(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188942
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】センサー電極材、センサー、腐食モニタリング方法、防食設計方法および塗膜劣化防止設計方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/04 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
G01N17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097241
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白水 達也
(72)【発明者】
【氏名】砂本 昌利
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA01
2G050BA02
2G050BA04
2G050BA05
2G050CA01
2G050EA01
2G050EA02
2G050EB03
(57)【要約】
【課題】モニタリング可能な位置が制限されることを抑制することができるセンサー電極材、センサー、腐食モニタリング方法、防食設計方法および塗膜劣化防止設計方法を提供する。
【解決手段】センサー電極材1は、貴金属部11と、接続部12とを備えている。貴金属部12は、製品6の表面60よりも電気化学的に貴な金属からなる。接続部12は、貴金属部11を製品6の表面60に接続可能に構成されている。接続部12は、絶縁体からなる。貴金属部11および接続部12は、製品6の表面60に重ねられている。貴金属部11および接続部12には、貫通部13が設けられている。貫通部13は、貴金属部11および接続部12の各々を貫通することで製品6の表面60に到るように構成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の表面の腐食性をモニタリングするためのセンサー電極材であって、
前記製品の前記表面よりも電気化学的に貴な金属からなる貴金属部と、
前記貴金属部を前記製品の前記表面に接続可能に構成され、かつ絶縁体からなる接続部とを備え、
前記貴金属部および前記接続部は、前記製品の前記表面に重ねられており、
前記貴金属部および前記接続部には、貫通部が設けられており、
前記貫通部は、前記貴金属部および前記接続部の各々を貫通することで前記製品の前記表面に到るように構成されている、センサー電極材。
【請求項2】
前記貴金属部の材料は、銀および金のいずれかである、請求項1に記載のセンサー電極材。
【請求項3】
前記貫通部は、前記貴金属部および前記接続部に設けられた複数の貫通孔を有し、
前記複数の貫通孔の各々は、前記製品の前記表面に到るように構成されている、請求項1または2に記載のセンサー電極材。
【請求項4】
製品の表面の腐食性をモニタリングするためのセンサーであって、
前記製品の前記表面よりも電気化学的に貴な金属からなる貴金属部と、前記貴金属部を前記製品の前記表面に接続可能に構成されかつ絶縁体からなる接続部とを含むセンサー電極材と、
電流計とを備え、
前記貴金属部および前記接続部は、前記製品の前記表面に重ねられており、
前記貴金属部および前記接続部には、貫通部が設けられており、
前記貫通部は、前記貴金属部および前記接続部の各々を貫通することで前記製品の前記表面に到るように構成されており、
前記電流計は、前記センサー電極材に電気的に接続されている、センサー。
【請求項5】
前記センサー電極材は、第1センサー電極部と、第2センサー電極部とを含み、
前記電流計は、第1計測部と、第2計測部とを含み、
前記第1計測部は、前記第1センサー電極部に電気的に接続されており、
前記第2計測部は、前記第2センサー電極部に電気的に接続されており、
前記第1センサー電極部および前記第2センサー電極部は、前記製品の前記表面の異なる位置にそれぞれ接続されている、請求項4に記載のセンサー。
【請求項6】
製品の表面の腐食性をモニタリングするための腐食モニタリング方法であって、
電流計が前記製品の前記表面よりも電気化学的に貴な金属からなる貴金属部に電気的に接続され、かつ前記貴金属部が絶縁体からなる接続部によって前記製品の前記表面に接続される工程と、
前記貴金属部および前記接続部を貫通しかつ前記製品の前記表面に到った貫通孔内に配置された液体によって前記貴金属部と前記製品の前記表面が電気的に接続された場合に前記貴金属部と前記表面との間に流れる電流が前記電流計によって計測されることで前記製品の前記表面の腐食性がモニタリングされる工程とを備えた、腐食モニタリング方法。
【請求項7】
前記製品の前記表面は、塗装されている、請求項6に記載の腐食モニタリング方法。
【請求項8】
製品の表面の腐食を抑制するための防食設計方法であって、
電流計が前記製品の前記表面よりも電気化学的に貴な金属からなる貴金属部に電気的に接続され、かつ前記貴金属部が絶縁体からなる接続部によって前記製品の前記表面に接続される工程と、
前記貴金属部および前記接続部を貫通しかつ前記製品の前記表面に到った貫通孔内に配置された液体によって前記貴金属部と前記製品の前記表面が電気的に接続された場合に前記貴金属部と前記表面との間に流れる電流が前記電流計によって計測されることで前記製品の前記表面の腐食性がモニタリングされる工程と、
前記製品の前記表面の腐食性がモニタリングされた位置に防食加工が施される工程とを備えた、防食設計方法。
【請求項9】
製品の塗装された表面の塗膜の劣化を抑制するための塗膜劣化防止設計方法であって、
電流計が前記製品の前記表面よりも電気化学的に貴な金属からなる貴金属部に電気的に接続され、かつ前記貴金属部が絶縁体からなる接続部によって前記製品の前記表面に接続される工程と、
前記貴金属部および前記接続部を貫通しかつ前記製品の前記表面に到った貫通孔内に配置された液体によって前記貴金属部と前記製品の前記表面が電気的に接続された場合に前記貴金属部と前記表面との間に流れる電流が前記電流計によって計測されることで前記製品の前記表面の腐食性がモニタリングされる工程と、
前記製品の前記表面の腐食性がモニタリングされた位置に塗装が施される工程とを備えた、塗膜劣化防止設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサー電極材、センサー、腐食モニタリング方法、防食設計方法および塗膜劣化防止設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに絶縁された状態の2種類の金属が大気中に暴露されると、降雨および結露等によって2種類の金属の表面に薄い水膜が形成されることがある。2種類の金属は、例えば、鉄および金である。水膜が2種類の金属を覆うことで2種類の金属同士を電気的に接続した場合、水膜および2種類の金属は電池として作用する。水膜および2種類の金属が電池として作用した場合、電気化学的に卑な金属が腐食されるとともに、2種類の金属の間に微小なガルバニック電流が流れる。ガルバニック電流が測定および解析されることで、大気環境における金属の腐食性がモニタリングされる。ガルバニック電流に基づいて腐食性をモニタリングするセンサーは、ACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサーと呼ばれる。
【0003】
例えば、特開2009-53205号公報(特許文献1)には、移動体の腐食環境計測方法が記載されている。この腐食環境計測方法では、腐食センサー(ACMセンサー)が用いられる。腐食センサーは、第1の電極、第2の電極および絶縁体を備えている。第1の電極は、モニタリング対象である移動体(製品)の構成成分と同一の金属からなる。第2の電極は、第1の電極よりも電気化学的に貴な金属からなる。第1の電極と第2の電極とは、絶縁体によって絶縁されている。腐食センサーは、例えば、車両および船舶等の移動体の表面に配置される。これにより、経時的に変化する外部環境における移動体の表面と同じ環境の腐食性がモニタリングされる。
【0004】
また、腐食センサーによって、屋外に長期間にわたって設置される空気調和機の室外機および監視カメラ等の製品の表面の腐食性もモニタリングされ得る。これらの製品では、ネジの締結部、屈曲部、溝部等の平坦でない部位において腐食が加速する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報に記載の腐食センサーでは、第1の電極は、モニタリング対象である製品の表面の構成成分と同一の金属からなる。このため、腐食センサーの硬さは、製品の表面の構成成分の硬さ以上である。よって、腐食センサーを変形させることによって製品の表面の平坦ではない部位の形状に沿うように腐食センサーを配置することは困難である。したがって、モニタリング可能な位置が制限される。
【0007】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、モニタリング可能な位置が制限されることを抑制することができるセンサー電極材、センサー、腐食モニタリング方法、防食設計方法および塗膜劣化防止設計方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のセンサー電極材は、製品の表面の腐食性をモニタリングするためのセンサー電極材である。センサー電極材は、貴金属部と、接続部とを備えている。貴金属部は、製品の表面よりも電気化学的に貴な金属からなる。接続部は、貴金属部を製品の表面に接続可能に構成されている。接続部は、絶縁体からなる。貴金属部および接続部は、製品の表面に重ねられている。貴金属部および接続部には、貫通部が設けられている。貫通部は、貴金属部および接続部の各々を貫通することで製品の表面に到るように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示のセンサー電極材によれば、接続部は、貴金属部を製品の表面に接続可能に構成されている。このため、センサー電極材は、製品の表面の構成成分と同一の金属からなる電極を含んでいなくてもよい。したがって、モニタリング可能な位置が制限されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係るセンサーおよび製品の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係るセンサー電極材の構成を概略的に示す上面図である。
【
図3】実施の形態1に係るセンサー電極材の他の構成を概略的に示す上面図である。
【
図4】実施の形態1に係るセンサーおよび製品の構成を概略的に示す側面図である。
【
図7】実施の形態1に係るセンサー電極材の他の構成を概略的に示す拡大図である。
【
図8】
図6のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】実施の形態1に係るセンサーおよび製品が水に濡れた状態を概略的に示す断面図である。
【
図10】実施の形態1に係る腐食モニタリング方法の構成を概略的に示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態1に係る防食設計方法の構成を概略的に示すフローチャートである。
【
図12】第1センサー電極部~第4センサー電極部が測定した単位面積当たりのガルバニック電流の時間変化を示すグラフである。
【
図13】第1センサー電極部~第4センサー電極部が測定した単位面積当たりのガルバニック電流の積算値を示すグラフである。
【
図14】実施の形態2に係るセンサーおよび製品の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図15】実施の形態2に係るセンサー電極材の構成を概略的に示す上面図である。
【
図16】第1センサー電極部~第4センサー電極部が測定した単位面積当たりのガルバニック電流の時間変化を示すグラフである。
【
図17】実施の形態3に係るセンサーおよび製品の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図18】実施の形態3に係るセンサーおよび製品の構成を概略的に示す断面図である。
【
図19】実施の形態3に係るセンサーおよび製品が水に濡れた状態を概略的に示す断面図である。
【
図20】実施の形態3に係る塗膜劣化防止設計方法の構成を概略的に示すフローチャートである。
【
図21】第1センサー電極部~第4センサー電極部が測定した単位面積当たりのガルバニック電流の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下では、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
【0012】
実施の形態1.
図1~
図9を用いて、実施の形態1に係るセンサー100の構成を説明する。
【0013】
図1に示されるように、センサー100は、製品6の表面60の腐食性をモニタリングするためのセンサー100である。センサー100は、主に、センサー電極材1と、電流計2と、導線3とを含んでいる。センサー電極材1は、製品6の表面60の腐食性をモニタリングするためのセンサー電極材である。電流計2は、センサー電極材1に電気的に接続されている。電流計2は、センサー電極材1に流れる電流を測定するように構成されている。電流計2の第1端は、導線3を介してセンサー電極材1に電気的に接続されている。電流計2の第2端は、アースEに接続されている。導線3は、センサー電極材1と電流計2とを電気的に接続している。
【0014】
センサー電極材1は、製品6に接続されている。センサー電極材1は、製品6に対して電気的に絶縁された状態で製品6に接続されている。本実施の形態において、センサー電極材1は、製品6に貼り付けられている。
【0015】
なお、説明の便宜のため、
図1では、
図4を参照して後述される第2計測部2B~第4計測部2Dおよび第2導線部3B~第4導線部3Dが図示されていない。
【0016】
図1および
図2に示されるように、上面視におけるセンサー電極材1の形状は、例えば、第1の円弧A1および第2の円弧A2のそれぞれの両端が互いに第1の直線L1および第2の直線L2によって接続された形状である。第1の円弧A1および第2の円弧A2は、共通の中心を有している。第1の円弧A1および第2の円弧A2は、同じ角度を有している。第1の円弧A1の半径は、第2の円弧A2の半径よりも小さい。センサー電極材1の幅は、例えば、2cmである。センサー電極材1の第1の円弧A1および第2の円弧A2の角度は、例えば、180°である。センサー電極材1の第1の円弧A1の半径は、例えば、2cmである。センサー電極材1の第2の円弧A2の半径は、例えば、4cmである。
【0017】
図3に示されるように、上面視におけるセンサー電極材1の形状は、例えば、正方形であってもよい。正方形のセンサー電極材1の1辺の長さは、例えば、100mmである。センサー電極材1の厚みは、例えば、0.5mmである。正方形のセンサー電極材1が切断されることで、製品6の表面60に沿う形状になるようにセンサー電極材1が変形されてもよい。例えば、正方形のセンサー電極材1が切断されることで、円弧状になるようにセンサー電極材1が変形されてもよい。
【0018】
図4に示されるように、センサー電極材1は、第1センサー電極部1Aと、第2センサー電極部1Bと、第3センサー電極部1Cと、第4センサー電極部1Dとを含んでいる。第1センサー電極部1A、第2センサー電極部1B、第3センサー電極部1Cおよび第4センサー電極部1Dは、製品6の表面60の異なる位置にそれぞれ接続されている。
【0019】
本実施の形態において、第1センサー電極部1Aの形状と第2センサー電極部1Bの形状とは、同じであってもよい。第3センサー電極部1Cの形状と第4センサー電極部1Dの形状とは、同じであってもよい。第3センサー電極部1Cの弧長および第4センサー電極部1Dの弧長は、第1センサー電極部1Aの弧長および第2センサー電極部1Bの弧長よりも大きくてもよい。
【0020】
電流計2は、第1計測部2Aと、第2計測部2Bと、第3計測部2Cと、第4計測部2Dとを含んでいる。第1計測部2Aは、第1センサー電極部1Aに電気的に接続されている。第2計測部2Bは、第2センサー電極部1Bに電気的に接続されている。第3計測部2Cは、第3センサー電極部1Cに電気的に接続されている。第4計測部2Dは、第4センサー電極部1Dに電気的に接続されている。第1計測部2A~第4計測部2Dの各々は、第1センサー電極部1A~第4センサー電極部1Dの各々に流れる電流をそれぞれ計測するように構成されている。
【0021】
導線3は、第1導線部3Aと、第2導線部3Bと、第3導線部3Cと、第4導線部3Dとを含んでいる。第1導線部3A~第4導線部3Dの各々は、第1センサー電極部1A~第4センサー電極部1Dの各々を第1計測部2A~第4計測部2Dの各々にそれぞれ電気的に接続している。
【0022】
図5に示されるように、導線3は、例えば、はんだによってセンサー電極材1に電気的に接続されている。センサー電極材1と導線3との接合部は、パテ31によって保護されていてもよい。
【0023】
図6に示されるように、センサー電極材1には、貫通部13が設けられている。貫通部13の上面視における形状は、例えば、矩形である。より具体的には、貫通部13の上面視における形状は、例えば、正方形である。貫通部13の上面視における形状が正方形である場合、貫通部13の1辺の長さは例えば1mmである。
【0024】
貫通部13は、センサー電極材1に設けられた複数の貫通孔130を含んでいる。複数の貫通孔130は、互いに間隔を空けて配置されている。複数の貫通孔130は、周期的に配置されていてもよい。複数の貫通孔130は、等間隔に配置されていてもよい。複数の貫通孔130同士の間隔は、例えば、1mmである。複数の貫通孔130の各々の上面視における形状が正方形である場合、複数の貫通孔130同士の間隔は、複数の貫通孔130の各々の1辺の長さと同じであってもよい。すなわち、正方形の貫通孔130の1辺の長さが1mmである場合、複数の貫通孔130同士の間隔が1mmであってもよい。
【0025】
図7に示されるように、貫通部13の上面視における形状は、例えば、円形であってもよい。貫通部13の上面視における形状は、適宜に決められてもよい。
【0026】
図8に示されるように、センサー電極材1は、貴金属部11と、接続部12とを含んでいる。貴金属部11および接続部12は、製品6の表面60に重ねられている。
【0027】
貴金属部11および接続部12の形状は、製品6の表面60に沿う形状である。本実施の形態において、製品6の表面60が平坦であるため、貴金属部11および接続部12も平坦である。貴金属部11および接続部12は、製品6の表面60の形状に応じて屈曲していてもよい。図示されないが、例えば、製品6の表面60が屈曲している場合、貴金属部11および接続部12も製品6の表面60に沿うように屈曲している。
【0028】
貴金属部11および接続部12は、可撓性を有している。貴金属部11および接続部12は、製品6の表面60に沿って変形可能に構成されている。貴金属部11および接続部12は、製品6の表面60よりも柔らかい。望ましくは、貴金属部11および接続部12は、人の手によって変形可能な柔らかさを有している。
【0029】
貴金属部11は、接続部12を介して製品6の表面60に接続されている。貴金属部11は、製品6の表面60に直接接続されていない。貴金属部11は、製品6の表面60に接触していない。
【0030】
貴金属部11は、製品6の表面60よりも電気化学的に貴な金属からなる。望ましくは、貴金属部11の材料は、銀(Ag)および金(Au)のいずれかである。本実施の形態において、貴金属部11の材料は、純銀である。本実施の形態において、貴金属部11の厚みは、例えば、1mmである。貴金属部11は、ハサミで切断される柔らかさを有することが望ましい。純銀からなりかつ1mmの厚みを有する貴金属部11は、例えば、ハサミで切断され得る。
【0031】
接続部12は、貴金属部11を製品6の表面60に接続可能に構成されている。接続部12は、製品6の表面60に直接接続されている。接続部12は、製品6の表面60に接触している。接続部12は、貴金属部11と製品6との間に挟み込まれている。接続部12の厚みは、貴金属部11の厚みよりも薄くてもよい。
【0032】
接続部12は、絶縁体からなる。接続部12は、絶縁膜として構成されている。接続部12は、例えば、粘着剤によって構成されている。接続部12は、例えば、300μmの厚みを有するウレタン系の粘着剤によって構成されている。接続部12の材料は、ウレタン系の粘着剤に限られず、適宜に決められてもよい。
【0033】
貴金属部11および接続部12には、貫通部13が設けられている。貫通部13は、貴金属部11および接続部12の各々を貫通することで製品6の表面60に到るように構成されている。製品6の表面60に液体が配置されていない状態において、貫通部13は、製品6の表面60を貴金属部11および接続部12から露出させるように構成されている。
【0034】
本実施の形態において、複数の貫通孔130は、貴金属部11および接続部12に設けられている。複数の貫通孔130の各々は、製品6の表面60に到るように構成されている。複数の貫通孔130の各々は、同じ形状を有していてもよい。
【0035】
図9に示されるように、製品6の表面60に液体LQが配置された状態において、貫通部13の内部に液体LQが配置されていてもよい。製品6の表面60に液体LQが配置されている場合、貴金属部11と製品6の表面60とは、液体LQによって電気的に接続されている。液体LQは、例えば、センサー電極材1上において薄膜を構成している。液体LQは、導電性を有している。液体LQは、例えば、水または溶液である。水は、例えば、雨水である。
【0036】
第1センサー電極部1A(
図4参照)~第4センサー電極部1D(
図4参照)の各々は、貴金属部11および接続部12を有している。第1センサー電極部1A(
図4参照)~第4センサー電極部1D(
図4参照)の各々には、貫通部13が設けられている。
【0037】
図1に示されるように、製品6は、例えば、カメラを取付可能な取付台6Aである。なお、説明の便宜のため、
図1では、カメラが図示されていない。取付台6Aは、固定板61、土台部62、角度調整部63、取付部64、カメラケース65、ピン部材66および固定部材67を含んでいる。固定板61は、例えば、図示されない壁面等に固定されている。土台部62は、固定板61に固定されている。角度調整部63は、土台部62上に固定されている。角度調整部63は、取付部64に接続されている。角度調整部63は、取付部64に対して回転可能に構成されている。カメラケース65は、取付部64に取り付けられている。カメラケース65の内部には、図示されないカメラが配置されている。
【0038】
取付部64は、例えば、固定部材67によって角度調整部63に回転可能に接続されている。取付部64は、固定部材67を中心に回転するように構成されている。固定部材67は、例えば、ボルトである。取付部64には、溝部Gが設けられている。ピン部材66は、溝部Gを貫通して取付部64に固定されている。角度調整部63は、ピン部材66が溝部Gを貫通した状態で取付部64に対して回転するように構成されている。本実施の形態において、取付部64の材料は、SUS304である。
【0039】
図4に示されるように、本実施の形態において、センサー電極材1は、取付部64に貼り付けられている。第1センサー電極部1Aは、取付部64において固定部材67の上方に配置されている。第2センサー電極部1Bは、取付部64において固定部材67の下方に配置されている。第3センサー電極部1Cは、取付部64において第2センサー電極部1Bと溝部Gとの間に配置されている。第4センサー電極部1Dは、取付部64において溝部Gの下方に配置されている。
【0040】
本実施の形態において、センサー100および製品6は、屋外に設置されている。このため、雨が降った場合には、センサー電極材1および製品6は、水によって濡れ得る。これにより、センサー電極材1の貴金属部11と製品6の表面60とは、水によって電気的に接続され得る。センサー電極材1の貴金属部11と製品6の表面60とが電気的に接続された場合、表面60に腐食が生じ得る。
【0041】
次に、
図9を用いて、実施の形態1に係るセンサー100の動作原理を説明する。
【0042】
図9に示されるように、センサー100のセンサー電極材1および製品6の表面60は、ACMセンサーを構成している。ACMセンサーでは、異なる2種の金属が液体LQによって電気的に接続されることで電流が流れる。異なる2種の金属が液体LQによって電気的に接続されることで流れる電流は、ガルバニック電流とも呼ばれる。本実施の形態における上記の異なる2種の金属とは、貴金属部11を構成する金属および製品6の表面60を構成する金属である。センサー電極材1および表面60は、電極として構成されている。
【0043】
ACMセンサーでは、ガルバニック電流の電流値に基づいて製品6の表面60の腐食性が評価される。本実施の形態において、腐食性とは、腐食が製品6を進行する速度を意味している。具体的には、腐食性は、ガルバニック電流をセンサー電極材1と表面60との接触面積で割った値(単位面積当たりのガルバニック電流の電流値)に基づいて評価される。単位面積当たりのガルバニック電流の電流値は、製品6の表面60の腐食が進行するほど大きくなる。このため、単位面積当たりのガルバニック電流の電流値が大きいほど製品6の表面60の腐食性が大きいと評価される。なお、腐食性に影響を与える因子は、例えば、環境の温度、環境の湿度、大気中を飛来する海塩粒子および腐食性ガス等である。
【0044】
次に、実施の形態1に係る腐食モニタリング方法を説明する。
【0045】
腐食モニタリング方法は、製品6の表面60の腐食性をモニタリングするための腐食モニタリング方法である。すなわち、腐食モニタリング方法とは、製品6の表面60における腐食の速度をモニタリングするための方法である。
図10に示されるように、腐食モニタリング方法は、接続される工程S101と、モニタリングされる工程S102とを含んでいる。
【0046】
まず、
図4および
図8に示されるように、接続される工程S101において、電流計2が貴金属部11に電気的に接続される。電流計2は、貴金属部11に例えばはんだによって電気的に接続される。接続される工程S101において、貴金属部11が接続部12によって製品6の表面60に接続される。
【0047】
本実施の形態において、第1計測部2A~第4計測部2Dの各々が第1センサー電極部1A~第4センサー電極部1Dの各々の貴金属部11にそれぞれ電気的に接続される。また、第1センサー電極部1A~第4センサー電極部1Dの各々に電気的に接続される。
【0048】
続いて、モニタリングされる工程S102において、貴金属部11と製品6の表面60との間に流れる電流が電流計2によって計測されることで製品6の表面60の腐食性がモニタリングされる。なお、上記の電流は、
図9に示されるように貫通部13内に配置された液体LQによって貴金属部11と製品6の表面60が電気的に接続された場合に流れる電流(ガルバニック電流)である。
【0049】
本実施の形態において、貴金属部11と製品6の表面60との間に流れる電流が第1センサー電極部1A~第4センサー電極部1Dの各々によって計測されることで製品6の表面60の腐食性がモニタリングされる。
【0050】
次に、実施の形態1に係る防食設計方法を説明する。防食設計方法は、製品6の表面60の腐食を抑制するための防食設計方法である。本実施の形態において、製品6の防食とは、製品6の表面60の腐食性を小さくすることである。防食された製品6の腐食性は、望ましくは、ゼロである。
図11に示されるように、防食設計方法は、接続される工程S201と、モニタリングされる工程S202と、防食加工が施される工程S203とを含んでいる。
【0051】
まず、
図4および
図8に示されるように、接続される工程S201において、電流計2が貴金属部11に電気的に接続される。接続される工程S201において、貴金属部11が接続部12によって製品6の表面60に接続される。防食設計方法の接続される工程S201の内容は、腐食モニタリング方法の接続される工程S101の内容と同じである。
【0052】
続いて、モニタリングされる工程S202において、貴金属部11と製品6の表面60との間に流れる電流が電流計2によって計測されることで製品6の表面60の腐食性がモニタリングされる。なお、上記の電流は、
図9に示されるように貫通部13内に配置された液体LQによって貴金属部11と製品6の表面60が電気的に接続された場合に流れる電流(ガルバニック電流)である。防食設計方法のモニタリングされる工程S202の内容は、腐食モニタリング方法のモニタリングされる工程S102の内容と同じである。
【0053】
続いて、防食加工が施される工程S203において、製品6の表面60の腐食性がモニタリングされた位置に防食加工が施される。防食加工は、例えば、めっき加工および塗装等の表面処理である。
【0054】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
【0055】
本実施の形態に係るセンサー電極材1によれば、
図8に示されるように、接続部12は、貴金属部11を製品6の表面60に接続可能に構成されている。このため、
図9に示されるように液体LQによって貴金属部11と製品6の表面60とが電気的に接続された場合に流れる電流を測定することで、製品6の表面60の腐食性をモニタリングすることができる。よって、センサー電極材1は、製品6の表面60の構成成分と同一の金属からなる電極を含んでいなくてもよい。したがって、センサー電極材1の硬さを、製品6の表面60の構成成分の硬さ未満にすることができる。このため、センサー電極材1を容易に変形させることができる。よって、センサー電極材1が製品6の表面60に沿うようにセンサー電極材1を変形させることができる。したがって、モニタリング可能な位置が制限されることを抑制することができる。
【0056】
具体的には、センサー電極材1が製品6の表面60に沿うようにセンサー電極材1を変形させることができるため、センサー電極材1を製品6の平坦ではない部分および狭隘な部分に容易に接続することができる。製品6の平坦ではない部分は、例えば、屈曲した部分である。製品6の狭隘な部分は、例えば、固定部材67(
図1参照)が締結された部分の周囲である。このため、センサー電極材1による腐食性のモニタリングが製品6の平坦ではない部分および狭隘な部分によって妨げられることを抑制することができる。例えば、1辺が10cm以上100cm未満である矩形の形状を有しかつ製品6の表面60と同一の構成成分の電極をさらに含む従来のACMセンサーと比べて、センサー電極材1を狭隘な部分に容易に接続することができる。
【0057】
貴金属部11の材料は、銀(Ag)および金(Au)のいずれかである。銀(Ag)および金(Au)は、製品6の表面60として用いられる鉄(Fe)または鉄(Fe)の合金よりも柔らかい。このため、センサー電極材1が製品6の表面60に沿うようにセンサー電極材1を容易に変形させることができる。したがって、モニタリング可能な位置が制限されることを抑制することができる。
【0058】
図9に示されるように、複数の貫通孔130の各々は、製品6の表面60に到るように構成されている。このため、複数の貫通孔130の輪郭の総和を、複数の貫通孔130と同一の面積を有する単一の貫通孔130の輪郭よりも長くすることができる。輪郭の長さの総和が長いほど、センサー電極材1の感度が向上する。よって、センサー電極材1の感度をさらに向上させることができる。
【0059】
本実施の形態に係るセンサー100によれば、
図8に示されるように、接続部12は、貴金属部11を製品6の表面60に接続可能に構成されている。このため、
図9に示されるように液体LQによって貴金属部11と製品6の表面60とが電気的に接続された場合に流れる電流を測定することで、製品6の表面60の腐食性をモニタリングすることができる。よって、センサー電極材1は、製品6の表面60の構成成分と同一の金属からなる電極を含んでいなくてもよい。したがって、センサー電極材1の硬さを、製品6の表面60の構成成分の硬さ未満にすることができる。このため、センサー電極材1を容易に変形させることができる。よって、センサー電極材1が製品6の表面60に沿うようにセンサー電極材1を変形させることができる。したがって、モニタリング可能な位置が制限されることを抑制することができる。
【0060】
図4に示されるように、第1センサー電極部1Aの貴金属部11および第2センサー電極部1Bは、製品6の表面60の異なる位置にそれぞれ接続されている。このため、第1センサー電極部1Aおよび第2センサー電極部1Bの各々がそれぞれ測定した電流値を比較することで、第1センサー電極部1Aおよび第2センサー電極部1Bの各々が接続された異なる2つの位置における腐食性を比較することができる。また、第1センサー電極部1Aおよび第2センサー電極部1Bの各々がそれぞれ測定した電流値に基づいて腐食性を比較することができるため、腐食性を数値によって把握することができる。
【0061】
異なる複数の位置における腐食性を比較することによる効果を
図4、
図9、
図12および
図13を用いてより詳細に説明する。
【0062】
図4に示されるように、屋外に設置された製品6の取付台6Aの表面60に第1センサー電極部1A~第4センサー電極部1Dが接続されている。
【0063】
図12の縦軸は、第1センサー電極部1A~第4センサー電極部1Dの各々によって測定される単位面積当たりのガルバニック電流の時間変化を示している。グラフの実線、破線、一点鎖線および二点鎖線は、第1センサー電極部1A、第2センサー電極部1B、第3センサー電極部1Cおよび第4センサー電極部1Dが計測するガルバニック電流にそれぞれ対応している。
図12の横軸は、測定時間を示している。矢印によって区切られた区間は、天気が晴天、曇天および雨天のいずれであるかを示している。
【0064】
第1センサー電極部1A~第4センサー電極部1Dの各々において、雨天時には、
図9に示されるように、貴金属部11と製品6の表面60とが液体LQによって電気的に接続される。このため、雨天時には、晴天時よりもガルバニック電流が増大する。すなわち、雨天時には、腐食の発生が測定される。
【0065】
図4に示されるように、取付部64よりも張り出したカメラケース65は、取付部64が雨に濡れることを防ぐ屋根として機能する。このため、カメラケース65の直下に配置された第1センサー電極部1Aおよび第2センサー電極部1Bが接続された位置は、第1センサー電極部1Aおよび第2センサー電極部1Bよりも下方に配置された第3センサー電極部1Cおよび第4センサー電極部1Dが接続された位置よりも、水に濡れない。このため、第1センサー電極部1Aおよび第2センサー電極部1Bの単位面積当たりのガルバニック電流の最大値は、第3センサー電極部1Cおよび第4センサー電極部1Dよりも小さい。すなわち、第1センサー電極部1Aおよび第2センサー電極部1Bが接続された位置における腐食は、第3センサー電極部1Cおよび第4センサー電極部1Dが接続された位置における腐食よりも小さい。
【0066】
また、水(雨)は、第1センサー電極部1Aから下方の第2センサー電極部1Bに向かって移動しながら乾燥する。雨は、固定部材67に留まることもある。このため、固定部材67の下方に配置された第2センサー電極部1Bは、第1センサー電極部1Aよりも遅く乾く。すなわち、第2センサー電極部1Bのガルバニック電流の低下速度は、第1センサー電極部1Aのガルバニック電流の低下速度よりも遅い。
【0067】
また、水(雨)は、第3センサー電極部1Cから下方の第4センサー電極部1Dに向かって移動しながら乾燥する。雨は、ピン部材66に留まることもある。このため、ピン部材66の下方に配置された第4センサー電極部1Dは、第3センサー電極部1Cよりも遅く乾く。すなわち、第4センサー電極部1Dのガルバニック電流の低下速度は、第3センサー電極部1Cのガルバニック電流の低下速度よりも遅い。
【0068】
また、水は、固定部材67よりもピン部材66に留まりやすい。このため、水は、固定部材67の下方に配置された第2センサー電極部1Bよりもピン部材66の下方に配置された第4センサー電極部1Dに留まりやすい。よって、第4センサー電極部1Dのガルバニック電流の低下速度は、第2センサー電極部1Bのガルバニック電流の低下速度よりも遅い。
【0069】
図13は、1ヶ月間にわたって測定された単位面積当たりのガルバニック電流の積算値を示すグラフである。単位面積当たりのガルバニック電流の積算値は、第4センサー電極部1D、第3センサー電極部1C、第2センサー電極部1B、第1センサー電極部1Aの順に大きい。すなわち、第4センサー電極部1D、第3センサー電極部1C、第2センサー電極部1B、第1センサー電極部1Aの順に腐食性が大きい。
【0070】
以上のように、第1センサー電極部1A~第4センサー電極部1Dが製品6の表面60の異なる位置にそれぞれ接続されていることによって、製品6の表面上の異なる複数の位置における腐食性を比較することができる。
【0071】
また、製品6の表面上の異なる複数の位置における腐食性を比較することで、腐食が進行するメカニズムを推測することができる。
【0072】
本実施の形態に係る腐食モニタリング方法によれば、
図8に示されるように、接続される工程S101において、貴金属部11が接続部12によって製品6の表面60に接続される。このため、
図9に示されるように液体LQによって貴金属部11と製品6の表面60とが電気的に接続された場合に流れる電流を測定することで、製品6の表面60の腐食性をモニタリングすることができる。よって、センサー電極材1は、製品6の表面60の構成成分と同一の金属からなる電極を含んでいなくてもよい。したがって、センサー電極材1の硬さを、製品6の表面60の構成成分の硬さ未満にすることができる。このため、センサー電極材1を容易に変形させることができる。よって、センサー電極材1が製品6の表面60に沿うようにセンサー電極材1を変形させることができる。したがって、モニタリング可能な位置が制限されることを抑制することができる。
【0073】
本実施の形態に係る防食設計方法によれば、
図8に示されるように、接続される工程S201において、貴金属部11が接続部12によって製品6の表面60に接続される。このため、
図9に示されるように液体LQによって貴金属部11と製品6の表面60とが電気的に接続された場合に流れる電流を測定することで、製品6の表面60の腐食性をモニタリングすることができる。よって、センサー電極材1は、製品6の表面60の構成成分と同一の金属からなる電極を含んでいなくてもよい。したがって、センサー電極材1の硬さを、製品6の表面60の構成成分の硬さ未満にすることができる。このため、センサー電極材1を容易に変形させることができる。よって、センサー電極材1が製品6の表面60に沿うようにセンサー電極材1を変形させることができる。したがって、モニタリング可能な位置が制限されることを抑制することができる。
【0074】
防食加工が施される工程S203において、製品6の表面60の腐食性がモニタリングされた位置に防食加工が施される。このため、腐食の進行を防食加工によって抑制することができる。すなわち、腐食性の増加を防食加工によって抑制することができる。特に、他の位置よりも大きい腐食性を有する位置に優先的に防食加工を施すことで、腐食の進行を効果的に抑制することができる。なお、他の位置よりも大きい腐食性を有する位置とは、例えば、製品6の表面60が風雨に暴露された際に雨に濡れやすい位置である。
【0075】
実施の形態2.
次に、
図14~
図16を用いて、実施の形態2に係るセンサー100の構成を説明する。実施の形態2は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0076】
図14に示されるように、本実施の形態に係るセンサー100のセンサー電極材1は、製品6の平坦な表面60および製品6の屈曲した表面60に接続されている。センサー100のセンサー電極材1は、第5センサー電極部1E、第6センサー電極部1Fおよび第7センサー電極部1Gを含んでいる。第5センサー電極部1Eは、製品6の平坦部に接続されている。第6センサー電極部1Fおよび第7センサー電極部1Gの各々は、製品6の角部にそれぞれ接続されている。
【0077】
なお、説明の便宜のため、
図14には、第6センサー電極部1Fおよび第7センサー電極部1Gに接続された電流計2および導線3は図示されていない。
【0078】
より詳細には、第5センサー電極部1Eは、取付部64の平坦部に接続されている。第6センサー電極部1Fは、取付部64と固定板61とがなす角部に接続されている。第6センサー電極部1Fは、谷折りによって折られている。第6センサー電極部1Fの折り目は、第6センサー電極部1Fの長手方向に沿って伸びている。第7センサー電極部1Gは、取付部64の角部に接続されている。第7センサー電極部1Gは、山折りによって折られている。第7センサー電極部1Gの折り目は、第7センサー電極部1Gの長手方向に沿って伸びている。
【0079】
図15に示されるように、センサー電極材1の上面視における形状は、例えば、長方形である。センサー電極材1の長手方向の寸法は、例えば、50mmである。センサー電極材1の短手方向の寸法は、例えば、20mmである。センサー電極材1は、平板として構成されていてもよい。
図14に示されるように、センサー電極材1は、山折りまたは谷折りによって折られるように構成されていてもよい。
【0080】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
【0081】
本実施の形態に係るセンサー100によれば、
図14に示されるように、センサー電極材1は、製品6の平坦な表面60および製品6の屈曲した表面60に接続されている。このため、製品6の平坦な表面60における腐食性と製品6の屈曲した表面60における腐食性とを比較することができる。
【0082】
製品6の平坦な表面60および製品6の屈曲した表面60における腐食性を比較することによる効果を
図14および
図16を用いてより詳細に説明する。
【0083】
図14に示されるように、屋外に設置された製品6(取付台6A)の表面60に第5センサー電極部1E~第7センサー電極部1Gが接続されている。
【0084】
図16の縦軸は、第5センサー電極部1E~第7センサー電極部1Gの各々によって測定される単位面積当たりのガルバニック電流の時間変化を示している。グラフの実線、破線および一点鎖線は、第5センサー電極部1E、第6センサー電極部1Fおよび第7センサー電極部1Gにそれぞれ対応している。
図16の横軸は、時間を示している。矢印によって区切られた区間は、天気が晴天、曇天および雨天のいずれであるかを示している。
【0085】
第5センサー電極部1E~第7センサー電極部1Gの各々において、雨天時には、晴天時よりもガルバニック電流が増大する。このため、雨天時には、腐食の発生が測定される。
【0086】
図14に示されるように、第5センサー電極部1Eの貴金属部11の全面は、上方を向いている。このため、雨が降った場合には、第5センサー電極部1Eの全面に水膜が形成され得る。よって、雨が降った場合には、第5センサー電極部1Eの全面に腐食が生じ得る。第6センサー電極部1Fおよび第7センサー電極部1Gの各々の貴金属部11は、部分的に上方を向いている。このため、雨が降った場合には、第6センサー電極部1Fおよび第7センサー電極部1Gの各々には、部分的に水膜が形成され得る。よって、雨が降った場合には、第6センサー電極部1Fおよび第7センサー電極部1Gの各々には、部分的に腐食が生じ得る。したがって、第5センサー電極部1Eの腐食性は、第6センサー電極部1Fおよび第7センサー電極部1Gの腐食性よりも大きい。すなわち、曇天から雨天に変わったタイミングにおける単位面積当たりの第5センサー電極部1Eのガルバニック電流は、第6センサー電極部1Fおよび第7センサー電極部1Gのガルバニック電流よりも大きい。
【0087】
また、第6センサー電極部1Fは、谷折りによって折り込まれるように構成されている。このため、雨は、第6センサー電極部1Fの折り込まれた部分に溜まる。よって、雨天から曇天に変わった後において、第6センサー電極部1Fのガルバニック電流の低下速度は、第5センサー電極部1Eおよび第7センサー電極部1Gのガルバニック電流の低下速度よりも遅い。特に、第6センサー電極部1Fの接続された位置においてガルバニック電流が晴天時と同じ水準まで低下するには、例えば、1日掛かる。このため、当該位置が他の位置よりも乾燥しにくいため、腐食に対して脆弱であることが推定される。
【0088】
以上のように、センサー電極材1を製品6の平坦な表面60および製品6の屈曲した表面60に接続することで、両者における腐食性を比較することができる。製品6の形状および位置に基づく腐食性の違いを比較することができる。
【0089】
実施の形態3.
次に、
図17~
図19を用いて、実施の形態3に係る腐食モニタリング方法および塗膜劣化防止設計方法を説明する。実施の形態3に係るセンサー100は、特に説明しない限り、上記の実施の形態2に係るセンサー100と同一の構成および作用効果を有している。したがって、上記の実施の形態2と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0090】
図17および
図18に示されるように、本実施の形態に係る腐食モニタリング方法において、製品6の表面60は、塗装されている。製品6の表面60は、塗料によって塗装されている。センサー電極材1の接続部12は、塗料によって塗装された表面60に接続される。塗料は、塗膜68を構成している。塗料は、絶縁体からなる。塗料は、例えば、樹脂系の塗料である。塗料は、例えば、白い塗料である。
図18に示されるように、塗料が金属製の部材69に塗られることで,金属製の部材69上に塗膜68が構成されている。金属製の部材69は、例えば、SUS304製の部品である。
【0091】
製品6の表面60を構成する塗膜68は、絶縁体からなる。このため、塗膜68に欠陥7(
図19参照)がない場合において、貴金属部11が水膜によって製品6の表面60に接続された場合でも貴金属部11と製品6の表面60とが電気的に接続されない。よって、塗膜68に欠陥7(
図19参照)がない場合において、塗装された製品6の表面60には、腐食が生じない。
【0092】
しかしながら、
図19に示されるように、塗膜68に欠陥7がある場合において、製品6には、腐食が生じ得る。例えば、屋外環境において、塗膜68は、付着した水滴による加水分解または照射された紫外線による酸化等によって劣化する。これにより、塗膜68に欠陥7が生じ得る。塗膜68の欠陥7とは、例えば、塗膜68を貫通するピンホールである。塗膜68の欠陥7により、金属製の部材が表面60として露出する。露出した金属製の部材は、例えば、雨等の液体LQによって腐食し得る。
【0093】
次に、実施の形態3に係る塗膜劣化防止設計方法を説明する。
【0094】
塗膜劣化防止設計方法は、製品6の塗装された表面60の塗膜の劣化を抑制するための塗膜劣化防止設計方法である。
図20に示されるように、塗膜劣化防止設計方法は、接続される工程S301と、モニタリングされる工程S302と、塗装が施される工程S303とを含んでいる。
【0095】
まず、
図18に示されるように、接続される工程S301において、電流計2が貴金属部11に電気的に接続され、かつ貴金属部11が接続部12によって製品6の表面60に接続される。塗膜劣化防止設計方法の接続される工程S301の内容は、腐食モニタリング方法の接続される工程S101の内容と同じである。
【0096】
続いて、モニタリングされる工程S302において、貴金属部11と製品6の表面60との間に流れる電流が電流計2によって計測されることで製品6の表面60の腐食性がモニタリングされる。なお、上記の電流は、貫通部13内に配置された液体LQ(
図19参照)によって貴金属部11と製品6の表面60が電気的に接続された場合に流れる電流(ガルバニック電流)である。塗膜劣化防止設計方法のモニタリングされる工程S302の内容は、腐食モニタリング方法のモニタリングされる工程S102の内容と同じである。
【0097】
続いて、塗装が施される工程S303において、製品6の表面60の腐食性がモニタリングされた位置に塗装が施される。例えば、塗膜68(
図19参照)を貫通する欠陥7(ピンホール)(
図19参照)に追加の塗装が施される。
【0098】
次に、実施の形態3に係る塗装評価方法を説明する。
【0099】
塗装評価方法は、接続される工程と、モニタリングされる工程とを含んでいる。
【0100】
まず、図示されないが、接続される工程において、第1センサー電極部が第1の塗料によって塗装された第1の表面に接続され、かつ第2センサー電極部が第2の塗料によって塗装された第2の表面に接続される。第1の表面の位置と第2の表面の位置とは、異なっている。第1の塗料と第2の塗料とは、異なっている。第1計測部が第1センサー電極部に接続される。第2計測部が第2センサー電極部に接続される。
【0101】
続いて、図示されないが、モニタリングされる工程において、第1センサー電極部の貴金属部と第1の表面との間に流れる電流が第1計測部によって計測され、かつ第2センサー電極部の貴金属部と第2の表面との間に流れる電流が第2計測部によって計測される。
【0102】
続いて、本実施の形態の作用効果を説明する。
【0103】
本実施の形態に係る腐食モニタリング方法によれば、
図18に示されるように、製品6の表面60は、塗装されている。このため、塗装された製品6に生じる腐食性をモニタリングすることができる。また、製品6に施された塗装の実際の設置環境における腐食性を評価することができる。また、腐食性を塗装の効果を加味して評価することができる。
【0104】
本実施の形態に係る塗膜劣化防止設計方法によれば、
図18に示されるように、接続される工程S301において、貴金属部11が接続部12によって製品6の表面60に接続される。このため、貴金属部11と製品6の表面60との間に流れる電流を測定することで、製品6の表面60の腐食性をモニタリングすることができる。よって、センサー電極材1は、製品6の表面60の構成成分と同一の金属からなる電極を含んでいなくてもよい。したがって、センサー電極材1の硬さを、製品6の表面60の構成成分の硬さ未満にすることができる。このため、センサー電極材1を容易に変形させることができる。よって、センサー電極材1が製品6の表面60に沿うようにセンサー電極材1を変形させることができる。したがって、モニタリング可能な位置が制限されることを抑制することができる。
【0105】
塗装が施される工程S303において、製品6の表面60の腐食性がモニタリングされた位置に塗装が施される。このため、
図19に示されるように塗膜68にピンホール等の欠陥7が生じた場合でも、欠陥7が生じた位置に塗装を施すことで、表面60を修復することができる。よって、塗膜68の欠陥7を防止する設計が可能となる。これにより、製品6の防食性を向上させることができる。
【0106】
続いて、
図17および
図21を用いて、塗膜劣化防止設計方法による効果を詳細に説明する。
【0107】
図21は、第5センサー電極部1E~第7センサー電極部1Gの単位面積当たりのガルバニック電流の時間変化を示している。横軸から突出した縦線は、その日時において雨が降ったことを示している。例えば、
図21のグラフは、3ヶ月間で雨が9回降ったことを示している。最初の1ヶ月において、第5センサー電極部1E~第7センサー電極部1Gには、電流が流れていない。このため、最初の1ヶ月において、第5センサー電極部1E~第7センサー電極部1Gには、腐食が発生していない。
【0108】
40日目に降る雨によって第7センサー電極部1Gに腐食が発生し得る。また、40日目よりも後に降る雨によって第7センサー電極部1Gに腐食が生じ得る。これは、第7センサー電極部1Gが接続された位置は、山折りによって構成されているため、塗料が薄く不均一になりやすいためである。塗料が薄く不均一になり腐食が生じた部分に選択的に塗装を施すことができる。なお、第5センサー電極部1Eおよび第6センサー電極部1Fには、腐食が生じない。
【0109】
本実施の形態に係る塗装評価方法によれば、接続される工程において、第1センサー電極部が第1の塗料によって塗装された第1の表面に接続され、かつ第2センサー電極部が第2の塗料によって塗装された第2の表面に接続される。第1の塗料と第2の塗料とは、異なっている。このため、第1の塗料によって塗装された第1の表面の腐食性と、第2の塗料によって塗装された第2の表面の腐食性とを比較することができる。また、角部における塗装の施工方法を変えて評価することで、最適な工法を選択することも可能となる。
【0110】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
1 センサー電極材、1A 第1センサー電極部、1B 第2センサー電極部、2 電流計、2A 第1計測部、2B 第2計測部、6 製品、11 貴金属部、12 接続部、13 貫通部、60 表面、100 センサー、130 貫通孔。