフィルム(第一離型フィルム)を剥離した後、ローラーを用いて厚さ100μmのPETフィルムに貼り合わせた。
その後、剥離性PETフィルム(第二離型フィルム)を剥離し、ローラーを用いて粘着シートをアクリル板(60mm×200mm)に貼り合わせ試験片を得た。
得られた試験片を23℃50%RH条件下で一昼夜静置し、引張り試験機で剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で剥離し、得られた剥離強度を粘着力とした。
【0042】
(3)損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G’)の測定
得られた粘着シートを重ね合わせ、50mm幅×50mm長×2mm高の粘着シートサンプルを作成した。粘着シートサンプルを直径8mmの円になるように裁断し試験片を作製した。
得られた試験片の動的粘弾性をTA Instruments社製 粘弾性測定装置 Disco-veryHR-2を用いて測定し、23℃における貯蔵弾性率G’及び損失正接(tanδ)を得た。
測定は下記条件にて行った。
印加周波数:10Hz
法線応力:0.3N
昇温速度:10℃/min
【0043】
(4)打ち抜き性の評価
得られた粘着シートを20φSUS製打ち抜きポンチを用いて打ち抜き、打ち抜かれた粘着シート端部の形状を光学顕微鏡で観察し、評価結果とした。
なお、評価結果は下記の基準で判断した。
◎:打ち抜かれた粘着シート端部の形状は平滑であった。
〇:打ち抜かれた粘着シート端部にヒゲ等の発生が観察された。
×:SUS製打ち抜きポンチに付着物有り、打ち抜かれた粘着シート端部の形状は平滑ではなかった。
【0044】
(5)凹凸追従性の評価
得られた粘着シートを50mm幅×50mm長になるように裁断し、剥離性PETフィルム(第一離型フィルム)を剥離した。
その後、厚さ100μmのPETフィルムを貼合し、試験片を得た。
得られた試験片を25mm幅×25mm長さ×50μm厚さの凸部を有するアクリル板(60mm幅×200mm長さ)に2kgローラーを用いて、凸部を覆うように仮貼合した。
仮貼合後の試験片を23℃、0.5MPa及び10分間の条件にて、オートクレーブ装置を用いて加圧し、本貼合を行った。
本貼合の試験片の凸部の空隙長さを顕微鏡で観察し、凹凸追従性の評価とした。
【0045】
(総合評価)
上記各評価結果から、以下の2段階の基準に従って評価した。
〇 :評価結果が好ましい。
× :評価結果が好ましくない。
これらの結果を、粘着剤組成物の成分及び配合量(質量部)とともに、表1に示した。
【0046】
【0047】
表1から明らかなように、本発明の粘着剤組成物を用いた粘着シートは、粘着シートとしての必要な品質(粘着性及び透明性)を維持しつつ、低透湿性を有するものであった。また、本発明の粘着剤組成物を用いた粘着シートは、凹凸追従性にも優れており、フレキシブルなディスプレイに十分適用することができ、ディスプレイの製造工程を簡略化可能なものであった。これに対して、比較例では、十分な結果が得られなかった。特に、比較例1、比較例3のように粘着付与樹脂(B)の含有量が本発明の範囲外の粘着剤組成物では、凹凸追従性の低下や粘着力の低下が顕著であり、実施例の粘着剤組成物の評価結果と有意な差が存在した。