(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188978
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ろ過装置、及びろ過装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
B01D 24/00 20060101AFI20221215BHJP
B01D 24/02 20060101ALI20221215BHJP
B01D 24/46 20060101ALI20221215BHJP
B01D 24/48 20060101ALI20221215BHJP
B01D 29/62 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B01D29/08 520A
B01D23/16
B01D23/24 Z
B01D23/26 Z
B01D29/00 D
B01D29/38 580A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021097295
(22)【出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】久留須 太郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 明弘
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA01
4D116BA05
4D116DD02
4D116FF02A
4D116GG09
4D116QA03F
4D116QA31F
4D116QC02D
4D116QC14D
4D116QC23D
4D116QC32D
4D116QC36D
4D116QC50D
4D116RR01
4D116RR17
4D116RR25
4D116RR27
4D116VV09
(57)【要約】
【課題】ろ過砂の洗浄に供するろ過砂洗浄部の閉塞を防ぐことができるろ過装置を提供する。
【解決手段】ろ過砂を充填して形成されるろ過層3に上向きに原水を流すことにより原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプ10によってろ過層3に供給されるエアリフト用空気によりろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置であって、エアリフト用空気により上昇されたろ過砂を洗浄するろ過砂洗浄部20と、ろ過砂洗浄部20に清掃空気を吹き込む清掃空気吹込手段50とを備えるものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過砂を充填して形成されるろ過層に上向きに原水を流すことにより前記原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプによって前記ろ過層に供給されるエアリフト用空気により前記ろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置であって、
前記エアリフト用空気により上昇された前記ろ過砂を洗浄するろ過砂洗浄部と、
前記ろ過砂洗浄部に清掃空気を吹き込む清掃空気吹込手段と、
を備えるろ過装置。
【請求項2】
前記ろ過砂洗浄部は、
前記ろ過砂を分離する分離器と、
前記分離器によって分離された前記ろ過砂を導入するとともに、前記ろ過層を通過したろ過水を導入し、導入した前記ろ過砂と前記ろ過水とを向流接触させて前記ろ過砂を洗浄する洗浄器と、
を含み、
前記清掃空気吹込手段は、前記洗浄器における前記ろ過水が導入されるろ過水導入部に向けて清掃空気を噴射するように配設された清掃空気噴射管を備える請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記洗浄排水の濁度を計測する濁度計と、
前記濁度計の計測値に基づいて前記清掃空気吹込手段による清掃空気の吹込み量を制御する制御装置と、
をさらに備える請求項1又は2に記載のろ過装置。
【請求項4】
ろ過砂を充填して形成されるろ過層に上向きに原水を流すことにより前記原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプによって前記ろ過層に供給されるエアリフト用空気により前記ろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置の運転方法であって、
前記エアリフト用空気により上昇された前記ろ過砂をろ過砂洗浄部において洗浄するろ過砂洗浄工程と、
前記ろ過砂洗浄部に清掃空気を吹き込む清掃空気吹込工程と、
を包含するろ過装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過砂を連続的に洗浄する上向流移床式のろ過装置、及び当該ろ過装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下水の水処理に用いられるろ過装置としては、重力式下向流ろ過方式(固定床)、重力式上向流ろ過方式(固定床)、及び上向流移床式ろ過方式がある。これらのうち、上向流移床式ろ過方式は、ろ過操作を実施すると同時に、ろ材であるろ過砂を連続的に洗浄する方式であるため、ろ過池の損失水頭の上昇が少なく、連続してろ過水が得られ、且つメンテナンスが容易であるという特徴を有しており、水処理に広く用いられている。
【0003】
上向流移床式ろ過方式のろ過装置としては、ろ過砂を充填して形成されるろ過層に上向きに原水(懸濁物質(SS)を含んだ被処理水)を流すことにより原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプによってろ過層に供給されるエアリフト用空気によりろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このろ過装置においては、エアリフト用空気により上昇されたろ過砂をろ過砂洗浄部で洗浄するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたろ過装置において、ろ過砂洗浄部には、運転時間の経過に伴い、異物や夾雑物(例えば、生物膜や、水性生物の幼虫等、以下、「異物等」と称する。)が汚れとして付着・堆積することがある。このため、異物等の堆積量によっては、ろ過砂洗浄部の閉塞を招き、ろ過装置の運転に支障を来す虞がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ろ過砂の洗浄に供するろ過砂洗浄部の閉塞を防ぐことができるろ過装置、及び当該ろ過装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係るろ過装置の特徴構成は、
ろ過砂を充填して形成されるろ過層に上向きに原水を流すことにより前記原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプによって前記ろ過層に供給されるエアリフト用空気により前記ろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置であって、
前記エアリフト用空気により上昇された前記ろ過砂を洗浄するろ過砂洗浄部と、
前記ろ過砂洗浄部に清掃空気を吹き込む清掃空気吹込手段と、
を備えることにある。
【0008】
本構成のろ過装置によれば、エアリフト用空気により上昇されたろ過砂を洗浄するろ過砂洗浄部に、清掃空気が清掃空気吹込手段によって吹き込まれる。これにより、ろ過装置の運転時間の経過に伴い、ろ過砂洗浄部に異物等が付着・堆積したとしても、ろ過砂洗浄部に吹き込まれた清掃空気によって剥離・除去される。従って、ろ過砂洗浄部の閉塞を防ぐことができる。
【0009】
本発明に係るろ過装置において、
前記ろ過砂洗浄部は、
前記ろ過砂を分離する分離器と、
前記分離器によって分離された前記ろ過砂を導入するとともに、前記ろ過層を通過したろ過水を導入し、導入した前記ろ過砂と前記ろ過水とを向流接触させて前記ろ過砂を洗浄する洗浄器と、
を含み、
前記清掃空気吹込手段は、前記洗浄器における前記ろ過水が導入されるろ過水導入部に向けて清掃空気を噴射するように配設された清掃空気噴射管を備えることが好ましい。
【0010】
本構成のろ過装置によれば、洗浄器におけるろ過水が導入されるろ過水導入部に向けて清掃空気噴射管から清掃空気が噴射されると、噴射された清掃空気が、ろ過水導入部から洗浄器に吹き込まれるとともに、洗浄器を通して分離器に吹き込まれる。これにより、洗浄器、及び分離器を同時に洗浄することができ、洗浄効率を向上させることができる。
【0011】
本発明に係るろ過装置において、
前記洗浄排水の濁度を計測する濁度計と、
前記濁度計の計測値に基づいて前記清掃空気吹込手段による清掃空気の吹込み量を制御する制御装置と、
をさらに備えることが好ましい。
【0012】
本構成のろ過装置によれば、洗浄排水の濁度を計測する濁度計の計測値に基づいて清掃空気吹込手段による清掃空気の吹込み量が制御装置によって制御されるので、汚れの度合に応じて過不足なく適正量の清掃空気を吹き込むことが可能となる。
【0013】
次に、上記課題を解決するための本発明に係るろ過装置の運転方法の特徴構成は、
ろ過砂を充填して形成されるろ過層に上向きに原水を流すことにより前記原水をろ過処理するとともに、エアリフトポンプによって前記ろ過層に供給されるエアリフト用空気により前記ろ過砂と共に上昇させる水を洗浄排水として排出するように構成されたろ過装置の運転方法であって、
前記エアリフト用空気により上昇された前記ろ過砂をろ過砂洗浄部において洗浄するろ過砂洗浄工程と、
前記ろ過砂洗浄部に清掃空気を吹き込む清掃空気吹込工程と、
を包含することにある。
【0014】
本構成のろ過装置の運転方法によれば、エアリフト用空気により上昇されたろ過砂をろ過砂洗浄部において洗浄するろ過砂洗浄工程と、ろ過砂洗浄部に清掃空気を吹き込む清掃空気吹込工程とが行われる。これにより、ろ過装置の運転時間の経過に伴って、ろ過砂洗浄部に付着・堆積した異物等が、ろ過砂洗浄部に吹き込まれた清掃空気によって剥離・除去される。従って、ろ過砂洗浄部の閉塞を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るろ過装置を模式的に表した概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の別実施形態に係るろ過装置の要部を拡大して模式的に表した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。なお、
図1及び
図2において、本発明のろ過装置を構成する各種機器について、説明容易化のため適宜誇張又は簡略化しており、実際のろ過装置における各種機器の大小関係や配置等を厳密に反映したものではない。
【0017】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るろ過装置1を模式的に表した概略構成図である。
図1に示すように、ろ過装置1は、筒状の胴部2a及び逆コーン状の底部2bを有するろ過槽2と、ろ過槽2内にろ材としてのろ過砂が充填されて形成されるろ過層3と、ろ過層3の下部のろ過砂を水と共に上昇させるエアリフトポンプ10と、エアリフトポンプ10により上昇されたろ過砂を洗浄するろ過砂洗浄部20と、ろ過砂洗浄部20に清掃空気を吹き込む清掃空気吹込手段50とを備えている。
【0018】
ろ過槽2の下部には、懸濁物質(SS)を含んだ被処理水としての原水をろ過層3に流入させる原水流入部4が設けられている。この原水流入部4には、例えば三角形状の断面で下面側が開放された単一又は複数本の分散板の集合体からなる原水分散板5が配されている。原水分散板5には、ガイドパイプ6を介して原水流入管7が接続され、原水が原水流入管7からガイドパイプ6を介して原水分散板5へと供給される。こうして、原水は、矢印Aで示すように、原水分散板5の下部より流出し、ろ過層3中を上向流になって通過する間にろ過層3により含有するSS成分がろ過される。ろ過後の処理水(ろ過水)は、
図1中記号B,C,D矢印で示すように、ろ過槽2の上部からオーバーフローされて集水トラフ8へと流れ、ろ過水排出管9から次の処理装置(図示省略)へと送られる。
【0019】
<エアリフトポンプ>
エアリフトポンプ10は、ろ過槽2の内部においてろ過槽2の上部から下部に亘って延在するように配設されるエアリフト管11と、ろ過槽2の外部に配設される圧力開閉式のエアコンプレッサ12とを備えている。なお、エアコンプレッサ12は、エアリフト用空気となる圧縮空気の供給源と、清掃空気となる圧縮空気の供給源とを兼ねている。
【0020】
エアリフト管11には、当該エアリフト管11の下端部を包み込むように箱体13が装着されている。箱体13の底部には、箱体13の内部に連通するように吸込管14が接続されている。箱体13とエアコンプレッサ12とは、エア供給管15によって接続されている。エア供給管15には、圧縮空気流れの上流側から下流側に向かって、流量制御弁16及び流量計17がこの記載順に介設されている。流量制御弁16は、後述する制御装置70からの弁開度信号に応じて弁開度が制御される。流量計17は、エア供給管15における流量制御弁16の下流側を通流する圧縮空気の流量を計測する。流量計17の計測信号は、後述する制御装置70へと送信される。制御装置70は、流量計17の計測信号を読み取り、現在の圧縮空気の流量を目標値に近づけるように流量制御弁16の弁開度を演算し、算出された弁開度に基づく弁開度信号を流量制御弁16へと送信する。
【0021】
<ろ過砂洗浄部>
ろ過砂洗浄部20は、エアリフトポンプ10のエアリフト用空気により上昇されたろ過砂を洗浄するものであり、主として、分離器21と洗浄器22とにより構成されている。
【0022】
<分離器>
分離器21は、エアリフト管11の上端側に配設されている。分離器21は、エアリフト管11の上部開口を覆うような下方が開口された蓋状体よりなる。分離器21には、エアリフト用空気の作用により、ろ過砂と共に水(洗浄排水)がエアリフト管11を通して搬送される。分離器21においては、エアリフト用空気と共に洗浄排水と同伴するろ過砂を沈降させることにより、ろ過砂と洗浄排水とを分離するように構成されている。
【0023】
<洗浄器>
洗浄器22は、分離器21の下方側に配設されている。洗浄器22は、分離器21とろ過層3との間で延在するような筒状体よりなる。洗浄器22は、上方に開口されたろ過砂導入部22aと、下方に開口されたろ過水導入部22bと、ろ過砂導入部22aとろ過水導入部22bとの間に形成されるラビリンス通路22cとを有している。
【0024】
<清掃空気吹込手段>
清掃空気吹込手段50は、清掃空気の供給源としてのエアコンプレッサ12の他に、主として、流量制御弁51、流量計53、継手55、及び所要(本例では2本)の清掃空気噴射管57を備えている。なお、本例では、2本の清掃空気噴射管57を用いているが、これに限定されるものではなく、1本、又は3本以上の清掃空気噴射管57を用いる態様もある。1本の清掃空気噴射管57を用いる場合、継手55は省略することが可能である。3本以上の清掃空気噴射管57を用いる場合、例えば、集中分配継手を用いてそれぞれの清掃空気噴射管57に圧縮空気を分配するように構成すればよい。
【0025】
流量制御弁51は、後述する制御装置70からの弁開度信号に応じて弁開度が制御される。流量制御弁51は、エア供給管15におけるエアコンプレッサ12と流量制御弁16との間の部分から分岐するように延在するエア供給管61を介してエアコンプレッサ12に接続されている。流量制御弁51と継手55とは、エア供給管62を介して接続されている。エア供給管62には、流量計53が介設されている。継手55と各清掃空気噴射管57とは、エア供給管63を介して接続されている。
【0026】
<清掃空気噴射管>
清掃空気噴射管57は、洗浄器22におけるろ過水導入部22bに向けて斜め上向きに延在する直管状の部材よりなり、ろ過水導入部22bに向けて清掃空気(圧縮空気)を噴射する噴射ノズルとして機能するように配設されている。清掃空気噴射管57は、例えば、図示されないステー等の支持手段によって洗浄器22に固定状態で支持されている。
【0027】
<濁度計>
分離器21の周りには、洗浄排水を一時的に貯留する洗浄排水溜部25が形成されている。洗浄排水溜部25には、貯留される洗浄排水の濁度を計測できるように濁度計65が配設されている。濁度計65としては、例えば、透過散乱光方式や表面散乱光方式、積分球方式、透過光方式、散乱光方式、粒子数計測方式等のものが挙げられるが、何れの方式のものを用いてもよい。
【0028】
<制御装置>
ろ過装置1は、装置全体を制御可能なコンピュータを主体に構成される制御装置70をさらに備えている。制御装置70には、流量制御弁16,51、流量計17,53、及び濁度計65がそれぞれ信号伝達可能に接続されている。
【0029】
制御装置70は、タイマ制御回路71を有しており、タイマ制御回路71によるタイマ設定時間Tsを超えたときに、流量制御弁51に向けて弁開作動信号を送信し流量制御弁51を開くことができるように構成されている。
【0030】
以上に述べたように構成されるろ過装置1において、制御装置70は、流量制御弁16に向けて弁開作動信号を送信するとともに、流量計17の計測信号を読み取り、現在の圧縮空気(エアリフト用空気)の流量を目標値に近づけるように流量制御弁16の弁開度を演算し、算出された弁開度に基づく弁開度信号を流量制御弁16へと送信する。これにより、流量制御弁16が制御装置70からの弁開度信号に応じた弁開度で開かれる。
【0031】
エアリフトポンプ10においては、エアコンプレッサ12から流量制御弁16の弁開度に応じた流量の圧縮空気(エアリフト用空気)が、エア供給管15を介して箱体13の内部に供給される。箱体13の内部に供給されたエアリフト用空気は、
図1中記号E矢印で示すように、エアリフト管11の内部に吹き込まれる。すると、
図1中記号F矢印で示すように、ろ過槽2の底部における水及びろ過砂が吸込管14を介して箱体13の内部へと吸い上げられる。箱体13の内部に吸い上げられたろ過砂は、エアリフト管11の内外の比重差により生じる上昇力により、
図1中記号G矢印で示すように上昇し、上昇中に、空気と水とにより撹拌洗浄される。
【0032】
<ろ過砂洗浄工程>
エアリフト用空気によって水(洗浄排水)と共に上昇されるろ過砂は、分離器21へと搬送される。分離器21においては、
図1中記号H矢印で示すように、ろ過砂を沈降させることにより、ろ過砂と洗浄排水とが分離される。分離器21で分離されたろ過砂は、洗浄器22におけるろ過砂導入部22aを通してラビリンス通路22cに導入される。ラビリンス通路22cには、
図1中記号Iで示すように、ろ過水導入部22bを通して、ろ過層3を通過したろ過水の一部が洗浄水として導入される。ラビリンス通路22cにおいては、ろ過砂導入部22aから導入されたろ過砂と、ろ過水導入部22bから導入された洗浄水(ろ過水)とを向流接触させることにより、ろ過砂とSSとを分離させ、ろ過砂をろ材として再生させる。再生されたろ過砂は、
図1中記号J矢印で示すように、ろ過層3へと戻される。SSは、上向水に同伴して洗浄器22の内部を上方へと移動し、分離器21で分離処理された洗浄排水と共に洗浄排水溜部25に一旦貯留される。洗浄排水溜部25に貯留されたSSを含む洗浄排水は、洗浄排水溜部25の一側壁を構成するオリフィスプレート26の孔を通って、及び/又はオリフィスプレート26を溢流して、
図1中記号Kで示すように、洗浄排水管27を介して装置外へと排出される。なお、
図1中符号28にて示すのはエア抜き管である。
【0033】
<清掃空気吹込工程>
タイマ制御回路71によるタイマ設定時間Tsを超えると、制御装置70は、流量制御弁16に向けて弁閉作動信号を送信し、流量制御弁16を閉じて、エアリフトポンプ10の作動を停止させ、ろ材を再生する処理動作を一時中断する(原水流入によるろ過層3でのろ過処理は継続)。程なく、制御装置70は、流量制御弁51に向けて弁開作動信号を送信し、流量制御弁51を開く。これにより、エアコンプレッサ12からの圧縮空気が清掃空気として、エア供給管61,62,63を介して清掃空気噴射管57に供給され、洗浄器22におけるろ過水導入部22bに向けて清掃空気が噴射される。噴射された清掃空気は、ろ過水導入部22bから洗浄器22の内部、すなわちラビリンス通路22cに吹き込まれるとともに、ラビリンス通路22cを通して分離器21の内部に吹き込まれる。これにより、ろ過装置1の運転時間の経過に伴い、ろ過砂洗浄部20(分離器21、洗浄器22)に異物等が汚れとして付着・堆積したとしても、清掃空気によって吹き飛ばされて剥離・除去される。剥離・除去された異物等は、分離器21で分離処理された洗浄排水と共に、洗浄排水溜部25に一旦貯留された後、SSと同様に、オリフィスプレート26の孔を通って、及び/又はオリフィスプレート26を溢流して、
図1中記号Kで示すように、洗浄排水管27を介して装置外へと排出される。こうして、ろ過砂洗浄部20の閉塞を防ぐことができる。また、清掃空気噴射管57から噴射される清掃空気により、分離器21、及び洗浄器22が同時に洗浄されるので、洗浄効率を向上させることができる。
【0034】
所定時間経過したら、制御装置70は、流量制御弁51に向けて弁閉作動信号を送信し、流量制御弁51を閉じて、ろ過砂洗浄部20の清掃動作を停止させ、タイマ制御回路71によるタイマ設定時間Tsをリセットして再度カウントを開始する。また、制御装置70は、流量制御弁16に向けて弁開作動信号を送信し、流量制御弁16を開いて、エアリフトポンプ10の作動を再開させる。
【0035】
ところで、例えば、ろ過装置1の上流側に設置された前処理設備(図示省略)の運転状況によっては、原水のSS濃度が急上昇する場合がある。この場合、ろ過砂洗浄部20において異物等が付着・堆積する可能性が大きくなる。そこで、濁度計65の計測値が所定値以上となった場合、たとえタイマ制御回路71によるタイマ設定時間Tsを超えていなくても、制御装置70は、流量制御弁16に向けて弁閉作動信号を送信し、流量制御弁16を閉じて、エアリフトポンプ10の作動を停止させるとともに、流量制御弁51に向けて弁開作動信号を送信し、流量制御弁51を開く。そして、制御装置70は、流量計53の計測信号を読み取るとともに、濁度計65の計測信号を読み取り、現在の圧縮空気(清掃空気)の流量を、濁度に応じた必要流量である目標値に近づけるように流量制御弁51の弁開度を演算し、算出された弁開度に基づく弁開度信号を流量制御弁51へと送信する。これにより、流量制御弁51が制御装置70からの弁開度信号に応じた弁開度で開かれて、原水のSS濃度が大きく変動した場合でも、汚れの度合に応じて過不足なく適正量の清掃空気を吹き込むことができる。
【0036】
以上に述べた、ろ材再生処理と、ろ過砂洗浄部20の清掃動作とを繰り返すことにより、ろ過装置1を長期に亘って安定的に運転することができる。
【0037】
以上、本発明のろ過装置、及びろ過装置の運転方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0038】
(別実施形態)
図2は、本発明の別実施形態に係るろ過装置1の要部を拡大して模式的に表した概略構成図である。上記実施形態においては、清掃空気吹込手段50が、洗浄器22におけるろ過水導入部22bに向けて清掃空気を噴射するように配設された直管状の清掃空気噴射管57を備える例を示したが、これに限定されるものではなく、
図2に示すように、ろ過水導入部22bの近傍に配設される断面円形状で平面視が円環状の環状管からなる清掃空気噴射管57を備える態様もある。
図2に示す清掃空気噴射管57は、例えば、図示されないステー等の支持手段によって洗浄器22に固定状態で支持されている。この清掃空気噴射管57においては、内周寄りの上部に、ろ過水導入部22bに向けて開口した所要の噴射孔57aが周方向に所定ピッチで穿設されており、エアコンプレッサ12からエア供給管61,62,63を介して供給された清掃空気をその噴射孔57aからろ過水導入部22bに向けて噴射することができるように構成されている。なお、清掃空気噴射管57の断面形状は、円形に限られず、例えば、楕円形や、多角形であってもよい。また、清掃空気噴射管57の平面視形状は、円環状に限られず、楕円環状や、多角環状であってもよい。
図2に示す別実施形態によっても、
図1に示す実施形態と同様の作用効果を得ることができるのは勿論のこと、
図1に示す実施形態では必要とされる継手55を省略することができるとともに、
図1に示す実施形態と比べてエア供給管63の本数を削減することができ、装置構成の簡素化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のろ過装置、及びろ過装置の運転方法は、例えば、下水、上水、一般排水等の水処理の用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ろ過装置
3 ろ過層
10 エアリフトポンプ
20 ろ過砂洗浄部
21 分離器
22 洗浄器
50 清掃空気吹込手段
57 清掃空気噴射管
65 濁度計
70 制御装置