(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188884
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】収納ケース
(51)【国際特許分類】
A47B 67/04 20060101AFI20221215BHJP
A47B 88/906 20170101ALI20221215BHJP
【FI】
A47B67/04 501Z
A47B88/906
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097144
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 由文
【テーマコード(参考)】
3B160
【Fターム(参考)】
3B160AA08
3B160AB32
3B160CA02
3B160CA12
3B160DA52
3B160DA55
3B160DA58
3B160EA07
3B160EA12
3B160EA33
3B160EA37
(57)【要約】
【課題】
本願発明は、落下等による引出しの破損を防止する収納ケースを提供する。
【解決手段】
引出し100とケース本体200とを備えた収納ケース300であって、ケース本体200の底部210の上面には、引出し100をスライドさせるためのレール凸部270が設けられ、引出し100の底部110の下面111には、引出し100をケース本体200に収納した状態で、レール凸部270に対向する受け部180が設けられ、受け部180には、破損防止用突起190が形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出しとケース本体とを備えた収納ケースであって、
前記ケース本体の底部の上面には、前記引出しをスライドさせるためのレール凸部が設けられ、
前記引出しの底部の下面には、前記引出しを前記ケース本体に収納した状態で、前記レール凸部に対向する受け部が設けられ、
前記受け部には、破損防止用突起が形成されていることを特徴とする収納ケース。
【請求項2】
前記引出しの底部の下面と前記受け部との接続部分の曲率半径を、他の部分よりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の収納ケース。
【請求項3】
前記破損防止用突起が形成されている箇所において、前記引出しの底部の上面に凹部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の収納ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家庭用の衣類等を収納する収納ケースが知られているが、例えば、特許文献1に開示されている収納ケースは、衣類等の収容物を入れる引出しと、引出しを収納するケース本体から構成されており、引出しは、ケース本体の底面に設けられたレール凸部に沿って、スライドできるようになっている。ただ、引出しがケース本体に収納された状態で、収納ケースの輸送時の落下等により衝撃が加わると、引出しとケース本体が衝突して、引出しが破損するおそれがあった。また、ケース本体のレール凸部と引出しとの接触箇所周辺には、衝撃による応力が集中して、引出しが破損するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記問題に鑑み、本願発明は、落下等による引出しの破損を防止する収納ケースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願発明の請求項1に係る収納ケースは、引出しとケース本体とを備えた収納ケースであって、前記ケース本体の底部の上面には、前記引出しをスライドさせるためのレール凸部が設けられ、前記引出しの底部の下面には、前記引出しを前記ケース本体に収納した状態で、前記レール凸部に対向する受け部が設けられ、前記受け部には、破損防止用突起が形成されていることを特徴とする。
【0006】
上記特徴によれば、受け部には破損防止用突起が形成されて、受け部全体の強度が高くなっている。そのため、受け部に応力が集中しても受け部の損傷を防止でき、その結果、収納ケースが落下しても引出しの破損を効果的に防止できるのである。
【0007】
更に、本願発明の請求項2に係る収納ケースは、前記引出しの底部の下面と前記受け部との接続部分の曲率半径を、他の部分よりも大きくしたことを特徴とする。
【0008】
上記特徴によれば、受け部を底部に、曲率半径の大きな緩やかな曲面により連結することで、収納ケースが落下した際の衝撃による応力が、接続部分に局所的に集中せず、引出しの破損をより効果的に防止できる。
【0009】
更に、本願発明の請求項3に係る収納ケースは、前記破損防止用突起が形成されている箇所において、前記引出しの底部の上面に凹部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記特徴によれば、引出しを金型によって射出成形する際、凹部によって、破損防止用突起周辺の成形時の変形を防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の収納ケースによれば、落下等による引出しの破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願発明に係る収納ケースにおいて、ケース本体から引出しを引き出した状態の全体斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1のA―A断面図、(b)はA´―A´端面図である。
【
図5】引出しの底面図であって、受け部周辺を拡大した底面図である。
【
図6】(a)は、
図5のB―B端面図、(b)は、
図5のC―C端面図、(c)は、
図5のD―D端面図である。
【
図7】引出しをケース本体に収納した状態の引出しの底面図であって、受け部周辺を拡大した底面図である。
【符号の説明】
【0013】
100 引出し
110 底部
111 下面
180 受け部
190 破損防止用突起
200 ケース本体
210 底部
270 レール凸部
300 収納ケース
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本明細書において、「上方」とは引き出しの開口を上にして水平面上に載置した際に、鉛直方向における上方に向く方向のことであり、「下方」とは鉛直方向における下方に向く方向のことである。また、「前側」とは引き出しの持ち手が設けられた側で、「後側」とは前側の反対側のことである。
【0015】
図1に本願発明に係る収納ケース300を、
図2に収納ケース300のケース本体200を示す。なお、
図1は、ケース本体200から引出し100を引き出した状態の収納ケース300の全体斜視図、
図2(a)は、
図1のA―A断面図、
図2(b)はA´―A´端面図である。
【0016】
図1に示すように、収納ケース300は、衣類等の収納物を入れる引出し100と、引出し100をスライド可能に収納するケース本体200とを備えている。また、
図1及び
図2に示すように、ケース本体200は、全体が合成樹脂製の略直方体形状をしており、底部210と、底部210の両側から立ち上がる側部220と、後部240と、天部230とを備え、前側が開口250となっている。そして、ケース本体200の内部は、開口250と連通した収納空間260となっており、引出し100を開口250から収納空間260へ収納できるように構成されている。なお、引出し100をケース本体200に収納しやすいように、引出し100のケース本体200に収納される部分の外周方向の大きさは、ケース本体200の開口250よりも小さくなっている。また、引出し100をケース本体200に収納した際、開口250の外周251の口枠の外面に、引出し100が当接しないように構成されている。
【0017】
さらに、ケース本体200の底部210の上面には、上方に突出したレール凸部270が設けられている。具体的には、
図2に示すように、レール凸部270は、上壁273と内壁274と外壁275を備えた、断面略コ字形状をしており、底部210に一体に形成されている。レール凸部270の外壁275側には、後述する引出し100のレール案内部170を配置できるようになっている。そして、レール凸部270は、先端271から末端272にかけて直線状に延出しており、引出し100を前後方向にスライドするように、引出し100の一部を案内するものである。なお、レール凸部270は、底部210に一体に形成されているが、これに限定されず、底部210と別体として形成されたレール凸部270を、底部210に取り付けてもよい。また、開口250の外周251の外端部分の曲率半径は大きくしてあるので、引出し100を開口250から引き出す又は引出し100を開口250へ収納する際に、利用者が開口250の外周251の外端部分に指等をあてて怪我をすることを防止できる。また、天部230の外周231の外端部分の曲率半径は大きくしてあるので、収納ケース300の運搬や保管時に、天部230の外周231の外端部分が他の部分にあたっても、天部230が損傷を受けにくい。
【0018】
次に、
図3から
図6を参照して、引出し100の構成について詳しく説明する。なお、
図3は、引出し100の全体斜視図、
図4は、引出し100の底面図、
図5は、引出し100の底面図であって、受け部180周辺を拡大した底面図、
図6(a)は、
図5のB―B端面図、
図6(b)は、
図5のC―C端面図、
図6(c)は、
図5のD―D端面図である。
【0019】
図3に示すように、引出し100は、全体が合成樹脂製の略直方体形状をしており、底部110と、底部110の両側から立ち上がる側部120と、前部130と、後部140とを備え、上側が開口150となっている。そして、引出し100の内部は、収納部160となっており、衣類等の収納物を開口150から収納部160へ収納できるように構成されている。また、前部130の上端側には、指を掛けられるように突出した持ち手131が設けられている。
【0020】
図4及び
図5に示すように、引出し100の底部110の下面111には、下方に突出したレール案内部170が設けられている。レール案内部170は、先端171から末端172にかけて直線状に延出しており、引出し100が前後方向にスライドする際に、ケース本体200のレール凸部270に沿うように摺動する部分である。そのため、引出し100のレール案内部170とケース本体200のレール凸部270によって、引出し100は前後方向にスムーズにスライドできるのである。
【0021】
次に、
図5及び
図6に示すように、引出し100の底部110の下面111において、レール案内部170の先端171側には、受け部180が設けられている。この受け部180は、レール凸部270の先端271側に対向し、レール凸部270に当接可能に構成されており、引出し100をケース本体200に収容した際に、引出し100を前後方向に位置決めしている。そして、この受け部180は、底部110の下面111から下方へ突出しており、レール凸部270の先端271側に対向する本体部181と、本体部181から前方へ延出する連結部182を備える。本体部181は、レール案内部170の先端171に連結しており、受け部180の剛性を高めている。さらに、連結部182は、前部130側の補強リブ132に連結しており、受け部180の剛性を高めている。なお、補強リブ132は、底部110の下面111から下方へ突出しており、前部130に沿って直線状に延出している。
【0022】
また、受け部180の本体部181には、破損防止用突起190が形成されている。破損防止用突起190は、底部110の下面111から下方へ突出しており、後述するレール凸部270の先端271側に面する対向面183の反対側の反対面184に連結されている。また、破損防止用突起190は、補強リブ132とは連結されておらず、離間した状態となっているので、破損防止用突起190と補強リブ132の間には空間191が存在している。なお、受け部180は、本体部181と連結部182を備えた略L字形状をしているが、これに限定されず、受け部180は、レール凸部270に対向する構成であれば、任意の形状であってもよい。また、破損防止用突起190は、補強リブ132とは連結されておらず、離間した状態となっているが、これに限定されず、破損防止用突起190は、補強リブ132に連結されていてもよい。破損防止用突起190が補強リブ132に連結されると、剛性はより強くなるが、応力が補強リブ132に伝わりやすくなるため、補強リブ132が破損する可能性もある。さらに、破損防止用突起190は、受け部180に一つ設けられているが、これに限定されず、破損防止用突起190を受け部180に二つ以上設けてもよい。
【0023】
また、
図5に示すように、受け部180の外側には、底部110の延長線上に張出部151が設けられている。この張出部151は、受け部180の前側(つまり、前部130側)と横側(つまり、側部120側)に張り出しており、前側には補強リブ132が設けられている。また、受け部180の横側には、下方へ突出した補強リブ152が形成されており、補強リブ132と補強リブ152は、張出部151の外側を囲むように連結されている。そして、張出部151は、受け部180の外側へ張り出しているので、収納ケース300が落下した際の衝撃から受け部180周辺を保護している。
【0024】
また、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、底部110の下面111と受け部180の接続部分113の曲率半径R1は、他の部分の曲率半径よりも大きくなっており、受け部180は底部110に緩やかな曲面により連結されている。このように、受け部180を底部110に緩やかな曲面により連結することで、収納ケース300が落下した際の衝撃による応力が、接続部分113に局所的に集中せず、引出し100の破損をより効果的に防止できる。また、
図6(a)に示すように、底部110の下面111と受け部180の接続部分113の境界には、直線部116が設けられている。さらに、接続部分113の曲率半径R1の曲面118の先端側には、傾斜面119が設けられている。そのため、後述するように、レール凸部270の先端271が引出し100の受け部180に当接した際に、当接による応力が、受け部180の先端方向(傾斜面119側)へ効果的に分散するため、受け部180が破損しにくい。また、レール凸部270の先端271が、曲面118から傾斜面119に沿って案内されて、受け部180の先端方向(傾斜面119側)へ逃げることができる。その結果、当接による応力が、受け部180の先端方向(傾斜面119側)へ効果的に分散するため、受け部180が破損しにくい。なお、他の部分の曲率半径とは、受け部180周辺において、底部110の下面111から下方へ突出している部分と下面111との連結箇所の曲率半径のことで、例えば、破損防止用突起190と底部110の下面111との連結箇所の曲率半径R2や、補強リブ132と底部110の下面111との連結箇所の曲率半径R3を意味している。なお、受け部180周辺の曲率半径R1は、補強リブ132周辺の曲率半径R3や、後述するレール案内部170周辺の曲率半径R4よりも大きくなっている(曲率半径R1>曲率半径R3、曲率半径R1>曲率半径R4)。
【0025】
また、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、底部110の厚みは、厚さT1となっており、受け部180に隣接する箇所の厚みは、厚さT2となっている。そして、厚さT2は厚さT1よりも肉厚になっており、底部110において、受け部180と連結している箇所を局所的に肉厚にすることで、収納ケース300が落下した際の外部からの衝撃によって、受け部180の根元付近から損傷することを防止している。また、
図6(b)に示すように、破損防止用突起190と連結する箇所の底部110の厚さT3も、厚さT1より肉厚になっており、収納ケース300が落下した際の外部からの衝撃によって、破損防止用突起190の根元付近から損傷することを防止している。さらに、受け部180及び破損防止用突起190に隣接する張出部151の厚さT4は、厚さT1より肉厚になっており、収納ケース300が落下した際の外部からの衝撃によって、張出部151が損傷することを防止している。なお、受け部180に隣接する箇所の厚みT2と、破損防止用突起190と連結する箇所の厚さT3を、張出部151の厚さT4と同じ厚さにして(つまり、厚さT4=厚さT2=厚さT3)、受け部180の周辺の底部110全体を、一定の厚さT4とし、底部110の厚さT1よりも肉厚にしてもよい。
【0026】
また、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、破損防止用突起190が形成されている箇所において、底部110の上面112には凹部114が設けられている。引出し100は、引出し100の上側及び下側に配置される金型によって射出成形されており、凹部114を設けることで、破損防止用突起190周辺の成形時の変形を防止できる。また、受け部180が形成されている箇所において、底部110の上面112にも凹部115が設けられているので、受け部180周辺の成形時の変形を防止できる。
【0027】
また、
図6(c)に示すように、レール案内部170と底部110との接続部分117の曲率半径R4は、他の部分の曲率半径よりも大きくなっており、レール案内部170は底部110に緩やかな曲面により連結されている。レール案内部170は、引出し100のスライド時に、ケース本体200のレール凸部270に当接して摺動するため、引出し100のスライド時の応力がかかる部分となる。そのため、レール案内部170を底部110に緩やかな曲面により連結することで、引出し100のスライド時の応力が接続部分117に局所的に集中せず、引出し100の破損をより効果的に防止できる。同様に、収納ケース300が落下した際の衝撃が加わっても、応力が接続部分117に局所的に集中せず、引出し100の破損をより効果的に防止できる。
【0028】
また、レール案内部170と連結する箇所の厚さT5も、厚さT1より肉厚になっており、引出し100のスライド時の応力によって、レール案内部170の根元付近から損傷することを防止している。同様に、収納ケース300が落下した際の衝撃が加わっても、レール案内部170の根元付近から損傷することを防止している。
【0029】
次に、
図7を参照して、引出し100をケース本体200に収納した状態について詳しく説明する。なお、
図7は、引出し100をケース本体200に収納した状態の引出し100の底面図であって、受け部180周辺を拡大した底面図である。また、ケース本体200のレール凸部270は仮想線で示してある。
【0030】
図7に示すように、引出し100をケース本体200に収納した状態では、レール凸部270の先端271側が、引出し100の受け部180の本体部181に当接する、又は、受け部180の本体部181に近接している。そして、この状態で、収納ケース300が落下した際の衝撃が加わると、レール凸部270の先端271が引出し100の受け部180の本体部181に強く衝突して、受け部180に応力が集中する。しかしながら、受け部180には破損防止用突起190が形成されて、受け部180全体の強度が高くなっている。そのため、受け部180に応力が集中しても受け部180の損傷を防止でき、その結果、収納ケース300が落下しても引出し100の破損を効果的に防止できるのである。
【0031】
また、受け部180の一方の端部はレール案内部170の先端171と連結され、受け部180の他方の端部は連結部182を介して補強リブ132と連結されている。そのため、収納ケース300が落下した際の応力が受け部180に加わっても、受け部180は、両側の端部が他の部分に連結されて補強されているので、破損しにくい。その一方で、受け部180の両側の端部の間の中間部分は、破損防止用突起190によって補強されているが、破損防止用突起190は他の部分(例えば、補強リブ132)とは連結されておらず、破損防止用突起190に対向する側には、空間191が存在している。そのため、収納ケース300が落下した際の応力が受け部180に加わると、受け部180が空間191側へ向けて僅かに弾性変形できる余地があるため、受け部180は応力を柔軟に吸収及び分散でき、破損しにくいのである。
【0032】
なお、本願発明の収納ケースは、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。