IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-静止誘導電器 図1
  • 特開-静止誘導電器 図2
  • 特開-静止誘導電器 図3
  • 特開-静止誘導電器 図4
  • 特開-静止誘導電器 図5
  • 特開-静止誘導電器 図6
  • 特開-静止誘導電器 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188800
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】静止誘導電器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20221215BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01F27/28 176
H01F27/08 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097014
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中楯 真澄
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
【テーマコード(参考)】
5E043
5E050
【Fターム(参考)】
5E043AB02
5E043DA01
5E050BA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷却効率を高める静止誘導電器を提供する。
【解決手段】静止誘導電器1は、内側絶縁筒11と、外側絶縁筒12と、巻線13と、水平間隔片14と、を有する。内側絶縁筒11は、絶縁性を有する。外側絶縁筒12は、絶縁性を有し、内側絶縁筒と離間して配置され、内側絶縁筒との間に垂直冷却路が形成される。巻線13は、内側絶縁筒11と外側絶縁筒12との間で内側絶縁筒の周りに巻かれ、巻かれた各段が内側絶縁筒及び外側絶縁筒の延在方向に沿って互いに離間するように配置される。水平間隔片14は、各段に積み重ねられた方向に隣接する巻線の各段同士の間に形成される水平冷却路に介在される。巻線13は、巻線素線と、フィルムと、絶縁ワイヤと、を持つ。フィルムは、巻線素線に巻かれる。絶縁ワイヤは、フィルムに巻かれ、巻線における内側絶縁筒11及び外側絶縁筒12の径方向に隣接する巻線同士の間に、隙間を空ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する内側絶縁筒と、
絶縁性を有し、前記内側絶縁筒の外側に前記内側絶縁筒と離間して配置され、前記内側絶縁筒との間に垂直冷却路が形成された外側絶縁筒と、
前記内側絶縁筒と前記外側絶縁筒との間で前記内側絶縁筒の周りに巻かれ、巻かれた各段が前記内側絶縁筒及び前記外側絶縁筒の延在方向に沿って互いに離間するように配置された巻線と、
前記各段に積み重ねられた方向に隣接する前記巻線の各段同士の間に形成される水平冷却路に介在された水平間隔片と、を備え、
前記巻線は、
導体及び前記導体に巻かれたフィルムを有する巻線素線と、
前記巻線素線に巻かれ、前記巻線における前記内側絶縁筒及び前記外側絶縁筒の径方向に隣接する前記巻線同士の間に隙間を空け絶縁ワイヤと、を備える、
静止誘導電器。
【請求項2】
前記絶縁ワイヤが渦巻き状に前記巻線素線に巻き付けられる、
請求項1に記載の静止誘導電器。
【請求項3】
前記絶縁ワイヤの直径が0.2mm以上0.9mm以下である、
請求項2に記載の静止誘導電器。
【請求項4】
前記絶縁ワイヤの巻付ピッチが10mm以上である、
請求項2または3に記載の静止誘導電器。
【請求項5】
前記絶縁ワイヤがネット状のワイヤを含み、
前記ネット状のワイヤが前記巻線素線に取り付けられる、
請求項1に記載の静止誘導電器。
【請求項6】
前記巻線素線は、縦長の平角銅線である、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の静止誘導電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導電器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器やリアクトルなどの静止誘導電器に使用される巻線は、運転時における発熱量が大きいため、巻線周辺に冷却路を形成し、この冷却路にSF6ガスなどの気体冷媒を用いて冷却を行っている。最近では、環境低負荷を考慮してN2ガス、CO2ガス、空気、CF3Iガスなどの温暖化係数の小さい気体冷媒など、様々な冷媒も使われ始めている。
【0003】
静止誘導電器における巻線の導体のまわりには、例えば熱伝導の悪いPETフィルムが巻かれる。さらに、隣同士の巻線が接触するため、導体で発生した熱は上下方向にしか逃げられないので、冷却が悪い。巻線の冷却効率を高めるために、例えば、垂直冷却路に突起や板などの障害物を設置することがある。しかし、製作工程の増加や形状の複雑化を避けることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-162040号公報
【特許文献2】特開平10-106848号公報
【特許文献3】特開平11-121250号公報
【特許文献4】特開平9-199345号公報
【特許文献5】特開平11-168014号公報
【特許文献6】特開2001-148314号公報
【特許文献7】特開2000-58333号公報
【特許文献8】特開平11-97251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、冷却効率を高めることができる静止誘導電器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の静止誘導電器は、内側絶縁筒と、外側絶縁筒と、巻線と、水平間隔片と、を持つ。内側絶縁筒は、絶縁性を有する。外側絶縁筒は、絶縁性を有し、前記内側絶縁筒と離間して配置され、前記内側絶縁筒との間に垂直冷却路が形成される。巻線は、前記内側絶縁筒と前記外側絶縁筒との間で前記内側絶縁筒の周りに巻かれ、巻かれた各段が前記内側絶縁筒及び前記外側絶縁筒の延在方向に沿って互いに離間するように配置される。水平間隔片は、前記各段に積み重ねられた方向に隣接する前記巻線の各段同士の間に形成される水平冷却路に介在される。前記巻線は、巻線素線と、フィルムと、絶縁ワイヤと、を持つ。フィルムは、前記巻線素線に巻かれる。前記絶縁ワイヤは、前記フィルムに巻かれ、前記巻線における前記内側絶縁筒及び前記外側絶縁筒の径方向に隣接する前記巻線同士の間に、隙間を空ける。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の静止誘導電器1の平面図。
図2図1のX-X線断面図。
図3】巻線13の拡大図。
図4】隣接する巻線素線21同士を示す図。
図5】巻線素線21の数が12の巻線13における冷媒の流れを示す図。
図6】絶縁ワイヤ22の直径と巻線13の温度低減効果の関係の一例を示す特性図。
図7】ネット状ワイヤ40の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の静止誘導電器を、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施形態の静止誘導電器1の平面図である。図2は、図1のX-X線断面図である。静止誘導電器1は、例えば、変圧器やリアクトルである。静止誘導電器1は、例えば、内側絶縁筒11と、外側絶縁筒12と、巻線13と、水平間隔片14と、垂直間隔片15と、内側閉塞板16と、外側閉塞板17と、を備える。
【0010】
内側絶縁筒11及び外側絶縁筒12は、図示しない支持板の上に立設される。内側絶縁筒11は、絶縁性を有する筒体である。外側絶縁筒12は、絶縁性を有する筒状の部材である。外側絶縁筒12の径は、内側絶縁筒11の径よりも大きい。外側絶縁筒12は、内側絶縁筒11の外側に内側絶縁筒11と離間して配置される。
【0011】
巻線13は、内側絶縁筒11と外側絶縁筒12との間で内側絶縁筒11の周りに同軸状に巻かれて配置される。巻線13は、円板状に複数段に巻かれている。巻線13における巻かれた各段(以下、円板巻線13A)は内側絶縁筒11及び外側絶縁筒12の延在方向に沿って互いに離間して複数段に積み重ねられる。巻線13は、らせん状に巻かれて積み重ねられてもよい。
【0012】
図3は、巻線13の拡大図である。巻線13は、例えば、巻線素線21と、絶縁ワイヤ22と、を備える。巻線素線21は、例えば、導体23と、フィルム24と、を備える。導体23は、例えば銅を含み、導電性を有する。導体23は、高圧線である場合には、例えば、縦長の断面略矩形の平角銅線である。導体23の断面の横長は例えば1mmであり、縦長は例えば10mmである。導体23は、平角銅線以外のものでもよく、例えば、断面形状が正方形状、横長の長方形状、円形、楕円形、長円形、多角形状、正多角形状などの線材でもよい。
【0013】
フィルム24は、導体23の側面の全体を覆って導体23に巻かれている。フィルム24は、樹脂製、例えばPET製の絶縁フィルムである。フィルム24は、どのような素材から形成されていてもよく、PET以外の絶縁性の樹脂により構成されていてもよいし、樹脂以外の素材により構成されていてもよい。
【0014】
絶縁ワイヤ22は、ポリエステルなどの絶縁性を有する素材を含んで構成される。絶縁ワイヤ22は、ポリエステル以外の素材を含んで構成されてもよい。に絶縁ワイヤ22は、巻線素線21におけるフィルム24に渦巻き状に巻き付けられている。絶縁ワイヤ22は、断面円形をなす。絶縁ワイヤ22の断面の形状は、円形以外の形状でもよく、例えば、矩形状(正方形状、長方形状)、長円形状、楕円形状、多角形状でもよい。絶縁ワイヤ22は、巻線素線21のほぼ全域に巻き付けられる。
【0015】
絶縁ワイヤ22の直径は、0.2mm以上0.9mm以下の範囲の長さ、例えば0.28mm、0.38mmの長さである。絶縁ワイヤ22の直径は、0.2mm以上0.9mm以下の範囲から外れていてもよい。絶縁ワイヤ22は、100mmの巻付ピッチでフィルム24に巻き付けられている。絶縁ワイヤ22の巻付ピッチは、100mmより広くてもよいし狭くてもよい。
【0016】
図4は、隣接する巻線素線21同士を示す図である。巻線素線21に絶縁ワイヤ22が巻き付けられることにより、巻線13における内側絶縁筒11及び外側絶縁筒12の径方向に隣接する巻線素線21同士の間に、絶縁ワイヤ22が介在する。巻線素線21におけるフィルム24は、PET製であり、硬質である。このため、巻線素線21に巻き付けられた絶縁ワイヤ22は、巻線素線21に対して沈み込み難くされている。
【0017】
隣接する巻線素線21同士の間に絶縁ワイヤ22が介在することにより、巻線13における内側絶縁筒11及び外側絶縁筒12の径方向に隣接する巻線素線21同士の間には、絶縁ワイヤ22の径とほぼ同一の幅の微小な隙間が形成される。絶縁ワイヤ22は、巻線素線21における内側絶縁筒11及び外側絶縁筒12の径方向に隣接する巻線素線21同士の間に隙間を空ける。
【0018】
水平間隔片14は、上下に隣接する円板巻線13Aの間において放射状に等間隔で配置されている。円板巻線13Aの間に水平間隔片14が配置されることにより、上下に隣接する円板巻線13A同士の間には、水平冷却路31が形成される。水平冷却路31は、複数段に積み重ねられた巻線13の各段に積み重ねられた方向に隣接する円板巻線13A同士の全ての間に形成される。
【0019】
垂直間隔片15は、内側絶縁筒11と円板巻線13Aの間、及び外側絶縁筒12と円板巻線13Aの間には、水平間隔片14の内外周上に合わせて配置されている。垂直間隔片15が配置されることにより、周方向に複数の内側垂直冷却路32と外側垂直冷却路33が形成される。内側垂直冷却路32及び外側垂直冷却路33は、いずれも内側絶縁筒11及び外側絶縁筒12の高さ方向に沿って伸びる冷却路である。水平冷却路31は、複数の扇状をなし、内側垂直冷却路32及び外側垂直冷却路33の間で水平方向に放射状に広がる冷却路である。
【0020】
水平冷却路31は、内側垂直冷却路32及び外側垂直冷却路33の間における上下に隣接する円板巻線13Aの間で形成される。このため、静止誘導電器1では、複数の水平冷却路31を連通する内側垂直冷却路32及び外側垂直冷却路33の冷却区間が周方向に複数形成される。
【0021】
内側閉塞板16は、内側絶縁筒11から巻線13に向けて延びる板体である。内側閉塞板16は、内側絶縁筒11の全周にわたって設けられる。内側閉塞板16は、巻線13における上下に隣接する円板巻線13Aの間に静止誘導電器1の内側から進入し、円板巻線13Aの径方向途中位置まで延在する。
【0022】
外側閉塞板17は、外側絶縁筒12から巻線13に向けて延びる板体である。外側閉塞板17は、外側絶縁筒12の全周にわたって設けられる。外側閉塞板17は、巻線13における上下に隣接する円板巻線13Aの間に静止誘導電器1の外側から進入し、円板巻線13Aの径方向途中位置まで延在する。
【0023】
内側閉塞板16及び外側閉塞板17は、内側絶縁筒11及び外側絶縁筒12の高さ方向に等間隔で交互に設けられる。内側閉塞板16及び外側閉塞板17が交互に設けられることにより、図2に矢印Y11で示すように、内側垂直冷却路32及び外側垂直冷却路33の冷媒が水平冷却路31に流れ込む。水平冷却路31に流れ込む冷媒は、矢印Y12で示すように、円板巻線13Aの複数段毎に内側から外側へ、外側から内側へジグザグに流れる。このため、表面積の大きい水平冷却路31を通じて巻線13を冷却するので、冷却性能を向上させることができる。
【0024】
次に、静止誘導電器1の作用について説明する。
巻線素線21及び絶縁ワイヤ22のいずれにもある程度の硬さがあるため、絶縁ワイヤ22が巻かれた巻線素線21を径方向に巻き回すと、径方向に隣接する巻線素線21同士の間に微小隙間が発生する。微笑隙間の幅は、例えば絶縁ワイヤ22の直径~直径の2倍の間の距離に相当する。この微小隙間が発生することにより、巻線素線21の上下には水平冷却路31形成され、左右には微小隙間が形成された状態となる。したがって、巻線素線21の周囲の冷却面積を大きくすることができ、巻線13の冷却効率を高めることができる。
【0025】
具体的な事例として、巻線素線21の数が12の場合について説明する。図5は、巻線素線21の数が12の巻線13における冷媒の流れを示す図である。巻線素線21の間には、絶縁ワイヤ22の直径に相当する微小隙間Sが11か所開いている。内側垂直冷却路32から水平冷却路31に流れ込む冷媒は、矢印Y21で示すようにやや上向きに流入する。このため、内周側の巻線素線21の間の微小隙間Sの冷媒は、矢印Y22で示すように上方に向けて流れる。
【0026】
また、水平冷却路31から外側垂直冷却路33に流れ出る冷媒も同様に、矢印Y23で示すようにやや上向きに流出するため、外周側の巻線素線21の間の微小隙間Sの冷媒も、やはり矢印Y22で示すように上方に向けて流れる。この結果、特に内周側および外周側の微小隙間で冷媒の流れが大きく発生しているため、巻線13の冷却効果を高めることができる。
【0027】
他方、上述したように巻線13の内周側と外周側で冷却効果が大きくなり巻線13の温度が下がるが、巻線13の中央付近では冷却効果はそれほど大きくならないため巻線13の温度はあまり下げられない懸念がある。この懸念に鑑みて解析を行った結果、温度低減効果に関して以下の知見を得た。
【0028】
例えば、巻線13の幅が例えば200mm以上と広い場合、巻線13の内周側と外周側(内側垂直冷却路32及び外側垂直冷却路33)が占める割合が小さくなる。このため、絶縁ワイヤ22巻くことによる巻線冷却効果はそれほど大きくならない。これに対して、巻線13の幅が200mm未満の場合は内周側と外周側(内側垂直冷却路32及び外側垂直冷却路33)が占める割合が大きくなる。その結果、巻線13の冷却効果がより大きくすることができる。
【0029】
絶縁ワイヤ22が巻かれた巻線素線21を使用して巻線13の全体を組み上げる製作工程は基本的に絶縁ワイヤ22が巻かれていない従来の巻線の場合とほぼ変わらない。このため、従来の製作方法を大きく変更することなく、冷却効率の高い巻線13を製作することができる。したがって、現状設備で対応でき、新たな設備などは全く必要ない点を利点として挙げることができる。
【0030】
ここで、絶縁ワイヤ22と巻線13の温度の低減効果の関係の一例について説明する。図6は、絶縁ワイヤ22の直径と巻線13の温度低減効果の関係の一例を示した特性図である。絶縁ワイヤ22の直径が小さいと、巻線素線21の間の隙間も小さいため、冷媒が流れにくく冷却効果も小さい。逆に絶縁ワイヤ22の直径が大きくなると、巻線素線21の間の隙間も広がり冷却効果が上がるが、ある程度以上隙間が広がっても冷却効果は限定的になるとともに、巻線13の径が大きくなりすぎる欠点もある。これらの点を考慮した結果、巻線13の冷却効果が期待でき、かつ、実用的な絶縁ワイヤ22の直径は、0.2~0.9mm程度であることが言える。
【0031】
実施形態の静止誘導電器1によれば、絶縁ワイヤ22が巻かれた巻線素線21を径方向に巻回した場合、隣の巻線素線21との間に絶縁ワイヤ22の直径に相当する微小隙間が構成される。この微小隙間内を冷媒が流れることにより、巻線13の冷却性能を向上させることが可能となる。
【0032】
上記の実施形態では、巻線素線21に絶縁ワイヤ22を巻き付けるが、絶縁ワイヤ22以外の絶縁体を巻線素線21に周囲に配置してもよい。例えば、絶縁ワイヤ22に代えてまたは加えて、巻線素線21の周囲に、ネット状のワイヤ(以下、ネット状ワイヤ)が取り付けられてもよい。ネット状ワイヤは、例えば、絶縁ワイヤ22をネット状に編み上げたものでよい。
【0033】
図7は、ネット状ワイヤ40の一例を示す図である。ネット状ワイヤ40は、複数本の縦糸41と、複数本の横糸42と、を備える。複数本の縦糸41は、互いに略平行に並べられる。隣接する縦糸41同士の間には、横糸42が架け渡される。縦糸41の太さは、横糸42の太さよりも太くされている。横糸42は、縦糸41に対して直交している部分と斜交する部分とがある。縦糸41に直交する横糸42と斜交する横糸42は、縦糸41が並列された方向に並んで配置される。横糸42は、2本の糸を重ねて配置される。縦糸41及び横糸42の形態は、これらの形態以外の形態でもよい。
【0034】
ネット状ワイヤ40では、縦糸41の太さが横糸42の太さよりも太く、縦糸41と横糸42の太さが異なっている。このため、ネット状ワイヤ40を巻線素線21の周囲に配置することにより、巻線13における内側絶縁筒11及び外側絶縁筒12の径方向に隣接する巻線素線21同士の間の隙間を確保しやすくすることができる。したがって、巻線13の冷却効率を高めることができる。また、ネット状ワイヤ40であれば、例えば巻線素線21に被せるのみで巻線素線21の周囲に配置できるので、絶縁ワイヤ22を巻き付けるよりも作業を効率的に行うことができる。
【0035】
また、上記の実施形態では、巻線素線21に絶縁ワイヤ22を均一に巻き付けているが、巻線素線21に対して、粗密をつけて絶縁ワイヤ22を巻き付けてもよい。例えば、巻線素線21を巻き上げて巻線13とする際に、熱がこもりやすい位置では絶縁ワイヤ22を疎に巻き付けて冷媒の流量が多くなるようにし、熱がこもりにくい位置では絶縁ワイヤ22を密に巻き付けてもよい。
【0036】
また、上記の実施形態では、径が一定の絶縁ワイヤ22を巻線素線21に巻き付けるが、延在方向に径が異なる絶縁ワイヤを巻線素線21に巻き付けてもよい。この場合、例えば、熱がこもりやすい位置では径が太い絶縁ワイヤ22を巻き付けて冷媒の流量が多くなるようにし、熱がこもりにくい位置では径が細い絶縁ワイヤ22を巻き付けてもよい。
【0037】
また、上記の実施形態では、巻線素線21の延在方向のほぼ全域に絶縁ワイヤ22を巻き付けるが、巻線素線21の一部に絶縁ワイヤ22を巻き付け、巻線素線21に絶縁ワイヤ22が巻き付けられていない部分を設けるようにしてもよい。また、上記の実施形態では、巻線素線21の絶縁ワイヤ22を連続的に設けるが、絶縁ワイヤ22を断続的に設けたり、巻線素線21の一部のみに絶縁ワイヤ22を設けたりしてもよい。
【0038】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、絶縁性を有する内側絶縁筒と、絶縁性を有し、前記内側絶縁筒の外側に前記内側絶縁筒と離間して配置され、前記内側絶縁筒との間に垂直冷却路が形成された外側絶縁筒と、前記内側絶縁筒と前記外側絶縁筒との間で前記内側絶縁筒の周りに巻かれ、巻かれた各段が前記内側絶縁筒及び前記外側絶縁筒の延在方向に沿って互いに離間するように配置された巻線と、前記各段に積み重ねられた方向に隣接する前記巻線の各段同士の間に形成される水平冷却路に介在された水平間隔片と、を持ち、前記巻線は、導体及び前記導体に巻かれたフィルムを有する巻線素線と、前記巻線素線に巻かれ、前記巻線における前記内側絶縁筒及び前記外側絶縁筒の径方向に隣接する前記巻線同士の間に、隙間を空ける絶縁ワイヤと、を持つことにより、冷却効率を高めることができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
1…静止誘導電器、11…内側絶縁筒、12…外側絶縁筒、13…巻線、13A…円板巻線、14…水平間隔片、15…垂直間隔片、16…内側閉塞板、17…外側閉塞板、21…巻線素線、22…絶縁ワイヤ、23…導体、24…フィルム、31…水平冷却路、32…内側垂直冷却路、33…外側垂直冷却路、S…微小隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7