(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188858
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】新規化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 335/06 20060101AFI20221215BHJP
G02B 5/22 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
C07D335/06
G02B5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097108
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 一登
(72)【発明者】
【氏名】大橋 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】前田 大光
(72)【発明者】
【氏名】羽毛田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】上田 健太郎
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】化学的安定性に優れたスクアリリウム化合物を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される化合物。
(式(I)中、Xは-OCH
3、-SCH
3、-N(C
2H
5)
2のいずれかであり、An
-は一価のアニオン群から選ばれる1種である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物。
【化1】
(式(I)中、Xは-OCH
3、-SCH
3、-N(C
2H
5)
2のいずれかであり、An
-は下記式(II)で表される一価のアニオン群から選ばれる1種である。)
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性スクアリリウムユニットからなる新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外領域吸収色素は狭いHOMO-LUMOギャップに起因して熱や光に対する安定性に乏しいため、いかに安定性を付与するかが分子設計における課題といえる。イオン性化合物はアニオンとカチオンの間にイオン間相互作用がはたらくため、非イオン性化合物と比較して一般に高い化学的安定性を持つものが多い。
【0003】
このような近赤外線吸収安定性に優れた光学フィルム用組成物として、特許文献1(国際公開第2018/100834号)には、構造規定したカチオン性スクアリリウムまたはスクアリリウム(クロコニウム)を2種含有する組成物が開示されている。
また、特許文献2(特許第2633086号公報)には、下記式であらわされるスクアリリウム染料が開示されている。
【化1】
式中、Q
1およびQ
2は各々イミダゾール、ベンズイミダゾール、チアゾール、ベンズチアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、2-ピリジニウム、4-ピリジニウム、2-キノリニウム、4-キノリニウム、インドリニウム、ピリリウム、チオピリリウム、セレノピリリウム、ベンズピリリウム、ベンズチオピリリウムまたはベンズセレノピリリウム核であり、しかも式Q
1CH
2R
1およびQ
2CH
2R
2の化合物において、メチレン水素は活性水素であり、R
1およびR
2は各々独立して水素原子、脂肪族基または環式脂肪族基であり、そしてΩは式-NR
3R
4または式-CR
5R
6R
7など(R
3~R
7は各々独立して、水素原子、アシル基、脂肪族基、環式脂肪族基、芳香族基または複素環式基など)を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/100834号
【特許文献2】特許第2633086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近赤外領域吸収色素として汎用なスクアリリウム類は光学フィルター等の用途に適する優れた分光特性を有するものの、化学的安定性が課題となるものも多く存在する。このような課題を踏まえ、本発明は優れた分光特性と化学的安定性を有する新規化合物を開発するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記式(I)で表される化合物であり、これにより本発明の上記目的が達成される。
【0007】
【化2】
(式(I)中、Xは-OCH
3、-SCH
3、-N(C
2H
5)
2のいずれかであり、An
-は下記式(II)で表される一価のアニオン群から選ばれる1種である。)
【0008】
【発明の効果】
【0009】
本発明により、化学的安定性に優れ、近赤外領域に吸収を持つ新規なスクアリリウム類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0011】
本発明の化合物は、下記式(I)で表される。
【0012】
【化4】
(式(I)中、Xは-OCH
3、-SCH
3、-N(C
2H
5)
2のいずれかであり、An
-は下記式(II)で表される一価のアニオン群から選ばれる1種である。)
【0013】
【0014】
本発明の化合物は、例えば、撮像装置などに使用される光学フィルターに配合される、有機色素として好適に使用される。
かかる化合物は、たとえば、下記式(A)で表される化合物をスクアリン酸またはその誘導体と反応させて、下記式(1)のスクアリリウム化合物を合成する。その後、An-を構成する化合物と反応させて、本発明の化合物を製造することができる。
【0015】
【化6】
スクアリン酸誘導体としては、スクアリン酸エステル、スクアリン酸アミド、スクアリン酸塩等を用いることができる。
【0016】
スクアリン酸の使用量は、式(A)の化合物1モルに対して、0.3モル以上が好ましく、0.4モル以上がより好ましく、0.45モル以上がさらに好ましく、また1.0モル以下が好ましく、0.8モル以下がより好ましく、0.7モル以下がさらに好ましい。
【0017】
式(A)の化合物とスクアリン酸との反応は溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、ヘキサン、トルエン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。反応温度は、反応条件に応じて適宜設定すればよく、例えば50℃~180℃の間で適宜設定すればよい。当該反応は還流下で行うことが好ましい。反応時間は特に限定されず、反応の進行状況に応じて適宜設定すればよく、例えば0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、また24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましい。反応は、不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガス)雰囲気下で行うことが好ましい。
【0018】
An-を構成する化合物としては、CF3SO3Me(Meはメチル)を用いる場合、式(1)のスクアリリウム化合物を無水ジクロロメタンなどに溶解し、CF3SO3Meを滴下し、0℃~30℃の温度で、攪拌することで反応させる。反応終了後、生成物を乾燥して、必要に応じて精製することで化合物(11)を得ることができる。また、化合物(11)の塩基を、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートで置換することで、化合物(12)を得ることができ、ナトリウムテトラキスフェニルボラートで置換することで、化合物(13)を得ることができ、リチウムヘキサフルオロホスフェートで置換することで、化合物(14)を得ることができ、ナトリウムペンタシアノシクロペンタジエニドで置換することで、化合物(15)を得ることができる。また、化合物(12)を無水ジクロロメタンなどに溶解し、ジエチルアミンを滴下し、0℃~30℃の温度で、攪拌することで反応させ、反応終了後に生成物を乾燥して、必要に応じて精製することで化合物(16)を得ることができる。また、式(1)のスクアリリウム化合物を無水トルエンなどに溶解し、ローソン試薬を加え、80℃~120℃の温度で、攪拌することで反応させ得られた生成物を、無水ジクロロメタンなどに溶解し、CF3SO3Meを滴下し、0℃~30℃の温度で、攪拌することで反応させ、反応終了後、生成物を乾燥して、必要に応じて精製することで化合物(17)を得ることができる。
【0019】
【実施例0020】
以下、本発明を具体的に実施例によって説明する。
【0021】
以下において、実施例で得られた生成物の分子構造や物性は、核磁気共鳴装置ECA-600(日本電子株式会社)および質量分析装置Shimadzu Axima-CFRplus(株式会社島津製作所)を用いて測定した。
【0022】
[実施例1]
2-tert-Butyl-4-((Z)-(3-(((E)-2-tert-butyl-6-methoxy-4H-thiochromen-4-ylidene)methyl)-2-methoxy-4-oxocyclobut-2-en-1-ylidene)methyl)-6-methoxy-thiochromenylium triflate(化合物11)の合成
【0023】
【化8】
(式中、「Me」はメチル基である。以下同様。)
【0024】
100mlのナスフラスコに化合物1(Z)-2-(((E)-2-tert-butyl-6-methoxy-4H-thiochromen-4-ylidene)methyl)-4-((2-tert-butyl-6-methoxythiochromenylium-4-yl)methylene)-3-oxocyclobut-1-en-1-olate、152.2mg、0.266mmol)を無水ジクロロメタン(33ml)に溶解し、CF3SO3Me(117μl、1.06mmol)を滴下し、室温で5時間攪拌した。反応終了後、5%NaHCO3水溶液を添加し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-300; 展開溶媒3% MeOH/CH2Cl2)で精製し、CH2Cl2/Et2Oで再結晶することにより、収量105mgの目的化合物11(褐色粉末)を得た。
【0025】
得られた化合物11の分解温度、1H-NMR、13C-NMR、IR、質量分析または元素分析の結果を以下に示す。
分解温度:250℃
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) 7.70 (d, J = 9.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.34 (dd, J = 9.0 and 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 7.00 (s, 2H, CH2), 4.84 (s, 3H, OCH3), 4.06 (s, 6H, OCH3), 1.57 (s, 18H, C(CH3)3)
19F-NMR(CDCl3, 564 MHz)-81.446 (s, 3F)
MS (MALDI) m/z (%) 585.2 (100), 586.2 (37), 587.2 (13) [M+].
MS (MALDI) m/z (%) 149.0 (100), 149.3 (7) [M-].
Anal. calcd for C35H37O4S2
+([M+]): 583.21, CF3SO3
- ([M]-): 149.0
【0026】
[実施例2]
2-tert-Butyl-4-((Z)-(3-(((E)-2-tert-butyl-6-methoxy-4H-thiochromen-4-ylidene)methyl)-2-methoxy-4-oxocyclobut-2-en-1-ylidene)methyl)-6-methoxy-thiochromenylium tetrakis(perfluorophenyl)-borate(化合物(12))の合成
【0027】
【0028】
100mlナスフラスコに化合物(11)(83.8mg、114μmol)およびLithium tetrakis(perfluorophenyl)borate(LiFABA、149.8mg、218μmol)をジクロロメタン(140ml)中、室温下で1時間攪拌した。その後、反応溶液を水洗し、減圧下で溶媒を除去し、CH2Cl2/MeOHで再結晶することにより、収量86mgの目的化合物(12)(赤色粉末)を得た。
【0029】
得られた化合物12の分解温度、1H-NMR、13C-NMR、IR、質量分析または元素分析の結果を以下に示す。
分解温度:270℃
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) 9.19 (s, 2H, Ar-H), 7.76 (d, J = 9.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.60 (d, J = 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 7.38 (dd, J = 9.0 and 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 6.78 (s, 2H, CH2), 4.57 (s, 3H, OCH3), 3.96 (s, 6H, OCH3), 1.59 (s, 18H, C(CH3)3)
19F-NMR(CDCl3, 564 MHz)-135.84 (d, J = 8.5 Hz, 8F, Ar-F), -166.37 (t, J = 21.7 Hz, 4F, Ar-F), -170.10 (t, J = 17.2 Hz, 8F, Ar-F)
MS (MALDI)(pos) m/z (%) 585.2 (100), 586.2 (39), 587.2 (17).
MS (MALDI)(neg) m/z (%) 679.0(100), 680.0 (27), 681.0 (7).
Anal. calcd for C35H37O4S2
+ ([M]+): 585.21, B(C6F5)4
-([M]-): (678.98)
【0030】
[実施例3]
2-tert-Butyl-4-((Z)-(3-(((E)-2-tert-butyl-6-methoxy-4H-thiochromen-4-ylidene)methyl)-2-methoxy-4-oxocyclobut-2-en-1-ylidene)methyl)-6-methoxy-thiochromenylium tetrakisphenyl-borate(化合物(13))の合成
【0031】
【0032】
100mlナスフラスコに化合物(11)(10.0mg、14μmol)およびSodium tetrakisphenylborate(NaFABA、26.2mg、77μmol)をアセトニトリル(9ml)中、室温下で1時間攪拌した。その後、反応溶液に水を加えて析出固体を回収することで、収量7.7mgの目的化合物(13)(暗褐色粉末)を得た。
【0033】
得られた化合物13の分解温度、1H-NMR、質量分析の結果を以下に示す。
分解温度:270℃
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) 9.13 (s, 2H, Ar-H), 7.68 (d, J = 9.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.55 (broad, 2H, Ar-H), 7.43 (broad, 8H, Ph-H), 7.31 (dd, J = 9.0 and 2.4 Hz, 2H, Ph-H), 7.01 (t, J = 7.8 Hz, 2H, Ph-H), 6.84 (t, J = 7.2 Hz, 4H, Ph-H), 6.69 (s, 2H, CH2), 4.11 (s, 3H, OCH3), 3.88 (s, 6H, OCH3), 1.58 (s, 18H, C(CH3)3)
MS (MALDI)(pos) m/z (%) 585.2 (100), 586.2 (32), 587.2 (10).
MS (MALDI)(neg) m/z (%) 318.2 (5), 319.2 (100), 320.2 (20), 321.2 (13).
Anal. calcd for C35H37O4S2
+ ([M]+): 585.21, B(C6H5)4
-([M]-): 319.17.
【0034】
[実施例4]
2-tert-Butyl-4-((Z)-(3-(((E)-2-tert-butyl-6-methoxy-4H-thiochromen-4-ylidene)methyl)-2-methoxy-4-oxocyclobut-2-en-1-ylidene)methyl)-6-methoxy-thiochromenylium hexafluorophosphate(化合物(14))の合成
【0035】
【0036】
100mlナスフラスコに化合物(11)(33.5mg、45.6μmol)およびLithium hexafluorophosphate(LiPF6、140mg、0.92mmol)をジクロロメタン(60ml)中、室温下で1時間攪拌した。その後、反応溶液を水洗し、減圧下で溶媒を除去し、アセトン/H2Oで再結晶することにより、収量20mgの目的化合物(14)(褐色粉末)を得た。
【0037】
得られた化合物14の1H-NMR、質量分析の結果を以下に示す。
1H-NMR (CD2Cl2, 600 MHz) 9.20 (s, 2H, Ar-H), 7.83 (d, J = 9.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.67 (d, J = 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 7.41 (dd, J = 9.0 and 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 6.84 (s, 2H, CH2), 4.68 (s, 3H, OCH3), 4.00 (s, 6H, OCH3), 1.59 (s, 18H, C(CH3)3)
19F-NMR(CD2Cl2, 564 MHz)-75.9 (d, J = 710 Hz, 6F).
MS (MALDI)(pos) m/z (%) 585.2 (100), 586.2 (37), 587.2 (10).
MS (MALDI)(neg) m/z (%) 145.0 (100).
Anal. calcd for C35H37O4S2
+ ([M]+): 585.21, PF6
-([M]-): 144.96.
【0038】
[実施例5]
2-tert-Butyl-4-((Z)-(3-(((E)-2-tert-butyl-6-methoxy-4H-thiochromen-4-ylidene)methyl)-2-methoxy-4-oxocyclobut-2-en-1-ylidene)methyl)-6-methoxy-thiochromenylium pentacyanocyclopentadienide(化合物(15))の合成
【0039】
【0040】
100mlナスフラスコに化合物(11)(18.8mg、25.6μmol)およびSodium pentacyanocyclopentadienide(10.4mg、48.8μmol)をアセトニトリル(200ml)中、室温下で5時間攪拌した。その後、反応溶液に水を加えて析出固体を回収することで、収量15.3mgの目的化合物(15)(暗褐色粉末)を得た。
【0041】
得られた化合物15の1H-NMR、質量分析の結果を以下に示す。
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) 9.18 (s, 2H, Ar-H), 7.75 (d, J = 9.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.63 (d, J = 1.8 Hz, 2H, Ar-H), 7.38 (dd, J = 9.0 and 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 6.81 (s, 2H, CH2), 4.75 (s, 3H, OCH3), 4.02 (s, 6H, OCH3), 1.60 (s, 18H, C(CH3)3)
MS (MALDI)(pos) m/z (%) 585.2 (100), 586.2 (35), 587.2 (16).
MS (MALDI)(neg) m/z (%) 190.0 (100), 191.0 (7).
Anal. calcd for C35H37O4S2
+ ([M]+): 585.21, C10N5
-([M]-): 190.02.
【0042】
[実施例6]
2-tert-Butyl-4-((Z)-(3-(((E)-2-tert-butyl-6-methoxy-4H-thiochromen-4-ylidene)methyl)-2-diethylamino-4-oxocyclobut-2-en-1-ylidene)methyl)-6-methoxy-thiochromenylium pentacyanocyclopentadienide(化合物(16))の合成
【0043】
【0044】
100mlのナスフラスコに化合物12(14.7mg, 11.6μmol)を無水ジクロロメタン(10ml)に溶解し、(C2H5)2NH(17μl、0.17mmol)を滴下し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-300; 展開溶媒1% MeOH/CH2Cl2)で精製し、CH2Cl2/ヘキサンで再結晶することにより、収量3.0mgの目的化合物16(紫色粉末)を得た。
【0045】
得られた化合物16の分解温度、1H-NMR、13C-NMR、IR、質量分析または元素分析の結果を以下に示す。
1H-NMR (CD2Cl2, 600 MHz) 9.31 (s, 2H, Ar-H), 7.75 (d, J = 9.0 Hz, 2H, Ar-H), 7.50 (d, J = 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 7.34 (dd, J = 9.0 and 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 6.81 (s, 2H, CH2), 3.96 (s, 6H, OCH3), 3.85 (q, J = 7.2 Hz, 4H, CH2), 1.60 ((t, J = 7.2 Hz, 6H, CH3), 1.55 (s, 18H, C(CH3)3)
13C-NMR(CD2Cl2, 151 MHz)176.79, 167.45, 166.55, 161.02, 158.04, 149.33, 148.12, 147.74, 139.44, 137.82, 137.50, 135.86, 130.70, 130.68, 129.86, 125.43, 124.24, 120.89, 108.44, 108.29, 56.00, 47.72, 40.67, 30.83, 15.05.
19F-NMR(CDCl3, 564 MHz)-135.48 (s, 8F, Ar-F), -166.08 (t, J = 19.5 Hz, 4F, Ar-F), -169.92 (t, J = 17.2 Hz, 8F, Ar-F)
MS (MALDI)(pos) m/z (%) 626.3 (100), 627.3 (47), 628.3 (21), 629.3 (6).
MS (MALDI)(neg) m/z (%) 679.0(100), 680.0 (33), 681.0 (4).
Anal. calcd for C38H44NO3S2
+ ([M]+): 626.28, B(C6F5)4
-([M]-): (678.98)
【0046】
【0047】
100mlのナスフラスコに化合物11(197.16mg, 0.345mmol)を無水トルエン(50ml)に溶解し、ローソン試薬(58.0mg, 0.143mmol)を滴下し、100℃で2時間攪拌した。反応終了後、減圧下で濃縮し、粗生成物をアルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:1%MeOH/CH2Cl2)で精製し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-300; 展開溶媒5% MeOH/CH2Cl2)で精製し、CH2Cl2/ヘキサンで再結晶することにより、収量85.8mgの紫色粉末を得た。得られた紫色粉末を、100mlのナスフラスコ中で無水ジクロロメタン(45ml)に溶解し、CF3SO3Me(52.4μl、 0.48mmol)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応終了後、5%NaHCO3水溶液を添加し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C-300; 展開溶媒5% MeOH/CH2Cl2)で精製し、CH2Cl2/ヘキサンで再結晶することにより、収量85.8mgの目的化合物17(褐色粉末)を得た。
【0048】
得られた化合物17の分解温度、1H-NMR、13C-NMR、IR、質量分析または元素分析の結果を以下に示す。
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) 9.14 (s, 2H, Ar-H), 7.77 (dd, J = 9.0 and 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 7.71 (d, J = 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 7.39 (dd, J = 9.0 and 2.4 Hz, 2H, Ar-H), 6.88 (s, 2H, CH2), 4.05 (s, 6H, OCH3), 3.24 (s, 3H, SCH3), 1.58 (s, 18H, C(CH3)3)
19F-NMR(CDCl3, 564 MHz)-81.35 (s, 3F)
MS (MALDI) m/z (%) 601.2 (100), 602.2 (39), 603.2 (22), 604.2 (4) [M+].
MS (MALDI) m/z (%) 149.0 (100) [M-].
Anal. calcd for C35H37O4S2
+([M+]): 601.19, CF3SO3
- ([M]-): 149.0