(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018892
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ワーク保持装置
(51)【国際特許分類】
B24C 9/00 20060101AFI20220120BHJP
B24C 3/32 20060101ALI20220120BHJP
B23Q 3/15 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B24C9/00 J
B24C3/32 Z
B23Q3/15 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122320
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】591205732
【氏名又は名称】マコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】村山 一成
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016GA01
(57)【要約】
【課題】ウエットブラストによるワーク加工において、加工時にワークを確実に保持することを可能とするワーク保持装置を提供すること。
【解決手段】ワークWにスラリSを噴射する際に使用されるワーク保持装置であって、前記ワークWを載置するワーク載置部2を有し、このワーク載置部2の近傍には磁石3が設けられ、前記ワークWは前記磁石3による着磁により前記ワーク載置部2に保持されるように構成されていることを特徴とするワーク保持装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークにスラリを噴射する際に使用されるワーク保持装置であって、前記ワークを載置するワーク載置部を有し、このワーク載置部の近傍には磁石が設けられ、前記ワークは前記磁石による着磁により前記ワーク載置部に保持されるように構成されていることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
請求項1記載のワーク保持装置において、前記ワーク載置部は基体の上部に設けられ、また、この基体の内部に前記磁石が設けられていることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載のワーク保持装置において、前記ワーク載置部は、前記スラリを噴射するブラスト処理部の位置決め部に設けられていることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項4】
請求項2~3いずれか1項に記載のワーク保持装置において、前記基体は適宜な合成樹脂製であることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項5】
請求項4記載のワーク保持装置において、前記基体はゴム製であることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項6】
請求項2~5いずれか1項に記載のワーク保持装置において、前記位置決め部には突体が設けられ、この突体に前記基体が被嵌されていることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項7】
請求項6記載のワーク保持装置において、前記基体は前記位置決め部に磁石の着磁により保持されるように構成されていることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項に記載のワーク保持装置において、前記ワークとして前記ワーク載置部に被嵌載置される凹部が設けられたワークを採用し、この凹部内に前記ワーク載置部が挿入されて前記ワークが固定保持されるように構成されていることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項9】
請求項1~7いずれか1項に記載のワーク保持装置において、前記ワークとして前記ワーク載置部に形成した凹所に嵌合する凸状部が設けられたワークを採用し、前記凹所において凸状部を嵌合して前記ワークが固定保持されるように構成されていることを特徴とするワーク保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば切削工具で使用される切削チップ(スローアウェイチップ)の製造過程において、切削チップの刃部の耐久性を向上させるなどの目的で、刃部に湾曲部(アール部)を設けることが行われており、このアール部を設ける手段として、ウエットブラスト処理が採用され、そのウエットブラスト装置として、例えば特許文献1に開示されるウエットブラスト処理装置(以下、「従来例」という。)が提案されている。
【0003】
この従来例は、
図9に図示したように、切削チップ51の表裏面を両側から挟み込んで保持する一対の回転軸52,53と、この一対の回転軸52,53で保持した切削チップ51に、液体と砥粒との混合物であるスラリSを圧縮空気とともに噴射するブラストガン54とを有するもので、一対の回転軸52,53で挟み込んで保持し軸回転させた切削チップ51にブラストガン54からスラリSを圧縮空気とともに噴射することで該切削チップ51の刃部にアール部を設けたり、また、切削チップ51の表面を研磨処理したりするものである。
【0004】
ところで、従来例は、前述したように切削チップ51を一対の回転軸52,53で両面から挟み込んで保持する構成であり、切削チップ51は、内孔縁51’と回転軸52,53のテーパー先端部52’,53’との当接による挟持のため、挟持が安定せず、切削チップ51が脱落してしまうおそれがあり、連続処理には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、従来に無い実用的なワーク保持装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
ワークWにスラリSを噴射する際に使用されるワーク保持装置であって、前記ワークWを載置するワーク載置部2を有し、このワーク載置部2の近傍には磁石3が設けられ、前記ワークWは前記磁石3による着磁により前記ワーク載置部2に保持されるように構成されていることを特徴とするワーク保持装置に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載のワーク保持装置において、前記ワーク載置部2は基体1の上部に設けられ、また、この基体1の内部に前記磁石3が設けられていることを特徴とするワーク保持装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載のワーク保持装置において、前記ワーク載置部2は、前記スラリSを噴射するブラスト処理部4の位置決め部5に設けられていることを特徴とするワーク保持装置に係るものである。
【0011】
また、請求項2~3いずれか1項に記載のワーク保持装置において、前記基体1は適宜な合成樹脂製であることを特徴とするワーク保持装置に係るものである。
【0012】
また、請求項4記載のワーク保持装置において、前記基体1はゴム製であることを特徴とするワーク保持装置に係るものである。
【0013】
また、請求項2~5いずれか1項に記載のワーク保持装置において、前記位置決め部5には突体6が設けられ、この突体6に前記基体1が被嵌されていることを特徴とするワーク保持装置に係るものである。
【0014】
また、請求項6記載のワーク保持装置において、前記基体1は前記位置決め部5に磁石17の着磁により保持されるように構成されていることを特徴とするワーク保持装置に係るものである。
【0015】
また、請求項1~7いずれか1項に記載のワーク保持装置において、前記ワークWとして前記ワーク載置部2に被嵌載置される凹部Waが設けられたワークWを採用し、この凹部Wa内に前記ワーク載置部2が挿入されて前記ワークWが固定保持されるように構成されていることを特徴とするワーク保持装置に係るものである。
【0016】
また、請求項1~7いずれか1項に記載のワーク保持装置において、前記ワークWとして前記ワーク載置部2に形成した凹所15に嵌合する凸状部Wbが設けられたワークWを採用し、前記凹所15において凸状部Wbを嵌合して前記ワークWが固定保持されるように構成されていることを特徴とするワーク保持装置に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述のように構成したから、ワークを脱落することなく確実に保持することができ、そのため良好なワーク表面処理が行えることになるなど、従来に無い実用的なワーク保持装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】ブラスト処理部の使用状態を示す正面図である。
【
図4】スラリ噴射時におけるブラスト処理部の使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
ワークWを載置するワーク載置部2の近傍に設けられた磁石3により前記ワーク載置部2に載置された前記ワークWは前記ワーク載置部2に安定的に保持される。
【実施例0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、ワークWにスラリSを噴射する際に使用されるワーク保持装置であって、前記ワークWを載置するワーク載置部2を有し、このワーク載置部2の近傍には磁石3が設けられ、前記ワークWは前記磁石3による着磁により前記ワーク載置部2に保持されるように構成されているワーク保持装置である。
【0023】
具体的には、前記ワーク載置部2は基体1の上部に設けられ、またこの基体1の内部に適宜な磁力の前記磁石3が設けられている。詳細には、アルミ製の金属を素材とする磁石固定部10の上部に前記ワークWを着磁により保持する前記磁石3が設けられ、また、前記磁石固定部10の底面部に前記基体1を位置決め部5へ着磁により載置固定状態を保持する磁石17が設けられており、合わせて2つの磁石3,17が前記磁石固定部10に設けられている。
【0024】
また、
図5で示されているように、前記ワーク載置部2には前記ワークWを位置決めする突起部2aが設けられており、前記ワークWの凹部Waと嵌合する構成となっている。
【0025】
また、スラリSを噴射するブラスト処理部4には前記位置決め部5が設けられ、この位置決め部5に前記ワーク載置部2が設けられている。前記位置決め部5には突体6が突設され、この突体6に前記基体1が嵌合され、前記ワーク載置部2が位置決めされる。尚、前記基体1と位置決め部5は凹凸嵌合する構造となっている。
【0026】
また、この基体1は適宜な合成樹脂を素材としており、より具体的にはゴム製である。
【0027】
以下に本実施例のワーク保持装置を具体的に説明する。
【0028】
図3及び
図4で示されているように、本実施例は、ワーク処理装置に設けられた前記ブラスト処理部4において使用されるもので、回転台11上の両側に前記位置決め部5が設けられ、この位置決め部5に突設された前記突体6に前記基体1が被嵌され、また、前記回転台11は軸14を中心に180°回転することで前記ブラスト処理部4の内部位置若しくは外部位置に配置される。
【0029】
尚、前記ブラスト処理部4の内部及び外部の間にはシャッター12が設けられており、前記回転台11の回転に合わせて開閉作動する。
【0030】
また、前記ブラスト処理部4の内部には、上部から降下して前記ワークWを固定するワーク固定装置7、スラリを噴射するブラスト噴射部8及びこのブラスト噴射部8を所望の位置に移動させるブラストアーム9によって構成されている。
【0031】
前記ブラスト処理部4の外側において、前記ワークWを前記ワーク載置部2へ搬送するワーク搬送装置13により保持された前記ワークWを前記ワーク載置部2へ載置し、続いて軸14を中心として前記回転台11を回転させて前記ブラスト処理部4の内部へ移動させ、前記ブラスト処理部4の内部に設けられたワーク固定装置7を上方から降下させることで前記ワークWを固定し、続いてブラストアーム9によりブラスト噴射部8を操作し前記ワークWに前記スラリSを噴射してブラスト加工を行う。
【0032】
本実施例は上記のように構成したから次の作用効果を有する。
【0033】
ワーク保持に磁石3を採用した構成であるから、ワークの着脱が容易である一方、ワークを脱落させることなく確実に保持できることから、機械による自動制御によってワーク加工を行う方法として適したワーク保持装置となる。
【0034】
すなわち、ワーク加工は作業効率の観点からワークのスピーディーな載置作業が求められる。しかし、ワークWが薄いリング状の形状を有している場合、前記ワークWを前記ワーク載置部2へ載置する速度によっては載置状態が不安定となり、脱落のおそれがある。本実施例では前記ワーク載置部2の下部に前記磁石3が設けられているため、この磁石3の着磁により前記ワークWが安定的に載置され脱落する危険性は可及的に防止される。
【0035】
また、前記ワークWの凹部Waと前記ワーク載置部2の突起部2aの凹凸嵌合により、前記磁石3と前記ワークWを結んだ鉛直線に対して直交方向(水平方向)へ前記ワークWが動くことはなく、したがって、前記ワーク載置部2へ前記ワークWを安定した状態で載置することが可能である。
【0036】
また本実施例では、前記基体1を位置決め部5へ固定するために磁石17を採用している。ウエットブラストを使用したワーク加工を行う場合、治具の取り付け方法としてネジ止めが考えられるが、ネジ止めは、治具交換時にネジを回す、若しくはネジを外すという作業が必要となり、作業工程が複雑になるため自動制御を前提とした加工には適さない。また、ネジに研磨材が付着するとネジが締めにくくなるので、治具の取り付け時にネジ及びネジ穴の研磨材を除去する必要が生じる。この点、本実施例のように前記磁石17の磁力によって前記基体1を位置決め部5へ固定する構造であれば、ネジのように取り付けに複雑な工程を要する固定用の部材を設けることなく簡易な操作によって治具の取り付けが可能である。
【0037】
機械へ治具を固定する機構を設ける場合には、当然固定機構のためのスペースが余分に必要となり、また、ウエットブラスト装置内(ブラスト処理部内)に固定機構を設ける場合、スラリに含まれる研磨材によって固定機構が損傷しないようにカバーやシールを設ける必要があり、その分コスト高となってしまう。しかし、本実施例のように固定機構に磁石17を用いた場合、磁石17自体はワーク保持装置の内部に設けられるため、固定機構のためにスペースを割く必要がなく、また、この場合の固定機構である磁石17は前記基体1によって保護されるため研磨材による損傷の問題は生じない。
【0038】
さらに、前記基体1は素材としてゴムを採用していることから、スラリ投射に対して耐摩耗性が高く、衝撃に弱い磁石の破損防止にもなる。また、基体1の外側、すなわちワークWに接する面がゴム製であるためワークに傷が生じることを防止できる。
【0039】
また、ブラスト処理部内の部品が金属であり、凹部と凸部の嵌合構造の場合、嵌合の隙間に入った研磨材によって取り外しが困難になる。しかし、本実施例における前記基体1はゴムを素材として構成されており、ゴムの弾力性により挟まった研磨材が逃げるため、前記基体1の取り外しが容易となる。
【0040】
図6に図示した別例は、前記ワーク載置部2へ載置した前記ワークWを着磁によって保持するための前記磁石3と、前記基体1を前記位置決め部5へ着磁によって固定するための前記磁石17を一体とした磁石18を採用したものである。
【0041】
また、
図7,
図8も本実施例の別例であり、前記ワークWが凸状部Wbを有する場合に有効なもので、前記ワーク載置部2には凹所15が設けられ、この凹所15にワークWの凸状部Wbが嵌合する構成となっている。また、この場合において、前記ワークWを前記ワーク載置部2へ着磁するための前記磁石3は円筒状の形状を有しており、前記磁石固定部10に対して前記ワーク載置部2の外周を覆うように設けられている。尚、この場合は凹所15にワークWが嵌合するためワーク固定装置7は不要である。
【0042】
符号16は凹所15に溜まった水や研磨材を排出する排水路16である。
【0043】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。