(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188869
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】画像処理装置、撮像装置、画像処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20221215BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20221215BHJP
G02B 7/34 20210101ALI20221215BHJP
G02B 7/36 20210101ALI20221215BHJP
G02B 7/40 20210101ALI20221215BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20221215BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20221215BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G02B7/28 Z
G03B15/00 Q
G02B7/34
G02B7/36
G02B7/40
G02B7/28 N
G03B17/02
H04N5/232 120
H04N5/225 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097123
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】前田 真一
【テーマコード(参考)】
2H100
2H151
5C122
【Fターム(参考)】
2H100AA11
2H100CC07
2H151AA01
2H151BA06
2H151BA14
2H151BA20
2H151BA45
2H151BA72
2H151BA77
2H151BB28
2H151CB09
2H151CB20
2H151CC02
2H151CC19
2H151CE24
2H151DA07
2H151DA25
2H151DB01
5C122DA03
5C122DA04
5C122EA06
5C122EA68
5C122FB05
5C122FC06
5C122FD01
5C122FD06
5C122FD07
5C122FD13
5C122FH10
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA75
5C122HA86
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】画像に関連する深度情報に基づいて画像内の複数の領域に対する焦点状態の評価を行い、画像データの選別や分類にかかる負荷を低減する。
【解決手段】撮像装置は、撮像後の画像データと、画像データに関連する画像内の被写体に対応する深度情報を取得し、焦点検出結果に基づいて撮像光学系の焦点調節制御を行う。撮像装置は撮影時のAF(オートフォーカス)領域の情報を取得し、画像内の一部領域を特定領域として決定する。撮像装置はAF領域に対応する深度情報と、特定領域に対応する深度情報に基づいて、画像データに係る焦点状態の評価を行う。撮像装置は等級付け処理を実行し、評価情報として、AF領域の合焦結果に対応する等級データ、および特定領域の合焦結果に対応する等級データが取得される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データおよび画像に関連する深度情報を取得して処理を行う画像処理装置であって、
前記画像データに係る画像内の第1の領域の情報を取得する取得手段と、
前記画像内にて前記第1の領域とは異なる第2の領域を特定領域として決定する決定手段と、
前記第1および第2の領域にそれぞれ対応する深度情報から前記画像データに係る焦点状態の評価を行い、複数の評価情報を生成する生成手段と、を備える
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記第1の領域にて合焦状態である場合、第1の評価情報を生成し、前記第1の領域にて非合焦の状態である場合、第2の評価情報を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記第2の領域にて第1の焦点状態である場合、第1の評価情報を生成し、前記第2の領域にて第2の焦点状態である場合、第2の評価情報を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の焦点状態は焦点検出結果が閾値範囲内の状態であり、前記第2の焦点状態は焦点検出結果が前記閾値範囲内でない状態である
ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記深度情報は、位相差検出、前記画像データのコントラスト情報、またはToF方式に基づく情報である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像に対する視線位置を検出する検出手段を備え、
前記決定手段は、前記検出手段により検出される視線位置により前記第2の領域を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記画像に対する操作入力にしたがって前記第2の領域を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記画像内の被写体の検出処理を行う被写体検出手段を備え、
前記決定手段は、検出された前記画像内の被写体の位置から前記第2の領域を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記生成手段は、前記第1の領域に対応する深度情報に基づく評価情報の優先度を、前記第2の領域に対応する深度情報に基づく評価情報の優先度よりも高く設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記生成手段は、前記第1の領域に対応する深度情報に基づく評価情報と、前記第2の領域に対応する深度情報に基づく評価情報との間で優先度の割合を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記生成手段は、前記第1の領域にて合焦状態である場合に第1の評価情報を生成し、前記第1の領域にて非合焦の状態である場合に第2の評価情報を生成し、前記第2の領域にて第1の焦点状態である場合に第3の評価情報を生成し、前記第2の領域にて第2の焦点状態である場合に第4の評価情報を生成する
ことを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記第1の焦点状態は焦点検出結果が閾値範囲内の状態であり、前記第2の焦点状態は焦点検出結果が前記閾値範囲内でない状態である
ことを特徴とする請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
撮像素子と、を備える
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
前記撮像素子は、複数のマイクロレンズと、各マイクロレンズに対応する複数の光電変換部を備え、
前記第1の領域に対応する前記複数の光電変換部から、撮像光学系の焦点検出に用いる信号を取得する
ことを特徴とする請求項13に記載の撮像装置。
【請求項15】
画像データおよび画像に関連する深度情報を取得して処理を行う画像処理装置にて実行される画像処理方法であって、
前記画像データに係る画像内の第1の領域の情報を取得する工程と、
前記画像内にて前記第1の領域とは異なる第2の領域を特定領域として決定する工程と、
前記第1および第2の領域にそれぞれ対応する深度情報から前記画像データに係る焦点状態の評価を行い、複数の評価情報を生成する工程と、を有する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の各工程を画像処理装置のコンピュータに実行させる
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像により取得された画像データを焦点検出結果に基づいて自動的に評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像画像データは、デジタルカメラ等の撮像装置において撮像素子により取得されて種々の演算処理が行われる。特に、撮像素子から読出した信号の位相差情報を用いたオートフォーカス(AF)技術はよく知られている。高精度の焦点検出を可能にする読出しと、低消費電力かつ高速な読出しとの両立を実現するために、撮像素子の読出しに関して種々の方法が提案されている。
【0003】
撮像された画像の分類方法として、複数の画像の鮮明度に応じて画像を分類して記録する方法が知られている。特許文献1では、連写された複数コマの画像から画像が鮮明な画像を自動的に選定して保存することが可能なデジタルカメラが開示されている。焦点位置を固定した状態で連続撮影を行うことで得られた各画像からAF評価値を取得し、最もAF評価値の高い1枚の画像を自動的に選定して保存用記録領域に記録し、非選定画像を消去用記録領域に記録する処理が行われる。特許文献2では、撮影画像を記録する際に、合焦状況に基づいて等級付けを行う技術が開示されている。静止画データの焦点状態に基づいて静止画データが評価され、焦点検出結果と所定の合焦範囲との比較により、撮影で得られた画像データに対して、焦点状態に応じた等級付けが自動的に行われる。評価情報に基づきユーザは静止画データを分類することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-320487号公報
【特許文献2】特開2019-86775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、適切な合焦画像を選択できない場合が起こりうる。焦点位置を固定した状態で連続撮影が行われるので、画像の高周波数成分に基づくAF評価値の最も高い撮影画像が、最も良い焦点状態の画像であると推定できる。しかしながら、AF評価値が最も高いということは、あくまで得られた撮影画像の中で相対的に焦点状態が最も良いというだけである。つまり、ユーザが意図した被写体に合焦しているとは限らない。
【0006】
また特許文献2に開示された技術では、焦点位置に対応する被写体のみの焦点状態に応じた等級付けを行うことはできる。しかし、特定の被写体以外の部分(例えば、主要でない被写体)に対する焦点状態の等級付けを行うことができない可能性がある。
本発明の目的は、画像に関連する深度情報に基づいて画像内の複数の領域に対する焦点状態の評価を行い、画像データの選別や分類にかかる負荷を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の画像処理装置は、画像データおよび画像に関連する深度情報を取得して処理を行う画像処理装置であって、前記画像データに係る画像内の第1の領域の情報を取得する取得手段と、前記画像内にて前記第1の領域とは異なる第2の領域を特定領域として決定する決定手段と、前記第1および第2の領域にそれぞれ対応する深度情報から前記画像データに係る焦点状態の評価を行い、複数の評価情報を生成する生成手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の画像処理装置によれば、画像に関連する深度情報に基づいて画像内の複数の領域に対する焦点状態の評価を行い、画像データの選別や分類にかかる負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る撮像素子の構成例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る撮像素子の画素アレイの構成例を示す図である。
【
図4】撮像素子における結像状態と位相差との関係を示す模式図である。
【
図6】第1実施形態における処理を説明するフローチャートである。
【
図7】
図6に続く処理を説明するフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る画像処理装置の構成例を示す図である。
【
図9】第2実施形態における処理を説明するフローチャートである。
【
図10】
図9に続く処理を説明するフローチャートである。
【
図11】第3実施形態における処理を説明するフローチャートである。
【
図13】第4実施形態における処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。実施形態では、本発明に係る画像処理装置を適用した撮像装置の例を示す。撮像装置は撮像された画像に関連する深度情報に基づき、画像内の複数の領域に対する焦点状態の評価を行う。撮影後に画像記録を行う際、画像内の被写体に対して実際に合焦しているかどうかに関し、合焦状況に基づいて等級付けを行う例を示す。評価情報として生成される等級データを用いることにより、画像データの選別や分類にかかる負荷を低減することが可能となる。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。撮像装置100としてデジタルカメラの例を示す。以下では、被写体側を前側と定義して説明を行う。結像光学系の前端部には第1レンズ群101が配置されている。第1レンズ群101は光軸方向に進退可能に保持されている。絞り兼用シャッタ102は、その開口径を調節することで撮影時の光量調節を行うほか、静止画撮影時には露光秒時調節用シャッタとしても機能する。絞り兼用シャッタ102と第2レンズ群103とは一体となって光軸方向に進退し、第1レンズ群101の進退動作との連動によって、変倍作用(ズーム機能)が実現される。
【0012】
第3レンズ群104は光軸方向に進退可能であり、焦点調節を行う。光学的ローパスフィルタ105は、撮影画像の偽色やモアレを軽減するための光学素子である。撮像素子106は、2次元CMOS(相補型金属酸化膜半導体)フォトセンサおよび周辺回路を有しており、結像光学系の結像面に配置される。
【0013】
ズームアクチュエータ111は、図示しないカム筒を回動させることで、第1レンズ群101乃至第3レンズ群104を光軸方向に駆動して変倍動作を行う。絞りシャッタアクチュエータ112は、絞り兼用シャッタ102の開口径を制御して撮影光量を調節するとともに、静止画撮影時の露光時間を決定する。フォーカスアクチュエータ113は、第3レンズ群104を光軸方向に駆動して焦点調節動作を行う。
【0014】
被写体照明用の電子フラッシュ114はキセノン管を用いた閃光照明装置、あるいは、連続発光するLED(発光ダイオード)を用いた照明装置を備える。オートフォーカス(以下、AFと記す)補助光源115は、所定の開口パターンを有するマスクの像を、投光レンズを介して被写体に投影し、暗い被写体または低コントラストの被写体に対する焦点検出能力を向上させる。
【0015】
制御部121は、撮像装置100における種々の制御を司る中枢部である。制御部121はCPU(中央演算処理装置)、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェイス回路等(不図示)を有する。
【0016】
電子フラッシュ制御回路122は、撮影動作に同期して電子フラッシュ114の点灯制御を行う。補助光駆動回路123は、焦点検出動作に同期してAF補助光源115の点灯制御を行う。
【0017】
撮像素子駆動回路124は、撮像素子106の撮像動作を制御するとともに、撮像により取得された画像信号をA/D変換して制御部121に送信する。画像処理回路125は、撮像素子106により取得された画像の被写体検出、γ変換、カラー補間、JPEG(Joint Photographic Experts Group)方式での圧縮等の処理を行う。
【0018】
フォーカス駆動回路126は、焦点検出結果に基づいてフォーカスアクチュエータ113を駆動し、第3レンズ群104を光軸方向に駆動して焦点調節を行う。絞りシャッタ駆動回路127は、絞りシャッタアクチュエータ112を駆動して絞り兼用シャッタ102の開口を変更する。ズーム駆動回路128は、撮影者によるズーム操作に応じてズームアクチュエータ111を駆動する。
【0019】
表示装置131は、LCD(液晶表示装置)等により構成される。表示装置131は撮像装置100の撮影モードに関する情報、撮影前のプレビュー画像、撮影後の確認用画像、焦点検出時の合焦状態の表示画像等を表示する。
【0020】
操作スイッチ群132は、電源スイッチ、レリーズ(撮影トリガ)スイッチ、ズーム操作スイッチ、撮影モード選択スイッチ等の操作部材を含む。例えば撮影の準備動作の開始指示を行うための第1のスイッチ(以下、SW1と記す)、およびSW1の押下後に撮影動作の開始指示を行うための第2のスイッチ(以下、SW2と記す)がある。
【0021】
記録媒体133は、撮像装置100に着脱可能なフラッシュメモリ等であり、撮影により取得された画像ファイル等の情報を記録する。メモリ134はRAM(ランダム・アクセス・メモリ)、ROM(リード・オンリ・メモリ)等を有する。メモリ134はプログラムの記憶や、画像処理中の画像データ、画像処理に必要なパラメータデータの保持等を行う。
【0022】
AF演算回路135は、撮像素子106が出力する画像信号に基づいて焦点検出を行い、AF演算結果を制御部121に出力する。視線検出回路136は、ユーザがファインダ部(不図示)を覗いたときの視線位置を検出する。視線位置の検出は、視線検出用LED(不図示)によって眼球に赤外光を投光し、その反射光を視線検出用センサ(不図示)で受光することにより行われる。視線検出回路136は視線検出結果を制御部121に出力する。
【0023】
制御部121は、メモリ134が有するROMに記憶されたプログラムに基づいて、撮像装置100の各種回路を駆動し、AF、撮影、画像処理、記録等の一連の動作制御を行う。
【0024】
図2を参照して、撮像素子106の構成を説明する。
図2は撮像素子106の構成例を示すブロック図である。撮像素子106は、画素アレイ106a、読出し回路106b、水平選択回路106c、垂直選択回路106d、アンプ106eを備える。画素アレイ106aは画素群が2次元アレイ状に配列された構成である。垂直選択回路106dは画素アレイ106aにおける行を選択する。水平選択回路106cは画素アレイ106aにおける列を選択する。読出し回路106bは、画素アレイ106aを構成する多数の画素のうち、垂直選択回路106dおよび水平選択回路106cによって選択される画素の信号を読出す。
【0025】
垂直選択回路106dは画素アレイ106aの行を選択し、制御部121から出力される水平同期信号に基づいて撮像素子駆動回路124から出力される読出しパルスを選択行において有効にする。読出し回路106bは列ごとのアンプやメモリを有し、選択行の画素信号はアンプを介してメモリに記憶される。メモリに記憶された1行分の画素信号は、水平選択回路106cによって列方向に順次選択され、アンプ106eを介して外部に出力される。この動作が行数分に亘って繰り返され、全ての画素信号が外部に出力される。
【0026】
図3は、画素アレイ106aの構成例を示す。画素アレイ106aとして、2次元の画像データを出力するために複数の画素部を備え、位相差検出が可能な構成例を示す。
図3には画素アレイ106aにおけるm行n列の画素群を示す。
【0027】
図3に円形枠で示すマイクロレンズ106fに対し、長方形枠で示す複数のフォトダイオード(以下、PDと記す)106g,106hが設けられている。PD106g,106hは複数の光電変換部を構成する。つまり、各画素部を構成する2つの光電変換部に対して1つのマイクロレンズが前側(被写体側)に配置されている。1つのマイクロレンズ106fを共有する領域を1画素として、水平方向にn個の画素、垂直方向にm個の画素が並設された配置である。垂直選択回路106dの動作設定によって、PD106gに蓄積された第1の信号とPD106hに蓄積された第2の信号を加算して読出すことが可能である。また、第1もしくは第2の信号、または両方の信号を独立に読出すことも可能である。PD106gとPD106hには、位相差を有する異なる像の光がそれぞれ入射する。以下、PD106gにより構成される画素をA像用画素といい、PD106hにより構成される画素をB像用画素という。
【0028】
本実施形態では、1つのマイクロレンズに対して2個のPDが配置された構成例を示すが、1つのマイクロレンズに対して3以上(4個、9個等)のPDが配置された構成でもよい。例えば1つのマイクロレンズに対して複数のPDが上下方向または左右方向に配置された構成にも本発明を適用可能である。
【0029】
次に
図4を参照して、撮像素子106にてA像用画素とB像用画素が出力する画素データについて説明する。
図4(A)および(B)は、撮像素子106における結像状態と位相差との関係を示す模式図である。図中の撮影レンズ140は、
図1に示す第1レンズ群101、第2レンズ群103、第3レンズ群104を併せて1つのレンズとして表現した撮像光学系に相当する。
【0030】
図4に示す画素アレイ106aの断面において、1つのマイクロレンズ143に対して一対のA像用画素144およびB像用画素145が配置される。被写体141からの光は、光軸142を中心として、撮影レンズ140の異なる瞳部分領域を通過して撮像素子106に結像する。ここでは射出瞳と撮影レンズの中心を同一としている。撮影レンズ140の瞳部分領域にはそれぞれ、異なる方向から光が通過する。すなわち、本構成では、撮像光学系をA像用画素から見た場合とB像用画素から見た場合とで、撮像光学系の瞳が対称に分割されたことと等価である。換言すれば、撮像光学系からの光束が2つの光束として、いわゆる瞳分割される。瞳分割された光束を第1光束ΦLaおよび第2光束ΦLbと表記する。A像用画素およびB像用画素にはそれぞれ異なる方向の光が入射する。
【0031】
被写体141上の特定点からの第1光束ΦLaは、第1の瞳部分領域を通ってA像用画素144に入射する光束である。また、被写体141上の特定点からの第2光束ΦLbは、第2の瞳部分領域を通ってB像用画素145に入射する光束である。瞳分割された2つの光束ΦLa,ΦLbは、被写体141上の同一点から撮像光学系を通過して入射する光に相当する。
【0032】
図4(A)は被写体141に対し撮像光学系の焦点が合った状態(合焦状態)を示す。この状態で光束ΦLa,ΦLbは同一のマイクロレンズ143を通過して撮像素子上の1点に到達する。したがって、A像用画素144とB像用画素145からそれぞれ得られる像信号の位相は互いに一致している。
【0033】
これに対し、
図4(B)は光軸方向に距離Yだけ焦点がずれている状態を示す。この状態では、光束ΦLa,ΦLbに関して、マイクロレンズ143への入射角の変化分だけ両光束に対応する光の到達位置が互いにずれる。したがって、A像用画素144とB像用画素145からそれぞれ得られる像信号には位相差が生じる。A像用画素144およびB像用画素145により検出される、互いに位相差を持った2つの被写体像(A像およびB像)に対し、各画素に対応するPDはそれぞれ光電変換を行う。光電変換後のA像信号とB像信号は別々に外部へ出力され、後述するAF制御に使用される。
【0034】
図5を参照して、位相差検出について説明する。
図5の横軸は画素位置を表し、縦軸は撮像素子の出力レベルを表す。
図5(A)は、
図4(A)で説明したように被写体に焦点が合っている場合のA像データおよびB像データを例示する。この場合、A像データとB像データは一致している。
【0035】
他方、
図5(B)は、
図4(B)で説明したように被写体に焦点が合っていない場合のA像データおよびB像データを例示する。この場合、A像データとB像データには位相差が存在し、画素位置にずれ量Xが生じる。AF演算回路135は、動画フレームごとのずれ量Xを算出することによって像ずれ量、即ち
図4(B)におけるY値を算出する。制御部121はAF演算回路135が算出したY値のデータに対応する制御信号をフォーカス駆動回路126に送信する。
【0036】
フォーカス駆動回路126は制御信号を受信して、AF演算回路135から取得したY値のデータに基づき第3レンズ群104の駆動量を算出する。駆動量にしたがってフォーカスアクチュエータ113の駆動制御が行われる。フォーカスアクチュエータ113により、第3レンズ群104は被写体に焦点の合う位置(合焦位置)まで移動し、撮像素子106の受光面上に焦点が位置する状態となる。
【0037】
次に
図6および
図7を参照して、撮像装置100によって行われる撮影と画像再生について説明する。
図6および
図7は撮像装置100の撮像動作および画像の等級付け処理の流れを示すフローチャートである。以下の処理は制御部121が各部を制御することにより実現される。ユーザが操作スイッチ群132に含まれるSW1を押下することで処理が開始されてS101へ進む。
【0038】
図6のS101で測光が行われ、測光結果が取得される。次にS102へ進み、制御部121は撮像素子106により取得された信号に基づいて、第3レンズ群104のデフォーカス量を検出する焦点検出処理を行う。焦点検出結果としてデフォーカス量が取得された後、S103へ進む。
【0039】
S103で制御部121は、S102で取得されたデフォーカス量に基づいて、第3レンズ群104の駆動量であるフォーカス駆動量を算出する。制御部121は、算出したフォーカス駆動量に対応する制御信号をフォーカス駆動回路126へ送信する。フォーカス駆動回路126は、受信した制御信号に基づいて、フォーカスアクチュエータ113を通じて第3レンズ群104の焦点位置を制御する。焦点位置の制御後、S104へ進む。
【0040】
S104で制御部121はSW1の操作入力状態を検出し、SW1が保持し続けられている状態であるか否かを判断する。SW1が保持し続けられている状態であると判断された場合、S101の処理へ戻って再度測光が行われた後、焦点検出処理が実行される。またSW1が保持し続けられていない状態であると判断された場合にはS105へ進む。
【0041】
S105で制御部121はSW2の操作入力状態を検出し、SW2が押下されている状態であるか否かを判断する。SW2が押下されている状態であると判断された場合、S106へ進む。また、SW2が押下されていない状態であると判断された場合には、SW1とSW2の押下が解放された状態とみなして、本実施形態の処理を終了する。
【0042】
S106では、静止画撮影のために、S101の測光結果から定められた電荷蓄積時間とISO感度の設定に基づいて撮像素子106の露光が開始し、電荷が蓄積される。露光時間は絞りシャッタアクチュエータ112により制御される。このとき、撮像素子駆動回路124にて撮像素子106の有効画素領域全体を含む領域から信号を読出す駆動モードで、撮像素子106が制御される。
【0043】
S107で撮像素子駆動回路124により、撮像素子106に蓄積された電荷に対応する画像信号が取得され、A/D変換の後、瞳分割された画像データであるRAWデータが生成される。RAWデータは現像等の画像加工処理が施される前のデータであり、メモリ134へ転送される。このほかに、制御部121の制御下で所定の画像処理が実行されて公知のファイルフォーマットの静止画データ(例えばJPEG方式のファイル)が生成される。制御部121によって、RAWデータおよび公知のファイルフォーマットの静止画データを記録媒体133に記録する制御が行われた後、
図7のS108へ進む。
【0044】
S108で制御部121は、焦点検出により算出されたデフォーカス量が、所定の合焦範囲内であるか否かを判断する。すなわち、S107で取得されたRAWデータおよび静止画データが、意図した被写体に焦点の合った画像のデータであるか否かを制御部121が判断する。所定の合焦範囲は、例えば、絞り値をFと表記し、許容錯乱円径をδ[μm]と表記すると、-1Fδ乃至+1Fδ[μm]の範囲である。デフォーカス量で定められる焦点位置の範囲に対する閾値は予め設定されている。S102で得られたデフォーカス量が所定の合焦範囲内である場合、S107で得られたRAWデータおよび静止画データが意図した被写体に焦点の合った画像のデータであると判断され、S109へ進む。またS102で得られたデフォーカス量が所定の合焦範囲内でない場合には、S107で得られたRAWデータおよび静止画データが意図した被写体に焦点の合っていないボケ画像のデータであると判断され、S110へ進む。
【0045】
デフォーカス量が所定の合焦範囲内であるか否かを判断する方法以外には、デフォーカス量の絶対値が所定の閾値未満であれば合焦と判定し、所定の閾値以上であれば非合焦と判定する方法がある。この方法に限定されることなく、焦点状態に対応する情報に基づいて焦点状態を判断できる方法であればよい。例えば、前述の像ずれ量が所定の閾値範囲内であるか否かを判断することで焦点状態を判断する方法がある。以上の方法は後述の実施形態でも採用可能である。
【0046】
S109で制御部121は、S107にてメモリ134や記録媒体133へ転送された、RAWデータおよび静止画データに対して、焦点検出結果に基づく評価を行う。例えばデフォーカス量の絶対値に基づく等級付け処理が行われる。等級付けの結果、つまり等級を表すデータはRAWデータおよび静止画データの第1の属性領域のデータとして記録される。
【0047】
本実施形態の属性領域は、画像ファイルにおいて、バイナリデータからなる画像データ領域ではなく、ユーザが撮影後でも編集が可能な記録領域である。ユーザは後から手作業で等級付けをしたい場合や記録された等級データを修正したい場合、容易に編集することができるので、作業効率を高めることができる。撮影後に編集可能な属性領域への記録方法として、例えば静止画データをJPEG方式で保存する場合、下記の方法がある。
・属性情報を示すJPEG方式のマーカーセグメントである“APP1”に記載する方法(ISO/IEC 10918-1:1994参照)。
・Exif方式のメーカー独自利用欄“MakerNote”に記載する方法(一般社団法人 カメラ映像機器工業会 デジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格 Exif 2.31(CIPA DC-008-2016)参照)
【0048】
いずれの記載方法でも、XMLテキストデータで構成された記録仕様で等級の記載が可能である。第三者団体製の画像編集ソフトウェアにて、一定の互換性をもって等級付けの結果を読出すことができる。記録仕様については、“Extensible Metadata Platform(XMP)Specification”Part1~Part3,Adobe Systems Incorporated.“を参照されたい。なお、JPEGファイルフォーマットやExifフォーマットは、2バイトのマーカーを目印にして複数のセグメントに領域分割されていて、使用するマーカーの値に応じて記録される属性情報の内容を識別できるようになっている。このようなマーカーセグメントで各種情報のデータ列を仕切る記録様態は、JPEG方式のほかTIFFや他の画像ファイルフォーマットでも利用されている。
【0049】
本実施形態では等級付けの一例として、被写体に対する合焦状態であれば星2つを設定し、非合焦の状態であれば星1つを設定する場合を示す。つまり星の数によって評価情報が区別される例を示す。評価情報は画像と併せて表示装置131によってユーザに提示することができる。なお、等級付けが未実施の画像データと、非合焦の状態の画像データとを区別するために、あえて非合焦の状態を星の設定無しとしては扱わないこととする。これらの事項については後述の実施形態でも同じである。
【0050】
S108からS109へ進む場合、つまり算出されたデフォーカス量が所定の合焦範囲内である場合に制御部121は第1の属性領域に星2つの等級データを記録する制御を行う。等級データの記録後にS111へ進む。また、S108からS110へ進む場合、つまり算出されたデフォーカス量が所定の合焦範囲外である場合に制御部121は第1の属性領域に星1つの等級データを記録する制御を行う。このように、本実施形態では、制御部121が、得られた静止画データの焦点検出状態に基づいて静止画データを評価し、評価に応じた情報(評価情報)を静止画データと対応付けて記録する。等級データの記録後にS111へ進む。
【0051】
S111では、ユーザが操作スイッチ群132を操作し、取得されたRAWデータおよび静止画データにおいて、焦点が合っているか否かを判定させたい領域(特定領域)を指定する。S112で制御部121は、S111にて指定された特定領域に対して、S108と同様に焦点検出結果として算出されたデフォーカス量が、指定の閾値範囲内であるか否かを判断する。すなわち、S107で取得されたRAWデータおよび静止画データが、ユーザの指定した領域に焦点の合った画像のデータであるか否かを制御部121が判断する。算出されたデフォーカス量が指定の閾値範囲内であると判断された場合、S113に進み、算出されたデフォーカス量が指定の閾値範囲内でないと判断された場合にはS114に進む。
【0052】
S113で制御部121は、S109と同様に、S107にてメモリ134や記録媒体133へ転送されたRAWデータおよび静止画データに対して、S111にてユーザが指定した特定領域でのデフォーカス量の絶対値に基づく等級付けを行う。そして制御部121は、等級付けの結果得られた等級データを、RAWデータおよび静止画データの第2の属性領域に記録する制御を行う。S113およびS114における等級付け処理についてはS109、S110と同様である。
【0053】
S113にて制御部121は第2の属性領域に星2つの等級データを記録する制御を行った後、S115へ進む。またS114にて制御部121は第2の属性領域に星1つの等級データを記録する制御を行った後、S115へ進む。このように、本実施形態では、制御部121が、取得された静止画データに係る2つ以上の領域の焦点検出状態に基づいて静止画データを評価し、評価情報を静止画データと対応付けて記録する。
【0054】
S115で制御部121はSW1とSW2の操作入力状態の判定を行う。つまりSW2が押下されて連写が続行されるように操作入力がなされているか、またはSW1が押下されて改めて焦点位置の制御まで行うよう操作入力がなされているか、について判定処理が行われる。SW1またはSW2の押下が保持されていると判定された場合、
図6のS101へ戻って処理が継続され、焦点検出が再び行われる。また、SW1またはSW2の押下が保持されていないと判定された場合、撮影結果を適切に分類して記録する処理を終えて、本実施形態の動作を終了する。
【0055】
以上のように本実施形態にて制御部121は、取得された静止画データの焦点検出状態に基づいて静止画データを評価し、評価情報により静止画データを分類することができる。これにより、実際に撮影された画像にかかわる焦点検出状態に応じて画像を分類することができ、撮影された画像データを分類する作業上の負荷を軽減することができる。
【0056】
本実施形態では、ユーザが操作スイッチやタッチパネル等を用いて、RAWデータおよび静止画データにて焦点が合っているか否かを判定させたい領域を指定する方法を示した。これに限定されることなく、視線検出回路136によって検出されたユーザの視線位置を用いて、RAWデータおよび静止画データにて焦点が合っているか否かを判定させたい領域を指定する方法を採用してもよい。また、AF領域以外で被写体検出処理部によって検出された被写体を含む領域を、焦点が合っているか否かを判定させたい領域として撮像装置100により自動的に決定する方法がある。被写体検出処理は、例えば制御部121のCPUがプログラムを実行して公知の検出方法により実現可能である。なお、これらの事項については後述の実施形態でも同じである。
【0057】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態では、焦点検出を撮像装置100の内部で行うように制御部121が制御の主体となる例を示した。これに対して本実施形態では、撮像装置100の外部の装置においてソフトウェアプログラムを実行することにより焦点検出を行い、焦点検出結果に基づいて画像データに対して焦点検出状態に応じた等級付けを行う例を説明する。なお、本実施形態にて第1実施形態と同様の事項については説明を省略し、主に相違点を説明する。このような説明の省略方法は後述の実施形態でも同じである。
【0058】
本実施形態では、撮像装置100の記録媒体133を外部装置に接続して、外部装置のコンピュータ上のソフトウェアにしたがってRAWデータに基づく焦点検出を行い、焦点検出結果に応じてソフトウェアを通じて画像の等級付け処理を行う。装置本体部に着脱可能な記録媒体133には、瞳分割された焦点検出画素の信号に対応するRAWデータが格納されている。さらに記録媒体133には、RAWデータと対応付けて、撮影時の絞り値と、記録時の焦点位置における基準レンズ駆動量と、記録時の焦点位置における変動倍率の各データが格納されている。
【0059】
図8は、本実施形態に係る外部装置の一例としてパーソナルコンピュータ(以下、PCと記す)200およびその周辺装置を示すブロック図である。周辺装置として、PC200に着脱可能な記録媒体133と、モニタ201を示す。PC200は撮像装置100により取得された画像データの分類または選別の機能を有する。
【0060】
システム制御部213は、ユーザが行う操作部207の操作によって、記録媒体133からの画像データの読み込み指示を受け付ける。操作部207はポインティングデバイス、キーボード、タッチパネル等を有する。ユーザの操作指示にしたがい、記録インターフェイス(I/F)部202を介して、記録媒体133に記録された画像データを画像メモリ203へ読み込む処理が実行される。
【0061】
システム制御部213は、記録媒体133から読み込んだ画像データが圧縮符号化されたデータである場合、画像メモリ203の画像データをコーデック部204へ送信する。コーデック部204は、圧縮符号化された画像データの復号を行い、復号後の画像データを画像メモリ203へ出力する。
【0062】
システム制御部213は画像メモリ203に蓄積された復号後の画像データ、または、ベイヤーRGB形式(RAW形式)等の、非圧縮の画像データを画像処理部205へ出力する。画像処理部205は画像データに対して画像処理を行い、画像処理結果のデータを画像メモリ203に記憶する処理を行う。システム制御部213は、画像処理後の画像データを画像メモリ203から読出し、外部モニタインターフェイス(I/F)部206を介してモニタ201へ出力する。
【0063】
PC200は電源スイッチ208、電源部209、電気的に消去および記録可能な不揮発性メモリ210、システムタイマ211、システムメモリ212を有する。システムタイマ211は、各種制御に用いる時間や、内蔵された時計の時間を計測するデバイスである。システムメモリ212にはシステム制御部213の動作用の定数、変数、不揮発性メモリ210から読出されたプログラム等が展開される。
【0064】
図9および
図10を参照して、本実施形態における処理について説明する。
図9および
図10は、PC200における画像の等級付け処理の流れを示すフローチャートである。以下の処理は、不揮発性メモリ210から読出されたプログラムがシステムメモリ212に展開され、ソフトウェアの各処理工程が実行されるようにシステム制御部213が制御を行うことで実現される。
【0065】
起動直後の初期状態において、PC200と撮像装置100の記録媒体133とは電気的に接続されて通信可能な状態である。システム制御部213は記録媒体133に記録された各種のデータを読出すことができる。ユーザがソフトウェアによる表示画面上で画像の等級付け処理を開始させるための操作入力を行うと、システム制御部213は操作入力を受け付けてS201へ処理を進める。
【0066】
S201では、ユーザが指定した画像データのRAWデータへのリンクが全て読出され、PC200内の不図示のメモリに一時記憶される。システム制御部213は、記録媒体133に一時記録されたRAWデータの個数を計数する。計数後にS202へ進む。
【0067】
S202でシステム制御部213は、S201にて一時記録されたRAWデータへのリンクに基づき、RAWデータの1つ(以下、着目データという)を決定し、着目データの読出し処理を行う。着目データに対して現像処理等の各種画像処理が施されて、画像処理後のデータに対応する公知のファイルフォーマットの静止画データが生成される。S203では、着目データの第1の領域をユーザが指定すると、システム制御部213は当該指定の操作入力を受け付ける。
【0068】
S204では、S203で指定された、着目データに係る第1の領域に対して焦点検出が行われる。具体的には、システム制御部213はソフトウェアプログラムの実行により、着目データについて、瞳分割された焦点検出画素の信号、記録時の絞り値、基準レンズ駆動量、基準レンズ駆動量の変動倍率のデータ読出し処理を行う。そして、着目データから、第1の領域に対応する画像領域が抽出され、抽出された画像領域の各焦点検出画素列における位相のシフト量ごとの相関量が算出される。当該シフト量ごとの相関量が算出された後、そのうち最も相関量が高い位相差(像ずれ量とも称する)が算出される。位相差の算出後、位相差の値と絞り値と基準デフォーカス量に基づいて、公知の位相差検出方式によりデフォーカス量が算出される。デフォーカス量の算出後にS205へ進む。
【0069】
S205でシステム制御部213は、着目データに係る第1の領域に対応して算出されたデフォーカス量が、所定の合焦範囲(例えば、-1Fδ乃至+1Fδ[μm])内であるか否かを判断する。第1の領域内のデフォーカス量が所定の合焦範囲内であると判断された場合、S206へ進み、所定の合焦範囲内でないと判断された場合にはS207へ進む。
【0070】
S206でシステム制御部213は、着目データにかかる第1の領域と対応する静止画データに対して、S204で算出されたデフォーカス量の絶対値に基づく等級付けを行う。等級付けの結果得られた等級データは、RAWデータおよび静止画データの第1の属性領域に記録される。本実施形態でも、属性領域は第1実施形態にて
図7のS109で説明した領域であり、ユーザが撮影後、容易に編集可能な領域である。等級付け処理の内容については第1実施形態と同じである。
【0071】
S206でシステム制御部213は、第1の属性領域に星2つの等級データを記録する制御を行った後、
図10のS208へ進む。またS207でシステム制御部213は、第1の属性領域に星1つの等級データを記録する制御を行った後、
図10のS208へ進む。このようにシステム制御部213は静止画データの焦点検出状態に基づいて静止画データを評価し、評価情報を静止画データに対応付けて記録する制御を行う。
【0072】
S208では、着目データのうち、S203で指定した第1の領域外の第2の領域をユーザが指定すると、システム制御部213は当該指定に対応する操作入力を受け付ける。S209でシステム制御部213は、S208で指定された着目データに係る第2の領域に対応して算出されたデフォーカス量が、指定の閾値範囲(例えば、-1Fδ乃至+1Fδ[μm])内であるか否かを判断する。第2の領域内のデフォーカス量が指定の閾値範囲内であると判断された場合、S210へ進み、指定の閾値範囲内でないと判断された場合にはS211へ進む。
【0073】
S210でシステム制御部213は、着目データに係る第2の領域と対応する静止画データに対して、S204で算出されたデフォーカス量の絶対値に基づく等級付けを行う。等級付けの結果得られた等級データは、RAWデータおよび静止画データの第2の属性領域に記録される。属性領域および等級付け処理の内容については第1実施形態と同じである。
【0074】
S210でシステム制御部213は、第2の属性領域に星2つの等級データを記録する制御を行った後、S212へ進む。またS211でシステム制御部213は、第2の属性領域に星1つの等級データを記録する制御を行った後、S212へ進む。このようにシステム制御部213は、静止画データの2つ以上の領域の焦点検出状態に基づいて静止画データを評価し、評価情報を静止画データに対応付けて記録する制御を行う。
【0075】
S212でシステム制御部213は、焦点検出を終えたRAWデータのカウンタ変数(nと記す)の値に1を加算する処理(インクリメント)を行った後、S213へ進む。S213でシステム制御部213は、焦点検出を終えたRAWデータのカウンタ変数nの値と、S201で計数されたRAWデータの個数、つまり計数値とを比較して、それらの大小関係を判断する。カウンタ変数nの値が計数値未満である場合には、未だ着目していないRAWデータに対して画像処理や焦点検出を行う必要があるので、S202に戻って処理を続行する。上述の処理が一時記録されたすべてのRAWデータに対して繰り返し実行される。一方、カウンタ変数nの値が計測値以上である場合には、撮像装置100の記録媒体133の指定フォルダ内に格納されたRAWデータの全ての読出しを終えたと判断されて、本実施形態の動作を終了する。
【0076】
本実施形態では、撮像装置の外部装置において焦点検出が行われ、焦点検出結果に基づいて等級付け処理が行われる。等級付け処理を外部装置が行うことで、撮像装置による撮影中に処理負荷を軽減するとともに、評価情報に基づいて静止画データの分類を行うことができる。実際に撮影された画像データに関し、その焦点検出状態に応じて画像を分類できるので、画像データを分類する際の作業負荷を軽減することが可能である。
【0077】
また本実施形態では、撮像装置の記録媒体と外部装置(コンピュータ)とを電気的に接続して通信可能な状態を構築する例を示した。この例に限らず、撮像装置の記録媒体からデータを読出すための読出し装置と、外部装置とを電気的に接続して通信可能な状態を構築する構成でも差し支えない。また、撮像装置の記録媒体からデータを読出すための読出し装置と、外部装置に無線通信手段を設けることで、有線通信による接続ではなく、無線通信が可能な状態を構築する構成がある。
【0078】
[第3実施形態]
図11および
図12を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。前記実施形態では、デフォーカス量を検出するために、画像データの全範囲について焦点検出が行われる。画像データの全範囲について焦点検出を行う場合、焦点検出が不要な範囲も処理の対象となるので、撮像素子106からの読出し時間や、デフォーカス量の算出時間が必要となる。そこで本実施形態では、焦点検出が必要な範囲についてのみデフォーカス情報を取得する例を説明する。
【0079】
図11および
図12は、本実施形態における撮像動作および画像の等級付け処理を説明するフローチャートである。ユーザがSW1を押下することで処理が開始され、S301へ進む。S301,S302の処理はそれぞれ、
図6のS101,S102と同様であるので説明を省略する。S302の次にS303へ進む。
【0080】
S303では、ユーザが操作スイッチ群132を操作し、取得されたRAWデータおよび静止画データにおいて、焦点が合っているか否かを判定させたい領域(特定領域)を指定する。指定された領域に応じて撮像素子106から取得される信号に基づいて焦点検出が行われ、焦点検出結果としてデフォーカス量が算出される。S304からS311の処理はそれぞれ、
図6、
図7のS103からS110の処理と同様であるので説明を省略する。S310またはS311の次にS312の処理へ進む。
【0081】
S312で制御部121は、S303にて指定された領域(特定領域)に対して、焦点検出結果として算出されたデフォーカス量が指定の閾値範囲内であるか否かを判断する。すなわち、S307で得られたRAWデータおよび静止画データが、ユーザの指定した領域に焦点の合った画像のデータであるか否かを制御部121が判断する。S312からS315の処理はそれぞれ、
図7のS112からS115の処理と同様であるので説明を省略する。
【0082】
本実施形態では、静止画撮影前にユーザが焦点検出対象としたい領域を指定することで、焦点検出が必要となる範囲についてのみデフォーカス情報を取得する処理が行われる。よって、撮像素子106からの信号の読出し時間やデフォーカス量の算出時間を短縮することが可能である。
【0083】
[第3実施形態の変形例]
第3実施形態では、撮像素子106から取得される信号に基づいて焦点検出を行い、焦点検出結果としてデフォーカス量を算出する例を示した。変形例ではToF(Time of Flight)方式により被写体までの距離情報を取得する。ToF方式では、被写体に対して投光した赤外線パルスが反射して戻ってくるまでの時間を計測することで距離情報を取得することができる。
【0084】
また変形例では、撮像素子106により取得される画像データのコントラスト情報、つまりコントラストの評価値を算出し、評価値に基づいてデフォーカス量を取得する。あるいは別の変形例ではDFD(Depth From Defocus)方式による距離マップデータからデフォーカス量を取得する。
【0085】
また第3実施形態では、例えばAF領域が、撮影画像の画角における中央部等の1カ所に固定されている。変形例では、撮影画像の画角における複数のAF領域で焦点検出を行うことが可能な構成である。
【0086】
[第4実施形態]
図13および
図14を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。前記実施形態では、AF領域と特定領域のいずれの合焦結果についても、対象領域に合焦している場合の等級を星2つとし、対象領域に合焦していない場合の等級を星1つとして等級付けを行う例を示した。しかし、被写体や構図によってユーザの要求に近い画像が異なる場合があり得る。例えば、AF領域の合焦結果に対応する等級が星2つで、かつ特定領域の合焦結果に対応する等級が星2つとなる画像を第1の画像とする。また、AF領域の合焦結果に対応する等級が星2つで、かつ特定領域の合焦結果に対応する等級が星1つとなる画像を第2の画像とする。AF領域および特定領域にてユーザの撮影したい被写体が存在し、これら2つの領域に合焦している方が望ましい場合、第1の画像が選択される。またAF領域のみにユーザの撮影したい被写体が存在しており、特定領域には合焦してないボケ画像を意図してユーザが撮影したい場合、第2の画像が選択される。このように本実施形態では、AF領域と特定領域に対して、それらの合焦結果に優先度の設定が可能な構成例を説明する。
【0087】
図13および
図14は、本実施形態における処理を説明するフローチャートである。S401からS407までの処理は第1実施形態における
図6のS101からS107と同一であるため、説明を省略する。
【0088】
S408では、S402でのAF領域とS412(
図14)で取得される特定領域における合焦結果について、ユーザが優先度を設定する操作を行う。制御部121はユーザの操作指示を受け付けて、AF領域と特定領域の優先度の割合を決定する。例えば、AF領域だけでなく、特定領域にもある程度、合焦させたい被写体が存在する場合を想定する。この場合、特定領域の合焦結果に対する優先度を相対的に高く設定する処理が行われる。反対に、特定領域の被写体に対してはボケ画像として記録したい場合を想定する。この場合、特定領域の合焦結果に対する優先度を相対的に低く設定する処理が行われる。ただし、いずれの場合についても、AF領域の合焦結果が特定領域の合焦結果よりも優先度が高いことを前提としている。S408の次に
図14のS409に進む。
【0089】
S409で制御部121は、焦点検出結果として算出されたデフォーカス量が、所定の合焦範囲(例えば、-1Fδ乃至+1Fδ[μm])内であるか否かを判断する。すなわち、S407で取得されたRAWデータおよび静止画データが、ユーザの意図した被写体に焦点の合った画像のデータであるか否かを制御部121が判断する。S402で得られたデフォーカス量が所定の合焦範囲内であると判断された場合、S410へ進み、所定の合焦範囲内でないと判断された場合には、S411へ進む。
【0090】
S410で制御部121は、S407にて取得されたRAWデータおよび静止画データに対して、デフォーカス量の絶対値に基づく等級付けを行う。等級付けの結果得られた等級データは、RAWデータおよび静止画データの第1の属性領域に記録される。
【0091】
本実施形態では等級付けの一例として、合焦状態(所定の合焦範囲内の状態)であれば星4つが設定され、非合焦での状態であれば星3つが設定される場合を示す。S410で制御部121は第1の属性領域に星4つの等級データを記録する制御を行った後、S412へ進む。またS411で制御部121は、第1の属性領域に星3つの等級データを記録する制御を行った後、S412へ進む。
【0092】
このように、本実施形態では制御部121が、取得された静止画データの焦点検出状態に基づいて静止画データを評価し、評価情報を静止画データと対応付けて記録する制御を行う。
【0093】
S412では、ユーザが操作スイッチ群132を通じて、取得されたRAWデータおよび静止画データにて焦点が合っているか否かを判定させたい領域(特定領域)を指定する。制御部121はユーザの指定操作を受け付ける。
【0094】
S413で制御部121は、S412において指定された領域に対して、S409と同様に焦点検出結果として算出されたデフォーカス量が、指定の閾値範囲内であるか否かを判断する。すなわち、S407で取得されたRAWデータおよび静止画データが、ユーザの指定した領域に焦点の合った画像のデータであるか否かを制御部121が判断する。特定領域でのデフォーカス量が指定の閾値範囲内であると判断された場合、S414へ進み、指定の閾値範囲内でないと判断された場合にはS415へ進む。
【0095】
S414、S415では、S407にて取得されたRAWデータおよび静止画データに対して、S412にてユーザが指定した領域のデフォーカス量の絶対値に基づく等級付け処理が実行される。等級付けの結果得られた等級データは、RAWデータおよび静止画データの第2の属性領域に記録される。
【0096】
S414で制御部121は第2の属性領域に星2つの等級データを記録する制御を行った後、S416へ進む。またS415で制御部121は第2の属性領域に星1つの等級データを記録する制御を行った後、S416へ進む。このように本実施形態では、制御部121が、取得された静止画データの2つ以上の領域の焦点検出状態に基づいて静止画データを評価し、評価情報を静止画データと対応付けて記録する制御を行う。
【0097】
S416で制御部121は、
図7のS115と同様にSW1、SW2の操作入力状態の判定を行う。判定条件を満たす場合、
図13のS401に戻って処理を続行し、判定条件を満たさない場合には処理を終了する。
【0098】
本実施形態によれば、主被写体とそれ以外の被写体(副被写体等)の合焦結果についてユーザの要求に近い画像の選択を容易に行うことが可能である。なお、AF領域と特定領域の合焦結果について、ユーザによる優先度の指定を可能とする様態を例示したが、この限りではない。例えばAF領域の合焦結果が特定領域の合焦結果よりも優先されるように、優先度が自動的に設定される構成でもよい。あるいは撮影モードやシーン等に応じて優先度を自動的に設定することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0099】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0100】
106 撮像素子
121 制御部
125 画像処理回路
135 AF演算回路
136 視線検出回路