(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188932
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】骨材粒度分布推定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20221215BHJP
G01N 15/02 20060101ALI20221215BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221215BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01N15/02 B
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097226
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】矢野 慧一
(72)【発明者】
【氏名】赤羽根 駿之介
【テーマコード(参考)】
2G059
5L096
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059AA10
2G059BB08
2G059BB09
2G059BB20
2G059EE13
2G059FF01
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
5L096AA02
5L096AA09
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA35
5L096EA37
5L096FA06
5L096FA32
5L096FA33
5L096FA59
5L096FA65
5L096GA40
5L096GA41
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】コンクリートを作成する際に、混入する骨材の粒度分布の計測を行う作業者の負担を低減し、かつ簡易に骨材の粒度分布を求めることができる骨材粒度分布推定システムを提供する。
【解決手段】本発明の骨材粒度分布推定システムは、コンクリートを生成する際に混入する骨材の粒度分布を推定するシステムであり、堆積した骨材の表面を撮像した撮像画像である骨材表面画像から、撮像された骨材の各々の特徴量として、少なくとも骨材の輪郭長、輪郭面積及び円形度から求めた形状特徴量を抽出する形状特徴抽出部と、骨材表面画像から、撮像されている骨材の各々の特徴量として、少なくとも骨材の色成分の階調度、色相、彩度及び明度から求めた色特徴量を抽出する色特徴抽出部と、形状特徴量及び色特徴量を入力することで、骨材の粒度分布を所定の機械学習モデルを用いて推定する粒度分布推定部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを生成する際に混入する骨材の粒度分布を推定する骨材粒度分布推定システムであり、
堆積した骨材の表面を撮像した撮像画像である骨材表面画像から、撮像されている骨材の各々の特徴量として、少なくとも骨材の輪郭長、輪郭面積及び円形度のそれぞれから求めた形状特徴量を抽出する形状特徴抽出部と、
前記骨材表面画像から、撮像されている骨材の各々の特徴量として、少なくとも骨材の色成分の階調度、色相、彩度及び明度のそれぞれから求めた色特徴量を抽出する色特徴抽出部と、
前記形状特徴量及び前記色特徴量の各々が入力されることにより、前記骨材の粒度分布を所定の機械学習モデルを用いて推定する粒度分布推定部と
を備えることを特徴とする骨材粒度分布推定システム。
【請求項2】
前記形状特徴抽出部が、
前記骨材表面画像における前記粗骨材の各々の前記輪郭長、前記輪郭面積及び、前記円形度のそれぞれの特徴量の合計値、平均値、標準偏差を求めて前記形状特徴とし、
前記色特徴抽出部が、前記骨材表面画像における前記粗骨材の各々の前記色成分の階調度、前記色相、前記彩度、前記明度のそれぞれの特徴量を複数の特徴量の大きさの範囲に分類し、それぞれの前記範囲の出現割合を求めて前記色特徴とする
ことを特徴とする請求項1に記載の骨材粒度分布推定システム。
【請求項3】
前記色成分が、色成分R、色成分G及び色成分Bの各々と、前記色成分R、前記色成分G,前記色成分Bのそれぞれから求めたグレースケールとである
ことを特徴とする請求項2に記載の骨材粒度分布推定システム。
【請求項4】
前記機械学習モデルを、粒度分布が既知の粗骨材の堆積物の表面を撮像した前記骨材表面画像から抽出した前記形状特徴及び前記色特徴の各々を、教師データとして用いて学習させる機械学習モデル生成部を
さらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の骨材粒度分布推定システム。
【請求項5】
機械学習モデル生成部が、
前記教師データを学習用データと検証用データとに所定の比率で分割し、前記学習用データで前記機械学習モデルを学習させ、当該機械学習モデルの推定結果の正答率を前記検証用データにより求める学習処理を、前記検証用データを前記学習用データの一部と入れ替えて所定の回数行う
ことを特徴とする請求項4に記載の骨材粒度分布推定システム。
【請求項6】
前記機械学習モデルの学習において、当該機械学習モデルの学習結果に対する前記形状特徴及び前記色特徴の各々の貢献度を、並び替え重要性の手法を用いて評価する
特徴量重要性評価部
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の骨材粒度分布推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨材粒度分布推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート構造物を作成する際、コンクリートが硬化することによる収縮・ひび割れなどを低減させるため、生コンクリートに骨材が混入されて用いられる。
すなわち、コンクリートは、水、セメント、粗骨材(砂利)、細骨材(砂)の4つの素材で構成されており、重量の大半を占める骨材の品質管理は重要である。
そして、コンクリートを使用する用途、目的、強度やコンクリートの種類により、コンクリートに混入する粗骨材における骨材の粒度分布が異なる。
このため、粗骨材や細骨材の粒度は、コンクリート構造物の強度計算において重要なパラメータとして用いられている。
【0003】
一方、骨材の粒度を一定にしようとして、骨材のふるい分けが行われるが、同一の粒度(骨材の粒子径)としてふるい分けられた骨材であっても、異なった粒度の骨材が混ざり合った粒度分布(骨材の粒子群の粒子径の分布)を有している。
このため、骨材の粒度を計測する方法として、日本工業規格(JIS A1102:2014)において、「骨材ふるい分け試験方法」として規定されている。
しかし、上記「骨材ふるい分け試験方法」は、試験を行う作業者の負担が大きく、頻繁に実施することは難しい。
【0004】
このため、「骨材ふるい分け試験方法」に比較して、作業者の負担を低減するため、測定板上に粗骨材を単層状に広げて、骨材を撮像した撮像画像を画像解析して、粒度分布を測定するシステムがある(例えば、特許文献1参照)。
また、粗骨材をベルトコンベアに散布し、当該ベルトコンベア上における粗骨材を撮像して、撮像された骨材の各々の輪郭を抽出し、粒度分布を測定するシステムがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、粗骨材を筒状に散布して落下させ、落下する粗骨材を撮像して、撮像された粗骨材の各々の輪郭を抽出し、この輪郭を用いて骨材の各々の粒度を計測することで粒度分布を測定するシステムがある(例えば、特許文献3参照)。
細骨材の顕微鏡写真を撮像した撮像画像を画像処理することにより、細骨材の各々の形状を等価的に円形状におきかえて、粒度を計測するシステムがある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-268051号公報
【特許文献2】特開2003-010726号公報
【特許文献3】特開2016-070714号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】伊藤康司、辻本一志、鈴木一雄、辻幸和、「画像処理システムを活用した細骨材粒度の簡易検査方法の開発」、Cement Science and Concrete Technology. 63, 227-232, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した先行技術の各々は、「骨材ふるい分け試験方法」と異なり、試験を行う作業者の負担は低減できるが、骨材を撮像して粒度分布を解析する際に、それぞれに特殊な設備を必要とする。
このため、実際にコンクリート構造物を作成する工事現場や、コンクリートを生成する生コンクリート(レディーミクストコンクリート)製造工場などにおいて、上述した設備を設けることは困難である。
【0009】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、コンクリートを作成する際に、混入する骨材(粗骨材、細骨材)の粒度分布の計測を行う作業者の負担を低減し、かつ簡易に骨材の粒度分布を求めることができる骨材粒度分布推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の骨材粒度分布推定システムは、コンクリートを生成する際に混入する骨材(粗骨材あるいは細骨材)の粒度分布を推定する骨材粒度分布推定システムであり、堆積した骨材の表面を撮像した撮像画像である骨材表面画像から、撮像されている骨材の各々の特徴量として、少なくとも骨材の輪郭長、輪郭面積及び円形度のそれぞれから求めた形状特徴量を抽出する形状特徴抽出部と、前記骨材表面画像から、撮像されている骨材の各々の特徴量として、少なくとも骨材の色成分の階調度、色相、彩度及び明度のそれぞれから求めた色特徴量を抽出する色特徴抽出部と、前記形状特徴量及び前記色特徴量の各々が入力されることにより、前記骨材の粒度分布を所定の機械学習モデルを用いて推定する粒度分布推定部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンクリートを作成する際に、混入する骨材(粗骨材、細骨材)の粒度分布の計測を行う作業者の負担を低減し、かつ簡易に骨材の粒度分布を求めることができる骨材粒度分布推定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による骨材粒度分布推定システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態における骨材表面画像の撮像を説明する図である。
【
図3】本実施形態における特徴量記憶部19に書き込まれて記憶されている特徴量テーブルの構成例を示す図である。
【
図4】骨材撮像画像識別情報と粗骨材の粒度分布との対応を示すテーブルの構成例を示す図である。
【
図5】本実施形態による骨材粒度分布推定システムによる粒度分布が未知の粗骨材の粒度分布を既知の粒度分布の各々に分類する処理の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による骨材粒度分布推定システムの構成例を示すブロック図である。
図1において、骨材粒度分布推定システム10は、データ入出力部11、撮像画像前処理部12、形状特徴抽出部13、色特徴抽出部14、機械学習モデル生成部15、粒度分布推定部16、特徴量重要性評価部17、画像データ記憶部18、特徴量記憶部19、機械学習モデル記憶部20及び教師データ記憶部21の各々を備える。以下、骨材の一例として粗骨材を例に説明するが、細骨材に関しても同様の処理が行える。
【0014】
データ入出力部11は、外部装置とのデータの送受信を行う。また、データ入出力部11は、外部装置から供給される粗骨材を撮像した撮像画像である骨材表面画像のデータを、骨材表面画像識別情報を付与して、画像データ記憶部18に書き込んで記憶させる。上記骨材表面画像は、例えば、外光を遮蔽した暗箱のような閉鎖空間において撮像する。
【0015】
図2は、本実施形態における骨材表面画像の撮像を説明する図である。
図2(a)は、撮像する対象である粗骨材をバケットのような上部が開放された容器に堆積させ、その堆積した粗骨材の表面を撮像して撮像画像101を取得することを示す図である。
図2(b)は、取得した撮像画像101を粗骨材表面のみの画像領域となるようにトリミングを行い、このトリミング結果を骨材表面画像102とする。
【0016】
図2(c)は、骨材表面画像を撮像する手法の一例を示している。外光を遮蔽する暗箱のような容器200内に、粗骨材202を堆積させたバケット201を配置する。そして、堆積した粗骨材202の表面を、フラッシュ211を発光させたタイミングにおいて、撮像装置210により撮像する。これにより、骨材表面画像を撮像する撮像環境を一定とすることができ、複数の骨材表面画像を同一の条件で撮像することができる。また、本実施形態においては、骨材表面画像の各々を撮像する際における撮像装置のカメラパラメータも同一とする。
【0017】
図1に戻り、撮像画像前処理部12は、上述したトリミングの処理を行って骨材表面画像を取得するとともに、骨材表面画像の粗骨材の各々の画像領域における他の粗骨材の影を消す処理などを行う。そして、撮像画像前処理部12は、処理後の骨材表面画像を、骨材表面画像識別情報に対応させて画像データ記憶部18に対して書き込んで記憶させる。
【0018】
形状特徴抽出部13は、骨材表面画像における粗骨材の各々の輪郭の抽出の処理を行う。そして、形状特徴抽出部13は、抽出された輪郭の各々の外周の長さを輪郭長として求め、抽出された輪郭の全ての輪郭長を加算して、輪郭長の合計値である輪郭長合計値を形状特徴量の一つとして取得する。また、形状特徴抽出部13は、形状特徴量として、輪郭の各々の上記輪郭長の平均値を求めて輪郭長平均値とし、輪郭の各々の輪郭長の標準偏差を求めて輪郭長標準偏差とする。
【0019】
同様に、形状特徴抽出部13は、抽出された輪郭の内部の面積を輪郭面積として求め、抽出された輪郭の全ての輪郭面積を加算して、輪郭面積の合計値である輪郭面積合計値を形状特徴量の一つとして取得する。また、形状特徴抽出部13は、形状特徴量として、輪郭の各々の上記輪郭面積の平均値を求めて輪郭面積平均値とし、輪郭の各々の輪郭面積の標準偏差を求めて輪郭面積標準偏差とする。
【0020】
形状特徴抽出部13は、抽出された輪郭の輪郭線の形状の円形度である輪郭円形度を求め、抽出された輪郭の全ての輪郭円形度を加算して、輪郭円形度の合計値である輪郭円形度合計値を形状特徴量の一つとして取得する。ここで、形状特徴抽出部13は、下記の(1)式により、粗骨材の各々の輪郭線の円形度circを算出する。この(1)式において、areaは粗骨材の輪郭面積であり、lengthは粗骨材の輪郭長である。
circ=4π×area/(length)2 …(1)
【0021】
また、形状特徴抽出部13は、形状特徴量として、輪郭の各々の上記輪郭円形度の平均値を求めて輪郭円形度平均値とし、輪郭の各々の輪郭円形度の標準偏差を求めて輪郭円形度標準偏差とする。そして、形状特徴抽出部13は、特徴量記憶部19に対して取得した形状特徴量の各々を書き込んで記憶させる。
【0022】
色特徴抽出部14は、骨材表面画像におけるピクセルの各々の色情報を抽出して、骨材表面画像の色特徴量の取得を行う。色情報としては、例えば、骨材表面画像におけるピクセルの各々の色成分R、G及びBのそれぞれの階調度の平均値を求め、R平均値、G平均値、B平均値を取得する。このとき、色特徴抽出部14は、骨材表面画像におけるピクセルの各々において、色成分R、G及びBからグレースケールを求め、グレースケールの平均値であるグレースケール平均値を求める。そして、色特徴抽出部14は、特徴量記憶部19に対して取得したR平均値、G平均値及びB平均値の各々を書き込んで記憶させる。
【0023】
また、色情報としては、色成分R、G、B及びグレースケールの各々の階調度を複数の範囲にそれぞれ分割し、例えば256階調であれば、0-31、32-63、64-95、96-127、128-159、160-191、192-223、224-255のそれぞれ8個の階級に分類する。そして、色特徴抽出部14は、それぞれの階級に含まれるピクセル数を、骨材表面画像の全てのピクセル数で除算し、各階級における除算結果をそれぞれの階級の出現割合とする。
【0024】
例えば、色特徴抽出部14は、色成分Rの8個の階級におけるピクセル数を骨材表面画像の全てのピクセル数で除算し、0-31の階調度の階級の除算値から224-255の階級の除算値まで求め、色成分Rの階調度の各階級の出現割合を求める。また、色特徴抽出部14は、色成分Rの8個の階級における最大及び最小の出現割合の値が1及び0となるように、出現割合の標準化(規格化)処理を行い、取得した色成分Rの出現割合の各々(8階級の各々の色成分R出現割合)を特徴量記憶部19に対して書き込んで記憶させる。色特徴抽出部14は、色成分G、B及びグレースケールの各々に対しても色成分Rと同様の処理を行い、取得される色成分G出現割合、色成分B出現割合、グレースケール出現割合の各々を特徴量記憶部19に対して書き込んで記憶させる。
【0025】
また、色特徴抽出部14は、他の色特徴量として、骨材表面画像の全てのピクセルの各々における、HSV表示の色相H、彩度S、明度Vそれぞれの平均値を求め、色相平均値、彩度平均値、明度平均値を取得する。そして、色特徴抽出部14は、特徴量記憶部19に対して取得した色相平均値、彩度平均値及び明度平均値の各々を書き込んで記憶させる。色特徴抽出部14は、色相H、彩度S、明度Vそれぞれの数値の範囲を階調度と同様に、8個の階級に分割し、ピクセルの各々を各階級に分類する。
【0026】
例えば、色特徴抽出部14は、色相Hを示す色相スケール0から359の数値を0から255の256階調に変換し、8個の階級に分類し、階調度の場合と同様に、各ピクセルを色相Hに対応して分類し、各階級に分類されたピクセル数を骨材表面画像の全てのピクセルの数により除算する。そして、色特徴抽出部14は、色相Hの階級において最大及び最小の出現割合の値が1及び0となるように、出現割合の標準化処理を行い、標準化された色相出現割合を求める。色特徴抽出部14は、取得した色相出現割合の各々(8階級の各々の色相出現割合)を特徴量記憶部19に対して書き込んで記憶させる。
【0027】
同様に、色特徴抽出部14は、彩度Sを示す0%から100%の数値を0から255の256階調に変換し、8個の階級に分類し、階調度の場合と同様に、各ピクセルを彩度Sに対応して分類し、各階級に分類されたピクセル数を骨材表面画像の全てのピクセルの数により除算する。そして、色特徴抽出部14は、彩度Sの階級において最大及び最小の出現割合の値が1及び0となるように、出現割合の標準化処理を行い、標準化された彩度出現割合を求める。色特徴抽出部14は、取得した彩度出現割合の各々(8階級の各々の彩度出現割合)を特徴量記憶部19に対して書き込んで記憶させる。
【0028】
また、色特徴抽出部14は、明度Vを示す0%から100%の数値を0から255の256階調に変換し、8個の階級に分類し、階調度の場合と同様に、各ピクセルを明度Vに対応して分類し、各階級に分類されたピクセル数を骨材表面画像の全てのピクセルの数により除算する。そして、色特徴抽出部14は、明度Vの階級において最大及び最小の出現割合の値が1及び0となるように、出現割合の標準化処理を行い、標準化された明度出現割合を求める。色特徴抽出部14は、取得した明度出現割合の各々(8階級の各々の明度出現割合)を特徴量記憶部19に対して書き込んで記憶させる。
【0029】
図3は、本実施形態における特徴量記憶部19に書き込まれて記憶されている特徴量テーブルの構成例を示す図である。
図3(a)は、特徴量テーブルの一つである形状特徴量テーブルの構成例を示している。形状特徴量テーブルは、レコード毎に、形状特徴量の特徴量群として、上述した骨材撮像画像識別情報、輪郭長合計値、輪郭長平均値、輪郭長標準偏差、輪郭面積合計値、輪郭面積平均値、輪郭面積標準偏差、輪郭円形度合計値、輪郭円形度平均値及び輪郭円形度標準偏差の各々の欄が設けられている。
【0030】
図3(b)は、特徴量テーブルの一つである色特徴量テーブルの構成例を示している。色特徴量テーブルは、色特徴量の特徴量群として、レコード毎に、上述した骨材撮像画像識別情報、R平均値、色成分R出現割合、G平均値、色成分G出現割合、B平均値、色成分B出現割合、グレースケール平均値、グレースケール出現割合、色相平均値、色相出現割合、彩度平均値、彩度出現割合、明度平均値及び明度出現割合の各々の欄が設けられている。また、色成分R出現割合、色成分G出現割合、色成分B出現割合、グレースケール出現割合、色相出現割合、彩度出現割合及び明度出現割合の各々は、それぞれ階級毎の8個の出現割合の数値の組として一つの欄に書き込まれている。
【0031】
図1に戻り、機械学習モデル生成部15は、上述した形状特徴量及び色特徴量の各々を入力し、出力から粗骨材の骨材粒度分布(以下単に、粒度分布と示す)の推定値を出力する機械学習モデルを生成する。すなわち、本実施形態における機械学習モデルは、複数の粒度分布を分類する分類器であり、形状特徴量及び色特徴量の各々の特徴量データ群を入力することにより、骨材表面画像に撮像されている粗骨材の粒度分布が、ラベル毎にそのラベルに分類された場合の確信度(確からしさを示す推定値、後述する推定値p)を出力する。例えば、本実施形態において、粒度分布#1、#2及び#3の3種類の粒度分布をラベルとしている。そのため、機械学習モデルは、粒度分布#1、#2及び#3のラベル毎に確信度を出力し、最も高い確信度が出力された粒度分布が、骨材表面画像に撮像されている粗骨材の粒度分布である確率が最も高いと推定される。
【0032】
機械学習モデル生成部15は、粒度分布が既知の粗骨材の骨材表面画像を撮像して、機械学習モデルを学習させるためのデータ群を生成する。本実施形態において、例えば、機械学習モデルとして、多層パーセプトロン分類器を用いているが、他のニューラルネットワークなどを用いた分類器のいずれを用いてもよい。また、本実施形態においては、データ群を所定の比率にて分割し、例えば、データ群のデータの80%を機械学習モデルを学習(訓練)させる教師データ群とする。そして、データ群の残りの20%を作成された機械学習モデルの正解率を求めるためのテストデータとして用いる。
【0033】
また、機械学習モデル生成部15は、教師データ群を学習データ群と検証データ群とに所定の比率にて分割し、例えば教師データ群の80%のデータの各々を機械学習モデルの実際の学習(訓練)に用いる学習データ群とする。そして、機械学習モデル生成部15は、教師データ群の残りの20%のデータの各々を学習データ群のデータで学習させた機械学習モデルの正解率の検証に用いる検証データ群とする。ここで、機械学習モデル生成部15は、学習データ群から所定の割合(20%)で一部のデータを抽出し、検証データ群から同一数の教師データを入れ替えて、入れ替え後の新たな学習データ群のデータにより機械学習モデルを学習させ、新たな検証データ群のデータを、機械学習モデルの正解率の検証に用いる。そして、機械学習モデル生成部15は、上述した学習データ群及び検証データ群の各々におけるデータの入れ替え操作を所定の回数行い、機械学習モデルの学習を行う。
【0034】
教師データとして用いる特徴量は、教師データ記憶部21に教師データテーブルとして書き込まれて記憶されている。この教師データテーブルは、
図3に示した形状特徴量テーブルと色特徴量テーブルと同様の構成のテーブルである。そして、教師データテーブルは、粒度分布が既知の粗骨材を撮像した骨材表面画像である教師データ画像を解析して求めた、形状特徴量及び色特徴量の各々が書き込まれて記憶されている。
【0035】
特徴量重要性評価部17は、学習済みモデルの学習に用いた教師データにおける形状特徴量あるいは色特徴量のいずれかの特徴量を選択し、その特徴量のデータを骨材表面画像間で入れ替えた場合の確信度への影響を評価する。
例えば、形状特徴量における輪郭長さのデータを、骨材表面画像識別情報の各々の間でランダムに入れ替えて(シャッフル(shuffle)して)、入れ替え特徴量群を学習済みモデルに入力し、輪郭長さが特徴量として機械学習モデルの学習にどの程度重要なものかを、確信度の低下のレベルにより判定する。この特徴量のデータの入れ替えを、全ての特徴量に対して行うことにより、機械学習モデルの学習における特徴量の重要性を確認することができる。例えば、この結果を用いて、最も大きな確信度の低下の値に対して、所定の割合以下の確信度の低下の値の特徴量を、機械学習モデルの学習に用いず、機械学習モデルをコンパクトにすることが考えられる。
本実施形態においては、特徴量重要性評価部17の処理により、輪郭円形度合計値、輪郭長合計値、彩度平均値、色相出現割合(階調度96-127)、色相出現割合(160-191)、明度出現割合(階調度192-223)、色成分B出現割合(階調度192-223)、輪郭長平均値、色成分B出現割合(階調度0-31)、色相出現割合(0-31)の各々が上位10個の特徴量として抽出された。
【0036】
図4は、骨材撮像画像識別情報と粗骨材の粒度分布との対応を示すテーブルの構成例を示す図である。
図4(a)は、教師データ記憶部21における教師データ情報テーブルの構成例を示している。教師データ情報テーブルは、レコード毎に、骨材撮像画像識別情報、粒度分布種類、用途種別の各々の欄が設けられている。この骨材撮像画像識別情報は、教師データとして用いた粒度分布が既知の粗骨材の骨材表面撮像画像の各々を個別に識別する識別情報である。粒度分布は、骨材表面撮像画像を撮像した粗骨材の粒度分布の種類(学習させる際のラベルとなる粒度分布の種類)を示している。本実施形態において、粒度分布の種類は、例えば3種類を用いており、それぞれ粒度分布#1、粒度分布#2及び粒度分布#3と示されている。用途種別は、教師データである骨材表面撮像画像の各々の特徴量を、それぞれ教師データ群における学習データ群のデータあるいは検証データ群のデータとして用いるか、またはテストデータとして用いるかの種別が示されている。
【0037】
図4(b)は、特徴量記憶部19における推定結果テーブルの構成例を示している。推定結果テーブルは、レコード毎に、骨材撮像画像識別情報、粒度分布#1、粒度分布#2、粒度分布#3の各々の欄が設けられている。この骨材撮像画像識別情報は、粗骨材の粒度分布が未知である骨材表面撮像画像の各々を個別に識別する識別情報である。粒度分布#1の欄は、粒度分布が未知の粗骨材の特徴量が入力されて機械学習モデルが推定した、当該粗骨材の粒度分布がラベルの粒度分布#1に分類されることの確信度(確からしさ)を示す推定値p(例えば、0<p<1)を示している。同様に、粒度分布#2の欄は、粒度分布が未知の粗骨材の特徴量が入力されて機械学習モデルが推定した、当該粗骨材の粒度分布がラベルの粒度分布#2に分類されることの確信度を示す推定値pを示している。粒度分布#3の欄は、粒度分布が未知の粗骨材の特徴量が入力されて機械学習モデルが推定した、当該粗骨材の粒度分布がラベルの粒度分布#3に分類されることの確信度を示す推定値pを示している。
【0038】
図5は、本実施形態による骨材粒度分布推定システムによる粒度分布が未知の粗骨材の粒度分布を既知の粒度分布の各々に分類する処理の動作例を示すフローチャートである。本実施形態において、例として、既知の粒度分布が3種類であり、未知の粒度分布の粗骨材を、これら3種類の粒度分布(ラベル)に分類する機械学習モデル(分類器)の生成処理と、生成した機械学習モデルによる粒度分布が未知の粗骨材を、3種類のラベルに分類する分類処理とを説明する。
【0039】
利用者は、バケットに粒度分布が既知の粗骨材を堆積させ、外光を遮蔽した閉鎖空間において、教師データとして用いる堆積された粗骨材の表面画像である骨材表面撮像画像を撮像装置により撮像する(ステップS1)。そして、撮像画像前処理部12は、撮像された骨材表面撮像画像のトリミングや、陰影の除去などの前処理を行う。
【0040】
形状特徴抽出部13及び色特徴抽出部14は、複数の、すなわち3種類の粒度分布の粗骨材を撮像した骨材表面撮像画像の各々から形状特徴量、色特徴量それぞれを抽出し、教師データ記憶部21における教師データテーブルに対して書き込んで記憶させる。ここで、例えば、粗骨材の3種類の既知の粒度分布の種類毎に、数百枚ずつ骨材表面撮像画像を撮像し、教師データの特徴量データ群として取得する(ステップS2)。
また、機械学習モデル生成部15は、教師データ記憶部21における教師データテーブルの特徴量データ群の80%を教師データとし、20%をテストデータとし、教師データテーブルの用途種別の欄に記載する(ステップS3及びステップS4)。
【0041】
機械学習モデル生成部15は、教師データ記憶部21における教師データテーブルの特徴量データ群(すなわち、教師データ群)のデータの80%(すなわち、データ群の64%)のデータを学習データ群とし、20%(すなわち、データ群の16%)を検証データ群とし、教師データテーブルの用途種別の欄に記載する(ステップS5及びS6)。
そして、機械学習モデル生成部15は、教師データ記憶部21における教師データテーブルの用途種別が学習データ群のデータを用いて、機械学習モデル(分類器)のパラメータ調整を行うことで学習を行う(ステップS7、S8及びS9)。このとき、機械学習モデル生成部15は、教師データ記憶部21における教師データテーブルの用途種別が検証データであるデータを用いて、学習対象の機械学習モデルの分類の確信度を正解率として求める(モデル検証、正誤判定)。また、機械学習モデル生成部15は、検証データ群のデータと学習データ群の一部(例えば、学習データ群の20%)のデータとを交換し、交換後の新たな学習データ群のデータを用いて、生成した機械学習モデルの再学習を行わせる。この検証データ群のデータと学習データ群の一部のデータとを交換した機械学習モデルの再学習(再度のパラメータ調整)を、予め設定した回数分行い、骨材粒度分布推定の学習済み機械学習モデル(学習済みモデル)を生成し、機械学習モデル記憶部20に書き込んで記憶させる。
【0042】
また、機械学習モデル生成部15は、教師データ記憶部21における教師データテーブルの用途種別がテストデータのデータを用いて、骨材粒度分布推定の学習済みモデル(学習済みの機械学習モデル)の学習対象の機械学習モデルの分類の確信度(正誤判定)を正解率として求める(ステップS10、S11)。ここで、機械学習モデル生成部15は、学習済みモデルの正解率が低い場合、ステップS3に戻って、再度の機械学習モデルの学習を行う構成としてもよい。
【0043】
利用者がバケットに粒度分布が未知の粗骨材を堆積させ、外光を遮蔽した閉鎖空間において、堆積された粗骨材の表面画像である骨材表面撮像画像を撮像装置により行う(ステップS12)。そして、撮像画像前処理部12は、撮像された骨材表面撮像画像のトリミングや、陰影の除去などの前処理を行う。
【0044】
形状特徴抽出部13及び色特徴抽出部14は、粒度分布が未知の粗骨材を撮像した骨材表面撮像画像の各々から形状特徴量、色特徴量それぞれを抽出し、特徴量データ群として、付与されている骨材撮像画像識別情報に対応させて、特徴量記憶部19における特徴量テーブルに対して書き込んで記憶させる(ステップS13)。
粒度分布推定部16は、機械学習モデル記憶部20から学習済みモデルを読み出すとともに、特徴量記憶部19の特徴量テーブルから特徴量データ群を読み出す。そして、粒度分布推定部16は、学習済みモデルに特徴量データ群を入力し、出力されるそれぞれのラベルの確信度を、特徴量記憶部19の結果テーブルにおけるラベルの欄に書き込んで記憶させる(ステップS14、S15)。
【0045】
本実施形態によれば、粒度分布が既知の骨材の骨材表面撮像画像から抽出した形状特徴量及び色特徴量を用いて学習させた学習済みモデルに対して、堆積された骨材(例えば、粗骨材)の表面画像である骨材表面撮像画像から抽出した形状特徴量及び色特徴量の各々を入力することで、コンクリートを作成する際に、従来のように大がかりな粒度分布の計測装置を必要とせず、混入する骨材の粒度分布の計測を行う作業者の負担を低減し、かつ簡易に骨材(粗骨材や細骨材)の粒度分布を求めることができる。
また、本実施形態によれば、工事現場や生コンを製造する事業所にて、上述したように簡易に骨材(粗骨材や細骨材)の粒度分布を推定することが可能であり、コンクリート建造物の作成における品質管理と、コンクリート建造物の作成における骨材粒度分布のデータのトレーサビリティとを容易に確保(提供)し、品質不良による手戻りを防止できる。
【0046】
なお、本発明における
図1の骨材粒度分布推定システム10の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、粗骨材の粒度分布の推定処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWW(World Wide Web)システムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM(Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0047】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
10…骨材粒度分布推定システム 11…データ入出力部 12…撮像画像前処理部 13…形状特徴抽出部 14…色特徴抽出部 15…機械学習モデル生成部 16…粒度分布推定部 17…特徴量重要性評価部 18…画像データ記憶部 19…特徴量記憶部 20…機械学習モデル記憶部 21…教師データ記憶部