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特開2022-188870エネルギーシステム運用計画作成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188870
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】エネルギーシステム運用計画作成装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20221215BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221215BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20221215BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20221215BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02J3/32
G06Q50/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097124
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】小松原 充夫
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066HA13
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】作成対象の運用計画の計画期間より長い期間を計画期間として作成された長期運用計画を考慮しつつ運用計画を作成する。
【解決手段】エネルギーシステム運用計画作成装置10は、エネルギーシステムの短期運用計画を作成する短期運用計画作成部14と、作成された短期運用計画に従って機器2の運転を制御する機器制御部12と、を有する。短期運用計画作成部14は、各種データ21~26から、最適化計算を行ってコスト及びCO排出量が最小となるエネルギーシステムのエネルギー流量を算出する最適化計算部141と、長期運用計画において短期運用計画の計画期間の期末の時点に対して設定されているエネルギー流量に対する運用計画値を、当該期末の目標値として短期運用計画を作成する設備運用計画作成部142と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーシステムが管理する機器の動作の制御に用いる運用計画値を含む運用計画を作成するエネルギーシステム運用計画作成装置において、
所定の計画期間の運用計画を作成する際、当該所定の計画期間を包含し、当該所定の計画期間より長い期間を計画期間として予め作成された長期運用計画において前記所定の計画期間の期末の時点に対して設定されている運用計画値を、当該期末の目標値として前記運用計画を作成する作成手段を有する特徴とするエネルギーシステム運用計画作成装置。
【請求項2】
前記所定の計画期間を所定の単位時間に細分化した場合、前記作成手段が作成する運用計画には、前記各単位時間に対応する運用計画値が含まれており、
前記運用計画に含まれる運用計画値のうち、前記運用計画の開始時点から所定の実行期間に含まれる運用計画値を、前記機器の動作を制御する制御手段へ送信する送信手段を有し、
前記作成手段は、前記所定の実行期間が経過すると、経過した前記所定の実行期間の終期を始期として次の所定の計画期間の運用計画を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエネルギーシステム運用計画作成装置。
【請求項3】
前記エネルギーシステムが、エネルギー需要部と、前記エネルギー需要部にエネルギーを供給するエネルギー供給部と、前記エネルギー供給部と前記エネルギー需要部との間に介在し、エネルギーの貯蔵、変換、合流あるいは分岐を行う前記機器と、を有している場合において、
前記単位時間、前記所定の計画期間、前記エネルギー需要部におけるエネルギー需要予測データ、前記エネルギー供給部におけるエネルギー供給予測データ、前記エネルギー供給部におけるエネルギー価格データ、前記エネルギー供給部におけるエネルギーのCO排出係数、前記機器の機器特性データ、及び運用計画作成時点における前記機器の状態を示すデータ、を少なくとも記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されているデータから、前記エネルギーシステムのコスト及びCO排出量を目的関数とする最適化計算を行い、前記コスト及びCO排出量が最小となる前記エネルギーシステムのエネルギー流量を算出する最適化計算手段と、
を有し、
前記作成手段は、前記最適化計算手段により算出されたエネルギー流量を運用計画値として運用計画を作成することを特徴とする請求項2に記載のエネルギーシステム運用計画作成装置。
【請求項4】
前記記憶手段には、前記目的関数に含まれ、前記期末の目標値と前記エネルギー流量との差分を評価する重み付け係数が記憶されることを特徴とする請求項3に記載のエネルギーシステム運用計画作成装置。
【請求項5】
前記機器特性データには、当該機器の部分負荷効率、最小連続稼働時間、最小連続停止時間、最低負荷率及び起動停止コストの少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項3に記載のエネルギーシステム運用計画作成装置。
【請求項6】
前記長期運用計画は、前記作成手段が運用計画を作成する処理と同様の処理により作成されることを特徴とする請求項1に記載のエネルギーシステム運用計画作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーシステム運用計画作成装置、特にコスト及びCO排出量の最小化を考慮した運用計画の作成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル、工場又は地域等におけるエネルギーシステムの運用計画を作成するに当たり、所定の制約条件のもとで、エネルギーシステムのエネルギー流量を最適化することが望まれている。また、エネルギーシステムを運用する事業者は、エネルギーシステムにおけるCO排出量やコストを抑えたいというニーズがある。
【0003】
従来において、エネルギーシステムの運用計画は、過去の実績、例えば、直近1年間の実績値を参照して翌年度の運用計画を作成するのが一般的である。
【0004】
なお、上記のようにエネルギー流量の最適化及びCOの排出量を考慮しつつ運用計画を作成し、その作成した運用計画に従ってエネルギーシステムを運用しても、様々な要因によって実績値が計画値と乖離してしまう場合がある。このような実績と計画との乖離を軽減するための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-164503号公報
【特許文献2】特開2019-33562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、運用計画は、短期的だけでなく長期的な運用計画も合わせて作成する場合がある。この場合、長期的な運用計画を遵守できるように長期的な運用計画を考慮しつつ短期的な運用計画を作成するのが好適である。
【0007】
しかしながら、従来においては、長期的な視野に立たず、上記の通り前年度等の過去の実績を参照して運用計画を作成するのが通常となっている。例えば、電力を使用する空調設備は、天候等の外的要因の影響を受けやすいが、今年度が前年度と同様の天候になるとは限らないため、過去の実績に基づいて運用計画を作成することが必ずしも適切な計画立案の方法であるとは限らない。
【0008】
また、実績と計画との乖離を軽減する際に短期的な運用計画の遵守に固執すると、長期的な運用計画に応えられない場合が発生しうる。
【0009】
本発明は、作成対象の運用計画の計画期間より長い期間を計画期間として作成された長期運用計画を考慮しつつ運用計画を作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るエネルギーシステム運用計画作成装置は、エネルギーシステムが管理する機器の動作の制御に用いる運用計画値を含む運用計画を作成するエネルギーシステム運用計画作成装置において、所定の計画期間の運用計画を作成する際、当該所定の計画期間を包含し、当該所定の計画期間より長い期間を計画期間として予め作成された長期運用計画において前記所定の計画期間の期末の時点に対して設定されている運用計画値を、当該期末の目標値として前記運用計画を作成する作成手段を有する特徴とする。
【0011】
また、前記所定の計画期間を所定の単位時間に細分化した場合、前記作成手段が作成する運用計画には、前記各単位時間に対応する運用計画値が含まれており、前記運用計画に含まれる運用計画値のうち、前記運用計画の開始時点から所定の実行期間に含まれる運用計画値を、前記機器の動作を制御する制御手段へ送信する送信手段を有し、前記作成手段は、前記所定の実行期間が経過すると、経過した前記所定の実行期間の終期を始期として次の所定の計画期間の運用計画を作成する、ことを特徴とする。
【0012】
また、前記エネルギーシステムが、エネルギー需要部と、前記エネルギー需要部にエネルギーを供給するエネルギー供給部と、前記エネルギー供給部と前記エネルギー需要部との間に介在し、エネルギーの貯蔵、変換、合流あるいは分岐を行う前記機器と、を有している場合において、前記単位時間、前記所定の計画期間、前記エネルギー需要部におけるエネルギー需要予測データ、前記エネルギー供給部におけるエネルギー供給予測データ、前記エネルギー供給部におけるエネルギー価格データ、前記エネルギー供給部におけるエネルギーのCO排出係数、前記機器の機器特性データ、及び運用計画作成時点における前記機器の状態を示すデータ、を少なくとも記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されているデータから、前記エネルギーシステムのコスト及びCO排出量を目的関数とする最適化計算を行い、前記コスト及びCO排出量が最小となる前記エネルギーシステムのエネルギー流量を算出する最適化計算手段と、を有し、前記作成手段は、前記最適化計算手段により算出されたエネルギー流量を運用計画値として運用計画を作成することを特徴とする。
【0013】
また、前記記憶手段には、前記目的関数に含まれ、前記期末の目標値と前記エネルギー流量との差分を評価する重み付け係数が記憶されることを特徴とする。
【0014】
また、前記機器特性データには、当該機器の部分負荷効率、最小連続稼働時間、最小連続停止時間、最低負荷率及び起動停止コストの少なくとも1つが含まれることを特徴とする。
【0015】
また、前記長期運用計画は、前記作成手段が運用計画を作成する処理と同様の処理により作成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作成対象の運用計画の計画期間より長い期間を計画期間として作成された運用計画を考慮しつつ運用計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るエネルギーシステム運用計画作成装置の一実施の形態を示すブロック構成図である。
図2】本実施の形態において参照するエネルギーフローモデルの一例を示す図である。
図3】本実施の形態における短期運用計画作成処理を示すフローチャートである。
図4】本実施の形態において用いる外生変数を表形式に示す図である。
図5A】本実施の形態における短期運用計画作成処理の具体例を示す図である。
図5B図5Aに続いて実施される短期運用計画作成処理の具体例を示す図である。
図6】本実施の形態において設定されている制約条件の例を示す図である。
図7】本実施の形態において用いる制約条件のうち整数の値を取る内生変数に関する整数制約の設定例を示す図である。
図8】本実施の形態における整数制約に関連する内生変数を説明するための図である。
図9】本実施の形態における機器特性データに対する制約条件で用いる外生変数を説明するための図である。
図10】本実施の形態における部分負荷効率を説明するための図である。
図11】本実施の形態における最小連続時間、最小停止時間及び最低負荷率の制約条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るエネルギーシステム運用計画作成装置の一実施の形態を示すブロック構成図である。エネルギーシステムは、ビルや工場等の施設において、電気やガス等のエネルギー資源を利用して動作する設備に対するエネルギーの供給、貯蔵、需要等を管理するシステムである。エネルギーシステムは、システム構成として、エネルギーを使用する設備等からなるエネルギー需要部と、エネルギー需要部にエネルギーを供給するエネルギー供給部と、エネルギー需要部とエネルギー供給部との間に介在し、エネルギーの貯蔵、変換、合流及び分岐を行う機器と、を有している。
【0020】
本実施の形態におけるエネルギーシステム運用計画作成装置(以下、単に「計画作成装置」という)10は、このエネルギーシステムにおける運用計画を作成するための装置、より詳細にはエネルギーシステムが管理する機器の動作の制御に用いる運用計画を作成するための装置である。なお、本実施の形態では、短期の運用計画の作成に着目して説明するが、計画作成装置10に短期的な運用計画に限らず、長期的な運用計画を作成する機能を持たせてもよい。本実施の形態では、長期運用計画作成部13を設けて、長期的な運用計画を作成する機能を持たせている。
【0021】
本実施の形態における計画作成装置10は、パーソナルコンピュータ(PC)等の従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。すなわち、計画作成装置10は、CPU、ROM、RAM、記憶手段としてのハードディスクドライブ(HDD)、通信手段としてのネットワークインタフェース、マウスやキーボード等の入力手段及びディスプレイ等の表示手段を含むユーザインタフェースを内部バスに接続して構成される。
【0022】
本実施の形態における計画作成装置10は、設備計画作成部11、機器制御部12、長期運用計画作成部13及び短期運用計画作成部14、運用計画条件21、予測データ22、市場データ23、機器特性データ24、エネルギーフローモデル25及び長期運用計画データ26をそれぞれ記憶する記憶手段と、を有している。なお、機器制御部12の内部には、運用計画データ121及び運転実績データ122を記憶する記憶手段が含まれているので、機器制御部12は、アプリケーションと記憶手段とで実現される。ただ、運用計画データ121及び運転実績データ122を機器制御部12の外部で記憶するように構成してもよい。図1に示す計画作成装置10のブロック構成は一例であって、この構成に限定する必要はない。例えば、構成要素11~14のいずれかを他の情報処理装置に実行させるように構成してもよい。また、各種データ21~26を記憶する記憶手段を統合したり、分割したり、あるいは外部にある記憶手段をネットワーク経由でアクセスするよう構成してもよい。
【0023】
設備計画作成部11は、エネルギーの供給量及び需要量の時系列データ等を入力として年間のコスト、CO排出量を最小化する最適な設備の構成、すなわち施設が保有すべき設備の構成を設備計画として作成する。機器制御部12は、短期運用計画作成部14により作成された短期の運用計画を受け取ると、その運用計画に従って機器2の運転を制御する。受け取った運用計画は、運用計画データ121として記憶手段に保存する。機器2は、施設に設置され、エネルギーが供給されることによって動作する。機器2は、機器制御部12による制御のもと運用計画に従って運転すると、その運転の実績に関するデータを機器制御部12へ直接又は間接的に送信する。機器制御部12は、機器2の運転実績を運転実績データ122として記憶手段に保存する。機器2の運転実績は、各時点における機器の状態を示すデータとなる。なお、「機器」は、前述した設備に含まれる。「設備」には、機器以外に配管等エネルギーシステムを構成する設備を含むが、本実施の形態では、機器と設備をほぼ同義に用いる。
【0024】
長期運用計画作成部13は、長期的な運用計画(以下、「長期運用計画」ともいう)を作成する。一方、短期運用計画作成部14は、短期的な運用計画を作成する。本実施の形態では、運用計画として異なる計画期間の運用計画を用いるため、相対的な表現として「短期」及び「長期」を用いる。ただ、本実施の形態において用いる長期的な運用計画の計画期間は、短期的な運用計画の計画期間を包含するものとする。長期運用計画作成部13は、例えば長期として1週間の運用計画を作成する。短期運用計画作成部14は、短期として長期より短い、例えば1日の運用計画を作成する。もちろん、それぞれの計画期間長は一例であって、この設定例に限る必要はない。
【0025】
短期運用計画作成部14は、詳細は後述するように各種データ21-26及び運転実績データ122を入力とし、所定の制約条件の下、最適化計算を行うことで最適な短期的な運用計画(以下、「短期運用計画」若しくは単に「運用計画」という)を作成し、その作成した短期運用計画を機器制御部12へ送信する。短期運用計画作成部14は、最適化計算部141、設備運用計画作成部142及びエネルギー購入計画作成部143を有している。このうち、最適化計算部141は、最適化計算手段として機能し、エネルギーシステムのコスト及びCO排出量を目的関数とする最適化計算を行い、コスト及びCO排出量が最小となるエネルギーシステムのエネルギー流量を算出する。設備運用計画作成部142は、最適化計算部141により得られた最適値に基づいて短期運用計画を作成する。また、エネルギー購入計画作成部143は、最適化計算部141により得られた最適値に基づいてエネルギーの購入計画を作成する。
【0026】
以下、本実施の形態において用いる各種データについて説明する。以下の説明では、基本的な、あるいは代表的なデータについて説明する。従って、以下の説明に含まれないデータ項目は、各データに該当しないと解釈すべきでない。
【0027】
運用計画条件21は、運用計画を作成する上で必要な基本的な設定条件である。例えば、所定の単位時間、運用計画の計画期間、重み付け係数等が含まれる。計画期間は、上記例示した1日に相当し、短期的運用計画の作成期間である。単位時間は、計画期間内を細分化して運用計画値を算出する最小単位となる期間である。例えば、計画期間(1日)に対し、単位期間が1時間と設定されている場合、短期運用計画作成部14は、1時間毎に24個の運用計画値を算出する。そして、最終の単位時間の運用計画値が当該計画期間における運用計画値であり、機器2を運転させるときの当該計画期間における期末目標値となる。なお、ここでは、短期運用計画の作成の際の運用計画条件を例にして説明したが、長期運用計画の作成の際の運用計画条件も合わせて設定される。重み付け係数は、ペナルティ係数とも呼ばれ、期末目標値と運用計画値としてのエネルギー流量との差分を評価するための係数である。重み付け係数は、後述する目的関数に含まれて利用される。
【0028】
予測データ22は、実績ではなく予測に基づくデータである。例えば、エネルギー需要部におけるエネルギー需要データ、エネルギー供給部におけるエネルギー供給予測データ等のデータが含まれる。
【0029】
市場データ23は、エネルギーシステムの外部である市場から得られるデータである。本実施の形態では、コストの計算を行うが、この計算の際に必要となるエネルギー供給部におけるエネルギー価格データ、エネルギー供給部におけるエネルギーのCO排出係数等のデータが含まれる。
【0030】
機器特性データ24は、各種機器の特定を示すデータである。機器2が供給手段、需要手段、貯蔵手段、変換手段等、また機種等によって、機器特性データ24に含まれるデータ項目は異なってくるが、例えば、部分負荷効率などの効率に関するデータ、最小連続稼働時間、最小連続停止時間など時間に関するデータ、また最低負荷率、起動停止コスト、貯蔵率、利用可能な上限と下限のプロファイル等が含まれる。
【0031】
長期運用計画データ26は、長期運用計画作成部13によって作成される長期運用計画である。例えば、長期運用計画の計画期間(例えば、上記例による1週間)の終期、つまり長期運用計画の計画期間の期末時点における運用計画値及び長期運用計画における各単位時間の運用計画値が含まれる。なお、短期運用計画と同様に、最終の単位時間の運用計画値は、長期運用計画の計画期間の期末時点における運用計画値に等しい。
【0032】
ここで、エネルギーフローモデル25について説明する。
【0033】
図2は、本実施の形態において参照するエネルギーフローモデル25の一例を示す図である。エネルギーフローモデル25は、運用計画の作成対象となるエネルギーシステムのモデルである。端的に言うと、どういう設備の構成で最適化計算を行うか、その設備の構成及び設備間のエネルギーの流れを示す情報である。つまり、エネルギーフローモデル25は、設備計画モデルに含まれている設備の接続関係等を明確にしている情報であるともいえる。例えば、工場のエネルギーシステムを想定する場合、エネルギーフローモデル25は、エネルギーの需給に関連するエネルギー需要部32と、エネルギー需要部32にエネルギーを供給するエネルギー供給部31と、エネルギーの貯蔵、変換、合流及び分岐を行う複数の機器33と、を有している。エネルギー供給部31として、図2には、太陽光発電及び系統電力が例示されている。もちろん、風力発電装置等、他の発電設備を備えてもよい。更に、これらの電力を供給する構成に限らず、再生可能エネルギー供給部、ガス供給部としての水素供給部及び都市ガス供給部、バイオマスエネルギー供給部等を備えてもよい。また、エネルギー需要部32として、電力需要部の他に、熱需要部、ガス需要部等を備えてもよい。
【0034】
また、エネルギー供給部31とエネルギー需要部32との間に介在する機器33として、図2には、電池等が例示されている。また、E1,E2は、エネルギーを分岐する機器であり、E3は、エネルギーを合流する機器である。
【0035】
ところで、本実施の形態では、エネルギーフローモデル25に含まれる「太陽光発電」、「E1」、「抑制」等、矩形で表す各構成要素を「ノード」と、矢印で表す各ノードの接続関係(ノードからの出力ともいえる)を「エッジ」と、それぞれ称することにする。図2では、各エッジにそれぞれを識別する番号1~10が付加されている。
【0036】
計画作成装置10における各構成要素11~14は、計画作成装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶手段21~26,121,122は、計画作成装置10に搭載されたHDDにて実現される。あるいは、RAM又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0037】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD-ROMやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0038】
次に、本実施の形態における動作について説明する。本実施の形態では、短期運用計画作成部14における短期運用計画の作成、特に作成されている長期運用計画を参照して短期運用計画を作成することを特徴としている。作成する運用計画に含まれる運用計画値には、各単位時間における各エッジのエネルギー流量が含まれる。
【0039】
以下、本実施の形態における短期運用計画作成処理について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。なお、ある計画期間の短期運用計画を作成するのに必要なデータは、記憶手段に既に記憶されているものとする。
【0040】
また、以降の説明では、具体例として、長期運用計画の計画期間を1週間、単位時間を1時間とする。この場合、長期運用計画作成部13は、1時間(単位時間)×1日(24時間)×1週間(7日)=各168単位時間における運用計画値を算出する。例えば、6月1日~6月7日の長期運用計画を作成する場合、エッジ毎に、6月1日の0~1時におけるエネルギー流量、6月1日の1~2時におけるエネルギー流量、そして6月7日の23~24時におけるエネルギー流量まで、各単位時間におけるエネルギー流量を算出する。そして、6月1日の0時から6月7日の24時までのエネルギー流量の総和が、当該エッジの長期運用計画値となる。
【0041】
また、短期運用計画の計画期間を1日、単位時間を1時間とする。この場合、短期運用計画作成部14は、1時間(単位時間)×1日(24時間)=各24単位時間における運用計画値を算出する。例えば、6月1日の短期運用計画を作成する場合、エッジ毎に、6月1日の0~1時におけるエネルギー流量、6月1日の1~2時におけるエネルギー流量、そして6月1日の23~24時におけるエネルギー流量まで、各単位時間におけるエネルギー流量を算出する。なお、6月1日の6時時点における運用計画値は、6月1日の0時から6時までの各単位時間のエネルギー流量の総和により算出できる。そして、6月1日の0時から6月1日の24時までのエネルギー流量の総和が、当該エッジの短期運用計画値となる。
【0042】
短期運用計画作成部14は、運用計画の作成に必要な各種データ21~26,122を記憶手段から取得する(ステップ110)。続いて、短期運用計画作成部14は、エネルギーフローモデル25を取得する(ステップ120)。エネルギーフローモデル25を取得することで、運用計画の作成の対象とするエッジを特定できる。
【0043】
続いて、短期運用計画作成部14における最適化計算部141は、制約条件の下、取得したデータに基づいてコスト及びCO排出量を最小化する運用計画を作成するための最適化計算処理を実施する(ステップ130)。なお、制約条件に関しては後述する。本実施の形態では、以下に示す目的関数を用いる。目的関数は、最適化のための評価関数であって、目的関数の算出値が最小となるよう内生変数の値を求める。数式(1)は、コストを最小化するための目的関数であり、数式(2)は、CO排出量を最小化するための目的関数である。
【数1】
【0044】
なお、数式(1)の第2項は、CO排出量の価値をコストに換算した式である。
【数2】
【0045】
図4には、目的関数及び以降に説明する制約条件で用いる外生変数が表形式にて示されている。また、数式(1)に含まれる内生変数d(i)を、以下の数式(3)で示す。
【数3】
【0046】
但し、iはエッジ、tは時間(単位時間)、x(i,t)はエッジiの単位時間tにおけるエネルギー流量である。そして、d(i)は、エッジiにおける短期運用計画の期末目標値と短期運用計画の期末の運用計画値の差分である。d(i)は、罰金係数ともいえる内生変数である。本実施の形態では、短期運用計画における期末目標値として、長期運用計画で求められた当該単位時間に対応する運用計画値を利用している。つまり、例えば、短期運用計画作成部14が計画期間(1日)として6月1日(0時~24時)の運用計画を作成する場合、6月1日を包含する長期運用計画(例えば、6月1日から6月7日までの1週間)において、短期運用計画の計画期間の期末の時点に対して設定されている運用計画値、具体的には長期運用計画に含まれている6月1日の24時に対して設定されている運用計画値を、6月1日の短期運用計画における目標値(つまり、「期末目標値」)として短期運用計画を作成する。
【0047】
ところで、論理的には、短期運用計画作成部14が算出する運用計画値が期末目標値と一致するとは限らない。つまり、期末目標値Xtgt(i)から運用計画値x(i,TCT)を減算した値(差分)は、正又は負の値となる可能性がある。差分が正数の場合、つまり期末目標値に対して運用計画値が小さいほど、本実施の形態では、大きいペナルティを与えることにしている。ペナルティ係数Kpenaは正数なので、上記差分が増えると目的関数f(x)の算出値は増えていく。
【0048】
数式(3)では、等式ではなく不等式としているが、不等式とした意図は、コスト及びCO排出量の最小化の結果として運用計画値x(i,TCT)が期末目標値Xtgt(i)を超えることは、通常はエネルギーシステムにとって無害であると推定したからである。ペナルティに加えて、運用計画値x(i,TCT)が期末目標値Xtgt(i)を超えることにボーナスを与える場合、d(i)が負の値をとることを許容する。この場合、重み付け係数は同時にボーナス係数としての意味も持つ。
【0049】
運用計画値x(i,TCT)が期末目標値Xtgt(i)を超えると、d(i)は、負の値をとる。この場合、数式(1),(2)に含まれる“+Kpenad(i)”の値が小さくなるため(Kpenaは正数)、最小化となる可能性が相対的に高くなる。仮に機器2が運用計画値x(i,TCT)を超えて運転されると、デマンドオーバーが発生しやすくなるかもしれない。しかしながら、本実施の形態においては、デマンドオーバーが発生した場合でも、コストの面からするとそれでも最小化が期待できるものとしている。
【0050】
但し、貯蔵の容量に関しては、期末に目標値とのずれがあることは、今後の運用の致命傷になるかもしれないので、必要以上の貯蔵あるいは貯蔵不足に対しては、相対的に大きなペナルティを与えるようにしてもよい。
【0051】
基本的には、運用計画値は、期末目標値に近い値とすることが望ましいが、期末目標値を厳守することがエネルギーシステムのコスト又はCO排出量を最小化とすることに相反する場合を考慮し、本実施の形態では、目的関数にペナルティを含めることによって、期末目標値を無理に厳守させる運用計画が作成されることを回避できるようにした。
【0052】
単位時間が1時間の場合、1日(つまり、24時間)の計画期間において、各エッジにつき24個のエネルギー流量が算出される。図2に示すようにエッジの数が10の場合、24×10=240のエネルギー流量x(i,t)が算出されるが、このエネルギー流量x(i,t)と差分d(i)を数式(1)に代入することによって最小となる総コスト及びそのときのエネルギー流量が最適値として求まる。また、数式(2)に代入することによって最小となるCO排出量が最適値として求まる。
【0053】
以上のようにして最適化計算により最小となる総コスト、エネルギー流量及びCO排出量が求まると、設備運用計画作成部142は、最適化計算部141により得られた最適値に基づいて短期運用計画を作成する(ステップ140)。また、エネルギー購入計画作成部143は、最適化計算部141により得られた最適値に基づいてエネルギーの購入計画を作成する(ステップ150)。このエネルギーの購入計画を作成に関しては、本実施の形態の特徴的な処理ではなく、従前と同様の手法にて作成すればよい。
【0054】
続いて、短期運用計画作成部14は、作成した運用計画を機器制御部12へ送信する(ステップ160)。より詳細には、作成した計画期間分の運用計画のうち現時点から1ステップ分の運用計画値のみを送信するが、この点については、短期運用計画の作成と共に追って詳述する。
【0055】
機器制御部12は、短期運用計画作成部14から送信されてきた運用計画を運用計画データ121として記憶し、そして計画された時間になると、その運用計画に従って機器2の運転を制御する。機器2は、動作することによってエネルギーを消費するが、このエネルギーの消費量等に関する情報は、実績情報として機器制御部12に収集される。機器制御部12は、収集した実績データを運転実績データ122として記憶する。
【0056】
そして、短期運用計画作成部14は、運用計画に従って機器2が実際に動作することにより得られる1ステップ分の運転実績データ122をフィードバック値として機器制御部12から取得する(ステップ170)。この取得した運転実績データ122の一部又は全部は、次のステップの運用計画の作成の際に参照される。
【0057】
短期運用計画作成部14は、特に上位システムからの終了指示等がない限り(ステップ180でN)、前述した処理を繰り返し実行することによって計画期間(ここでは、1日分)の運用計画を作成する。そして、短期運用計画作成部14は、終了指示等があると(ステップ180でY)、処理を終了する。
【0058】
ここで、短期運用計画作成部14における短期運用計画の作成処理の詳細について、図5A及び図5Bを用いて説明する。ここで説明する処理は、図3に示すステップ140,160,170の処理に対応する。
【0059】
図5Aにおいて、1つの矩形は、単位時間に相当する。図5Aでは、上記例と同様に、計画期間は1日であり、単位時間は1時間とする、なお、ここでは、一単位時間を「コマ」とも称する。そして、図5Aには、「ステップ」という概念が示されている。「ステップ」は、1又は連続した複数の単位時間により構成される実行期間であり、機器2に運用計画を実行させる実行期間であり、換言すると機器制御部12へ送信する運用計画値データ群の単位である。
【0060】
前述したように、短期運用計画作成部14は、設定されている計画期間、すなわち上記例でいう1日分の運用計画を作成する。単位時間をtで表すと1日は24コマ(図5Aにおいては、t=1~24のコマ)で構成されるが、短期運用計画作成部14は、単位時間毎、つまり24コマ分の運用計画値を求める。そして、t=1からt=n(n=1~24)までの各運用計画値の累積値がt=nの時点の運用計画値となる。そして、最終のコマ(t=24)の運用計画値が当該計画期間における運用計画値となる。換言すると、計画期間における運用計画値を各単位時間に振り分けることによって単位時間個々の運用計画値が決まる。
【0061】
このように、短期運用計画作成部14は、計画期間の運用計画値、より詳細には、前述したように単位時間個々の運用計画値(24コマ分の運用計画値)を作成する。なお、前述したように、t=24のときの運用計画値が当該計画期間における運用計画値となる。
【0062】
そして、短期運用計画作成部14は、ステップ140では上記のようにして計画期間(t=1~24)における各単位時間の運用計画値を作成するが、ステップ160では作成した24コマ分の運用計画値のうち、運用計画の開始時点(t=1)から所定の実行期間、つまり1ステップ分(図5Aにおいては、t=1~6を含むStep=k)に含まれる運用計画値のみを機器制御部12へ渡すことになる。つまり、短期運用計画作成部14は、1日(t=1~24の24コマ)分の運用計画を作成しても、作成した運用計画の開始時点から最近の1ステップ(Step=k)に含まれるt=1~6以外のt=7~24のコマに対応する運用計画値を機器制御部12へ送信しない。なお、図5A図5Bでは、送信対象とするコマをドットパターンにて表示している。また、運転実績データ122を取得した単位時間に対応するコマをグレー表示している。
【0063】
機器制御部12は、短期運用計画作成部14から送信されてきたStep=kの運用計画に従って機器2の運転を制御する。その後、短期運用計画作成部14は、送信したStep=k(6コマ分)の運用計画に対応する運転実績データ122を機器制御部12から取得することになる。図5Aでは、短期運用計画作成部14は、Step=k-1に含まれる単位時間に対応する運転実績データ122をすでに取得していることを示している。
【0064】
図5Bは、Step=kに対応する運転実績データ122を取得した後の各コマの状態を示している。図5Bでは、更にStep=kに対応するコマをグレー表示していることから、短期運用計画作成部14は、当該コマ(t=1~6)の運転実績データ122を取得したことを示している。
【0065】
続いて、短期運用計画作成部14は、図3を用いて説明したように各種データを取得し、最適化計算を実施して運用計画を作成するが(ステップ110~140)、このとき、短期運用計画作成部14は、次の1日分を計画期間として運用計画を作成する。すなわち、図5Aにおいて、6月1日1~24時の運用計画を作成したとすると、図5Bに示す次の処理では、翌日である6月2日1~24時ではなく、6月1日7時~6月2日6時という1日分の運用計画を作成することになる。図を用いて説明すると、図5Aにおいてt=7に対応するコマを、次の処理ではt=1にシフトして、このコマを先頭とする1日分の運用計画を作成する。すなわち、短期運用計画作成部14は、直前の運用計画作成時のt=7~30のコマを、今回の運用計画作成時では、t=1~24のコマとして、1日分の短期運用計画を作成する。
【0066】
そして、短期運用計画作成部14は、上記のようにして計画期間(t=1~24)の運用計画を作成するが、ステップ160では算出した24コマ分の運用計画値のうち、現時点に最も近い実行間隔のコマ数分、すなわち図5Bにおいては、Step=k+1に対応する1ステップ分(6コマ分(t=1~6))の運用計画値のみを機器制御部12へ送信することになる。
【0067】
前述したように、本実施の形態においては、短期運用計画を作成するとき、長期運用計画における運用計画値を期末目標値として利用する。例えば、図5Aでは、長期運用計画における6月1日24時に対応するコマの運用計画値を期末目標値として短期運用計画を作成する。これに対し、図5Bでは、長期運用計画における6月2日6時に対応するコマの運用計画値を期末目標値として短期運用計画を作成することになる。
【0068】
ところで、本実施の形態における短期運用計画作成部14は、従来と同様に機器2からのフィードバックされる運転実績データ122を参照して運用計画を作成する。ただ、参照するのは、基本的には作成する計画期間の直前の1コマの運転実績データ122のみ、すなわち現在の機器2の状態を示すデータのみを参照するだけでよい。もちろん、制約条件によっては、直前のステップ全体若しくは直前の1日分の運転実績データ122を参照する必要が生じる場合があるので、その場合には、必要なコマに対応する運転実績データ122を参照する。
【0069】
このように、本実施の形態においては、現在の機器2の状態と長期運用計画を考慮しつつ短期運用計画を作成することができる。従来においては、過去の実績、例えば前年度の実績を参照して運用計画を作成していた。そうすると、今年度に、前年度と異なる機器2の運転環境、例えば天候やエネルギーの価格設定に大きな変化があったとしても、作成する運用計画は、前年度の実績の影響を多大に受けることになる。
【0070】
一方、本実施の形態においては、過去の実績を、現在の機器2の状態を得る程度に参照するようにし、その一方で長期運用計画を考慮しつつ短期運用計画を作成するようにしたので、エネルギーシステムの運用の最適化の精度を向上させることができる。すなわち、仮に実績値が目標値から乖離したことによって、目標値の補正が必要になった場合でも、長期的な観点から短期運用計画を見直すことができる。図5A,Bを用いて説明したように、本実施の形態においては、実行期間(ステップ)における運用が終了する度に短期運用計画を見直している。具体的には、短期運用計画の期末目標値として長期運用計画において設定された各コマの運用計画値を設定するようにしたので、長期運用計画から逸脱しないように短期運用計画を作成することができる。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態によれば、長期を見据えた短期の運用計画を作成することができる。また、実績値が目標値から乖離したとしても、本実施の形態においては、実行期間経過後に、運用計画の見直しをその都度実行して、補正しているということに等しい。
【0072】
ここで、最適値を算出する際の制約条件について説明する。制約条件は、短期運用計画作成部14に設定されていることを想定しているが、データベース化して保持するようにしてもよい。
【0073】
図6には、本実施の形態において設定する制約条件の一例が示されている。制約条件は、基本的には、数式にて表現できる。例えば、制約条件には、状況によって取り得る値(外的変数)が変わる条件が含まれる(数式(4)~(8))。また、変数の上限又は下限の少なくとも一方が制約される上下限制約(数式(9)~(10))、等式制約(数式(11)~(14))、不等式制約(数式(15)~(19))などがある。上下限制約は、上限と下限が同値であれば、等式制約として機能する。等式制約には、例えばエネルギーの合成、分岐、貯蔵におけるエネルギー量保存の制約と、機器効率の制約が該当する。貯蔵設備の入力及び出力の効率の計算も機器効率を用いる。なお、数式における添え字のinはあるノードへの入力、outはあるノードからの出力、strは貯蔵設備を示す。不等式制約には、貯蔵時間率、貯蔵率、計画期間のコスト、CO上限の制約が含まれる。
【0074】
図7は、本実施の形態において用いる制約条件のうち整数の値を取る内生変数に関する制約(以下、「整数制約」)の設定例を示す図である。また、図8は、整数制約に関連する内生変数を説明するための図である。なお、図7において、“t”は単位時間(コマ)を示す変数である。図7は、特にt=2~5で、ある機器2が連続して稼働しているときの状態、t=6~8で、ある機器2が連続して停止しているときの状態において、各内生変数がとりうる値を示している。
【0075】
ところで、短期運用計画作成部14は、短期運用計画を作成する際に機器特性データ24を参照するが、ここで機器特性データ24に含まれる部分負荷効率、最小連続時間、最小停止時間、最低負荷率及び起動停止コストについて説明する。
【0076】
まず、図9は、機器特性データ24に対する制約条件で用いる外生変数を説明するための図である。図10は、部分負荷効率を説明するための図である。部分負荷効率は、入力と出力の関係を示す曲線を区分線形近似して、混合整数線形計画として数式(20)のように定式化する。n個に分割した区間kの入力範囲をLple(k)としたとき、入力と出力の関係は、数式(20)のように定式化できる。
【数4】
【0077】
図11に、最小連続稼働時間、最小連続停止時間及び最低負荷率の制約条件を示す数式がそれぞれ示されている。最小連続稼働時間及び最小連続停止時間において、u,v,wは数式(21),(22)の関係にある。このとき、最小連続稼働時間及び最小連続停止時間に関する制約条件は、数式(23),(24)のようになる。また、最低負荷率の制約条件は、数式(25),(26)のようになる。また、起動停止コストを含む目的関数は、以下の数式(27)に示す。
【数5】
【0078】
コストを最小化するための目的関数である数式(1)と比較すると、数式(27)には、第3項が追加されていることがわかる。この第3項は、機器の起動及び停止により発生するコストを数式化したものである。つまり、機器が起動したり、停止したりすることによってかかるコストを数式(1)に付加している。
【0079】
本実施の形態においては、以上のようにして短期運用計画を作成することができる。ところで、上記説明では、短期運用計画の作成に着目して説明した。ただ、本実施の形態においては、長期運用計画についても各種データ21~25,122を参照して短期運用計画と同様の処理にて作成することができる。
【0080】
例えば、上記例示したように、長期運用計画の計画期間を1週間とした場合、更に長期である1ヶ月を計画期間とする長期運用計画で作成した運用計画に含まれる運用計画値を期末目標値として長期運用計画を作成すればよい。ただ、長期運用計画作成部13が作成する運用計画は、機器制御部12が直接参照しないので、実行期間(ステップ)という概念を使用せずに、作成した1週間分の運用計画をそのまま長期運用計画データ26として登録してよい。
【0081】
なお、1ヶ月の長期運用計画は、更に長期の、例えば四半期の長期運用計画で作成された運用計画値を期末目標値として用いればよい。但し、更に長期の運用計画が作成されていない場合、最終的な運用計画値、つまり期末目標値は、人手等によって設定される必要がある。
【0082】
上記説明では、短期運用計画及び長期運用計画の単位時間が共に1時間の場合を例にして説明したが、単位時間は、1時間に設定する必要はなく、また、短期運用計画と長期運用計画で一致させる必要はない。ただ、短期運用計画のある計画期間における期末における目標値として、その期末に対応する長期運用計画で設定した運用計画値を用いるようにしているので、換言すると、短期運用計画の期末時点に対応する運用計画値が長期運用計画で設定されている必要があるので、短期運用計画の単位時間を長期運用計画の単位時間の整数倍とする必要はある。基本的には、本実施の形態のように、各運用計画の単位時間を一致させるのが好適である。
【0083】
また、上記説明では、短期運用計画における実行期間(ステップ)として6コマに設定されている場合を例にして説明した。ただ、実行期間のコマ数は一例であって、上記例に限る必要はない。例えば、1コマに設定することで、単位時間(上記例でいう1時間)毎に短期運用計画を見直すことができる。また、例えば、実行期間を24コマに設定することで、1日毎に短期運用計画を見直すことができる。
【符号の説明】
【0084】
2,33 機器、10 エネルギーシステム運用計画作成装置、11 設備計画作成部、12 機器制御部、13 長期運用計画作成部、14 短期運用計画作成部、21 運用計画条件、22 予測データ、23 市場データ、24 機器特性データ、25 エネルギーフローモデル、26 長期運用計画データ、31 エネルギー供給部、32 エネルギー需要部、121 運用計画データ、122 運転実績データ、141 最適化計算部、142 設備運用計画作成部、143 エネルギー購入計画作成部。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11