(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188861
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】感染分析装置および感染分析方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20221215BHJP
H04W 4/029 20180101ALI20221215BHJP
G06Q 90/00 20060101ALI20221215BHJP
G16Y 10/60 20200101ALI20221215BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20221215BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20221215BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20221215BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20221215BHJP
【FI】
G06Q50/10
H04W4/029
G06Q90/00
G16Y10/60
G16Y20/10
G16Y20/40
G16Y40/20
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097112
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】敦澤 隆介
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 孝
(72)【発明者】
【氏名】岡村 大
(72)【発明者】
【氏名】的場 好正
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 英一
(72)【発明者】
【氏名】山中 晃
(72)【発明者】
【氏名】小宮 秀介
(72)【発明者】
【氏名】本村 良和
【テーマコード(参考)】
5K067
5L049
【Fターム(参考)】
5K067AA34
5K067DD17
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ53
5L049CC11
5L049CC20
5L049DD01
(57)【要約】
【課題】感染症の感染者のプライバシーを保護しながら感染拡大の発生場所を特定できる方法を提供する。
【解決手段】各アクセスポイントとモバイル端末との接続を表す情報、及び、各感染者のモバイル端末を識別する情報に基づいて、各アクセスポイントの通信エリア内に位置する感染者の数をカウントし、第1の感染者により携帯されるモバイル端末が、第1の時間帯において第1のアクセスポイントと接続し、且つ、第1の時間帯よりも後の第2の時間帯において第2のアクセスポイントと接続したときに、第1の時間帯において第1のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数より第2の時間帯において第2のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数の方が多ければ、第2のアクセスポイントの通信エリアにおいて感染が拡大すると判定する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクセスポイントを利用して感染が拡大する場所を推定する感染分析プログラムであって、
各アクセスポイントとモバイル端末との接続を表す接続情報、及び、各感染者のモバイル端末を識別する端末識別情報に基づいて、各アクセスポイントの通信エリア内に位置する感染者の数を表す感染者データを生成し、
第1の感染者により携帯される第1のモバイル端末が、第1の時間帯において第1のアクセスポイントと接続し、且つ、前記第1の時間帯よりも後の第2の時間帯において第2のアクセスポイントと接続したときに、前記感染者データに基づいて、前記第1の時間帯において前記第1のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第1の感染者数および前記第2の時間帯において前記第2のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第2の感染者数を算出し、
前記第2の感染者数が前記第1の感染者数より多いときに、前記第2のアクセスポイントの通信エリアにおいて感染が拡大すると判定する
処理をプロセッサに実行させる感染分析プログラム。
【請求項2】
前記第2の時間帯は、前記第1の時間帯の直後の時間帯である
ことを特徴とする請求項1に記載の感染分析プログラム。
【請求項3】
前記接続情報は、各アクセスポイントとモバイル端末との接続の開始時刻および終了時刻を表し、
前記第1のモバイル端末を識別する端末識別情報および前記第1の感染者の感染期間で前記接続情報を検索することにより、前記第1の感染者の感染期間内に前記第1のモバイル端末が接続したアクセスポイントおよび時間帯を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の感染分析プログラム。
【請求項4】
分析結果の閲覧要求を受信したときに、その閲覧要求の送信元に対して付与されている権限に対応する範囲の分析結果を閲覧要求の送信元に出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の感染分析プログラム。
【請求項5】
複数のアクセスポイントを利用して感染が拡大する場所を推定する感染分析方法であって、
各アクセスポイントとモバイル端末との接続を表す接続情報、及び、各感染者のモバイル端末を識別する端末識別情報に基づいて、各アクセスポイントの通信エリア内に位置する感染者の数を表す感染者データを生成し、
第1の感染者により携帯される第1のモバイル端末が、第1の時間帯において第1のアクセスポイントと接続し、且つ、前記第1の時間帯よりも後の第2の時間帯において第2のアクセスポイントと接続したときに、前記感染者データに基づいて、前記第1の時間帯において前記第1のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第1の感染者数および前記第2の時間帯において前記第2のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第2の感染者数を算出し、
前記第2の感染者数が前記第1の感染者数より多いときに、前記第2のアクセスポイントの通信エリアにおいて感染が拡大すると判定する
ことを特徴とする感染分析方法。
【請求項6】
複数のアクセスポイントを利用して感染が拡大する場所を推定する感染分析装置であって、
各アクセスポイントとモバイル端末との接続を表す接続情報、及び、各感染者のモバイル端末を識別する端末識別情報に基づいて、各アクセスポイントの通信エリア内に位置する感染者の数を表す感染者データを生成する感染者データ生成部と、
第1の感染者により携帯される第1のモバイル端末が、第1の時間帯において第1のアクセスポイントと接続し、且つ、前記第1の時間帯よりも後の第2の時間帯において第2のアクセスポイントと接続したときに、前記感染者データに基づいて、前記第1の時間帯において前記第1のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第1の感染者数および前記第2の時間帯において前記第2のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第2の感染者数を算出する感染者数算出部と、
前記第2の感染者数が前記第1の感染者数より多いときに、前記第2のアクセスポイントの通信エリアにおいて感染が拡大すると判定する判定部と、
を備える感染分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症の感染が拡大する場所を推定する装置および方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
モバイル端末を使用してウイルス等の感染症の拡大を防止または抑制する方法が実用化されている。例えば、多数のユーザのモバイル端末にそれぞれ接触確認プログラムをインストールする。このとき、接触確認プログラムをインストールしたモバイル端末が、感染症を監視する監視サーバに登録される。なお、以下の記載では、接触確認プログラムをインストールしたモバイル端末を「モニタ端末」と呼ぶことがある。
【0003】
モニタ端末Xおよびモニタ端末Yが所定時間(例えば、15分)互いに近接すると、モニタ端末Xのメモリにモニタ端末Yに対応する処理番号が記録され、モニタ端末Yのメモリにモニタ端末Xに対応する処理番号が記録される。ただし、処理番号は、ユーザのプライバシーを保護するために、個人(即ち、モニタ端末のユーザ)を特定する情報(氏名、電話番号、位置情報など)を含まない。
【0004】
モニタ端末のユーザが感染症に感染したときは、そのユーザは、自分が感染症に感染したことを公的機関に通知する。例えば、モニタ端末Xのユーザが感染症に感染したときには、そのユーザは、モニタ端末Xを使用して、自分が感染症に感染したことを表すメッセージを監視サーバに送信する。このとき、モニタ端末Xのメモリに記録されている処理番号も送信される。そして、監視サーバは、受信した処理番号に対応するモニタ端末(このケースでは、モニタ端末Y)に対して、感染症のリスクを表すメッセージを送信する。これにより、モニタ端末Yのユーザは、感染者と接触したことを認識できる。そして、このユーザが保健所で検査を受けることで、感染拡大が抑制される。
【0005】
なお、疾病マッピングおよび感染制御のためのシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。また、携帯電話機の使用者の個人情報を利用する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。さらに、端末が互いに接近したことを検出する方法が提案されている(例えば、特許文献3~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2012-511193号公報
【特許文献2】特開2009-260583号公報
【特許文献3】特表2011-172007号公報
【特許文献4】特表2012-194808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来技術(例えば、上述した接触確認プログラムを使用する方法)によれば、モニタ端末のユーザに感染リスクを通知できる。しかし、従来技術では、感染拡大の発生場所を特定することは困難である。少なくとも、感染者のプライバシーを保護しながら感染拡大の発生場所を特定することは困難である。
【0008】
なお、感染拡大の発生場所は、例えば、保健所による感染者へのヒアリングに基づいて推定される。ただし、保健所が多忙で十分なヒアリングを行えないことがある。加えて、感染者が自分の行動を正確に記憶していないことがある。或いは、感染者が行動履歴を正直に話さないこともある。この意味でも、感染拡大の発生場所を特定することは容易でない。
【0009】
本発明の1つの側面に係わる目的は、感染症の感染者のプライバシーを保護しながら感染拡大の発生場所を特定できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様に係わる感染分析方法は、複数のアクセスポイントを利用して感染が拡大する場所を推定する。この感染分析方法は、各アクセスポイントとモバイル端末との接続を表す接続情報、及び、各感染者のモバイル端末を識別する端末識別情報に基づいて、各アクセスポイントの通信エリア内に位置する感染者の数を表す感染者データを生成し、第1の感染者により携帯される第1のモバイル端末が、第1の時間帯において第1のアクセスポイントと接続し、且つ、前記第1の時間帯よりも後の第2の時間帯において第2のアクセスポイントと接続したときに、前記感染者データに基づいて、前記第1の時間帯において前記第1のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第1の感染者数および前記第2の時間帯において前記第2のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第2の感染者数を算出し、前記第2の感染者数が前記第1の感染者数より多いときに、前記第2のアクセスポイントの通信エリアにおいて感染が拡大すると判定する。
【発明の効果】
【0011】
上述の態様によれば、感染症の感染者のプライバシーを保護しながら感染拡大の発生場所を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係わる無線通信システムの一例を示す図である。
【
図2】各アクセスポイントにおいて生成されるアソシエーションデータの例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係わる感染分析装置の一例を示す図である。
【
図4】アソシエーションデータベースおよびAP位置データベースの一例を示す図である。
【
図5】システム利用者データベースおよび感染者データベースの一例を示す図である。
【
図6】アソシエーションデータを取得する方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】感染情報を取得する方法の例を示すシーケンス図である。
【
図8】感染が拡大する場所を推定する方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】感染者に係わるアソシエーションデータおよび分析結果の一例を示す図である。
【
図10】ブロック毎に検出される感染者を表す図である。
【
図11】感染者に係わるアソシエーションデータを抽出する方法の一例を示す図である。
【
図12】分析結果を表す表示情報を生成する処理の例を示すフローチャートである。
【
図13】分析結果を閲覧する方法の一例を示すシーケンス図である。
【
図14】感染が拡大する場所を推定する方法の他の例を示すフローチャートである。
【
図15】ブロック毎に検出される感染者を表す図である。
【
図16】感染拡大場所を推定する方法の実施例を示す図である。
【
図17】感染分析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図18】アソシエーションデータを保存するストレージシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係わる無線通信システムの一例を示す。本発明の実施形態に係わる無線通信システム500は、複数のアクセスポイント(AP)1および複数のモバイル端末(MT)3を備える。なお、無線通信システム500は、
図1に示していない他の通信装置を備えてもよい。
【0014】
アクセスポイント1は、無線LAN(Wireless Local Area Network)サービスを提供する。すなわち、各アクセスポイント1は、無線LANのための通信エリア2を提供する。なお、この例では、アクセスポイント1は、Wi-Fi(登録商標)サービスを提供する。この場合、通信エリア2の半径は、最大で50~100m程度である。また、アクセスポイント1(すなわち、通信エリア2)は、移動することがある。例えば、アクセスポイント1が航空機または電車に設置されているときは、通信エリア2は移動することがある。モバイル端末3は、セルラ通信およびWi-Fi通信をサポートする。なお、モバイル端末3は、例えば、UE(User Equipment)であってもよい。
【0015】
各モバイル端末3は、対応するユーザにより携帯されるものとする。この例では、モバイル端末3x、3yは、それぞれユーザX、Yにより携帯されている。この場合、ユーザX、Yが移動すると、モバイル端末3x、3yもそれぞれ移動する。例えば、
図1に示すケースでは、モバイル端末3xは、通信エリア2aの中に入る。続いて、モバイル端末3xは、通信エリア2bに移動する。さらに、モバイル端末3xは、通信エリア2cに移動する。その後、モバイル端末3xは、通信エリア2cの外に出る。
【0016】
各モバイル端末3は、Wi-Fi通信機能が有効状態に設定されているものとする。この場合、モバイル端末3は、常時、モバイル端末3が利用可能な周波数帯域をスキャンする。他方、各アクセスポイント1は、定期的にビーコン信号を出力する。そして、モバイル端末3は、アクセスポイント1からビーコン信号を受信すると、そのビーコン信号の送信元に接続する。すなわち、アクセスポイント1とモバイル端末3との間で所定の手順が実行され、アソシエーションが確立される。例えば、モバイル端末3xが通信エリア2aの中に入ると、アクセスポイント1aとモバイル端末3xとの間でアソシエーションが確立される。続いて。モバイル端末3aが通信エリア2aの外に出ると、アクセスポイント1aとモバイル端末3xとの間のアソシエーションが切断される。この後、モバイル端末3aが通信エリア2bの中に入ると、アクセスポイント1bとモバイル端末3xとの間でアソシエーションが確立される。
【0017】
アクセスポイント1は、モバイル端末3との間に確立したアソシエーションを表すアソシエーションデータを生成する。アソシエーションデータは、
図2に示すように、MACアドレス、接続時刻、および切断時刻を含む。MACアドレスは、アクセスポイント1に接続したモバイル端末3のMACアドレスを表す。なお、MACアドレスは一例であり、MACアドレスの代わりにモバイル端末3を識別する他の端末識別情報が記録されるようにしてもよい。接続時刻は、アクセスポイント1とモバイル端末3との間のアソシエーションの開始時刻を表す。すなわち、接続時刻は、モバイル端末3が通信エリア2に入ってきた時刻を表す。切断時刻は、アクセスポイント1とモバイル端末3との間のアソシエーションの終了時刻を表す。すなわち、切断時刻は、モバイル端末3が通信エリア2の外に出ていった時刻を表す。なお、アソシエーションデータは、各アクセスポイントとモバイル端末との接続を表す接続情報の一例である。また、アソシエーションデータは、接続開始時間、アクセスポイントのホスト名、MACアドレス、ESSID、BSSID、IPアドレス、接続時間、接続契機、切断契機、最終ポーリング時刻、更新年月日を含んでもよい。
【0018】
例えば、
図1に示すモバイル端末3x、3yのMACアドレスがそれぞれ「add_x」および「add_y」であるものとする。そして、ユーザXおよびユーザYがそれぞれ
図1に示すように移動するものとする。この場合、アクセスポイント1a~1cにおいて
図2に示すアソシエーションデータが作成される。なお、この実施例では、ユーザXは、2021年5月7日の09:00~09:10は通信エリア2a内に位置し、10:00~12:00は通信エリア2b内に位置し、13:00~15:00は通信エリア2c内に位置している。ユーザYは、2021年5月7日の10:30~12:00は通信エリア2b内に位置し、13:00~17:00は通信エリア2c内に位置している。
【0019】
図3は、本発明の実施形態に係わる感染分析装置の一例を示す。本発明の実施形態に係わる感染分析装置10は、制御部20、アソシエーションデータベース31、AP位置データベース32、システム利用者データベース33、感染者データベース34、分析結果データベース35、表示情報データベース36を備える。アソシエーションデータベース31、AP位置データベース32、システム利用者データベース33、感染者データベース34、分析結果データベース35、表示情報データベース36は、記憶装置30を利用して構成される。そして、感染分析装置10は、複数のアクセスポイント1により生成されるアソシエーションデータを利用して、感染が拡大する場所を推定する。
【0020】
図4(a)は、アソシエーションデータベース31の一例を示す。アソシエーションデータベース31には、アソシエーションデータが保存される。ここで、アソシエーションデータは、上述したように、各アクセスポイント1において生成される。各アクセスポイント1において生成されるアソシエーションデータは、アソシエーションデータ収集サーバ101により収集される。このとき、アソシエーションデータには、アソシエーションデータを生成したアクセスポイントを識別する情報(例えば、アクセスポイント名およびBSSID(Basic Service Set Identifier))が付与される。そして、感染分析装置10は、アソシエーションデータ収集サーバ101からアソシエーションデータを取得してアソシエーションデータベース31に保存する。
【0021】
図4(b)は、AP位置データベース32の一例を示す。AP位置データベース32には、各アクセスポイント1のBSSIDおよび各アクセスポイント1が設置されている位置を表す情報が記録される。位置は、例えば、緯度および経度で表される。ただし、アクセスポイント1が移動し得るときは、位置情報が記録されないか、或いは、位置情報が更新されることがある。また、各アクセスポイント1が設置されている施設の名称もAP位置データベース32に記録されることが好ましい。なお、各アクセスポイント1が設置されている位置を表す情報は、予め検出されているものとする。
【0022】
図5(a)は、システム利用者データベース33の一例を示す。システム利用者データベース33には、感染分析装置10の分析結果を閲覧するシステム利用者に係わる情報が記録される。システム利用者は、例えば、商業施設のオーナーである。また、システム利用者は、保健所などの公的機関を含む。そして、システム利用者データベース33には、各システム利用者が感染分析装置10の分析結果を閲覧できる範囲が記録される。たとえば、施設K1のオーナーは、施設K1に係わる分析結果を閲覧できる。なお、保健所は、すべての分析結果を閲覧できるものとする。
【0023】
図5(b)は、感染者データベース34の一例を示す。感染者データベース34には、感染者に係わる情報が記録される。ここで、保健所は、感染者を発見すると、その感染者のモバイル端末を識別する情報(ここでは、MACアドレス)を取得する。例えば、保健所内にアクセスポイント1が設置されているときは、そのアクセスポイント1が生成するアソシエーションデータに基づいて、感染者のモバイル端末のMACアドレスが検出される。また、保健所は、例えば、感染者へのヒアリングに基づいて、その感染者の感染期間を推定する。感染期間は、この例では、感染者から他者への感染が生じ得る期間を表す。そして、保健所は、発見した感染者の感染期間と共に、その感染者のモバイル端末のMACアドレスを感染分析装置10に通知する。そうすると、保健所から通知された情報が感染者データベース34に記録される。
【0024】
分析結果データベース35は、感染分析装置10の分析結果を保存する。表示情報データベース36は、感染分析装置10の分析結果に基づいて作成されるリスト及び/又はマップを保存する。
【0025】
制御部20は、DB管理部21、感染者データ生成部22、感染者数算出部23、判定部24、表示情報作成部25を含む。なお、制御部20は、
図3に示していない他の機能を備えてもよい。
【0026】
DB管理部21は、データベース31~36を管理する。例えば、DB管理部21は、アソシエーションデータ収集サーバ101から取得したアソシエーションデータをアソシエーションデーンデータベース31に保存する。また、DB管理部21は、保健所から受信する感染情報を感染者データベース34に保存する。なお、感染者データ生成部22、感染者数算出部23、判定部24、表示情報作成部25については後で記載する。
【0027】
<第1の実施形態>
感染分析装置10は、複数のアクセスポイント1によりそれぞれ生成されるアソシエーションデータを利用して、感染拡大が発生する場所を推定する。アクセスポイント1は、
図1または
図3に示すように、様々な施設に設置されているものとする。
【0028】
各アクセスポイント1は、通信エリア2内に位置する各モバイル端末3に対してアソシエーションデータを生成する。そして、アソシエーションデータ収集サーバ101は、各アクセスポイント1において生成されるアソシエーションデータを収集する。
【0029】
図6は、アソシエーションデータを取得する方法の一例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、たとえば、DB管理部21により定期的に実行される。
【0030】
S1において、DB管理部21は、アソシエーションデータ収集サーバ101からアソシエーションデータを取得する。S2において、DB管理部21は、取得したアソシエーションデータをアソシエーションデータベース31に保存する。S3において、DB管理部21は、取得していないアソシエーションデータがアソシエーションデータ収集サーバ101に残っているか否かを判定する。そして、取得していないアソシエーションデータがアソシエーションデータ収集サーバ101に残っているときは、DB管理部21の処理はS1に戻る。すなわち、アソシエーションデータ収集サーバ101により収集されたすべてのアソシエーションデータがアソシエーションデータベース31に保存される。
【0031】
図7(a)は、感染情報を取得する方法の一例を示すシーケンス図である。なお、この実施例では、保健所において感染が発見されるものとする。そして、保健所は、感染者に対するヒアリングにより、その感染者の感染期間を推定する。感染期間は、この例では、感染者から他者への感染が生じ得る期間を表す。また、保健所には、モバイル端末3を収容するアクセスポイント1が設置されているものとする。
【0032】
S11において、感染者により携帯されるモバイル端末3が保健所のアクセスポイント1に接続する。このとき、アクセスポイント1は、このモバイル端末3との間のアソシエーションを表すアソシエーションデータを生成する。すなわち、アクセスポイント1は、このモバイル端末3のMACアドレスを取得する。なお、以下の記載では、感染者により携帯されるモバイル端末3を「感染者端末」と呼ぶことがある。
【0033】
S12において、感染者は、自分のモバイル端末3(即ち、感染者端末)を利用して感染情報サーバにアクセスする。感染情報サーバは、
図3に示す保健所端末102の中に実装され、感染情報を受け付ける機能を提供する。
【0034】
S13において、感染者は、感染者端末を利用して自分の感染情報を感染情報サーバに登録する。感染情報は、保健所により推定された感染期間を表す。また、感染情報は、他の情報を含んでもよい。例えば、感染情報は、ウイルスの種別を表す情報を含むことが好ましい。
【0035】
感染情報サーバは、感染者により登録された感染情報を感染分析装置10に送信する。このとき、感染情報サーバは、保健所のアクセスポイント1から感染者端末のアソシエーションデータを取得する。そして、感染情報サーバは、感染情報と共に、感染者端末のアソシエーションデータを感染分析装置10に送信する。すなわち、感染分析装置10は、感染情報および感染者端末のアソシエーションデータを受信する。
【0036】
S21において、DB管理部21は、受信したアソシエーションデータから感染者端末のMACアドレスを抽出する。S22において、DB管理部21は、受信した感染情報を感染者データベース34に保存する。このとき、感染情報は、
図5(b)に示すように、感染者端末のMACアドレスに対応づけて保存される。また、感染情報がウイルスの種別を含むときは、
図5(b)に示す例では「種別」として記録される。
【0037】
なお、保健所にアクセスポイント1が設置されていないときは、感染者は、
図7(b)に示すように、S14において、感染情報および感染者端末のMACアドレスを感染情報サーバに登録する。そうすると、感染情報サーバは、感染情報および感染者端末のMACアドレスを感染分析装置10に送信する。そして、感染分析装置10において、感染情報は、感染者端末のMACアドレスに対応づけて保存される。なお、感染者が保健所から離れた場所に居る場合であっても、感染者端末が感染情報サーバにアクセスできるときは、
図7(b)に示す手順により感染情報が感染者データベース34に保存される。
【0038】
図8は、感染が拡大する場所を推定する方法の一例を示すフローチャートである。以下の記載においては、
図9~
図10に示す実施例を参照して
図8に示すフローチャートを説明する。なお、感染拡大をモニタすべき施設には、それぞれ1または複数のアクセスポイント1が設置されている。例えば、施設K1~K3にそれぞれアクセスポイントAP1~AP3が設置されている。
【0039】
各アクセスポイント1において生成されるアソシエーションデータは、アソシエーションデータ収集サーバ101により収集され、
図6に示す手順によりアソシエーションデータベース31に保存される。また、保健所等において感染者が発見されると、
図7に示す手順により、その感染者の感染情報が感染者データベース34に保存される。そして、感染分析装置10は、分析指示が与えられると、
図8に示すフローチャートの処理を実行する。分析指示は、例えば、感染分析サービスの提供者から与えられる。
【0040】
以下の記載では、保健所において感染者A~Cが発見されるものとする。ここで、感染者A~Cにより携帯されるモバイル端末をそれぞれ感染者端末A~Cと呼ぶことがある。なお、感染者端末A~CのMACアドレスはそれぞれ「add_A」~「add_C」であるものとする。
【0041】
S31において、制御部20は、アソシエーションデータベース31から感染者に係わるアソシエーションデータを抽出する。このとき、制御部20は、感染者の感染期間に基づいて必要なアソシエーションデータを抽出する。例えば、感染者Aは、
図11に示すように、5月6日~5月21日においてそれぞれアクセスポイント1a~1yの通信エリアに入ったものとする。この場合、感染者Aにより携帯されるモバイル端末3aは、アクセスポイント1a~1yに接続する。よって、アクセスポイント1a~1yにおいて、それぞれモバイル端末3aとのアソシエーションを表すアソシエーションデータが生成される。ここで、感染者Aの感染期間は5月7日~5月20日であったものとする。この場合、制御部20は、アソシエーションデータベース31から、5月7日~5月20日にモバイル端末3aと接続した各アクセスポイント1により生成されたアソシエーションデータを抽出する。この例では、5月7日のアクセスポイント1bのアソシエーションデータ、5月8日のアクセスポイント1cのアソシエーションデータ、・・・、5月20日のアクセスポイント1xのアソシエーションデータが抽出される。同様に、制御部20は、各感染者に係わるアソシエーションデータを抽出する。この結果、例えば、
図9に示す「感染者のアソシエーションデータ」が得られる。
【0042】
S32において、感染者データ生成部22は、S31で抽出されたアソシエーションデータに基づいて、所定の時間スロット毎に、各アクセスポイント1の通信エリア2内の感染者数を算出する。この実施例では、時間スロットの長さは「8時間」である。即ち、1日は、
図10に示すように、3個の時間スロットTS1~TS3から構成される。なお、以下の記載では、アクセスポイントと時間スロットとの組み合わせを「ブロック」と呼ぶことがある。
【0043】
例えば、
図9に示す例では、アクセスポイントAP1は、5月7日の9:00~16:00に「MACアドレス:add_A」を有するモバイル端末と接続し、5月7日の12:00~16:00に「MACアドレス:add_B」を有するモバイル端末と接続している。この場合、感染者データ生成部22は、5月7日の時間スロットTS2においてアクセスポイントAP1の通信エリア内に感染者Aおよび感染者Bが滞在していたと判定する。したがって、感染者データ生成部22は、このブロック(
図10では、B1)内の感染者数が「2」であると判定する。
【0044】
また、アクセスポイントAP2は、5月7日の17:00~21:00に「MACアドレス:add_A」を有するモバイル端末、「MACアドレス:add_B」を有するモバイル端末、および「MACアドレス:add_C」を有するモバイル端末と接続している。この場合は、感染者データ生成部22は、5月7日の時間スロットTS3においてアクセスポイントAP2の通信エリア内に感染者A、感染者B、および感染者Cが滞在していたと判定する。したがって、感染者データ生成部22は、このブロック(
図10では、B2)内の感染者数が「3」であると判定する。
【0045】
同様に、感染者データ生成部22は、各ブロック内の感染者数を算出する。この結果、
図9に示すように、ブロックB1~B6内の感染者数がそれぞれ算出される。なお、
図9に示す分析結果中の「感染者数」は、各アクセスポイントの通信エリア内に位置する感染者の数を表す感染者データの一例である。また、分析結果は、感染者数だけでなく、各アクセスポイントの通信エリア内に位置する人(実際には、モバイル端末のユーザ)の数を含んでもよい。
【0046】
S33において、感染者数算出部23は、複数の感染者が検出されたブロックを抽出する。
図9~
図10に示す例では、ブロックB1、B2、B4、B6が抽出される。
【0047】
S34において、感染者数算出部23は、感染者があるアクセスポイントの通信エリアから他のアクセスポイントの通信エリアに移動したと推定されるときに、それら2つのアクセスポイントに対応する1組のブロックを、S33で抽出したブロックの中から選択する。例えば、感染者Aは、時間スロットTS2(5月7日の8:00~16:00)においてアクセスポイントAP1の通信エリア内に位置し、時間スロットTS3(5月7日の16:00~24:00)においてアクセスポイントAP2の通信エリア内に位置している。ここで、時間スロットTS3は、時間スロットTS2の直後である。よって、感染者Aは、アクセスポイントAP1の通信エリアからアクセスポイントAP2の通信エリアに移動したと推定される。この場合、移動元の通信エリアのアクセスポイントと対応する時間スロットとの組合せが「移動元ブロック」に相当し、移動先の通信エリアのアクセスポイントと対応する時間スロットとの組合せが「移動先ブロック」に相当する。
図10に示すケースでは、ブロックB1が移動元ブロックとして選択された場合、ブロックB2が移動先ブロックに相当する。
【0048】
S35において、判定部24は、移動元ブロックの感染者数と移動先ブロックの感染者数とを比較する。そして、移動先ブロックの感染者数が移動元ブロックの感染者数より多いときは、判定部24は、S36において、移動先ブロックに対応する施設において感染者が増加したと判定する。すなわち、移動先ブロックに対応する施設が感染拡大場所であると判定される。そして、判定部24は、移動先ブロックに対応する施設を感染拡大場所として登録する。
【0049】
図9~
図10に示す例では、5月7日に感染者Aが施設K1から施設K2に移動している。ここで、施設K1の感染者数は「2」であり、施設K2の感染者数は「3」である。よって、この場合、施設K2において感染拡大が発生したと判定される。
【0050】
S37において、感染者数算出部23は、他に移動元ブロックおよび移動先ブロックのペアが残っているか否かを判定する。そして、他に移動元ブロックおよび移動先ブロックのペアが残っているときは、制御部20の処理はS34に戻る。すなわち、すべてのペアに対してS35~S36の処理が実行される。
【0051】
たとえば、感染者Bは、ブロックB4およびブロックB6において検出される。この場合、ブロックB4およびブロックB6がそれぞれ移動元ブロックおよび移動先ブロックとして抽出される。ただし、移動元ブロックの感染者数は「2」であり、移動先ブロックの感染者数も「2」である。すなわち、感染者数は増加していない。したがって、ブロックB6に対応する施設K3は、感染拡大場所とは判定されない。
【0052】
図12は、分析結果を表す表示情報を生成する処理の例を示すフローチャートである。
図12(a)に示す例では、表示情報作成部25は、S41において、アクセスポイント毎に、感染者数および感染者の増加数を時系列に表す感染拡大分析リストを作成する。そして、表示情報作成部25は、S42において、作成した感染拡大分析リストを表示情報データベース36に保存する。
図12(b)に示す例では、表示情報作成部25は、S43において、感染拡大場所を表す感染拡大分析マップを作成する。ここで、各アクセスポイントが設置されている位置は、AP位置データベース32に登録されている。よって、表示情報作成部25は、各アクセスポイントの通信エリア内の感染者数および感染者の増加数をマップ上に表すことができる。このとき、表示情報作成部25は、
図12(a)に示す処理により得られる感染拡大分析リストを利用して感染拡大分析マップを作成してもよい。そして、表示情報作成部25は、S44において、作成した感染拡大分析マップを表示情報データベース36に保存する。
【0053】
感染拡大分析マップは、例えば、地図画像上に感染拡大場所を表すシンボルを配置することで作成される。この場合、感染拡大場所を表すシンボルと共に、感染者が移動したルートを表示してもよい。また、感染者の増加数または増加率に応じてシンボルの大きき、色、または形状を変えてもよい。さらに、感染拡大分析マップは、感染拡大場所をウイルス毎に異なる色で表示してもよい。
【0054】
図13は、分析結果を閲覧する方法の一例を示すシーケンス図である。なお、分析結果は、感染分析装置10の表示情報データベース36に保存されている。また、各システム利用者が閲覧できる範囲は、
図5(a)を参照して説明したように、システム利用者データベース33に記録されている。
【0055】
S51において、システム利用者は感染分析サービスの閲覧ページにアクセスする。なお、感染分析サービスの閲覧ページは、感染分析装置10により提供される。S52において、システム利用者は、利用者情報を入力する。利用者情報は、例えば、システム利用者自身を識別する識別番号およびパスワードを含む。そうすると、システム利用者の利用者情報が感染分析装置10に送信される。
【0056】
S61~S62において、感染分析装置10は、受信した利用者情報でシステム利用者データベース33を検索することにより、システム利用者が閲覧可能な範囲を検出する。例えば、
図5(a)に示す実施例において、施設K1のオーナーを表す利用者情報を受信したときは、制御部20は、閲覧可能な範囲が「施設K1」であると判定する。また、保健所を表す利用者情報を受信したときは、制御部20は、閲覧可能な範囲が「すべて」であると判定する。
【0057】
S63において、制御部20は、閲覧可能な範囲に対応する感染拡大分析リスト/マップの画像データを生成する。そして、感染分析装置10は、生成した画像データをシステム利用者に送信する。そうすると、S53において、システム利用者の端末装置に分析結果が表示される。なお、システム利用者が分析結果を閲覧する権限を有していないときには、制御部20は、S64において、分析結果を閲覧できないことを表すメッセージを作成する。そして、感染分析装置10は、このメッセージをシステム利用者に送信する。
【0058】
このように、本発明の実施形態においては、各アクセスポイントにより生成されるアソシエーションデータに基づいて、モバイル端末のユーザの移動が検出される。この実施例では、Wi-Fi等の通信エリアが小さい無線LANのアクセスポイントのアソシエーションデータが使用される。よって、感染分析装置10は、所定の時間スロット毎に、各感染者がどの施設に滞在したのかを時系列に検出できる。さらに、感染分析装置10は、所定の時間スロット毎に、各施設内に何人の感染者が滞在していたのかを検出できる。そして、感染者が移動したときに、その感染者の移動元の施設の感染者数よりも移動先の施設の感染者数の方が多ければ、移動先の施設で感染拡大が発生したと推定される。したがって、発明の実施形態によれば、下記の効果が得られる。
【0059】
保健所(他の公的機関を含む)は、感染者に対してヒアリングを行わなくても感染者の行動履歴を把握することができ、さらに感染拡大の場所および時間を特定できる。したがって、保健所の負担を軽減しながら、的確な感染拡大防止策を検討できる。また、感染者のモバイル端末のMACアドレスおよび各アクセスポイントのアソシエーションデータに基づいて感染拡大が分析されるので、感染者のプライバシーが守られる。
【0060】
各種施設のオーナーは、比較的小さいエリアごとに感染拡大の有無を把握できるので、効果的な感染拡大防止策を検討できる。また、感染拡大が発生してない場合には、各種施設のオーナーは、自分の施設が安全であることを利用者に伝えることができる。
【0061】
<第2の実施形態>
図14は、感染が拡大する場所を推定する方法の他の例を示すフローチャートである。以下の記載では、
図15に示す実施例を参照しながら
図14に示すフローチャートを説明する。なお、感染拡大をモニタすべき施設には、それぞれ1または複数のアクセスポイント1が設置されている。例えば、施設K1~K3にそれぞれアクセスポイントAP1~AP3が設置されている。
【0062】
図14に示すフローチャートの処理は、各感染者に対して実行される。以下の記載においては、このフローチャートの処理が実行される感染者を「対象感染者」と呼ぶことがある。
【0063】
S71において、制御部20は、対象感染者のモバイル端末が接続したアクセスポイントのアソシエーションデータをアソシエーションデータベース31から抽出する。S72において、制御部20は、対象感染者に係わる各ブロック内の感染者を検出する。
【0064】
例えば、
図15に示す例では、人物Aが感染対象者である。そして、人物Aは、時間帯T1(9:00~11:30)に施設K1に位置し、時間帯T2(14:00~17:00)に施設K2に位置し、時間帯T3(19:00~21:00)に施設K3に位置している。なお、時間帯T1において、施設K1には人物B~Jも滞在している。時間帯T2において、施設K2には人物K~Qも滞在している。時間帯T3において、施設K3には人物J~M、R~Tも滞在している。また、人物J、L、Nは、それぞれ感染者である。
【0065】
このケースでは、対象感染者に係わるブロックは、B1~B3である。そして、ブロックB1(施設K1、9:00~11:30)において感染者A、Jが検出される。また、ブロックB2(施設K2、14:00~17:00)において感染者A、L、Nが検出される。さらに、ブロックB3(施設K3、19:00~21:00)において感染者A、J、Lが検出される。
【0066】
S73において、制御部20は、変数iを初期化する。変数iは、対象感染者に係わる各ブロックを識別する。また、初期化された変数iは、対象感染者に係わるブロックのうちで最も古いブロックを表す。よって、
図15に示す例では、変数iはブロックB1~B3を表し、初期化された変数iはブロックB1を表す。
【0067】
S74において、制御部20は、ブロックi+1において新たな感染者が検出されるか否かを判定する。ブロックi+1において新たな感染者が検出されたときは、S75において、制御部20は、ブロックi+1に対応する施設を感染拡大場所として登録する。一方、ブロックi+1において新たな感染者が検出されないときは、S75はスキップされる。
【0068】
S76において、制御部20は、変数iをインクリメントする。S77において、制御部20は、未処理のブロックが残っているか否かを判定する。そして、未処理のブロックが残っているときは、制御部20の処理はS74に戻る。すなわち、制御部20は、対象感染者に係わるすべてのブロックに対してS74~S75の処理を実行する。この結果、対象感染者に起因する感染拡大が発生しているか否かが検出される。また、感染拡大が発生しているときは、感染拡大の発生場所が検出される。
【0069】
例えば、
図15に示す例では、変数iを初期化したときに、ブロックiとしてブロックB1が抽出され、ブロックi+1としてブロックB2が抽出される。ここで、ブロックB1において感染者A、Jが検出され、ブロックB2において感染者A、L、Nが検出される。すなわち、ブロックB2において新たな感染者(L、N)が検出されている。したがって、ブロックB2に対応する施設K2は感染拡大場所と判定される。
【0070】
変数iがインクリメントされると、ブロックiとしてブロックB2が抽出され、ブロックi+1としてブロックB3が抽出される。ここで、ブロックB3において、感染者A、J、Lが検出される。ただし、感染者Jは、先にブロックB1において検出されている。また、感染者Lは、先にブロックB2において検出されている。すなわち、ブロックB3において新たな感染者は検出されない。したがって、ブロックB3に対応する施設K3は感染拡大場所でないと判定される。
【0071】
図16は、感染拡大場所を推定する方法の実施例を示す。この例では、感染者P1~P3は、ABCビルの1階に滞在した後、特急列車Dの2号車に乗っている。さらに、感染者P1~P2はレストランEで食事をとり、感染者P3はレストランFで食事をとっている。なお、ABCビルの各フロアにアクセスポイントが設置されている。よって、ABCビルにおいては、フロア毎に感染状況を分析できる。また、特急列車Dは、各車両にアクセスポイントが設置されている。よって、特急列車Dにおいては、車両毎に感染状況を分析できる。
【0072】
特急列車Dにおいては、新たな感染者は検出されない。よって、車両内の感染リスクは低いと判定される。レストランEにおいては、新たな感染者は検出されない。よって、レストランEのオーナーは、利用者に安心して食事をしてもらえる。一方、レストランFにおいては、新たな感染者が検出されている。よって、保健所は、レストランFに対して感染防止策の実施を要求する。
【0073】
図17は、感染分析装置10のハードウェア構成の一例を示す。感染分析装置10は、プロセッサ41、メモリ42、記憶装置43、入力/出力デバイス44、記録媒体デバイス45、および通信IF46を備える。なお、感染分析装置10は、
図17に示していない他のデバイスを備えてもよい。
【0074】
プロセッサ41は、記憶装置43に保存されている感染分析プログラムを実行できる。感染分析プログラムは、制御部20(DB管理部21、感染者データ生成部22、感染者数算出部23、判定部24、表示情報作成部25を含む)の機能を記述したプログラムコードを含む。すなわち、プロセッサ41が感染分析プログラムを実行することにより、制御部20の機能が提供される。
【0075】
メモリ42は、プロセッサ41の作業領域として使用される。記憶装置43には、感染分析プログラムおよび感染分析処理に必要なデータが保存される。また、アソシエーションデータベース31、AP位置データベース32、システム利用者データベース33、感染者データベース34、分析結果データベース35、表示情報データベース36は、例えば、記憶装置43に実装される。
【0076】
入力/出力デバイス44は、ユーザの指示をプロセッサ41に伝えるデバイス(キーボード、マウス、タッチパネル等)、およびプロセッサ41の処理結果を出力するデバイスを含む。記録媒体デバイス45は、着脱可能な記録媒体51に記録されているデータ、情報、プログラムを読み出すことができる。通信IF46は、ネットワークとのインタフェースを提供する。なお、感染分析装置10は、記録媒体51またはプログラムサーバ52から上述した感染分析プログラムを取得してもよい。
【0077】
図18は、アソシエーションデータを保存するストレージシステムの一例を示す。本発明の実施形態に係わるストレージシステムは、テープ装置を組み込んだスケールアウト型の階層化ストレージにより実現される。アソシエーションデータは、保存場所に依存しないオブジェクト形式で蓄積される。具体的には、ゲートウェイの配下に複数のストレージノードが設けられる。ストレージノードは、ホットシステムであり、常時アクセス可能に構成されている。ストレージノードには、テープライブラリが接続される。テープライブラリは、コールドシステムであり、必要に応じて起動される。管理プログラムは、テープライブラリを管理する。
【0078】
この構成においては、オブジェクト形式でデータが蓄積されるので、分散して保存されるアソシエーションデータを容易に取得できる。また、ストレージノードを追加するだけで、ストレージシステムを容易に拡張できる。なお、
図3に示すアソシエーションデータベース31は、このストレージシステムを利用して構築してもよい。
【0079】
上述した実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
複数のアクセスポイントを利用して感染が拡大する場所を推定する感染分析プログラムであって、
各アクセスポイントとモバイル端末との接続を表す接続情報、及び、各感染者のモバイル端末を識別する端末識別情報に基づいて、各アクセスポイントの通信エリア内に位置する感染者の数を表す感染者データを生成し、
第1の感染者により携帯される第1のモバイル端末が、第1の時間帯において第1のアクセスポイントと接続し、且つ、前記第1の時間帯よりも後の第2の時間帯において第2のアクセスポイントと接続したときに、前記感染者データに基づいて、前記第1の時間帯において前記第1のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第1の感染者数および前記第2の時間帯において前記第2のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第2の感染者数を算出し、
前記第2の感染者数が前記第1の感染者数より多いときに、前記第2のアクセスポイントの通信エリアにおいて感染が拡大すると判定する
処理をプロセッサに実行させる感染分析プログラム。
(付記2)
前記第2の時間帯は、前記第1の時間帯の直後の時間帯である
ことを特徴とする付記1に記載の感染分析プログラム。
(付記3)
前記接続情報は、各アクセスポイントとモバイル端末との接続の開始時刻および終了時刻を表し、
前記第1のモバイル端末を識別する端末識別情報および前記第1の感染者の感染期間で前記接続情報を検索することにより、前記第1の感染者の感染期間内に前記第1のモバイル端末が接続したアクセスポイントおよび時間帯を検出する
ことを特徴とする付記1に記載の感染分析プログラム。
(付記4)
分析結果の閲覧要求を受信したときに、その閲覧要求の送信元に対して付与されている権限に対応する範囲の分析結果を閲覧要求の送信元に出力する
ことを特徴とする付記1に記載の感染分析プログラム。
(付記5)
複数のアクセスポイントを利用して感染が拡大する場所を推定する感染分析方法であって、
各アクセスポイントとモバイル端末との接続を表す接続情報、及び、各感染者のモバイル端末を識別する端末識別情報に基づいて、各アクセスポイントの通信エリア内に位置する感染者の数を表す感染者データを生成し、
第1の感染者により携帯される第1のモバイル端末が、第1の時間帯において第1のアクセスポイントと接続し、且つ、前記第1の時間帯よりも後の第2の時間帯において第2のアクセスポイントと接続したときに、前記感染者データに基づいて、前記第1の時間帯において前記第1のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第1の感染者数および前記第2の時間帯において前記第2のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第2の感染者数を算出し、
前記第2の感染者数が前記第1の感染者数より多いときに、前記第2のアクセスポイントの通信エリアにおいて感染が拡大すると判定する
ことを特徴とする感染分析方法。
(付記6)
前記第2の時間帯は、前記第1の時間帯の直後の時間帯である
ことを特徴とする付記5に記載の感染分析方法。
(付記7)
前記接続情報は、各アクセスポイントとモバイル端末との接続の開始時刻および終了時刻を表し、
前記第1のモバイル端末を識別する端末識別情報および前記第1の感染者の感染期間で前記接続情報を検索することにより、前記第1の感染者の感染期間内に前記第1のモバイル端末が接続したアクセスポイントおよび時間帯を検出する
ことを特徴とする付記5に記載の感染分析方法。
(付記8)
分析結果の閲覧要求を受信したときに、その閲覧要求の送信元に対して決められている権限に対応する範囲の分析結果を閲覧要求の送信元に出力する
ことを特徴とする付記5に記載の感染分析方法。
(付記9)
複数のアクセスポイントを利用して感染が拡大する場所を推定する感染分析方法であって、
各アクセスポイントとモバイル端末との接続を表す接続情報、及び、各感染者のモバイル端末を識別する端末識別情報に基づいて、第1の感染者により携帯される第1のモバイル端末が接続した複数の対象アクセスポイントを検出すると共に、各対象アクセスポイントに前記第1のモバイル端末が接続した接続時間帯を検出し、
各対象アクセスポイントについて対応する接続時間帯に通信エリア内に位置した感染者を検出し、
前記第1のモバイル端末が、第1の接続時間帯において第1の対象アクセスポイントと接続し、且つ、前記第1の接続時間帯よりも後の第2の接続時間帯において第2の対象アクセスポイントと接続したときに、前記第1の接続時間帯において前記第1の対象アクセスポイントの通信エリアで検出される感染者、及び、前記第2の接続時間帯において前記第2の対象アクセスポイントの通信エリアで検出される感染者をそれぞれ特定し、
前記第2の対象アクセスポイントの通信エリアで検出される感染者が、前記第1の対象アクセスポイントの通信エリアで検出されない感染者を含むとき、前記第2の対象アクセスポイントの通信エリアにおいて感染が拡大すると判定する
ことを特徴とする感染分析方法。
(付記10)
複数のアクセスポイントを利用して感染が拡大する場所を推定する感染分析装置であって、
各アクセスポイントとモバイル端末との接続を表す接続情報、及び、各感染者のモバイル端末を識別する端末識別情報に基づいて、各アクセスポイントの通信エリア内に位置する感染者の数を表す感染者データを生成する感染者データ生成部と、
第1の感染者により携帯される第1のモバイル端末が、第1の時間帯において第1のアクセスポイントと接続し、且つ、前記第1の時間帯よりも後の第2の時間帯において第2のアクセスポイントと接続したときに、前記感染者データに基づいて、前記第1の時間帯において前記第1のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第1の感染者数および前記第2の時間帯において前記第2のアクセスポイントの通信エリア内に位置していた感染者の数を表す第2の感染者数を算出する感染者数算出部と、
前記第2の感染者数が前記第1の感染者数より多いときに、前記第2のアクセスポイントの通信エリアにおいて感染が拡大すると判定する判定部と、
を備える感染分析装置。
(付記11)
前記第2の時間帯は、前記第1の時間帯の直後の時間帯である
ことを特徴とする付記10に記載の感染分析装置。
(付記12)
前記接続情報は、各アクセスポイントとモバイル端末との接続の開始時刻および終了時刻を表し、
前記第1のモバイル端末を識別する端末識別情報および前記第1の感染者の感染期間で前記接続情報を検索することにより、前記第1の感染者の感染期間内に前記第1のモバイル端末が接続したアクセスポイントおよび時間帯を検出する
ことを特徴とする付記10に記載の感染分析装置。
(付記13)
分析結果の閲覧要求を受信したときに、その閲覧要求の送信元に対して決められている権限に対応する範囲の分析結果を閲覧要求の送信元に出力する
ことを特徴とする付記10に記載の感染分析装置。
【符号の説明】
【0080】
1(1a~1c) アクセスポイント
2(2a~2c) 通信エリア
3(3x、3y) モバイル端末
10 感染分析装置
20 制御部
21 DB管理部
22 感染者データ生成部
23 感染者数算出部
24 判定部
25 表示情報作成部
30 記憶装置
31 アソシエーションデータベース
32 AP位置データベース
33 システム利用者データベース
34 感染者データベース
35 分析結果データベース
36 表示情報データベース
41 プロセッサ
500 無線通信システム