(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188867
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】磁場測定器
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20221215BHJP
H01L 43/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01R33/02 D
H01L43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097121
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】畑 善之
(72)【発明者】
【氏名】堀 久夫
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 文一
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AA15
2G017AD02
2G017AD51
2G017AD63
2G017AD65
2G017BA03
2G017BA07
2G017BA09
2G017BA13
2G017CC04
5F092AA20
5F092AB01
5F092AC01
5F092BD02
5F092BD13
5F092BD14
5F092BE06
5F092DA03
5F092DA07
(57)【要約】
【課題】磁場を測定できる範囲の設定の労力を軽減する。
【解決手段】磁場測定器1は、被測定磁場を測定する。磁場測定器1は、被測定磁場に応じてインピーダンス変化率が変化する磁気インピーダンス素子10と、磁気インピーダンス素子10に駆動信号を付与する駆動信号付与部12と、被測定磁場を測定できる測定範囲を設定する測定範囲設定部16とを備える。なお、駆動信号の周波数に応じて、被測定磁場とインピーダンス変化率との関係が変化する。また、測定範囲設定部16が、周波数を設定することにより、測定範囲を設定する。さらに、磁気インピーダンス素子10において、周波数が増大するにしたがい、測定可能な被測定磁場の上限が大きくなる一方で、インピーダンス変化率の最大値は小さくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定磁場を測定する磁場測定器であって、
前記被測定磁場に応じてインピーダンス変化率が変化する磁気インピーダンス素子と、
前記磁気インピーダンス素子に駆動信号を付与する駆動信号付与部と、
前記被測定磁場を測定できる測定範囲を設定する測定範囲設定部と、
を備え、
前記駆動信号の周波数に応じて、前記被測定磁場と前記インピーダンス変化率との関係が変化し、
前記測定範囲設定部が、前記周波数を設定することにより、前記測定範囲を設定する、
磁場測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の磁場測定器であって、
前記磁気インピーダンス素子において、前記周波数が増大するにしたがい、測定可能な前記被測定磁場の上限が大きくなる、
磁場測定器。
【請求項3】
請求項1に記載の磁場測定器であって、
前記磁気インピーダンス素子において、前記周波数が増大するにしたがい、前記インピーダンス変化率の最大値が小さくなる、
磁場測定器。
【請求項4】
請求項1に記載の磁場測定器であって、
前記磁気インピーダンス素子において、前記被測定磁場が測定可能な上限以下である場合、前記被測定磁場が増大するにしたがって前記インピーダンス変化率も増大する、
磁場測定器。
【請求項5】
請求項4に記載の磁場測定器であって、
前記磁気インピーダンス素子において、前記被測定磁場が測定可能な上限を超えている場合、前記被測定磁場が増大するにしたがって前記インピーダンス変化率が減少する、
磁場測定器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
前記被測定磁場から、前記磁気インピーダンス素子の出力に応じた負帰還磁場を減じて、前記磁気インピーダンス素子に与える、
磁場測定器。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
前記磁気インピーダンス素子が、第一磁性体薄膜と、第二磁性体薄膜と、第三磁性体薄膜と、第四磁性体薄膜とを有するブリッジ回路を備え、
前記第一磁性体薄膜と、前記第二磁性体薄膜とが並列に接続され、
前記第三磁性体薄膜と、前記第四磁性体薄膜とが並列に接続され、
前記第一磁性体薄膜と、前記第三磁性体薄膜とが直列に接続され、
前記第二磁性体薄膜と、前記第四磁性体薄膜とが直列に接続され、
前記第一磁性体薄膜の磁化容易方向と、前記第四磁性体薄膜の磁化容易方向とが同じ向きであり、
前記第二磁性体薄膜の磁化容易方向と、前記第三磁性体薄膜の磁化容易方向とが同じ向きであり、
前記第一磁性体薄膜の磁化容易方向と、前記第二磁性体薄膜の磁化容易方向とが直交し、
前記第一磁性体薄膜の磁化容易方向とも、前記第二磁性体薄膜の磁化容易方向とも異なる向きのバイアス磁界が印加され、
前記第一磁性体薄膜と前記第三磁性体薄膜とを接続する点と、前記第二磁性体薄膜と前記第四磁性体薄膜とを接続する点との間の電圧が出力される、
磁場測定器。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
前記磁気インピーダンス素子が、ピックアップコイルを有する、
磁場測定器。
【請求項9】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
前記磁気インピーダンス素子が、
第一アモルファス磁性体層と、
第二アモルファス磁性体層と、
前記第一アモルファス磁性体層と前記第二アモルファス磁性体層との間に配置された導体とを有する磁場測定器。
【請求項10】
請求項9に記載の磁場測定器であって、
前記第一アモルファス磁性体層と前記導体との間に配置された第一絶縁体と、
前記第二アモルファス磁性体層と前記導体との間に配置された第二絶縁体と、
を有する磁場測定器。
【請求項11】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
前記磁気インピーダンス素子が、アモルファス薄膜、アモルファスワイヤまたはアモルファスリボンを有する磁場測定器。
【請求項12】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
前記磁気インピーダンス素子が、少なくとも一つの軸成分の磁場を測定する磁場測定器。
【請求項13】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
前記測定範囲設定部が、測定可能な前記被測定磁場の上限を小さくしていく磁場測定器。
【請求項14】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
磁気ノイズを低減するものである磁場測定器。
【請求項15】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
前記駆動信号が正弦波、矩形波またはパルス波である磁場測定器。
【請求項16】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
前記駆動信号がチャープ信号である磁場測定器。
【請求項17】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の磁場測定器であって、
前記駆動信号が所定の帯域内の周波数をとる帯域信号である磁場測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気インピーダンス素子などを用いた磁気センサが知られている(例えば、特許文献1~4を参照)。また、磁気センサを色々な回路に組み込むことも知られている(例えば、特許文献5~7を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-256109号公報
【特許文献2】特開2001-221837号公報
【特許文献3】特開2000-292512号公報
【特許文献4】特開2000-180521号公報
【特許文献5】特開2017-133993号公報
【特許文献6】特開2018-7821号公報
【特許文献7】特開2019-124661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁気インピーダンス素子を用いた磁気センサにおいては、測定できる磁場の範囲が限られている。よって、磁場の測定に際しては、磁場を測定できる範囲を適切に設定する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、磁場を測定できる範囲の設定の労力の軽減を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる磁場測定器は、被測定磁場を測定するものであって、前記被測定磁場に応じてインピーダンス変化率が変化する磁気インピーダンス素子と、前記磁気インピーダンス素子に駆動信号を付与する駆動信号付与部と、前記被測定磁場を測定できる測定範囲を設定する測定範囲設定部とを備え、前記駆動信号の周波数に応じて、前記被測定磁場と前記インピーダンス変化率との関係が変化し、前記測定範囲設定部が、前記周波数を設定することにより、前記測定範囲を設定するように構成される。
【0007】
上記のように構成された磁場測定器は、被測定磁場を測定するものである。磁気インピーダンス素子は、前記被測定磁場に応じてインピーダンス変化率が変化するものである。駆動信号付与部が、前記磁気インピーダンス素子に駆動信号を付与する。測定範囲設定部が、前記被測定磁場を測定できる測定範囲を設定する。前記駆動信号の周波数に応じて、前記被測定磁場と前記インピーダンス変化率との関係が変化する。前記測定範囲設定部が、前記周波数を設定することにより、前記測定範囲を設定する。
【0008】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記磁気インピーダンス素子において、前記周波数が増大するにしたがい、測定可能な前記被測定磁場の上限が大きくなるようにしてもよい。
【0009】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記磁気インピーダンス素子において、前記周波数が増大するにしたがい、前記インピーダンス変化率の最大値が小さくなるようにしてもよい。
【0010】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記磁気インピーダンス素子において、前記被測定磁場が測定可能な上限以下である場合、前記被測定磁場が増大するにしたがって前記インピーダンス変化率も増大するようにしてもよい。
【0011】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記磁気インピーダンス素子において、前記被測定磁場が測定可能な上限を超えている場合、前記被測定磁場が増大するにしたがって前記インピーダンス変化率が減少するようにしてもよい。
【0012】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記被測定磁場から、前記磁気インピーダンス素子の出力に応じた負帰還磁場を減じて、前記磁気インピーダンス素子に与えるようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記磁気インピーダンス素子が、第一磁性体薄膜と、第二磁性体薄膜と、第三磁性体薄膜と、第四磁性体薄膜とを有するブリッジ回路を備え、前記第一磁性体薄膜と、前記第二磁性体薄膜とが並列に接続され、前記第三磁性体薄膜と、前記第四磁性体薄膜とが並列に接続され、前記第一磁性体薄膜と、前記第三磁性体薄膜とが直列に接続され、前記第二磁性体薄膜と、前記第四磁性体薄膜とが直列に接続され、前記第一磁性体薄膜の磁化容易方向と、前記第四磁性体薄膜の磁化容易方向とが同じ向きであり、前記第二磁性体薄膜の磁化容易方向と、前記第三磁性体薄膜の磁化容易方向とが同じ向きであり、前記第一磁性体薄膜の磁化容易方向と、前記第二磁性体薄膜の磁化容易方向とが直交し、前記第一磁性体薄膜の磁化容易方向とも、前記第二磁性体薄膜の磁化容易方向とも異なる向きのバイアス磁界が印加され、前記第一磁性体薄膜と前記第三磁性体薄膜とを接続する点と、前記第二磁性体薄膜と前記第四磁性体薄膜とを接続する点との間の電圧が出力されるようにしてもよい。
【0014】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記磁気インピーダンス素子が、ピックアップコイルを有するようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記磁気インピーダンス素子が、第一アモルファス磁性体層と、第二アモルファス磁性体層と、前記第一アモルファス磁性体層と前記第二アモルファス磁性体層との間に配置された導体とを有するようにしてもよい。
【0016】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記第一アモルファス磁性体層と前記導体との間に配置された第一絶縁体と、前記第二アモルファス磁性体層と前記導体との間に配置された第二絶縁体とを有するようにしてもよい。
【0017】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記磁気インピーダンス素子が、アモルファス薄膜、アモルファスワイヤまたはアモルファスリボンを有するようにしてもよい。
【0018】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記磁気インピーダンス素子が、少なくとも一つの軸成分の磁場を測定するようにしてもよい。
【0019】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記測定範囲設定部が、測定可能な前記被測定磁場の上限を小さくしていくようにしてもよい。
【0020】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、磁気ノイズを低減するものであるようにしてもよい。
【0021】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記駆動信号が正弦波、矩形波またはパルス波であるようにしてもよい。
【0022】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記駆動信号がチャープ信号であるようにしてもよい。
【0023】
なお、本発明にかかる磁場測定器は、前記駆動信号が所定の帯域内の周波数をとる帯域信号であるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第一の実施形態にかかる磁場測定器の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】磁気インピーダンス素子10の特性を示すグラフである。
【
図3】本発明の第二の実施形態にかかる磁場測定器1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の第三の実施形態にかかる磁場測定器1における磁気インピーダンス素子10の構成を示す図である。
【
図5】本発明の第四の実施形態(
図5(a))およびその変形例(
図5(b))にかかる磁場測定器1における磁気インピーダンス素子10の構成を示す図である。
【
図6】本発明の第四の実施形態のさらなる変形例にかかる磁気インピーダンス素子10の構成を示す図である。
【
図7】本発明の第五の実施形態にかかる磁場測定器1における駆動信号付与部12の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0026】
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる磁場測定器の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第一の実施形態にかかる磁場測定器1は、磁気インピーダンス素子10、駆動信号付与部12、増幅器14、検波部15、測定範囲設定部16を備える。
【0027】
磁場測定器1は、被測定磁場を測定する。被測定磁場は、微弱磁場(例えば、心磁)である場合も、強い磁場(例えば、インフラの非破壊検査の際に測定するような磁場)である場合もありうる。
【0028】
磁気インピーダンス素子10は、被測定磁場に応じてインピーダンス変化率が変化するものである。磁気インピーダンス素子10は、ピックアップコイルを有する。磁気インピーダンス素子10は、少なくとも一つの軸成分(1軸、2軸、3軸、…)の磁場を測定する。
【0029】
増幅器14は、磁気インピーダンス素子10の出力(例えば、電圧)を増幅する。検波部15は、増幅器14の出力を検波する。駆動信号付与部12は、磁気インピーダンス素子10に駆動信号を付与する。測定範囲設定部16は、被測定磁場を測定できる測定範囲を設定する。
【0030】
なお、駆動信号の周波数に応じて、被測定磁場とインピーダンス変化率との関係が変化する。また、測定範囲設定部16が、駆動信号の周波数(以後、「駆動周波数」ということがある)を設定することにより、測定範囲を設定する。
【0031】
駆動信号は、例えば、正弦波、矩形波、パルス波またはチャープ信号である。
【0032】
図2は、磁気インピーダンス素子10の特性を示すグラフである。
図2においては、駆動周波数f1の場合の特性と、駆動周波数f2の場合の特性と、駆動周波数f3の場合の特性が図示されている。ただし、f1<f2<f3である。
【0033】
駆動周波数f1の場合の特性を参照して、被測定磁場がH1のときに、インピーダンス変化率が最大値R1をとる。被測定磁場がH1以下である場合、被測定磁場が増大するにしたがってインピーダンス変化率も増大する。被測定磁場がH1を超えている場合、被測定磁場が増大するにしたがってインピーダンス変化率が減少する。よって、被測定磁場が0以上H1以下であれば、インピーダンス変化率から被測定磁場を一意に定めることができる。すなわち、測定可能な被測定磁場の上限がH1である。
【0034】
駆動周波数f2の場合も、同様に、測定可能な被測定磁場の上限がH2である。ただし、被測定磁場がH2のときに、インピーダンス変化率が最大値R2をとる。被測定磁場がH2以下である場合、被測定磁場が増大するにしたがってインピーダンス変化率も増大する。被測定磁場がH2を超えている場合、被測定磁場が増大するにしたがってインピーダンス変化率が減少する。
【0035】
駆動周波数f3の場合も、同様に、測定可能な被測定磁場の上限がH3である。ただし、被測定磁場がH3のときに、インピーダンス変化率が最大値R3をとる。被測定磁場がH3以下である場合、被測定磁場が増大するにしたがってインピーダンス変化率も増大する。被測定磁場がH3を超えている場合、被測定磁場が増大するにしたがってインピーダンス変化率が減少する。
【0036】
なお、H1<H2<H3である。また、R1>R2>R3である。
【0037】
ここで、磁気インピーダンス素子10において、駆動周波数がf1、f2、f3と増大するにしたがい、測定可能な被測定磁場の上限がH1、H2、H3と大きくなる一方で、インピーダンス変化率の最大値がR1、R2、R3と小さくなる。
【0038】
よって、駆動周波数を設定すると、測定可能な被測定磁場の上限(ひいては、測定範囲)を設定することができる。
【0039】
例えば、微弱な磁場を測定する際に、飽和を避けるために、駆動周波数がf3、f2、f1と減少させていくことで、測定可能な被測定磁場の上限をH3、H2、H1と小さくしていくことが考えられる。この場合、インピーダンス変化率の最大値は、R3、R2、R1と大きくなっていくので、感度は、R3/H3、R2/H2、R1/H1と高くなっていく。
【0040】
次に、第一の実施形態の動作を説明する。
【0041】
まず、被測定磁場(例えば、心磁)が、磁場測定器1に与えられる。被測定磁場に応じて、磁気インピーダンス素子10のインピーダンス変化率が変化し、インピーダンス変化率に応じた出力(例えば、電圧)が、磁気インピーダンス素子10から出力される。磁気インピーダンス素子10の出力は、増幅器14によって増幅され、検波部15によって検波される。ただし、増幅器14は検波部15の後にあってもよく、検波部15の前後両方にあってもよい。
【0042】
なお、磁気インピーダンス素子10には、駆動信号付与部12から駆動信号が付与されている。すると、磁気インピーダンス素子10の出力は駆動信号で変調されているといえるので、検波部15によって検波(復調)することで、被測定磁場の測定データを取得することができる。
【0043】
検波部15の出力は、測定範囲設定部16に与えられる。測定範囲設定部16は、検波部15の出力に基づき、被測定磁場を測定できる測定範囲を設定する。例えば、検波部15の出力が、測定可能な被測定磁場の上限よりも非常に小さい場合は、駆動周波数を徐々に小さくしていき(例えば、f3、f2、f1と小さくしていく(
図2参照))、測定可能な被測定磁場の上限を小さくしていく(例えば、H3、H2、H1と小さくしていく(
図2参照))。なお、上述のように、測定範囲設定部16は、検波部15の出力に基づいて自動的に動作してもよいが、測定範囲設定部16をユーザが手動で操作するようにすることも考えられる。
【0044】
第一の実施形態によれば、駆動周波数を変更すれば、磁場を測定できる測定範囲の設定を行えるので、測定範囲の設定の労力を軽減することができる。
【0045】
なお、第一の実施形態にかかる磁場測定器1に、磁気ノイズを低減する要素を追加してもよい。磁気ノイズを低減する要素は、周知であり、説明を省略する(特許文献5(特開2017-133993号公報)、特許文献6(特開2018-7821号公報)および特許文献7(特開2019-124661号公報)を参照)。
【0046】
第二の実施形態
第二の実施形態は、ループフィルタ18および負帰還用コイル19を備えた点が、第一の実施形態と異なる。
【0047】
図3は、本発明の第二の実施形態にかかる磁場測定器1の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第一の実施形態にかかる磁場測定器1は、磁気インピーダンス素子10、駆動信号付与部12、増幅器14、検波部15、測定範囲設定部16、ループフィルタ18、負帰還用コイル19を備える。以下、第一の実施形態と同様な部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
磁気インピーダンス素子10、駆動信号付与部12、増幅器14、検波部15および測定範囲設定部16は、第一の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0049】
ループフィルタ18は、検波部15の出力を受け、負帰還用コイル19に与える。負帰還用コイル19は、磁気インピーダンス素子10の出力を、ループフィルタ18を介して、受ける。負帰還用コイル19は、さらに、磁気インピーダンス素子10の出力に応じた負帰還磁場を生成する。磁気インピーダンス素子10には、被測定磁場から負帰還磁場を減じた磁場が与えられる。
【0050】
次に、第二の実施形態の動作を説明する。ただし、第一の実施形態の動作と同様な部分は説明を省略する。
【0051】
検波部15の出力は、測定範囲設定部16のみならず、ループフィルタ18を介して、負帰還用コイル19にも与えられる。負帰還用コイル19により、磁気インピーダンス素子10の出力に応じた負帰還磁場が生成される。被測定磁場から負帰還磁場が減じられて磁気インピーダンス素子10に与えられる。
【0052】
第二の実施形態によれば、第一の実施形態と同様な効果を奏する。
【0053】
しかも、第二の実施形態によれば、増幅器14のゲインを大きくすることにより、被測定磁場と検波部15の出力との比をほぼ一定に保つことができる。
【0054】
第三の実施形態
第三の実施形態は、磁気インピーダンス素子10がブリッジ回路を備えた点が、磁気インピーダンス素子10がピックアップコイルを有する第一の実施形態と異なる。
【0055】
図4は、本発明の第三の実施形態にかかる磁場測定器1における磁気インピーダンス素子10の構成を示す図である。駆動信号付与部12、増幅器14、検波部15および測定範囲設定部16は、第一の実施形態と同様であり、説明を省略する(
図1参照)。
【0056】
第三の実施形態にかかる磁場測定器1における磁気インピーダンス素子10が、高周波電源20、第一磁性体薄膜21、第二磁性体薄膜22、第三磁性体薄膜23、第四磁性体薄膜24、電圧出力部25を有するブリッジ回路を備える。
【0057】
高周波電源20は、ブリッジ回路に高周波数の電圧を与える電源である。第一磁性体薄膜21と、第二磁性体薄膜22とが並列に接続されている。第三磁性体薄膜23と、第四磁性体薄膜24とが並列に接続されている。第一磁性体薄膜21と、第三磁性体薄膜23とが直列に接続されている。第二磁性体薄膜22と、第四磁性体薄膜24とが直列に接続されている。
【0058】
第一磁性体薄膜21の磁化容易方向d1と、第四磁性体薄膜24の磁化容易方向d4とが同じ向きである。ただし、第一磁性体薄膜21および第四磁性体薄膜24の異方性定数はKuである。
【0059】
第二磁性体薄膜22の磁化容易方向d2と、第三磁性体薄膜23の磁化容易方向d3とが同じ向きである。ただし、第二磁性体薄膜22および第三磁性体薄膜23の異方性定数もKuである。
【0060】
第一磁性体薄膜21の磁化容易方向d1と、第二磁性体薄膜22の磁化容易方向d2とが直交する。
【0061】
第一磁性体薄膜21の磁化容易方向d1とも、第二磁性体薄膜22の磁化容易方向d2とも異なる向きのバイアス磁界が印加される。例えば、バイアス磁界の向きは、磁化容易方向d1とも磁化容易方向d2とも45°の角度を成す。
【0062】
なお、第一磁性体薄膜21の磁化ベクトルm1、第二磁性体薄膜22の磁化ベクトルm2、第三磁性体薄膜23の磁化ベクトルm3および第四磁性体薄膜24の磁化ベクトルm4の向きは、バイアス磁界の向きと同じものとなる。
【0063】
第一磁性体薄膜21と第三磁性体薄膜23とを接続する点と、第二磁性体薄膜22と第四磁性体薄膜24とを接続する点との間の電圧が出力される。電圧出力部25は、この電圧を出力する。
【0064】
次に、第三の実施形態の動作を説明する。ただし、駆動信号付与部12、増幅器14、検波部15、測定範囲設定部16およびループフィルタ18に関する動作は、第一の実施形態の動作と同様であり、説明を省略する。
【0065】
まず、磁気インピーダンス素子10に、被測定磁場が印加される。被測定磁場の向きは、第二磁性体薄膜22の磁化容易方向d2と同じものである。
【0066】
すると、第一磁性体薄膜21の磁化ベクトルm1は磁化容易方向d1から遠ざかる方向に回転するので、第一磁性体薄膜21のインピーダンスが増大する。同様に、第四磁性体薄膜24の磁化ベクトルm4も磁化容易方向d4から遠ざかる方向に回転するので、第四磁性体薄膜24のインピーダンスも増大する。
【0067】
一方、第二磁性体薄膜22の磁化ベクトルm2は磁化容易方向d2に近づく方向に回転するので、第二磁性体薄膜22のインピーダンスが低下する。同様に、第三磁性体薄膜23の磁化ベクトルm3も磁化容易方向d3に近づく方向に回転するので、第三磁性体薄膜23のインピーダンスも低下する。
【0068】
すると、第一磁性体薄膜21と第三磁性体薄膜23とを接続する点の電位が下がる。一方、第二磁性体薄膜22と第四磁性体薄膜24とを接続する点の電位が上がる。よって、第一磁性体薄膜21と第三磁性体薄膜23とを接続する点と、第二磁性体薄膜22と第四磁性体薄膜24とを接続する点との間の電圧が、被測定磁場に応じて変化する。この電圧が、電圧出力部25から出力される。
【0069】
第三の実施形態によれば、第一の実施形態と同様な効果を奏する。
【0070】
第四の実施形態
第四の実施形態は、磁気インピーダンス素子10がアモルファス磁性体層を備えた点が、磁気インピーダンス素子10がピックアップコイルを有する第一の実施形態と異なる。
【0071】
図5は、本発明の第四の実施形態(
図5(a))およびその変形例(
図5(b))にかかる磁場測定器1における磁気インピーダンス素子10の構成を示す図である。駆動信号付与部12、増幅器14、検波部15および測定範囲設定部16は、第一の実施形態と同様であり、説明を省略する(
図1参照)。
【0072】
図5(a)を参照して、磁気インピーダンス素子10は、第一アモルファス磁性体層と、第二アモルファス磁性体層と、導体とを有する。ただし、導体(例えば、銅)は、第一アモルファス磁性体層と第二アモルファス磁性体層との間に配置されている。
【0073】
第四の実施形態によれば、第一の実施形態と同様な効果を奏する。
【0074】
なお、第四の実施形態によれば、導体が、第一アモルファス磁性体層と第二アモルファス磁性体層とに接しているが、必ずしも、接していなくてもよい。
【0075】
すなわち、
図5(b)を参照して、磁気インピーダンス素子10が、第一アモルファス磁性体層と、第二アモルファス磁性体層と、導体と、第一絶縁体と、第二絶縁体とを有する。第一絶縁体は、第一アモルファス磁性体層と導体との間に配置されている。第二絶縁体は、第二アモルファス磁性体層と導体との間に配置されている。
【0076】
また、
図5(b)に示す変形例に、さらにアモルファス磁性体層および絶縁体層を追加してもよい。
図6は、本発明の第四の実施形態のさらなる変形例にかかる磁気インピーダンス素子10の構成を示す図である。
【0077】
図6を参照して、
図5(b)に示す変形例の第一アモルファス磁性体層の上および第二アモルファス磁性体層の下に、絶縁体層およびアモルファス磁性体層が配置されている。ただし、第一アモルファス磁性体層の上の絶縁体層は、第一アモルファス磁性体層およびアモルファス磁性体層の間に配置されている。第二アモルファス磁性体層の下の絶縁体層は、第二アモルファス磁性体層およびアモルファス磁性体層の間に配置されている。
【0078】
なお、第四の実施形態においては変形例も含め、磁気インピーダンス素子10が第一および第二アモルファス磁性体層を備えているが、磁気インピーダンス素子10がアモルファスワイヤまたはアモルファスリボンを有するようにしてもよい。磁気インピーダンス素子10がアモルファス薄膜を有するようにしてもよい。
【0079】
第五の実施形態
第五の実施形態は、駆動信号が帯域信号である点が、第一の実施形態と異なる。
【0080】
図7は、本発明の第五の実施形態にかかる磁場測定器1における駆動信号付与部12の構成を示す機能ブロック図である。なお、磁気インピーダンス素子10、増幅器14、検波部15および測定範囲設定部16は、第一の実施形態と同様であり、説明を省略する(
図1参照)。
【0081】
第五の実施形態にかかる駆動信号付与部12は、所定の帯域(中心周波数flo[MHz]かつ帯域幅B[Hz]の帯域)内の周波数をとる帯域信号を駆動信号として出力するものであり、S/P変換部31、ナイキストフィルタ32a、32b、キャリア信号源33、90度移相器34、ミキサ36a、36b、加算器38を有する。
【0082】
S/P変換部31は、チップレート2B[sps]のランダムパターンデータ(PN符号またはM系列といった自己相関の強いものが好ましい)を受け、パラレル信号に変換して、ナイキストフィルタ32aおよび32bに与える。ナイキストフィルタ32a、32bは、S/P変換部31の出力をフィルタリングして、それぞれ、ミキサ36a、36bに与える。キャリア信号源33は、キャリア信号(周波数flo[MHz])を出力する。90度移相器34は、キャリア信号を受け、位相を90度変えて出力する。ミキサ36aは、ナイキストフィルタ32aの出力と90度移相器34の出力とを乗算して出力する。ミキサ36bは、ナイキストフィルタ32bの出力とキャリア信号とを乗算して出力する。加算器38は、ミキサ36aの出力と、ミキサ36bの出力とを加算して出力する。すると、加算器38の出力が、帯域信号(帯域幅B[Hz]、中心周波数flo[MHz])となる。
【0083】
次に、第五の実施形態の動作を説明する。ただし、磁気インピーダンス素子10、増幅器14、検波部15、測定範囲設定部16およびループフィルタ18に関する動作は、第一の実施形態の動作と同様であり、説明を省略する。
【0084】
チップレート2B[sps]のランダムパターンデータが、S/P変換部31によりパラレル信号に変換され、ナイキストフィルタ32a、32bを介して、それぞれ、ミキサ36a、36bに与えられる。ナイキストフィルタ32aの出力は、ミキサ36aによって、キャリア信号の位相を90度変えたものと乗算される。ナイキストフィルタ32bの出力は、ミキサ36bによって、キャリア信号と乗算される。ミキサ36aの出力と、ミキサ36bの出力とが、加算器38によって加算され、帯域信号(帯域幅B[Hz]、中心周波数flo[MHz])となる。
【0085】
第五の実施形態によれば、第一の実施形態と同様な効果を奏する。
【符号の説明】
【0086】
1 磁場測定器
10 磁気インピーダンス素子
12 駆動信号付与部
14 増幅器
15 検波部
16 測定範囲設定部
18 ループフィルタ
19 負帰還用コイル
20 高周波電源
21 第一磁性体薄膜
22 第二磁性体薄膜
23 第三磁性体薄膜
24 第四磁性体薄膜
25 電圧出力部