(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188972
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】EGRシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 26/26 20160101AFI20221215BHJP
【FI】
F02M26/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097285
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062CA01
3G062CA02
3G062EA10
3G062EB13
3G062EB14
3G062EC02
3G062ED08
3G062FA05
3G062FA06
3G062GA04
3G062GA06
3G062GA08
3G062GA21
(57)【要約】
【課題】EGRクーラのバイパス通路に設けられるバイパス弁を開閉駆動させるダイアフラムアクチュエータを動作させるための構成の複雑化とコストアップを抑えること。
【解決手段】EGRシステムは、エンジン1から排気通路3へ排出される排気の一部(EGRガス)を吸気通路2へ流すEGR通路12、EGRガス流量を調節するEGR弁14、EGRガスを冷却するEGRクーラ13、EGRクーラ13へ流れるEGRガスを迂回させるバイパス通路16、バイパス通路16を開閉するバイパス弁17を備える。バイパス弁17を開閉させるダイアフラムアクチュエータ21は、ダイアフラム22により区画される圧力室23を含み、圧力室23には吸気通路2に連通する連通路27が接続され、連通路27には、大気に連通する大気通路28が分岐して設けられ、連通路27と大気通路28との分岐部29よりも吸気通路2の側に、絞り部30と逆止弁31が設けられ、大気通路28を開閉する一つの二方弁32が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとして前記エンジンへ還流させるために吸気通路へ流すEGR通路と、
前記EGR通路を流れる前記EGRガスの流量を調節するためのEGR弁と、
前記EGR通路を流れる前記EGRガスを冷却するためのEGRクーラと、
前記EGR通路において前記EGRクーラへ流れる前記EGRガスの一部を迂回させるためのバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉するためのバイパス弁と
を備えたEGRシステムにおいて、
前記バイパス弁は、ダイアフラムアクチュエータにより開閉駆動可能に構成され、
前記ダイアフラムアクチュエータは、ダイアフラムにより区画される圧力室と大気室とを含み、
前記圧力室には前記吸気通路に連通する連通路が接続され、前記大気室は大気に連通し、
前記連通路には、大気に連通する大気通路が分岐して設けられ、
前記連通路において、前記大気通路が分岐する分岐部よりも前記吸気通路に近い側には、流路を縮小するための絞り部が設けられると共に、前記絞り部よりも前記吸気通路に近い側には、前記吸気通路から前記絞り部へ向かう気流を阻止し、前記絞り部から前記吸気通路へ向かう気流を許容する逆止弁が設けられ、
前記大気通路には、同通路を開閉するための一つの二方弁が設けられる
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のEGRシステムにおいて、
前記二方弁の流路径を前記絞り部の流路径よりも大きく設定したことを特徴とするEGRシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のEGRシステムにおいて、
前記二方弁を制御するための制御手段を更に備え、
前記制御手段は、前記吸気通路で発生する負圧を前記圧力室へ導入して前記ダイアフラムアクチュエータを動作させることにより前記バイパス弁を開駆動するために前記二方弁を閉弁制御し、前記エンジン又は前記EGR通路の暖機完了後に大気圧を前記圧力室へ導入して前記ダイアフラムアクチュエータを動作させることにより前記バイパス弁を閉駆動するために前記二方弁を開弁制御する
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のEGRシステムにおいて、
前記制御手段が、前記吸気通路で発生する負圧を前記圧力室へ導入して前記ダイアフラムアクチュエータを動作させることにより前記バイパス弁を開駆動するために前記二方弁を閉弁制御する時期は、前記エンジンの低温始動後である
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項5】
エンジンから排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとして前記エンジンへ還流させるために吸気通路へ流すEGR通路と、
前記EGR通路を流れる前記EGRガスの流量を調節するためのEGR弁と、
前記EGR通路を流れる前記EGRガスを冷却するためのEGRクーラと、
前記EGR通路において前記EGRクーラへ流れる前記EGRガスの一部を迂回させるためのバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉するためのバイパス弁と
を備えたEGRシステムにおいて、
前記バイパス弁は、ダイアフラムアクチュエータにより開閉駆動可能に構成され、
前記ダイアフラムアクチュエータは、ダイアフラムにより区画される圧力室と大気室とを含み、
前記圧力室には前記吸気通路に連通する連通路のみが接続され、前記大気室は大気に連通し、
前記連通路には、同通路を開閉するための一つの二方弁が設けられる
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のEGRシステムにおいて、
前記二方弁を制御するための第1の制御手段を更に備え、
前記第1の制御手段は、前記エンジンの始動後に前記吸気通路で発生する負圧を前記圧力室へ導入して前記ダイアフラムアクチュエータを動作させることにより前記バイパス弁を開駆動するために前記二方弁を開弁制御し、その後に前記圧力室の前記負圧を保持して前記ダイアフラムアクチュエータの前記動作を保持することにより前記バイパス弁を開き状態に保持するために前記二方弁を閉弁制御する
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のEGRシステムにおいて、
前記二方弁を制御するための第2の制御手段を更に備え、
前記第2の制御手段は、前記エンジンの始動後に前記吸気通路の低負圧から大気圧を前記圧力室へ導入して前記ダイアフラムアクチュエータを動作させることにより前記バイパス弁を閉駆動するために前記二方弁を開弁制御し、その後に前記圧力室の前記低負圧から大気圧を保持して前記ダイアフラムアクチュエータの前記動作を保持することにより前記バイパス弁を閉じ状態に保持するために前記二方弁を閉弁制御する
ことを特徴とするEGRシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、エンジンから排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとしてEGR通路を介し吸気通路へ流してエンジンへ還流させるように構成したEGRシステムに係り、詳しくはEGR通路に設けられるEGRクーラのバイパス通路にバイパス弁を設けたEGRシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「エンジンの排気還流装置」が知られている。この装置は、EGR通路と、EGR通路におけるEGRガス流量を調節するために排気通路に直列に設けられた第1EGR弁及び第2EGR弁とを備える。ここで、第1EGR弁は電動弁により全開から全閉までの間で開度可変に構成され、第2EGR弁はダイアフラムアクチュエータにより開度可変に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の装置では、第2EGR弁を開閉させる構成として、例えば、
図18に概略図で示すように、ダイアフラムアクチュエータ91への負圧の供給と正圧(大気圧を含む)の供給を切り替えるために電動式の三方弁92を使用していた。三方弁92は、例えば、
図19に一部切断した斜視図で示すように、プランジャ93を内蔵したケーシング94と、ケーシング94に設けられた第1~第3の三つのポート94a,94b,94cとを備える。そして、三方弁92は、プランジャ93をケーシング94の中で軸方向へ移動させることで、ダイアフラムアクチュエータ91の圧力室91aに通じる第1のポート94aを、エンジンの吸気通路に通じる第2のポート94b又は大気に通じる第3のポート94cに連通させ、ダイアフラムアクチュエータ91を駆動させるように構成される。このように三方弁92は、それ自体の構造が複雑で、二方弁に比べてコストアップを伴う傾向があった。
【0005】
これに対し、第2EGR弁を開閉させる構成として、
図20に概略図で示すように、ダイアフラムアクチュエータ91への負圧の供給と正圧の供給を切り替えるために、特性の異なる二つの二方弁95,96を使用して同時に開閉を切り替えることで三方弁92と同等の機能を得ることが考えられる。二方弁95,96は、例えば、
図21に一部切断した斜視図で示すように、弁体97を内蔵したケーシング98と、ケーシング98に設けられた第1及び第2の二つのポート98a,98bとを備える。そして、二方弁95,96は、ケーシング98の中で弁体97を往復動させることで、弁孔98cを開閉するように構成される。この点、二方弁95,96は、三方弁92よりも構造が簡単ではあるが、二つの二方弁95,96を使用することから、一つの三方弁92を使用した場合と同様にコストアップを伴ってしまう。
図18、
図20において、三方弁92の第2のポート94b又は二方弁95の第1のポート98aを吸気通路に接続する通路の途中には、逆止弁99が設けられる。この逆止弁99は、吸気通路から第2のポート94b又は第1のポート98aへ向かう気流を阻止し、第2のポート94b又は第1のポート98aから吸気通路へ向かう気流を許容するように構成される。
【0006】
ここで、EGRシステムにおいて、EGRガスを冷却するためのEGRクーラをEGR通路に設けると共に、EGRクーラへ流れるEGRガスの一部を迂回させるバイパス通路を設け、そのバイパス通路を開閉するバイパス弁を設けることが知られている。そして、バイパス弁を開閉させるために、上記と同様にダイアフラムアクチュエータを使用することが考えられる。しかしながら、ダイアフラムアクチュエータを駆動させるために三方弁を使用したり、二つの二方弁を使用したりしたのでは、上記と同様、ダイアフラムアクチュエータを動作させるための構成が複雑化し、コストアップを伴うことになってしまう。
【0007】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、EGRクーラのバイパス通路に設けられるバイパス弁を開閉駆動させるためにダイアフラムアクチュエータを使用したEGRシステムにおいて、そのダイアフラムアクチュエータを動作させるための構成の複雑化とコストアップを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、エンジンから排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとしてエンジンへ還流させるために吸気通路へ流すEGR通路と、EGR通路を流れるEGRガスの流量を調節するためのEGR弁と、EGR通路を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラと、EGR通路においてEGRクーラへ流れるEGRガスの一部を迂回させるためのバイパス通路と、バイパス通路を開閉するためのバイパス弁とを備えたEGRシステムにおいて、バイパス弁は、ダイアフラムアクチュエータにより開閉駆動可能に構成され、ダイアフラムアクチュエータは、ダイアフラムにより区画される圧力室と大気室とを含み、圧力室には吸気通路に連通する連通路が接続され、大気室は大気に連通し、連通路には、大気に連通する大気通路が分岐して設けられ、連通路において、大気通路が分岐する分岐部よりも吸気通路に近い側には、流路を縮小するための絞り部が設けられると共に、絞り部よりも吸気通路に近い側には、吸気通路から絞り部へ向かう気流を阻止し、絞り部から吸気通路へ向かう気流を許容する逆止弁が設けられ、大気通路には、同通路を開閉するための一つの二方弁が設けられることを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、吸気通路における圧力はエンジンの運転状態により変わり、負圧から大気圧の状態となる。ここで、二方弁を開弁することで、大気通路が開放され、ダイアフラムアクチュエータの圧力室に二方弁、大気通路及び連通路を介して大気圧が導入され、ダイアフラムが大気室の側へ変位してダイアフラムアクチュエータが所定の動作状態となる。一方、二方弁を閉弁することで、大気通路が遮断され、大気通路に大気圧が作用しなくなる。このとき、吸気通路が負圧の状態であれば、その負圧が逆止弁、絞り部及び連通路を介して圧力室に導入され、ダイアフラムが圧力室の側へ変位してダイアフラムアクチュエータが所定の動作状態とは逆の動作状態となる。このとき、二方弁を閉弁し続けることで、圧力室には大気圧が作用せず、圧力室から吸気通路への負圧の抜けが絞り部と逆止弁により抑えられ、圧力室の負圧が保持される。従って、一つの二方弁の開弁と閉弁を切り換えることで、ダイアフラムアクチュエータが所定の動作状態と逆の動作状態との間で切り換えられ、バイパス弁が開駆動、閉駆動される。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、二方弁の流路径を絞り部の流路径よりも大きく設定したことを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、二方弁の流路径を絞り部の流路径よりも大きく設定したので、二方弁が開弁しているときの吸気通路から圧力室への負圧の導入が抑制され、大気通路から圧力室へ大気圧が導入されやすくなる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1又は2に記載の技術において、二方弁を制御するための制御手段を更に備え、制御手段は、吸気通路で発生する負圧を圧力室へ導入してダイアフラムアクチュエータを動作させることによりバイパス弁を開駆動するために二方弁を閉弁制御し、エンジン又はEGR通路の暖機完了後に大気圧を圧力室へ導入してダイアフラムアクチュエータを動作させることによりバイパス弁を閉駆動するために二方弁を開弁制御することを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項1又は2に記載の技術の作用に加え、エンジンの運転時に制御手段が二方弁を閉弁制御することで、吸気通路で発生する負圧が連通路を介して圧力室へ導入されてダイアフラムアクチュエータが動作し、バイパス弁が開駆動する。一方、エンジン又はEGR通路の暖機完了後に制御手段が二方弁を開弁制御することで、大気圧が大気通路及び連通路を介して圧力室へ導入されてダイアフラムアクチュエータが動作し、バイパス弁が閉駆動する。従って、バイパス弁は、エンジンの運転時に暖機完了時までの間で開駆動し、暖機完了後には閉駆動することになる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項3に記載の技術において、制御手段が、吸気通路で発生する負圧を圧力室へ導入してダイアフラムアクチュエータを動作させることによりバイパス弁を開駆動するために二方弁を閉弁制御する時期は、エンジンの低温始動後であることを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、請求項3に記載の技術の作用に加え、バイパス弁は、エンジンの低温始動後から暖機完了時の間で開駆動し、暖機完了後には閉駆動することになる。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項5に記載に記載の技術は、エンジンから排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとしてエンジンへ還流させるために吸気通路へ流すEGR通路と、EGR通路を流れるEGRガスの流量を調節するためのEGR弁と、EGR通路を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラと、EGR通路においてEGRクーラへ流れるEGRガスの一部を迂回させるためのバイパス通路と、バイパス通路を開閉するためのバイパス弁とを備えたEGRシステムにおいて、バイパス弁は、ダイアフラムアクチュエータにより開閉駆動可能に構成され、ダイアフラムアクチュエータは、ダイアフラムにより区画される圧力室と大気室とを含み、圧力室には吸気通路に連通する連通路のみが接続され、大気室は大気に連通し、連通路には、同通路を開閉するための一つの二方弁が設けられることを趣旨とする。
【0017】
上記技術の構成によれば、吸気通路における圧力はエンジンの運転状態により変わり、負圧から大気圧の状態となる。ここで、吸気通路が負圧の状態となるときに、二方弁を開弁することで、連通路が開放され、ダイアフラムアクチュエータの圧力室に連通路を介して負圧が導入され、ダイアフラムが圧力室の側へ変位してダイアフラムアクチュエータが所定の動作状態となる。このとき、二方弁を開弁状態から閉弁することで、圧力室の負圧状態が保持され、ダイアフラムアクチュエータの所定の動作状態が保持される。一方、吸気通路が低負圧から大気圧の状態となるときに、二方弁を開弁することで、連通路が開放され、ダイアフラムアクチュエータの圧力室が連通路を介して低負圧から大気圧の状態となり、ダイアフラムが大気室の側へ変位してダイアフラムアクチュエータが所定の動作状態とは逆の動作状態となる。このとき、二方弁を開弁状態から閉弁することで、圧力室の低負圧から大気圧の状態が保持され、ダイアフラムアクチュエータの逆の動作状態が保持される。従って、一つの二方弁の開弁と閉弁を切り換えることで、ダイアフラムアクチュエータが所定の動作状態と逆の動作状態との間で切り換えられ、バイパス弁が開駆動、閉駆動される。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の技術は、請求項5に記載の技術において、二方弁を制御するための第1の制御手段を更に備え、第1の制御手段は、エンジンの始動後時に吸気通路で発生する負圧を圧力室へ導入してダイアフラムアクチュエータを動作させることによりバイパス弁を開駆動するために二方弁を開弁制御し、その後に圧力室の負圧を保持してダイアフラムアクチュエータの動作を保持することによりバイパス弁を開き状態に保持するために二方弁を閉弁制御することを趣旨とする。
【0019】
上記技術の構成によれば、請求項5に記載の技術の作用に加え、エンジンの始動後に第1の制御手段が二方弁を開弁制御することで、連通路が開放され、吸気通路で発生する負圧が圧力室へ導入されてダイアフラムアクチュエータが所定の動作状態となり、バイパス弁が開駆動する。その後に第1の制御手段が二方弁を閉弁制御することで、連通路が遮断され、圧力室の負圧が保持されてダイアフラムアクチュエータの所定の動作状態が保持され、バイパス弁が開き状態に保持される。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の技術は、請求項5に記載の技術において、二方弁を制御するための第2の制御手段を更に備え、第2の制御手段は、エンジンの始動後に吸気通路の低負圧から大気圧を圧力室へ導入してダイアフラムアクチュエータを動作させることによりバイパス弁を閉駆動するために二方弁を開弁制御し、その後に圧力室の低負圧から大気圧を保持してダイアフラムアクチュエータの動作を保持することによりバイパス弁を閉じ状態に保持するために二方弁を閉弁制御することを趣旨とする。
【0021】
上記技術の構成によれば、請求項5に記載の技術の作用に加え、エンジンの始動後に第2の制御手段が二方弁を閉弁状態から開弁制御することで、連通路が開放され、吸気通路の低負圧から大気圧が圧力室へ導入されてダイアフラムアクチュエータが所定の動作状態とは逆の動作状態となり、バイパス弁が閉駆動する。その後に第2の制御手段が二方弁を閉弁制御することで、連通路が遮断され、圧力室の低負圧から大気圧が保持されてダイアフラムアクチュエータの逆の動作状態が保持され、バイパス弁が閉じ状態に保持される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の技術によれば、EGRクーラのバイパス通路に設けられるバイパス弁を開閉駆動させるためにダイアフラムアクチュエータを使用したEGRシステムにおいて、そのダイアフラムアクチュエータを動作させるための構成の複雑化とコストアップを抑えることができる。
【0023】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、二方弁を開弁したときは、圧力室へ速やかに大気圧を導入することができ、ダイアフラムアクチュエータを速やかに大気圧により動作させることができる。
【0024】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1又は2に記載の技術の効果に加え、ダイアフラムアクチュエータのダイアフラムが破損する等の故障の際には、バイパス弁が閉状態となり、EGR通路の過熱を抑制することができる。
【0025】
請求項4に記載の技術によれば、請求項3に記載の技術の効果に加え、連通路に絞り部が設けられるので、圧力室への負圧の導入が遅れてバイパス弁の開駆動が遅れる傾向にあるが、EGRガス温度の低い低温始動時にバイパス弁を開駆動するので、バイパス通路へEGRガスが遅れて流れることが問題になることはなく、バイパス弁の開駆動に対する応答性を不問にできる。
【0026】
請求項5に記載の技術によれば、EGRクーラのバイパス通路に設けられるバイパス弁を開閉駆動させるためにダイアフラムアクチュエータを使用したEGRシステムにおいて、そのダイアフラムアクチュエータを動作させるための構成の複雑化とコストアップを抑えることができる。
【0027】
請求項6に記載の技術によれば、請求項5に記載の技術の効果に加え、一つの二方弁を開弁し閉弁することで、ダイアフラムアクチュエータによりバイパス弁を開駆動し、その開き状態を保持することができる。
【0028】
請求項7に記載の技術によれば、請求項5に記載の技術の効果に加え、一つの二方弁を開弁し閉弁することで、ダイアフラムアクチュエータによりバイパス弁を閉駆動し、その閉じ状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
【
図2】第1実施形態に係り、バイパス弁が全閉となるときであって、EGRクーラをその長手方向に沿って切断した状態を、バイパス弁の開閉駆動機構と共に示す断面図。
【
図3】第1実施形態に係り、EGRクーラの一部であって、
図2の1点鎖線四角で囲った部分を示す拡大断面図。
【
図4】第1実施形態に係り、バイパス弁が全開となるときであって、EGRクーラの一部を示す
図3に準ずる拡大断面図。
【
図5】第1実施形態に係り、開閉駆動機構の動作状態の一つを示す概略図。
【
図6】第1実施形態に係り、開閉駆動機構の動作状態の一つを示す概略図。
【
図7】第1実施形態に係り、開閉駆動機構の動作状態の一つを示す概略図。
【
図8】第1実施形態に係り、開閉駆動機構の動作状態の一つを示す概略図。
【
図9】第1実施形態に係り、EGR制御の内容を示すフローチャート。
【
図10】第1実施形態に係り、冷却水温度と吸気温度に応じたEGR作動要求の有無と、EGR作動要求が有るときにおけるバイパス弁開要求の有無を求めるために参照されるEGR作動要求マップ。
【
図11】第2実施形態に係り、開閉駆動機構の動作状態の一つを示す概略図。
【
図12】第2実施形態に係り、開閉駆動機構の動作状態の一つを示す概略図。
【
図13】第2実施形態に係り、開閉駆動機構の動作状態の一つを示す概略図。
【
図14】第2実施形態に係り、開閉駆動機構の動作状態の一つを示す概略図。
【
図15】第2実施形態に係り、開閉駆動機構の動作状態の一つを示す概略図。
【
図16】第2実施形態に係り、開閉駆動機構の動作状態の一つを示す概略図。
【
図17】第2実施形態に係り、EGR制御の内容を示すフローチャート。
【
図18】従来例に係り、第2EGR弁を開閉させる構成であって、ダイアフラムアクチュエータと三方弁を含む構成を示す概略図。
【
図19】従来例に係り、三方弁の構成を一部切断して示す斜視図。
【
図20】従来例に係り、第2EGR弁を開閉させる構成であって、ダイアフラムアクチュエータと、一つの三方弁と同等の機能が得られる二つの二方弁とを含む構成を示す概略図。
【
図21】従来例に係り、二方弁の構成を一部切断して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、EGRシステムをガソリンエンジンシステムに具体化したいくつかの実施形態について説明する。
【0031】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
[エンジンシステムについて]
図1に、この実施形態のガソリンエンジンシステム(以下、単に「エンジンシステム」と言う。)を概略構成図により示す。自動車に搭載されたエンジンシステムは、複数の気筒を有するエンジン1を備える。このエンジン1は、4気筒、4サイクルのレシプロエンジンであり、ピストン及びクランクシャフト等の周知の構成を含む。エンジン1には、各気筒へ吸気を導入するための吸気通路2と、エンジン1の各気筒から排気を導出するための排気通路3が設けられる。吸気通路2には、その上流側からエアクリーナ9、スロットル装置4及び吸気マニホールド5が設けられる。排気通路3には、その上流側から順に排気マニホールド6及び触媒7が設けられる。触媒7には、排気を浄化するために、例えば、三元触媒が内蔵される。加えて、このエンジンシステムは、高圧ループタイプの排気還流システム(EGRシステム)11を備える。
【0033】
スロットル装置4は、吸気マニホールド5より上流の吸気通路2に配置され、運転者のアクセル操作に応じてバタフライ式のスロットル弁4aを開度可変に開閉駆動させることで、吸気通路2を流れる吸気量を調節するようになっている。吸気マニホールド5は、主として樹脂材より構成され、エンジン1の直上流にて吸気通路2に配置され、吸気が導入される一つのサージタンク5aと、サージタンク5aに導入された吸気をエンジン1の各気筒へ分配するためにサージタンク5aから分岐した複数(4つ)の分岐管5bとを含む。吸気マニホールド5は、吸気通路2の一部を構成する。
【0034】
エンジン1には、各気筒に対応して燃料を噴射するための燃料噴射装置(図示略)が設けられる。燃料噴射装置は、燃料供給装置(図示略)から供給される燃料をエンジン1の各気筒へ噴射するように構成される。各気筒では、燃料噴射装置から噴射される燃料と吸気マニホールド5から導入される吸気とにより可燃混合気が形成される。
【0035】
エンジン1には、各気筒に対応して点火装置(図示略)が設けられる。点火装置は、各気筒で可燃混合気に点火するように構成される。各気筒内の可燃混合気は、点火装置の点火動作により爆発・燃焼し、燃焼後の排気は、各気筒から排気マニホールド6及び触媒7を経て外部へ排出される。このとき、各気筒でピストン(図示略)が上下運動し、クランクシャフト(図示略)が回転することにより、エンジン1に動力が得られる。
【0036】
[EGRシステムについて]
図1に示すように、この実施形態のEGRシステム11は、排気通路3と吸気通路2との間に設けられ、エンジン1から排気通路3へ排出される排気の一部を排気還流ガス(EGRガス)としてエンジン1へ還流させるために吸気通路2へ流す排気還流通路(EGR通路)12と、EGR通路12を流れるEGRガスを冷却するための排気還流クーラ(EGRクーラ)13と、EGR通路12を流れるEGRガスの流量を調節するための排気還流弁(EGR弁)14と、EGR通路12を流れるEGRガスをエンジン1の各気筒へ分配するために、吸気マニホールド5の各分岐管5bへEGRガスを分配する排気還流ガス分配器(EGRガス分配器)15とを備える。これらEGRクーラ13、EGR弁14及びEGRガス分配器15のEGRガスが流れる流路もEGR通路12を構成している。EGRガス分配器15より上流にてEGR通路12を構成する配管は、入口12aと出口12bを含む。その入口12aは、触媒7より下流の排気通路3に接続され、その出口12bは、EGRガス分配器15に接続される。この実施形態で、EGRガス分配器15は、EGR通路12の終段を構成している。EGR通路12において、EGR弁14は、EGRクーラ13より下流に設けられ、EGRガス分配器15は、EGR弁14より下流に設けられる。
【0037】
EGRガス分配器15は、主として樹脂材により構成され、全体として横長な形状を有し、その長手方向において、吸気マニホールド5の複数の分岐管5bを横切るように配置される。この実施形態で、EGRガス分配器15は、導入されたEGRガスが集まるガスチャンバ15aと、ガスチャンバ15aから各分岐管5bへEGRガスを分配する複数(4つ)のガス分配通路15bとを含む。
【0038】
このEGRシステム11では、EGR弁14が開弁することにより、排気通路3を流れる排気の一部がEGRガスとしてEGR通路12を流れ、EGRクーラ13、EGR弁14及びEGRガス分配器15を介して吸気マニホールド5の各分岐管5bへ分配され、更にエンジン1の各気筒へ分配されて還流される。
【0039】
この実施形態において、EGRクーラ13には、バイパス通路16が一体に設けられる。バイパス通路16は、EGR通路12において、EGRクーラ13へ流れるEGRガスの一部を迂回させるための通路である。バイパス通路16には、同通路16を開閉するためのバイパス弁17が設けられる。
【0040】
図2に、バイパス弁17が全閉となるときであって、EGRクーラ13をその長手方向に沿って切断した状態を、バイパス弁17の開閉駆動機構19と共に断面図により示す。
図3に、EGRクーラ13の一部であって、
図2の1点鎖線四角X1で囲った部分を拡大断面図により示す。
図4に、バイパス弁17が全開となるときであって、EGRクーラ13の一部を
図3に準ずる拡大断面図により示す。
【0041】
図2に示すように、EGRクーラ13は、ハウジング41と、ハウジング41の中に設けられた熱交換器42と、ハウジング41にEGRガスを導入するための導入口43と、ハウジング41からEGRガスを導出するための導出口44とを含む。バイパス通路16は、ハウジング41に一体に設けられる。熱交換器42は、EGRガスが流入する入口42aと、EGRガスが流出する出口42bとを含む。バイパス通路16は、EGRガスが流入する入口16aと、EGRガスが流出する出口16bとを含む。バイパス通路16の出口16bは、熱交換器42の出口42bに隣接して配置される。また、ハウジング41は、熱交換器42の入口42aから導入口43までの間の導入空間45と、熱交換器42の出口42bから導出口44までの間の導出空間46とを含む。バイパス通路16は、仕切壁48を介して熱交換器42に隣接する。
【0042】
図2に示すように、この実施形態で、EGRクーラ13は、車両に搭載された状態において、EGRガスが斜め上方へ流れるように斜めに配置される。この斜めの配置状態において、導出口44は導入口43よりも鉛直方向において高い位置に配置され、バイパス通路16は、熱交換器42に対し鉛直方向下側に配置される。これにより、熱交換器42の内部で発生した凝縮水がその出口42bから放出され、バイパス通路16へ流下し、同通路16の上流部へ向けて流下するようになっている。熱交換器42は、エンジン1の冷却水が流れる水通路(図示略)と、その水通路の中に配置され、EGRガスが流れるガス通路(図示略)とを含む。なお、
図2では、便宜上、熱交換器42に対する冷却水の取入口や取出口の図示を省略すると共に、熱交換器42やバイパス弁17の図示を簡略化して示す。
【0043】
図2に示すように、この実施形態では、バイパス弁17は、ハウジング41においてバイパス通路16の出口16bに対応して配置される。バイパス弁17は、略四角板状をなす弁体61と、その弁体61を回動する回転軸62とを含む。バイパス弁17は、弁体61の一辺側が回転軸62に固定され、その一辺側に対向する弁体61の他辺側が回転軸62を中心に揺動するスイングタイプとして構成される。また、回転軸62の一端部には、その半径方向へ伸びるアーム63が設けられる。
【0044】
[開閉駆動機構について]
図1、
図2に示すように、この実施形態のEGRシステム11は、バイパス弁17の回転軸62を回動させて弁体61を開閉駆動させるための開閉駆動機構19を備える。
図5~
図8には、開閉駆動機構19の各種動作状態を概略図により示す。
図1、
図2及び
図5~
図8に示すように、この開閉駆動機構19は、バイパス弁17を開閉駆動させるダイアフラムアクチュエータ21を含む。ダイアフラムアクチュエータ21は、ケーシング21aを含み、そのケーシング21aには、ダイアフラム22により区画される圧力室23と大気室24とを含む。圧力室23には、ダイアフラム22を大気室24の側へ付勢するスプリング25が設けられる。また、ダイアフラム22には、大気室24から突出するロッド26の基端が固定される。
図2に示すように、このロッド26の先端は、回転軸62を回動させるためにアーム63に連結される。圧力室23には、吸気通路2を構成するサージタンク5aに連通する連通路27が接続される。この連通路27の流路径を、例えば、「2.5mm」に設定することができる。大気室24は、大気口21bを介して大気に連通する。
【0045】
この実施形態で、連通路27には、大気に連通する大気通路28が分岐して設けられる。この大気通路28の流路径を、例えば、「2.5mm」に設定することができる。また、連通路27において、大気通路28が分岐する分岐部29よりもサージタンク5a(吸気通路2)に近い側には、流路を縮小するための絞り部30が設けられると共に、絞り部30よりもサージタンク5aに近い側には、逆止弁31が設けられる。この逆止弁31は、サージタンク5aから絞り部30へ向かう気流を阻止し、絞り部30からサージタンク5aへ向かう気流を許容するように構成される。更に、大気通路28には、同通路28を開閉するための一つの電動式の二方弁32が設けられる。二方弁32の大気側には、エアフィルタ33が設けられる。この実施形態で、二方弁32は、常開式弁であって、非通電時(オフ時)に開放(開弁)し、通電時(オン時)に遮断(閉弁)するように構成される。
【0046】
この実施形態において、二方弁32の流路面積は、絞り部30の流路面積よりも大きく設定される。そのために、二方弁32の流路径を絞り部30の流路径よりも大きく設定している。例えば、絞り部30の流路径を「1mm」に設定し、二方弁32の流路径(弁体が着座する弁座の弁孔の内径)を「4mm」に設定することができる。絞り部30の流路径を、通気を許容し得る範囲内で「1mm」以下に設定することもできる。
【0047】
[エンジンシステムの電気的構成について]
次に、エンジンシステムの電気的構成の一例について説明する。
図1において、このエンジンシステムに設けられる各種センサ等71~77は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段を構成する。エンジン1に設けられる水温センサ71は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温度)THWを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン1に設けられる回転数センサ72は、エンジン1のクランクシャフトの回転角(クランク角度)を検出すると共に、そのクランク角度の変化(クランク角速度)をエンジン1の回転数(エンジン回転数)NEとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エアクリーナ9の近傍に設けられるエアフローメータ73は、エアクリーナ9を流れる吸気量Gaを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。サージタンク5aに設けられる吸気圧センサ74は、スロットル装置4より下流の吸気通路2(サージタンク5a)における吸気圧力PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。スロットル装置4に設けられるスロットルセンサ75は、スロットル弁4aの開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。排気マニホールド6と触媒7との間の排気通路3に設けられる酸素センサ76は、排気中の酸素濃度Oxを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エアクリーナ9の入口に設けられる吸気温センサ77は、エアクリーナ9に吸入される外気の温度(吸気温度)THAを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。
【0048】
このエンジンシステムは、同システムの制御を司る電子制御装置(ECU)80を更に備える。ECU80には、各種センサ等71~77がそれぞれ接続される。また、ECU80には、EGR弁14及び二方弁32の他、インジェクタ(図示略)及びイグニションコイル(図示略)が接続される。この実施形態で、ECU80は、この開示技術における制御手段の一例に相当する。周知のようにECU80は、中央処理装置(CPU)、各種メモリ、外部入力回路及び外部出力回路等を備える。メモリには、各種制御に関する所定の制御プログラムが格納される。CPUは、入力回路を介して入力される各種センサ等71~77の検出信号に基づき、所定の制御プログラムに基づいて燃料噴射制御、点火時期制御及びEGR制御等を実行するようになっている。
【0049】
この実施形態で、ECU80は、EGR制御において、エンジン1の運転状態に応じてEGR弁14及び二方弁32を制御するようになっている。具体的には、ECU80は、エンジン1の停止時、アイドル運転時及び減速運転時には、EGR弁14を全閉に制御し、それ以外の運転時には、その運転状態に応じて目標EGR開度を求め、EGR弁14をその目標EGR開度に制御するようになっている。このときEGR弁14が開弁されることにより、エンジン1から排気通路3へ排出され、その排気の一部が、EGRガスとしてEGR通路12、EGRクーラ13、EGR弁14及びEGRガス分配器15等を介して吸気通路2(吸気マニホールド5)へ流れ、エンジン1の各気筒へ分配され還流される。
【0050】
[EGR制御について]
次に、この実施形態のEGR制御について説明する。
図9に、EGR制御の内容をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、ECU80は、ステップ100で、水温センサ71、回転数センサ72、スロットルセンサ75、吸気圧センサ74及び吸気温センサ77の検出値に基づき、エンジン回転数NE、エンジン負荷KL、スロットル開度TA、冷却水温度THW、吸気温度THA及び吸気圧力PMをそれぞれ取り込む。ECU80は、エンジン負荷KLを、スロットル開度TA又は吸気圧力PMに基づいて求めることができる。
【0051】
次に、ステップ110で、ECU80は、冷却水温度THWと吸気温度THAに応じたEGR作動要求の有無とバイパス弁開要求の有無を求める。ECU80は、例えば、
図10に示すEGR作動要求マップを参照することにより、冷却水温度THWと吸気温度THAに応じたEGR作動要求の有無と、EGR作動要求が有るときにおけるバイパス弁開要求の有無を求めることができる。
【0052】
図10に示すマップにおいて、斜線を付して示す「EGR作動域」がEGR作動要求を有する領域であり、「EGR作動域」以外の領域がEGR作動要求が無い領域を示す。また、
図10に示すマップにおいて、「EGR作動域」の紗(ドット)を付して示す領域がバイパス弁開要求を有る領域であり、「EGR作動域」のその他の領域がバイパス弁開要求が無い領域を示す。
図10に示すように、この実施形態のEGR制御では、「EGR作動域」を規定する冷却水温度THWの最低温度が、従前の「60℃」ではなく相対的に低温の「40℃」に設定される。これにより、ECU80は、エンジン1の低温始動後、相対的に低温でのEGRを実行するようになっている。また、
図10に示すように、この実施形態のEGR制御では、「バイパス弁開要求」を規定する冷却水温度THWの最低温度も相対的に低温の「40℃」に設定される。これにより、ECU80は、EGRの実行時からバイパス弁17を全開に開弁制御するようになっている。更に、
図10に示すように、この実施形態のEGR制御では、「バイパス弁開要求」を規定する冷却水温度THWの最高温度がエンジン1の暖機完了温度に相当する「80℃」に設定される。これにより、エンジン1の暖機完了後にはバイパス弁開要求が無くなり、ECU80は、バイパス弁17を全閉に閉弁制御するようになっている。なお、
図10に示す「EGRカット域」でも、バイパス弁17を開駆動するようにECU80の制御を設定することも可能である。また、エンジン1の暖機完了後の代わりに、EGR通路12の暖機完了後にバイパス弁開要求を無くすようにすることもできる。
【0053】
次に、ステップ120で、ECU80は、ステップ110の演算結果がEGR作動要求有りか否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ130へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ160へ移行する。
【0054】
ステップ130では、ECU80は、エンジン回転数NE、エンジン負荷KL及びスロットル開度TAに基づきEGR弁14の目標開度を算出し、EGR弁14をその目標開度に制御する。ECU80は、例えば、所定の目標開度マップ(図示略)を参照することにより、エンジン回転数NE、エンジン負荷KL及びスロットル開度TAに応じた目標開度を求めることができる。ここで、エンジン1の低温始動時には、冷却水温度THWが「40℃」に達するとEGR弁14が開弁し、EGRが実行されることになる。
【0055】
次に、ステップ140で、ECU80は、ステップ110の演算結果がバイパス弁開要求有りか否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ150へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ160へ移行する。
【0056】
そして、ステップ150では、ECU80は、バイパス弁17を全閉状態から全開にするために二方弁32をオン(遮断)し、処理をステップ100へ戻す。これにより、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23には、サージタンク5a(吸気通路2)で発生した高負圧が連通路27を介して導入されることになる。この場合、サージタンク5aから連通路27へ導入される高負圧の大気通路28への漏れが二方弁32により遮断される。これにより、圧力室23で高負圧が保持され、バイパス弁17の全開が保持される。ここで、エンジン1の低温始動時には、冷却水温度THWが「40℃」に達すると、EGRが実行されると共にバイパス弁17が全開となり、EGR通路12を流れるEGRガスの一部が熱交換器42を迂回してバイパス通路16を流れることになる。
【0057】
一方、ステップ160では、ECU80は、バイパス弁17を全開状態から全閉にするために二方弁32をオフ(開放)し、処理をステップ100へ戻す。これにより、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23には、大気通路28及び連通路27を介して大気圧が導入されることになる。この場合、サージタンク5aで高負圧が発生していても、絞り部30により圧力室23への負圧の影響が抑制される。これにより、圧力室23での大気圧が保持され、バイパス弁17の全閉が保持される。この場合、EGR通路12を流れるEGRガスが熱交換器42を流れて冷却されることになる。
【0058】
上記したEGR制御によれば、ECU80は、エンジン1の低温始動後にサージタンク5a(吸気通路2)で発生する負圧を圧力室23へ導入してダイアフラムアクチュエータ21を動作させることによりバイパス弁17を開駆動するために二方弁32を閉弁制御し、エンジン1の暖機完了後に大気圧を圧力室23へ導入してダイアフラムアクチュエータ21を動作させることによりバイパス弁17を閉駆動するために二方弁32を開弁制御するようになっている。
【0059】
[EGRシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRシステムの構成、特に開閉駆動機構19の構成によれば、スロットル装置4より下流のサージタンク5a(吸気通路2)における圧力はエンジン1の運転状態により変わり、負圧から大気圧の状態となる。ここで、二方弁32を開弁することで、大気通路28が開放され、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23に二方弁32、大気通路28及び連通路27を介して大気圧が導入され、ダイアフラム22が大気室24の側へ変位してダイアフラムアクチュエータ21が所定の動作状態、すなわちロッド26がケーシング21aから突出する状態となる。これにより、バイパス弁17は全閉に閉駆動される。一方、二方弁32を閉弁することで、大気通路28が遮断され、大気通路28に大気圧が作用しなくなる。このとき、サージタンク5a(吸気通路2)が負圧の状態であれば、その負圧が逆止弁31、絞り部30及び連通路27を介して圧力室23に導入され、ダイアフラム22がスプリング25の付勢力に抗して圧力室23の側へ変位してダイアフラムアクチュエータ21が上記所定の動作状態とは逆の動作状態、すなわちロッド26の一部がケーシング21aに没入する状態となる。これにより、バイパス弁17は全開に開駆動される。このとき、二方弁32を閉弁し続けることで、圧力室23には大気圧が作用せず、圧力室23からサージタンク5a(吸気通路2)への負圧の抜けが絞り部30と逆止弁31により抑えられ、圧力室23での負圧が保持され、バイパス弁17の全開が保持される。従って、一つの二方弁32の開弁と閉弁を切り換えることで、ダイアフラムアクチュエータ21が所定の動作状態とその逆の動作状態との間で切り換えられ、バイパス弁17が開駆動、閉駆動される。このため、EGRクーラ13のバイパス通路16に設けられるバイパス弁17を開閉駆動させるためにダイアフラムアクチュエータ21を使用したEGRシステムにおいて、そのダイアフラムアクチュエータ21を動作させるための構成の複雑化とコストアップを抑えることができる。
【0060】
この実施形態の開閉駆動機構19の構成によれば、二方弁32の流路径を絞り部30の流路径よりも大きく設定したので、二方弁32が開弁しているときのサージタンク5a(吸気通路2)から圧力室23への負圧の導入が抑制され、大気通路28から圧力室23へ大気圧が導入されやすくなる。このため、二方弁32を閉弁しているときは、圧力室23に導入された負圧を保持することができ、ダイアフラムアクチュエータ21の負圧による動作状態を保持することができる。これにより、バイパス弁17を全開に保持することができる。また、二方弁32を開弁したときは、圧力室23へ速やかに大気圧を導入することができ、ダイアフラムアクチュエータ21を速やかに大気圧により動作させることができる。これにより、バイパス弁17を速やかに全開弁状態から全閉に閉駆動させることができる。
【0061】
ここで、上記EGR制御を実行したときに、エンジン1が低温時に始動を開始してから暖機が完了するまでの間の開閉駆動機構19の動作の推移を以下に説明する。エンジン1の低温始動前には、
図5に示すように、二方弁32がオフであることで開放(開弁)され、大気通路28から大気圧が作用し、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23にはその大気圧が導入されることになる。このとき、ダイアフラム22が大気室24の側へ変位してロッド26のほぼ全部がケーシング21aから突出することで、
図2、
図3に示すように、バイパス弁17が全閉となる。
【0062】
その後、エンジン1が低温始動をしてEGRを開始する際には、
図6に示すように、二方弁32がオンされることで遮断(閉弁)され、連通路27にはサージタンク5a(吸気通路2)で発生する高負圧が作用し、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23にはその高負圧が導入されることになる。このとき、ダイアフラム22がスプリング25の付勢力に抗して圧力室23の側へ変位してロッド26の一部がケーシング21aへ没入することで、バイパス弁17が全閉状態から
図4に示すように全開となる。
【0063】
その後、低温始動後からEGRが40℃以上の冷却水温度THWで実行される間において、バイパス弁開要求が有る間は、
図7に示すように、二方弁32がオンされ続けることで遮断(閉弁)状態が保持され、連通路27にはサージタンク5a(吸気通路2)で発生する圧力室23の負圧より高負圧の圧力が作用し、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23にはその圧力室23の負圧より高負圧の圧力が導入されることになる。これにより、ダイアフラム22は圧力室23の側へ変位した状態が保持されてロッド26の一部がケーシング21aへ没入した状態が保持されることで、
図4に示すバイパス弁17の全開状態が保持される。
【0064】
その後、エンジン1の暖機が完了すると、
図8に示すように、二方弁32がオフされることで遮断(閉弁)状態から開放(開弁)され、連通路27にはサージタンク5a(吸気通路2)から高負圧から大気圧までの圧力が作用するが、大気通路28には大気圧が作用することになる。ここで、二方弁32を開弁しているときのサージタンク5a(吸気通路2)から圧力室23への負圧の導入が抑制され、大気通路28から圧力室23へ大気圧が導入されやすくなる。このため、ダイアフラム22が大気室24の側へ速やかに変位してロッド26の大部分がケーシング21aから突出し、バイパス弁17が全開状態から
図2、
図3に示す全閉へ速やかに閉弁駆動し、その後、全閉状態が保持される。
【0065】
なお、二方弁32がオフ状態のまま故障したとしても、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23には大気通路28及び連通路27を介して大気圧が導入されるので、ダイアフラムアクチュエータ21のロッド26のほぼ全部がケーシング21aから突出した状態となり、バイパス弁17が
図2、
図3に示すように全閉状態となる。このとき、EGR通路12を流れるEGRガスの全てはEGRクーラ13の熱交換器42にて冷却されるので、高温のEGRガスが樹脂製のEGRガス分配器15へ不用意に流れることがなく、EGRガス分配器15の溶損を防止することができる。
【0066】
この実施形態のEGRシステムの構成によれば、エンジン1の低温始動時後、EGR制御を開始する際には、ECU80が二方弁32をオンして閉弁制御することで、サージタンク5a(吸気通路2)で発生する高負圧が圧力室23へ導入されてダイアフラムアクチュエータ21が高負圧により動作し、すなわちロッド26の一部がケーシング21aへ没入し、バイパス弁17が全開に開駆動する。一方、エンジン1の暖機完了後には、ECU80が二方弁32をオフして開弁制御することで、大気圧が大気通路28及び連通路27を介して圧力室23へ導入されてダイアフラムアクチュエータ21が動作し、すなわちロッド26のほぼ全部がケーシング21aから突出し、バイパス弁17が全閉に閉駆動する。従って、バイパス弁17は、EGR制御開始時から暖機完了時まで全開に開駆動し、暖機完了後には全閉に閉駆動することになる。ここで、この実施形態のEGRシステムでは、連通路27には流路径の小さい絞り部30が設けられるので、圧力室23への負圧の導入が遅れてバイパス弁17の開駆動が遅れる傾向にあるが、EGRガス温度の低い低温始動時にバイパス弁17を開駆動するので、バイパス通路16へEGRガスが遅れて流れることが問題になることはなく、バイパス弁17の開駆動に対する応答性を不問にできる。また、ダイアフラムアクチュエータ21のダイアフラム22が破損する等の故障の際は、バイパス弁17は閉状態となり、EGRガス分配器15(EGR通路12)の過熱を抑制することができる。
【0067】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0068】
[開閉駆動機構について]
この実施形態では、バイパス弁17の開閉駆動機構20の構成の点で第1実施形態の開閉駆動機構19と構成が異なる。
図11~
図16には、この実施形態の開閉駆動機構20の各種動作状態を概略図により示す。この開閉駆動機構20は、バイパス弁17を開閉駆動させるダイアフラムアクチュエータ21を含む。ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23には、サージタンク5a(吸気通路2)に連通する連通路27のみが接続される。また、連通路27には、同通路27を開閉するための一つの二方弁32のみが設けられる。この実施形態で、二方弁32は、常閉式弁であって、非通電時(オフ時)に遮断(閉弁)し、通電時(オン時)に開放(開弁)するように構成される。この実施形態のダイアフラムアクチュエータ21の動作とバイパス弁17の開駆動及び閉駆動との関係は、第1実施形態のそれと同じである。
【0069】
[EGR制御について]
ここで、この実施形態のEGR制御について説明する。
図17に、EGR制御の内容をフローチャートにより示す。この実施形態で、ECU80は、この開示技術における第1の制御手段、第2の制御手段の一例に相当する。処理がこのルーチンへ移行すると、ECU80は、ステップ200で、水温センサ71、吸気圧センサ74及び吸気温センサ77の検出値に基き冷却水温度THW、吸気温度THA及び吸気圧力PMを取り込む。
【0070】
次に、ステップ210で、ECU80は、冷却水温度THWと吸気温度THAに応じたバイパス弁開要求の有無を求める。ECU80は、例えば、前述した
図10に示すEGR作動要求マップを参照することにより、冷却水温度THWと吸気温度THAに応じた、EGR作動域におけるバイパス弁開要求の有無を求めることができる。
【0071】
次に、ステップ220で、ECU80は、ステップ210の演算結果がバイパス弁開要求有りか否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ230へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ320へ移行する。
【0072】
ステップ230では、ECU80は、吸気圧力PMが第1の所定値P1より低いか否かを判断する。ECU80は、第1の所定値P1として、例えば「40kPa」を採用することができる。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ240へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ200へ戻す。
【0073】
ステップ240では、ECU80は、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23に負圧を導入し確保したことを示す負圧導入フラグXBISが「0」か否かを判断する。後述するように、ECU80は、このフラグXBISを、圧力室23に負圧を導入し確保したときに「1」に、圧力室23に負圧を導入しないときに「0」に設定するようになっている。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ250へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ300へ移行する。
【0074】
ステップ250では、ECU80は、圧力室23への大気圧の導入を解除したことを示すために大気圧導入フラグXAISを「0」に設定する。
【0075】
一方、ステップ240から移行してステップ300では、ECU80は、二方弁32をオフした後に「30秒」が経過したか否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ310へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ200へ戻す。
【0076】
ステップ310では、ECU80は、圧力室23に負圧を導入後一定時間経過し、圧力室23の負圧が低くなったことを示すために負圧導入フラグXBISを「0」に設定する。
【0077】
そして、ステップ250又はステップ310から移行してステップ260では、ECU80は、バイパス弁17を全閉状態から全開にするために二方弁32をオン(開放)する。これにより、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23には、サージタンク5a(吸気通路2)で発生した負圧が連通路27を介して導入されることになる。
【0078】
次に、ステップ270で、ECU80は、二方弁32をオンした後に「1秒」が経過したか否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は、圧力室23への負圧の導入を確保したものとして処理をステップ280へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ200へ戻す。
【0079】
ステップ280では、ECU80は、負圧導入フラグXBISを「1」に設定する。
【0080】
そして、ステップ290では、ECU80は、圧力室23に導入された負圧を保持するために二方弁32をオフ(遮断)し、処理をステップ200へ戻す。
【0081】
一方、ステップ230から移行してステップ320では、ECU80は、吸気圧力PMが第2の所定値P2以上か否かを判断する。ECU80は、第2の所定値P2として、例えば「80kPa」を採用することができる。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ330へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ320へ移行する。
【0082】
ステップ330では、ECU80は、大気圧導入フラグXAISが「0」か否かを判断する。後述するように、ECU80は、このフラグXAISを、圧力室23に大気圧を導入し確保したときに「1」に、圧力室23に大気圧を導入しないときに「0」に設定するようになっている。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ340へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ380へ移行する。
【0083】
ステップ340では、ECU80は、圧力室23への負圧の導入を解除したことを示すために負圧導入フラグXBISを「0」に設定する。
【0084】
一方、ステップ330から移行してステップ380では、ECU80は、二方弁32をオフした後に「30秒」が経過したか否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ390へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ200へ戻す。
【0085】
ステップ390では、ECU80は、圧力室23に大気圧を導入後一定時間経過し、圧力室23に負圧が導入されたことを示すために大気圧導入フラグXAISを「0」に設定する。
【0086】
そして、ステップ340又はステップ390から移行してステップ350では、ECU80は、バイパス弁17を全開状態から全閉にするために二方弁32をオン(開放)する。これにより、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23には、サージタンク5a(吸気通路2)における低負圧から大気圧までの圧力が連通路27を介して導入されることになる。
【0087】
次に、ステップ360で、ECU80は、二方弁32をオンした後に「1秒」が経過したか否かを判断する。ECU80は、この判断結果が肯定となる場合は、圧力室23への大気圧の導入を確保したものとして処理をステップ370へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ200へ戻す。
【0088】
ステップ370では、ECU80は、大気圧導入フラグXAISを「1」に設定し、処理をステップ290へ移行する。
【0089】
上記したこの実施形態のEGR制御によれば、ECU80は、エンジン1の始動時にサージタンク5a(吸気通路2)で発生する負圧を圧力室23へ導入してダイアフラムアクチュエータ21を動作させることによりバイパス弁17を開駆動するために二方弁32を開弁制御し、その後に圧力室23の負圧を保持してダイアフラムアクチュエータ21の動作を保持することによりバイパス弁17を開き状態に保持するために二方弁32を閉弁制御するようになっている。また、ECU80は、エンジン1の暖機後にバイパス弁開要求がなくなると、サージタンク5a(吸気通路2)の低負圧から大気圧を圧力室23へ導入してダイアフラムアクチュエータ21を動作させることによりバイパス弁17を閉駆動するために二方弁32を開弁制御し、その後に圧力室23の低負圧から大気圧を保持してダイアフラムアクチュエータ21の動作を保持することによりバイパス弁17を閉じ状態に保持するために二方弁32を閉弁制御するようになっている。
【0090】
[EGRシステムの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRシステムの構成、特に開閉駆動機構20の構成によれば、サージタンク5a(吸気通路2)における圧力はエンジン1の運転状態により変わり、負圧から大気圧の状態となる。ここで、サージタンク5aが負圧の状態となるときに、二方弁32を開弁することで、連通路27が開放され、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23に連通路27を介して負圧が導入され、ダイアフラム22がスプリング25の付勢力に抗して圧力室23の側へ変位してダイアフラムアクチュエータ21が所定の動作状態、すなわちロッド26の一部がケーシング21aに没入する状態となる。これにより、バイパス弁17は全開に開駆動される。このとき、二方弁32を開弁状態から閉弁することで、圧力室23の負圧状態が保持され、ダイアフラムアクチュエータ21のロッド26の一部がケーシング21aに没入した状態が保持される。これにより、バイパス弁17が全開に保持される。一方、サージタンク5a(吸気通路2)が低負圧から大気圧の状態となるときに、二方弁32を開弁することで、連通路27が開放され、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23が連通路27を介して低負圧から大気圧の状態となり、ダイアフラム22が大気室24の側へ変位してダイアフラムアクチュエータ21が所定の動作状態とは逆の動作状態、すなわちロッド26のほぼ全部がケーシング21aから突出する状態となる。これにより、バイパス弁17は全閉に閉駆動される。このとき、二方弁32を開弁状態から閉弁することで、圧力室23の低負圧から大気圧の状態が保持され、ダイアフラムアクチュエータ21のロッド26のほぼ全部がケーシング21aから突出する状態が保持される。これにより、バイパス弁17が全閉に保持される。従って、一つの二方弁32の開弁と閉弁を切り換えることで、ダイアフラムアクチュエータ21が所定の動作状態とその逆の動作状態との間で切り換えられ、バイパス弁17が開駆動、閉駆動される。このため、EGRクーラ13のバイパス通路16に設けられるバイパス弁17を開閉駆動させるためにダイアフラムアクチュエータ21を使用したEGRシステムにおいて、そのダイアフラムアクチュエータ21を動作させるための構成の複雑化とコストアップを抑えることができる。
【0091】
ここで、上記EGR制御を実行したときに、エンジン1が低温時に始動を開始してから暖機が完了するまでの間の開閉駆動機構20の動作の推移を以下に説明する。エンジン1の低温始動前には、
図11に示すように、二方弁32がオフされることで遮断(閉弁)され、連通路27にはサージタンク5a(吸気通路2)における大気圧が作用しなくなる。このとき、ダイアフラムアクチュエータ21のダイアフラム22は、スプリング25の付勢力により大気室24の側へ変位してロッド26のほぼ全部がケーシング21aから突出することで、
図3に示すように、バイパス弁17が全閉となる。
【0092】
その後、エンジン1が始動を開始した低温始動後にバイパス弁開要求となると、
図12に示すように、二方弁32がオンされることで開放(開弁)され、連通路27にはサージタンク5a(吸気通路2)で発生する高負圧が作用し、ダイアフラムアクチュエータ21の圧力室23に高負圧が導入されることになる。このとき、ダイアフラム22がスプリング25の付勢力に抗して圧力室23の側へ変位してロッド26の一部がケーシング21aへ没入することで、バイパス弁17が全閉状態から
図4に示すように全開となる。
【0093】
その直後、
図13に示すように、二方弁32がオフされることで遮断(閉弁)され、連通路27にはサージタンク5a(吸気通路2)で発生する高負圧から大気圧までの圧力が作用しなくなるが、圧力室23に導入された高負圧は保持されることになる。このとき、ダイアフラム22の圧力室23の側へ変位した状態が保持され、ロッド26の一部がケーシング21aに没入した状態が保持されることで、
図4に示すバイパス弁17の全開状態が保持される。
【0094】
その後、低温始動後からEGRが40℃以上の冷却水温度THWで実行される間において、バイパス弁開要求が有る間は、
図14に示すように、二方弁32がオフされ続けることで遮断(閉弁)状態が保持され、連通路27にはサージタンク5a(吸気通路2)で発生する高負圧から大気圧までの圧力が作用しなくなり、圧力室23に導入された高負圧が保持され続けることになる。このとき、ダイアフラム22の圧力室23の側へ変位した状態が保持され、ロッド26の一部がケーシング21aへ没入した状態が保持されることで、
図4に示すバイパス弁17の全開状態が保持され続ける。
【0095】
その後、エンジン1の暖機が完了し、バイパス弁17が閉弁要求となり、サージタンク5a(吸気通路2)で発生する負圧が低下すると、
図15に示すように、二方弁32がオンされることで開放(開弁)され、連通路27にはサージタンク5a(吸気通路2)の低負圧から大気圧までの圧力が作用することになる。このとき、ダイアフラム22がスプリング25の付勢力により大気室24の側へ変位してロッド26のほぼ全部がケーシング21aから突出し、バイパス弁17が全開状態から、
図3に示す全閉へ閉弁駆動する。
【0096】
その後、
図16に示すように、二方弁32がオフされることで遮断(閉弁)され、連通路27にはサージタンク5a(吸気通路2)から高負圧から大気圧までの圧力が作用しなくなる。このとき、ダイアフラム22の大気室24の側へ変位した状態が保持され、ロッド26のほぼ全部がケーシング21aから突出した状態が保持されることで、
図3に示すバイパス弁17の全閉状態が保持される。
【0097】
この実施形態のEGRシステムの構成によれば、エンジン1の低温始動後にECU80が二方弁32を開弁制御することで、連通路27が開放され、サージタンク5a(吸気通路2)で発生する高負圧が圧力室23へ導入されてダイアフラムアクチュエータ21が所定の動作状態、すなわちロッド26の一部がケーシング21aに没入した状態となり、バイパス弁17が全開に開駆動する。その後にECU80が二方弁32を閉弁制御することで、連通路27が遮断され、圧力室23の負圧が保持されてダイアフラムアクチュエータ21のロッド26の一部がケーシング21aに没入した状態が保持され、バイパス弁17が全開状態に保持される。このため、一つの二方弁32を開弁し閉弁することで、ダイアフラムアクチュエータ21によりバイパス弁17を全開に開駆動し、その全開の開き状態を保持することができる。
【0098】
この実施形態のEGRシステムの構成によれば、エンジン1の暖機完了後(始動後)にECU80が二方弁32を閉弁状態から開弁制御することで、連通路27が開放され、サージタンク5a(吸気通路2)の低負圧から大気圧が圧力室23へ導入されてダイアフラムアクチュエータ21が上記所定の動作状態とは逆の動作状態、すなわちロッド26のほぼ全部がケーシング21aから突出した状態となり、バイパス弁17が全閉に閉駆動する。その後にECU80が二方弁32を閉弁制御することで、連通路27が遮断され、圧力室23の低負圧から大気圧が保持され、ダイアフラムアクチュエータ21のロッド26のほぼ全部がケーシング21aから突出した状態が保持され、バイパス弁17が全閉状態に保持される。このため、一つの二方弁32を開弁し閉弁することで、ダイアフラムアクチュエータ21によりバイパス弁17を全閉に閉駆動し、その全閉の閉じ状態を保持することができる。
【0099】
[別の実施形態について]
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0100】
(1)前記各実施形態では、熱交換器42を含むEGRクーラ13のハウジング41にバイパス通路16を一体に設け、そのバイパス通路16にバイパス弁17を設けた。これに対し、バイパス通路をEGRクーラとは別体に設け、そのバイパス通路にバイパス弁を設けてもよい。
【0101】
(2)前記各実施形態では、バイパス通路16にスイングタイプのバイパス弁17を設けたが、バタフライタイプやそれ以外のタイプのバイパス弁をバイパス通路に設けてもよい。
【0102】
(3)前記各実施形態では、エンジンシステムに高圧ループタイプのEGRシステム11を設けたが、エンジンシステムに低圧ループタイプのEGRシステムを設けることもできる。
【0103】
(4)前記各実施形態では、
図10において、バイパス弁開要求となる領域を「EGR作動域」内に設定したが、「EGR作動域」に加え、低温での「EGRカット域」内にバイパス弁開要求となる領域を設定することもできる。すなわち、エンジン1の低温始動時からバイパス弁17を開弁することもできる。
【0104】
(5)前記各実施形態では、ダイアフラムアクチュエータ21を、その圧力室23に負圧を導入して動作させることでバイパス弁17を開駆動し、その圧力室23に大気圧を導入して動作させることでバイパス弁17を閉駆動するように構成した。これに対し、ダイアフラムアクチュエータを、その圧力室に負圧を導入して動作させることでバイパス弁を閉駆動し、その圧力室に大気圧を導入して動作させることでバイパス弁を開駆動するように構成することもできる。
【0105】
(6)前記各実施形態では、この開示技術を、過給機を装備しないエンジンシステムに具体化したが、この開示技術を、過給機を装備したエンジンシステムに具体化することもできる。
【0106】
(7)前記1実施形態では、ECU80は、エンジン1の低温始動時に、バイパス弁17を開駆動するために二方弁32を閉弁制御するように構成されたが、バイパス弁17を開駆動するために二方弁32を閉弁制御する時期は、エンジン1の低温始動時に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0107】
この開示技術は、車両に搭載されるガソリンエンジンやディーゼルエンジンに利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 エンジン
2 吸気通路
3 排気通路
5 吸気マニホールド(吸気通路)
11 EGRシステム
12 EGR通路
12a 入口
12b 出口
13 EGRクーラ
14 EGR弁
15 EGRガス分配器(EGR通路)
16 バイパス通路
17 バイパス弁
21 ダイアフラムアクチュエータ
22 ダイアフラム
23 圧力室
24 大気室
27 連通路
28 大気通路
29 分岐部
30 絞り部
31 逆止弁
32 二方弁
80 ECU(制御手段、第1の制御手段、第2の制御手段)