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特開2022-188860移動体位置推定システム、移動体位置推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188860
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】移動体位置推定システム、移動体位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221215BHJP
【FI】
G05D1/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097111
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石島 透
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD05
5H301DD13
5H301DD17
5H301FF05
5H301FF11
5H301FF15
5H301FF21
5H301GG09
5H301GG17
(57)【要約】
【課題】移動体の位置する区画の推定を確実に、かつ簡易な構成で行う。
【解決手段】移動体位置推定システム10は、複数の区画Sを有した構造物において、移動体20の位置推定を行う移動体位置推定システム10であって、区画Sの境界部の両側に設けられ、区画Sを識別可能な区画識別情報が境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定された、一対の情報ラベルMと、複数の区画Sを移動可能な移動体20に設けられ、情報ラベルMを検出し、情報ラベルMに設定された区画識別情報を非接触で読み取り可能な情報読取り部22と、情報読取り部22で読み取った、情報ラベルMに設定された区画識別情報に基づき、移動体20の位置する区画Sを推定する位置推定部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の区画を有した構造物において、移動体の位置推定を行う移動体位置推定システムであって、
前記区画の境界部の両側に設けられ、前記区画を識別可能な区画識別情報が前記境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定された、一対の情報ラベルと、
複数の前記区画を移動可能な移動体に設けられ、前記情報ラベルを検出し、前記情報ラベルに設定された前記区画識別情報を非接触で読み取り可能な情報読取り部と、
前記情報読取り部で読み取った、前記情報ラベルに設定された前記区画識別情報に基づき、前記移動体の位置する前記区画を推定する位置推定部と、
を備える移動体位置推定システム。
【請求項2】
一対の前記情報ラベルは、前記区画への出入口に、一方が前記区画の内側に、他方が前記区画の外側に、それぞれ設けられている
請求項1に記載の位置推定システム。
【請求項3】
前記情報ラベルは、前記出入口の幅方向に複数並べて設けられている
請求項2に記載の位置推定システム。
【請求項4】
前記区画識別情報は、前記区画を識別可能な識別子と、前記情報ラベルが、前記区画の、前記出入口における内側と外側のいずれに設けられているかを識別可能な、区画内外識別情報を含んでいる
請求項2または3に記載の位置推定システム。
【請求項5】
前記情報ラベルは、前記区画識別情報が設定された二次元コードを有する
請求項1から4のいずれか一項に記載の位置推定システム。
【請求項6】
前記情報ラベルは、前記構造物を構成するいずれかの表面に設けられ、
前記情報読取り部は、当該表面を向くように設けられている
請求項1から5のいずれか一項に記載の位置推定システム。
【請求項7】
前記情報ラベルは、前記区画の床面又は天井面に設けられ、
前記情報読取り部は、前記床面又は天井面に向けて設けられている
請求項6に記載の位置推定システム。
【請求項8】
前記位置推定部は、前記一対の情報ラベルの各々に設定された前記区画識別情報を前記情報読取り部で読み取った順序に基づき、前記移動体の位置する前記区画を推定する
請求項1から7のいずれか一項に記載の位置推定システム。
【請求項9】
前記移動体に設けられ、前記移動体が前記区画に位置しているときに、所定の処理を実行する処理実行部と、
前記処理実行部で実行された処理結果情報を、前記位置推定部で推定された前記移動体の位置する前記区画と関連付けて格納する情報記憶部と、をさらに備える
請求項1から8のいずれか一項に記載の位置推定システム。
【請求項10】
複数の区画を有した構造物において、移動体の位置推定を行う移動体位置推定方法であって、
前記区画の境界部の両側に、前記区画を識別可能な区画識別情報が前記境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定された、一対の情報ラベルを設けておき、
複数の前記区画を移動可能な移動体に設けられた情報読取り部で、前記情報ラベルを検出し、前記情報ラベルに設定された前記区画識別情報を非接触で読み取る工程と、
前記情報読取り部で読み取った、前記情報ラベルに設定された前記区画識別情報に基づき、前記移動体の位置する前記区画を推定する工程と、
を含む移動体位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体位置推定システム、移動体位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、構造物の面に配置され、位置情報を含む二次元コードと、車両に取り付けられて二次元コードを撮像するカメラを備えた撮像画像取得手段と、撮像画像に含まれる二次元コードから絶対的な位置情報を取得する位置情報取得手段と、取得された位置情報に基づいて車両の位置を算出する車両位置算出手段と、を備える自車位置測定システムが開示されている。このような構成は、例えば駐車支援システムに適用されるもので、利用者が車両を駐車場の駐車区画に向けて移動させた際に、駐車区画に割り当てられた二次元コードを読み取ることで、車両の位置を算出するものである。このため、駐車区画に車両を移動させれば、撮像画造取得手段のカメラの視野角内に二次元コードが入り、二次元コードの撮像が行われる。
【0003】
ところで、例えば病院、介護施設、工場、オフィス等、複数の部屋やスペース(以下、これらを区画と称する)等を備えた構造物において、スタッフが業務を行うためにカート等の移動体を複数の区画間で移動させることがある。このような場合、業務の管理等のため、移動体がどの区画に位置しているか、移動体の位置する区画を検出することが望まれることがある。
このような場合において、移動体は、各区画の大きさ(広さ)に対して小さいことが多い。このため、特許文献1に開示されたような構成を適用したとしても、各区画の面に配置された二次元コードを、移動体に設けたカメラで、確実に、撮像できるとは限らない。二次元コードを撮像するために、移動体を二次元コードがある場所にわざわざ移動させるのは、言うまでもなく手間が掛かり、スタッフが移動体を用いて本来全うすべき業務の効率低下に繋がる。
【0004】
特に、特許文献1に記載されたような車両においては、姿勢を保ったまま、例えば横方向に平行移動することはできず、また走行可能な場所が道路などに限定される。このため、進行経路を概ね予測することができるので、二次元コードを設置する場所が限られ、二次元コードの設置数が抑えられる。
これに対し、上記のようなカート等の移動体においては、姿勢を変更せずに、進行方向を360°の全方向に自在に変更することができる、小回りが利く構造を有することが多い。したがって、進行経路や進行可能な領域が区画内で限られない場合には、区画内の移動体が通過しやすい場所を予測して、二次元コードを設置する場所を限定するのが容易ではない。
これに対し、各区画の内側に多数の二次元コードを設け、移動体に設けたカメラで二次元コードを撮像しやすくすることも考えられる。しかし、多数の二次元コードを設けるのは、手間とコストが掛かる上に、見栄えが大きく低下する虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-6833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、移動体の位置する区画の推定を確実に、かつ簡易な構成で行うことができる移動体位置推定システム、移動体位置推定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の移動体位置推定システムは、複数の区画を有した構造物において、移動体の位置推定を行う移動体位置推定システムであって、前記区画の境界部の両側に設けられ、前記区画を識別可能な区画識別情報が前記境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定された、一対の情報ラベルと、複数の前記区画を移動可能な移動体に設けられ、前記情報ラベルを検出し、前記情報ラベルに設定された前記区画識別情報を非接触で読み取り可能な情報読取り部と、前記情報読取り部で読み取った、前記情報ラベルに設定された前記区画識別情報に基づき、前記移動体の位置する前記区画を推定する位置推定部と、を備える。
このような構成によれば、区画の境界部には、一対の情報ラベルが設けられている。一対の情報ラベルの各々は、境界部の両側に、すなわちある区画に対して境界部の当該区画側と、当該区画とは反対側の各々に、設けられている。各情報ラベルには、区画を識別可能な区画識別情報が、境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定されている。複数の区画を移動可能な移動体には、情報読取り部が設けられている。情報読取り部は、情報ラベルを検出し、情報ラベルに設定された区画識別情報を非接触で読み取り可能である。これにより、移動体が境界部を越えて境界部の一方の側から他方の側へと移動すると、境界部で、情報読取り部が、一方の側の情報ラベルと、他方の側の情報ラベルの各々に設定された区画識別情報を読み取り、当該区画識別情報に基づいて、移動体の位置する区画を推定する。このとき、境界部の両側に設けられた情報ラベルには、それぞれ、境界部を挟んで互いに異なる値に区画識別情報が設定されているため、例えば、順次読み取った区画識別情報の変化を基に移動体が境界部を越えたか否かを判定することで、移動体が位置する区画を推定しやすい。
このように、区画の境界部に設けられた情報ラベルを検出し、これに設定された区画識別情報を読み取ることによって、移動体の位置する区画を推定するので、移動体の大きさに対して区画が広い場合であっても、移動体が境界部の一方の側から他方の側へと移動する際に、情報ラベルが検出される。これによって、移動体の位置する区画を確実に推定することができる。
また、上記のような移動体位置推定システムを実現するに際し、構造物側においては区画の境界部のみに情報ラベルを設け、移動体側においては情報読取り部を備えればよい。したがって、情報ラベルの設置数を低減可能であり、簡易な構成で移動体の位置する区画の推定を行うことができる。
その結果、移動体の位置する区画の推定を確実に、かつ簡易な構成で行うことが可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、一対の前記情報ラベルは、前記区画への出入口に、一方が前記区画の内側に、他方が前記区画の外側に、それぞれ設けられている。
このような構成によれば、一対の情報ラベルを区画への出入口に設けることで、移動体が出入口を通って区画に出入りするときに、情報ラベルを確実に検出することができる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記情報ラベルは、前記出入口の幅方向に複数並べて設けられている。
このような構成によれば、情報ラベルを出入口の幅方向に複数並べて設けることで、移動体が出入口を通って区画に出入りする際に、情報ラベルをより確実に検出することができる。
【0010】
本発明の一態様においては、前記区画識別情報は、前記区画を識別可能な識別子と、前記情報ラベルが、前記区画の、前記出入口における内側と外側のいずれに設けられているかを識別可能な、区画内外識別情報を含んでいる。
このような構成によれば、移動体が、どの区画の、出入口の外側と内側のいずれに位置しているのかを容易に推定可能である。
特に、区画として設定された領域と、区画として設定されていない領域が、出入口を介して隣接し、移動体が、この出入口を跨いで移動することがあるような場合においても、出入口の、区画として設定されていない領域側に、区画内外識別情報として外側であるとの情報が設定された情報ラベルを設けることにより、本移動体位置推定システムを適用可能である。
【0011】
本発明の一態様においては、前記情報ラベルは、前記区画識別情報が設定された二次元コードを有する。
このような構成によれば、情報ラベルに二次元コードを用いることで、情報ラベルの設置のために必要なスペースが少なくて済む。また、二次元コードは、登録できる情報量が多いため、情報ラベルに、様々な情報を盛り込んでおくことができる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記情報ラベルは、前記構造物を構成するいずれかの表面に設けられ、前記情報読取り部は、当該表面を向くように設けられている。
このような構成によれば、移動体位置推定システムを適切に実現可能である。
【0013】
本発明の一態様においては、前記情報ラベルは、前記区画の床面又は天井面に設けられ、前記情報読取り部は、前記床面又は天井面に向けて設けられている。
このような構成によれば、情報ラベルを床面又は天井面に設けることで、情報ラベルを壁面等に設ける場合に比較して、情報読取り部で情報ラベルを検出する際に、情報ラベルと情報読取り部との間に障害物等が入るのを抑えることができる。また、情報読取り部がカメラである場合、情報ラベルが壁面等の側方に設けられていると、カメラで情報ラベルを検出する際に、区画にいる周囲の人等が写ってしまうことがある。これに対し、床面や天井面に情報ラベルを設けると、情報ラベルを検出する際に、周囲の人等が写ってしまうのを抑えることができ、プライバシー性が確保される。
【0014】
本発明の一態様においては、本発明の移動体位置推定システムは、前記位置推定部は、前記一対の情報ラベルの各々に設定された前記区画識別情報を前記情報読取り部で読み取った順序に基づき、前記移動体の位置する前記区画を推定する。
このような構成によれば、一対の情報ラベルの各々に設定された区画識別情報を情報読取り部で読み取った順序に基づき、移動体の位置する区画を推定する。例えば、境界部の一方の側に設けられた情報ラベルに設定された区画識別情報を読み取った後、他方の側に設けられた情報ラベルに設定された区画識別情報を読み取れば、移動体が境界部を越えて移動した、と推定することができる。これにより、移動体の移動方向、位置する区画を、より容易かつ確実に把握することができる。
【0015】
本発明の一態様においては、本発明の移動体位置推定システムは、前記移動体に設けられ、前記移動体が前記区画に位置しているときに、所定の処理を実行する処理実行部と、前記処理実行部で実行された処理結果情報を、前記位置推定部で推定された前記移動体の位置する前記区画と関連付けて格納する情報記憶部と、をさらに備える。
このような構成によれば、移動体に設けられた処理実行部で、移動体が区画に位置しているときに所定の処理を実行することができる。所定の処理によって実行された処理結果情報は、移動体の位置する区画と関連付けて情報記憶部に格納される。これにより、構造物内の複数の区画で所定の処理を実行した場合、それぞれの区画における処理結果を、区画に関連付けて取得することができる。
【0016】
本発明の移動体位置推定方法は、複数の区画を有した構造物において、移動体の位置推定を行う移動体位置推定方法であって、前記区画の境界部の両側に、前記区画を識別可能な区画識別情報が前記境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定された、一対の情報ラベルを設けておき、複数の前記区画を移動可能な移動体に設けられた情報読取り部で、前記情報ラベルを検出し、前記情報ラベルに設定された前記区画識別情報を非接触で読み取る工程と、前記情報読取り部で読み取った、前記情報ラベルに設定された前記区画識別情報に基づき、前記移動体の位置する前記区画を推定する工程と、を含む。
このような構成によれば、区画の境界部には、一対の情報ラベルが設けられている。一対の情報ラベルの各々は、境界部の両側に、すなわちある区画に対して境界部の当該区画側と、当該区画とは反対側の各々に、設けられている。各情報ラベルには、区画を識別可能な区画識別情報が、境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定されている。複数の区画を移動可能な移動体には、情報読取り部が設けられている。情報読取り部は、情報ラベルを検出し、情報ラベルに設定された区画識別情報を非接触で読み取り可能である。これにより、移動体が境界部を越えて境界部の一方の側から他方の側へと移動すると、境界部で、情報読取り部が、一方の側の情報ラベルと、他方の側の情報ラベルの各々に設定された区画識別情報を読み取り、当該区画識別情報に基づいて、移動体の位置する区画を推定する。このとき、境界部の両側に設けられた情報ラベルには、それぞれ、境界部を挟んで互いに異なる値に区画識別情報が設定されているため、例えば、順次読み取った情報ラベルでの区画識別情報の変化を基に移動体が境界部を越えたか否かを判定することで、移動体が位置する区画を推定しやすい。
このように、区画の境界部に設けられた情報ラベルを検出し、これに設定された区画識別情報を読み取ることによって、移動体の位置する区画を推定するので、移動体の大きさに対して区画が広い場合であっても、移動体が境界部の一方の側から他方の側へと移動する際に、情報ラベルが検出される。これによって、移動体の位置する区画を確実に推定することができる。
また、上記のような移動体位置推定システムを実現するに際し、構造物側においては区画の境界部のみに情報ラベルを設け、移動体側においては情報読取り部を備えればよい。したがって、情報ラベルの設置数を低減可能であり、簡易な構成で移動体の位置する区画の推定を行うことができる。
その結果、移動体の位置する区画Sの推定を確実に、かつ簡易な構成で行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、移動体の位置する区画の推定を確実に、かつ簡易な構成で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る移動体位置推定システムが用いられる構造物の、伏図の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る移動体位置推定システムの機能構成を示すブロック図である。
図3】上記移動体位置推定システムによって位置が推定される移動体の一例を示す側面図である。
図4】上記移動体位置推定システムの処理実行部による電波環境の測定結果の表示例を示す図である。
図5】上記移動体の位置推定部で実行される移動体位置推定方法の流れを示すフローチャートである。
図6】上記移動体の処理実行部で実行される電波環境の検出処理の流れを示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る移動体位置推定システムの変形例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る移動体位置推定システムの他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明による移動体位置推定システム、移動体位置推定方法を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0020】
本発明の実施形態に係る移動体位置推定システムが用いられる構造物の一例を示す図を図1に示す。
図1に示されるように、移動体位置推定システム10は、複数の区画Sを有した構造物1で用いられる。構造物1は、例えば病院や介護施設である。構造物1は、複数の区画Sを有しているのであれば、他に、ビルディング、学校、工場、ホテル、カラオケボックス等であってもよい。
本実施形態において、複数の区画Sとして、例えば、患者や被介護者の居室(病室)として用いられる部屋Srを備えている。また、複数の部屋Srは、区画Sには属さない領域である、廊下Cに沿って並べて配置されている。各部屋Srは、周囲を囲う壁Wによって他の区画Sと区切られている。各部屋Srは、廊下Cとの境界部、つまり廊下Cに面した部分に、出入口Gを有している。また、出入口Gは、図1において、複数の区画Sのうち、一部の互いに隣り合う部屋Sr(Sr1、Sr2)の間には、境界部として、部屋Sr(Sr1、Sr2)同士を連通するように設けられた出入口G(G1)を含む。
このように、区画Sの各々は、隣接する他の区画Sや、区画Sには属さない領域である廊下Cと、出入口Gを介して出入り可能に構成されている。
【0021】
移動体位置推定システム10では、移動体20の位置を推定する。移動体位置推定システム10では、移動体20の位置座標的な絶対位置ではなく、移動体20が、どの区画Sに位置しているかを推定する。つまり、本実施形態では、移動体20が、どの部屋Srに位置しているか、あるいはどの部屋Srにも位置しておらず廊下Cに位置しているかを推定する。ここで、区画Sは、部屋Srに限らず、例えば、ロビー、食堂、診察室、検査室等に対して設定することもできる。
【0022】
図2は、本発明の実施形態に係る移動体位置推定システムの機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、移動体位置推定システム10は、情報ラベルMと、移動体20と、管理装置30と、を備えている。
【0023】
図1に示すように、情報ラベルMは、複数の区画Sにおいて、区画Sの外郭、すなわち他の区画Sや廊下Cとの境界を形成する境界部に設けられている。本実施形態において、情報ラベルMは、各部屋Srの出入口Gに設けられている。つまり、情報ラベルMは、区画Sとしての各部屋Srと、廊下Cとの境界部に設けられている。
また、本実施形態においては、情報ラベルMは、区画Sとしての部屋Sr1と、出入口G(G1)を介して隣接する部屋Sr2との境界部にも、設けられている。
本実施形態において、各区画Sの出入口Gには、境界部の両側に、すなわち各区画Sに対して境界部の当該区画S側と、当該区画Sとは反対側の各々に、一対の情報ラベルMが設けられている。
【0024】
各情報ラベルMは、外部から読み取り可能な情報を含んでいる。各情報ラベルMが含む情報としては、情報ラベルMが設けられた区画Sを識別可能な区画識別情報がある。
本実施形態においては、区画識別情報は、例えば区画Sを識別可能な識別子と、区画内外識別情報を含む。区画識別情報は、これら識別子と区画内外識別情報を組み合わせて、情報ラベルMが設けられた区画S(および廊下C)が一意に識別可能となるように、設定されている。
識別子は、例えば、各区画S(部屋Sr)に割り当てられた、部屋番号等の識別番号、部屋の名称等である。
区画内外識別情報は、各区画S(部屋Sr)の出入口Gに設けられた一対の情報ラベルMに関し、情報ラベルMの設けられた位置が、区画S(部屋Sr)の、出入口Gにおける内側であるか、外側であるかを識別可能とするものである。
より具体的には、各部屋Srの廊下Cに対する出入口Gにおいて、部屋Srの内側に配置された情報ラベルMinの区画識別情報には、識別子と、部屋Srの内側であることを示す区画内外識別情報とが含まれている。各部屋Srの出入口Gにおいて、部屋Srの外側に配置された情報ラベルMoutの区画識別情報には、内側に配置された情報ラベルMinの識別子と同一の、出入口Gに対応する部屋Srの識別子と、部屋Srの外側(廊下C側)であることを示す区画内外識別情報とが含まれている。
また、各部屋Sr(Sr1、Sr2)の、他の部屋Sr(Sr1、Sr2)との出入口G(G1)においては、例えば部屋Sr1の内側に配置された情報ラベルMin-1の区画識別情報には、上記と同様に、部屋Sr1の識別子と、部屋Sr1の内側であることを示す区画内外識別情報とが含まれている。これに対し、部屋Sr1の、出入口G(G1)の外側においては、当該部分は部屋Sr1に隣接する部屋Sr2内に位置するため、部屋Sr2の識別子と、部屋Sr2の内側であることを示す区画内外識別情報とが区画識別情報として含まれた、情報ラベルMin-2が設けられている。
これ以外にも、例えば、部屋Srの利用者を示す情報として、利用者名(患者名)、利用者を識別するID番号等を、情報ラベルMが含んでいてもよい。
【0025】
本実施形態においては、廊下Cは、区画Sには属さない領域であるという位置づけとなっている。このため、廊下Cには、固有の識別子が割り当てられていない。このような場合には、廊下Cの部屋Srとの出入口Gにおいて、当該出入口Gに対応する部屋Srの外側(廊下C側)の情報ラベルMoutを検出した際に、当該情報ラベルMoutの区画識別情報に部屋Srの外側であることを示す区画内外識別情報が含まれることにより、移動体20はどの区画S(部屋Sr)にも位置しておらず、廊下Cに位置していると識別可能である。
これに替えて、廊下Cも区画Sとして扱い、区画Sに含まれるものとしたうえで、廊下Cに対しても固有の識別子を設けるように構成し、当該識別子によって、部屋Srと同様に、移動体20の位置する区画Sが廊下Cであると判定するようにしてもよい。このような場合においては、識別子そのものを用いて情報ラベルMが部屋Srの内側と外側(すなわち廊下C)のいずれに設けられたものであるかを識別可能であるため、区画識別情報に、区画内外識別情報を含まなくとも構わない。
【0026】
このように、本実施形態においては、区画識別情報は、識別子と、区画内外識別情報を含み、これらの値の組み合わせが、各境界部を挟んで互いに異なる値になるように、設定されている。
【0027】
図3は、上記移動体位置推定システムによって位置が推定される移動体の一例を示す側面図である。
上記のような情報ラベルMは、例えば二次元コードである。情報ラベルMは、構造物1を構成するいずれかの表面に設けられる。図1図3に示すように、情報ラベルMは、出入口Gの床面F、又は天井面に設けられている。本実施形態において、情報ラベルMは、出入口Gの幅方向中央部の床面F上に設けられている。情報ラベルMは、薄いシート状、フィルム状で、粘着材、接着剤、両面接着テープ等によって床面上に貼り付けられている。情報ラベルMは、例えば、表面に二次元コードがプリントされた金属プレートからなり、床面にビス等によって固定、あるいは床面に表面を露出させた状態で床に埋設されていてもよい。
【0028】
移動体20は、病院や介護施設の看護スタッフ、構造物1の管理スタッフ等のスタッフが、治療などの、各々の従事する業務を遂行するために、手押しで移動させるものである。移動体20は、台車本体21と、情報読取り部22と、処理装置23と、を備えている。
台車本体21は、複数の車輪21rを有しており、スタッフが外力を加えて押すことにより、床面F上で移動可能とされている。本実施形態においては、複数の車輪21rは自在に方向を変え得るキャスター等であり、移動体20は、姿勢を変更せずに、進行方向を360°の全方向に自在に変更することができる、小回りが利く構造を有している。
【0029】
情報読取り部22は、情報ラベルMを外部から検出する。本実施形態においては、情報読取り部22は、カメラである。情報読取り部22は、情報ラベルMが設けられた、構造物1を構成する表面を向くように設けられている。特に本実施形態においては、情報読取り部22は、情報ラベルMが設けられた床面Fに対して上下方向に間隔をあけて対向するよう設けられている。情報読取り部22は、例えば台車本体21の下面に設けられている。情報読取り部22は、鉛直下方を向いて撮影を行うように設けられている。情報ラベルMが天井面に設けられる場合においては、情報読取り部22は、例えば台車本体21の上面に、天井面に対して上下方向に間隔をあけて対向して、鉛直上方を向いて撮影を行うように設けられるのが望ましい。
情報読取り部22は、移動体20の使用中は常時作動しており、情報ラベルMを撮影した場合には、撮影した画像データを処理装置23に出力する。情報読取り部22は、情報ラベルMに設定された区画識別情報を非接触で読み取り可能である。情報読取り部22は、移動体20が境界部すなわち出入口Gを越えて区画Sの外側から内側へ、あるいは内側から外側へと移動するときに、出入口Gの床面Fに設けられた、出入口Gの一方の側の情報ラベルMと、他方の側の情報ラベルMとを順次検出し、これらに設定された区画識別情報を非接触で読み取る。
【0030】
処理装置23は、コンピュータ装置であり、所定のプログラムに基づいた処理を実行する。処理装置23は、位置推定部24と、処理実行部25と、情報記憶部28と、情報送信部29と、を備えている。
【0031】
位置推定部24は、情報読取り部22で撮影、出力された情報ラベルMの画像データに基づいて、移動体20が位置している区画Sを推定する。位置推定部24は、情報読取り部22で検出した情報ラベルMに設定された、各区画Sを識別可能な区画識別情報に基づいて、移動体20が位置している区画Sを推定する。
【0032】
位置推定部24は、移動体20が区画Sの境界部を越えて移動するときに、各区画Sの出入口Gに設けられた一対の情報ラベルMを検出した順序に基づいて、順次検出した情報ラベルMの、区画識別情報の変化を基に、移動体20が境界部を越えたか否かを判定し、移動体20の位置を推定する。
例えば、各部屋Srの出入口Gにおいて、部屋Srの外側であることを示す区画内外識別情報を含む情報ラベルMoutを検出した後、部屋Srの内側であることを示す区画内外識別情報を含む情報ラベルMinを検出した場合には、移動体20が廊下Cから境界部すなわち出入口Gを越えて部屋Srに移動して、部屋Sr内に位置していると推定する。また、例えば、各部屋Srの出入口Gにおいて、部屋Srの内側であることを示す区画内外識別情報を含む情報ラベルMinを検出した後、部屋Srの外側であることを示す区画内外識別情報を含む情報ラベルMoutを検出した場合には、移動体20が部屋Srから出入口Gを越えて廊下Cに移動して、移動体20はどの区画S(部屋Sr)にも位置しておらず、部屋Srの外、つまり廊下Cに位置していると推定する。
【0033】
また、既に説明したように、互いに隣り合う部屋Sr(Sr1、Sr2)同士を連通する出入口G(G1)が設けられている場合、出入口G(G1)には、部屋Sr1側に、識別子が部屋Sr1の内側であることを示す情報ラベルMin-1が設けられ、部屋Sr2側に、識別子が部屋Sr2の内側であることを示す情報ラベルMin-2が設けられている。この場合、位置推定部24は、情報ラベルMin-1を検出した後に情報ラベルMin-2を検出すれば、移動体20が部屋Sr1から境界部すなわち出入口G(G1)を越えて部屋Sr2内に移動し、部屋Sr2内に位置していると推定する。位置推定部24は、情報ラベルMin-2を検出した後に情報ラベルMin-1を検出すれば、移動体20が部屋Sr2から出入口G(G1)を越えて部屋Sr1内に移動し、部屋Sr1内に位置していると推定する。
このようにして、位置推定部24は、移動体20の現在位置する区画Sを推定する。位置推定部24は、この推定した区画Sに関する情報を、区画情報として外部に出力する。位置推定部24は、移動体20が廊下Cに位置すると推定した場合には、区画情報として、どの区画Sにも位置せず廊下Cに位置する旨を出力する。
【0034】
図2に示す情報記憶部28には、情報ラベルMを検出して区画識別情報を読み取るたびに、最新の区画識別情報が更新して記憶される。
すなわち、位置推定部24は、新たに情報ラベルMを検出した場合には、記憶していた移動体20の区画識別情報に替えて、新たに検出した情報ラベルMから読み取られた区画識別情報を更新して保存する。
【0035】
処理実行部25は、移動体20が区画S(部屋Sr)に位置しているときに、所定の処理を実行する。本実施形態において、処理実行部25は、例えば、各区画S(部屋Sr)における無線LANや医療用テレメータの接続しやすさを評価するために、区画Sにおける電波環境(例えば、電波の強弱など)の測定を行う。このため、処理実行部25は、加速度センサ26と、電波測定部27と、を備えている。
加速度センサ26は、移動体20に生じる加速度を検出する。加速度センサ26で検出される加速度が0であれば、移動体20は停止している。
電波測定部27は、所定のプログラムに基づいて、電波環境の測定処理を実行する。電波測定部27は、加速度センサ26で検出される加速度が0である場合、つまり移動体20が停止している場合に、電波環境の測定処理を実行する。
【0036】
処理装置23は、位置推定部24で推定された移動体20の位置する区画Sに関する区画情報と、処理実行部25で実行された処理結果情報(電波環境の測定結果)とを、関連付けて情報記憶部28に記憶させる。
情報送信部29は、情報記憶部28に記憶された、処理実行部25で実行された処理結果情報と、これに関連付けられた、位置推定部24で推定された移動体20の区画情報とを、管理装置30に送信する。情報送信部29は、外部のネットワーク100を介して、処理実行部25で実行された処理結果情報と、これに関連付けられた、位置推定部24で推定された移動体20の区画情報とを、リアルタイムで管理装置30に送信するようにしてもよい。外部のネットワーク100とは、例えば、情報送信部29と無線による通信を行うことのできる無線LAN等の無線通信網である。また、情報送信部29は、情報記憶部28に、処理実行部25で実行された処理結果情報と、これに関連付けられた、位置推定部24で推定された移動体20の区画情報とを蓄積しておき、複数の区画Sを巡回して複数の区画Sでの処理を行った後、複数の区画Sの各々における処理結果(処理実行部25で実行された処理結果情報と、これに関連付けられた、位置推定部24で推定された移動体20の区画情報)を、まとめて管理装置30に送信するようにしてもよい。この場合は、移動体20から管理装置30に、ケーブル(図示無し)を介した有線によるデータ送信、または可搬性を有する各種メモリーデバイスを介したデータ転送を行うようにしてもよい。
【0037】
管理装置30は、無線又は有線により、外部のネットワーク100に接続されている。管理装置30は、移動体20から送信された複数の区画Sにおける処理結果(処理実行部25で実行された処理結果情報と、これに関連付けられた、位置推定部24で推定された移動体20の区画情報)を管理する。管理装置30は、コンピュータ装置であり、所定のプログラムに基づいた所定の処理を実行する。管理装置30は、情報受信部31と、処理部33と、情報格納部35と、情報出力部37と、を機能的に備えている。
【0038】
情報受信部31は、外部のネットワーク100を介し、移動体20から送信される情報を受信する。
【0039】
処理部33は、情報受信部31で受信した情報に基づいて、所定の処理を実行する。処理部33は、移動体20において各区画Sで行った処理結果情報(電波環境の測定結果)と、測定を行ったときの移動体20が位置していた区画Sを示す区画情報とを、これらが互いに関連付けられた状態で、情報格納部35に格納する。
情報格納部35には、例えば、構造物1における複数の区画Sの配置を示すフロアマップ等の図形情報が格納されている。処理部33は、測定を行ったときの移動体20が位置していた区画Sを示す区画情報と、複数の区画Sの配置を示すフロアマップ等の図形情報とを紐付けることで、図4に示すように、フロアマップ上に表示される各区画Sに、電波環境の測定結果を、色分け表示、文字情報等によって、表示するための表示データを生成する。
【0040】
図2に示すように、情報出力部37は、処理部33で生成された表示データを、外部のネットワーク100を介し、外部端末40に送信する。
外部端末40は、パーソナルコンピュータ、タブレット装置、スマートフォン、携帯電話等であり、無線又は有線により、外部のネットワーク100に接続可能となっている。外部端末40は、情報出力部37から送信された表示データに基づく画像情報を表示する表示部41を有する。外部端末40は、外部のネットワーク100を介し、管理装置30から表示データを受信すると、図4に示すように、受信されたデータに基づくフロアマップ情報を表示部41に表示する。
移動体位置推定システムは、外部端末40を備えない構成とし、この替わりとして管理装置30がディスプレイなどの表示部を備え、情報出力部37が表示データを表示部に直接表示するようにしてもよい。
【0041】
図5は、上記移動体20の位置推定部24で実行される移動体位置推定方法の流れを示すフローチャートである。
図5に示すように、位置推定部24では、情報読取り部22で情報ラベルMを撮影した場合、情報読取り部22から出力された情報ラベルMの画像データを取得する(ステップS101)。
続いて、位置推定部24では、画像データに基づく画像から、既往の画像処理技術等によって情報ラベルM(二次元コード)を抽出する(ステップS102)。情報ラベルMの抽出に失敗した場合、ステップS101に戻り、処理を繰り返す。
【0042】
ステップS102で情報ラベルMが抽出、検出された場合、位置推定部24では、情報ラベルMから、区画識別情報を読み取り、更に、区画識別情報から、区画S(部屋Sr)を識別する部屋番号等の識別子と、情報ラベルMが、区画S(部屋Sr)の内側であるか外側であるかを示す区画内外識別情報を抽出する(ステップS103)。
【0043】
次いで、今回取得した区画識別情報と、前回検出された情報ラベルMから読み取られた、情報記憶部28に記憶されている区画識別情報とを比較する。より詳細には、今回、ステップS103で読み取られた区画識別情報から抽出された、識別子及び区画内外識別情報と、前回読み取られた区画識別情報から抽出された識別子及び区画内外識別情報とを、それぞれ比較する(ステップS104)。
そして、前回の区画識別情報と、今回の区画識別情報とで、区画Sを識別する識別子と、区画Sの内側であるか外側であるかを示す区画内外識別情報との双方が一致しているか否かを、まず判定する(ステップS105)。
識別子と区画内外識別情報との双方が一致している場合(ステップS105のYes)、移動体20が前回と同じ区画Sまたは廊下C内に位置しており、他の区画Sまたは廊下Cに移動していないと判定し、ステップS120に遷移する。ステップS120では、移動体20の現在位置する区画Sに関する情報である区画情報を更新せず、今回新たに検出した最新の情報ラベルMに設定されている、区画Sの区画識別情報を、情報記憶部28に記憶して、区画識別情報を更新する。
ステップS105で、区画Sを識別する部屋番号等の識別子と、区画Sの内側であるか外側であるかを示す区画内外識別情報の、少なくともいずれか一方が一致していない場合(ステップS105のNo)には、ステップS106に進む。
【0044】
ステップS106では、今回取得された区画識別情報に含まれる識別子が示す区画Sが、前回取得された区画識別情報に含まれる識別子が示す区画Sと一致しているか否かを判定する。
その結果、今回の識別子が示す区画Sが前回の識別子が示す区画Sと一致している場合(ステップS106のYes)には、ステップS107に進む。
【0045】
ステップS105においては識別子と区画内外識別情報の、少なくともいずれか一方が、前回取得された区画識別情報と今回取得された区画識別情報とで異なると判定されている。このため、このステップS105を経て到達したステップS106において、今回取得された識別子が示す区画Sが前回取得された識別子が示す区画Sと一致していると判定された場合においては、前回と今回では、区画内外識別情報が異なっているものと考えられる。そこで、ステップS107では、今回の区画内外識別情報が区画Sの内側のものであるか否かを判定する。より詳細には、ステップS107では、前回取得された区画内外識別情報が外側を示し、かつ今回取得された区画内外識別情報が内側を示しているか、そうでないか、すなわち前回取得された区画内外識別情報が内側を示し、かつ今回取得された区画内外識別情報が外側を示しているかを判定する。
その結果、今回取得された区画内外識別情報が区画Sの内側のものであれば(ステップS107のYes)、移動体20が、区画内外識別情報が区画Sの外側とされる領域、すなわち本実施形態における廊下Cから、区画S、すなわち今回取得された識別子に対応する部屋Sr内に進入したと判定する(ステップS108)。
更に、ステップS120に進み、区画情報を移動体20が現在位置する区画S(部屋Sr)に更新し、ステップS103で抽出した最新の情報ラベルMに設定されている区画識別情報を、情報記憶部28に記憶して、区画識別情報を更新する。
【0046】
また、ステップS107において、今回取得された区画内外識別情報が区画Sの内側のものではない、つまり区画Sの外側のものであると判定された場合(ステップS107のNo)には、移動体20が、区画S、すなわち識別子に対応する部屋Srから、区画内外識別情報が区画Sの外側とされる区画S、すなわち本実施形態における廊下Cに出たと判定する(ステップS109)。
更に、ステップS120に進み、区画情報を移動体20がどの区画Sにも位置せず廊下Cに位置する旨に更新し、ステップS103で抽出した最新の情報ラベルMに設定されている区画識別情報を、情報記憶部28に記憶して、区画識別情報を更新する。
【0047】
ステップS106において、今回取得された識別子が示す区画Sが前回取得された識別子が示す区画Sと一致していないと判定された場合(ステップS106のNo)には、前回と今回では、区画内外識別情報が同一であるか、異なるかのいずれかの場合が考えられる。
ここで、前回と今回で、識別子と区画内外識別情報の双方が異なるのは、例えばある部屋Srの出入口Gの外側から他の部屋Srの出入口Gの内側へ移動した場合を示すものであり、このような移動は、外移動体位置推定システムが正常に動作する範疇においては考えられない。すなわち、識別子と区画内外識別情報の双方が異なるのは、何らかの要因で情報ラベルMを正しく認識できない場合があったことを示す、異常系の動作であるため、本実施形態においては詳説しない。
すなわち、ステップS106において、今回取得された識別子が示す区画Sが前回取得された識別子が示す区画Sと一致していないと判定された場合には、本実施形態においては、区画内外識別情報が前回と今回で一致している場合であるとみなし、ステップS110に進む。
【0048】
ステップS110では、区画内外識別情報が前回と今回で共に内側であるか、そうでないか、すなわち共に外側であるかを判定する。
その結果、区画内外識別情報が前回と今回で共に内側である場合(ステップS110のYes)には、前回と今回では、上記のように識別子が示す区画Sが異なっているため、移動体20が、一つの部屋Sr(Sr1、Sr2)から廊下Cを経ずに、出入口G(G1)を介して、他の部屋Sr(Sr1、Sr2)に移動したと判定する(ステップS111)。
更に、ステップS120に進み、区画情報を移動体20が現在位置する区画S(部屋Sr1または部屋Sr2)に更新し、ステップS103で抽出した最新の情報ラベルMに設定されている区画識別情報を、情報記憶部28に記憶して、区画識別情報を更新する。
【0049】
また、ステップS110で、区画内外識別情報が前回と今回で共に内側ではない場合(ステップS110のNo)は、区画内外識別情報が前回と今回で共に外側であると考えられる。この場合には、移動体20は、廊下Cを移動中に、異なる部屋Srの外側に設けられた情報ラベルMを順次検出したと判断し、移動体20の現在位置が廊下Cであると推定する。
更に、ステップS120に進み、区画情報を更新せず、ステップS103で検出した情報ラベルMに設定されている区画識別情報を、移動体20の現在位置として情報記憶部28に記憶して、区画識別情報を更新する。
【0050】
上記のような処理を経て、位置推定部24は、移動体20の現在位置する区画Sとして、最新の区画情報を外部に出力する。
上記一連の処理は、移動体20の使用を完了するまで、所定時間間隔毎に繰り返し実行する。
【0051】
図6は、上記移動体20の処理実行部25で実行される電波環境の検出処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示すように、処理実行部25では、加速度センサ26で検出される、移動体20の加速度を監視する(ステップS201)。
【0052】
続いて、検出される加速度から、移動体20が静止状態であるか否かを判定する(ステップS202)。検出する加速度が0ではない場合、移動体20が静止していないと判定し、ステップS201に戻って処理を繰り返す。
ステップS202において、検出される加速度が0である場合、移動体が静止状態にあると判定する。
その場合、処理実行部25は、位置推定部24で推定した移動体20の現在位置するのがどの区画Sであるかを示す、区画情報を参照する(ステップS203)。
【0053】
続いて、処理実行部25は、移動体20の現在位置が、予め設定された電波環境測定の対象エリア内であるか否かを判定する(ステップS204)。
その結果、移動体20の現在位置が電波環境測定の対象エリア内では無い場合(ステップS204のNo)、ステップS201に戻って処理を繰り返す。
移動体20の現在位置が、予め設定された電波環境測定の対象エリア内であった場合(ステップS204のYes)、その位置で、処理実行部25で電波環境の測定を行うための処理を実行し、その測定結果を、移動体20の区画情報と関連付けて、管理装置30に送信する(ステップS205)。
【0054】
上述したような移動体位置推定システム10は、複数の区画Sを有した構造物1において、移動体20の位置推定を行う移動体位置推定システム10であって、区画Sの境界部の両側に設けられ、区画Sを識別可能な区画識別情報が境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定された、一対の情報ラベルMと、複数の区画Sを移動可能な移動体20に設けられ、情報ラベルMを検出し、情報ラベルMに設定された区画識別情報を非接触で読み取り可能な情報読取り部22と、情報読取り部22で読み取った、情報ラベルMに設定された区画識別情報に基づき、移動体20の位置する区画Sを推定する位置推定部24と、を備える。
このような構成によれば、区画Sの境界部には、一対の情報ラベルMが設けられている。一対の情報ラベルMの各々は、境界部の両側に、すなわちある区画Sに対して境界部の当該区画S側と、当該区画Sとは反対側の各々に、設けられている。各情報ラベルMには、区画Sを識別可能な区画識別情報が、境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定されている。複数の区画Sを移動可能な移動体20には、情報読取り部22が設けられている。情報読取り部22は、情報ラベルMを検出し、情報ラベルMに設定された区画識別情報を非接触で読み取り可能である。これにより、移動体20が境界部を越えて境界部の一方の側から他方の側へと移動すると、境界部で、情報読取り部22が、一方の側の情報ラベルMと、他方の側の情報ラベルMの各々に設定された区画識別情報を読み取り、当該区画識別情報に基づいて、移動体20の位置する区画Sを推定する。このとき、境界部の両側に設けられた情報ラベルMには、それぞれ、境界部を挟んで互いに異なる値に区画識別情報が設定されているため、例えば、順次読み取った情報ラベルMでの区画識別情報の変化を基に移動体20が境界部を越えたか否かを判定することで、移動体20が位置する区画Sを推定しやすい。
このように、区画Sの境界部に設けられた情報ラベルMを検出し、これに設定された区画識別情報を読み取ることによって、移動体20の位置する区画Sを推定するので、移動体20の大きさに対して区画Sが広い場合であっても、移動体20が境界部の一方の側から他方の側へと移動する際に、情報ラベルMが検出される。これによって、移動体20の位置する区画Sを確実に推定することができる。
また、上記のような移動体位置推定システム10を実現するに際し、構造物1側においては区画Sの境界部のみに情報ラベルMを設け、移動体20側においては情報読取り部22を備えればよい。したがって、情報ラベルMの設置数を低減可能であり、簡易な構成で移動体20の位置する区画Sの推定を行うことができる。
その結果、移動体20の位置する区画Sの推定を確実に、かつ簡易な構成で行うことが可能となる。
【0055】
上記のような、移動体20の位置する区画Sを推定する移動体位置推定システムを、各区画Sに例えば異なるBLEビーコンを設置し、受信した信号の中で最も強いものに対応するBLEビーコンを割り出して、当該BLEビーコンに対応する区画Sに移動体20が位置すると推定するように、構成することも考えられる。
しかし、このような移動体位置推定システムにおいて、例えばある部屋Srに設けられたBLEビーコンの信号が廊下Cにまで到達した場合には、移動体20が廊下Cに位置しているにも関わらず、この信号を受信することで当該BLEビーコンに対応する部屋Srに移動体20が位置しているものと、誤って推定する可能性がある。あるいは、ある部屋Srに設けられたBLEビーコンの信号が隣接する他の部屋Srにまで到達した場合には、信号の強度によっては、移動体20が位置する部屋Srを誤って推定する可能性がある。
これに対し、上記のような本実施形態における移動体位置推定システム10は、移動体20の位置する区画Sを、より確実に、推定することができる。
【0056】
また、移動体20の位置する区画Sを推定する移動体位置推定システムを、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術によって実現することも考えられる。
しかし、SLAM技術を実現するには、移動体20に、レーザーレンジファインダーや、この出力を解析して局所地図を生成する機構などの、大掛かりな実装が必要となる。
また、SLAM技術においては、生成した局所地図を事前に登録された大域地図と比較して移動体20の現在位置を推定するものであるため、例えば新たな家具や機材が区画Sに導入されてレイアウトや間取りが変更された場合等には、大域地図の再生成が必要となるため、運用が難しい場合がある。
これに対し、上記のような本実施形態における移動体位置推定システム10は、SLAM技術を適用した場合に比べると、簡易な構成で実現可能であるとともに、区画S内のレイアウトや間取りが変更された場合においても、特段の対応は必要なく、したがって運用が容易である。
【0057】
特に、本実施形態においては、移動体20は、姿勢を変更せずに、進行方向を360°の全方向に自在に変更することができる、小回りが利く構造を有している、利用者が手押しで移動させるカートである。
上記のような移動体位置推定システム10によれば、このような移動体20を対象とした場合であっても、移動体20の位置する区画Sの推定を確実に、かつ簡易な構成で行うことが可能となる。
【0058】
また、一対の情報ラベルMは、区画Sへの出入口Gに、一方が区画Sの内側に、他方が区画Sの外側に、それぞれ設けられている。
このような構成によれば、一対の情報ラベルMを区画Sへの出入口Gに設けることで、移動体20が出入口Gを通って区画Sに出入りするときに、情報ラベルMを確実に検出することができる。
【0059】
また、区画識別情報は、区画Sを識別可能な識別子と、情報ラベルMが、区画Sの、出入口Gにおける内側と外側のいずれに設けられているかを識別可能な、区画内外識別情報を含んでいる。
このような構成によれば、移動体20が、どの区画Sの、出入口の外側と内側のいずれに位置しているのかを容易に推定可能である。
特に、区画Sとして設定された領域と、例えば上記実施形態における廊下Cのように区画Sとして設定されていない領域が、出入口Gを介して隣接し、移動体20が、この出入口Gを跨いで移動することがあるような場合においても、出入口Gの、区画Sとして設定されていない領域側に、区画内外識別情報として外側であるとの情報が設定された情報ラベルMoutを設けることにより、本移動体位置推定システム10を適用可能である。
【0060】
また、情報ラベルMは、区画識別情報が設定された二次元コードを有する。
このような構成によれば、情報ラベルMに二次元コードを用いることで、情報ラベルMの設置のために必要なスペースが少なくて済む。また、二次元コードは、登録できる情報量が多いため、情報ラベルMに、様々な情報を盛り込んでおくことができる。
【0061】
また、情報ラベルMは、構造物1を構成するいずれかの表面に設けられ、情報読取り部22は、当該表面を向くように設けられている。
このような構成によれば、移動体位置推定システム10を適切に実現可能である。
【0062】
また、情報ラベルMは、区画Sの床面F又は天井面に設けられ、情報読取り部22は、床面F又は天井面に向けて設けられている。
このような構成によれば、情報ラベルMを床面F又は天井面に設けることで、情報ラベルMを壁面等に設ける場合に比較して、情報読取り部22で情報ラベルMを検出する際に、情報ラベルMと情報読取り部22との間に障害物等が入るのを抑えることができる。また、情報読取り部22がカメラである場合、情報ラベルMが壁面等の側方に設けられていと、カメラで情報ラベルMを検出する際に、区画Sにいる周囲の人等が写ってしまうことがある。これに対し、床面Fや天井面に情報ラベルMを設けると、情報ラベルMを検出する際に、周囲の人等が写ってしまうのを抑えることができ、プライバシー性が確保される。
【0063】
また、位置推定部24は、一対の情報ラベルMの各々に設定された区画識別情報を情報読取り部22で読み取った順序に基づき、移動体20の位置する区画Sを推定する。
このような構成によれば、一対の情報ラベルMの各々に設定された区画識別情報を情報読取り部22で読み取った順序に基づき、移動体20の位置する区画Sを推定する。例えば、境界部の一方の側に設けられた情報ラベルMの各々に設定された区画識別情報を読み取った後、他方の側に設けられた情報ラベルMの各々に設定された区画識別情報を読み取れば、移動体20が境界部を越えて移動した、と推定することができる。これにより、移動体20の移動方向、位置する区画Sを、より容易かつ確実に把握することができる。
【0064】
また、移動体位置推定システム10は、移動体20に設けられ、移動体20が区画Sに位置しているときに、所定の処理を実行する処理実行部25と、処理実行部25で実行された処理結果情報を、位置推定部24で推定された移動体20の位置する区画Sと関連付けて格納する情報記憶部28と、をさらに備える。
このような構成によれば、移動体20に設けられた処理実行部25で、移動体20が区画Sに位置しているときに所定の処理を実行することができる。所定の処理によって実行された処理結果情報は、移動体20の位置する区画Sと関連付けて情報記憶部28に格納される。これにより、構造物1内の複数の区画Sで所定の処理を実行した場合、それぞれの区画Sにおける処理結果を、区画Sに関連付けて取得することができる。
【0065】
また、上述したような移動体方法は、複数の区画Sを有した構造物1において、移動体20の位置推定を行う移動体方法であって、区画Sの境界部の両側に、区画Sを識別可能な区画識別情報が境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定された、一対の情報ラベルMを設けておき、複数の区画Sを移動可能な移動体20に設けられた情報読取り部22で、前記情報ラベルを検出し、情報ラベルMに設定された区画識別情報を非接触で読み取る工程と、情報読取り部22で読み取った、情報ラベルMに設定された区画識別情報に基づき、移動体20の位置する区画Sを推定する工程と、を含む。
このような構成によれば、区画Sの境界部には、一対の情報ラベルMが設けられている。一対の情報ラベルMの各々は、境界部の両側に、すなわちある区画Sに対して境界部の当該区画S側と、当該区画Sとは反対側の各々に、設けられている。各情報ラベルMには、区画Sを識別可能な区画識別情報が、境界部を挟んで互いに異なる値に、外部から読み取り可能に設定されている。複数の区画Sを移動可能な移動体20には、情報読取り部22が設けられている。情報読取り部22は、情報ラベルMを検出し、情報ラベルMに設定された区画識別情報を非接触で読み取り可能である。これにより、移動体20が境界部を越えて境界部の一方の側から他方の側へと移動すると、境界部で、情報読取り部22が、一方の側の情報ラベルMと、他方の側の情報ラベルMの各々に設定された区画識別情報を読み取り、当該区画識別情報に基づいて、移動体20の位置する区画Sを推定する。このとき、境界部の両側に設けられた情報ラベルMには、それぞれ、境界部を挟んで互いに異なる値に区画識別情報が設定されているため、例えば、順次読み取った情報ラベルMでの区画識別情報の変化を基に移動体20が境界部を越えたか否かを判定することで、移動体20が位置する区画Sを推定しやすい。
このように、区画Sの境界部に設けられた情報ラベルMを検出し、これに設定された区画識別情報を読み取ることによって、移動体20の位置する区画Sを推定するので、移動体20の大きさに対して区画Sが広い場合であっても、移動体20が境界部の一方の側から他方の側へと移動する際に、情報ラベルMが検出される。これによって、移動体20の位置する区画Sを確実に推定することができる。
また、上記のような移動体位置推定システム10を実現するに際し、構造物1側においては区画Sの境界部のみに情報ラベルMを設け、移動体20側においては情報読取り部22を備えればよい。したがって、情報ラベルMの設置数を低減可能であり、簡易な構成で移動体20の位置する区画Sの推定を行うことができる。
その結果、移動体20の位置する区画Sの推定を確実に、かつ簡易な構成で行うことが可能となる。
【0066】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の移動体位置推定システム、移動体位置推定方法は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、情報ラベルMを、各区画Sの出入口Gに設けるようにしたが、例えば、図7に示すように、情報ラベルMを、出入口Gの幅方向に複数並べて設けるようにしてもよい。
このような構成によれば、情報ラベルMを出入口Gの幅方向に複数並べて設けることで、移動体20が出入口Gを通って区画Sに出入りする際に、情報ラベルMをより確実に検出することができる。
【0067】
(その他の変形例)
また、上記実施形態では、情報読取り部22としてのカメラにより、情報ラベルMを読み取るようにしたが、例えば、情報ラベルMの二次元コードを、赤外線に反応する物質を含んで形成し、情報読取り部22では、赤外線を照射しながら情報ラベルMの読み取りを行うようにしてもよい。
また、情報ラベルMには、透明なシート材を用い、床面Fの色とのコントラストによって情報読取り部22で読み取り可能となる色で二次元コードを形成するようにしてもよい。
また、情報ラベルMには、RFIDタグを用い、情報読取り部22は、RFIDタグリーダを用いるようにしてもよい。
このようにすることで、床面F上で情報ラベルMが目立つのを抑えることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、情報ラベルMは、区画Sの床面F又は天井面に設けられ、情報読取り部22は、床面F又は天井面に向けて設けられていたが、本質的には、情報ラベルMは、構造物1のいずれかの面に設けられていればよい。より具体的には、例えば情報読取り部22がRFIDタグリーダである場合や、情報読取り部22がカメラであっても周囲の人等がカメラに撮影されて構わないような場合等においては、情報ラベルMを、構造物1の内部の、床面Fや天井面以外の他の表面、例えば壁面等の側面に設けられていても構わない。
このような場合の一例として、例えば図8のように、区画Sr1と区画Sr2とを仕切る壁Wに一定の、十分な厚みがある場合に、この壁Wの、出入口Gを形成して厚み方向すなわち区画Sr1と区画Sr2とを結ぶ方向に沿って延在する表面Wt上に、情報ラベルMを設けてもよい。この場合には、壁Wの当該表面Wtの、厚み方向の中心を境界部Bとし、表面Wt上の境界部Bに対して区画Sr1側に、区画Sr1に対応する情報ラベルMin-1を設け、表面Wt上の境界部Bに対して区画Sr2側に、区画Sr2に対応する情報ラベルMin-2を設けてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、移動体位置推定システム10の処理実行部25で、電波環境の測定を行うようにしたが、移動体20を各区画Sに移動させて行う処理(業務)の内容については、何ら限定するものではない。例えば、処理実行部25は、各区画Sの明るさや騒音等、電波環境以外の他の環境を測定するようにしてもよい。また、移動体位置推定システム10では、単に移動体20の位置管理に用いるようにしてもよい。例えば、移動体20が清掃用カートであり、各区画Sの清掃状況を、各区画Sに移動体20が移動したか否かに基づいて確認するようにしてもよい。これ以外にも、各区画Sへの配布物の配布、回収物の回収等の確認のために、移動体位置推定システム10を用いてもよい。
【0070】
また、区画Sは、必ずしも壁等で区切られた空間であるとは限らない。
例えば、工場等の広いスペースにおいて、区画Sの周囲(他の区画Sとの境界部)に、帯状に2次元コード等の情報ラベルMを配置し、区画Sに出入りする際に情報ラベルMを読み取れるようにしてもよい。
あるいは、例えば、レストラン、オフィス等で複数のテーブルやデスク等が設けられている場合、テーブルやデスクが設けられている区画Sに移動体20でアクセスする部分に、情報ラベルMを設けるようにしてもよい。
【0071】
また、移動体20は、手押しのカートに限らず、自律制御によって移動可能な構成である場合にも、上記構成を適用可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 構造物 28 情報記憶部
10 移動体位置推定システム F 床面
20 移動体 G、G1 出入口
22 情報読取り部 M 情報ラベル
24 位置推定部 S 区画
25 処理実行部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8