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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188936
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20221215BHJP
   B66B 23/22 20060101ALI20221215BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B66B31/00 Z
B66B23/22 E
F24F7/06 B
F24F7/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097230
(22)【出願日】2021-06-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 敏満
【テーマコード(参考)】
3F321
3L058
【Fターム(参考)】
3F321CE06
3F321HA00
3L058BB09
3L058BG01
(57)【要約】
【課題】乗客同士の飛沫感染を抑制する。
【解決手段】本実施形態に係る乗客コンベアは、乗車位置と降車位置との間に懸架され、相互に隣接して配置される一組のコンベアと、コンベアそれぞれに設けられ、コンベアと同期して移動する一対の手すりベルトと、一組のコンベアの間に配置される空気管と、空気管に設けられ、一組のコンベアそれぞれの手すりベルトに沿って配置される複数の空気吹き出し口と、空気管へ空気を供給する空気供給装置と、を備える。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗車位置と降車位置との間に懸架され、相互に隣接して配置される一組のコンベアと、
前記コンベアそれぞれに設けられ、前記コンベアと同期して移動する一対の手すりベルトと、
一組の前記コンベアの間に配置される空気管と、
前記空気管に設けられ、一組の前記コンベアそれぞれの前記手すりベルトに沿って配置される複数の空気吹き出し口と、
前記空気管へ空気を供給する空気供給装置と、
を備える乗客コンベア。
【請求項2】
前記空気供給装置を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記コンベアの運転状況に基づいて、前記空気供給装置を駆動して、前記空気管へ空気を供給する請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記制御装置は、前記コンベアが運転されているときに、前記空気供給装置を駆動し、前記コンベアが停止しているときに、前記空気供給装置を停止する請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記空気管へ消毒剤を供給する消毒剤供給装置を備え、
前記制御装置は、前記コンベアが停止しているときに、前記空気供給装置と、前記消毒剤供給装置を駆動する請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記制御装置は、前記コンベアが停止しているときは、前記コンベアが運転されているときよりも、前記空気管へ供給する空気の量を少なくする請求項4に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記空気吹き出し口に設けられ、前記空気吹き出し口からの空気の向きを変えるための整風板を備える請求項1乃至5のいずれか一項に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記空気吹き出し口は、等間隔に配列されている請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどの感染症予防対策が奨励されている。そこで、人が密集するおそれがある場所では、接触感染を回避するための対策が行われている。例えば、商業施設やオフィスビルなどでは、入り口に手指を消毒するためのアルコールディスペンサが設置されたり、飛沫の飛散を防止するための遮蔽板や遮蔽シートなどが設置されたりしている。
【0003】
商業施設や交通機関などでは、上階へ移動するためのエスカレータと、下階へ移動するためのエスカレータとが隣接して配置されることがある。特に、地下鉄などに設置されるエスカレータは、揚程が高く搭乗する時間が長くなることがある。また、天井が低く比較的閉ざされた空間に設置されることもある。この場合、それぞれのエスカレータの乗客同士が長時間対面することになるため、乗客のくしゃみや咳による乗客同士の飛沫感染を防ぐための対策が必要になる。
【0004】
エスカレータが設置される空間は比較的大きい。そのため、隣接して設置されたエスカレータを空間的に分離するためには、エアカーテンを用いることも考えられる。しかしながら、従来は、天井などに設置された送風機によって、乗客の周囲に気流を作っていただけであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-166755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の事情によりなされたもので、隣接したコンベアの空間を分離して、乗客同士の飛沫感染を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本実施形態に係る乗客コンベアは、乗車位置と降車位置との間に懸架され、相互に隣接して配置される一組のコンベアと、コンベアそれぞれに設けられ、コンベアと同期して移動する一対の手すりベルトと、一組のコンベアの間に配置される空気管と、空気管に設けられ、一組のコンベアそれぞれの手すりベルトに沿って配置される複数の空気吹き出し口と、空気管へ空気を供給する空気供給装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る乗客コンベアを示す図である。
図2】実施形態に係るエスカレータの概略的な構成を示す図である。
図3】実施形態に係るカバー及びトラスのXZ断面を示す図である。
図4】実施形態に係る空気供給装置の制御系を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る空気供給装置の動作を説明するための図である。
図6】変形例に係る乗客コンベアを示す図である。
図7】変形例に係る乗客コンベアを示す図である。
図8】変形例に係る乗客コンベアを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を用いる。
【0010】
図1は、本実施形態に係る乗客コンベア1を示す図である。乗客コンベア1は、隣接して設置される2台のエスカレータ10A,10Bを備えている。例えば、エスカレータ10Aは下階から上階へ登るためのエスカレータであり、エスカレータ10Bは上階から下階へ下るためのエスカレータである。
【0011】
図2は、エスカレータ10Aの概略的な構成を示す図である。エスカレータ10Aは、フロアF1とフロアF2に渡って架設され、例えば乗車位置としてのフロアF1から降車位置としてのフロアF2へ利用者15を搬送する。
【0012】
エスカレータ10Aは、トラス11、トラス11の内部に配置された一対のスプロケット21,22、スプロケット21,22に巻回された移動チェーン23、移動チェーン23に連結された複数の踏み段25、スプロケット21を駆動する駆動装置30、トラス11に沿って設けられるスカートガード12、スカートガード12に設けられるガイドパネル13、ガイドパネル13に沿って移動する手すりベルト14を備えている。
【0013】
トラス11は、フロアF1とフロアF2に渡って設けられている。トラス11の側面及び下面は、鋼板によってカバーされている。また、トラス11の両端部上面にはそれぞれ乗降板11a,11bが固定されている。エスカレータ10Aのメンテナンスの際には、乗降板11a,11bを取り外すことで、スプロケット21,22や移動チェーン23などにアクセスすることが可能となる。
【0014】
スプロケット21,22は、トラス11内部のX軸方向両端に配置されている。スプロケット21,22は、それぞれY軸に平行な軸P1,P2を中心に回転可能に支持されている。
【0015】
駆動装置30は、スプロケット21を駆動するための装置である。駆動装置30は、スプロケット21の近傍に配置されている。駆動装置30は、駆動チェーン33によってスプロケット21と連結されている。
【0016】
スプロケット21,22には、移動チェーン23が懸架されている。移動チェーン23には、複数の踏み段25が連結されている。複数の踏み段25は、移動チェーン23によって相互に連結される。スプロケット21が、駆動装置30によって駆動されると、移動チェーン23がスプロケット21,22を周回する。これにより、移動チェーン23の上方に位置する踏み段25が、トラス11の上方から露出した状態で、フロアF1とフロアF2の間を移動する。
【0017】
ガイドパネル13は、例えば、ガラスやステンレス鋼などの金属からなり、スカートガード12に沿って設けられている。手すりベルト14は、ガイドパネル13に、回転可能に懸架されている。
【0018】
スプロケット21は、不図示のチェーンやスプロケットなどを介して、ガイドパネル13に移動可能に支持される手すりベルト14に連結されている。このため、駆動装置30によってスプロケット21が駆動されると、踏み段25がフロアF1,F2の間を移動するとともに、手すりベルト14もガイドパネル13を周回する。手すりベルト14は、上半分がスカートガード12から露出した状態になっている。スカートガード12から露出した手すりベルト14は、踏み段25と同期してフロアF1とフロアF2の間を移動する。
【0019】
エスカレータ10Bも、エスカレータ10Aと同等の構成を有している。また、乗客コンベア1では、トラス11は、双方のエスカレータ10A,10Bに共通に設けられている。そして、図1に示されるように、エスカレータ10A,10Bの間には、カバー50が設けられている。
【0020】
図3は、カバー50及びトラス11のXZ断面を示す図である。図3に示されるように、カバー50の下方には、空気管60、2台の空気供給装置70A,70Bが収容されている。
【0021】
カバー50の下方は、エスカレータ10A,10Bそれぞれのガイドパネル13に挟まれた空間となっている。この空間は、例えば、カバー50のX軸方向両端に設けられた開口51を介して、外部と通じている。
【0022】
空気管60は、例えば、内径が50~100mm程度の円筒状の部材である。空気管60は、例えば、樹脂或いはステンレス鋼などを素材とする。空気管60は、カバー50に沿って配置され、両端部には、空気供給装置70A,70Bが接続されている。
【0023】
また、空気管60には、長手方向をZ軸方向とする円筒状の複数のノズル61が等間隔に形成されている。ノズル61は、例えば、内径が10~15mm程度でありカバー50に沿って、例えば50~100mm間隔で設けられている。図1に示されるように、ノズル61の上端はカバー50から露出し、各エスカレータ10A,10Bの手すりベルト14に沿って配置される。
【0024】
図3に戻り、空気供給装置70A,70Bは、空気管60に空気を供給するファン、ファンを駆動するモータ、及び、空気管60にアルコールなどの消毒剤を噴霧する消毒剤供給装置71を備えている。空気供給装置70A,70Bは、開口51を介して空気を吸気して、吸気した空気を空気管60に供給する。これにより、空気管60に供給された空気が、各ノズル61を介して、矢印に示されるように上方へ射出される。また、消毒剤供給装置71によって消毒剤が空気管60に噴霧されると、各ノズル61から空気とともに消毒剤が射出される。
【0025】
図4は、空気供給装置70A,70Bの制御系を示すブロック図である。空気供給装置70A,70Bは、制御装置80によって制御される。制御装置80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、CPUの作業領域として機能する主記憶部、パラメータやプログラムなどを記憶する補助記憶部、空気供給装置70A,70B及びエスカレータ10A,10Bの駆動装置30が接続されるインタフェースなどを備えている。
【0026】
制御装置80は、エスカレータ10A,10Bの駆動装置30の運転状況に応じて、空気供給装置70A,70Bを制御する。具体的には、制御装置80は、エスカレータ10A,10Bの駆動装置30によって、エスカレータ10A,10Bの双方が運転されたときに、空気供給装置70A,70Bを運転する。空気供給装置70A,70Bが運転されると、図3に示されるように、各ノズル61から空気が射出される。これにより、図5の破線に示されるように、エスカレータ10Aとエスカレータ10Bの境界に、上方へ移動する空気層が形成され、エスカレータ10Aの乗客が位置する空間と、エスカレータ10Bの乗客が位置する空間とが隔離される。制御装置80は、エスカレータ10A,10Bの双方又は一方の運転が停止したときには、空気供給装置70A,70Bの運転を停止する。
【0027】
また、制御装置80は、エスカレータ10A,10Bの双方の運転が停止したときには、エスカレータ10A,10Bの運転時よりも少ない量の空気が各ノズル61から射出されるように、空気供給装置70A,70Bを運転するとともに、消毒剤供給装置71を運転する。これにより、エスカレータ10A,10Bの周囲に消毒剤が散布され、エスカレータ10A,10Bの消毒が行われる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る乗客コンベア1では、エスカレータ10A,10Bの双方が運転されたときに、空気供給装置70A,70Bが運転され、図3に示されるように、各ノズル61から空気が射出される。これにより、図5の破線に示されるように、エスカレータ10Aとエスカレータ10Bの境界に、上方へ移動する空気層が形成され、エスカレータ10Aの乗客が位置する空間と、エスカレータ10Bの乗客が位置する空間とが隔離される。したがって、隣接して設置されるエスカレータ10A,10Bの空間が分離され、乗客同士の飛沫感染を抑制することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、エスカレータ10A、10Bの境界に、遮蔽板などの物理的な仕切りの設置をする必要がない。したがって、エスカレータの清掃作業が増加することがなく、美観を損ねることがない。
【0030】
また、本実施形態に係る乗客コンベア1では、エスカレータ10A,10Bの双方の運転が停止したときには、エスカレータ10A,10Bの運転時よりも少ない量の空気が各ノズル61から射出され、同時に、消毒剤供給装置71が運転される。これにより、エスカレータ10A,10Bの周囲に消毒剤が散布され、結果的に、飛沫感染を抑制することが可能となる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、図5に示されるように、ノズル61が、Y軸方向へ一列に配置されていることとした。これに限らず、例えば図6に示されるように、ノズル61は、千鳥状に配置されていてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、図5に示されるように、吹き出し口が円形になったノズル61が配置されていることとした。ノズル61の形状はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示されるように、吹き出し口の形状がスリット形状のノズル61が配置されていてもよい。
【0033】
また、図8に示されるように、ノズル61の吹き出し口に風向調整板62を配置してもよい。これにより、ノズル61からの空気を上方へ整風したり、エスカレータ10A,10Bに向けて整風することが可能となる。したがって、風向調整板62を操作することで、消毒剤を含む空気をエスカレータ10A,10Bへ効率よく供給することができる。これにより、エスカレータ10A,10Bを効果的に消毒することが可能となる。上記風向調整板62は、例えば、制御装置80が操作することとしてもよい。
【0034】
上記実施形態では、ノズル61から空気が射出されることとした。これに限らず、ノズル61から、空気とともに芳香剤を射出することとしてもよい。これにより、エスカレータ10A,10Bの乗客に清涼感を与えることができる。
【0035】
上記実施形態では、乗客コンベア1が、一例としてのエスカレータ10A,10Bを備えている場合について説明した。これに限らず、乗客コンベア1は移動歩道などの搬送装置を備えていてもよい。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 乗客コンベア
10A,10B エスカレータ
11 トラス
11a,11b 乗降板
12 スカートガード
13 ガイドパネル
14 ベルト
15 利用者
21,22 スプロケット
23 移動チェーン
25 踏み段
30 駆動装置
33 駆動チェーン
50 カバー
51 開口
60 空気管
61 ノズル
62 風向調整板
70A,70B 空気供給装置
71 消毒剤供給装置
80 制御装置
F1,F2 フロア
P1,P2 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8