(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188976
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20221215BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F28D20/00 Z
F28D20/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097291
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100195718
【弁理士】
【氏名又は名称】市橋 俊規
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 峻史
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰
(57)【要約】
【課題】潜熱蓄熱槽から排出される高温の熱媒体を利用して、顕熱蓄熱槽の顕熱蓄熱材に蓄熱することを可能とし、全体として優れた蓄熱特性を有する蓄熱装置を提供する。
【解決手段】蓄熱装置100は、潜熱蓄熱材1が充填された少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2と、顕熱蓄熱材3が充填された少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4と、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2あるいは熱供給対象装置Dへ熱を輸送するための熱媒体を流す熱媒体流路FPと、熱媒体と潜熱蓄熱材1との間で熱交換を行う第1熱交換器5と、熱媒体と顕熱蓄熱材3との間で熱交換を行う第2熱交換器6とを具備する。少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2が、蓄熱時には少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4の上流側となり、放熱熱供給時には少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4の下流側となるように、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2と少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4とが熱的に直列的に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱を利用して蓄熱する潜熱蓄熱材が充填された少なくとも1つの潜熱蓄熱槽と、
顕熱を利用して蓄熱する顕熱蓄熱材が充填された少なくとも1つの顕熱蓄熱槽と、
少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽あるいは熱供給対象装置へ熱を輸送するための熱媒体を流す熱媒体流路と、
前記熱媒体と前記潜熱蓄熱材との間で熱交換を行う第1熱交換器と、
前記熱媒体と前記顕熱蓄熱材との間で熱交換を行う第2熱交換器と
を具備し、
前記潜熱蓄熱材が充填された少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽が、蓄熱時には少なくとも1つの前記顕熱蓄熱槽の上流側となり、放熱熱供給時には少なくとも1つの前記顕熱蓄熱槽の下流側となるように、少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽と少なくとも1つの前記顕熱蓄熱槽とが熱的に直列的に接続される
蓄熱装置。
【請求項2】
前記熱媒体流路は、
少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽から前記熱供給対象装置に前記熱媒体を送ることが可能な第1流路と、
熱供給源から少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽に前記熱媒体を送ることが可能な第2流路と、
少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽と少なくとも1つの前記顕熱蓄熱槽とを流体的に接続する第3流路と
を含み、
前記潜熱蓄熱材から放熱が行われる際には、前記第3流路は、少なくとも1つの前記顕熱蓄熱槽から少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽に前記熱媒体を送るように構成され、前記潜熱蓄熱材に蓄熱が行われる際には、前記第3流路は、少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽から少なくとも1つの前記顕熱蓄熱槽に前記熱媒体を送るように構成される
請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記潜熱蓄熱材は、金属材料を含み、
前記金属材料は、前記第1熱交換器に、直接的に接触する
請求項1または2に記載の蓄熱装置。
【請求項4】
直列的または並列的に接続される複数の前記潜熱蓄熱槽、および/または、直列的または並列的に接続される複数の前記顕熱蓄熱槽を備える
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蓄熱装置。
【請求項5】
複数の前記潜熱蓄熱槽は、第1融点を有する金属材料の第1潜熱蓄熱材が充填された第1潜熱蓄熱槽と、前記第1融点よりも低い第2融点あるいは前記第1融点よりも低い第2沸点を有する第2潜熱蓄熱材が充填された第2潜熱蓄熱槽と、を含み、
前記第2潜熱蓄熱槽は、前記第1潜熱蓄熱槽と、少なくとも1つの前記顕熱蓄熱槽との間に配置されている
請求項4に記載の蓄熱装置。
【請求項6】
少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽に前記熱媒体を送る流路に、前記熱媒体を加熱するヒータが配置される
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力需要の変動や再生可能エネルギーの発電出力の変動に対して、発電所の出力の平坦化や燃料等の消費の削減を目的として、蓄熱および放熱が可能な蓄熱装置が用いられることがある。蓄熱装置は、熱や発電電力の余剰時に、それらを直接あるいは適当なエネルギーに変換して貯蔵し、不足時や必要に応じてエネルギーを取り出し発電する、あるいは、単純に熱エネルギーのバッファとして機能する。
【0003】
上記のような目的のための蓄熱装置において採用される蓄熱方式は様々であるが、主に3種がある。物質の温度変化に伴う顕熱を利用する顕熱蓄熱、物質の相変化(融解/凝固あるいは気化/凝縮の相変化)を利用する潜熱蓄熱、物質の熱化学反応を利用する化学蓄熱である。顕熱蓄熱方式は比較的簡素であるため、研究開発が進められているが、単位面積あるいは単位体積当たりの畜エネルギー量があまり大きくない、などの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014-513260号公報
【特許文献2】国際公開第2019/155114号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄熱装置は、熱エネルギーを貯蔵する蓄熱材を充填した蓄熱槽と、熱を輸送する熱媒体と、熱媒体に運動量を付与する駆動ポンプ/ブロワ等とを有する。例えば、顕熱蓄熱方式の場合、構造は比較的簡素ではあるものの、顕熱を利用する都合上、エネルギー密度が比較的小さく、大きな蓄熱容量を得るために大型化が避けられない。
【0006】
これに対し、物質の潜熱を利用する潜熱蓄熱方式や、化学反応を利用する化学蓄熱方式は、エネルギー密度は高いが、セラミック類に金属を封入する加工が必要であったり、化学反応制御用の系統が必要であったりするなど、顕熱蓄熱方式と比べて構造が複雑になる傾向にある。また、潜熱蓄熱方式では、蓄熱材の融点温度付近で蓄熱槽の内部の温度を保持する必要がある。このため、蓄熱の最終段階で、蓄熱槽から高温のまま熱が廃棄されてしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、潜熱蓄熱槽から排出される高温の熱媒体を利用して、顕熱蓄熱槽の顕熱蓄熱材に蓄熱することを可能とし、全体として優れた蓄熱特性を有する蓄熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態における蓄熱装置は、潜熱を利用して蓄熱する潜熱蓄熱材が充填された少なくとも1つの潜熱蓄熱槽と、顕熱を利用して蓄熱する顕熱蓄熱材が充填された少なくとも1つの顕熱蓄熱槽と、少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽あるいは熱供給対象装置へ熱を輸送するための熱媒体を流す熱媒体流路と、前記熱媒体と前記潜熱蓄熱材との間で熱交換を行う第1熱交換器と、前記熱媒体と前記顕熱蓄熱材との間で熱交換を行う第2熱交換器とを具備し、前記潜熱蓄熱材が充填された少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽が、蓄熱時には少なくとも1つの前記顕熱蓄熱槽の上流側となり、放熱熱供給時には少なくとも1つの前記顕熱蓄熱槽の下流側となるように、少なくとも1つの前記潜熱蓄熱槽と少なくとも1つの前記顕熱蓄熱槽とが熱的に直列的に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態により、潜熱蓄熱槽から排出される高温の熱媒体を利用して、顕熱蓄熱槽の顕熱蓄熱材に蓄熱することを可能とし、全体として優れた蓄熱特性を有する蓄熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態における蓄熱装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2(a)は蓄熱時を、(b)は放熱時を示す、潜熱蓄熱材と第1熱交換器とが直接的に接触している様子を模式的に示す図である。
【
図3】
図3(a)は放熱時を、(b)は蓄熱時を示す、第1実施形態の第1変形例における蓄熱装置の構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態における蓄熱装置の構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態における第1変形例における蓄熱装置の構成を模式的に示す図である。
【
図6】
図6(a)は放熱時を、(b)は蓄熱時を示す、第2実施形態における第2変形例における蓄熱装置の構成を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態における蓄熱装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態における蓄熱装置100に関して、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同じ機能を有する部材、部位については、同一の符号が付され、同一の符号が付されている部材、部位について、繰り返しの説明は省略される。
【0012】
(第1の実施形態)
図1乃至
図3を用いて第1の実施形態における蓄熱装置100Aについて説明する。
図1は、第1実施形態における蓄熱装置100Aの構成を模式的に示す図である。
図2は、潜熱蓄熱材1と第1熱交換器5とが直接的に接触している様子を模式的に示す図である。
図2(a)には、熱媒体Mからの熱を用いて潜熱蓄熱材1に蓄熱が行われるときの様子が示され、
図2(b)には、潜熱蓄熱材1から熱媒体Mに放熱されるときの様子が示されている。
図3は、第1実施形態の第1変形例における蓄熱装置100Aの構成を模式的に示す図である。
【0013】
(構成・作用)
第1の実施形態における蓄熱装置100Aは、潜熱を利用して蓄熱する潜熱蓄熱材1が充填された潜熱蓄熱槽2と、顕熱を利用して蓄熱する顕熱蓄熱材3が充填された顕熱蓄熱槽4と、潜熱蓄熱槽2あるいは熱供給対象装置Dへ熱を輸送するための熱媒体を流す熱媒体流路FPと、熱媒体に運動量を付与するポンプ等の流体駆動装置71と、熱媒体と潜熱蓄熱材1との間で熱交換を行う第1熱交換器5と、熱媒体と顕熱蓄熱材3との間で熱交換を行う第2熱交換器6と、を備える。
【0014】
潜熱蓄熱材1は、例えば、放熱熱供給時に必要とされる温度域を融点とする任意の金属である。各蓄熱槽において、蓄熱時における熱媒体の流れ方向と、放熱熱供給時における熱媒体の流れ方向とは、互いに逆方向であるため、それぞれの流れ方向を実現可能な流路系(より具体的には、配管系統)が設けられる。
【0015】
2種の蓄熱槽のうち潜熱蓄熱槽2が、蓄熱時には顕熱蓄熱槽4の上流側となり、放熱熱供給時には顕熱蓄熱槽4の下流側となるように、潜熱蓄熱槽2と顕熱蓄熱槽4とが熱的に直列的に接続される。
図1に記載の例では、潜熱蓄熱槽2の下流側(蓄熱時における下流側)に、別途、顕熱蓄熱槽4が設置される。こうして、顕熱蓄熱槽4は、潜熱蓄熱槽2から排出される高温の熱を蓄える。
【0016】
(効果)
図1に記載の例において、蓄熱装置100Aは、潜熱蓄熱材1の融解潜熱を利用する。このため、潜熱蓄熱材1の蓄熱の少なくとも最終段階においては、潜熱蓄熱材1は、潜熱蓄熱材1の融点よりも高い温度の熱媒体から熱供給を受ける。この時、アルミニウムなど、選定される潜熱蓄熱材1の種類によっては潜熱蓄熱材1が極めて高い熱伝導率を有するため、潜熱蓄熱材1内の温度差は小さく、潜熱蓄熱槽2の第1出口EX1における熱媒体温度は、潜熱蓄熱材1の融点の近傍の温度となる。このため、潜熱蓄熱槽2が単独で用いられる場合には、第1出口EX1から多くの熱が排出される。このような場合に、蓄熱装置100Aの蓄熱能力を向上させるため、第1の実施形態では、潜熱蓄熱槽2の下流側(蓄熱時における下流側)に、別途、顕熱蓄熱槽4が設置される。こうして、顕熱蓄熱槽4は、潜熱蓄熱槽2から排出される高温の熱を蓄える。
【0017】
(任意付加的な構成)
続いて、
図1乃至
図3を参照して、第1の実施形態における蓄熱装置100A、後述の第2の実施形態における蓄熱装置100B、あるいは、後述の第3の実施形態における蓄熱装置100Cにおいて採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0018】
(全体的な構成)
図1に記載の例では、蓄熱装置100Aは、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2と、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4と、熱媒体流路FPと、第1熱交換器5と、第2熱交換器6と、を備える。
【0019】
少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2には、潜熱(より具体的には、融解潜熱)を利用して蓄熱する潜熱蓄熱材1が充填されている。潜熱蓄熱材1は、潜熱蓄熱材を構成する材料の相変化、より具体的には、固体と液体との間の相変化を利用して、熱を蓄積する蓄熱材である。なお、潜熱蓄熱材1は、融点に達するまでは温度上昇により熱を蓄積する顕熱蓄熱材としても機能するが、潜熱蓄熱材1を構成する材料の融点での融解潜熱を利用して熱を蓄積する機能の方が大きい。
【0020】
少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4には、顕熱を利用して蓄熱する顕熱蓄熱材3が充填されている。顕熱蓄熱材3は、顕熱蓄熱材を構成する材料の温度上昇により熱を蓄積する蓄熱材である。顕熱蓄熱材3は、実質的に相変化しない温度範囲で使用されることが好ましい。
【0021】
熱媒体流路FPは、第1流路FP1と、第2流路FP2と、第3流路FP3とを含む。付加的に、熱媒体流路FPは、第4流路FP4、および/または、第5流路FP5を含んでいてもよい。
【0022】
第1流路FP1は、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2から熱供給対象装置Dに熱媒体を送ることが可能な流路である。潜熱蓄熱材1の放熱時に、第1流路FP1を流れる熱媒体は、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2から受け取る熱を、熱供給対象装置Dに供給する。こうして、熱供給対象装置Dは、熱機器あるいは発電装置等として機能する。
【0023】
第2流路FP2は、熱供給源S(より具体的には、熱源S1)から少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2に熱媒体を送ることが可能な流路である。潜熱蓄熱材1の蓄熱時に、第2流路FP2を流れる熱媒体は、熱源S1から受け取る熱を少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2に供給する。こうして、熱が、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2に蓄積される。
【0024】
第3流路FP3は、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2と少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4とを流体的に接続する。
図1に記載の例では、第3流路FP3は、2個の配管P3によって構成されている。代替的に、第3流路FP3は、1個または3個以上の配管によって構成されていてもよい。
【0025】
図1に記載の例では、第4流路FP4は、熱供給対象装置Dから少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4に熱媒体を送ることが可能な流路である。また、第5流路FP5は、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4から熱供給源S(より具体的には、熱源S1)に熱媒体を送ることが可能な流路である。
【0026】
第1熱交換器5は、熱媒体流路FPを流れる熱媒体と潜熱蓄熱材1との間で熱交換を行う。
図1に記載の例では、第1熱交換器5の数が2個であるが、第1熱交換器5の数は、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。第1熱交換器5は、例えば、金属材料によって構成される第1伝熱管5aを含む。第1伝熱管5aの内部を熱媒体が流れる時、熱媒体と潜熱蓄熱材1との間で熱交換が行われる。
【0027】
第2熱交換器6は、熱媒体流路FPを流れる熱媒体と顕熱蓄熱材3との間で熱交換を行う。
図1に記載の例では、第2熱交換器6の数が2個であるが、第2熱交換器6の数は、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。第2熱交換器6は、例えば、金属材料によって構成される第2伝熱管6aを含む。第2伝熱管6aの内部を熱媒体が流れる時、熱媒体と顕熱蓄熱材3との間で熱交換が行われる。
【0028】
図1における矢印AR1で示されるように、潜熱蓄熱材1から放熱が行われる際には、第3流路FP3は、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4から少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2に熱媒体を送るように構成される。この場合、熱媒体が顕熱蓄熱槽4で加温され、その後、熱媒体が潜熱蓄熱槽2で更に加温される。よって、放熱時の熱媒体の流れ方向にみて潜熱蓄熱槽2の上流側に配置される顕熱蓄熱槽4の存在により、潜熱蓄熱槽2に供給される熱媒体が昇温され、単位時間あたりに潜熱蓄熱材1から放熱される熱量を低下させることができる。その結果、潜熱蓄熱材1の全てが凝固されるまでの時間を長くすることができ、潜熱蓄熱材1からの放熱を、より長い期間継続させることができる。
【0029】
図1における矢印AR2で示されるように、潜熱蓄熱材1に蓄熱が行われる際に、第3流路FP3は、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2から少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4に熱媒体を送るように構成される。この場合、潜熱蓄熱材1の蓄熱時に、潜熱蓄熱槽2から排出される高温の熱媒体を利用して、顕熱蓄熱槽4の顕熱蓄熱材3に蓄熱することができる。換言すれば、蓄熱時の熱媒体の流れ方向にみて潜熱蓄熱槽2の下流側に配置される顕熱蓄熱槽4によって、潜熱蓄熱槽2から排出される高温の熱媒体の熱が蓄熱され、蓄熱装置100A全体としての蓄熱特性が向上する。
【0030】
(潜熱蓄熱材1)
潜熱蓄熱材1は、例えば、金属材料を含む。潜熱蓄熱材1として使用される金属材料は、潜熱蓄熱材1から放熱が行われるときに必要とされる放熱温度域に融点を有する任意の金属材料である。金属材料は、単一の金属材料によって構成されていてもよく、合金によって構成されていてもよい。
【0031】
潜熱蓄熱材1が金属材料を含む場合、その固液相変化を利用して、単位体積当たりの蓄熱量を大きくすることができる。また、金属材料は、一般的に熱伝導率が高い。よって、潜熱蓄熱材1が金属材料を含む場合、その高い熱伝導率によって、潜熱蓄熱槽2内の温度勾配が低減され、蓄熱の最終段階では、潜熱蓄熱槽2内の温度が、潜熱蓄熱材1の融点近傍で一様になる。このことは、潜熱蓄熱材1から放熱が行われる際に、潜熱蓄熱槽2の第2出口EX2から出る熱媒体の温度の安定化に寄与する。
【0032】
潜熱蓄熱材1は、低融点金属材料であることが好ましい。なお、本明細書において低融点金属材料とは、融点が摂氏700度以下の金属材料を意味する。低融点金属材料は、例えば、亜鉛、アルミニウム、鉛、錫、あるいは、これらの金属を含む合金である。
【0033】
(第1熱交換器5と潜熱蓄熱材1との直接接触)
図2(a)に記載の例では、潜熱蓄熱材1は、低融点金属材料を含み、当該低融点金属材料は、第1熱交換器5(より具体的には、第1伝熱管5a)に、直接的に接触している。
図2(a)に記載の例では、潜熱蓄熱材1は、セラミック材などによって構成されるカプセルに包まれていない。潜熱蓄熱材1は、そのままの裸の状態で、第1熱交換器5に、直接的に接触している。
【0034】
潜熱蓄熱材1への蓄熱時の最終段階(
図2(a)を参照。)では、液相の潜熱蓄熱材1-Lが第1熱交換器5と直接的に接触し、液相の潜熱蓄熱材1-Lを囲むように固相の潜熱蓄熱材1-Sが存在する。この場合、第1熱交換器5が熱媒体Mから受け取る熱は、液相の潜熱蓄熱材1-Lに直接伝達される。よって、液相の潜熱蓄熱材1-Lへの熱の伝達が、高効率に行われる。金属材料は、液相である場合でも、熱伝導率が高い。よって、潜熱蓄熱材1が低融点金属材料である場合、液相の潜熱蓄熱材1-Lから固相の潜熱蓄熱材1-Sに、迅速に熱が伝達される。こうして、固相の潜熱蓄熱材1-Sの融解が促進される。また、金属材料は、固相である場合でも、熱伝導率が高い。よって、潜熱蓄熱材1が低融点金属材料である場合、固相の潜熱蓄熱材1-S中で熱が迅速に伝達され、潜熱蓄熱槽2内の温度勾配が低減される。以上のことから、
図2(a)に記載の例では、熱媒体Mの熱が、迅速に、潜熱蓄熱材1の全体に伝達され、潜熱蓄熱材1への蓄熱が効率的に行われる。
【0035】
潜熱蓄熱材1の放熱時には、液相の潜熱蓄熱材1-Lまたは固相の潜熱蓄熱材1-Sが、第1熱交換器5と直接的に接触している。この場合、第1熱交換器5は、潜熱蓄熱材1から直接熱を受け取り、受け取った熱を、熱媒体Mに伝達する。
図2(b)には、潜熱蓄熱材1からの放熱が進行し、第1熱交換器5の周囲の潜熱蓄熱材1が凝固した様子が示されている。
図2(b)に記載の例では、固相の潜熱蓄熱材1-Sが第1熱交換器5と直接的に接触し、固相の潜熱蓄熱材1-Sを囲むように液相の潜熱蓄熱材1-Lが存在する。
【0036】
金属材料は、液相である場合でも固相である場合でも、熱伝導率が高い。よって、潜熱蓄熱材1が低融点金属材料である場合、第1熱交換器5と直接接触する潜熱蓄熱材1から熱媒体Mに、迅速に熱が伝達される。また、潜熱蓄熱槽2に、固相の潜熱蓄熱材1-Sと液相の潜熱蓄熱材1-Lとが混在する間、潜熱蓄熱槽2内の潜熱蓄熱材1の温度は、潜熱蓄熱材1の融点近傍の温度に維持され、当該潜熱蓄熱材1と直接接触する第1熱交換器5の温度も潜熱蓄熱材1の融点近傍の温度に維持される。よって、
図2(b)に記載の例では、潜熱蓄熱材1からの放熱時に、潜熱蓄熱槽2の第2出口EX2(必要であれば、
図1を参照。)付近の熱媒体Mの温度が潜熱蓄熱材1の融点付近の温度に安定的に維持される。
【0037】
(顕熱蓄熱材3)
顕熱蓄熱材3は、温度域にも依るが、接触性・熱伝導率が高く比熱の大きい液体または固体が選択され、例えば、水、油などの液体である。
図1に記載の例では、顕熱蓄熱材3は、第2熱交換器6に直接接触している。
【0038】
(熱媒体M)
熱媒体流路FPを流れる熱媒体Mは、水、油、溶融塩などの液体であってもよいし、空気、水蒸気などの気体であってもよい。
【0039】
(流路系)
図1に記載の例では、蓄熱装置100Aは、顕熱蓄熱材3および潜熱蓄熱材1から放熱が行われる際に、熱媒体が循環する第1循環流路C1と、顕熱蓄熱材3および潜熱蓄熱材1に蓄熱が行われる際に、熱媒体が循環する第2循環流路C2とを備える。
図1に記載の例では、第1循環流路C1と第2循環流路C2とが、互いに完全に独立している。代替的に、
図3に例示されるように、第1循環流路C1の一部と、第2循環流路C2の一部とが共通化されていてもよい。
【0040】
図1に記載の例では、第1循環流路C1にポンプ、ブロワ等の第1の流体駆動装置71が配置されている。第1の流体駆動装置71は、熱媒体Mが第1循環流路C1を循環するように、熱媒体Mに運動量を付与する。
図1に記載の例では、第1循環流路C1を循環する熱媒体は、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4、第3流路FP3、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2、第1流路FP1、熱供給対象装置D、第4流路FP4を、この順番に通過する。なお、第1の流体駆動装置71は、第1循環流路C1のどの部分に配置されていてもよい。
【0041】
図1に記載の例では、第2循環流路C2にポンプ、ブロワ等の第2の流体駆動装置72が配置されている。第2の流体駆動装置72は、熱媒体Mが第2循環流路C2を循環するように、熱媒体Mに運動量を付与する。
図1に記載の例では、第2循環流路C2を循環する熱媒体は、熱源S1、第2流路FP2、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2、第3流路FP3、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4、第5流路FP5を、この順番に通過する。なお、第2の流体駆動装置72は、第2循環流路C2のどの部分に配置されていてもよい。
【0042】
(第1変形例)
代替的に、
図3に例示されるように、第2の流体駆動装置72が省略されてもよい。
図3(a)に記載の放熱時の例では、第1の流体駆動装置71は、熱媒体が第1循環流路C1を循環するように熱媒体に運動量を付与することが可能であり、
図3(b)に記載の蓄熱時の例では熱媒体が第2循環流路C2を循環するように熱媒体に運動量を付与することが可能である。
【0043】
図3に記載の蓄熱装置100Aは、熱媒体流路FPに配置される複数のバルブVと、第1の流体駆動装置71とを備える。
【0044】
図3(a)に例示されるように、潜熱蓄熱材1から放熱が行われる際には、熱媒体が第1循環流路C1を循環可能、かつ、熱媒体が第2循環流路C2を循環不能なように、複数のバルブVが切り替えられた状態で、第1の流体駆動装置71が駆動されることにより、熱媒体が、第1循環流路C1を循環する。より具体的には、熱媒体は、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4、第3流路FP3、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2、第1流路FP1、熱供給対象装置D、第4流路FP4を、この順番に通過するように第1循環流路C1を循環する。
【0045】
他方、
図3(b)に例示されるように、潜熱蓄熱材1に蓄熱が行われる際には、熱媒体が第1循環流路C1を循環不能、かつ、熱媒体が第2循環流路C2を循環可能なように、複数のバルブVが切り替えられた状態で、第1の流体駆動装置71が駆動されることにより、熱媒体が、第2循環流路C2を循環する。より具体的には、熱媒体は、熱源S1、第2流路FP2、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2、第3流路FP3、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4、第5流路FP5を、この順番に通過するように第2循環流路C2を循環する。
【0046】
(第2の実施形態)
図4乃至
図6を参照して、第2の実施形態における蓄熱装置100Bについて説明する。
図4は、第2実施形態における蓄熱装置100Bの構成を模式的に示す図である。
図5は、第2実施形態における第1変形例における蓄熱装置100Bの構成を模式的に示す図である。
図6は、第2実施形態における第2変形例における蓄熱装置100Bの構成を模式的に示す図である。
【0047】
第2の実施形態では、蓄熱装置100Bは、直列的または並列的に接続される複数の潜熱蓄熱槽2、および/または、直列的または並列的に接続される複数の顕熱蓄熱槽4を備える。
【0048】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第2の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済みの事項を第2の実施形態に適用できることは言うまでもない。
【0049】
(構成・作用)
図4に例示されるように、第2の実施形態における蓄熱装置100Bは、(1)潜熱を利用して蓄熱する潜熱蓄熱材1が充填された少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2と、(2)顕熱を利用して蓄熱する顕熱蓄熱材3が充填された少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4と、(3)少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2あるいは熱供給対象装置Dへ熱を輸送するための熱媒体を流す熱媒体流路FPと、(4)熱媒体と潜熱蓄熱材1との間で熱交換を行う第1熱交換器5と、(5)熱媒体と顕熱蓄熱材3との間で熱交換を行う第2熱交換器6と、を具備する。(6)潜熱蓄熱材1が充填された少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2が、蓄熱時には少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4の上流側となり、放熱熱供給時には少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4の下流側となるように、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2と少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4とが熱的に直列的に接続される。よって、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0050】
図4に記載の例では、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4は、第1顕熱蓄熱槽4-1と、第2顕熱蓄熱槽4-2とを含み、第1顕熱蓄熱槽4-1と第2顕熱蓄熱槽4-2とは直列的に接続されている。
【0051】
図4に記載の例において、潜熱蓄熱材1から放熱が行われる際には、熱媒体は、第1顕熱蓄熱槽4-1および第2顕熱蓄熱槽4-2を含む複数の顕熱蓄熱槽4、第3流路FP3、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2、第1流路FP1、熱供給対象装置D、第4流路FP4を、この順番に通過するように第1循環流路C1を循環する。
【0052】
図4に記載の例では、放熱時の熱媒体の流れ方向にみて潜熱蓄熱槽2の上流側に配置される複数の顕熱蓄熱槽4の存在により、潜熱蓄熱槽2に供給される熱媒体が昇温され、単位時間あたりに潜熱蓄熱材1から放熱される熱量を低下させることができる。その結果、潜熱蓄熱材1の全てが凝固されるまでの時間を長くすることができ、潜熱蓄熱材1からの放熱を、より長い期間継続させることができる。更に、蓄熱装置100Bが複数の顕熱蓄熱槽4を有することにより、潜熱蓄熱槽2に供給される熱媒体を予熱する能力が向上する。例えば、潜熱蓄熱槽2に供給される熱媒体の温度をより高くすることができるか、あるいは、熱媒体の温度をより高くする代わりに潜熱蓄熱槽2に供給される熱媒体の流量を増加させることができる。
【0053】
図4に記載の例において、潜熱蓄熱材1に蓄熱が行われる際には、熱媒体は、熱源S1、第2流路FP2、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2、第3流路FP3、第1顕熱蓄熱槽4-1および第2顕熱蓄熱槽4-2を含む複数の顕熱蓄熱槽4、第5流路FP5を、この順番に通過するように第2循環流路C2を循環する。
【0054】
図4に記載の例では、潜熱蓄熱材1に蓄熱が行われる際に、第3流路FP3は、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2から複数の顕熱蓄熱槽4に熱媒体を送るように構成される。この場合、潜熱蓄熱材1の蓄熱時に、潜熱蓄熱槽2から排出される高温の熱媒体を利用して、複数の顕熱蓄熱槽4の顕熱蓄熱材3に蓄熱することができる。換言すれば、蓄熱時の熱媒体の流れ方向にみて潜熱蓄熱槽2の下流側に配置される複数の顕熱蓄熱槽4によって、潜熱蓄熱槽2から排出される高温の熱媒体の熱が蓄熱され、蓄熱装置100B全体としての蓄熱特性が更に向上する。
【0055】
(第1変形例)
図4に記載の例では、第1顕熱蓄熱槽4-1と第2顕熱蓄熱槽4-2とが直列的に接続されている。代替的に、
図5に例示されるように、第1顕熱蓄熱槽4-1と第2顕熱蓄熱槽4-2とが並列的に接続されていてもよい。
【0056】
図4に記載の例では、2つの顕熱蓄熱槽(4-1、4-2)が直列的に接続され、
図5に記載の例では、2つの顕熱蓄熱槽(4-1、4-2)が並列的に接続されている。代替的に、3つ以上の顕熱蓄熱槽が、直列的または並列的に接続されていてもよい。また、複数の顕熱蓄熱槽4のうちのいくつかが直列的に接続され、複数の顕熱蓄熱槽4のうちのいくつかが並列的に接続されていてもよい。
【0057】
(第2変形例)
図6に記載の例では、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2は、第1潜熱蓄熱槽2-1と、第2潜熱蓄熱槽2-2とを含み、第1潜熱蓄熱槽2-1と第2潜熱蓄熱槽2-2とは直列的に接続されている。
【0058】
図6(a)に記載の例において、潜熱蓄熱材1から放熱が行われる際には、熱媒体は、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4、第3流路FP3、第2潜熱蓄熱槽2-2および第1潜熱蓄熱槽2-1を含む複数の潜熱蓄熱槽2、第1流路FP1、熱供給対象装置D、第4流路FP4を、この順番に通過するように第1循環流路C1を循環する。
【0059】
図6(a)に例示されるように、複数の潜熱蓄熱槽2は、第1融点を有する金属材料の第1潜熱蓄熱材1が充填された第1潜熱蓄熱槽2-1と、第1潜熱蓄熱材1の第1融点よりも低い第2融点を有する第2潜熱蓄熱材1’(または、第1潜熱蓄熱材1の第1融点よりも低い第2沸点を有する第2潜熱蓄熱材1’)が充填された第2潜熱蓄熱槽2-2と、を含んでいてもよい。また、第2潜熱蓄熱槽2-2は、第1潜熱蓄熱槽2-1と少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4との間に配置されていてもよい。
【0060】
図6(b)に記載の例において、潜熱蓄熱材1に蓄熱が行われる際には、熱媒体は、熱源S1、第2流路FP2、第1潜熱蓄熱槽2-1および第2潜熱蓄熱槽2-2を含む複数の潜熱蓄熱槽2、第3流路FP3、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4、第5流路FP5を、この順番に通過するように第2循環流路C2を循環する。
【0061】
図6(b)に記載の例では、第1潜熱蓄熱槽2-1の出口EXから排出される高温の熱媒体の熱(換言すれば、第1融点と概ね等しい温度の熱媒体の熱)が、第2潜熱蓄熱槽2-2の第2潜熱蓄熱材1’に蓄熱される。また、第2潜熱蓄熱槽2-2を通過することにより温度が低下されて第2潜熱蓄熱槽2-2の第1出口EX1から排出される熱媒体の熱(換言すれば、第2融点または第2沸点と概ね等しい温度の熱媒体の熱)が、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4の顕熱蓄熱材3に蓄熱される。
【0062】
第1潜熱蓄熱槽2-1と少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4との間に第2潜熱蓄熱槽2-2が配置され、第2潜熱蓄熱槽2-2に第2潜熱蓄熱材1’が充填されている場合、第2潜熱蓄熱材1’の相変化(より具体的には、融解または気化)を利用して、第1潜熱蓄熱槽2-1の出口EXから排出される高温の熱媒体の熱を、第2潜熱蓄熱材1’に蓄熱することができる。第2潜熱蓄熱材1’は、顕熱蓄熱材3と比較して、単位体積あたりの蓄熱容量が大きい。このため、コンパクトな第2潜熱蓄熱槽2-2で、高い蓄熱容量を実現することができる。第2潜熱蓄熱材1’は、金属材料によって構成されていてもよく、金属材料以外の材料によって構成されていてもよい。
【0063】
図6(b)に記載の例において、第2潜熱蓄熱槽2-2の第1出口EX1から排出される中程度に高温の熱媒体の熱は、顕熱蓄熱材3に蓄熱される。熱媒体の温度は、第2潜熱蓄熱槽2-2である程度低下されている。このため、相対的に単位体積当たりの蓄熱容量が小さな顕熱蓄熱材3を用いて、第2潜熱蓄熱槽2-2の第1出口EX1から排出される中程度に高温の熱媒体の熱を好適に蓄熱することができる。
【0064】
図6(b)に記載の例では、第2潜熱蓄熱槽2-2と顕熱蓄熱槽4とを接続する第3流路FP3が、並列に配置された3個の配管P3によって構成されている。また、
図6(b)に記載の例では、第1潜熱蓄熱槽2-1に配置される第1熱交換器5が、3個の伝熱管5aを含み、第2潜熱蓄熱槽2-2に配置される別の第1熱交換器5が、3個の伝熱管5aを含み、顕熱蓄熱槽4に配置される第2熱交換器6が、3個の伝熱管6aを含む。ただし、実施形態において、第3流路FP3を構成する配管の数は、3個に限定されず任意である。また、各蓄熱槽(2-1、2-2、4)に配置される熱交換器が有する伝熱管の数は、3個に限定されず任意である。
【0065】
(効果)
第2の実施形態では、蓄熱装置100Bは、直列的または並列的に接続される複数の潜熱蓄熱槽2、および/または、直列的または並列的に接続される複数の顕熱蓄熱槽4を備える。よって、蓄熱装置100B全体としての蓄熱特性が更に向上する。また、第1潜熱蓄熱槽2-1と少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4との間に第2潜熱蓄熱槽2-2が配置され、第2潜熱蓄熱槽2-2に、第1潜熱蓄熱材1の第1融点よりも低い第2融点または第1融点よりも低い第2沸点を有する第2潜熱蓄熱材1’が充填されている場合、相対的にコンパクトかつ高い蓄熱容量を有する第2潜熱蓄熱材1’と、顕熱蓄熱材3とを用いて、上流側の第1潜熱蓄熱槽2-1の出口EXから排出される高温の熱媒体の熱を、効率的に蓄熱することができる。
【0066】
(第3の実施形態)
図7を参照して、第3の実施形態における蓄熱装置100Cについて説明する。
図7は、第3実施形態における蓄熱装置100Cの構成を模式的に示す図である。
【0067】
第3の実施形態は、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2に熱媒体を送る第2流路FP2に、熱媒体を加熱するヒータ80が配置されている点で、第1の実施形態および第2の実施形態とは異なる。その他の点では、第3の実施形態は、第1の実施形態または第2の実施形態と同様である。
【0068】
第3の実施形態では、第1の実施形態および第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第3の実施形態では、第1の実施形態または第2の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第3の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みの事項を第3の実施形態に適用できることは言うまでもない。
【0069】
(構成・作用)
第3の実施形態における蓄熱装置100Cは、「少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2」と、「少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4」と、「熱媒体流路FP」と、「第1熱交換器5」と、「第2熱交換器6」と、を具備する。「少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2」、「少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4」、「熱媒体流路FP」、「第1熱交換器5」、「第2熱交換器6」については、第1の実施形態または第2の実施形態で説明済みであるため、これらの構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0070】
図7に例示されるように、蓄熱装置100Cの熱媒体流路FPは、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2から熱供給対象装置Dに熱媒体を送ることが可能な第1流路FP1と、熱供給源Sから少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2に熱媒体を送ることが可能な第2流路FP2と、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2と少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4とを流体的に接続する第3流路FP3とを含む。
【0071】
図7に記載の例では、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2に熱媒体を送る第2流路FP2に、熱媒体を加熱するヒータ80が配置されている。この場合、潜熱蓄熱材1に熱を供給する熱供給源Sとして、熱源S1に代えて、あるいは、熱源S1に加えて、ヒータ80(より具体的には、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するヒータ)を用いることができる。
【0072】
図7に記載の例では、熱源S1が第1の熱供給源として機能し、ヒータ80が第2の熱供給源として機能する。この場合、例えば、熱源S1だけでは、熱媒体の温度を潜熱蓄熱材1の融点以上に加熱できない場合、ヒータ80を利用して、熱媒体の温度を潜熱蓄熱材1の融点以上に加熱することができる。また、ヒータ80が、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するヒータである場合、電力を用いて、熱媒体への熱供給を行うことができる。よって、熱媒体の加熱の程度を調整するのが容易である。
【0073】
図7に記載の例では、潜熱蓄熱材1に蓄熱が行われる際には、熱媒体は、熱源S1、ヒータ80を有し第2流路FP2に配置された加熱装置8、少なくとも1つの潜熱蓄熱槽2、第3流路FP3、少なくとも1つの顕熱蓄熱槽4、第5流路FP5を、この順番に通過するように第2循環流路C2を循環する。
【0074】
図7において、熱源S1が省略されてもよい。この場合、
図7に記載の蓄熱装置100Cは、余剰電力によって駆動されるヒータ80のみを用いて、潜熱蓄熱材1に蓄熱を行うことが可能な装置として機能してもよい。
【0075】
なお、
図7に記載の例では、蓄熱装置100Cは、第1潜熱蓄熱槽2-1に加えて、第2潜熱蓄熱槽2-2を備えるが、当該第2潜熱蓄熱槽2-2は、省略されてもよい。
【0076】
(効果)
第3の実施形態では、ヒータ80が追加されることにより、蓄熱のための熱供給が電力によって行われる場合にも対応可能となる。また、熱源S1を第1の熱供給源とし、ヒータ80を第2の熱供給源とする場合には、ヒータ80によって、熱媒体の温度を熱源S1の温度以上に加熱することができ、潜熱蓄熱材1の最高温度を上昇させることができる。例えば、ヒータ80によって、潜熱蓄熱槽2に供給される熱媒体が潜熱蓄熱材1の融点を大きく上回る温度に加熱される場合、潜熱蓄熱材1の温度を、潜熱蓄熱材1の融点を大きく上回る温度にすることが可能である。こうして、潜熱蓄熱槽2の蓄熱容量の増大、および/または、放熱時に熱供給対象装置Dに供給される熱媒体の温度の上昇を実現することができる。なお、潜熱蓄熱材1の温度が、潜熱蓄熱材1の融点を大きく上回る場合、潜熱蓄熱槽2の出口EXから排出される熱媒体の温度も高くなる。第3の実施形態では、出口EXから排出される熱媒体の熱が、第2潜熱蓄熱槽2-2、および/または、顕熱蓄熱槽4に蓄熱される。
【0077】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…潜熱蓄熱材、1’…第2潜熱蓄熱材、1-L…液相の潜熱蓄熱材、1-S…固相の潜熱蓄熱材、2…潜熱蓄熱槽、2-1…第1潜熱蓄熱槽、2-2…第2潜熱蓄熱槽、3…顕熱蓄熱材、4…顕熱蓄熱槽、4-1…第1顕熱蓄熱槽、4-2…第2顕熱蓄熱槽、5…第1熱交換器、5a…第1伝熱管、6…第2熱交換器、6a…第2伝熱管、8…加熱装置、71…第1の流体駆動装置、72…第2の流体駆動装置、80…ヒータ、100、100A、100B、100C…蓄熱装置、C1…第1循環流路、C2…第2循環流路、D…熱供給対象装置、EX…出口、EX1…第1出口、EX2…第2出口、FP…熱媒体流路、FP1…第1流路、FP2…第2流路、FP3…第3流路、FP4…第4流路、FP5…第5流路、M…熱媒体、P3…配管、S…熱供給源、S1…熱源、V…バルブ