(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188898
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】凹凸樹脂フィルムおよび積層フィルム
(51)【国際特許分類】
F15D 1/12 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
F15D1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097167
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】千葉 豪
(72)【発明者】
【氏名】梶原 周
(72)【発明者】
【氏名】舟木 徹
(72)【発明者】
【氏名】野中 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀章
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧力抵抗を低減可能な凹凸樹脂フィルムおよび積層フィルムを提供する。
【解決手段】凹凸樹脂フィルム1において、凹凸構造は、複数の凸部11および凹部12を有する凹凸部と平坦部とが第1方向d1に交互に配置されており、上記凹凸部の高さが20μm以上200μm以下であり、上記第1方向に直交する第2方向d2における上記凹凸部の長さが30mm以上であり、上記第1方向における上記凹凸部の幅および上記平坦部の幅が0.2mm以上50mm以下であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、圧力抵抗を低減可能な凹凸構造を有する、凹凸樹脂フィルム。
【請求項2】
前記凹凸構造では、複数の凸部および凹部を有する凹凸部と平坦部とが第1方向に交互に配置されており、
前記凹凸部の高さが20μm以上200μm以下であり、
前記第1方向に直交する第2方向における前記凹凸部の長さが30mm以上であり、
前記第1方向における前記凹凸部の幅および前記平坦部の幅が0.2mm以上50mm以下である、請求項1に記載の凹凸樹脂フィルム。
【請求項3】
前記凹凸部は、前記第1方向に沿って直線状に延びる複数の前記凸部および前記凹部を有する、請求項2に記載の凹凸樹脂フィルム。
【請求項4】
直線状の前記凹部の幅が、前記凹凸部の高さの1倍以上12倍以下である、請求項3に記載の凹凸樹脂フィルム。
【請求項5】
直線状の前記凸部の幅が、前記凹凸部の高さの1倍以上2倍以下である、請求項3または請求項4に記載の凹凸樹脂フィルム。
【請求項6】
前記凹凸部の前記凸部が、前記平坦部の面に対して突出している、請求項2から請求項5までのいずれかの請求項に記載の凹凸樹脂フィルム。
【請求項7】
前記凹凸樹脂フィルムが、樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の面に配置された樹脂層とを有し、前記樹脂層の表面に前記凹凸構造を有する、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の凹凸樹脂フィルム。
【請求項8】
前記凹凸樹脂フィルムが樹脂基材を有し、前記樹脂基材の表面に前記凹凸構造を有する、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の凹凸樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載の凹凸樹脂フィルムを有する、積層フィルム。
【請求項10】
前記凹凸樹脂フィルムの前記凹凸構造とは反対側の面に、粘着層を有する、請求項9に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記凹凸樹脂フィルムの前記凹凸構造とは反対側の面に、印刷層を有する、請求項9または請求項10に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気体抵抗を低減することが可能な凹凸樹脂フィルムおよび積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、流体中を移動する移動体や流体移送等の分野において、省エネルギーおよび二酸化炭素削減の実現のために、流体抵抗低減技術に関する研究が盛んに行われている。
【0003】
従来、流体抵抗低減技術としては、例えば物体の表面に凹凸を設けることが知られている。例えば、流体抵抗のうち、摩擦抵抗を低減させる手法としてリブレットが知られており、圧力抵抗を低減させる手法としてディンプルが知られている(例えば特許文献1)。また、特許文献2には、粗面および滑面を配置して、粗面および滑面の境界において縦渦を生成して流れの剥離を抑制する技術思想が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/29844号
【特許文献2】特開2013-57390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2には、物体の表面に流体抵抗低減構造を適用する手段についての具体的な開示はない。また、特許文献2には、粗面および滑面の具体的な形状や構成については詳しく言及されていない。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、圧力抵抗を低減可能な凹凸樹脂フィルムおよび積層フィルムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態は、表面に、圧力抵抗を低減可能な凹凸構造を有する、凹凸樹脂フィルムを提供する。
【0008】
本開示の凹凸樹脂フィルムにおいては、上記凹凸構造では、複数の凸部および凹部を有する凹凸部と平坦部とが第1方向に交互に配置されており、上記凹凸部の高さが20μm以上200μm以下であり、上記第1方向に直交する第2方向における上記凹凸部の長さが30mm以上であり、上記第1方向における上記凹凸部の幅および上記平坦部の幅が0.2mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0009】
上記の場合、上記凹凸部は、上記第1方向に沿って直線状に延びる複数の上記凸部および上記凹部を有することが好ましい。この場合、直線状の上記凹部の幅が、上記凹凸部の高さの1倍以上12倍以下であることが好ましい。また、この場合、直線状の上記凸部の幅が、上記凹凸部の高さの1倍以上2倍以下であることが好ましい。
【0010】
また、上記の場合、上記凹凸部の上記凸部が、上記平坦部の面に対して突出していることが好ましい。
【0011】
また、本開示の凹凸樹脂フィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の一方の面に配置された樹脂層とを有し、上記樹脂層の表面に上記凹凸構造を有していてもよい。
【0012】
また、本開示の凹凸樹脂フィルムは、樹脂基材を有し、上記樹脂基材の表面に上記凹凸構造を有していてもよい。
【0013】
本開示の他の実施形態は、上述の凹凸樹脂フィルムを有する、積層フィルムを提供する。
【0014】
本開示の積層フィルムは、上記凹凸樹脂フィルムの上記凹凸構造とは反対側の面に、粘着層を有していてもよい。
【0015】
本開示の積層フィルムは、上記凹凸樹脂フィルムの上記凹凸構造とは反対側の面に、印刷層を有していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示においては、圧力抵抗を低減可能な凹凸樹脂フィルムおよび積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の凹凸樹脂フィルムを例示する概略平面図および断面図である。
【
図2】本開示の凹凸樹脂フィルムを例示する概略斜視図である。
【
図3】本開示の凹凸樹脂フィルムにおいて、気体の流れを例示する模式図である。
【
図4】凹凸樹脂フィルムにおいて、気体の流れを例示する模式図である。
【
図5】本開示の凹凸樹脂フィルムを例示する概略断面図である。
【
図6】本開示の凹凸樹脂フィルムを例示する概略斜視図である。
【
図7】本開示の凹凸樹脂フィルムを例示する概略平面図および断面図である。
【
図8】本開示の凹凸樹脂フィルムを例示する概略平面図および断面図である。
【
図9】本開示の凹凸樹脂フィルムにおける凹凸部を例示する概略断面図である。
【
図10】本開示の凹凸樹脂フィルムを例示する概略平面図である。
【
図11】本開示の凹凸樹脂フィルムを例示する概略断面図である。
【
図12】本開示の積層フィルムを例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0019】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0020】
また、本明細書において、「フィルム」、「シート」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「フィルム」には、シートも含まれる。
【0021】
以下、本開示の凹凸樹脂フィルムおよび積層フィルムについて詳細に説明する。
【0022】
A.凹凸樹脂フィルム
本開示の凹凸樹脂フィルムは、表面に、圧力抵抗を低減可能な凹凸構造を有する。
【0023】
本開示の凹凸樹脂フィルムは、物体の表面に適用することにより、圧力抵抗を低減することができ、その結果、省エネルギーおよび二酸化炭素削減を実現することができる。本開示の凹凸樹脂フィルムは、例えば貼付等により物体の表面に適用することができ、物体の表面に気体抵抗低減構造を容易に付与することができる。また、本開示の凹凸樹脂フィルムは、フィルム状であるため、曲面や立体形状にも適用可能である。さらに、本開示の凹凸樹脂フィルムは、貼り直しや貼り替えも可能である。
【0024】
以下、本開示の凹凸樹脂フィルムの各構成について説明する。
【0025】
1.凹凸構造
本開示における凹凸構造は、圧力抵抗を低減可能であり、乱流を生じさせることが可能な凹凸構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、複数の凸部および凹部を有する凹凸部(粗面)と平坦部(滑面)とが交互に配置された粗滑構造;複数の凹部を有するディンプル構造;複数のピラーを有するピラー構造;紙やすりによる研磨やサンドブラスト等によって表面を荒らすことで形成されるランダムな凹凸構造;等が挙げられる。
【0026】
以下、粗滑構造およびディンプル構造について説明する。
【0027】
(1)粗滑構造
本開示における粗滑構造においては、複数の凸部および凹部を有する凹凸部(粗面)と平坦部(滑面)とが交互に配置されている。
【0028】
中でも、粗滑構造、すなわち凹凸構造においては、複数の凸部および凹部を有する凹凸部と平坦部とが第1方向に交互に配置されており、上記凹凸部の高さが20μm以上200μm以下であり、上記第1方向に直交する第2方向における上記凹凸部の長さが30mm以上であり、上記第1方向における上記凹凸部の幅および上記平坦部の幅が0.2mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0029】
図1(a)~(c)および
図2は、本開示の凹凸樹脂フィルムの一例を示す概略平面図、断面図および斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)のA-A線断面図、
図1(c)は
図1(a)のB-B線断面図であり、
図2は
図1(a)の斜視図である。
図1(a)~(c)および
図2に示すように、凹凸樹脂フィルム1は、表面に凹凸構造4を有しており、凹凸構造4では、複数の凸部11および凹部12を有する凹凸部2と平坦部3とが第1方向d1に交互に配置されている。凹凸部2の高さH1は所定の範囲内であり、第1方向d1に直交する第2方向d2における凹凸部2の長さL1が所定の値以上であり、第1方向d1における凹凸部2の幅W1および平坦部3の幅W2が所定の範囲内である。
【0030】
図3(a)、(b)は、本開示の凹凸樹脂フィルムが、表面に、複数の凸部および凹部を有する凹凸部と平坦部とが第1方向に交互に配置されている凹凸構造を有する場合において、気体の流れを例示する模式図であり、
図3(b)は
図3(a)のA-A線断面図である。
図3(a)に示すように、凹凸樹脂フィルム1の表面に沿って気体Fが流れると、
図3(b)に示すように、凹凸部2と平坦部3との気体Fの流れ方向d3に平行な境界近辺において、二次流れ、すなわち縦渦LVが生じる。そのため、凹凸樹脂フィルム1の表面からの流れの剥離を抑制することができる。
【0031】
上記凹凸構造においては、第2方向d2における凹凸部2の長さL1が所定の値以上であることにより、凹凸部2と平坦部3との境界近辺において縦渦LVを確実に発生させることができる。
【0032】
ここで、気体の流れの中に物体を置いた場合、物体に作用する抗力には、例えば圧力抵抗や摩擦抵抗等があり、圧力抵抗は流れの剥離によって発生する。圧力抵抗が問題となるのは、例えば、自動車、電車、航空機等の移動体;ダクト、ガス管等の管;風車;空調設備;等であり、これらの物体に流れる気体の流速は、例えば3m/s以上250m/s以下程度(10km/h以上900km/h以下程度)である。
【0033】
上記凹凸構造においては、例えば物体に流れる気体の流速が上記範囲内である場合に、凹凸部2の高さH1を所定の範囲内で適宜調整することにより、凹凸部2と平坦部3との境界近辺において縦渦LVを発生しやすくすることができる。
【0034】
ここで、物体まわりの流れにおいて、物体表面のごく薄い層では粘性の影響を強く受ける。この粘性による影響を強く受ける層を境界層と呼ぶ。
【0035】
図4(a)~(c)は、凹凸樹脂フィルムが、表面に、複数の凸部および凹部を有する凹凸部と平坦部とが第1方向に交互に配置されている凹凸構造を有する場合において、第1方向における凹凸部および平坦部の幅と、凹凸部および平坦部の境界付近で発生する縦渦との関係を示す模式図である。例えば
図4(a)に示すように、第1方向における凹凸部2の幅W1および平坦部3の幅W2が大きい場合には、凹凸部2および平坦部3の境界付近では大きな縦渦LVが発生するものの、凹凸部2の中央部分および平坦部3の中央部分までは縦渦LVが回り込みにくい。また、例えば
図4(c)に示すように、第1方向における凹凸部2の幅W1および平坦部3の幅W2が小さい場合には、凹凸部2および平坦部3の境界付近にて発生する縦渦LVが小さく、境界層外縁まで縦渦LVが到達しにくい。これらの場合、流れの剥離を抑制することができるものの、その効果は小さい。なお、
図4(a)~(c)中、δは境界層厚さを示す。
【0036】
これに対し、上記凹凸構造においては、第1方向d1における凹凸部2の幅W1および平坦部3の幅W2が所定の範囲内であることにより、例えば
図4(b)に示すように、凹凸部2および平坦部3の境界付近にて大きな縦渦LVが発生し、境界層の全体で縦渦LVを生成させることができる。
【0037】
したがって、上記凹凸構造においては、複数の凸部および凹部を有する凹凸部と平坦部とが第1方向に交互に配置されており、第1方向に直交する第2方向における凹凸部の長さが所定の値以上であり、凹凸部の高さが所定の範囲内であり、第1方向における凹凸部の幅および平坦部の幅が所定の範囲内であることにより、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を効率的に発生させることができ、流れの剥離を効果的に抑制することができる。
【0038】
以下、凹凸部および平坦部について説明する。
【0039】
本開示における凹凸構造においては、複数の凸部および凹部を有する凹凸部と平坦部とが第1方向に交互に配置されていることが好ましい。
【0040】
(a)凹凸部
本開示における凹凸構造において、第2方向における凹凸部の長さは、例えば、30mm以上であることが好ましく、50mm以上であることがより好ましい。第2方向における凹凸部の長さが短すぎると、凹凸部と平坦部との境界近辺において縦渦が発生しにくくなり、流れの剥離を抑制する効果が小さくなる可能性がある。また、第2方向における凹凸部の長さが50mm以上であることにより、凹凸部と平坦部との境界近辺において縦渦を確実に発生させることができる。また、第2方向における凹凸部の長さは、例えば、1000mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましい。第2方向における凹凸部の長さが長すぎると、圧力抵抗を減らすことができたとしても、摩擦抵抗が増えてしまい、気体抵抗を十分に低減することができない可能性があり、また製造コストが増大する場合がある。
【0041】
ここで、第2方向d2における凹凸部2の長さL1は、例えば
図1(a)に示すような、第2方向d2における凹凸部2の一方の端部から他方の端部までの距離をいう。また、例えば
図1(c)に示すように、凹凸樹脂フィルム1の表面が平面である場合には、第2方向における凹凸部の長さは、例えば
図1(a)に示すように、第2方向d2における平面上の凹凸部2の長さL1をいう。また、例えば
図5(a)に示すように、凹凸樹脂フィルム1の表面が曲面である場合には、第2方向における凹凸部の長さは、第2方向d2における曲面上の凹凸部2の長さL1をいう。
【0042】
また、本開示における凹凸構造において、凹凸部の高さは、例えば、20μm以上200μm以下であることが好ましく、50μm以上200μm以下であることがより好ましい。上述したように、例えば、自動車、電車、航空機等の移動体;ダクト、ガス管等の管;風車;空調設備;等の物体において、物体に流れる気体の流速は3m/s以上250m/s以下程度(10km/h以上900km/h以下程度)であり、流速が上記範囲内である場合に、凹凸部の高さを上記範囲内で適宜調整することにより、凹凸部と平坦部との境界近辺において縦渦を発生しやすくすることができる。また、例えば自動車の速度は10km/h以上120km/h以下程度であり、この場合に自動車に流れる空気の流速は3m/s以上33m/s以下程度(10km/h以上120km/h以下程度)であり、流速が上記範囲内である場合に、凹凸部の高さを50μm以上200μm以下の範囲内で適宜調整することにより、凹凸部と平坦部との境界近辺において縦渦を発生しやすくすることができる。
【0043】
凹凸部の高さは、境界層厚さの1/10以上1/100以下程度であることがより好ましい。また、気体の流速が速いほど、境界層厚さは薄くなることから、気体の流速が速いほど、凹凸部の高さは上記範囲内で低いことが好ましい。
【0044】
ここで、凹凸部2の高さH1は、例えば
図1(c)に示すような、凹凸部2の凹部12の底部から凸部11の頂部までの距離をいう。
【0045】
また、本開示における凹凸構造において、第1方向における凹凸部の幅は、例えば、0.2mm以上50mm以下であることが好ましく、1mm以上25mm以下であることがより好ましい。第1方向における凹凸部の幅が上記範囲内であることにより、例えば
図4(b)に示すように、凹凸部2および平坦部3の境界付近にて大きな縦渦LVが発生し、境界層の全体で縦渦LVを生成させることができる。
【0046】
第1方向における凹凸部の幅は、境界層厚さと同じであることがより好ましい。また、気体の流速が速いほど、境界層厚さは薄くなることから、気体の流速が速いほど、第1方向における凹凸部の幅は上記範囲内で小さいことが好ましい。
【0047】
第1方向における凹凸部の幅は、上記範囲内であれば、後述の第1方向における平坦部の幅と同じであってもよく異なっていてもよい。中でも、第1方向における凹凸部の幅と第1方向における平坦部の幅とは、同じであることが好ましい。この場合には、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦をより効率的に発生させることができる。
【0048】
ここで、第1方向d1における凹凸部2の幅W1は、例えば
図1(a)、(b)に示すような、第1方向d1における凹凸部2の一方の端部から他方の端部までの距離をいう。また、例えば
図1(b)に示すように、凹凸樹脂フィルム1の表面が平面である場合には、第1方向における凹凸部の幅は、第1方向d1における平面上の凹凸部2の幅W1をいう。また、例えば
図5(b)に示すように、凹凸樹脂フィルム1の表面が曲面である場合には、第1方向における凹凸部の幅は、第1方向d1における曲面上の凹凸部2の幅W1をいう。
【0049】
凹凸部は複数の凸部および凹部を有する。凹凸部においては、複数の凸部および凹部が一様に分布するように配置されていればよい。凸部および凹部の平面視のパターン形状は、例えば、規則パターンであってもよく、ランダムパターンであってもよい。規則パターンの場合、例えば、ライン状、ドット状、格子状等のパターンが挙げられる。
【0050】
ライン状のパターンとしては、例えば、直線状;正弦波、三角波等の波線状;等のパターンが挙げられる。中でも、ライン状のパターンは、直線状のパターンであることが好ましい。
【0051】
また、ドット状のパターンにおいて、ドットの配列としては、例えば、正方格子配列、矩形格子配列、三角格子配列、六角格子配列、菱形格子配列、平行四辺形格子配列等が挙げられる。中でも、凸部または凹部の平面視のパターン形状がドット状である場合、ドットの配列は、三角格子配列、菱形格子配列であることが好ましい。このようなドットの配列の場合には、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を生成しやすくすることができる。
【0052】
また、格子状のパターンとしては、例えば、正方格子状、矩形格子状、三角格子状、六角格子状、菱形格子状、平行四辺形格子状等のパターンが挙げられる。
【0053】
例えば、
図2および
図6は、凸部11および凹部12の平面視のパターン形状が直線状である例であり、
図7(a)~(c)は、凸部11の平面視のパターン形状がドット状であり、三角格子配列である例であり、
図8(a)~(b)は、凹部12の平面視のパターン形状がドット状であり、三角格子配列である例である。なお、
図7(b)、(c)はそれぞれ
図7(a)のA-A線断面図であり、
図8(b)は
図8(a)のA-A線断面図である。
【0054】
凸部および凹部の平面視のパターン形状がライン状である場合、凸部および凹部のライン状のパターンの長手方向は、第1方向に直交する第2方向に対して交差していることが好ましく、第2方向に対して略垂直である、つまり第1方向に対して略平行であることがより好ましい。具体的には、凸部および凹部のパターン形状が直線状である場合、凸部および凹部の直線状のパターンの長手方向は、第1方向に直交する第2方向に対して交差していることが好ましく、例えば
図2および
図6に示すように第2方向に対して略垂直である、つまり第1方向に対して略平行であることが好ましい。すなわち、凹凸部は、第1方向に沿って直線状に延びる複数の凸部および凹部を有することが好ましい。後述するように、上記凹凸樹脂フィルムは、例えば
図3(a)に示すように、気体Fの流れ方向d3に対して、凹凸部2および平坦部3の境界線が略平行になるように配置されて用いられることが好ましい。すなわち、上記凹凸樹脂フィルムは、例えば
図3(a)に示すように、気体Fの流れ方向d3に対して、第1方向d1が略垂直になるように、つまり、第1方向d1に直交する第2方向d2が略平行になるように、配置されて用いられることが好ましい。そのため、凸部および凹部のライン状のパターンの長手方向が、第1方向に直交する第2方向に対して交差している場合には、凸部および凹部のライン状のパターンの長手方向を、気体の流れ方向に対して交差させることができる。このような場合には、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を生成しやすくすることができる。また、凸部および凹部のライン状のパターンの長手方向が、第1方向に直交する第2方向に対して略垂直である場合には、凸部および凹部のライン状のパターンの長手方向を、気体の流れ方向に対して略垂直にすることができる。このような場合には、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦をさらに生成しやすくすることができる。
【0055】
また、凸部および凹部のライン状のパターンの長手方向が、第2方向に対して交差している場合、ライン状のパターンの長手方向と第2方向とのなす角度は、例えば、90°±45°であることが好ましい。同様に、凸部および凹部の直線状のパターンの長手方向が、第2方向に対して交差している場合、直線状のパターンの長手方向と第2方向とのなす角度は、例えば、90°±45°であることが好ましい。
【0056】
すなわち、凸部および凹部のライン状のパターンの長手方向が、気体の流れ方向に対して交差している場合、ライン状のパターンの長手方向と気体の流れ方向とのなす角度は、例えば、90°±45°であることが好ましい。同様に、凸部および凹部の直線状のパターンの長手方向が、気体の流れ方向に対して交差している場合、直線状のパターンの長手方向と気体の流れ方向とのなす角度は、例えば、90°±45°であることが好ましい。
【0057】
ここで、凸部および凹部のライン状のパターンの長手方向が、第1方向に対して略平行であるとは、ライン状のパターンの長手方向と第1方向とのなす角度が、0°±5°であることをいう。同様に、凸部および凹部の直線状のパターンの長手方向が、第1方向に対して略平行であるとは、直線状のパターンの長手方向と第1方向とのなす角度が、0°±5°であることをいう。
【0058】
また、凸部および凹部のライン状のパターンの長手方向が、気体の流れ方向に対して略垂直であるとは、ライン状のパターンの長手方向と気体の流れ方向とのなす角度が、90°±5°であることをいう。同様に、凸部および凹部の直線状のパターンの長手方向が、気体の流れ方向に対して略垂直であるとは、直線状のパターンの長手方向と気体の流れ方向とのなす角度が、90°±5°であることをいう。
【0059】
なお、ライン状のパターンの長手方向とは、例えば、直線状のパターンの場合には直線状のパターンが延びる方向をいい、波線状のパターンの場合には波線状のパターンが延びる方向をいう。
【0060】
また、凹凸部においては、凸部が平坦部の面に対して突出していてもよく、凹部が平坦部の面に対して凹んでいてもよい。例えば、
図2および
図7(b)は凹凸部2の凸部11が平坦部3の面に対して突出している例であり、
図6、
図7(c)および
図8(b)は凹凸部2の凹部12が平坦部3の面に対して凹んでいる例である。
【0061】
中でも、凸部が平坦部の面に対して突出していることが好ましい。このような場合には、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を生成しやすくすることができる。
【0062】
よって、例えば
図2に示すように、凹凸部2が、第1方向d1に沿って直線状に延びる複数の凸部11および凹部12を有し、凸部11が平坦部3の面に対して突出していることが特に好ましい。このような場合には、凹凸部および平坦部の境界近辺において効率良く縦渦を生成させることができる。
【0063】
また、凸部および凹部の断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、矩形状、台形状、三角形状、半円形状、半楕円形状等が挙げられる。例えば、
図9(a)は凸部11および凹部12の断面形状が矩形状である例であり、
図9(b)は凸部11および凹部12の断面形状が台形状である例であり、
図9(c)~(e)は凸部11の断面形状が三角形状である例であり、
図9(f)は凸部11の断面形状が半楕円形状である例であり、
図9(g)~(h)は凹部12の断面形状が三角形である例であり、
図9(i)は凹部12の断面形状が半円形状である例である。
【0064】
中でも、凸部または凹部の断面形状は、台形状、半円形状、半楕円形状であることが好ましい。これらの形状の場合、凹凸部の形成が容易であり、また凹凸部の耐久性を高めることができる。
【0065】
凸部および凹部の平面視のパターン形状がライン状である場合、ライン状の凸部の幅は、例えば、凹凸部の高さに対して、1倍以上2倍以下であることが好ましい。具体的には、凸部および凹部のパターン形状が直線状である場合、直線状の凸部の幅は、凹凸部の高さに対して、1倍以上2倍以下であることが好ましい。ライン状の凸部の幅が小さすぎると、凹凸部の形成が困難になる可能性がある。また、ライン状の凸部の幅が大きすぎると、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。
【0066】
ここで、ライン状の凸部の幅は、例えば
図9(a)~(i)に示すような、凸部11の幅W3であり、凸部11の幅のうち最も大きい幅をいう。
【0067】
また、凸部および凹部の平面視のパターン形状がライン状である場合、ライン状の凹部の幅は、例えば、凹凸部の高さに対して、1倍以上12倍以下であることが好ましく、4倍以上10倍以下であることがより好ましい。具体的には、凸部および凹部の平面視のパターン形状が直線状である場合、直線状の凹部の幅は、凹凸部の高さに対して、1倍以上12倍以下であることが好ましく、4倍以上10倍以下であることがより好ましい。ライン状の凹部の幅が小さすぎると、凸部の密度が高くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、ライン状の凹部の幅が大きすぎると、凸部の密度が低くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、ライン状の凹部の幅が凹凸部の高さの4倍以上10倍以下である場合には、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を生成させ、流れの剥離を効果的に抑制することができる。
【0068】
ここで、ライン状の凹部の幅は、例えば
図9(a)~(i)に示すような、凹部12の幅W4であり、凹部12の幅のうち最も小さい幅をいう。例えば
図9(d)、(g)~(i)では、凹部12の幅はゼロとなる。
【0069】
また、凸部および凹部の平面視のパターン形状がライン状である場合、ライン状の凸部のピッチは、例えば、凹凸部の高さに対して、2倍以上14倍以下であることが好ましく、5倍以上12倍以下であることがより好ましい。具体的には、凸部および凹部の平面視のパターン形状が直線状である場合、直線状の凸部のピッチは、凹凸部の高さに対して、2倍以上14倍以下であることが好ましく、5倍以上12倍以下であることがより好ましい。ライン状の凸部のピッチが小さすぎると、凸部の密度が高くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、ライン状の凸部のピッチが大きすぎると、凸部の密度が低くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。
【0070】
ここで、ライン状の凸部のピッチは、例えば
図9(a)~(i)に示すような、凸部11のピッチP1であり、隣接する凸部11間の距離をいう。
【0071】
また、凸部の平面視のパターン形状がドット状である場合、ドット状の凸部の平面視の大きさは、例えば、凹凸部の高さに対して、1倍以上2倍以下であることが好ましい。ドット状の凸部の大きさが小さすぎると、凹凸部の形成が困難になる可能性がある。また、ドット状の凸部の大きさが大きすぎると、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。
【0072】
また、凹部の平面視のパターン形状がドット状である場合、ドット状の凹部の平面視の大きさは、例えば、凹凸部の高さに対して、1倍以上12倍以下であることが好ましく、4倍以上10倍以下であることがより好ましい。ドット状の凹部の大きさが小さすぎると、凸部の密度が高くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、ドット状の凹部の大きさが大きすぎると、凸部の密度が低くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、ドット状の凹部の大きさが凹凸部の高さの4倍以上10倍以下である場合には、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を生成させ、流れの剥離を効果的に抑制することができる。
【0073】
ここで、ドット状の凸部または凹部の平面視の大きさは、例えば、凸部または凹部の平面視形状が円形状である場合には直径をいい、凸部または凹部の平面視形状が楕円形状である場合には長径をいい、凸部または凹部の平面視形状が矩形である場合には対角線の長さをいう。
【0074】
また、凸部または凹部の平面視のパターン形状がドット状である場合、トッド状の凸部または凹部のピッチは、例えば、凹凸部の高さに対して、2倍以上14倍以下であることが好ましく、5倍以上12倍以下であることがより好ましい。ドット状の凸部または凹部のピッチが小さすぎると、凸部の密度が高くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、ドット状の凸部または凹部のピッチが大きすぎると、凸部の密度が低くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。
【0075】
ここで、ドット状の凸部または凹部のピッチは、隣接する凸部間または凹部間の距離をいう。
【0076】
また、凸部の平面視のパターン形状が格子状である場合、格子状の凸部の幅は、例えば、凹凸部の高さに対して、1倍以上2倍以下であることが好ましい。格子状の凸部の幅が小さすぎると、凹凸部の形成が困難になる可能性がある。また、格子状の凸部の幅が大きすぎると、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。
【0077】
また、凸部の平面視のパターン形状が格子状である場合、格子状の凸部の間隔は、例えば、凹凸部の高さに対して、1倍以上12倍以下であることが好ましく、4倍以上10倍以下であることがより好ましい。格子状の凸部の間隔が小さすぎると、凸部の密度が高くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、格子状の凸部の間隔が大きすぎると、凸部の密度が低くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、格子状の凸部の間隔が凹凸部の高さの4倍以上10倍以下である場合には、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を生成させ、流れの剥離を効果的に抑制することができる。
【0078】
また、凹部の平面視のパターン形状が格子状である場合、格子状の凹部の幅は、例えば、凹凸部の高さに対して、1倍以上12倍以下であることが好ましく、4倍以上10倍以下であることがより好ましい。格子状の凹部の幅が小さすぎると、凸部の密度が高くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、格子状の凹部の幅が大きすぎると、凸部の密度が低くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、格子状の凹部の幅が凹凸部の高さの4倍以上10倍以下である場合には、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を生成させ、流れの剥離を効果的に抑制することができる。
【0079】
また、凹部の平面視のパターン形状が格子状である場合、格子状の凹部の間隔は、例えば、凹凸部の高さに対して、1倍以上2倍以下であることが好ましい。格子状の凹部の間隔が小さすぎると、凹凸部の形成が困難になる可能性がある。また、格子状の凹部の間隔が大きすぎると、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。
【0080】
また、凸部または凹部の平面視のパターン形状が格子状である場合、格子状の凸部または凹部のピッチは、例えば、凹凸部の高さに対して、2倍以上14倍以下であることが好ましく、5倍以上12倍以下であることがより好ましい。格子状の凸部または凹部のピッチが小さすぎると、凸部の密度が高くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。また、格子状の凸部または凹部のピッチが大きすぎると、凸部の密度が低くなり、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を十分に生成させることが困難になる可能性がある。
【0081】
なお、凹凸部、凹部および凸部の寸法は、レーザー顕微鏡、触針式表面プロファイラー、または走査型電子顕微鏡(SEM)により凹凸樹脂フィルムの表面または厚さ方向の断面を観察することにより測定することができる。
【0082】
凹凸部の平面視の形状は、凹凸部と平坦部との境界付近において縦渦を生成させることができる形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、矩形状、円弧状等が挙げられる。例えば、
図1(a)は凹凸部2の平面視の形状が矩形状である例であり、
図10は凹凸部2の平面視の形状が矩形状および円弧状である例である。中でも、凹凸部の平面視の形状は、矩形状であることが好ましい。
【0083】
上記凹凸構造においては、凹凸部と平坦部とが第1方向に交互に配置されていることが好ましい。この場合、凹凸部および平坦部は第1方向に交互に配置されていればよく、例えば、凹凸部および平坦部は、第1方向に交互に平行に配置されていてもよく、第1方向に交互に非平行に配置されていてもよい。例えば、
図1(a)は凹凸部2および平坦部3が第1方向d1に交互に平行に配置されている例であり、
図10は凹凸部2および平坦部3が第1方向d1に交互に非平行に配置されている例である。例えば、物体の三次元曲面に凹凸樹脂フィルムを適用する場合には、凹凸部および平坦部が第1方向に交互に非平行に配置される場合もある。中でも、凹凸部および平坦部は、第1方向に交互に平行に配置されていることが好ましい。
【0084】
(b)平坦部
本開示における凹凸構造において、第1方向における平坦部の幅は、0.2mm以上50mm以下であることが好ましく、1mm以上25mm以下であることがより好ましい。第1方向における平坦部の幅が上記範囲内であることにより、例えば
図4(b)に示すように、凹凸部2および平坦部3の境界付近にて大きな縦渦LVが発生し、境界層の全体で縦渦LVを生成させることができる。
【0085】
第1方向における平坦部の幅は、境界層厚さと同じであることがより好ましい。また、気体の流速が速いほど、境界層厚さは薄くなることから、気体の流速が速いほど、第1方向における平坦部の幅は上記範囲内で小さいことが好ましい。
【0086】
ここで、第1方向d1における平坦部3の幅W2は、例えば
図1(a)、(b)に示すような、隣接する凹凸部2の間に位置する平坦部3において、第1方向d1における平坦部3の一方の端部から他方の端部までの距離をいう。また、例えば
図1(b)に示すように、凹凸樹脂フィルム1の表面が平面である場合には、第1方向における平坦部の幅は、第1方向d1における平面上の平坦部3の幅W2をいう。また、例えば
図5(b)に示すように、凹凸樹脂フィルム1の表面が曲面である場合には、第1方向における平坦部の幅は、第1方向d1における曲面上の平坦部3の幅W2をいう。
【0087】
(2)ディンプル構造
ディンプル構造は、複数の凹部を有する。
【0088】
ディンプル構造においては、複数の凹部が一様に分布するように配置されていればよい。凹部の平面視のパターン形状は、例えば、規則パターンであってもよく、ランダムパターンであってもよい。
【0089】
凹部の配列としては、例えば、正方格子配列、矩形格子配列、三角格子配列、六角格子配列、菱形格子配列、平行四辺形格子配列等が挙げられる。
【0090】
凹部の平面視形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、円形状、楕円形状等が挙げられる。また、凹部の平面視形状は、不定形であってもよい。
【0091】
凹部の断面形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、半円形状、半楕円形状、台形状等が挙げられる。
【0092】
凹部の深さは、圧力抵抗を低減することが可能なディンプル構造となるように適宜設定される。具体的には、凹部の深さは、0.10mm以上10.0mm以下であることが好ましく、0.13mm以上8.0mm以下であることがより好ましく、0.15mm以上5.0mm以下であることがさらに好ましい。凹部の深さが小さすぎると、凹部の容積が小さくなるため、渦(乱流)の発生が不十分となる可能性がある。また、凹部の深さが大きすぎると、フィルム化が困難になる可能性がある。
【0093】
凹部の平面視の大きさは、圧力抵抗を低減することが可能なディンプル構造となるように適宜設定される。具体的には、凹部の曲率半径は、1.25mm以上100mm以下であることが好ましく、1.50mm以上10mm以下であることがより好ましく、1.75mm以上5mm以下であることがさらに好ましい。凹部の曲率半径が小さすぎると、凹部の容積が小さくなるため、渦(乱流)の発生が不十分となる可能性がある。また、凹部の曲率半径が大きすぎると、フィルム化が困難になる可能性がある。
【0094】
なお、凹部の寸法は、レーザー顕微鏡、触針式表面プロファイラー、または走査型電子顕微鏡(SEM)により凹凸樹脂フィルムの表面または厚さ方向の断面を観察することにより測定することができる。
【0095】
2.凹凸樹脂フィルムの構成
本開示における凹凸樹脂フィルムは、少なくとも樹脂基材を有することができる。本開示における樹脂フィルムは、表面に、上記凹凸構造を有していればよく、例えば、凹凸構造は、樹脂基材と一体に構成されていてもよく、あるいは、樹脂基材と別体で構成されていてもよい。すなわち、本開示の凹凸樹脂フィルムは、樹脂基材を有し、上記樹脂基材の表面に上記凹凸構造を有していてもよく、あるいは、樹脂基材と、上記樹脂基材の一方の面に配置された樹脂層とを有し、上記樹脂層の表面に上記凹凸構造を有していてもよい。
【0096】
また、本開示における凹凸樹脂フィルムが、凹凸構造として、例えば、複数の凸部および凹部を有する凹凸部(粗面)と平坦部(滑面)とが交互に配置されている粗滑構造を有する場合、例えば、
図11(a)~(b)に示すように、凹凸部2は樹脂基材10と一体に構成されていてもよく、
図11(c)~(f)に示すように、凹凸部2は樹脂基材10と別体で構成されていてもよい。また、凹凸部が樹脂基材と別体で構成されている場合には、例えば、
図11(c)~(d)に示すように、凹凸部2の凹部12の底部および平坦部3が樹脂基材10の面であってもよく、
図11(e)~(f)に示すように、樹脂基材10の一方の面に樹脂層13が配置されており、樹脂層13が凹凸部2および平坦部3を有していてもよい。
【0097】
凹凸構造は、透明であってもよく、不透明であってもよい。
【0098】
凹凸構造の材料としては、樹脂を用いることができる。凹凸構造が樹脂基材と一体で構成されている場合、凹凸構造の材料としては、後述の樹脂基材の材料と同様とすることができる。また、凹凸構造が樹脂基材と別体で構成されている場合、凹凸構造の材料としては、例えば、紫外線硬化性樹脂組成物や電子線硬化性樹脂組成物等の電離放射線硬化性樹脂組成物または熱硬化性樹脂組成物等の硬化性樹脂組成物の硬化物;熱可塑性樹脂;等が挙げられる。
【0099】
また、凹凸構造は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、加工助剤、帯電防止剤、難撚剤等の添加剤を含有してもよい。凹凸構造が紫外線吸収剤を含有する場合には、耐候性を高めることができる。
【0100】
凹凸構造の形成方法としては、例えば、樹脂基材上に凹凸構造を形成する方法であってもよく、樹脂基材の一方の面に凹凸形状を賦形する方法であってもよい。
【0101】
樹脂基材上に凹凸構造を形成する方法としては、例えば、硬化性樹脂組成物を用い、樹脂基材上に硬化性樹脂組成物を所定のパターン状に塗布し、硬化させる方法;紫外線硬化性樹脂組成物を用い、樹脂基材上に紫外線硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜に金型を押し当て、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させた後、金型から剥離する、いわゆるフォトポリマー法(2P法);電離放射線硬化性樹脂組成物を用い、樹脂基材上に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線や電子線等の電離放射線をパターン状に照射し、現像する、いわゆるリソグラフィ法;樹脂基材上に樹脂層を形成し、樹脂層の表面をエンボス加工する方法;等が挙げられる。また、表面がエンボス加工された樹脂層を別途作製し、その樹脂層を樹脂基材上にラミネートしてもよい。
【0102】
樹脂基材上に硬化性樹脂組成物を所定のパターン状に塗布し、硬化させる方法の場合、硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、所望のパターン状に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法等が挙げられる。また、フォトポリマー法やリソグラフィ法の場合、硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、一様に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の塗布方法を適用することができる。
【0103】
また、エンボス加工の方法の場合、樹脂層の材料としては、エンボス加工が可能なものであれば特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂を用いることができる。この場合、樹脂層の厚さとしては、凹凸構造の高さよりも大きければ特に限定されるものではなく、凹凸樹脂フィルムの用途等に応じて適宜選択される。例えば、本開示の凹凸樹脂フィルムを、自動車、電車、航空機等の移動体のラッピングフィルムやマーキングフィルムに用いる場合には、樹脂層の厚さは、30μm以上300μm以下程度とすることができる。
【0104】
また、樹脂基材の一方の面に凹凸形状を賦形する方法としては、例えば、樹脂基材の片面または両面をエンボス加工する方法等が挙げられる。
【0105】
樹脂基材が凹凸構造と一体に構成されている場合、樹脂基材の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができ、汎用プラスチックやエンジニアリングプラスチックの中から適宜選択して用いることができる。中でも、耐候性および耐擦り性の観点から、塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0106】
また、樹脂基材は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、加工助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難撚剤等の添加剤を含有してもよい。樹脂基材が凹凸構造と一体に構成されている場合であって、樹脂基材が紫外線吸収剤を含有する場合には、耐候性を高めることができる。
【0107】
樹脂基材は、透明であってもよく、不透明であってもよい。
【0108】
樹脂基材の厚さとしては、特に限定されるものではなく、凹凸樹脂フィルムの用途等に応じて適宜選択される。例えば、本開示の凹凸樹脂フィルムを、自動車、電車、航空機等の移動体のラッピングフィルムやマーキングフィルムに用いる場合には、樹脂基材の厚さは、80μm以上350μm以下程度とすることができる。
【0109】
3.凹凸樹脂フィルムの大きさおよび形状
本開示の凹凸樹脂フィルムの平面視の大きさとしては、表面に、圧力抵抗を低減可能な凹凸構造を有する凹凸樹脂フィルムとすることができれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜選択される。本開示の凹凸樹脂フィルムは、物体の表面の全体に配置してもよく、物体の表面の一部に配置してもよい。
【0110】
また、本開示の凹凸樹脂フィルムの平面視の形状としては、表面に、圧力抵抗を低減可能な凹凸構造を有する凹凸樹脂フィルムとすることができれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜選択される。本開示の凹凸樹脂フィルムの平面視の形状は、例えば、矩形状、円形状、楕円形状、多角形状等のような単純な幾何学形状であってもよく、複雑な形状であってもよい。
【0111】
また、本開示の凹凸樹脂フィルム全体の厚さは、特に限定されるものではなく、凹凸樹脂フィルムの用途等に応じて適宜選択され、例えば、35μm以上、350μm以下とすることができる。
【0112】
4.用途
本開示の凹凸樹脂フィルムが、凹凸構造として、例えば複数の凸部および凹部を有する凹凸部(粗面)と平坦部(滑面)とが交互に配置されている粗滑構造を有する場合、凹凸樹脂フィルムは、凹凸部(粗面)および平坦部(滑面)の境界線と、気体の流れ方向とのなす角度が、例えば0°±15°になるように配置されて用いられることが好ましい。すなわち、本開示の凹凸樹脂フィルムが、凹凸構造として、例えば、複数の凸部および凹部を有する凹凸部と平坦部とが第1方向に交互に配置されている凹凸構造を有する場合には、凹凸樹脂フィルムは、第1方向と、気体の流れ方向とのなす角度が、例えば90°±15°になるように配置されて用いられることが好ましい。
【0113】
中でも、上記の場合、凹凸樹脂フィルムは、例えば
図3(a)に示すように、気体Fの流れ方向d3に対して、凹凸部2および平坦部3の境界線が略平行になるように配置されて用いられることがより好ましい。すなわち、上記の場合、凹凸樹脂フィルムは、例えば
図3(a)に示すように、気体Fの流れ方向d3に対して、第1方向d1が略垂直になるように、つまり、第1方向d1に直交する第2方向d2が略平行になるように、配置されて用いられることがより好ましい。これにより、凹凸部および平坦部の境界近辺において縦渦を生成しやすくすることができ、流れの剥離を抑制することができる。
【0114】
ここで、凹凸部および平坦部の境界線が、気体の流れ方向に対して略平行であるとは、凹凸部および平坦部の境界線と気体の流れ方向とのなす角度が、0°±5°であることをいう。また、第1方向が、気体の流れ方向に対して略垂直であるとは、第1方向と気体の流れ方向とのなす角度が、90°±5°であることをいう。
【0115】
また、本開示の凹凸樹脂フィルムが、凹凸構造として、例えばディンプル構造を有する場合、凹凸樹脂フィルムは、気体の流れ方向に対して、任意に配置することができる。
【0116】
本開示の凹凸樹脂フィルムは、物体の表面に適用することができる。具体的には、本開示の凹凸樹脂フィルムは、乗用車、トラック、バス等の自動車;電車、新幹線、機関車等の鉄道車両;飛行機、ヘリコプター、ドローン等の航空機;自転車;等の気体中を移動する移動体の筐体や部品の表面に適用することができる。また、本開示の凹凸樹脂フィルムは、例えば、ダクト、ガス管等の管の内面;風車の羽根の表面;エアコン等の空調設備の吹き出し口やルーバー等の表面;等に適用することもできる。中でも、本開示の凹凸樹脂フィルムは、移動体の筐体や部品の表面に適用することが好ましく、非流線形物体、具体的には鈍頭物体(bluff body)である移動体の表面に適用することが好ましい。鈍頭物体(bluff body)では、気体抵抗のうち、圧力抵抗の寄与が大きく、本開示の効果が顕著に発揮されるからである。鈍頭物体(bluff body)である移動体としては、例えば、好ましくはトラック、バス等が挙げられる。より具体的には、本開示の凹凸樹脂フィルムは、移動体のラッピングフィルムまたはマーキングフィルムとして用いることができる。
【0117】
また、本開示の凹凸樹脂フィルムを物体の表面に適用する場合において、物体の表面は、平面であってもよく、曲面であってもよい。
【0118】
また、本開示の凹凸樹脂フィルムは、気体抵抗のうち圧力抵抗を低減することができるが、気体としては、特に限定されるものではない。気体の密度は、例えば、0.08kg/m3以上10kg/m3以下であることが好ましい。中でも、気体は、空気であることが好ましい。
【0119】
B.積層フィルム
本開示における積層フィルムは、上述の凹凸樹脂フィルムを有する。
【0120】
本開示における積層フィルムは、上述の凹凸樹脂フィルムを有するため、物体の表面に適用することにより、圧力抵抗を低減することができ、その結果、省エネルギーおよび二酸化炭素削減を実現することができる。また、本開示における積層フィルムは、例えば貼付等により物体の表面に適用することができ、物体の表面に気体抵抗低減構造を容易に付与することができる。また、本開示における積層フィルムは、フィルム状であるため、曲面や立体形状にも適用可能である。さらに、本開示における積層フィルムは、貼り直しや貼り替えも可能である。
【0121】
以下、本開示における積層フィルムの各構成について説明する。
【0122】
1.凹凸樹脂フィルム
本開示における凹凸樹脂フィルムについては、上記の「A.凹凸樹脂フィルム」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0123】
2.他の構成
本開示における積層フィルムは、凹凸樹脂フィルム以外に、他の構成をさらに有していてもよい。
【0124】
(1)粘着層
本開示における積層フィルム20は、例えば
図12(a)に示すように、凹凸樹脂フィルム1の凹凸構造とは反対側の面に粘着層21を有していてもよい。粘着層は、凹凸樹脂フィルムを物体の表面に貼付するための層である。凹凸樹脂フィルムの片面に粘着層が配置されていることにより、物体の表面に凹凸樹脂フィルムを容易に貼付することができる。
【0125】
粘着層に用いられる粘着剤としては、積層フィルムの用途等に応じて適宜選択され、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。
【0126】
また、粘着層は、再剥離性を有していてもよく、有していなくてもよいが、中でも、剥離性を有することが好ましい。粘着層が再 離性を有する場合には、物体の表面に積層フィルムを貼付する際に貼り直しが可能であり、また積層フィルムを貼り替えたり除去したり場合には糊残りを生じることなく物体から積層フィルムを剥離することが可能である。
【0127】
なお、「再剥離性」とは、物体の表面に積層フィルムを貼付した後で、物体を破壊せず、かつ物体表面に粘着剤を残さずに容易に剥離できる性質をいう。
【0128】
また、粘着層は着色剤を含有していてもよい。粘着層が着色剤を含有することにより、遮蔽性を付与することができる。例えば、物品の表面に意匠が施されている場合において、粘着層が着色剤を含有し、後述するように積層フィルムが印刷層をさらに有する場合には、物品の表面に積層フィルムを貼付することで、その意匠を隠し、新たな意匠を施すことができる。
【0129】
粘着層の厚さとしては、特に限定されるものではなく、積層フィルムの用途等に応じて適宜選択される。例えば、本開示における積層フィルムを、自動車、電車、航空機等の移動体のラッピングフィルムやマーキングフィルムに用いる場合には、粘着層の厚さは、5μm以上50μm以下程度とすることができる。粘着層の厚さが薄すぎると、物体への密着性が不十分になる可能性がある。
【0130】
粘着層の形成方法としては、例えば、粘着剤組成物を塗布する方法や、粘着フィルムを貼合する方法等が挙げられる。
【0131】
また、粘着層の凹凸樹脂フィルムとは反対側の面にはセパレータが配置されていてもよい。
【0132】
(2)印刷層
本開示における積層フィルムは、凹凸樹脂フィルムの凹凸構造とは反対側の面に印刷層を有していてもよい。積層フィルムが印刷層を有することにより、意匠性を付与することができる。
【0133】
印刷層は、例えば、文字、数字、記号、絵柄、模様、マーク等の情報を表示することができる。
【0134】
また、印刷層の形成方法としては、例えば、凹凸樹脂フィルムの樹脂基材に直に印刷を施すことにより印刷層を形成してもよく、あるいは、例えば
図12(b)に示すように、支持層22上に印刷を施すことにより印刷層23を形成してもよい。印刷層は、樹脂基材または支持層上にパターン状に配置されていてもよく、樹脂基材または支持層の全面に配置されていてもよい。また、印刷方法としては、特に限定されない。
【0135】
支持層としては、印刷を施すことが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば樹脂基材を用いることができる。
【0136】
また、支持層は着色剤を含有していてもよい。支持層が着色剤を含有することにより、遮蔽性を付与することができる。例えば、物品の表面に意匠が施されている場合において、積層フィルムが印刷層を有し、支持層が着色剤を含有する場合には、物品の表面に積層フィルムを貼付することで、その意匠を隠し、新たな意匠を施すことができる。
【0137】
支持層の厚さとしては、特に限定されるものではなく、積層フィルムの用途等に応じて適宜選択される。
【0138】
また、支持層上に印刷を施すことにより印刷層を形成する場合、例えば
図12(b)に示すように、支持層22と、支持層22の一方の面に配置された印刷層23とを有する印刷シートを別途作製し、この印刷シートを第2の粘着層24を介して樹脂基材10に貼合してもよく、あるいは、支持層上に印刷層、樹脂基材、樹脂層を順に形成してもよい。
【0139】
(3)保護層
本開示における積層フィルムは、凹凸樹脂フィルムの凹凸構造側の面に保護層を有してもよい。保護層により、凹凸構造を保護することができ、耐擦り性を高めることができる。
【0140】
凹凸樹脂フィルムの凹凸構造側の面に保護層が配置されている場合には、積層フィルムの保護層側の面における凹凸の寸法が、上述の凹凸樹脂フィルムの凹凸構造の寸法を満たすことが好ましい。
【0141】
保護層の材料としては、例えば、樹脂を用いることができる。中でも、耐候性および耐擦り性の観点から、電子線硬化性樹脂、フッ素樹脂が好ましい。
【0142】
また、保護層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、加工助剤、帯電防止剤、難撚剤等の添加剤を含有してもよい。保護層が紫外線吸収剤を含有する場合には、耐候性を高めることができる。
【0143】
保護層の厚さとしては、例えば、0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0144】
3.積層フィルムの大きさおよび形状
本開示における積層フィルムの平面視の大きさとしては、用途等に応じて適宜選択される。本開示における積層フィルムは、物体の表面の全体に配置してもよく、物体の表面の一部に配置してもよい。
【0145】
また、本開示における積層フィルムの平面視の形状としては、用途等に応じて適宜選択され、例えば、上記凹凸樹脂フィルムの平面視の形状と同様とすることができる。
【0146】
4.用途
本開示において、気体の流れ方向に対する積層フィルムの配置としては、上記凹凸樹脂フィルムが有する凹凸構造の種類によって適宜設定され、上述の気体の流れ方向に対する凹凸樹脂フィルムの配置と同様とすることができる。
【0147】
本開示における積層フィルムの用途としては、上述の凹凸樹脂フィルムの用途と同様とすることができる。
【0148】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0149】
以下、実施例および比較例を示し、本開示をさらに説明する。
【0150】
[実施例1~11]
まず、塩化ビニル樹脂フィルムと粘着層と剥離紙とをこの順に有する印刷原反(Avery Dennison社製「MPI1105」)を用い、印刷原反の塩化ビニル樹脂フィルム上に、絵柄を印刷して印刷層を形成した。次いで、塩化ビニル樹脂フィルムと粘着層と剥離紙とをこの順に有するラミネートフィルム(Avery Dennison社製「DOL1460」)を用い、ラミネートフィルムから剥離紙を剥がした後、上記印刷層上にラミネートフィルムをラミネートした。次に、上記ラミネートフィルムの塩化ビニル樹脂フィルム上に、UVインクジェット装置を用いて、UV硬化型インクを吐出および硬化させ、直線状の複数の凸部および凹部を有する凹凸部を形成した。また、凹凸部は、
図1(a)に示すように、凹凸部および平坦部がストライプ状に交互に配置されるように形成した。凹凸部および平坦部の寸法は、表1に示す通りとした。これにより、ラッピングフィルムを作製した。
【0151】
[評価]
実施例1~11のラッピングフィルムを、トラック形状の模型(長さ1250mm、幅260mm、高さ387mm)に貼付け、風洞実験を行い、風速25m/sの条件で空気抵抗係数(Cd値)を計測した。また、ラッピングフィルムを貼り付けない場合を比較例とした。
【0152】
【0153】
実施例1~11では、比較例に対して、Cd値が小さくなり、気体抵抗が低減されたことが確認された。中でも、実施例1~7では、凹凸部の高さ、第2方向における凹凸部の長さ、第1方向における凹凸部の幅および平坦部の幅がいずれも所定の範囲内であるため、実施例8~11と比較して、気体抵抗低減効果が大きかった。