(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188841
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法
(51)【国際特許分類】
B63B 29/20 20060101AFI20221215BHJP
B63B 73/60 20200101ALI20221215BHJP
【FI】
B63B29/20
B63B73/60
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097076
(22)【出願日】2021-06-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】100090044
【弁理士】
【氏名又は名称】大滝 均
(72)【発明者】
【氏名】田窪 竜太
(57)【要約】
【課題】
長さの異なる複数の梯子本体及び長さ調整の長孔楕円形状のボルト孔を有する複数の下部固定金具を予め準備することにより、船舶内の高さの異なる各所に設けられる垂直梯子を容易に設置する。
【解決手段】
少なくとも上下の各端部に上部固定ボルト穴及び下部固定ボルト穴を有する長さを異にする複数の梯子本体を予め準備する工程と、所定の高さ位置に長さ調整用の下部固定金具ボルト長孔を有する長さを異にする複数の下部固定金具を予め準備する工程と、下部固定金具の下部固定金具溶接パッド(PAD)を設置面に溶接固定する工程と、垂直梯子を設置する部材側面から所定幅突出して上部固定金具を溶接する工程と、梯子本体の下部固定ボルト穴と下部固定金具の下部固定金具ボルト長孔に挿通されたボルトを本締めする工程とからなる垂直梯子設置方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶内に傾斜梯子を設置することができないスペース及び/又は梯子設置作業スペースがないスペースに設置される垂直梯子設置方法であって、
(1)船殻図と機関室配置図に基づき、垂直梯子を必要とする高さ確認する工程と、
(2)4種の「850mm長の梯子本体」、「1150mm長の梯子本体」、「1450mm長の梯子本体」、「1750mm長の梯子本体」の製作図を作成する工程と、
(3)6種の「110mm長の下部固定金具」、「160mm長の下部固定金具」、「210mm長の下部固定金具」、「260mm長の下部固定金具」、「310mm長の下部固定金具」、「360mm長の下部固定金具」の製作図を作成する工程と、
(4)1種類の上部固定金具の製作図を作成する工程と、
(5)4種の梯子本体、6種の下部固定金具、1種の上部固定金具の各製作図に基づき、工場にて各製作する工程と、
(6)該当する組み合わせを下記表1から選び製作図を作成する工程と、
(7)選択された梯子本体、上部固定金具。下部固定金具を工場で取りつける工程と、
(8)選択された組み合わせの梯子本体、上部固定金具、下部工程金具を設置場所に搬入する工程と、
(9)下部固定金具を機関室内インナーボトムに溶接固定する工程と、
(10)下部固定金具のボルトを緩めて、上部固定金具を敷板の枠に合うように長孔固定位置を調整する工程と、
(11)上記調整位置にて上部固定金具を溶接する工程と、
(12)下部固定金具のボルトを締める工程と、
からなることを特徴とする船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法。
表1
【請求項2】
4種の「850mm長の梯子本体」、「1150mm長の梯子本体」、「1450mm長の梯子本体」、「1750mm長の梯子本体」、6種の「110mm長の下部固定金具」、「160mm長の下部固定金具」、「210mm長の下部固定金具」、「260mm長の下部固定金具」、「310mm長の下部固定金具」、「360mm長の下部固定金具」をそれぞれ準備して組み合わせることにより、875mm~2075mm間に設置される垂直梯子であることを特徴とする請求項1に記載の船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法。
【請求項3】
請求項1の複数の下部固定金具は、上端から20mm位置で、長孔中心が接地面から75mm位置に長さ50mmの長さ調整用の下部固定金具ボルト長孔を有することを特徴とする請求項2に記載の船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法。
【請求項4】
請求項2に記載の長さの梯子本体に加え、550mm長さの梯子本体及び2050mm長の梯子本体各製作図を作成し、工場にて下記表2,表3の組み合わせに係る梯子本体、上部固定金具、下部固定金具を工場にて製作した300mm~2375mmの間に設置される垂直梯子であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法。
表2
表3
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶機関室内等に異なる高さ箇所に配置される垂直梯子の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の船舶に用いられる昇降用垂直梯子に関しては、本願出願人は、特開2021-46051号公報の開示を提案をしている。
【0003】
特開2021-46051号公報開示は、発明名称「二層甲板船のホールドサイドタンクレセス内垂直梯子構造」に係り、「船体強度及びアクセス構造の制約により、ホールド面に小さく狭いリセス内に配置せざると得なかった二層甲板船のオーバーハングデッキレセス内垂直梯子構造において、艤装時及び就航後の安全性向上を見込める二層甲板船のオーバーハングデッキレセス内垂直梯子構造の提供をすることを目的とする」発明解決課題において(同公報明細書段落番号0011参照)、「二層甲板船のホールドサイドタンク内に配置される船体横方向に面して配置される上部垂直梯子と、これに直角にサイドタンクのオーバーハングデッキ部下のレセス内に配置される下部垂直梯子とを有し、昇降者昇降の際にはオーバーハングデッキ部からホールド内に出て垂直梯子を乗り移る必要のある二層甲板船のホールドサイドタンクレセス内垂直梯子構造において、サイドタンクの両サイド壁に接合固定される上部サイド壁ハンドグリップの下端に接合されて、上部船殻開口内正面近傍まで延設され、かつ、上部船殻開口中央で離間されて固定配置される左右の上部ハンドグリップと、サイドタンクのオーバーハングデッキ部下のレセス内の下部船殻開口近傍に下部垂直梯子に沿って吊り下げ固定され、下端がレセス内のサイドタンクの両サイド壁に固定配置される左右の下部ハンドグリップと、を有する」構成とすることにより(同公報特許請求の範囲請求項1の記載等参照)、「(1)二層甲板船のオーバーハングデッキレセス内垂直梯子構造において、上段部のハンドグリップをサイド面だけでなく、上部船殻開口正面足元にも延設して設けて下部垂直梯子の第一段ステップまでの間の距離を小さくしたので艤装時及び就航後の昇降者の昇降の安全性向上を見込める。(2)船体強度及びアクセス構造の制約により、特殊な形状のリセスとせざると得なかった二層甲板船のオーバーハングデッキレセス内垂直梯子構造において、昇降者が安全に昇降が行える。」等の効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0013参照)。
【0004】
図3(a)(b)は、特開2021-46051号公報の開示発明の実施例1を示す図であり、そのうち、
図3(a)は、実施例1に係る二層甲板船のホールドサイドタンクレセス内垂直梯子構造1の船体左舷側部分概略図であり、
図3(b)は、これと直角なホールド方向から見た実施例1に係る二層甲板船のホールドサイドタンクレセス内垂直梯子構造1の船体縦部分概略図である。
図3(a)(b)において、符号101は、開示発明の実施例1に係る二層甲板船のホールドサイドタンクレセス内垂直梯子構造、102a、102bは、上部ハンドグリップ、103a、103bは、下部ハンドグリップ、200は、船側外板、201は、ホールド、202は、サイドタンク、203は、上部垂直梯子、204は、オーバーハングデッキ、205は、オーバーハングデッキ部アングルステップ、206は、レセス、207は、下部垂直梯子、208a、208bは、上部サイド壁ハンドグリップ、209は、上部船殻開口である(なお、
図3における符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、100番台及び200番台の3桁に変更して説明した。)。
【0005】
しかしながら、船舶の各所に配置される垂直梯子は、二層甲板船のホールドサイドタンクレセス内垂直梯子に限らない。すなわち、船舶機関室内の各所に配置される各所敷板やデッキサイドストリンガー(船側縦桁)などへの昇降用にも垂直梯子が多様される。換言すれば、船舶機関室に限っても、船舶機関室内には、機関室デッキ(機関室床)から中間位置の高さに配置された機器類のメンテナンスのために作業員が踏みとどまる敷板と称される作業員の足場板が配置され、これらの敷板に昇降する専用の垂直梯子が配置される。また、デッキ(甲板)上に配置されるデッキサイドストリンガー(船側縦桁)への昇降のためにも所定高さ(長さ)の昇降用垂直梯子が用いられる。
【0006】
図4は、船舶機関室内において、搭載機器のメンテナンス作業のため機関室内の中間高さ位置に配置される敷板からデッキサイドストリンガー(船側縦桁)へ登る垂直梯子の概略を、
図5は、機関室内の所定高さ位置にアクセスするため配置される敷板からインナーボトムへ降りる垂直梯子の概略を示す図であり、また、
図6は、機関室内に配置される補助ボイラーへのアクセス用垂直梯子の概略を、
図7は、バラスト水処理装置AOTリアクタへのアクセス用垂直梯子の概略を示す図である。
【0007】
図4~
図7において、符号301a~301dは、これらの船舶各所に配置される垂直梯子であり、302a~302cは、船舶各所の中間高さ位置に配置される敷板、303は、デッキサイドストリンガー(船側縦桁)、304は、インナーボトム、305は、補助ボイラーメンテナンス用敷板の枠、306は、セカンドデッキ床面、307は、サードデッキ床面である。
【0008】
図4~
図7に示されるように、船舶の機関室等の船舶各所には、中間高さに配置される敷板302a~302dcへの昇降用垂直梯子301a~301fdが配置される。
これは、配置箇所に所定の傾斜で配置される傾斜梯子が設置されるスペースがないにも拘わらず、これらの各所に作業員が出向いて計器を視認したり、所定のメンテナンス等を行う必要があるからであり、これらの必要箇所に適宜配置されるのが垂直梯子301a~301dである。
図4~
図7から明らかなように、船舶の各所に配置される垂直梯子301a~301dは、その長さが、設置箇所の状況に応じて適宜の長さで設置されており、この種の長さは様々な垂直梯子301a~301dは、船殻図と機関室配置図に基づき製作図を作成の上、工場等で製作の上、現場に持ち込んで取りつけることが行われていた。
【0009】
しかしながら、梯子の製作図により製作された垂直梯子301a~301dであっても、実際は、船殻ブロックの製作誤差や梯子301a~301dの製作誤差等によって、現場に運び込まれた垂直梯子301a~301dを所定の場所に取り付けようとすると、所定の溶接位置に合わず、その場でその都度、実際の高さに合わせた長さ調整等の手間が発生することが多かった。
【0010】
すなわち、
図8は、機関室内の所定高さに配置された敷板に垂直梯子を配置する従来の垂直梯子設置状況の概略を示す図であり、
図8において、401は、船殻ブロック、402は、敷板、403は、インナーボトム、406は、敷板402に設けられる上部固定金具、405は、梯子本体、404は、インナーボトム403に設けられる下部固定金具である。上部固定金具406及び下部固定金具404には、梯子本体405をボルト止めするためのボルト穴(図示外)が設けられている。
【0011】
そして、
図8に示すように、機関室内のインナーボトム403と敷板402の高さが定まっていて、工場にて梯子405に上部固定金具406と下部固定金具404を取り付け、梯子本体405を製作し、設置場所に持ち込まれた梯子本体405は、下部固定金具404をインナーボトム403に溶接し、その後、上部固定金具406を敷板の枠に溶接するようにしていた。しかしながら、上部固定金具406の位置は、溶接箇所がズレていたりして、梯子本体405の設置誤差は発生していた。
【0012】
すなわち、船殻ブロック401の精度誤差や梯子405の製作誤差によっては、梯子405もしくは上部固定金具406、下部固定金具404を現場で改造して長さ調整を行なう手間が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本願発明は、予め長さの異なる複数の梯子本体を準備すると共に、長さ調整の長孔楕円形状のボルト孔を有する複数の下部固定金具を準備することにより、船舶内の高さの異なる各所に設けられる垂直梯子の設置の容易を図らんことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本願請求項1に係る発明は、船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法において、船舶内に傾斜梯子を設置することができないスペースに設置される垂直梯子設置方法であって、(1)船殻図と機関室配置図に基づき、垂直梯子を必要とする高さ確認する工程と、(2)4種の「850mm長の梯子本体」、「1150mm長の梯子本体」、「1450mm長の梯子本体」、「1750mm長の梯子本体」の製作図を作成する工程と、(3)6種の「110mm長の下部固定金具」、「160mm長の下部固定金具」、「210mm長の下部固定金具」、「260mm長の下部固定金具」、「310mm長の下部固定金具」、「360mm長の下部固定金具」の製作図を作成する工程と、(4)1種類の上部固定金具の製作図を作成する工程と、(5)4種の梯子本体、6種の下部固定金具、1種の上部固定金具の各製作図に基づき、工場にて各製作する工程と、(6)該当する組み合わせを下記表1から選び垂直梯子の製作図を作成する工程と、(7)選択された梯子本体、上部固定金具。下部固定金具を工場で取りつける工程と、(8)選択された組み合わせの梯子本体、上部固定金具、下部工程金具を設置場所に搬入する工程と、(9)下部固定金具を機関室内インナーボトムに溶接固定する工程と、(10)下部固定金具のボルトを緩めて、上部固定金具を敷板の枠に合うように長孔固定位置を調整する工程と、(11)上記調整位置にて上部固定金具を溶接する工程と、(12)下部固定金具のボルトを締める工程と、からなることを特徴とする。
表1
また、本願請求項2に係る発明は、請求項1に記載の船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法において、4種の「850mm長の梯子本体」、「1150mm長の梯子本体」、「1450mm長の梯子本体」、「1750mm長の梯子本体」、6種の「110mm長の下部固定金具」、「160mm長の下部固定金具」、「210mm長の下部固定金具」、「260mm長の下部固定金具」、「310mm長の下部固定金具」、「360mm長の下部固定金具」をそれぞれ準備して組み合わせることにより、875mm~2075mm間に設置される垂直梯子であることを特徴とする。
そして、本願請求項3に係る発明は、請求項2に記載の船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法において、請求項1の複数の下部固定金具は、上端から20mm位置で、長孔中心が接地面から75mm位置に長さ50mmの長さ調整用の下部固定金具ボルト長孔を有することを特徴とする。
さらに,本願請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3に記載の船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法において、請求項2に記載の長さの4種の梯子本体に加え、550mm長さの梯子本体及び2050mm長の梯子本体各製作図を作成し、工場にて下記表2,表3の組み合わせに係る梯子本体、上部固定金具、下部固定金具を工場にて製作した300mm~2375mmの間に設置される垂直梯子であることを特徴とする。
表2
表3
【発明の効果】
【0016】
船殻ブロック精度誤差や梯子製作精度誤差があっても、設置現場にて容易に長さ調整が出来るようになる。
下部固定金具のボルト穴形状を長孔楕円形状とすることで、梯子本体や上下の固定金具での調整を不要とした。
また、下部固定金具を6種とすることで、本体梯子を4種の長さを準備することで、大半の機関室内の垂直梯子を製作することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(A)(B)は、本発明に係る船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法を実施するための一例として、船舶機関室内の所定高さ位置に配置される垂直梯子の基本構成図であり、
図1(A)は、基本構成部品図、
図1(B)は、基本組立図であり、
図1(A)の右は、基本部品である梯子本体の縦面図、中央には梯子本体の側面図、左には、上部固定金具及び下部固定金具の側面図であり、
図1(B)の右は、基本組立図の側面図、左には同縦面図である。
【
図2】
図2(A)は、4種の(1)850mm長の梯子本体、(2)1150mm長の梯子本体、(3)1450mm長の梯子本体(上述した例の梯子本体)、(4)1750mm長の梯子本体の概略を示す縦面図であり、
図2(B)は、6種の(A)110mm長の下部固定金具、(B)160mm長の下部固定金具、(C)210mm長の下部固定金具、(D)260mm長の下部固定金具、(E)310mm長の下部固定金具、(F)360mm長の下部固定金具の概略を示す図である。
【
図3】
図3(a)(b)は、特開2021-46051号公報の開示発明の実施例1を示す図であり、そのうち、
図3(a)は、実施例1に係る二層甲板船のホールドサイドタンクレセス内垂直梯子構造1の船体左舷側部分概略図であり、
図3(b)は、これと直角なホールド方向から見た実施例1に係る二層甲板船のホールドサイドタンクレセス内垂直梯子構造1の船体縦部分概略図である。
【
図4】
図4は、船舶機関室内において、機器メンテナンス作業のため機関室内の中間高さ位置に配置される敷板からデッキサイドストリンガー(船側縦桁)へ登る垂直梯子の概略を示す図である。
【
図5】
図5は、機関室内の所定高さ位置にアクセスするため配置される敷板からインナーボトムへ降りる垂直梯子の概略を示す図である。
【
図6】
図6は、機関室内に配置される補助ボイラーへのアクセス用垂直梯子の概略を示す図である。
【
図7】
図7は、バラスト水処理装置AOTリアクターへのアクセス用垂直梯子の概略を示す図である。
【
図8】
図8は、機関室内の所定高さに配置された敷板に垂直梯子を配置する従来の垂直梯子設置状況の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法を実施するための一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例0019】
(前提)
船舶内の所定の中間高さに垂直梯子の敷設が要求される場合には、様々な場合があるが、実施例1として、船舶機関室内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子の設置を例として以下説明する。なお、前提としては、本実施例1に係る船舶機関室内設置垂直梯子は、傾斜梯子を設置するスペースがない箇所又は傾斜梯子を設置するスペースはあるけれども傾斜梯子は垂直梯子に比べて重量が大きくなるのでメンテナンスの頻度が少ない箇所への垂直梯子設置を前提とする。すなわち、傾斜スペースをとることのできない箇所において、極めて簡便に現場作業を極力少なくした船舶機関室内設置垂直梯子の設置を前提とするものである。
船舶機関室は、船体大きさにもよるが、およそ2500mm~7000mm程度の天井高さを有し、その限られた天井高さ内で、上述してきたように様々な高さ位置に配管や機器類が配置され、それらの配管や機器類のメンテナンスのために敷板等が配置される。その敷板の高さ位置を測ってみると、それらはおおよそ875mm~2075mm高さに敷板が配置されている。
【0020】
そこで、本実施例1に係る船舶機関室内設置垂直梯子においては、この高さ範囲に合わせて、複数の長さの梯子本体と下部固定金具を予め製作準備し、かつ、所定高さ位置に長穴のボルト穴を有する下部固定金具を製作準備しておけば、船殻ブロック401の精度誤差や梯子405の製作誤差があったとしても、現場で垂直梯子の長さ調整をきわめて容易に行うことができることとなる。
【0021】
図1(A)(B)は、本発明に係る船舶内の高さの異なる箇所に配置される垂直梯子設置方法を実施するための一例として、船舶機関室内の所定高さ位置に配置される垂直梯子の基本構成図であり、
図1(A)は、基本構成部品図、
図1(B)は、基本組立図であり、
図1(A)の右は、基本部品である梯子本体の縦面図、中央には梯子本体の側面図、左には、上部固定金具及び下部固定金具の側面図であり、
図1(B)の右は、基本組立図の側面図、左には同縦面図である。
【0022】
図1(A)(B)において、符号1は、本実施例1に係る船舶機関室内設置の垂直梯子、2は、垂直梯子本体、2a~2dは、角柱ふみ棒(ステップ)設置位置、3は、上部固定ボルト穴、4は、下部固定ボルト穴、5a~5dは、角柱ふみ棒(ステップ)、6は、上部固定金具、7は、上部固定金具ボルト穴、8は、下部固定金具、9は、下部固定金具ボルト長孔、10は、下部固定金具ふみ棒ボルト穴、11、11a、11bは、下部固定金具溶接パッド(PAD)、12は、下部固定金具ふみ棒、13a、13bは、上部固定ナット、14a、14bは、上部固定ボルト、15a、15bは、下部固定ナット、16a、16bは、下部固定ボルトである。なお、各縦面図において、左右の同じ部材は、「a」、「b」の添え字で示し、側面図においては、「a」「b」の添え字を省略して示している。
【0023】
本実施例1に係る船舶機関室内設置垂直梯子1は、基本的には、梯子本体2及び上部固定金具6、下部固定金具8からなり、かつ、下部固定金具8には、梯子本体2との設置高さ調整用の下部固定金具ボルト長孔9が設けられる。
そこで、2本の1450mm長の65mm×9mm厚のフラットバーのSS材からなる梯子本体2からなり、当該2本の長尺材に300mm間隔で配置される16mm角の角柱ふみ棒(ステップ)設置位置2a~2dには、両端に角鋼突起(図示外)が貫通固定される角穴(図示外)が形成され、該角穴(図示外)に両端に角棒突起(図示外)を有する所定長のふみ棒5a~5dが挿通され、両端が溶接される。
【0024】
さらに、梯子本体2の上部固定ボルト穴3,3a、3bは、梯子本体2の上端から25mm位置に開口するボルト穴であり、また、下部固定ボルト穴4、4a、4bは、梯子本体2の下端から25mm位置に開口するボルト穴である。
また、下部固定金具8は、全長260mmの下部固定金具8等であり、上端から20mm位置に長さ50mmの長さ調整用の下部固定金具ボルト長孔9が設けられ、また、その下方に、梯子本体2の最下ふみ棒5dから300mm間隔の所定位置に,上述したと同じ両端に角鋼突起(図示外)が貫通固定される角穴(図示外)が形成され、該角穴(図示外)に角棒突起(図示外)を有する所定長のふみ棒12が挿通され、その両端が溶接締結される。
【0025】
なお、本実施例1に係る船舶機関室内設置の垂直梯子1においては、梯子本体2について4種の各長さ、下部固定金具8については、6種の高さのものとし、かつ、下部固定金具8の長さ調整用の下部固定金具ボルト長孔9については、上端から20mm位置に長さ50mmの長孔によるボルト穴としたが、これは、梯子本体2について4種の長さ、下部固定金具8について6種の高さ及び下部固定金具ボルト長孔9について50mm長、上端から20mm等に限らない。設置する船体各所の設置高さや設置の容易さに応じて他の種類の長さのものを準備・製作しておいても良いことはもちろんである。
【0026】
さらに、下部固定金具8の下端は、95mm×40mm×厚さ10mmの下部固定金具溶接パッド(PAD)11、11a、11bを有し、従来同様、機関室インナーボトムに溶接固定される。
なお、下部固定金具ボルト長孔9は、16mmφのボルト用長孔であり、その長孔中心位置は、インナーボトムから75mm高さ位置を中心位置としてもよい。
このような基本構成からなる本実施例1に係る船舶機関室内設置の垂直梯子1としたので、機関室内の中間域高さの敷板(図示外)が、1625mm~1675mm高さ範囲にあるとき、1450mm長の梯子本体2と、260mm長の下部固定金具8に上部固定金具6を準備すれば、設置現場での特段の長さ調整をすることなく、きわめて容易に垂直梯子を機関室内に設置できることとなる。
【0027】
しかしながら、機関室内に限ったとしても,従来技術で説明したように、中間高さ域に存する敷板等は、1625mm~1675mm高さ範囲に限らない。
そこで、本実施例1に係る船舶機関室内設置の垂直梯子1について、梯子本体2について、(1)850mm長の梯子本体、(2)1150mm長の梯子本体、(3)1450mm長の梯子本体(上述した例の梯子本体)、(4)1750mm長の梯子本体の4種を準備すると共に、下部固定金具8について、(A)110mm長の下部固定金具、(B)160mm長の下部固定金具、(C)210mm長の下部固定金具、(D)260mm長の下部固定金具、(E)310mm長の下部固定金具、(F)360mm長の下部固定金具の6種を準備し、これらを組み合わせることにより、機関室内の中間域高さ875mm~2075mmまでの高さ域の設置する機関室内垂直梯子を設置を可能としたものである。
【0028】
図2(A)は、4種の(1)850mm長の梯子本体、(2)1150mm長の梯子本体、(3)1450mm長の梯子本体(上述した例の梯子本体)、(4)1750mm長の梯子本体の概略を示す縦面図であり、
図2(B)は、6種の(A)110mm長の下部固定金具、(B)160mm長の下部固定金具、(C)210mm長の下部固定金具、(D)260mm長の下部固定金具、(E)310mm長の下部固定金具、(F)360mm長の下部固定金具の概略を示す図であり、各右に縦面概略を、左に側面概略を示している。
【0029】
なお、
図2(B)において、符号10D、10E、10Fは、(D)260mm長の下部固定金具に設けるふみ棒(ステップ)5a、5b、・・の設置位置、(E)310mm長の下部固定金具に設けるふみ棒(ステップ)5a、5b、・・の設置位置、(F)360mm長の下部固定金具に設けるふみ棒(ステップ)5a、5b、・・の設置位置を示し、(A)~(C)については、長さが短いので,下部固定金具8自体にふみ棒5a、5b・・を要しないため、(D)~(F)についてのみ設けることを示している。このふみ棒(ステップ)5a、5b、・・の設置位置については、梯子と同様に300mmビット程度でふみ棒(ステップ)を設けるので、下部固定金具の上端から120mmの位置に設けられる。
【0030】
また、下部固定金具8に設ける下部固定金具ボルト長孔9は、いずれも上端から20mm位置に長さ50mmの長さで設けられる。
このように4種の梯子本体2と6種の下部固定金具8を予め準備しておくことにより、機関室内の中間高さ域に適合することができる垂直梯子とすることができるのである。
【0031】
なお、4種の梯子本体2と6種の下部固定金具8の組み合わせにより、適合する高さ位置については、下表に示すとおりである。
【0032】
【0033】
なお、表1においては、6種の上部固定金具6の固定位置を(「A」)、4種の梯子本体2の長さ(「B」)、下部固定金具8の高さ(「C」)、長孔の遊び(D=「50mm」)としたときに、4種の梯子本体2と6種の下部固定金具8の組み合わせは、それぞれ「MIN」と「MAX」の間に間断なく適合することを示している。すなわち、本実施例1に係る船舶機関室内設置垂直梯子1においては、上記の4種の梯子本体2と6種の下部固定金具8との組み合わせは、必ず「B-A+C」で表せるので、D=50mmとすれば、長孔の遊びとしては充分である。しかしながら、必ずしもD=50mmに限るものではなく、操作性や製作性を考慮して適宜の長さとしても良い。
【0034】
換言すれば、本実施例1に係る船舶機関室内設置垂直梯子1においては、様々な機器や配管が所狭しと配置され、傾斜梯子を設置できるスペースがない船舶機関室内のような場所であっても、4種の(1)850mm長の梯子本体、(2)1150mm長の梯子本体、(3)1450mm長の梯子本体(上述した例の梯子本体)、(4)1750mm長の梯子本体と、6種の(A)110mm長の下部固定金具、(B)160mm長の下部固定金具、(C)210mm長の下部固定金具、(D)260mm長の下部固定金具、(E)310mm長の下部固定金具、(F)360mm長の下部固定金具とを予め準備しておくことにより、表1から明らかなように、875mm~2075mm高さのあらゆる高さ位置について、垂直梯子を設置することができることとなるのである。
【0035】
次に、本実施例1に係る船舶機関室内設置の垂直梯子1を機関室内の所定高さ位置の敷板に設置する設置方法について説明する。
(設置方法)
(1)まず、船殻図と機関室配置図に基づき、垂直梯子を必要とする高さ確認する。
(2)4種の「850mm長の梯子本体」、「1150mm長の梯子本体」、「1450mm長の梯子本体」、「1750mm長の梯子本体」の製作図を作成する。
(3)次いで、6種の「110mm長の下部固定金具」、「160mm長の下部固定金具」、「210mm長の下部固定金具」、「260mm長の下部固定金具」、「310mm長の下部固定金具」、「360mm長の下部固定金具」の製作図を作成する(各下部固定金具には、いずれも上端から20mm位置で、長孔中心がインナーボトム等接地面から75mm位置に長さ50mmの長さ調整用の下部固定金具ボルト長孔9が設けられている。)。
(4)1種類の上部固定金具の製作図を作成する。
(5)4種の梯子本体、6種の下部固定金具、1種の上部固定金具の各製作図に基づき、工場にて各製作する。
(6)該当する組み合わせを上記表1から選び垂直梯子の製作図を作成する。
(7)選択された梯子本体、上部固定金具。下部固定金具を工場で取りつける。
(8)選択された組み合わせの梯子本体、上部固定金具、下部工程金具を設置場所に搬入する。
(9)下部固定金具を機関室内インナーボトムに溶接固定する。
(10)下部固定金具のボルトを緩めて、上部固定金具を敷板の枠に合うように長孔固定位置を調整する。
(11)上記調整位置にて上部固定金具を溶接する。
(12)下部固定金具のボルトを締める。
【0036】
上述してきたように、船舶機関室内の所定高さ位置に配置される敷板等に本実施例1に係る船舶機関室内設置の垂直梯子1を現場での長さ調整作業を行うことなく容易に設置できるようにしたので、次のような効果を奏することとなる。
(1)下部固定金具の固定ボルト穴を50mm長の長孔の楕円形状としたので、垂直梯子を設置の際に船殻ブロックの精度誤差や梯子の製作誤差へ±25mmの範囲で長さ調整を行うことができる。
(2)梯子本体を4種、下部固定金具を6種を準備することで、従来、一品一葉製作であった機関室内垂直梯子について、高さ875mm~2075mmまで高さに対し、現場での梯子材の切断、穴明け等の作業を行うことなく設置を行うことができ、設置作業の能率改善が図れる。
(3)このことは、傾斜梯子等の設置スペースがなく様々な機器類、配管類が所狭しと配置されている船舶機関室内での設置作業が改善されることは極めて大きなメリットがある。
上述してきた実施例1は、船舶機関室内の各種高さ位置に配置される敷板等に適合する垂直梯子の設置に関するものであるが、垂直梯子は様々な機器や配管が所狭しと配置され、機関室内にこの種の垂直梯子を設置する際には、極めて優れた効果を奏する。しかしながら、垂直梯子設置の必要性は、船舶機関室内に限らない。船舶機関室以外の箇所であっても、例えば、ホールドファンアクセス用垂直梯子にあっても、ホールドファンの製作誤差や梯子の製作誤差は生じる。したがって、以下、船舶機関室以外の船舶各所に配置する垂直梯子設置に関して説明する。
表2に示すように、550mm長さの梯子本体2を予め準備しておくことにより、875mmまでの間に垂直梯子を設置することができる。なお、低い場合には、梯子のステップ5を設けるより、別途の段差のステップを設ける方が昇降しやすい(設置スペースがないことを前提として考えたのですが,どうしましょう。)。
表3は、本実施例1に係る船舶機関室内設置の垂直梯子1の6種の下部固定金具8の使用を前提としつつ、検討した結果、新たに2050mm長の梯子本体2準備して、2075mm以上、2375mmまでの高さに設置可能とする組み合わせを検討すれば、下記表3に示すとおりである。
表3に示すように、110mm長の下部固定金具8と2050mm長の梯子本体2を組み合わせることにより、2075mm~2375mmの間に垂直梯子を設置することができることとなり、本願出願人会社が必要とする前述の20300mm長のホールドファンアクセス用垂直梯子をも設置可能とすることができる。