(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188875
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ボイラ燃料の予熱装置及び予熱方法
(51)【国際特許分類】
F23K 5/20 20060101AFI20221215BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20221215BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20221215BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20221215BHJP
F28F 19/00 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
F23K5/20
F27D17/00 101A
F27D21/00 G
F27D19/00 Z
F28F19/00 511D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097134
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】久保 智敬
【テーマコード(参考)】
3K068
4K056
【Fターム(参考)】
3K068AA01
3K068AB19
3K068EA03
4K056AA01
4K056AA02
4K056AA16
4K056DA02
4K056DA13
4K056DA22
4K056DA39
4K056FA06
4K056FA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボイラ燃料の予熱装置および予熱方法を提供する。
【解決手段】高温流体であるSOx含有ボイラ燃焼排ガスと低温流体であるボイラ燃料とを向流型熱交換器で熱交換してボイラ燃料の加温を行うに際し、高温流体の流路となる熱交換室2を高温領域21と低温領域22とからなる2つの独立した領域に分割した熱交換室とする。そして、分割した高温領域の上流側に高温流体を供給するとともに、高温領域壁面の所定の位置に高温流体の一部を抜き出す分岐配管3を配設し、抜き出した高温流体の一部を低温領域の上流側に流入させる。これにより、SOx含有ボイラ燃焼排ガス(高温流体)の温度を、低温領域の出口側においても、安定して当該高温流体の酸露点超えとすることが可能となり、熱交換伝熱チューブ表面への硫酸の結露を防止して、熱交換伝熱チューブの腐食および熱効率の低下を防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温流体であるSOx含有ボイラ燃焼排ガスと低温流体であるボイラ燃料とを熱交換室内で向流させて前記ボイラ燃料の加温を行うボイラ燃料の予熱装置であって、
前記高温流体の流路となる前記熱交換室を、高温領域と低温領域とからなる2つの独立した領域に分割し、
前記低温流体が流れる熱交換伝熱チューブを、前記熱交換室内で前記低温流体が前記高温流体と向流となるように配設するとともに、
前記高温領域の上流側に前記高温流体を供給し、
前記高温領域に供給された前記高温流体の一部を、該高温領域壁面の所定の位置に開口した分岐口を介して抜き出し、前記低温領域の上流側に流入させる分岐配管を配設してなることを特徴とするボイラ燃料の予熱装置。
【請求項2】
前記分岐配管には、前記分岐口の出口側に流量調整弁を配設することを特徴とする請求項1に記載のボイラ燃料の予熱装置。
【請求項3】
前記分岐配管は、前記高温領域壁面の複数の位置から分岐されてなることを特徴とする請求項2に記載のボイラ燃料の予熱装置。
【請求項4】
前記2つの独立した領域のうち少なくとも前記低温領域の出口には、前記高温流体の出口温度を計測する温度計が配設され、
前記温度計には、前記流量調整弁を作動させる流量調整手段が接続されてなることを特徴とする請求項2に記載のボイラ燃料の予熱装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のボイラ燃料の予熱装置を用いたボイラ燃料の予熱方法であって、
高温流体であるSOx含有ボイラ燃焼排ガスと低温流体であるボイラ燃料とを熱交換室内で向流させて前記ボイラ燃料の加温を行うに当たり、
前記熱交換室を高温領域と低温領域からなる2つの独立した領域に分割し、
前記高温流体を前記高温領域に供給し、前記低温流体を、前記低温流体が前記高温流体と向流となるように配設された熱交換伝熱チューブに供給するとともに、
前記高温領域から、供給された前記高温流体の一部を分岐し、前記低温領域に流入させることを特徴とするボイラ燃料の予熱方法。
【請求項6】
前記高温領域および前記低温領域の出口側における前記高温流体の温度が、当該高温流体の酸露点超えとなるように、前記低温領域に流入させる前記高温流体の一部の流量を調整することを特徴とする請求項5に記載のボイラ燃料の予熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ燃料の予熱装置及び予熱方法に係り、特に、予熱用熱源として、硫黄分を含むボイラ燃焼排ガスを用いるボイラ燃料の予熱装置および予熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、製銑・製鋼、コークス等の生産工程で、不可避的に副生ガス(高炉ガス、コークス炉ガス、転炉ガス等)が発生する。これらの副生ガスは、例えば、
図3に示すように、ボイラ燃料として蒸気を発生させるために利用され、さらに、発生させた蒸気により、蒸気タービンを付設した発電設備で発電を行うなど、エネルギー、資源の効率的な活用が行われている。
【0003】
また、ボイラ等の各種燃焼システムで排出される燃焼排ガスの顕熱を、熱交換器、例えば
図3に示す空気予熱器、Bガスヒータ等で回収し、熱効率の改善を図っている。しかし、燃焼排ガス中に硫黄分(SOx)が含まれていると、熱交換により、燃焼排ガスの温度が硫酸露点(以下、酸露点ともいう)以下の低温に冷却された場合には、熱交換器の伝熱チューブの表面に、SOxが硫酸として結露(凝縮)し、伝熱チューブの腐食を招くという問題が生じる。
【0004】
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、熱交換器の硫酸露点腐食防止方法が記載されている。特許文献1に記載された硫酸露点腐食防止方法では、無水硫酸を含有する排ガスダクトに熱交換器を設けて、高温側ガスの熱を低温側ガスに移送するに当たり、熱交換器内の高温側ガス部内に、該高温側ガス部の上流側と下流側とを熱的に連絡できるように、上流側と下流側にそれぞれ熱交パネル(ヒートパイプ)を内設して、下流側の排ガスの温度を調節するとしている。これにより、上流側の排ガスの熱を利用して、下流側の排ガスの温度を上昇させ、硫酸の結露(凝縮)を防止できるとしている。
【0005】
また、他の酸露点腐食防止対策として、低温流体を、熱交換器に流入する手前で別の熱源を用いて予熱し、低温流体の流入温度を上昇させ、熱交換器の伝熱チューブの表面温度を高めて酸露点凝縮を回避する方法が提案されている。例えば、特許文献2には、SOx含有燃焼排ガスの熱交換方法が記載されている。特許文献2に記載された技術は、例えばスクラバーの減温減湿部からの排水を熱源として、予熱用の熱交換器に供給する燃焼空気を昇温し、熱交換器からの燃焼排ガスの出口ガス温度を、燃焼空気の昇温を行わない場合よりも低下させるようにした熱交換方法である。これにより、熱交換器中の燃焼排ガスが硫酸露点温度以下となることを回避しつつ、燃費を改善できるとしている。燃焼空気を昇温しない場合には、燃焼ガスの出口ガス温度を300℃程度までしか降下させることができないが、燃焼空気を昇温する場合は、270℃またはその前後まで降下させても、伝熱チュ―ブ内で硫酸露点以下の温度となる箇所が生じることはない、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61-217699号公報
【特許文献2】特開2011-220545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、熱交換器の高温側ガス部内に熱交パネルを設置する必要があり、また、特許文献2に記載された技術では、燃焼用空気の予熱のための熱交換器の前段に昇温装置を設置する必要があり、設備が大型化し、また運転も複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、熱交換器における伝熱チューブの腐食を防止でき、かつ熱効率の低下を防止できる、SOx含有のボイラ燃焼排ガスを熱源とした、ボイラ燃料の予熱装置および予熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した目的を達成するため、ボイラ燃料の予熱装置における向流型熱交換器内の高温流体(ボイラ燃焼排ガス)の温度に影響する各種要因について鋭意検討した。その結果、高温流体であるボイラ燃焼排ガスの流路となる熱交換室(シェル)を、高温領域および低温領域からなる2つの独立した領域(熱交換室)に分割することに思い至った。そして、分割した高温領域には、高温流体であるボイラ燃焼排ガスを供給し、分割した他の領域である低温領域には、高温領域から、高温流体の一部(以下、分岐高温流体ともいう)を分岐、流入させることに想到した。これにより、2つの独立した領域からなる熱交換室のいずれにおいても、高温流体の出口温度を、SOxが含有ボイラ燃焼排ガスである当該高温流体の硫酸露点超えの温度となるように、容易に調整することができ、低温流体を流す熱交換伝導チューブ表面への硫酸の結露(凝縮)を防止することができることを知見した。
【0010】
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成したものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
[1]高温流体であるSOx含有ボイラ燃焼排ガスと低温流体であるボイラ燃料とを熱交換室内で向流させて前記ボイラ燃料の加温を行うボイラ燃料の予熱装置であって、前記高温流体の流路となる前記熱交換室を高温領域と低温領域とからなる2つの独立した領域に分割し、前記低温流体が流れる熱交換伝熱チューブを、前記熱交換室内で前記低温流体が前記高温流体と向流となるように配設するとともに、前記高温領域の上流側に前記高温流体を供給し、前記高温領域に供給された前記高温流体の一部を、該高温領域壁面の所定の位置に開口した分岐口を介して抜き出し、前記低温領域の上流側に流入させる分岐配管を配設してなることを特徴とするボイラ燃料の予熱装置。
[2]前記分岐配管には、前記分岐口の出口側に流量調整弁を配設することを特徴とする[1]に記載のボイラ燃料の予熱装置。
[3]前記分岐配管は、前記高温領域壁面の複数の位置から分岐されてなることを特徴とする[2]に記載のボイラ燃料の予熱装置。
[4]前記2つの独立した領域のうち少なくとも前記低温領域の出口には、前記高温流体の出口温度を計測する温度計が配設され、前記温度計には、前記流量調整弁を作動させる流量調整手段が接続されてなることを特徴とする[2]に記載のボイラ燃料の予熱装置。
[5][1]ないし[4]のいずれかに記載のボイラ燃料の予熱装置を用いたボイラ燃料の予熱方法であって、高温流体であるSOx含有ボイラ燃焼排ガスと低温流体であるボイラ燃料とを熱交換室内で向流させて前記ボイラ燃料の加温を行うに当たり、前記熱交換室を高温領域と低温領域からなる2つの独立した領域に分割し、前記高温流体を前記高温領域に供給し、前記低温流体を、前記低温流体が前記高温流体と向流となるように配設された熱交換伝熱チューブに供給するとともに、前記高温領域から、供給された前記高温流体の一部を分岐し、前記低温領域に流入させることを特徴とするボイラ燃料の予熱方法。
[6]前記高温領域および前記低温領域の出口側における前記高温流体の温度が、当該高温流体の酸露点超えとなるように、前記低温領域に流入させる前記高温流体の一部の流量を調整することを特徴とする[5]に記載のボイラ燃料の予熱方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボイラ燃料の予熱装置として使用する熱交換器において、高温流体の出口温度を、SOx含有燃焼排ガスである当該高温流体の硫酸露点超えの温度に容易に調整することができ、低温流体を流す熱交換伝熱チューブ表面への硫酸凝縮を防止できるとともに、熱交換伝熱チューブ表面へ析出物が付着しないことから、熱交換効率の低下を抑制でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、一部の熱交換室を経由させて、適正温度に調整した高温流体を低温領域に流入させるため、低温領域における熱交換の効率が向上するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明予熱装置の概略を模式的に示す説明図である。
【
図2】本発明予熱装置の他の一例の概略を模式的に示す説明図である。
【
図3】製鉄所発電プラントにおけるボイラ周辺の機器配置の一例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明ボイラ燃料の予熱装置では、SOx含有燃焼排ガスを高温流体とし、燃料を低温流体として、向流型熱交換器を利用して、高温流体である燃焼排ガスの顕熱を回収し、低温流体である燃料(ボイラ燃料)を加温する。
【0014】
燃料としては、製鉄所の副生ガスが利用でき、高炉ガス(Bガス)、コークス炉ガス(Cガス)、転炉ガス(LDガス)等を利用することが好ましい。本発明の燃料予熱方法を全ての燃料ガスに適用する必要はないが、とくに高炉ガスは発熱量が小さいため、本発明を適用することが好ましい。これら燃料をボイラで燃焼したのちの燃焼排ガス(ボイラ燃焼排ガス)は、硫黄分(SOx)を含有する。なお、ボイラ燃焼排ガスの温度は300~700℃の範囲の温度であるが、
図3に示すように燃焼排ガスを燃焼空気の予熱に使用した後に本発明の燃料予熱を行う場合は、300~500℃程度である。一方、ボイラ燃料の入側温度は外気温と同じ程度である。
【0015】
なお、本発明ボイラ燃料の予熱装置で利用する向流型熱交換器としては、常用のシェル・アンド・チューブ型の熱交換器とすることが好ましい。常用のシェル・アンド・チューブ型の熱交換器では、低温流体を流す熱交換伝導チューブは複数本、低温流体が高温流体の流路である熱交換室に対し向流方向となるように配設する。
【0016】
本発明ボイラ燃料の予熱装置10では、
図1に示すように、高温流体1の流路(ダクト)である熱交換室2を、2つの独立した領域21、22に分割する。2つの独立した領域の一方を高温領域21と称し、他を低温領域22と称する。そして、高温領域21の上流側に、上記した高温流体1を供給する。なお、高温領域21と低温領域22との境界は、耐熱パッキンでシールして、各領域を密封する。
【0017】
そして、本発明ボイラ燃料の予熱装置10では、高温領域21と低温領域22との間に分岐配管3を配設する。上記した高温領域21の壁面の所定の位置に、分岐口(例えば、分岐口31、32)を設ける。そして、これら分岐口それぞれから、高温流体1の一部を抜き出し(分岐し)、分岐配管3を介して、低温領域22の上流側に、高温流体の一部12として、流入する。高温領域21から抜き出した分岐高温流体(高温流体の一部)12の温度は、当該高温流体の酸露点に比べて高い温度を有しており、分岐高温流体12が流入された低温領域22では、流入させた分岐高温流体12を熱源として、流れる流体(燃焼排ガス)の温度を、酸露点以下に低下しないように調整することが可能になる。
【0018】
低温領域22に流入させる分岐高温流体12としては、高温領域21に供給するボイラ燃焼排ガスと同じものを直接流入させてもよいが、その場合は、低温流体に比べて流体温度が高すぎ、熱交換の効率が低下する。そこで、本発明では、熱交換室の高温領域21で熱交換を行って、流体温度が適正な温度に低下した高温流体を抜き出し、分岐高温流体12として低温領域22に流入させる。
【0019】
本発明では、ボイラの負荷を監視し、ボイラ燃料とボイラ燃焼排ガスの量に応じて、2つの独立した領域に分割された熱交換室に流入させる高温流体(ボイラ燃焼排ガス)量を適切に配分する。これにより、熱交換器の全領域にわたって、高温流体(ボイラ燃焼排ガス)温度を酸露点温度超えの温度に保持できるようになる。
【0020】
なお、分岐口は、高温流体1の流路に沿って、高温領域21の壁面の、少なくとも1箇所に設ける。
図1では、2箇所(分岐口31、32)に設けた例を示しているが、これに限定されないことは言うまでもない。分岐口を、高温領域21の流路に沿った複数箇所に設けることにより、流体温度が種々異なる高温流体1を抜き出すことができ、低温領域に流入する高温流体の一部12の温度調整が容易となる。なお、高温領域21から抜き出した高温流体の一部12は、200~300℃程度の流体温度を有することが好ましい。
【0021】
また、本発明ボイラ燃料の予熱装置10では、高温領域21、低温領域22のそれぞれの出口に、流体(燃焼排ガス)の出側温度を測定する温度計211、221を配設することが好ましい。本発明では、温度計211、221で測定された流体(ボイラ燃焼排ガス)の出側温度に基づき、高温流体(ボイラ燃焼排ガス)の温度が、当該ボイラ燃焼排ガスの酸露点以下に低下しないように、高温領域21から低温領域22に流入させる高温流体の一部12の流量を調整することが好ましい。
【0022】
そのため、分岐口31、32それぞれに対応して、流量調整弁311、321を配設し、温度計211、221で測定された流体(ボイラ燃焼排ガス)の出側温度に対応して、調整手段33を介して流入量を調整することが好ましい。
【0023】
また、高温領域21、低温領域22のそれぞれの出口(出側)には、排出された高温流体(ボイラ燃焼排ガス)中の無水硫酸が(SOx)濃度を測定するセンサー(濃度計)212、222を配設することが、当該ボイラ燃焼排ガスの酸露点を把握するうえで、好ましい。
【0024】
またさらに、本発明ボイラ燃料の予熱装置10では、熱交換室2を流路とする高温流体1と向流となるように、低温流体4を流す熱交換伝熱チューブ5を配設する。
図1に示すように、低温流体4が、熱交換室2の低温領域22から高温領域21へとこの順に通過するように、配設する。なお、模式的に示した
図1では、熱交換伝熱チューブ5を1本のみに省略して示しているが、実際には低温流体4の流路として、熱交換器の容量に応じて多数本の熱交換伝熱チューブ5を用いることは言うまでもない。
【0025】
また、本発明予熱装置で使用される熱交換伝熱チューブ5は、JIS G 3461に規定されるボイラ、熱交換器用炭素鋼鋼管(STB340等)、JIS G 3461に規定されるボイラ、熱交換器用合金鋼鋼管(STBA12等)など、常用のチューブがいずれも適用できる。
【0026】
また、熱交換伝熱チューブ5の表面での硫酸結露(凝縮)を監視するうえでは、高温領域21の出口近傍の熱交換伝熱チューブ5の表面温度を測定する温度計213、および低温領域22の出口近傍の熱交換伝熱チューブ5の表面温度を測定する温度計223、をそれぞれ設けることが好ましい。
【0027】
なお、本発明では、熱交換室2の分割は、上記した2つの独立した領域、高温領域21および低温領域22のみに限定されない。燃焼排ガスの温度と量に応じて、低温流体である燃料の温度を所望の予熱温度まで加温することが許容されれば、熱交換室(シェル)を、高温領域21および低温領域22に加えて、例えば
図2に示すように、中温領域23を設けて、3つの独立した領域に分割してもよい。この場合、高温領域21の分岐口31、32から分岐し(抜き出し)た分岐高温流体12、13を、分岐配管3を介して、低温領域22および中温領域23に流入させることが好ましい。
【0028】
また、本発明は、上記した構成のボイラ燃料の予熱装置10を利用して、高温流体1であるSOx含有ボイラ燃焼排ガスと低温流体4であるボイラ燃料とを熱交換室内で向流させて、ボイラ燃料を加温するボイラ燃料の予熱方法である。
【0029】
本発明のボイラ燃料の予熱方法では、高温流体1であるSOx含有ボイラ燃焼排ガスを熱交換室の高温領域21に供給するとともに、低温領域22に、高温領域21から分岐高温流体12を分岐、流入させる。これにより、低温領域の高温流体の温度が、当該高温流体の酸露点以下の温度とならないように、調整することができる。なお、本発明では、熱交換室の各領域の出口に配設した温度計211、221により、各領域における高温流体の出側温度を測定し、得られた出側温度に応じて、当該高温流体の酸露点超えとなるように、低温領域22に流入させる分岐高温流体12の流量を調整する。流量の調整は、得られた出側温度を調整手段33に入力し、分岐口31、32の出側に配設した流量調整弁311、321を作動させて、調整することが好ましい。
【0030】
なお、抜き出す分岐高温流体(ボイラ燃焼排ガス)12の量を、流量調整弁で調整することに代えて、高温流体の抜き出し位置を、分岐口31から、例えば分岐口32に代えることにより、抜き出す高温流体の温度を変化でき、同等の効果を得ることもできる。
【0031】
なお、高温流体の酸露点は、主として、硫黄分含有量に応じて変化するため、高温流体の硫黄分含有量を常時測定して、当該高温流体の酸露点を把握することが好ましい。ボイラ燃焼排ガスでは通常、含有する硫黄分はSO2で0.00001~0.001ppm程度であり、酸露点は90~130℃の範囲である。このため、低温流体が流れる熱交換伝熱チューブ表面の硫酸結露を防止する観点からは、熱交換室の各領域における高温流体の温度を酸露点超えの180℃以上の温度に調整することが好ましい。
【実施例0032】
図1に示す本発明ボイラ燃料の予熱装置10を利用して、ボイラ燃料の予熱を行った。低温流体(ボイラ燃料)4として、温度40℃の高炉ガス(Bガス;流量:34万Nm
3/h)を熱交換伝熱チューブ5に供給した。なお、熱交換伝熱チューブ5の材質はSTB350であった。高温流体(ボイラ燃焼排ガス)1として、温度350℃のボイラ燃焼排ガス(流量:82万kg/h)を高温領域21に供給した。高温領域21の流路に沿った壁面の所定の位置に配設された分岐口31から、高温流体の一部を抜き出し、分岐配管3を介して低温領域22の上流側に流入させた。なお、分岐口31から抜き出した分岐高温流体12の温度は、300℃であった。操業中、低温領域22の出口側に設置した温度計221で測定した高温流体(ボイラ燃焼排ガス)の出側温度が180℃以上となるように流量調整弁311を作動させて抜き出す分岐高温流体12の流量を調整した。
【0033】
このような条件で熱交換を行った結果、低温流体(ボイラ燃料)は270℃に加温された。また、上記した高温流体の一部を流入させた低温領域22の高温流体(ボイラ燃焼排ガス)の出側温度は、当該ボイラ燃焼排ガスの酸露点超えの200℃であった。
【0034】
また、このような条件でボイラの運転を1年間実施したのち、熱交換器の点検を行ったところ、熱交換伝熱チューブの酸腐食は見られなかった。