(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188905
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】プレコート液およびこれを用いた印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20221215BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221215BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20221215BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20221215BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20221215BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221215BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20221215BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221215BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 123
C09D11/54
C09D11/30
C09D5/00 D
C09D201/00
C09D7/65
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097186
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】本谷 昭博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 輝夫
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FC01
2C056FD20
2C056HA42
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB11
2H186AB28
2H186AB29
2H186AB33
2H186AB35
2H186AB37
2H186AB39
2H186AB40
2H186AB41
2H186AB44
2H186AB53
2H186AB56
2H186AB57
2H186BA08
2H186DA12
4J038BA011
4J038CG031
4J038MA07
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA01
4J038PA18
4J038PB13
4J038PC10
4J039EA06
4J039EA42
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】記録媒体への活性線硬化型インクの浸透を抑制可能であり、かつ記録媒体の質感を損ない難いプレコート液を提供すること。
【解決手段】活性線硬化型インク用のプレコート液は、親水性ポリマーと、親水性溶媒と、水と、樹脂微粒子と、を含み、前記親水性ポリマーの量が、前記親水性溶媒の量100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性線硬化型インク用のプレコート液であって、
親水性ポリマーと、親水性溶媒と、水と、樹脂微粒子と、を含み、
前記親水性ポリマーの量が、前記親水性溶媒の量100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下である、
プレコート液。
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、含窒素化合物である、
請求項1に記載のプレコート液。
【請求項3】
前記親水性ポリマーの量が、前記親水性溶媒の量100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下である、
請求項1または2に記載のプレコート液。
【請求項4】
前記親水性溶媒が、1分子中に2つ以上の水酸基を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のプレコート液。
【請求項5】
前記親水性溶媒が、1分子中に3つ以上の水酸基を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のプレコート液。
【請求項6】
前記樹脂微粒子の量が、前記親水性溶媒100質量部に対して1質量部以上100質量部以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプレコート液。
【請求項7】
前記樹脂微粒子の量が、前記親水性溶媒100質量部に対して1質量部以上40質量部以下である、
請求項6のいずれか一項に記載のプレコート液。
【請求項8】
前記樹脂微粒子のレーザー光散乱法で測定される、体積50%平均粒子径が、0.2~150μmである、
請求項6または7に記載のプレコート液。
【請求項9】
無機微粒子をさらに含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載のプレコート液。
【請求項10】
前記無機微粒子が、気相法シリカ、炭酸カルシウム、タルク、およびカオリンからなる群から選ばれる、1つ以上の化合物を含む、
請求項9に記載のプレコート液。
【請求項11】
前記無機微粒子の量が、前記親水性溶媒100質量部に対して50質量部以下である、
請求項9または10に記載のプレコート液。
【請求項12】
前記無機微粒子のレーザー光散乱法で測定される、体積50%平均粒子径が、0.2~10μmである、
請求項9~11のいずれか一項に記載のプレコート液。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプレコート液を、吸収性を有する記録媒体に塗布する工程と、
前記記録媒体の前記プレコート液を塗布した領域上に活性線硬化型インクを塗布し、硬化させる工程と、
を含む、印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレコート液およびこれを用いた印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種記録媒体に画像を形成する方法として、様々な印刷方式が知られている。中でも、インクジェット印刷は、オンデマンド印刷が可能であること等から、広く普及している。インクジェット印刷には、水等を溶媒として含む水性インクや、活性線の照射によって硬化する活性線硬化型インク等が使用されている。
【0003】
一般的に、水性インクでは、当該水性インク中の溶媒が記録媒体に吸収されたり、揮発したりする。したがって、水性インク中の固形分(例えば色材等)のみが記録媒体表面に定着する。一方、活性線硬化型インクでは、当該活性線硬化型インクの硬化物が記録媒体に定着する。つまり、活性線硬化型インクは、記録媒体に吸収されないことが好ましく、例えば活性線硬化型インクの一部が、記録媒体に吸収されると、画像の硬化性が不十分になったり、画像が記録媒体に定着しなかったりすること等がある。
【0004】
したがって、活性線硬化型インクを、吸収性の記録媒体に使用する場合には、活性線硬化型インクが、記録媒体に吸収されないように処理を施すことが必要であった。例えば活性線硬化型インクを塗布する前に、プレコート液を塗布すること等が検討されている。特許文献1には、吸収性の記録媒体に、水および反応剤を含む反応液を塗布することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、水性インクの乾燥性や発色性等を高めることを目的として、水性インクの塗布前に、記録媒体の全面にインク受容層を設けること等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-154645号公報
【特許文献2】国際公開第2014/021263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、活性線硬化型インクを塗布する前に、水および反応剤を含む反応液を塗布する特許文献1の方法では、活性線硬化型インクの浸透を十分に抑制できず、にじみやドットの先鋭性が損なわれやすかった。その理由の一つとして、反応剤が粒子ではなく溶解している点が挙げられる。また、活性線硬化型インクを塗布する前に、活性線硬化型のプレコート液を塗布すること等も考えられるが、この場合、プレコート液の硬化物が記録媒体の表面を厚く覆ってしまうため、記録媒体の質感が損なわれやすいという課題があった。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものである。本発明は、記録媒体への活性線硬化型インクの浸透を抑制可能であり、かつ記録媒体の質感を損ない難いプレコート液、およびこれを用いた印刷物の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のプレコート液を提供する。
活性線硬化型インク用のプレコート液であって、親水性ポリマーと、親水性溶媒と、水と、樹脂微粒子と、を含み、前記親水性ポリマーの量が、前記親水性溶媒の量100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下である、プレコート液。
【0010】
本発明は、以下の印刷物の製造方法を提供する。
上記プレコート液を、吸収性を有する記録媒体に塗布する工程と、前記記録媒体の前記プレコート液を塗布した領域上に活性線硬化型インクを塗布し、硬化させる工程と、を含む、印刷物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプレコート液を記録媒体に塗布すると、記録媒体の質感を損なうことなく、活性線硬化性インクの記録媒体への浸透を抑制できる。したがって、高品質な画像を有する印刷物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は当該実施の形態に限定されない。
【0013】
1.プレコート液
上述のように、活性線硬化型インクを、吸収性を有する記録媒体上に直接塗布することは難しかった。そこで、活性線硬化型のプレコート液や、水系のプレコート液が検討されている。しかしながら、活性線硬化型のプレコート液では、記録媒体本来の質感を損ないやすかった。一方、従来の水性のプレコート液では、活性線硬化型インクが記録媒体に染み込みやすく、さらなる改良が求められていた。
【0014】
これに対し、本発明のプレコート液は、親水性ポリマーと、親水性溶媒と、水と、樹脂微粒子と、を含む活性線硬化型インク用のプレコート液である。本明細書でいう、活性線硬化型インク用のプレコート液とは、記録媒体に活性線硬化型インクを塗布する前に、記録媒体に塗布するための液であり、特に吸収性を有する記録媒体に塗布するための液である。
【0015】
本発明では、プレコート液中の親水性ポリマーの量を、親水性溶媒の量100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下とする。これにより、当該プレコート液を塗布した記録媒体に活性線硬化型インクが染み込みにくくなり、活性線硬化型インクによって高品質な画像を形成できる。その理由は、以下のように考えられる。
【0016】
本発明のプレコート液を、吸収性を有する記録媒体上に塗布すると、水や親水性溶媒は記録媒体に吸収される。一方で、親水性ポリマーや樹脂微粒子は、記録媒体に吸収されずに、その表面に残る。そして、樹脂微粒子によって、活性線硬化型インクを塗布した際に、当該インクが記録媒体に染み込み難くなる。さらに、親水性ポリマー量が、上記範囲であることから、記録媒体表面に過度に厚い層が形成されず、記録媒体の質感を損ない難い。
【0017】
以下、本発明のプレコート液について、詳しく説明する。なお、本発明のプレコート液は、本発明の目的および効果を損なわない範囲において、親水性ポリマー、親水性溶媒、水、および樹脂微粒子以外の成分を含んでいてもよく、例えば無機微粒子等を含んでいてもよい。
【0018】
(親水性ポリマー)
プレコート液が含む親水性ポリマーは、親水性溶媒や水に対して、均一に溶解または分散可能なポリマーであればよい。本明細書において、親水性ポリマーの「親水性」とは、ポリマー0.05gを、90℃、50cm3のイオン交換水に、攪拌下(スターラーチップ等による)で平衡まで溶解させ、メンブレンフィルター(フィルター径1μm)で処理した際に、メンブレンフィルターを通過する成分が、ポリマー中に1質量%以上含まれることをいう。
【0019】
本発明のプレコート液を、吸収性を有する記録媒体上に塗布すると、当該親水性ポリマーが記録媒体の表面に付着し、定着する。その結果、活性線硬化型インクが記録媒体に吸収され難くなる。より具体的には、親水性ポリマーは親水性であり、通常、活性線硬化型インクは疎水性である。そのため、先に親水性ポリマーが付着した記録媒体では、疎水性の活性線硬化型インクが染み込みにくく、記録媒体表面に留まりやすくなる。プレコート液は、親水性ポリマーを一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0020】
上記親水性ポリマーの種類は特に制限されず、その例には、化学構造の一部に糖または多糖を含む糖類が含まれる。糖類の例には、ジェランガム、サイリウムシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、キトサン、アラビアガム、ガッティガム、グルコマンナン、トラガントガム、寒天、カラギナン(イオタカラギナン等)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、カードラン、プルラン、デキストラン、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース等)が含まれる。
【0021】
親水性ポリマーの例には、ポリビニルアルコールや、分子中に窒素を含む含窒素化合物も含まれる。含窒素化合物の例には、ポリエチレンイミン、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリアミン、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリビニルピリジウムハライド、カチオン性ポリアクリルアミド、ノニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリスチレン共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドアミド共重合体、ジシアンジアミドホルマリン重縮合体、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合体、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、メラミン樹脂酸コロイド、尿素系樹脂、アミノ酸型両性界面活性剤、ポリアミジン化合物、カチオン変性ポリウレタン樹脂等が含まれる。
【0022】
上記親水性ポリマーの中でも、含窒素化合物が、活性線硬化型インクの濡れ広がり性等が良好になる点で好ましく、ポリアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体等がより好ましい。
【0023】
また、親水性ポリマーのB型粘度計で測定される、25℃における粘度は10mPa・s以上10000mPa・s以下が好ましく、100mPa・s以上5000mPa・s以下がより好ましい。
【0024】
プレコート液中の親水性ポリマーの量は、後述の親水性溶媒100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下であればよく、1質量部以上40質量部以下がより好ましい。
【0025】
(親水性溶媒)
プレコート液が含む親水性溶媒は、水と相溶可能であり、かつ上述の親水性ポリマーを均一に分散または溶解させることが可能な溶媒である。本明細書における親水性溶媒の「親水性」とは、LogP値が2以下であることをいう。プレコート液は、親水性溶媒を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0026】
親水性溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の一価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールエーテル類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン類;ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の複素環類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類;1-ブタンスルホン酸ナトリウム塩等のスルホン酸塩類;アセトニトリル;アセトン等が含まれる。
【0027】
上記の中でも、分子中に2つ以上の水酸基を有する親水性溶媒が水との親和性や沸点等の観点で好ましく、分子中に3つ以上の水酸基を有する親水性溶媒がさらに好ましい。具体的には、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等の二価アルコールまたはグリセリンやヘキサントリオール等の三価以上のアルコールが好ましく、三価以上のアルコールがより好ましい。
【0028】
また、上記親水性溶媒の沸点は、印刷物のカールを抑えるとの観点で、100℃以上であることが好ましく、100℃以上250℃以下がより好ましく、150℃以上200℃以下がさらに好ましい。親水性溶媒の沸点が水の沸点(100℃)以上であると、水が蒸発した後にも、記録媒体中に親水性溶媒が一部残存する。そして、プレコート液の乾燥が緩やかに進むため、印刷物がカールし難くなる。
【0029】
親水性溶媒の量は、プレコート液全量に対して、10質量%以上80質量%以下が好ましく、20質量%以上65質量%以下がより好ましい。親水性溶媒の量が当該範囲であると、プレコート液の乾燥性や塗布性が良好になる。
【0030】
(水)
本発明のプレコート液は、上記親水性ポリマーおよび親水性溶媒の他に、水も含む。水の量は、親水性溶媒の量100質量部に対して10質量部以上120質量部以下が好ましく、20質量部以上100質量部以下がより好ましい。水の量が当該範囲であると、プレコート液の乾燥性や塗布性が良好になる。
【0031】
(樹脂微粒子)
上述のように、プレコート液は、樹脂微粒子をさらに含む。当該樹脂微粒子によって、活性光線硬化型のインクの染み込みが抑制される。また、プレコート液が樹脂微粒子を含むと、活性線硬化型インクが濡れ広がりやすくなるという利点もある。通常、親水性ポリマーと、活性線硬化型インク中の重合性化合物(例えばアクリルモノマー等)とは、SP値が大きく異なる。そのため、プレポリマー液を塗布した記録媒体上に活性線硬化型インクを塗布すると、活性線硬化型インクが親水性ポリマーによって弾かれて、濡れ広がり難いことがある。これに対し、樹脂微粒子は、活性線硬化型インク中の重合性化合物と比較的なじみやすい。したがって、プレポリマー液が樹脂微粒子を含むと、活性線硬化型インクが弾かれ難くなり、記録媒体上に適度に濡れ広がることができる。
【0032】
ここで、樹脂微粒子は、水や親水性溶媒に不溶であり、かつ樹脂を含む微粒子であればよい。樹脂微粒子の大きさは特に制限されないが、レーザー光散乱法で測定される、体積50%平均粒子径(以下、「D50」とも称する)が、0.2~150μmであることが好ましく、0.2~100μmがより好ましい。樹脂微粒子の体積50%平均粒子径が、0.2μm以上であると、プレコート液を塗布した記録媒体と、活性線硬化型インクとの親和性を高めやすくなる。一方で、樹脂微粒子の体積50%平均粒子径が150μm以下であると、樹脂微粒子が活性線硬化型インクによって形成される画像に影響を及ぼし難い。上記体積50%平均粒子径は、樹脂微粒子の粒子径をレーザー光散乱法で測定したときの体積平均値である。
【0033】
ここで、樹脂微粒子は、上述の親水性溶媒や水に均一に分散可能なものであれば、その種類等は特に制限されない。プレコート液は、樹脂微粒子を2種以上含んでいてもよい。樹脂微粒子を構成する樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアミド樹脂;シリコン樹脂;フェノール樹脂;スチレン・ブタジエンゴム等のゴム;ラテックスまたはエマルジョン状のポリマー;等が含まれる。
【0034】
これらの中でも、アクリル樹脂、スチレン・ブタジエンゴム等が好ましい。
【0035】
樹脂微粒子の量は、上記親水性溶媒100質量部に対して1質量部以上100質量部以下が好ましく、1質量部以上40質量部以下がより好ましい。樹脂微粒子の量が1質量部以上であると、記録媒体上に塗布された活性線硬化型インクの濡れ広がり性を良好にできる。一方、樹脂微粒子の量が100質量部以下であると、活性線硬化型インクによる画像に影響を及ぼし難い。
【0036】
(無機微粒子)
プレコート液は、無機微粒子をさらに含んでいてもよい。無機微粒子は、水や有機溶媒に不要であり、かつ無機材料で構成される微粒子であればよい。無機微粒子の大きさは特に制限されないが、レーザー光散乱法で測定される、体積50%平均粒子径(以下、「D50」とも称する)が、0.2~10μmであることが好ましく、0.3~5μmがより好ましい。無機微粒子の体積50%平均粒子径が、0.2μm以上であると、プレコート液を塗布した記録媒体に、活性線硬化型インクが染み込み難くなる。一方で、無機微粒子の体積50%平均粒子径が10μm以下であると、無機微粒子が、活性線硬化型インクによって形成される画像に影響を及ぼし難い。上記体積50%平均粒子径は、無機微粒子の粒子径をレーザー光散乱法で測定したときの体積平均値である。
【0037】
無機微粒子は、上述の親水性溶媒等に均一に分散可能であれば特に制限されない。無機微粒子を構成する材料の例には、気相法シリカ、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリン、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が含まれる。
【0038】
これらの中でも気相法シリカ、炭酸カルシウム、タルク、またはカオリンが取扱性等の観点で好ましい。
【0039】
無機微粒子の量は、上記親水性溶媒100質量部に対して0質量部以上50質量部以下が好ましく、3質量部以上40質量部以下がより好ましい。無機微粒子の量が10質量部以上であると、記録媒体上に塗布された活性線硬化型インクの染み込みが抑制されやすい。一方、無機微粒子の量が100質量部以下であると、無機微粒子が活性線硬化型インクによる画像に影響を及ぼし難い。
【0040】
(プレコート液の調製方法および物性)
プレコート液は、上述の親水性ポリマー、親水性溶媒、水、および樹脂微粒子と、必要に応じて無機微粒子とを混合することで調製できる。全ての成分を一度に混合してもよく、一部の成分のみ(例えば親水性溶媒以外)を先に混合し、残りの成分(親水性溶媒等)を後から加えてもよい。
【0041】
プレコート液の粘度は、プレコート液を記録媒体に塗布する方法に応じて適宜選択される。例えば、プレコート液をインクジェット法で塗布する場合、25℃、B型粘度計、条件No.1ロータ、No.2ロータもしくはNo.3ロータで測定される粘度は、100Pa・s以上20000Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以上1000Pa・s以下がより好ましい。プレコート液の粘度が当該範囲であると、記録媒体上に残存する親水性ポリマーの厚みが十分に薄くなりやすく、記録媒体の質感を損ない難い。
【0042】
2.印刷物の製造方法
上述のプレコート液は、以下に示す印刷物の製造方法に適用できる。ただし、プレコート液の使用方法は、当該方法に限定されない。
【0043】
上記プレコート液を用いた印刷物の製造方法では、上述のプレコート液を、吸収性を有する記録媒体に塗布する工程と、当該記録媒体のプレコート液を塗布した領域上に活性線硬化型インクを塗布し、硬化させる工程と、を含む。
【0044】
印刷物に使用する記録媒体は、インク等の液体を吸収する表面を有する記録媒体であればよく、印刷物の用途に応じて適宜選択される。記録媒体は、一層からなるものであってもよく、複数の層が積層されたものであってもよい。また、記録媒体は枚葉状であってもよく、ロール状等の長尺状であってもよい。さらに、立体的な形状を有するものであってもよい。
【0045】
なお、記録媒体の吸収性は、例えば、以下のように測定できる。記録媒体の記録面に0.5μLの水滴を滴下し、接触角の低下率(着弾後0.5ミリ秒における接触角と5秒における接触角の比較)によって、吸収性を有するか否かを判断できる。具体的には、吸収性の高い記録媒体では、接触角の低下率が大きくなり、吸収性の低い記録媒体では、接触角の低下率が小さくなる。本明細書における吸収性を有する記録媒体とは、上記接触角の低下率が5.0%以上である記録媒体とする。なお、上記接触角の測定装置は特に制限されず、例えば協和界面科学社製ポータブル接触角計PCA-1等を用いることができる。
【0046】
記録媒体の例には、薄紙から厚紙までの普通紙、中質紙、上質紙、再生紙、アート紙あるいはコート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、布等が含まれる。
【0047】
また、プレコート液の塗布方法は、活性光線硬化型インクより先に、記録媒体に塗布可能であれば特に制限されず、例えばインクジェット法、グラビア塗布法、スプレー塗布法等が含まれる。さらに、プレコート液は、記録媒体の一部の領域のみに塗布してもよく、記録媒体の全面に塗布してもよい。
【0048】
また、プレコート液の塗布量は特に制限されないが、通常0.1g/m2~20g/m2が好ましく、0.2g/m2~5g/m2がより好ましい。プレコート液の塗布量が当該範囲であると、プレコート液を塗布した記録媒体上に、活性線硬化型インクによって画像を形成しやすくなる。
【0049】
上記プレコート液の塗布後、必要に応じて乾燥させてもよい。乾燥方法は、風乾、熱風乾燥、赤外加熱等とすることができる。また、乾燥時間は特に制限されないが、通常0.5秒以上5秒程度とすることができる。
【0050】
その後、記録媒体の上記プレコート液を塗布した領域に、活性線硬化型インクを塗布する。本明細書でいう活性線硬化型インクとは、電子線、紫外線、可視光線、α線、γ線、およびエックス線等の光線の照射によって硬化可能なインクである。当該活性線硬化型インクの種類は特に制限されず、例えば紫外線で硬化する紫外線硬化型(以下、「UV硬化型」とも称する)インクであってもよい。
【0051】
活性線硬化型インクの組成は特に制限されず、例えば活性線の照射によって重合可能なアクリルモノマー等の重合性化合物や、重合開始剤、色材、各種添加剤等を含む、公知の活性線硬化型インクとすることができる。活性線硬化型インクは、例えばワックス等のゲル化剤等を含んでいてもよい。
【0052】
活性線硬化型インクの塗布方法は特に制限されず、公知の各種方法とすることができるが、特にインクジェット法である場合に、上述のプレコート液の硬化が得られやすい。インクジェット法で塗布する活性線硬化型インクの粘度は、他の方法で塗布する活性線硬化型インクの粘度と比較して、比較的低い。そのため、直接活性線硬化型インクを記録媒体上に滴下すると、活性線硬化型インク中の成分が、記録媒体に染み込みやすいが、上述のプレコート液を使用することで、このような染み込みを抑制できる。
【0053】
活性線硬化型インクの粘度は特に制限されず、活性線硬化型インクを塗布する方法に応じて適宜選択される。例えば、活性線硬化型インクがゲル化剤を含有しており、当該インクをインクジェット法で塗布する場合、80℃における粘度は、インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。80℃における粘度が3mPa・s以上20mPa・s以下であると、射出時に活性線硬化型インクがゲル化しにくいため、より安定して活性線重合性化合物を射出することができる。
【0054】
また、活性線硬化型インクがゲル化剤を含有している場合には、着弾して常温に降温した際にインクを十分にゲル化させる観点から、上記活性線硬化型インクの25℃における粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。25℃における粘度は1000mPa・s以上であると、中間転写体に付与されたインク液滴が広がり難く、液滴同士が合一し難い。活性線硬化型インクの40℃、80℃における粘度は、レオメータにより、活性線硬化型インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。
【0055】
例えば、上記活性線硬化型インクの25℃における粘度および80℃における粘度は、レオメータにより、活性線硬化型インクを100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータ(Anton Paar社製、Physica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°))によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で25℃までインクを冷却して得られた粘度の温度変化曲線において25℃および80℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求める。
【0056】
上記活性線硬化型インクの塗布後、当該塗膜に活性線を照射し、活性線硬化型インクを硬化させる。活性線の種類や、照射強度、照射時間等については、活性線硬化型インクの種類に応じて適宜選択される。これにより、高品質な画像を有する印刷物が得られる。
【実施例0057】
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中において「部」および「%」は、特に断りのない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
【0058】
1.材料の準備
(親水性ポリマー)
・アルギン酸カルシウム(CAW-80、キミカ社製)
・イオタカラギナン(五協フード社製)
・両性ポリアクリルアミド(ハーマイドKS-38、ハリマ化成社製)
・ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体1(PAS-H-1L、ニットーボーメディカル社製)
・ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体(PAS-J-81、ニットーボーメディカル社製)
・ノニオン性ポリアクリルアミド(ハリコート1057、ハリマ化成社製)
・ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体2(PAS-H-5L、ニットーボーメディカル社製)
・ポリビニルアルコール(PVA117、クラレ社製)
・ポリアリルアミン塩酸塩重合体(PAA-HCL-3L、ニットーボーメディカル社製)
【0059】
(親水性溶媒)
・ポリエチレングリコール
・ポリプロピレングリコール
・グリセリン
・イソプロピルアルコール
・1,2-ヘキサンジオール
【0060】
(樹脂微粒子)
・アクリル粒子(トークリル(登録商標)W168、トーヨーケム社製、D50:100μm)
・スチレン/ブタジエンゴム1(JSR0561、JSR社製、D50:220nm)
・スチレン/ブタジエンゴム2(JSR0589、JSR社製、D50:700nm)
【0061】
(無機微粒子)
・カオリン1(林純薬工業社製、D50:150μm)
・カオリン2(林純薬工業社製、D50:100μm)
・炭酸カルシウム(FMT-100、ファイマテック社製、D50:0.72μm)
・タルク(ファイマテック社製、D50:10.2×1.02μm)
・気相法シリカ(HDK-T30、ワッカー社製、D50:0.2μm)
【0062】
(その他)
・塩化マグネシウム
【0063】
2.プレコート液の調製
[実施例1~19および比較例1]
下記の表1および表2に示すように、親水性ポリマー、親水性溶媒、および水と、必要に応じて樹脂微粒子や無機微粒子とを混合し、プレコート液を調製した。
【0064】
[比較例2]
以下の成分を混合し、プレコート液を調製した。
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート:14.70質量部
ジプロピレングリコールジアクリレート:32.90質量部
プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート:11.20質量部
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド:9.80質量部
イソプロピルアルコール:15.00質量部
1-ブチルアルコール:15.00質量部
UV-12(FLORSTABUV-12、KromaChem製):0.70質量部
TEGORAD2100(エボニックデグサ社製):1.00質量部
【0065】
[比較例3]
以下の成分を混合し、プレコート液を調製した。
重質炭酸カルシウム(三共製粉社製、エスカロン♯200、D50:4.9μm):100質量部
完全ケン化ポリビニルアルコール(PVA117、クラレ社製):3.0質量部
完全ケン化ポリビニルアルコール(PVA103、クラレ社製):1.0質量部
ポリアミンエピハロヒドリン系樹脂(DK6800、星光PMC社製):15.0質量部
水:32.0質量部
【0066】
[比較例4]
以下の成分を混合し、プレコート液を調製した。
ポリアリルアミン塩酸塩重合体(PAA-HCL-3L、ニットーボーメディカル社製):20質量部
1,2-ヘキサンジオール:5質量部
トリエタノールアミン:1質量部
BYK-347(ビックケミー社製):0.2質量部
プロキセルXL2(ロンザ社製):0.2質量部
イルガキュア819DW(BASF社製):2質量部
水:71.6質量部
【0067】
3.評価
上記プレコート液を、以下の方法で評価した。
【0068】
(1)紙の質感評価
上記各プレコート液を、インクジェット装置(コニカミノルタ社製KM-1)にて、記録媒体(王子製紙社製、OKトップコート紙128g/m2)に、それぞれ塗布量0.3g/m2となるように塗布した。塗布パターンは、30mm×30mmの正方形のベタ画像とした。比較例1のプレコート液に関しては、波長385nmの光を露光量30mJで照射して硬化させた。それ以外のプレコート液に関しては、80℃で乾燥オーブンにて5分加熱乾燥させてから評価した。評価は、目視により、以下の基準で行った。
〇:記録媒体の風合いを損ねていない
△:記録媒体の風合いをやや損ねている
×:記録媒体の風合いが損なわれている
【0069】
(2)インク浸透性評価
上記各プレコート液を、インクジェット装置(コニカミノルタ社製KM-1)にて、記録媒体(王子製紙社製、OKトップコート紙128g/m2)に、それぞれ塗布量0.3g/m2となるように塗布し、乾燥させた。塗布パターンは、30mm×30mmの正方形のベタ画像とした。また、比較例1のプレコート液については、上記紙の質感評価と同様に塗布し、硬化させた。
【0070】
一方で、UV硬化性インク(コニカミノルタ社製KM-1シアンインク)を準備した。そして、上記記録媒体のプレコート液を塗布した領域に、接触角計PCA-11を用いてUV硬化性インクを0.1μl滴下した。そしてこのときの状態を、接触角計の画像観察を利用して目視で観察し、以下の基準で評価した。
〇:UV硬化性インクの滴下から5秒経過しても、UV硬化性インクが記録媒体上に残っている
△:UV硬化性インクの滴下から1秒経過しても、UV硬化性インクが記録媒体上に残っているが、5秒経過までに染み込む
×:UV硬化性インクの滴下から1秒経過までに染み込む
【0071】
(3)インク濡れ広がり評価
上記各プレコート液を、インクジェット装置(コニカミノルタ社製KM-1)にて、記録媒体(王子製紙社製、OKトップコート128)に、それぞれ塗布量0.3g/m2となるように塗布した。塗布パターンは、全ベタ画像とした。プレコート液塗布後、一度80℃、5分間乾燥オーブンで乾燥させてから画像印字へ進めた。また、比較例1のプレコート液については、上記紙の質感評価と同様に塗布し、硬化させた。一方、上記と同様のUV硬化性インクをインクジェット装置(コニカミノルタ社製KM-1)に充填した。当該インクジェット装置に、記録媒体を600m/sで搬送し、上記プレコート液を塗布した領域上にUV硬化性インクを塗布し、10%濃度のハーフトーン画像を形成した。そして、UV-LEDランプから、波長385nm、露光量500mJ/cm2の光を照射し、当該印刷物を10枚作製した。その後、ハーフトーン部のドット径を観察した。そして、以下の基準で評価した。なお上記記録媒体上に、(プレコート液を塗布せずに)UV硬化性インクによって10%濃度のハーフトーン画像を形成した場合、記録媒体上に形成されるハーフトーン部のインク硬化物のドットの径は、40~50μmである。
〇:得られた印刷物の、インク硬化物のドット径が65μm以上
△:得られた印刷物の、インク硬化物のドット径が50μm以上65μm未満
×:得られた印刷物の、インク硬化物のドット径が50μm未満
【0072】
(4)定着性評価
上記インク濡れ広がり評価と同様に、記録媒体上にプレコート液を塗布し、その後、UV硬化性インクによって、30mm×30mmのべた画像を形成した。得られた印刷物を、押切カッターで裁断した。そして、裁断面に沿ってニチバン社製セロハンテープ(植物系)を貼りつけ、印刷物と引張方向とが90°となるように維持しながら、セロハンテープを剥離した。剥離後のセロハンテープを目視にて確認し、以下のように評価した。
〇:セロハンテープに剥がれが全くつかない
△:セロハンテープに印刷物(UV硬化性インクの硬化物)の一部が付着する
×:セロハンテープの全面に、印刷物が付着する
【0073】
(5)ドットの鮮鋭性評価
上記インク濡れ広がり評価と同様に、記録媒体上にプレコート液を塗布し、その後、UV硬化性インクによって、10%濃度のハーフトーン画像を形成した。得られた印刷物について、ハーフトーン部のドットの形状を観察した。
○:ドットの輪郭が鮮明である
△:ドットの輪郭がぼやけているが実用上問題なし
×:ドットの輪郭が不鮮明であり実用不可
【0074】
(6)カール特性
記録媒体(王子製紙社製、OKTC128)上にワイヤーバー♯3で、上述のプレコート液を塗布し、乾燥オーブンに入れて80℃で5分間乾燥させた。なお、比較例1のプレコート液については、上述と同様に光硬化させた。その後、当該印刷物を平板の上に置き、四隅の浮きを観察した。評価は、以下の基準で行った。
○:四隅の浮きの最大値が10mm未満
△:四隅の浮きの最大値が10mm以上25mm未満
×:四隅の浮きの最大値が25mm以上
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
上記表1~表3に示すように、親水性ポリマーと、親水性溶媒と、水と、を含み、かつ親水性ポリマーの量が、親水性溶媒の量100質量部に対して1質量部以上100質量部以下である場合には、記録媒体の質感を損ないにくかった(実施例1~19および比較例1)。ただし、樹脂微粒子を含まない場合には、UV硬化性インクが浸透しやすかった(比較例1)。これに対し、樹脂微粒子を含むと、UV硬化性インクが浸透し難く、かつその濡れ広がり性や定着性も良好であった。さらに、ドットの先鋭性も良好であった(実施例1~19)。
【0079】
また、表3に示すように、UV硬化性のプレコート液を使用した場合には、インク浸透性等は良好であったものの、記録媒体の質感が損なわれやすかった(比較例2)。また、親水性溶媒を含まないプレコート液を用いた場合には、水が紙中のセルロースの水素結合を切って乾燥時に再結合してしまうために、カールしやすく搬送性を損ねてしまった(比較例3)。さらに、親水性ポリマーと、親水性溶媒と、水と、を含んだとしても、樹脂微粒子を含まず、さらに親水性溶媒に対する親水性ポリマーの量が多い場合には、UV硬化性インクが表面に留まり難く、インク浸透性評価が悪かった(比較例4)。さらにこの場合、インク濡れ広がり性も低かった。
本発明のプレコート液を塗布することにより、活性線硬化型インクを、吸収性を有する記録媒体上にも塗布可能となる。さらにこのとき、記録媒体の質感も損なわれ難い。したがって、種々の印刷分野において、有用である。