(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188975
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 47/02 20060101AFI20221215BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F16K47/02 D
F16K31/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097288
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪野 泰利
【テーマコード(参考)】
3H062
3H066
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB33
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH04
3H066AA01
3H066BA32
3H066EA14
(57)【要約】
【課題】コストを抑制しつつ、騒音をさらに低減できる電動弁を提供する。
【解決手段】電動弁は、弁室を備えた弁本体と、前記弁本体に取り付けられ、弁座を備えた弁座部材と、前記弁室内に配置され、前記弁座に接近又は離間する方向に昇降可能な弁体と、を有し、前記弁座部材は、配管に接続可能であり、前記弁座に隣接するオリフィス部と、前記オリフィス部に繋がる整流孔とを備え、前記整流孔の中心軸線は、前記配管の内壁に交わる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に取り付けられ、弁座を備えた弁座部材と、
前記弁室内に配置され、前記弁座に接近又は離間する方向に昇降可能な弁体と、を有し、
前記弁座部材は、配管に接続可能であり、前記弁座に隣接するオリフィス部と、前記オリフィス部に繋がる整流孔とを備え、
前記整流孔の中心軸線は、前記配管の内壁に交わる、
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記整流孔は、前記オリフィス部から複数本に分岐する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記整流孔の流路断面積の合計は、最大開弁時におけるオリフィス断面積よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記オリフィス部の流路断面積は、最大開弁時におけるオリフィス断面積以上である、
ことを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項5】
前記整流孔の流路断面積の合計は、前記オリフィス部の流路断面積より大きい、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の電動弁。
【請求項6】
前記整流孔の長さは、前記整流孔の内径より長く、且つ前記オリフィス部の内周半径より長い、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項7】
前記弁座部材は、前記オリフィス部を内部に形成するとともに前記配管内に配置される円筒部を備えている、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項8】
前記円筒部の端部に円錐台形部が形成されており、前記整流孔の外方端は、前記円錐台形部の外周面に位置する、
ことを特徴とする請求項7に記載の電動弁。
【請求項9】
前記オリフィス部の内方端にテーパ状部が形成されている、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の電動弁。
【請求項10】
前記整流孔から前記弁座部材の外部へと延在する連通開口を有し、前記連通開口の内径は前記整流孔の内径より小さい、
ことを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項11】
前記整流孔は、前記オリフィス部に対して交差する、
ことを特徴とする請求項7に記載の電動弁。
【請求項12】
前記整流孔は、前記オリフィス部に対して直角に交差する、
ことを特徴とする請求項7に記載の電動弁。
【請求項13】
前記オリフィス部は、前記弁座側から順に、第1孔と、前記第1孔より大径の第2孔とを有する、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項14】
前記オリフィス部は、前記弁座側から順に、第1孔と、前記第1孔より大径の第2孔と、前記第2孔より大径の第3孔とを有する、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項15】
前記オリフィス部に繋がり、前記オリフィス部と同方向に延在する中央孔を有し、前記中央孔の内径は、前記整流孔の内径より小さい、
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルにおいて流量制御弁として使用される電動弁は、モータにより回転駆動される弁軸の雄ねじ部を弁本体に設けられた雌ねじ孔に螺合させてなるねじ機構を有し、このねじ機構により回転運動を軸線方向運動に変換することによって、弁軸を軸線方向に変位させ、流量を制御している。
【0003】
例えば特許文献1には、絞り機能と気泡細分化機能を発揮する多数の小孔を備えた薄板部材(パンチングプレート)を本体に取り付けて、冷媒を通過させる電動弁が開示されている。かかる薄板部材によれば、二相流状態で通過する冷媒の整流機能、絞り機能、二相流状態の冷媒中の気泡を細分化する機能を発揮し、気泡に起因する冷媒通過音を効果的に低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷凍サイクルにおいて、冷媒は、一般的には気液二相流状態で配管から電動弁の弁本体に流入するため、本来的に気泡を含んでいる。また、冷媒がオリフィスを通過する際に圧力降下が生じて、一部の冷媒が気化することにより気泡が発生する。このような気泡が破裂する際に騒音を発生することとなる。
【0006】
特許文献1の電動弁によれば、気泡に起因する冷媒通過音を減少させることができるが、さらなる静穏化の余地がある。
【0007】
本発明者らは、特許文献1の電動弁において、オリフィスを通過した冷媒が、圧力回復の過程で薄板部材の小孔を通過し、より大径のパイプ内に進入する際に、乱流が発生して騒音が発生することを見出した。また、特許文献1の電動弁は薄板部材を必要とするため、部品点数が増加し、組み付けに手間がかかるという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、コストを抑制しつつ、騒音をさらに低減できる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の電動弁は、
弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に取り付けられ、弁座を備えた弁座部材と、
前記弁室内に配置され、前記弁座に接近又は離間する方向に昇降可能な弁体と、を有し、
前記弁座部材は、配管に接続可能であり、前記弁座に隣接するオリフィス部と、前記オリフィス部に繋がる整流孔とを備え、
前記整流孔の中心軸線は、前記配管の内壁に交わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コストを抑制しつつ、騒音をさらに低減できる電動弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る弁座部材の縦断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る弁座部材を下方向から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る弁座部材の下面図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
【
図7】
図7は、第4の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
【
図8】
図8は、第5の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
【
図9】
図9は、第6の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
【
図10】
図10は、第7の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
【
図11】
図11は、第8の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
【
図12】
図12は、第9の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
【
図13】
図13は、第10の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
【
図14】
図14は、第11の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材の縦断面図である。
【
図15】
図15は、本実施形態の変形例に係る電動弁に用いることができる弁座部材と多孔質フィルタとを組み合わせた構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施形態について説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動弁1を示す縦断面図である。ここで、電動弁1におけるロータ側を上方といい、ニードル弁側を下方という。また、「オリフィス」とは、開弁時におけるニードル弁と弁座との隙間をいい、隙間が最小となる位置のニードル弁の外径と弁座の内径とで形成される環状面の面積が「オリフィス断面積」である。「オリフィス部」とは、弁座から下流側の部位であって整流孔との境界までの流路をいう。さらに「流路断面積」とは、冷媒が流れる方向に直交する流路の断面積をいう。
【0014】
(流量制御弁の構成)
電動弁1は、上端が開口した有底円筒状の弁本体10と、弁本体10の上端面に下端部が溶接等により密封接合された有頂円筒状のキャン45と、弁本体10の内側に固定されたガイドステム15と、ガイドステム15の内側に配設された弁軸21と、弁軸21に対し一体的に回動可能に連結固定されたロータ30と、を備えている。ロータ30の周囲には、ロータ30を回転駆動すべく、キャン45の外周に外嵌されたステータが配設されるが、ここでは図示を省略する。ロータ30とステータとで、ステッピングモータが構成される。電動弁1の軸線をLとする。
【0015】
弁本体10は、中空円筒部10aと底壁部10bとを連設してなる。弁本体10はSUS製の板材をプレス成形することによって形成できるが、SUS素材を圧造することによって形成してもよい。ただし、弁本体10は、SUS(ステンレス)以外の素材(例えば真鍮)を用いることができるし、プレス加工や圧造以外の加工方法(例えば削り出し加工)を用いても形成できる。
【0016】
底壁部10bにおいて、その中央に円形の開口10dが形成されており、開口10dには、弁座部材11がロウ付け等で固定されている。
【0017】
図2は、弁座部材11の縦断面図であり、
図3は、弁座部材11を下方向から見た斜視図であり、
図4は、弁座部材11の下面図である。
【0018】
略円筒状の弁座部材11は、上部円筒部11aと、上部円筒部11aより大径の中部円筒部11bと、中部円筒部11bより大径の下部円筒部11cと、中部円筒部11bと下部円筒部11cの境界付近から径方向内方へと延在する隔壁部11dと、隔壁部11dから下方に向かって延在する内側円筒部11eとを連設してなる。内側円筒部11eの下端は、円錐台形部11fを備える。
【0019】
中部円筒部11bが開口10dに嵌合し、上部円筒部11aは弁本体10の内部に突出し、下部円筒部11cは弁本体10の外部に配設される。また下部円筒部11cと、内側円筒部11eとの間には、環状空間SPが形成される。下部円筒部11cの下端内周側には、段部11gが形成されている。環状空間SP内に進入させた第一の配管T1(
図1)の端部が、内側円筒部11eの外周に嵌挿され、ロウ付けなどにより接続される。段部11gは、配管T1をロウ付けする際に、ロウ材を貯留する部位となる。
【0020】
内側円筒部11eの上端から軸線Lに沿って下方に向かい、底壁11hまで延在する円筒孔11iが軸線Lと同軸に形成されている。円筒孔11iの下端外周から斜め外方に延在する整流孔11jが、周方向に分岐して等間隔に4本形成されており、各整流孔11jの外方端は、円錐台形部11fの外周面に位置する。このため整流孔11jは、弁座部材11に組付けた第一の配管T1の内壁を向いており、具体的には整流孔11jの中心軸線Xに沿って整流孔11jの断面を投影したときに、その投影像は第一の配管T1の内壁と重なる。換言すれば、整流孔11jの中心軸線Xは第一の配管T1の内壁と交差する。整流孔11jの中心軸線Xは、軸線Lに対して、0度を超え90度未満の交差角θ(中心軸線Xとの交点から下方に延在する軸線Lと、中心軸線Xとで挟む角とする、以下同じ)で交差する。整流孔11jの数は、2本、3本あるいは5本以上であってもよいが、周方向に等間隔に配置されていると好ましい。円筒孔11iがオリフィス部を構成する。内側円筒部11eの上端内周には、弁座11kが形成されている。なお、中心軸線Xと軸線Lが空間的に交差しない(ねじれの関係となる)ように配置した構造では、側面視(軸線Lの直交方向からの視点)で中心軸線Xと軸線Lの交差する角度を交差角θとする。
【0021】
本実施形態において、整流孔11jの長さは、整流孔11jの内径より長く、また円筒孔11iの内周半径より長い。整流孔11jの長さとは、軸線L及び中心軸線Xを通る面で電動弁1を切断した断面(ここでは
図2)において、整流孔11jの内壁が中心軸線Xを挟んだ一対の線分として表され、該内壁の線分の一端同士を結ぶ直線(
図2の点線)PL1と、他端同士を結ぶ直線(
図2の点線)PL2に、整流孔11jの中心軸線Xが点PT1、PT2で交差したときに、その点PT1、PT2間の距離をいう。
【0022】
さらに、4本の整流孔11jの流路断面積の合計は、ニードル弁(弁体)25の最大リフト時(最大開弁時)における円錐部25dと弁座11kとの間に形成される流路断面積(すなわちオリフィス断面積)よりも大きい。また、円筒孔11iの流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔11jの流路断面積の合計は、円筒孔11iの流路断面積より大きいと好ましい。
【0023】
図1において、弁本体10の中空円筒部10aには、入口開口10eが形成されており、入口開口10eに第二の配管T2の端部が嵌挿され、ロウ付けなどにより接続されている。入口開口10eの軸線をOとする。
【0024】
弁本体10の上端にキャン45の下端が突き当てられた状態で、キャン45の下端内周に鍔状円盤18が嵌合しており、これらは溶接により接合されている。これにより、弁本体10とキャン45とが密閉した状態で一体化される。
【0025】
鍔状円盤18は、複数の貫通孔(不図示)を備えており、この貫通孔を介して、冷媒が弁本体10側とキャン45側との間で移動することは可能になる。
【0026】
ロータ30の内側に配設された樹脂製のガイドステム15は、中実円筒状の本体15aと、中空円筒部15bとを連設してなる。本体15aは、軸線Lに沿って雌ねじ孔15cを有する。またガイドステム15の上方に、閉弁方向用可動ストッパ35を設置している。
【0027】
中空円筒部15bの中間部外周には、弁本体10の上端に溶接された鍔状円盤18が配設されており、この鍔状円盤18を介して、ガイドステム15は弁本体10に対して固定される。中空円筒部15bには、均圧穴15dが形成されている。
【0028】
また、ロータ30及び弁軸21の制御用原点位置を設定すべく、ガイドステム15の本体15aの上面には、断面矩形状の閉弁方向用固定ストッパ55が上向きに突設されており、またガイドステム15の本体15aの下面には、断面矩形状の開弁方向用固定ストッパ56が下向きに突設されている。ここで、ロータ30及び弁軸21の制御用原点位置とは、閉弁方向用可動ストッパ35が閉弁方向用固定ストッパ55に当接して係止され、ロータ30及び弁軸21が最下降位置に達した時の位置のことである。
【0029】
金属製の弁軸21は、ロータ30に取り付けられた環状の連結体32が外嵌した端部21aと、雌ねじ孔15cに螺合する雄ねじ部21bと、下端近傍に形成された鍔状部21cと、下端連結部21dとを同軸に連設してなる。
【0030】
弁軸21に固定された閉弁方向用可動ストッパ35が、雄ねじ部21bの上端付近に配設され、ロータ30の上壁下面に係止されている。閉弁方向用可動ストッパ35の下面には、断面矩形状のストッパ部35aが形成されている。
【0031】
また、弁軸21の雄ねじ部21bの下端近傍には、鍔状部21cの上面に突き当てるようにして、開弁方向用可動ストッパ36が圧入により嵌合している。開弁方向用可動ストッパ36の上面には、断面矩形状のストッパ部36aが形成されている。ここでは、開弁方向用可動ストッパ36の内周に雌ねじを形成して、雄ねじ部21bと螺合させることにより、開弁方向用可動ストッパ36と弁軸21との固定を行っている。
【0032】
弁軸21の下方において、弁ホルダ23が、中空円筒部15bの内側に摺動可能に嵌合して配設されている。弁ホルダ23は、中空円筒部23aと、上壁23bとを連設した有頂円筒形状を有している。上壁23bの中央には、段付き開口23cが形成されており、中空円筒部23aは連通穴23dを有する。弁ホルダ23の中空円筒部23aの開放した下端は、閉弁状態で第二の配管T2より下方に配設され、カシメ固定された環状部材27により閉止されている。
【0033】
段付き開口23cの段部に弁軸21の鍔状部21cが当接した状態で、下端連結部21dが段付き開口23cを貫通しており、この下端連結部21dを拡径するようにカシメ加工することで、弁軸21と弁ホルダ23とが固定連結されている。弁本体10と弁ホルダ23との間に、弁室29が画成される。
【0034】
環状部材27を通して弁ホルダ23から突出するようにして、ニードル弁25が配置されている。ニードル弁25は、円柱状の軸部25aと、弁鍔部25bと、弁円筒部25cと、下方に向かうにしたがって縮径する円錐部25dと、複数の円錐形状を段階的に形成した先細部25eとを連設してなる。円錐部25dのテーパ角(軸線Lと交差する角度)は、円錐部25dに接する先細部25eのテーパ角よりも大きい。
【0035】
軸部25aの外周には、リング状部材31が圧入等により嵌合している。リング状部材31の外径は、環状部材27の内径より大きいため、弁ホルダ23からニードル弁25が脱落することが阻止される。リング状部材31と環状部材27との間には、ワッシャ28が配設されており、リング状部材31と環状部材27との相対回転時の摩擦を軽減する。
【0036】
弁ホルダ23の上壁23bと、ニードル弁25との間に、下端鍔部26aを有する円筒状のばね受け部材26が配設されている。さらに上壁23bと下端鍔部26aとの間には、コイルバネ24が配設され、弁ホルダ23に対してばね受け部材26を下方に向かって付勢している。
【0037】
円錐部25dが弁座部材11の弁座11kに着座して、上方に向かう反力を受けたときに、ニードル弁25により上向きに付勢されたばね受け部材26が弁ホルダ23の上壁23bの下面(または下端連結部21d)に当接することで、ニードル弁25は弁軸21に対して軸線方向に係止される。
【0038】
上記した弁軸21、弁ホルダ23、ニードル弁25、及びコイルバネ24は、ニードル弁25が弁座11kから離間している状態(開弁状態)においては、ガイドステム15に対して実質的に一体的に回転しながら昇降する。
【0039】
(流量制御弁の動作)
電動弁1の動作を、具体的に説明する。
ここで、第二の配管T2から弁室29内に冷媒(流体)が進入しているものとする。
【0040】
外部の制御装置から不図示のステータにパルス給電が行われることにより、ロータ30及び弁軸21が一方向に回転駆動され、雌ねじ孔15cと雄ねじ部21bからなるねじ送り機構により、弁軸21及び閉弁方向用可動ストッパ35が回転しながら下降し、ニードル弁25が弁座11kに着座してオリフィスが閉止される。これにより、弁室29から第一の配管T1側へ向かう冷媒の流れを遮断する。
【0041】
この時点では、可動ストッパ35は未だ固定ストッパ55に当接しておらず、ロータ30及び弁軸21の回転下降は停止されず、コイルバネ24が所定量圧縮されるまでパルス給電が継続される。それにより、ニードル弁25が弁座11kに着座したまま回転が制止される一方、ロータ30、弁軸21、弁ホルダ23等はさらに回転しながら下降する。
【0042】
このとき、着座したニードル弁25に対して弁軸21及び弁ホルダ23が下降するため、コイルバネ24が縮長圧縮され、これにより弁軸21及び弁ホルダ23の下降力が吸収される。その後、コイルバネ24の圧縮量が所定量となったとき、可動ストッパ35が固定ストッパ55に当接して係止され、ロータ30及び弁軸21が最下降位置に達し、ステータに対しパルス給電が継続されてもロータ30及び弁軸21の下降は強制的に停止される。
【0043】
このように、ニードル弁25が弁座11kに着座してオリフィス11dが閉止された後においても、可動ストッパ35が固定ストッパ55に当接して係止される制御用原点位置に達するまでは、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転下降が継続されることにより、コイルバネ24が圧縮される。そのため、コイルバネ24の付勢力によりニードル弁25が弁座11kに強く押し付けられ、冷媒漏れ等を確実に防止できる。
【0044】
一方、上記制御用原点位置からステータに、逆極性のパルス給電を行うと、ロータ30及び弁軸21が閉弁時とは逆方向に回転駆動され、雌ねじ孔15cと雄ねじ部21bからなるねじ送り機構により、ロータ30、弁軸21、弁ホルダ23及び開弁方向用可動ストッパ36が回転しながら上昇する。これに伴い、ニードル弁25に対する押圧力が弱められ、コイルバネ24が伸張して、ニードル弁25が弁座11kから離れると、オリフィスが開放される。これにより、第二の配管T2から弁室29内へと進入した冷媒は、円錐部25dと弁座11kとの間の隙間を通過して、円筒孔11iを通って第一の配管T1へと流れる。
【0045】
この場合、ステータへのパルス給電に応じてニードル弁25のリフト量が定まるため、冷媒の流量制御を行える。さらにパルス給電を続けることで、最終的にニードル弁25が全開状態となる。さらにパルス給電が継続された場合、可動ストッパ36が開弁方向用固定ストッパ56に当接して係止され、これにより、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転及び上昇が強制的に停止せしめられる。
【0046】
本実施形態によれば、開弁時に円錐部25dと弁座11kとの間の隙間を通過して、弁座部材11の円筒孔11iに進入した冷媒は、底壁11hに当接して流れの向きを変えられ、円筒状の整流孔11jを介して弁座部材11の外部へと流出する。このとき、冷媒は整流孔11jを通過することで整流効果が発揮されるため、気液二相状態中の気泡及びオリフィス通過時に発生した気泡を微小化して、気泡が破裂した際の騒音を低減できる。また、冷媒が4本の整流孔11jを通過することで、流れの力が分散され、圧力回復が早まり、騒音の原因となる気泡の発生を抑制できる。また、弁座部材11に整流効果を持たせることで、別個に整流部材を設ける必要がなくなり、部品点数が削減される。
【0047】
加えて、本実施形態によれば、オリフィス部である円筒孔11iを通過した冷媒を、整流孔11jから第一の配管T1の内壁に衝突させるように流出させているため、冷媒の流速を強制的に低減し、乱流が発生する前に冷媒圧力を回復させることができる。これにより、騒音の原因となる気泡の発生を抑制できる。
【0048】
なお、冷媒が第一の配管T1から第二の配管T2に向かって流れる場合、第一の配管T1から弁座部材11内に進入した冷媒は、整流孔11jによって流れの向きを変えられ、ストレートにオリフィスに向かわない。したがって、流速が早い冷媒がオリフィスを通過しないため、開弁時におけるニードル弁25の振動を抑制できる。
【0049】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Aの縦断面図である。弁座部材11A以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0050】
本実施形態の弁座部材11Aは、
図2に示す弁座部材11に対して、底壁11Ahに、円筒孔11Aiの下端となるテーパ状部11Amを形成した点が主として異なる。テーパ状部11Amの一部に、整流孔11Ajが接している。整流孔11Ajの中心軸線Xは第一の配管T1(
図1参照)の内壁と交差する。整流孔11Ajの中心軸線Xは、軸線Lに対して、0度を超え90度未満の交差角θで交差する。本実施形態においても、内側円筒部11Aeの下端は、円錐台形部11Afを備える。第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0051】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Aiに沿って流れてテーパ状部11Amに至る。冷媒の少なくとも一部はテーパ状部11Amで滞留した後、整流孔11Ajに進入するため、冷媒圧力を回復させやすいという効果がある。また、冷媒がテーパ状部11Amのエッジ部を通過する際に、気泡を分散化する効果もある。なお、テーパ状部11Amは、例えばドリルなどの切削工具を用いて円筒孔11Aiを形成する際に、工具先端形状を転写することで形成できる。
【0052】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Bの縦断面図である。弁座部材11B以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0053】
本実施形態の弁座部材11Bは、
図2に示す弁座部材11に対して、各整流孔11Bjの中間位置から、軸線Lに平行に底壁11Bhを貫通して、端部が円錐台形部11fの頂面(下面)に位置する連通開口11Bmを形成した点が主として異なる。連通開口11Bmの内径は、整流孔Bjの内径の1/4以下であると好ましい。整流孔11Bjの中心軸線Xは第一の配管T1(
図1参照)の内壁と交差する。整流孔11Bjの中心軸線Xは、軸線Lに対して、0度を超え90度未満の交差角θで交差する。本実施形態においても、内側円筒部11Beの下端は、円錐台形部11Bfを備える。第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0054】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Biに沿って流れて底壁11Bhに至る。ここから、冷媒は整流孔11Bjを通過して弁座部材11Bの外部へと流出するが、その際に第一の配管T1の内壁に衝突して渦を形成することがある。かかる渦が冷媒の圧力回復を妨げるおそれがある。
【0055】
これに対し、本実施形態によれば、冷媒が連通開口11Bmの上端を通過する際に連通開口11Bmの内部に負圧が発生するため、連通開口11Bmの下端から冷媒を吸い上げる。これにより、第一の配管T1の内壁に衝突して形成される渦を速やかに消失させることができる。
【0056】
[第4の実施形態]
図7は、第4の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Cの縦断面図である。弁座部材11C以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0057】
本実施形態の弁座部材11Cは、内側円筒部11Ceおよび整流孔11Cjの形状が主として異なる。第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0058】
隔壁部11dから下方に向かって延在する内側円筒部11Ceは、隔壁部11d側の拡径部11Ce1と、拡径部11Ce1より外径が小さい先端側の縮径部11Ce2とからなる。第一の配管T1(
図1)は、拡径部11Ce1にのみ嵌合する。
【0059】
内側円筒部11Ceの内部に形成された円筒孔11Ciの下端から、複数の整流孔11Cjが弁座11k側に向かって斜めに延在するように形成されている。整流孔11Cjは、弁座部材11Cに組付けた第一の配管T1の内壁を向いている。すなわち整流孔11Cjの中心軸線Xは第一の配管T1(
図1参照)の内壁と交差する。整流孔11Cjの中心軸線Xは、軸線Lに対して、90度を超え180度未満の交差角θで交差する。
【0060】
本実施形態においても、整流孔11Cjの長さ(孔内壁の軸線方向最短長)は、整流孔11Cjの内径より長く、また円筒孔11Ciの内周半径より長い。また、4本の整流孔11Cjの流路断面積の合計は、最大開弁時のオリフィス断面積よりも大きい。また、円筒孔11Ciの流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔11Cjの流路断面積の合計は、円筒孔11Ciの流路断面積より大きいと好ましい。
【0061】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Ciに沿って流れて底壁11Chに至る。ここで、冷媒は流れの方向を鋭角に曲げられ、整流孔11Cjを通過して弁座部材11Cの外部へと流出する。
【0062】
第一の配管T1と縮径部11Ce2との間には間隙があるため、縮径部11Ce2から流れ出る冷媒は、第一の配管T1の内壁に当たり、さらに第一の配管T1と縮径部11Ce2との間隙を通過して下方に向かう。このとき、第一の配管T1と縮径部11Ce2との間から流れ出る冷媒の流速は、最大開弁時のオリフィス断面積を通過する冷媒の流速よりも遅くなる。
【0063】
[第5の実施形態]
図8は、第5の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Dの縦断面図である。弁座部材11D以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0064】
本実施形態の弁座部材11Dは、内側円筒部11Deおよび整流孔11Djの形状が主として異なる。第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0065】
隔壁部11dから下方に向かって延在する内側円筒部11Deは、隔壁部11d側の拡径部11De1と、拡径部11De1より外径が小さい先端側の縮径部11De2とからなる。第一の配管T1(
図1)は、拡径部11De1にのみ嵌合する。
【0066】
内側円筒部11Deの内部に形成された円筒孔11Diの下端から、整流孔11Djが軸線Lに直交する方向に延在するように形成されており、すなわちオリフィス部である円筒孔11Diに対して整流孔11Djは直角に交差する。整流孔11Djは、弁座部材11Dに組付けた第一の配管T1の内壁を向いている。換言すれば、整流孔11Djの中心軸線Xは第一の配管T1(
図1参照)の内壁と交差する。整流孔11Djの中心軸線Xは、軸線Lに対して、90度の交差角θで交差する。
【0067】
本実施形態においても、整流孔11Djの長さは、整流孔11Djの内径より長く、また円筒孔11Diの内周半径より長いと好ましい。また、整流孔11Djの流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積よりも大きい。また、円筒孔11Diの最小流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔11Djの流路断面積は、円筒孔11Diの流路断面積より大きいと好ましい。
【0068】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Diに沿って流れて底壁11Dhに至る。ここで、冷媒は流れの方向を直角に曲げられ、整流孔11Djを通過して弁座部材11Dの外部へと流出する。
【0069】
第一の配管T1と縮径部11De2との間には間隙があるため、縮径部11De2から流れ出る冷媒は、第一の配管T1の内壁に当たり、さらに第一の配管T1と縮径部11De2との間隙を通過して下方に向かう。このとき、第一の配管T1と縮径部11De2の間から流れ出る冷媒の流速は、最大開弁時のオリフィス断面積を通過する冷媒の流速よりも遅くなる。
【0070】
[第6の実施形態]
図9は、第6の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Eの縦断面図である。弁座部材11E以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0071】
本実施形態の弁座部材11Eは、円筒孔11Eiの形状が主として異なる。本実施形態においても、整流孔11Ejの中心軸線Xは第一の配管T1(
図1参照)の内壁と交差する。整流孔11Ejの中心軸線Xは、軸線Lに対して、0度を超え90度未満の交差角θで交差する。内側円筒部11Eeの下端は、円錐台形部11Efを備える。第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0072】
円筒孔11Eiは、弁座11kの下方に配設された第1孔11Ei1と、第1孔11Ei1より大径の第2孔11Ei2と、第2孔11Ei2より大径の第3孔11Ei3とを有する。第1孔11Ei1と第2孔11Ei2とは、第1テーパ部11Ei4により連結され、第2孔11Ei2と第3孔11Ei3とは、第2テーパ部11Ei5により連結されている。第3孔11Ei3(及び第2テーパ部11Ei5)の下端に、4本の整流孔11Ejが連通している。なお、円筒孔11Eiは、例えばシャンク径が刃先外径より小さいエンドミル工具などを用いて加工形成できる。また、第1孔11Ei1の流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔11Ejの流路断面積の合計は、第1孔11Ei1の流路断面積より大きいと好ましい。
【0073】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、第1孔11Ei1と、第1テーパ部11Ei4と、第2孔11Ei2と、第2テーパ部11Ei5と、第3孔11Ei3に沿って流れて底壁11Ehに至る。このときオリフィスから底壁11Ehに至るまでに、流路断面積が三段階で拡大する。これにより冷媒圧力を徐々に回復させることができる。
【0074】
さらに、冷媒は、斜め下方を向いた整流孔11Ejを通過して弁座部材11Eの外部へと流出して、第一の配管T1の内壁に当たることで、冷媒の流速を強制的に低減し、乱流が発生する前に冷媒圧力を回復させることができる。
【0075】
[第7の実施形態]
図10は、第7の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Fの縦断面図である。弁座部材11F以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0076】
本実施形態の弁座部材11Fは、円筒孔11Fiの形状が主として異なる。本実施形態においても、整流孔11Fjの中心軸線Xは第一の配管T1(
図1参照)の内壁と交差する。整流孔11Fjの中心軸線Xは、軸線Lに対して、0度を超え90度未満の交差角θで交差する。内側円筒部11Feの下端は、円錐台形部11Ffを備える。第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0077】
円筒孔11Fiは、弁座11kの下方に配設された第1孔11Fi1と、第1孔11Fi1より大径の第2孔11Fi2とを有する。第1孔11Fi1と第2孔11Fi2とは、テーパ部11Fi3により連結される。第2孔11Fi2の下端に、4本の整流孔11Fjが連通している。なお、円筒孔11Fiは、例えばシャンク径が刃先外径より小さいエンドミル工具などを用いて加工形成できる。また、第1孔11Fi1の流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔11Fjの流路断面積の合計は、第1孔11Fi1の流路断面積より大きいと好ましい。
【0078】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、第1孔11Fi1と、テーパ部11Fi3と、第2孔11Fi2に沿って流れて底壁11Fhに至る。このときオリフィスから底壁11Fhに至るまでに、流路断面積が二段階で拡大する。これにより冷媒圧力を徐々に回復させることができる。
【0079】
さらに、冷媒は、斜め下方を向いた整流孔11Fjを通過して弁座部材11Fの外部へと流出して、第一の配管T1の内壁に当たることで、冷媒の流速を強制的に低減し、乱流が発生する前に冷媒圧力を回復させることができる。
【0080】
[第8の実施形態]
図11は、第8の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Gの縦断面図である。弁座部材11G以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0081】
本実施形態の弁座部材11Gは、円筒孔11Giにつながる中央孔11Gnを底壁11Ghに形成した点が主として異なる。本実施形態においても、整流孔11Gjの中心軸線Xは第一の配管T1(
図1参照)の内壁と交差する。整流孔11Gjの中心軸線Xは、軸線Lに対して、0度を超え90度未満の交差角θで交差する。内側円筒部11Geの下端は、円錐台形部11Gfを備える。第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0082】
中央孔11Gnは、円筒孔11Giと同軸であり、円筒孔11Gi及び整流孔11Gjの内径よりも小さい内径を有する。円筒孔11Giと整流孔11Gjとは、端部同士が接していてもよいし、互いに離間していてもよい。
【0083】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Giに沿って流れて底壁11Ghに至る。ここで、冷媒の一部は、整流孔11Gjを通過して弁座部材11Gの外部へと流出し、第一の配管T1に衝突するが、このとき渦が形成される場合がある。一方、底壁11Ghに到達した冷媒の残りは、ストレートに中央孔11Gnを通過して、弁座部材11Gの外部へと流出するが、それにより第一の配管T1の内壁に形成された渦を消失させる効果がある。これにより速やかな冷媒の圧力回復を図ることができる。
【0084】
[第9の実施形態]
図12は、第9の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Hの縦断面図である。弁座部材11H以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0085】
図12を参照して、整流孔11Hjの長さは、軸線L及び中心軸線Xを通る面で電動弁1を切断した断面(ここでは
図12)において、整流孔11Hjの内壁が中心軸線Xを挟んだ一対の線分として表され、該内壁の線分の一端同士を結ぶ直線(
図12の点線)PL1と、他端同士を結ぶ直線(
図12の点線)PL2に、整流孔11Hjの中心軸線Xが点PT1、PT2で交差したときに、その点PT1、PT2間の距離である。本実施形態においても、整流孔11Hjの中心軸線Xは第一の配管T1(
図1参照)の内壁と交差する。整流孔11Hjの中心軸線Xは、軸線Lに対して、0度を超え90度未満の交差角θで交差する。内側円筒部11Heの下端は、円錐台形部11Hfを備える。
【0086】
本実施形態の弁座部材11Hは、円筒孔11Hiの形状、および円筒孔11Hiにつながる中央孔11Hnを底壁11Hhに形成した点が主として異なる。第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0087】
円筒孔11Hiは、弁座11kの下方に配設された第1孔11Hi1と、第1孔11Hi1より大径の第2孔11Hi2とを有する。第1孔11Hi1と第2孔11Hi2とは、テーパ部11Hi3により連結される。第2孔11Hi2の下端に、4本の整流孔11Hjが連通している。なお、円筒孔11Hiは、例えばシャンク径が刃先外径より小さいエンドミル工具などを用いて加工形成できる。また、第1孔11Hi1の流路断面積は、最大開弁時のオリフィス断面積以上である。整流孔11Hjの流路断面積の合計は、第1孔11Hi1の流路断面積より大きいと好ましい。
【0088】
中央孔11Hnは、円筒孔11Hiと同軸であり、円筒孔11Hi及び整流孔11Hjの内径よりも小さい内径を有する。
【0089】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、第1孔11Hi1と、テーパ部11Hi3と、第2孔11Hi2に沿って流れて底壁11Hhに至る。このときオリフィスから底壁11Hhに至るまでに、流路断面積が二段階で拡大する。これにより冷媒圧力を徐々に回復させることができる。
【0090】
底壁11Hhに到達した冷媒の一部は、整流孔11Hjを通過して弁座部材11Hの外部へと流出し、第一の配管T1に衝突するが、このとき渦が形成される場合がある。一方、底壁11Hhに到達した冷媒の残りは、ストレートに中央孔11Hnを通過して、弁座部材11Hの外部へと流出するが、それにより第一の配管T1の内壁に形成された渦を消失させる効果がある。このため、速やかな冷媒の圧力回復を図ることができる。
【0091】
[第10の実施形態]
図13は、第10の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Iの縦断面図である。弁座部材11I以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0092】
本実施形態の弁座部材11Iは、円筒孔11Iiと整流孔11Ijとの位置関係が、主として異なる。本実施形態においても、整流孔11Ijの中心軸線Xは第一の配管T1(
図1参照)の内壁と交差する。整流孔11Ijの中心軸線Xは、軸線Lに対して、0度を超え90度未満の交差角θで交差する。内側円筒部11Ieの下端は、円錐台形部11Ifを備える。第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0093】
本実施形態においては、円筒孔11Iiの下端と上端との間に整流孔11Ijを連結している。これにより、円筒孔11Iiの下端には、整流孔11Ijとの連結部まで、冷媒の滞留部11Ipが底壁11Ihに形成されることとなる。
【0094】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Iiに沿って流れて底壁11Ihの滞留部11Ipに至る。ここで、冷媒の流れはUターンして、整流孔11Ijを通過して弁座部材11Iの外部へと流出するため、その際に冷媒の圧力回復がなされ、気泡を減少させることができる。
【0095】
[第11の実施形態]
図14は、第11の実施形態に係る電動弁に用いることができる弁座部材11Kの縦断面図である。弁座部材11K以外の電動弁構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0096】
本実施形態の弁座部材11Kは、内側円筒部11Keの構成が主として異なる。本実施形態においても、整流孔11Kjの中心軸線Xは第一の配管T1(
図1参照)の内壁と交差する。整流孔11Kjの中心軸線Xは、軸線Lに対して、0度を超え90度未満の交差角θで交差する。内側円筒部11Keの下端は、円錐台形部11Kfを備える。第1の実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0097】
隔壁部11dから下方に向かって延在する内側円筒部11Keは、隔壁部11d側の拡径部11Ke1と、拡径部11Ke1より外径が小さい先端側の縮径部11Ke2とからなる。縮径部11Ke2の下端には、円錐台形部11Kfが形成されている。第一の配管T1(
図1)は、拡径部11Ke1にのみ嵌合する。
【0098】
内側円筒部11Keの内部に形成された円筒孔11Kiの下端から、複数の整流孔11Kjが弁座11k側に下方に向かって斜めに延在するように形成されている。また、各整流孔11Kjの中間位置から、隔壁部11d側に向かって斜めに延在する連通開口11Knを形成している。連通開口11Knの内径は、整流孔Kjの内径の1/4以下であると好ましい。
【0099】
開弁時にオリフィスを通過した冷媒は、オリフィス部である円筒孔11Kiに沿って流れて底壁11Khに至る。ここから、冷媒は整流孔11Kjを通過して弁座部材11Kの外部へと流出するが、その際に第一の配管T1の内壁に衝突して渦を形成することがある。かかる渦が冷媒の圧力回復を妨げるおそれがある。
【0100】
これに対し、本実施形態によれば、冷媒が連通開口11Knの下端を通過する際に連通開口11Knの内部に負圧が発生するため、連通開口11Knの上端から冷媒を吸い込む。これにより、第一の配管T1の内壁に衝突して形成される渦を速やかに消失させることができる。
【0101】
[変形例]
図15は、本実施形態の変形例に係る電動弁に用いることができる弁座部材11と多孔質フィルタFTとを組み合わせた構成を示す図であり、左半部が縦断面図であって、右半部が側面図である。多孔質フィルタFT以外の構成については、第1の実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0102】
弁座部材11の内側円筒部11eの周囲にて、点線で示す位置から円錐台形部11fの下方まで覆うようにして、金属製または樹脂製の多孔質フィルタFTが配設されている。多孔質フィルタFTは、例えば発泡金属、網状の素材またはパンチングメタルなどから円筒状に形成され、整流孔11jの外方端を覆うようにして内側円筒部11eの外周に巻き付けられている。
【0103】
整流孔11jから流れ出た冷媒は、多孔質フィルタFTを通過することで、気泡が細分化されるため、さらに騒音の低減に効果がある。多孔質フィルタFTと組み合わせる弁座部材は、第1の実施形態に限られず、それ以外の実施形態と組み合わせてもよい。
【0104】
以上の実施形態において、交差角θは、90度未満である場合、15度以上、75度以下であると好ましく、より好ましくは30度以上、60度以下であり、また90度を超えている場合、105度以上、165度以下であると好ましく、より好ましくは120度以上、150度以下である。
【符号の説明】
【0105】
1 電動弁
10 弁本体
11~11K 弁座部材
11e 弁座
15 ガイドステム
21 弁軸
23 弁ホルダ
24 コイルバネ
25 ニードル弁
26 ばね受け部材
27 環状部材
29 弁室
30 ロータ
35 閉弁方向用可動ストッパ
36 開弁方向用可動ストッパ
55 閉弁方向用固定ストッパ
56 開弁方向用固定ストッパ
FT 多孔質フィルタ