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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188877
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】時計部品、時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/22 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
G04B37/22 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097137
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】澤井 丈徳
(57)【要約】
【課題】使用に伴い、程よい使用感のある外観、または、アンティーク風な外観に変化する時計部品を提供すること。
【解決手段】時計部品は、基材と、前記基材の上に設けられた第1層と、前記第1層の上に設けられた第2層とを備え、前記第2層は、前記第1層よりも硬度が低い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上に設けられた第1層と、
前記第1層の上に設けられた第2層とを備え、
前記第2層は、前記第1層よりも硬度が低い、
時計部品。
【請求項2】
前記第2層のビッカース硬度が1400以上1800以下である、
請求項1に記載の時計部品。
【請求項3】
X線光電子分光分析において、
前記第2層のN1sスペクトルのピーク値が、N-Oスペクトルのピーク値以下である、
請求項1または2に記載の時計部品。
【請求項4】
前記第1層は、窒化膜、または、炭窒化膜であり、
前記第2層は、酸化膜である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計部品を備える、
時計。
【請求項6】
前記時計部品として、胴、裏蓋の少なくとも一つを有し、
さらに、リュウズを含む所定部品を備え、
前記所定部品には、前記第2層が設けられていない、
請求項5に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計部品、および、当該時計部品を備えた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計の外装部品には、豊かな装飾性や、使用に伴う傷のつき難さなどが求められていた。例えば、特許文献1には、基材の表面に黒色硬質皮膜を形成した装飾品が開示されている。当該文献によれば、当該被膜を設けることにより、装飾性を損なうことなく、使用に伴う傷などの外観品質低下を抑制できるとしている。また、装飾品の一例として、時計が挙げられている。
【0003】
他方、使い込むにつれて色味や質感が変わる使用感のある外観や、アンティーク風の外観などを嗜好するニーズもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-53365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、傷つき難く新品の状態が持続するため、使用に伴う外観変化を楽しむことは困難であった。つまり、使用に伴い、程よい使用感のある外観、または、アンティーク風な外観に変化する時計部品が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る時計部品は、基材と、前記基材の上に設けられた第1層と、前記第1層の上に設けられた第2層とを備え、前記第2層は、前記第1層よりも硬度が低い。
【0007】
本願に係る時計は、上記時計部品を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る時計の平面図。
図2】胴の断面図。
図3】表面処理の流れを示すフローチャート図。
図4】第2層の表面における元素組成及び化学結合状態を示す光電子スペクトル図。
図5】研磨による胴の表面変化を示す写真図。
図6】胴を構成する基材、第1層、第2層の組合せを示す一覧表。
図7】異なる構成の組合せを示す一覧表。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
***時計の概要***
図1は、本実施形態に係る時計の正面から見た平面図である。
本実施形態の時計100は、ストップウォッチ機能を備えたアナログ式の腕時計である。
【0010】
時計100は、胴20、文字板8、リュウズ30、ボタン31、ボタン32、風防ガラス40などから構成されている。なお、胴20の背面には、裏蓋が設けられているが図示を省略している。
時計部品としての胴20は、ケースであり、好適例ではチタンから構成されている。また、胴20に後述の表面処理を施してあるため、時計100の使用に伴い、程よい使用感のある外観に変化してゆく。詳細は後述する。なお、チタンに限定するものではなく、質感が良く、硬質な材料であれば良く、例えば、ステンレスなどの金属や、セラミックスであっても良い。
【0011】
文字板8には、時針2、分針3、クロノグラフ秒針4、24時間針5、クロノグラフ分針6、秒針7などが設けられている。
時針2、分針3、クロノグラフ秒針4は、円形をなした文字板8の中央に配置されている。24時間針5は、文字板8の3時方向に配置された小文字板の中心に設けられる。クロノグラフ分針6は、文字板8の6時方向に配置された小文字板の中心に設けられる。秒針7は、文字板8の9時方向に配置された小文字板の中心に設けられ、秒を指示する。
【0012】
リュウズ30は、胴20における3時側に設けられた龍頭であり、胴20と同様な材料から構成される。好適例ではチタンから構成される。
ボタン31は、胴20の2時方向に設けられた操作用の押しボタンであり、1押しするとクロノグラフが開始し、もう1押しするとクロノグラフが停止する。クロノグラフが開始すると、クロノグラフ秒針4、クロノグラフ分針6、24時間針5が、それぞれ経過時間を表示する。ボタン31の材質は、胴20と同様な材料から構成される。好適例ではチタンから構成される。
【0013】
ボタン31は、胴20の4時方向に設けられた操作用の押しボタンであり、クロノグラフをリセットする機能が割り当てられている。クロノグラフ計時後に、ボタン31を押すと、クロノグラフ秒針4、クロノグラフ分針6、24時間針5が、リセットされて12時位置に戻る。ボタン32の材質は、ボタン31と同じである。
風防ガラス40は、透明なガラスから構成された風防ガラスである。
【0014】
***胴の表面処理方法***
図2は、図1のb-b断面における断面図である。図3は、胴の表面処理方法の流れを示すフローチャート図である。
ここでは、胴20の断面構成、および、表面処理方法について図2図3を用いて説明する。
【0015】
図2に示すように、胴20は、基材10の表面に、第1層11と、第2層12との2つの層を積層した構成となっている。換言すれば、胴20は、基材10と、基材10の上に設けられた第1層11と、第1層11の上に設けられた第2層12とを備える。
ここで、第2層12は、第1層11よりも硬度が低い膜で構成されている。好適例では、チタンからなる基材10の上に、窒化チタン(TiN)膜からなる第1層11を形成し、第1層11の上に酸化チタン(TiO2)膜からなる第2層12を形成する。
【0016】
続いて、図3に沿って具体的な表面処理方法を説明する。
ステップS1では、基材10を準備する。好適例では、材料のチタンを胴の形状に加工した胴20を準備する。
【0017】
ステップS2では、基材10の表面に第1層11を形成する。詳しくは、基材10を反応室に入れ、加熱した状態で窒素ガスを供給し、基材10の表面に窒化チタン膜を堆積する。なお、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法に限定するものではなく、窒化チタン膜が形成できれば良く、例えば、プラズマCVD法を用いても良い。
【0018】
ステップS3では、第1層11の上に第2層12を形成する。詳しくは、第1層11が設けられた基材10を、溶液中に浸漬させる。好適例では、溶液として過酸化水素水(H22)を用いる。溶液温度は約40℃とし、浸漬時間は30分以上とする。
ここでは、窒化チタン膜からなる第1層11と、溶液の過酸化水素水とが反応し、窒化チタン膜から窒素が引き抜かれる。詳しくは、以下の反応式(1)の通りである。
【0019】
TiN+H22=TiO+NOx+H2O……式(1)
これにより、第1層11の上に、酸化チタン膜からなる第2層12が形成される。
そして、上記工程により、図2に示す、基材10の表面に、窒化チタン膜からなる第1層11と、酸化チタン膜からなる第2層12とを備えた胴20が形成される。
【0020】
***酸化処理の好適条件***
図4は、走査型X線光電子分光分析装置を用いて測定した、第2層の表面における元素組成及び化学結合状態を示す光電子スペクトル図である。図4では、横軸は測定電子の原子核に対する結合エネルギー値(eV)を取り、縦軸は放出光電子強度(c/s)を取っている。なお、走査型X線光電子分光分析装置による測定条件は次の通りである。
光電子分光分析装置の型番:PHI X-tool(アルバック・ファイ株式会社製)
X線源:(Mgkα)15.0kV26.7mA(400W)
検出深さ:10nm(検出器取込角度45°)
また、前処理として被測定物(胴)をアセトン溶剤中に浸漬し、超音波洗浄機を用いて38kHzで5分間洗浄した後、上記光電子分光分析装置にて測定した。
【0021】
図4において、グラフ70は、ステップS3の溶液浸漬前における窒化チタン膜からなる第1層11での測定結果を示している。グラフ70に示すように、初期の窒化チタン膜においては、401eV付近で約125c/sの1つ目のスペクトルピークがあり、397eV付近で約275c/sの2つ目のスペクトルピークが観察される。
ここで、1つ目のスペクトルピークはN-Oのピーク値であり、2つ目のスペクトルピークはN1sのピーク値である。なお、図4では、N-Oを表す結合エネルギー値を線分82、N1sを表す結合エネルギー値を線分81で示している。また、N-Oのピーク値を線分95で示す。
【0022】
グラフ71は、ステップS3の溶液浸漬工程で30分間浸漬した後における第2層12の酸化チタン膜での測定結果を示している。グラフ71に示すように、401eV付近の1つ目のスペクトルピークはグラフ70と略一致しているが、397eV付近の2つ目のスペクトルピークはグラフ70のピーク値から大きく減少していることが解る。詳しくは、グラフ71のN1sのピーク値は、N-Oのピーク値を示す線分95よりも低く、半分以下に小さくなっている。これは、第2層12の酸化が進行し酸化膜となっていることを示す。換言すれば、X線光電子分光分析において、第2層12のN1sスペクトルのピーク値が、N-Oスペクトルのピーク値以下となっている。
【0023】
グラフ72は、ステップS3の溶液浸漬工程における浸漬時間を60分とした際の第2層12の酸化チタン膜での測定結果を示している。同様に、グラフ73は浸漬時間を180分とし、グラフ74は浸漬時間を240分としたときの測定結果を示している。
グラフ72では、N1sのピーク値がグラフ71よりも若干大きくなっているが、全体の傾向は、グラフ71と同じ傾向であり誤差の範疇と認識される。
グラフ73では、N1sのピーク値がグラフ71よりも小さくなっている。その他の傾向は、グラフ71と同様である。
グラフ74は、グラフ73と同じ傾向であり、両者は略重なっている。また、図示は省略しているが、浸漬時間を480分とした測定も行っており、グラフ74と同じ傾向であることが確認されている。
【0024】
上記の通り、ステップS3の溶液浸漬工程で30分間以上浸漬することにより、酸化チタン膜からなる第2層12が形成されることが解る。なお、浸漬後30分位で気泡が多数発生し、60分経過すると第1層11の窒化チタン膜による金属光沢が梨地状の外観に変化する。その後、梨地化が進行し、240分経過後にはくすんだ梨地状の外観となる。
【0025】
***硬度の好適例***
前述したように、第2層12は、第1層11よりも硬度が低くなっている。換言すれば、第2層12は、下地の第1層11よりも柔らかい被膜である。
ここでは、好適例における基材10、第1層11、第2層12の硬度について説明する。なお、硬度は、ビッカース硬度(HV)を用いる。
【0026】
まず、基材10を構成するチタンの硬度は、約130HVである。なお、チタン合金を用いた場合は、約310HVとなる。
次いで、第1層11の窒化チタン膜の硬度は、約2200HVである。
そして、第2層12の酸化チタン膜の硬度は、約1000HVである。
【0027】
図5は、研磨による胴の表面変化を示す写真である。図5は、図1の胴20における上部のバンドとの接合部であるかんの拡大写真である。
図5において、左側のかん21は、初期状態の第2層12のままであり、前述したように、梨地状の外観となっている。
これに対して、右側のかん22は、研磨剤で研磨することにより、下地の第1層11が露出した状態となっている。第1層11が露出することで、かん22は金属光沢が表出している。
【0028】
ここで、研磨剤は、硬度が1400HV以上1800HV以下のアルミナを研磨粒子として含有した物を使用した。
前述の第1層11、第2層12の硬度との関係性は、下記の式(2)となる。
【0029】
ビッカース硬度:第1層(TiN)>研磨剤>第2層(TiO)……式(2)
なお、研磨剤の硬度は、時計100を日常使いする中で想定される硬度である。
つまり、第2層12の硬度が1400HV以上1800HV以下であれば、日常使いの中で、徐々に削られることが想定される。
【0030】
***変形例***
図6は、胴を構成する基材、第1層、第2層の組合せを示す一覧表である。
上記では、好適例として、図6の表85の組合せNo1に示すように、基材10がチタンで、第1層11を窒化チタン膜、第2層12を酸化チタン膜として説明したが、この構成に限定するものではなく、第2層12が第1層11よりも硬度が低い組合せであれば良い。
【0031】
例えば、表85の組合せNo2のように、基材10がチタンで、第1層11を炭窒化チタン(TiCN)、第2層12を酸化チタン(TiO2)としても良い。この場合、ステップS2の第1層11の形成工程では、窒素ガスに加えて、メタン(CH4)ガスを供給し、基材10の表面に炭窒化チタン膜を堆積する。その他の工程は、組合せNo1と同じである。この構成であっても、第2層12が、下地の第1層11よりも柔らかい被膜構成となるため、組合せNo1と同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
また、基材10は、チタンに限定するものではなく、質感が良く、硬質な材料であれば良く、金属や、セラミックスであっても良い。
例えば、表85の組合せNo3のように、基材10がタンタルで、第1層11を窒化タンタル(TaN)、第2層12を酸化タンタル(Ta25)としても良い。または、表85の組合せNo4のように、基材10がジルコニアで、第1層11を窒化ジルコニウム(ZrN)、第2層12を酸化ジルコニウム(ZrO2)としても良い。これらの製造方法は、組合せNo1と同じである。これらの構成であっても、第2層12が、下地の第1層11よりも柔らかい被膜構成となるため、組合せNo1と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
このように、基材10の材質に拘らず、第1層11は、窒化膜、または、炭窒化膜であり、第2層12が酸化膜となる構成であれば良い。
【0034】
以上述べた通り、本実施形態の胴20、および、時計100によれば、以下の効果を得ることができる。
時計部品としての胴20は、基材10と、基材10の上に設けられた第1層11と、第1層11の上に設けられた第2層12とを備え、第2層12は、第1層11よりも硬度が低い。
【0035】
これによれば、使用に伴い、硬度が低い第2層12が部分的に傷ついたり、剥がれることにより、使用に伴う外観変化を楽しむことができる。特に、下地の第1層11が部分的に露出した場合は、より豊かな外観変化を楽しむことができる。
従って、使用に伴い、程よい使用感のある外観、または、アンティーク風な外観に変化する胴20、および、胴20を備えた時計100を提供することができる。
【0036】
また、第2層12のビッカース硬度が1400以上1800以下である。
これによれば、日常使いの中で、第2層12が徐々に削られるため、使用に伴う外観変化を楽しむことができる。
【0037】
また、X線光電子分光分析において、第2層12のN1sスペクトルのピーク値が、N-Oスペクトルのピーク値以下である。
これによれば、第1層11よりも硬度が低い第2層12を確実に形成することができる。
【0038】
また、第1層11は、窒化膜、または、炭窒化膜であり、第2層12は酸化膜である。
これによれば、表層の第2層12が下地の第1層11よりも柔らかい被膜構成とすることができる。
【0039】
実施形態2
***表面処理の異なる態様***
図7は、本実施形態に係る胴を構成する基材、第1層、第2層の組合せを示す一覧表であり、図6に対応している。
【0040】
実施形態1では、溶液を用いた酸化により第2層12を形成していたが、この方法に限定するものではなく、第1層11よりも硬度が低い第2層12を形成可能な方法であれば良い。以下、実施形態1と同じ構成部位には、同一の付番を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
例えば、図7の表86の組合せNo11のように、基材10がチタンで、第1層11を酸化チタン(TiO2)、第2層12をチタンとしても良い。この場合、第1層11の酸化チタンは、熱CVD法、または、過酸化水素水溶液への浸漬により形成する。そして、第2層12のチタンは、蒸着法を用いて形成する。蒸着法は、物理蒸着法、化学蒸着法のいずれでも良い。
【0042】
または、表86の組合せNo12のように、基材10がチタンで、第1層11を窒化チタン、第2層12をチタンとしても良い。この場合も、第2層12のチタンは、蒸着法を用いて形成する。
または、表86の組合せNo13のように、基材10がチタンで、第1層11を炭窒化チタン、第2層12をチタンとしても良い。この場合も、第2層12のチタンは、蒸着法を用いて形成する。
【0043】
または、表86の組合せNo14のように、基材10がジルコニアで、第1層11を酸化ジルコニウム、第2層12をジルコニアとしても良い。この場合も、第2層12のジルコニアは、蒸着法を用いて形成する。
または、表86の組合せNo15のように、基材10がジルコニアで、第1層11を窒化ジルコニウム、第2層12をジルコニアとしても良い。この場合も、第2層12のジルコニアは、蒸着法を用いて形成する。
【0044】
または、表86の組合せNo16のように、基材10がタンタルで、第1層11を酸化タンタル、第2層12をタンタルとしても良い。この場合も、第2層12のタンタルは、蒸着法を用いて形成する。
または、表86の組合せNo17のように、基材10がタンタルで、第1層11を窒化タンタル、第2層12をタンタルとしても良い。この場合も、第2層12のタンタルは、蒸着法を用いて形成する。
【0045】
これらの構成であっても、第2層12が、下地の第1層11よりも柔らかい被膜構成となるため、組合せNo1と同様の作用効果を得ることができる。
また、基材10としては、上記の他に、タングステン、パラジウム、マグネシウム、アルミニウム、プラチナ、金、銀、銅を用いても良い。また、第2層12としては、上記の他に、金、銀、銅、マグネシウム、アルミニウムなどを用いても良い。
【0046】
図1に戻る。
また、上記では、好適例における時計部品として胴20について説明したが、これに限定するものではなく、時計100のその他の外装部品に適用しても良い。外装部品としては、例えば、裏蓋や、バンドなどに上記表面処理を施しても良く、胴20と同様の作用効果を得ることができる。
また、リュウズ30や、ボタン31、ボタン32も時計部品であるが、機能に係る所定部品であるため、敢えて上記表面処理を施さなくても良い。詳しくは、リュウズ30や、ボタン31、ボタン32などの所定部品では、第1層11までの処理に留めて、第2層12は設けなくても良い。また、胴20においても、ネジ穴、ボタン穴や、防水パッキンと接触する部分など、機能を有する部分については、マスキング処理をして、第2層12を設けないことが好ましい。
【0047】
以上述べた通り、本実施形態によれば、実施形態1での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
図7の表86の組合せNo11~17の構成であっても、第2層12が、下地の第1層11よりも柔らかい被膜構成となるため、組合せNo1と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
また、時計100は、時計部品として、胴20、裏蓋の少なくとも一つを有し、さらに、リュウズ30を含む所定部品を備え、所定部品には、第2層12が設けられていない。これによれば、機能に係る所定部品においては、初期の外観を維持させることができる。
【符号の説明】
【0049】
2…時針、3…分針、7…秒針、8…文字板、10…基材、11…第1層、12…第2層、20…胴、30…リュウズ、31…ボタン、32…ボタン、40…風防ガラス、70…グラフ、71…グラフ、72…グラフ、73…グラフ、74…グラフ、81…線分、82…線分、85…表、86…表、95…線分、100…時計。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7