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特開2022-188814封筒封函用ホットメルト接着剤および該ホットメルト接着剤を用いた積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188814
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】封筒封函用ホットメルト接着剤および該ホットメルト接着剤を用いた積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/00 20060101AFI20221215BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20221215BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20221215BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20221215BHJP
【FI】
C09J123/00
C09J153/02
C09J11/08
C09J7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097033
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢部 謙太
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA06
4J004AA07
4J004AB03
4J004CB02
4J004FA08
4J040BA182
4J040DA011
4J040DA031
4J040DM011
4J040JB01
4J040KA26
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA09
4J040NA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内容物が封入された封筒を口封じするための適切なシール性能および接着強度を有し、‐20℃以下の低温雰囲気下での運搬時、落下時においても内容物が飛散しない接着強度および耐衝撃性を有するホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】融点が60℃~90℃のワックス(A)10~30質量%、スチレン系エラストマー(B)1~9質量%、オレフィン系ポリマー(C)35~55質量%、および軟化点が90~130℃の粘着付与樹脂(D)20~40質量%を含み、スチレン系エラストマー(B)の荷重21.18N、230℃条件下で測定したメルトフローレイトが5~10g/10分、および、オレフィン系ポリマー(C)の荷重21.18N、190℃条件下で測定したメルトフローレイトが600~1,400g/10分である、封筒封函用ホットメルト接着剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が60℃~90℃のワックス(A)、スチレン系エラストマー(B)、オレフィン系ポリマー(C)、および軟化点が90~130℃の粘着付与樹脂(D)を含み、
スチレン系エラストマー(B)の荷重21.18N、230℃条件下で測定したメルトフローレイトが5~10g/10分、および、
オレフィン系ポリマー(C)の荷重21.18N、190℃条件下で測定したメルトフローレイトが600~1,400g/10分、であり、
ワックス(A)、スチレン系エラストマー(B)、オレフィン系ポリマー(C)、および粘着付与樹脂(D)の総質量に対して、
ワックス(A)10~30質量%、
スチレン系エラストマー(B)1~9質量%、
オレフィン系ポリマー(C)35~55質量%、および
粘着付与樹脂(D)20~40質量%、
を含有していることを特徴とする封筒封函用ホットメルト接着剤。
【請求項2】
粘着付与樹脂(D)が、軟化点90℃以上110℃未満の粘着付与樹脂(D1)および110℃以上130℃以下の粘着付与樹脂(D2)を含有する、請求項1記載の封筒封函用ホットメルト接着剤。
【請求項3】
請求項1または2記載のホットメルト接着剤から形成されるホットメルト接着剤層が、紙基材の少なくとも片面に積層されてなる積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封筒封函用ホットメルト接着剤に関し、更に詳細には、低温雰囲気下での接着強度、耐寒衝撃性に優れた封筒口封じ用ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
郵便用の封筒や書類入れなどに用いる袋体を封止する場合、一般に、袋本体の開口端に設けられたフラップを付け、開口を塞ぐように袋本体の背面側に折り畳んで封止している。この際、袋の開口を覆うフラップの裏面に水糊やホットメルト接着剤を塗って貼り付けたり、接着用テープなどを使ったりして封止するようにしている。
【0003】
そこで、従来、封筒用等に使用できるホットメルト接着剤について、下記の特許文献1に示されるような提案がなされてきた。
【0004】
特許文献1において、オレフィン系ポリマー、スチレン系エラストマー、粘着付与樹脂及び数平均分子量が200~3000であるワックスから構成され、高温接着性及び低温接着性に優れているホットメルト接着剤が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のホットメルト接着剤は耐寒衝撃性に劣るという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-120825公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、従来のホットメルト接着剤においては、-20℃以下の低温雰囲気下である寒冷地において、ホットメルト接着剤の接着強度や耐寒衝撃性が低下することで、封筒の運搬時や落下時の衝撃により封筒の口が開封し、内容物が飛散するという問題があった。
【0008】
本発明は、内容物が封入された封筒を口封じするための適切なシール性能および接着強度を有し、-20℃以下の低温雰囲気下での運搬時、落下時においても内容物が飛散しない接着強度および耐衝撃性を有するホットメルト接着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、融点が60℃~90℃のワックス(A)、スチレン系エラストマー(B)、オレフィン系ポリマー(C)、および軟化点が90~130℃の粘着付与樹脂(D)を含み、
スチレン系エラストマー(B)の荷重21.18N、230℃条件下で測定したメルトフローレイトが5~10g/10分、および、
オレフィン系ポリマー(C)の荷重21.18N、190℃条件下で測定したメルトフローレイトが600~1,400g/10分、であり、
ワックス(A)、スチレン系エラストマー(B)、オレフィン系ポリマー(C)、および粘着付与樹脂(D)の総質量に対して、
ワックス(A)10~30質量%、
スチレン系エラストマー(B)1~9質量%、
オレフィン系ポリマー(C)35~55質量%、および
粘着付与樹脂(D)20~40質量%、
を含有していることを特徴とする封筒封函用ホットメルト接着剤に関する。
【0010】
また本発明は、粘着付与樹脂(D)が、軟化点90℃以上110℃未満の石油系粘着付与樹脂(D1)および110℃以上130℃以下の石油系粘着付与樹脂(D2)を含有する上記封筒封函用ホットメルト接着剤に関する。
【0011】
また本発明は、上記ホットメルト接着剤から形成されるホットメルト接着剤層が紙基材の片面若しくは両面に積層されてなる積層体に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、内容物が封入された封筒を口封じするための適切なシール性能および接着強度を有し、-20℃以下の低温雰囲気下での運搬時、落下時においても内容物が飛散しない接着強度および耐衝撃性を有するホットメルト接着剤の提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、特定のワックス、オレフィン系ポリマー、スチレン系エラストマー、粘着付与樹脂を含むホットメルト接着剤であり、-20℃以下の低温雰囲気下で強い接着強度と耐衝撃性を有することにより、寒冷地においても封筒封函用ホットメルト接着剤として好適に用いられることを達成するという効果を有するものである。
以下、本発明の詳細について説明する。
【0014】
本明細書において、特に記載がない限り、「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
【0015】
<ワックス(A)>
本発明のホットメルト接着剤を構成するワックス(A)としては、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン・ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量エチレン・プロピレン共重合物、低分子量エチレン・プロピレン共重合物の酸化物、低分子量エチレン・ブテン共重合物、低分子量プロピレン・ブテン・エチレン共重合物、低分子量エチレン・プロピレン共重合物のスチレングラフト物、エチレン・プロピレン共重合物の無水マレイン酸化物、プロピレン・ブテン・エチレン共重合物の無水マレイン酸化物などの変性ワックス等の合成ワックス挙げられる。中でも熱安定性に優れ、低粘度であるフィッシャートロプシュワックスが好ましい。
これらのワックスは、単独または2種以上使用できる。
【0016】
ワックス(A)の融点は60~90℃であり、より好ましくは65~85℃である。ワックスの融点が60~90℃であることで、低温雰囲気下での接着強度を維持することができる。なお、本発明において融点とは、示差走査熱量計(DSC)測定で、10℃/分で上昇した際のピーク温度である。詳細は実施例の欄に記載する。
【0017】
<スチレン系エラストマー(B)>
スチレン系エラストマー(B)は、荷重21.18N、230℃条件下で測定したメルトフローレイト(以下MFR)が5~10(g/10分)であり、より好ましくは6~9(g/10分)の範囲にあるものである。MFRが5~10(g/10分)であることによって、ホットメルト接着剤に耐熱性を付与することができる。
スチレン系エラストマー(B)は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合物(以下、「SBS」とも略記する)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEBS」とも略記する)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合物(以下、「SIS」とも略記する)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEPS」とも略記する)、スチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレンブロック共重合物(以下、「SBIS」とも略記する)、および、スチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEEPS」とも略記する)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、上記共重合物等は、カルボキシル変性されたものであってもよく、さらには、上記共重合物中のスチレンブロックは、スチレンと、α-メチルスチレン等のその他の芳香族系ビニル化合物との共重合体を含んでいてもよい。さらに、スチレン系エラストマー(B)は、柔軟性に優れている点から、スチレンを3~30重量%の比率で含むことが好ましい。
スチレン系エラストマー(B)は単独または2種以上が使用できる。熱安定性、低温雰囲気下における接着強度と耐衝撃性に優れている点からSEPSの使用が好ましい。
また、スチレン系エラストマー(B)は、トリブロック型の構造部のみを有するものには限定されず、一部ジブロック型の構造部を有するものであってもよい。ジブロック型の含有率は接着力に優れる点から50重量%以下であることが好ましい。
【0018】
<オレフィン系ポリマー(C)>
オレフィン系ポリマー(C)は、190℃、21.18N条件下におけるMFRが600~1,400g/10分の範囲にあるものである。MFRが600~1,400g/10分の範囲にあることで、塗工時の加工性に優れる。
オレフィンの単独重合体でも、オレフィンの共重合体でもよく、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリヘプテン、ポリオクテン、ポリデテン等の単独重合体、エチレンとエチレンおよびプロピレン以外のオレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレンおよびプロピレン以外のオレフィンとの共重合体、エチレンおよびプロピレン以外のオレフィンとエチレンおよびプロピレン以外のオレフィンの共重合体が挙げられる。
【0019】
エチレンとエチレンおよびプロピレン以外のオレフィンとの共重合体におけるエチレンおよびプロピレン以外のオレフィンとしては、炭素数が4~10のオレフィンが好ましい。具体的には、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ヘプテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ノネン共重合体、エチレン-1-デセン共重合体、エチレン-cis-2-ブテン共重合体、エチレン-trans-2-ブテン共重合体、エチレン-イソブチレン共重合体、エチレン-cis-2-ペンテン共重合体、エチレン-trans-2-ペンテン共重合体、エチレン-3-メチル-1-ブテン共重合体、エチレン-2-メチル-2-ブテン共重合体およびエチレン-2,3-ジメチル-2-ブテン共重合体などが挙げられる。これらの中でも、柔軟性及び低温雰囲気下における接着強度に優れている点でエチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体が好ましく、エチレン-1-オクテン共重合体が特に好ましい。
【0020】
プロピレンとエチレンおよびプロピレン以外のオレフィンとの共重合体におけるエチレンおよびプロピレン以外のオレフィンとしては、炭素数が4~10のオレフィンが好ましい。具体的には、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-ヘプテン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-1-ノネン共重合体、プロピレン-1-デセン共重合体、プロピレン-cis-2-ブテン共重合体、プロピレン-trans-2-ブテン共重合体、プロピレン-イソブチレン共重合体、プロピレン-cis-2-ペンテン共重合体、プロピレン-trans-2-ペンテン共重合体、プロピレン-3-メチル-1-ブテン共重合体、プロピレン-2-メチル-2-ブテン共重合体およびプロピレン-2,3-ジメチル-2-ブテン共重合体などが挙げられる。
これらの中でも、柔軟性及び低温雰囲気下における接着強度に優れている点でプロピレン-1-オクテン共重合体が好ましい。
【0021】
エチレンおよびプロピレン以外のオレフィンとエチレンおよびプロピレン以外のオレフィンとの共重合体としては、ブテン-1-ヘキセン共重合体、ブテン-1-オクテン共重合体、ブテン-1-デセン共重合体、ヘキセン-1-オクテン共重合体、ヘキセン-1-デセン共重合体、オクテン-1-デセン共重合体などが挙げられる。
これらの中でも、柔軟性及び低温雰囲気下における接着強度に優れている点でブテン-1-オクテン共重合体が好ましい。
【0022】
オレフィン系ポリマー(C)は、単独または2種以上を併用できるが、柔軟性及び低温雰囲気下における接着強度に優れている点でエチレン-1-オクテン共重合体を含むことが好ましい。
【0023】
<粘着付与樹脂(D)>
粘着付与樹脂(D)としては、テルペン系樹脂、水素添加されたテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、水素添加されたロジン系樹脂、炭化水素系樹脂、水素添加された炭化水素系樹脂、エポキシ系樹脂、水素添加されたエポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、水素添加されたポリアミド系樹脂、エラストマー系樹脂、水素添加されたエラストマー系樹脂、フェノール系樹脂、水素添加されたフェノール系樹脂、ケトン系樹脂、水素添加されたケトン系樹脂、石油系樹脂、水素添加された石油系樹脂、スチレン系樹脂および水素添加されたスチレン系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、水素添加された石油系樹脂は無色透明かつ耐熱性に優れている点で好ましい。これらの粘着付与樹脂は、単独または2種以上を併用できる。
【0024】
粘着付与樹脂(D)の軟化点は90~130℃であり、より好ましくは92~128℃である。さらに、軟化点90℃以上110℃未満の粘着付与樹脂(D1)および軟化点110℃~130℃の粘着付与樹脂(D2)を併用することが特に好ましい。
粘着付与樹脂(D1)の軟化点はより好ましくは92℃~108℃であり、さらに好ましくは95℃~105℃である。また、粘着付与樹脂(D2)の軟化点はより好ましくは112℃~128℃であり、さらに好ましくは114℃~127℃である。
粘着付与樹脂(D1)および粘着付与樹脂(D2)を併用することで、低温雰囲気下および高温雰囲気下で接着強度に優れるホットメルト接着剤とすることができる。なお、本発明における軟化点とは、JIS K 6863に規定される方法により求められる温度である。詳細は実施例の欄に記載する。
【0025】
<配合量>
本発明のホットメルト接着剤を構成する前記ワックス(A)の含有率は10~30質量%であり、好ましくは12~28質量%である。また、上記スチレン系エラストマー(B)の含有率は1~9質量%であり、好ましくは2~8質量%である。また、上記オレフィン系ポリマー(C)の含有率は35~55質量%であり、好ましくは37~53質量%である。また、上記粘着付与樹脂(D)の含有率は20~40質量%であり、好ましくは22~38質量%である。但し、上記含有率はワックス(A)、スチレン系エラストマー(B)、オレフィン系ポリマー(C)、および粘着付与樹脂(D)の合計を100質量%とした際の数値である。
【0026】
粘着付与樹脂(D)の含有率が、ワックス(A)、スチレン系エラストマー(B)、オレフィン系ポリマー(C)、および粘着付与樹脂(D)の合計100質量%に対して20~40質量%のとき、粘着付与樹脂(D1)の含有率は15~25質量%が好ましく、また粘着付与樹脂(D2)の含有率は5~15質量%が好ましい。
また、粘着付与樹脂(D)の含有率が、ワックス(A)、スチレン系エラストマー(B)、オレフィン系ポリマー(C)、および粘着付与樹脂(D)の合計100質量%に対して22~38質量%のとき、粘着付与樹脂(D1)の含有率は16~24質量%が好ましく、また粘着付与樹脂(D2)の含有率は6~14質量%が好ましい。
【0027】
<その他成分>
本発明のホットメルト接着剤には、発明の目的を損なわない範囲で酸化防止剤、シランカップリング剤、シリコーンオイル、ブロッキング防止剤などの添加剤を添加してもよい。
【0028】
酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル〔[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル〕ホスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル]プロピオネート、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、反応性シリコーンオイルや非反応性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは単独または2種以上を併用できる。
【0031】
ブロッキング防止剤としては、例えば、無機質微粉末および有機質微粉末を用いることができる。無機質微粉末としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、シリカ、タルク、クレー、ケイ酸微粉末、合成ケイ酸塩、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が使用でき、有機質微粉末として、耐熱性を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン、アクリル、ナイロン、尿素系樹脂等からなるフィラー、スチレン架橋フィラー、ベンゾグアナミン架橋フィラー、クエン酸脂肪酸モノグリセライド、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレート等が挙げられる。これらは単独または2種以上を併用できる。
【0032】
本発明の目的を損なわない範囲で添加できる酸化防止剤、シランカップリング剤、シリコーンオイル、ブロッキング防止剤などの添加剤の配合量は(A)~(D)の合計100質量%に対して、合計0~10質量%であることが好ましく、より好ましくは合計0~5質量%である。添加剤の配合量が合計0~10質量%になることで任意成分のブリードアウト等がより生じにくくなる。
【0033】
<製造方法>
本発明のホットメルト接着剤を製造する方法としては、特に限定されず、ミキシングロール、ロール、バンバリーミキサー、一軸又は二軸の押出機、ニーダー、エクストルーダー、溶融押出機、撹拌機を備えた溶融釜などを用いて加熱混合するホットメルト法、適当な溶剤に溶解する溶剤法など、いずれの方法も用いることができるが、ホットメルト法が環境への影響が小さいため好ましい。
【0034】
<塗工方法>
本発明のホットメルト接着剤は、過剰な熱を与えることにより起こる劣化を防ぐために150~190℃で塗工することが好ましく、低粘度での塗工が要求されるロールや溶融させる際の撹拌機を備えた溶融釜にも対応できる。そのような観点から、本発明のホットメルト接着剤は、180℃における粘度が500~5,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは550~4,950mPa・sであり、さらに好ましくは600~4,900mPa・sである。
180℃における粘度が500~5,000mPa・sの範囲にあることで、塗布量を多くした際にもホットメルト接着剤が垂れる現象が発生せず、塗工時の作業性も確保できる。
なお、ホットメルト接着剤の粘度は、B型粘度計を使用して測定した値であり、詳細は実施例の欄に記載する。
【0035】
本発明のホットメルト接着剤は、加熱溶融したものを、或いはその溶液を、紙、樹脂等のシート状基材に通常用いられる塗工機又はホットメルト塗工機を用いてビード状態、鏡面状態、発泡状態、スパイラル状態、フォーム状などの様々なパターンで塗布し、必要に応じて加熱、冷却することによって、ホットメルト接着剤層を形成することができ、ホットメルト接着剤層が積層された各種積層体を得ることができる。ホットメルト接着剤層は、重ねて塗工することもでき、2種類のホットメルト接着剤層を同一のシート状基材に並列に塗り分けることもできる。
【0036】
基材は、樹脂シート、紙から選ばれる少なくとも1種以上で構成されて成る紙基材であることが好ましい。例えば、樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂などの樹脂から形成される樹脂シートが挙げられる。紙としては、ユポ紙、コート紙、上質紙、段ボールなどが挙げられる。樹脂シート、紙は単体、または複合して使用しても良い。なお、紙にはニス、再湿糊、インキが塗工されていても良い。
【0037】
積層体の積層構成としては特に限定されないが、好ましい具体例としては「コート紙/ホットメルト接着剤/コート紙」、「上質紙/ホットメルト接着剤/上質紙」などが挙げられる。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0039】
融点、MFR、軟化点は、次の方法で測定した。
【0040】
[融点]
示差走査熱量計(DSC、装置名:DSC-60A Plus)を用いて、クリンプセル上に試料を約2.5mg秤量し、10℃/分で昇温し、得られたチャートの吸熱ピーク温度を読み取った。ピークトップの値を融点とした。
[MFR]
JIS K 7210に規定される方法により求めた。具体的には、ヒーターで加熱された円筒容器内で一定量の樹脂を温度190℃(オレフィン系ポリマー)又は230℃(スチレン系エラストマー)、荷重21.18Nで加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押し出された樹脂の量を測定した値を示し、「g/10分」で表示する。
[軟化点]
JIS K 6863に規定される方法により求めた。具体的には、樹脂組成物を充填した規定の環を12時間以上静置させた後、グリセリンの熱媒体中に入れて、樹脂組成物を充填した規定の環の上に規定の球を置き、一定の割合で熱媒体の温度を上昇させたとき、樹脂組成物の軟化により球が沈み環台の底板に触れたときの温度を軟化点とした。
[粘度]
B型粘度計(東機産業(株)、型番:RB-85L)を使用し、下記条件で測定した。
温度:180℃
試料量:300g
ロ-タ-No.:3
ロ-タ-回転数:30rpm
回転時間:30秒
【0041】
<ホットメルト接着剤の製造>
[実施例1]
表1に示した材料と配合量で、撹拌機を備えた釜にワックス(A)、スチレン系エラストマー(B)、オレフィン系ポリマー(C)、粘着付与樹脂(D)を添加し、150℃で3時間撹拌し、実施例1のホットメルト接着剤を得た。
[実施例2~18、比較例1~9]
表1~3の組成にしたがって、実施例1と同様の方法で実施例2~18、比較例1~9のホットメルト接着剤を得た。
【0042】
以下に表1~3中の略称を示す。
<ワックス(A)>
ワックス1:フィッシャートロプシュワックス(Sasol Chemical Industrial社製、製品名:サソールC80、融点82℃)
ワックス2:フィッシャートロプシュワックス(Qingdao Bouni Chemical社製、製品名:FT WAX T70、融点74℃)
ワックス3:パラフィンワックス(King Honor International社製、製品名:KHパラフィン80M、融点79℃)
ワックス4:パラフィンワックス(日本精蝋社製、製品名:パラフィンワックス150、融点66℃)
ワックス5:ポリエチレンワックス(三井化学社製、製品名:ハイワックス200P、融点124℃)
<スチレン系エラストマー(B>
スチレン系エラストマー1:SEPS(クラレ社製、製品名:セプトン2063、MFR:7g/10分)
スチレン系エラストマー2:SEBS(クレイトンポリマージャパン社製、製品名:クレイトンG1652、MFR:1g/10分)
スチレン系エラストマー3:SEBS(クレイトンポリマージャパン社製、製品名:クレイトンG1657、MFR:9g/10分)
<オレフィン系ポリマー(C)>
オレフィン系ポリマー1:エチレン-1-オクテン共重合体(SK Global Chemical社製、製品名:Solutack6810、MFR:1000g/10分)
オレフィン系ポリマー2:エチレン-1-オクテン共重合体(ダウケミカル社製、製品名:Affinity GA 1875、MFR:1250g/10分)
オレフィン系ポリマー3:エチレン-1-オクテン共重合体(メーカー:SK Global Chemical社、製品名:Solutack7405、MFR:500g/10分)
オレフィン系ポリマー4:エチレン-1-オクテン共重合体(メーカー:ダウケミカル社製、製品名:Affinity GA 1000R、MFR:660g/10分)
<粘着付与樹脂(D)>
粘着付与樹脂1:水素添加C5系石油樹脂(出光興産社製、製品名:アイマーブP-100、軟化点100℃)
粘着付与樹脂2:水素添加C9系石油樹脂(荒川化学工業社製、製品名:アルコンM-90、軟化点90℃)
粘着付与樹脂3:ロジンエステル樹脂(アリゾナケミカル社製、製品名:SYLVALITE RE105L、軟化点104℃)
粘着付与樹脂4:水素添加C9系石油樹脂(荒川化学工業社製、製品名:アルコンP-115、軟化点115℃)
粘着付与樹脂5:水素添加C9系石油樹脂(荒川化学工業社製、製品名:アルコンP-125、軟化点125℃)
粘着付与樹脂6:C9系石油樹脂(東ソー社製、製品名:ペトコール120、軟化点120℃)
粘着付与樹脂7:水素添加C9系石油樹脂(荒川化学工業社製、製品名:アルコンP-140、軟化点140℃)
<その他成分>
酸化防止剤1:酸化防止剤(Songwon Industrial社製、製品名:ソンノックス21B)
【0043】
<接着強度試験に用いる試験片の作製>
[実施例1~18、比較例1~9]
得られたホットメルト接着剤を180℃に加熱して、25mm×60mmのコート紙上に1g/mの塗布量となるようにビード状に塗布し、オープンタイム2秒で別の25mm×60mmコート紙と貼り合わせ、「コート紙/ホットメルト接着剤/コート紙」という構成の積層体を作製し、これを試験片1とした。
【0044】
<試験片の評価>
得られた試験片1について、後述する方法に従い、接着強度(-20℃、23℃および40℃)を評価し、結果を表1に示す。
【0045】
試験片1をT形に折り、引張試験機に設置した状態で各温度(-20℃、23℃、40℃)にてそれぞれ15分間温調した。その後、200mm/minの速度でT形剥離を行い、剥離時の最大強度を接着強度(N/25mm)とした。各試験片についてn=3点測定し、その平均値を求め下記基準で判断した。〇を実用可能と判断した。
[-20℃における接着強度]
〇:2.0N以上
×:2.0N未満
[23℃における接着強度]
〇:3.0N以上
×:3.0N未満
[40℃における接着強度]
〇:2.0N以上
×:2.0N未満
【0046】
<耐寒衝撃試験に用いる試験片の作製>
[実施例1~18、比較例1~9]
得られたホットメルト接着剤を180℃に加熱して、25mm×100mmの段ボール(K-ライナー、Bフルート)の25mm幅に2g/mの塗布量となるようビード状に塗布し、オープンタイム2秒で別の25mm×100mmの段ボールと、40mm重なるよう貼り合わせ、「段ボール/ホットメルト接着剤/段ボール」という構成の積層体を作製した。積層体を25mm×100mmのSUS板2枚で挟み、試験片2を作製した。なお、SUS板と積層体は両面テープで固定した。
【0047】
<試験片2の評価>
得られた試験片2について、後述する方法に従い、耐寒衝撃性を評価し、結果を表1~3に示す。
【0048】
<耐寒衝撃試験>
試験片2を-20℃で1時間温調し、取り出してすぐに、試験片から50cmの高さから重さ50gの鉄球を落下し、基材破壊率(%)を求めた。なお、基材破壊率は、衝撃で剥がれた段ボール片がホットメルト接着剤表面に占める割合を目視で確認し、求めた。n=3点測定し、その平均値を求めて下記基準で判断した。◎、〇を実用可能と判断した。
◎:基材破壊率が85%以上、100%以下
〇:基材破壊率が70%以上、85%未満
△:基材破壊率が50%以上、70%未満
×:基材破壊率が50%未満
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
表1~3の結果から、本願発明の封筒封函用ホットメルト接着剤は、低温雰囲気下において優れた接着強度および耐寒衝撃性を保持していることが示された。